しかしながら、特許文献1では、同一形状に打抜いた電磁鋼板を積層しているので、ティース形状が限定されてしまうという問題や、複雑なティース形状を実現しようとした場合に、打抜き金型が多数必要になってしまうという問題がある。
特に、モータを高効率化するためには、ティースとコイルとを高密度に配置する必要があり、特に、ティース間の隙間(いわゆるスロット)を径方向に等幅とすることで、巻線占積率及びティースの断面積を十分に確保することが要請される。ところが、特許文献1では、ティース形状に関する制約が大で、このような要請に応えることは難しい。
また、特許文献2のように、異なる方向に積層した電磁鋼板を単に組合わせるだけでは、打抜き金型が複数必要となり、特に、ティース形状を好ましい複数種の形状に形成しようとする場合に、多くの金型が必要になるという問題がある。
また、特許文献3では、ラジアルギャップ型のモータにおいて、圧粉磁心と積層鋼板とを組合わせる技術が開示されているが、アキシャルギャップ型のモータは、磁束の流れが基本的に2次元的なラジアルギャップ型のモータとは異なるので、これをアキシャルギャップ型のモータの技術に適用することはできない。
上記の課題を解決するため、本件発明者によって、積層鋼板によって形成されたバックヨークに、圧粉磁心によって形成されたティースを結合したステータコアを有するモータが提案されている。なお、本内容は、未公開である。しかしながら、圧粉磁心の磁気特性としては、未だヒステリシス損が大きく、飽和磁束密度が低い。このため、例えば、希土類磁石のようなエネルギー積の大きい永久磁石を用いて大きいトルクを発生させようとする場合や、特に高速回転を求められない場合(例えば、駆動周波数が1kHz〜5kHzよりも小さい場合)においては、圧粉鉄心を用いた構成では、十分な特性を得られない場合があった。
そこで、本発明の第1の課題は、アキシャルギャップ型モータにおいて、なるべく多くの部分を積層鋼板で形成すると共に圧粉磁心の使用部分をなるべく減らしつつ、比較的低回転数でかつ大きなトルクを発生する場合でも低鉄損及び低銅損にできるようにすることである。また、第2の課題は、上記第1の課題に加えて、巻線占積率及びティースの断面積を十分に確保しつつ、積層鋼板部分をなるべく少ない打抜き金型で形成できるようにすることである。
上記課題を解決するため、このアキシャルギャップ型モータは、回転軸(18a)を有するアキシャルギャップ型モータ(10、310、410、510)であって、界磁子(20、320、520)と、電機子コア(32)と、前記電機子コアに取付けられたコイル(40,42、40C,42C、40D,42D、640U1,640V1,640W1,640U2,640V2,640W2、640BU1,640BV1,640BW1、740U,740V,740W、740BU,740BV,740BW)とを有し、前記界磁子にギャップを介して対向する電機子(30、130、130B、230、330、430、430B、530、630、730)と、を備え、前記電機子コアは、略円盤状のバックヨーク(34、34B、34C、34D、434、434C、434D)と、前記バックヨークのうち前記界磁子と対向する側の面から突出するように、前記回転軸周りに配設された複数個のティース(36,38、36B、38C、38D、36F,38F,438C)と、を有し、前記複数個のティースは、薄板が前記回転軸と略直交する方向に積層された積層鋼板で形成された複数の積層鋼板ティース(36、36B、36F)と圧粉磁心で形成された複数の圧粉ティース(38、38C、38D、38F、438C)とを含むものである。
この場合に、前記バックヨーク(34、34B、34C、34D、434、434C、434D)は、前記回転軸に略直交する薄板が前記回転軸方向に積層された積層鋼板で形成されていてもよい。
また、前記複数のティースは、前記各圧粉ティース(36)と、前記各積層鋼板ティース(38)とを同数含み、前記各圧粉ティースと前記各圧粉ティースとが前記回転軸周りに交互に配設され、前記各積層鋼板ティースが前記回転軸と略直交する平面において略四角形状の断面形状部分を有すると共に、前記圧粉ティースが、前記回転軸と略直交する平面において、隣設する前記積層鋼板ティースの断面部分の辺と略平行な2辺(38a)と、前記略平行な2辺同士を前記バックヨークの外周側で繋ぐ辺(38b)とで囲まれる断面形状部分を有していてもよい。
また、前記複数のティースは、n個(nは2以上の整数)の圧粉ティース(36C)と、(n×h)個(hは2以上の整数)の積層鋼板ティース(38C)を含み、前記n個の圧粉ティースが前記回転軸周りに間隔をあけて配設されると共に、前記各圧粉ティースのn個の各間に、前記各積層鋼板ティースがh個ずつ間隔をあけて配設され、前記各積層鋼板ティースが前記回転軸と略直交する平面において略四角形状の断面形状部分を有すると共に、前記圧粉ティースが、前記回転軸と略直交する平面において、隣設する前記積層鋼板ティースの断面部分の辺と略平行な2辺と、前記略平行な2辺同士を前記バックヨークの外周側で繋ぐ辺とで囲まれる断面形状部分を有していてもよい。
