JP4972387B2 - 脂肪族ニトリルの製造方法 - Google Patents
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Description
このような液相法で反応させる場合、例えば酸化亜鉛や鉄化合物などを触媒として用いる脂肪族ニトリルの製造方法が知られている。また酸化チタンに珪素、ニオブ、ジルコニウム、タンタル、ガリウム及びゲルマニウムからなる群から選ばれる1種以上の元素の酸化物を複合させた酸化物を触媒として使用する脂肪族ニトリルの製造方法(特許文献1及び2参照)、あるいは固体のシリカに担持させた酸化チタンを触媒として使用する脂肪族ニトリルの製造方法(特許文献3参照)などが開示されている。
しかしながら、近年、上記製造方法においても、更に高い反応性が求められている。
(1)亜鉛、コバルト、チタン及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の化合物とスルホン酸類の存在下で、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及びこれらのアルキルエステル(アルキル基の炭素数が1〜5)からなる群から選ばれる少なくとも一種とアンモニアとを反応させる脂肪族ニトリルの製造方法、及び
(2)下記工程を有する脂肪族アミンの製造方法、
(イ)上記(1)に記載の製造方法により脂肪族ニトリルを得る工程
(ロ)得られた脂肪族ニトリルを、水素化触媒の存在下で水素化反応を行う工程
に関する。
本発明の脂肪族ニトリルの製造方法は、亜鉛、コバルト、チタン及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の化合物とスルホン酸類の存在下で、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及びこれらのアルキルエステル(アルキル基の炭素数が1〜5)からなる群から選ばれる少なくとも一種とアンモニアとを反応させるものである。
本発明で使用する亜鉛、コバルト、チタン及びアルミニウムからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属の化合物は、対イオンが本発明の製造方法における反応を阻害したり、脂肪族ニトリルの収率を低下させたりしないなどの観点から選択されるものであり、前記金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、アルコキシド、カルボン酸塩、アセチルアセトナートなどを好ましく例示することができる。とりわけ前記金属の酸化物、水酸化物、カルボン酸塩又はアルコキシドが好ましい。また、亜鉛、コバルト、チタン及びアルミニウムからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属としては、製造に係る触媒コストを低減する観点から、亜鉛、アルミニウム、チタンが好ましく、亜鉛、アルミニウムがより好ましく挙げられる。
これらの金属化合物は、一種でも使用できるが、二種以上組み合わせて使用することもできる。
アルキル基で置換されてもよいアリールスルホン酸としては、ベンゼンスルホン酸、又は直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜22のアルキル基を持つモノ、ジ、又はトリアルキル化したベンゼンスルホン酸、又はナフタレンモノスルホン酸又はポリスルホン酸を挙げることができ、分子量が小さいほど反応仕込み量が少なくなり、蒸留で製品を精製する際の残渣が低減できる観点から、好ましくは直鎖状のアルキル基を持つモノアルキルベンゼンスルホン酸が挙げられる。
スルホン酸類の具体例としては、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、p−エチルベンゼンスルホン酸、n−プロピルベンゼンスルホン酸、n−ブチルベンゼンスルホン酸、n−ヘキシルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、n−ドデシルベンゼンスルホン酸、セチルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸、トリイソブチルベンゼンスルホン酸、n−ブチルナフタリンスルホン酸、n−オクタンスルホン酸、n−ドデシルスルホン酸、オクタデシルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、1−ペルフルオロブタンスルホン酸、1−ペルフルオロヘキサンスルホン酸、1−ペルフルオロオクタンスルホン酸等を挙げることができ、スルホン酸類の反応性の観点から、好ましくは、トルエンスルホン酸、p−エチルベンゼンスルホン酸、n−プロピルベンゼンスルホン酸、n−ブチルベンゼンスルホン酸、n−ヘキシルベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、1−ペルフルオロブタンスルホン酸、1−ペルフルオロヘキサンスルホン酸を挙げることができる。
脂肪族カルボン酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数は1〜5)の具体例としては、前記脂肪族モノカルボン酸、あるいは脂肪族ジカルボン酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル等の各エステルを挙げることができ、これらのうち、上記と同様の観点から、メチル、エチルの各エステルが好ましい。
触媒となる亜鉛、コバルト、チタン及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の化合物とスルホン酸類において、前記金属化合物の使用量は、触媒活性とニトリル収率の観点から、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸又はこれらのアルキルエステルに対して0.01〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜15質量%、さらに好ましくは0.05〜10質量%の範囲である。
回分式あるいは半回分式を用いた製造方法では、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及び/又はこれらのアルキルエステルを溶解させ、所定量の触媒を仕込み、反応槽を充分に窒素置換した後、反応温度まで昇温させた後にアンモニアガスを流入させる方法が使用できる。
連続式、固定床流通式を用いた製造方法では、触媒を充填し、反応温度まで昇温させた後に溶解した脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸又はこれらのアルキルエステルとアンモニアガスを流入させる方法が使用できる。
また、前記反応工程で得られた反応液から目的物の脂肪族ニトリルを分離精製する方法は特に限定されないが、例えば、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの公知の方法や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
本発明の脂肪族アミンの製造方法においては、上記製造方法で脂肪族ニトリルを製造し(工程(イ))、得られた脂肪族ニトリルを原料とし、水素化触媒の存在下で水素化反応を行う(工程(ロ))。
工程(ロ)において用いる水素化触媒としては、公知の水素化触媒、例えばコバルト系触媒、ニッケル系触媒、銅系触媒、貴金属系触媒をいずれも使用することができる。反応性、選択性の点から、好ましくは、ニッケル、コバルト、及び/又はルテニウムを主成分とする触媒を用いることができ、より好ましくはラネー型触媒あるいはシリカ、アルミナ、シリカアルミナ、珪藻土、活性炭などの多孔性金属酸化物に担持した触媒が使用される。また、更にアルミニウム、亜鉛、珪素等の金属を含有していてもよい。これらの水素化触媒は反応促進剤として、クロム、鉄、コバルト、マンガン、タングステン、モリブデンから選ばれる金属を含有できる。
本発明における水素化触媒の使用量は、反応性、選択性の点から、脂肪族ニトリルに対して、好ましくは0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜3質量%である。
反応圧力は、好ましくは水素圧0.1〜5MPaG、より好ましくは0.5〜4MPaG、さらに好ましくは0.8〜3MPaGである。反応温度は、反応性、選択性の観点から、好ましくは50〜200℃、より好ましくは80〜170℃、さらに好ましくは100〜140℃であり、水素化反応中に連続的又は段階的に反応温度を上昇させることが好ましい。
実施例1
撹拌器、ガス導入管、温度計及び脱水装置を装備した四つ口セパラブルフラスコに、硬化牛脂脂肪酸(主な組成:C14=3.8%,C16=28.7%,C18=61.9%)500gと酸化亜鉛0.5g(対脂肪酸0.10質量%)及びp−トルエンスルホン酸一水和物0.59g(0.12質量%(対脂肪酸)、0.25当量(対亜鉛))を仕込み、500r/mで撹拌した。該溶液に210℃より毎分1000mlのアンモニアガスを流通して300℃まで昇温し、この温度で一定にして反応させた。