この場合、前記バックヨーク(34C)のうち隣設するh個の積層鋼板ティースの外周側部分に、除去部(34Ca)が形成されていてもよい。
また、前記複数のティースは、m個(mは2以上の整数)の積層鋼板ティース(36D)と、m×i個(iは2以上の整数)の圧粉ティース(38D)と、を含み、前記m個の積層鋼板ティースが前記回転軸周りに間隔をあけて配設されると共に、前記各積層鋼板ティースのm個の各間に、前記各圧粉ティースがi個ずつ間隔をあけて配設され、前記各積層鋼板ティースが前記回転軸と略直交する平面において略四角形状の断面形状部分を有すると共に、前記圧粉ティースが、前記回転軸と略直交する平面において、隣設された前記圧粉ティース又は前記積層鋼板ティースの断面部分の辺と略平行な2辺と、前記略平行な2辺同士を前記バックヨークの外周側で繋ぐ辺とで囲まれる断面形状部分を有していてもよい。
また、前記バックヨーク(34、34B)は、前記各積層鋼板ティース及び前記各圧粉ティースが部分的に、前記バックヨークの厚み方向全体又は一部に埋設される嵌合凹部(35a,35b、35Ba,35Bb)を有していてもよい。
また、前記回転軸と略直交する平面において、前記各積層鋼板ティース(36)のうち前記コイルの巻回位置に応じた部分の断面積と、前記各圧粉ティース(38)のうち前記コイルの巻回位置に応じた部分の断面積とが略同一であってもよい。
また、前記回転軸と略直交する平面において、前記各積層鋼板ティース(36)のうち前記コイルの巻回位置に応じた部分の断面積は、前記各圧粉ティース(38)のうち前記コイルの巻回位置に応じた部分の断面積より小さくてもよい。
また、前記各積層鋼板ティース(36B)の積層方向は、前記バックヨークの径方向に略直交する方向であってもよい。
また、前記各積層鋼板ティース(36)の積層方向は、前記バックヨークの径方向であってもよい。
また、前記積層鋼板ティース(36)を構成する前記薄板は、磁気特性の良好な方向が前記回転軸方向に略平行な方向性電磁鋼板であってもよい。
また、前記回転軸に略直交する平面において、前記圧粉ティース(38)のうちの前記コイルの巻回位置に応じた部分の断面積形状は、丸められた角部形状を有していてもよい。
また、前記各積層鋼板ティース(36E、36F)は、前記界磁子と対向する部分を幅広にした薄板を複数積層することで形成されていてもよい。
また、前記各圧粉ティース(38F)のうち前記界磁子と対向する部分が幅広に形成されていてもよい。
また、前記電機子は、前記各積層鋼板ティースの前記界磁子側端部に取付けられ、前記積層鋼板ティースよりも幅広の第1磁性体部(250,250B,450B)と、前記各圧粉ティースの前記界磁子側端部に取付けられ、前記圧粉ティースよりも幅広の第2磁性部(250,252B,452B)とを有し、前記各第1磁性体部と前記各第2磁性体部とが、磁気的に独立した状態で連結された略円盤状の磁性体板部材(254,254B,454B)を備えていてもよい。
また、前記電機子は、前記各積層鋼板ティースの前記界磁子側端部に取付けられ、前記積層鋼板ティースよりも幅広の第1磁性体部(150,150B)と、前記各圧粉ティースの前記界磁子側端部に取付けられ、前記圧粉ティースよりも幅広の第2磁性部(152,152B)とを有し、前記各第1磁性体部及び前記各第2磁性体部は、前記各積層鋼板ティースの前記界磁子側端部及び前記各圧粉ティースの前記界磁子側端部が嵌め込まれる凹部(150a,152a)又は孔部(150Ba,152Ba)を有していてもよい。
また、前記各積層鋼板ティースの前記界磁子側端部と前記各圧粉ティースの前記界磁子側端部とに、それぞれ幅広磁心が設けられており、前記各幅広磁心間のスリット(254Bs)が、前記バックヨークの径方向に対して傾斜する方向に延在していてもよい。
また、前記界磁子(320、520)の両側に設けられた2つの前記電機子(330,330、530,530)を備え、一方の前記電機子の前記各積層鋼板ティース(36)が、他方の前記電機子の前記各圧粉ティース(38)に対向すると共に、一方の前記電機子の前記各圧粉ティース(38)が、他方の前記電機子の前記各積層鋼板ティース(36)に対向していてもよい。
また、前記界磁子(320、520)は、前記両電機子に対して磁極を呈する永久磁石(324)を有していてもよい。
また、前記各コイル(640U1,640V1,640W1,640U2,640V2,640W2、640BU1,640BV1,640BW1)は、前記各積層鋼板ティース及び前記各圧粉ティースの複数のティース(36,38)に亘って分布巻された3相巻線であってもよい。