アンモニアガスを流通してから3時間後に得られた反応生成物をガスクロマトグラフィー[ガスクロ装置:HEWLETT PACKARD Series 6890、カラム:J & W Scientific 製HP-5(カラム内径×長さ:0.25mm×60m)、カラム温度は初期値120℃で2分間保持し、昇温速度:8℃/minで300℃まで昇温し、その後300℃で5.5分間保持した、検出器:FID検出器]で組成分析して硬化牛脂ニトリルの生成量を測定した。結果を表1に示す。尚、反応終了時間は、アンモニアガスを流通してから、上記のガスクロマトグラフィーの測定で脂肪族アミドの生成量が検出限界以下になるまでの時間である。
実施例1において、p−トルエンスルホン酸一水和物を加えないで酸化亜鉛のみ用いた以外は実施例1と同様にして反応を行い、反応生成物を実施例1と同様に分析した。結果を表1に示す。
実施例1において、硬化牛脂脂肪酸に代えて蒸留牛脂脂肪酸(主な組成:C16=27.1%,C16:1=2.4%,C18=21.3%,C18:1=36.9%,C18:2=2.3%)500gを用いて、更に酸化亜鉛に代えてステアリン酸コバルト、水酸化アルミニウム又はテトライソプロポキシチタンをそれぞれ用いて、各々表1に示した使用量とし、またp−トルエンスルホン酸一水和物の使用量を表1に示すようにした以外は実施例1と同様にして反応を行い、反応生成物を実施例1と同様に分析した。結果を表1に示す。
比較例1において、硬化牛脂脂肪酸に代えて蒸留牛脂脂肪酸500gを用いて、更に酸化亜鉛に代えてステアリン酸コバルト、水酸化アルミニウム又はテトライソプロポキシチタンをそれぞれ用いて、各々表1に示した使用量とした以外は比較例1と同様にして反応を行い、反応生成物を比較例1と同様に分析した。結果を表1に示す。
実施例1において、硬化牛脂脂肪酸に代えて蒸留牛脂脂肪酸500gを用いて、更にp−トルエンスルホン酸一水和物0.59gに代えてトリフルオロメタンスルホン酸0.15g(0.03質量%(対脂肪酸)、0.08当量(対亜鉛))を用いた以外は実施例1と同様にして反応を行い、反応生成物を実施例1と同様に分析した。アンモニアガスを流通してから、3時間後のニトリル生成量は98.6%であり、上記のガスクロマトグラフィーの測定で脂肪族アミドの生成量が検出限界以下になるまでの時間(反応終了時間)は3.6時間であった。
比較例1において、硬化牛脂脂肪酸に代えて蒸留牛脂脂肪酸500gを用いた以外は比較例1と同様にして反応を行い、反応生成物を比較例1と同様に分析した。アンモニアガスを流通してから、3時間後のニトリル生成量は97.0%であり、上記のガスクロマトグラフィーの測定で脂肪族アミドの生成量が検出限界以下になるまでの時間(反応終了時間)は4.1時間であった。
実施例1で、p−トルエンスルホン酸一水和物の使用量を0.59gから1.17g(0.23質量%(対脂肪酸)、0.50当量(対亜鉛))に代えた以外は実施例1と同様にして反応を行い、反応生成物を実施例1と同様に分析した。3時間後のニトリル生成量は99.5%であり、上記のガスクロマトグラフィーの測定でアンモニアガスを流通してから、脂肪族アミドの生成量が検出限界以下になるまでの時間(反応終了時間)は3.1時間であった。
また、上記反応で得られた触媒を含んだ反応生成物を、温度計、キャピラリー管、冷却管、留分受器及び真空計を装備したガラス容器に仕込み、系内を0.53kPaまで減圧にして徐々に昇温し、ボトム温度が最高240℃になるまで蒸留を行った。得られたオレオニトリルの蒸留収率は95.0%であった。
実施例1において、硬化牛脂脂肪酸に代えてステアリン酸メチル(純度98.5%)500gを用いた以外は実施例1と同様にして反応を行い、反応生成物を実施例1と同様に分析した。アンモニアガスを流通してから、4時間後のステアロニトリル生成量は87.9%であり、上記のガスクロマトグラフィーの測定で脂肪族アミドの生成量が検出限界以下になるまでの時間(反応終了時間)は6.3時間であった。
比較例1において、硬化牛脂脂肪酸に代えてステアリン酸メチル(純度98.5%)500gを用いた以外は比較例1と同様にして反応を行い、反応生成物を比較例1と同様に分析した。アンモニアガスを流通してから、4時間後のステアロニトリル生成量は81.1%であり、上記のガスクロマトグラフィーの測定で脂肪族アミドの生成量が検出限界以下になるまでの時間(反応終了時間)は7.1時間であった。
撹拌器、ガス導入管、温度計及び脱水装置を装備した四つ口セパラブルフラスコに、椰子脂肪酸(主な組成:C8=5.8%,C10=6.0%,C12=49.1%,C14=19.3%,C16=9.6%,C18:1=5.8%)500gと酸化亜鉛1.0g(対脂肪酸0.20質量%)及びp−トルエンスルホン酸一水和物1.17g(0.23質量%(対脂肪酸)、0.25当量(対亜鉛))を仕込み、500r/mで撹拌した。該溶液に210℃より毎分1300mlのアンモニアガスを流通して280℃まで昇温し、この温度で一定にして反応させた。
アンモニアガスを流通してから3時間後に得られた反応生成物を実施例1と同様に分析を行い、ニトリルの生成量は96.3%であった。上記のガスクロマトグラフィーの測定で脂肪族アミドの生成量が検出限界以下になるまでの時間(反応終了時間)は3.8時間であった。
実施例8において、p−トルエンスルホン酸一水和物を仕込まないで酸化亜鉛1.0gのみを用いた以外は実施例8と同様にして反応を行い、反応生成物を実施例8と同様に分析した。アンモニアガスを流通してから、3時間後のニトリル生成量は77.3%であり、上記のガスクロマトグラフィーの測定で脂肪族アミドの生成量が検出限界以下になるまでの時間(反応終了時間)は5.9時間であった。
実施例1において、硬化牛脂脂肪酸に代えてオレイン酸(花王製ルナックO−A)500gを用いてp−トルエンスルホン酸一水和物の使用量を0.59gから2.34g(0.47質量%(対脂肪酸)、1.00当量(対亜鉛))に代えた以外は実施例1と同様にして反応を行った。上記のガスクロマトグラフィーの測定より、アンモニアガスを流通してから脂肪族アミドの生成量が検出限界以下になるまでの時間(反応終了時間)は2.9時間であった。
また、上記反応で得られた反応生成物を、温度計、キャピラリー管、冷却管、留分受器及び真空計を装備したガラス容器に仕込み、系内を0.53kPaまで減圧にして徐々に昇温し、留分が出なくなるまで(ボトム最高温度:240℃)蒸留を行った。得られたオレオニトリルの蒸留収率を表2に示す。
実施例9において、p−トルエンスルホン酸一水和物を表2に示した使用量とした以外は実施例9と同様にして反応を行い、実施例9と同様の測定から反応終了時間を求めた。また、得られた反応生成物は実施例9と同様の蒸留操作を行った。結果を表2に示す。
実施例1で得られた生成物400g、ラネーニッケル触媒1.4g、48%NaOH 0.8g及びイオン交換水8.8gをオートクレーブに仕込んだ後、オートクレーブの空間部を水素置換し、水素圧1.9MPaGに調整した後、135℃まで昇温して反応を行った。反応終点は水素圧吸収がなくなった時点とし、さらに熟成を30分行った。水素吸収は円滑に進行し、 2.2時間で吸収が完了した。反応・熟成終了後、反応物を反応槽から抜き出し、触媒を除去した後、0.27kPa、 220℃で蒸留精製を行い、硬化牛脂アミンを96%の収率で得た。
Claims (6)
- 亜鉛、コバルト、チタン及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の化合物とスルホン酸類の存在下で、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及びこれらのアルキルエステル(アルキル基の炭素数が1〜5)からなる群から選ばれる少なくとも一種とアンモニアとを反応させる脂肪族ニトリルの製造方法であって、スルホン酸類の使用量が、亜鉛、コバルト、チタン及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属1当量に対して0.05〜0.6当量である、脂肪族ニトリルの製造方法。
- 亜鉛、コバルト、チタン及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の化合物の使用量が、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及びこれらのアルキルエステル(アルキル基の炭素数が1〜5)に対して、0.01〜20質量%である、請求項1に記載の脂肪族ニトリルの製造方法。
- スルホン酸類が、アルキル基で置換されてもよいアリールスルホン酸又はアルキルスルホン酸である、請求項1又は2に記載の脂肪族ニトリルの製造方法。
- 亜鉛、コバルト、チタン及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の化合物が、該金属の酸化物、水酸化物、カルボン酸塩又はアルコキシドである、請求項1〜3のいずれかに記載の脂肪族ニトリルの製造方法。
- 脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及びこれらのアルキルエステル(アルキル基の炭素数が1〜5)からなる群から選ばれる少なくとも一種とアンモニアとを、180〜400℃の温度で反応させる、請求項1〜4のいずれかに記載の脂肪族ニトリルの製造方法。
- 下記工程を有する脂肪族アミンの製造方法。
(イ)請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により脂肪族ニトリルを得る工程
(ロ)得られた脂肪族ニトリルを、水素化触媒の存在下で水素化反応を行う工程
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