また、前記各コイル(640U1,640V1,640W1,640U2,640V2,640W2、640BU1,640BV1,640BW1)は、前記各積層鋼板ティース(36)の角部に沿って曲げられるように巻回されていてもよい。
また、前記各コイル(740U,740V,740W、740BU,740BV,740BW)は、前記各積層鋼板ティース及び前記各圧粉ティースの複数に亘って波巻された3相巻線であってもよい。
また、前記各コイル(740U,740V,740W、740BU,740BV,740BW)は、前記各積層鋼板ティース(36)の角部に沿って曲げられると共に、前記各圧粉ティース(38)の角部で略90゜以上の角度で曲げられていてもよい。
また、前記各コイル(40,42)は、前記各積層鋼板ティース及び前記各圧粉ティースのそれぞれに集中巻された3相巻線であってもよい。
また、前記各コイル(40)は、前記各積層鋼板ティース(36)だけに集中巻された3相巻線であってもよい。
さらに、前記各圧粉ティース(38)は、前記各積層鋼板ティース(36)よりも外周側であって、前記各積層鋼板ティースに巻回された各コイル(40)の隙間となる位置に設けられていてもよい。
また、前記各積層鋼板ティースの前記界磁子側端部と前記各圧粉ティースの前記界磁子側端部とに、それぞれ幅広磁心(450B,452B)が設けられており、前記各幅広磁心は、前記各積層鋼板ティース及び前記各圧粉ティースの最外周側部分と略同じ径方向位置又はそれよりも外周側の外周部と、前記各積層鋼板ティース及び前記各圧粉ティースの最内周側部分と略同じ径方向位置又はそれよりも内周側の外周部とを有していてもよい。
また、前記バックヨーク(434D)の外周部に前記各圧粉ティース(36)をその外周側から嵌合可能な嵌合凹部(434Da)が形成され、前記各圧粉ティースが前記バックヨークの各嵌合凹部に嵌合されて前記バックヨークに固定されていてもよい。
さらに、前記回転軸と略直交する平面において、前記各圧粉ティース(438C)の断面形状のうち、前記各積層鋼板ティースに巻回されたコイル(40)に対向する部分は、その内側に凹んだ略円弧状形状に形成されていてもよい。
また、前記界磁子は、前記各積層鋼板ティースの前記界磁子側端面の径方向全体及び前記圧粉ティースの界磁子側端面の径方向全体と、対向可能な界磁子側磁性体部材(26)を有していてもよい。
このアキシャルギャップ型モータによると、前記複数個のティースは、薄板が前記回転軸と略直交する方向に積層された積層鋼板で形成された複数の積層鋼板ティースと圧粉磁心で形成された複数の圧粉ティースとを含んでいるため、圧粉磁心の使用部分をなるべく減らすことができる。また、積層鋼板ティースでヒステリシス損を小さくしかつ飽和磁束密度を大きくできるので、比較的低回転数でかつ大きなトルクを発生する場合でも低鉄損及び低銅損にできる。これにより第1の課題が実現される。
また、前記バックヨークが、前記回転軸に略直交する薄板が前記回転軸方向に積層された積層鋼板で形成されていると、圧粉磁心の使用部分をより減らすことができる。
また、積層鋼板ティースと圧粉ティースとが同数ある場合の形態としては、それらを前記回転軸周りに交互に配設し、前記各積層鋼板ティースが前記回転軸と略直交する平面において略四角形状の断面形状部分を有すると共に、前記圧粉ティースが、前記回転軸と略直交する平面において、隣設する前記積層鋼板ティースの断面部分の辺と略平行な2辺と、前記略平行な2辺同士を前記バックヨークの外周側で繋ぐ辺とで囲まれる断面形状部分を有すると、各積層鋼板ティースと各圧粉ティース間の隙間を等幅とすることで、巻線占積率及びティースの断面積を十分に確保することができる。また、前記各積層鋼板ティースが、前記回転軸と略直交する平面において略四角形状の断面形状部分を有しているため、そのような積層鋼板ティースをより少ない打抜き金型で形成することができる。これにより、第2の課題が実現される。
また、圧粉ティースの数よりも積層鋼板ティースの数が多い場合には、n個の圧粉ティースが前記回転軸周りに間隔をあけて配設されると共に、前記各圧粉ティースのn個の各間に、前記各積層鋼板ティースがh個ずつ間隔をあけて配設されるようにするとよい。そして、前記各積層鋼板ティースが前記回転軸と略直交する平面において略四角形状の断面形状部分を有すると共に、前記圧粉ティースが、前記回転軸と略直交する平面において、隣設する前記積層鋼板ティースの断面部分の辺と略平行な2辺と、前記略平行な2辺同士を前記バックヨークの外周側で繋ぐ辺とで囲まれる断面形状部分を有すると、各積層鋼板ティースと各圧粉ティース間の隙間を等幅とすることで、巻線占積率及びティースの断面積を十分に確保することができる。また、前記各積層鋼板ティースが、前記回転軸と略直交する平面において略四角形状の断面形状部分を有しているため、そのような積層鋼板ティースをより少ない打抜き金型で形成することができる。これによっても、第2の課題が実現される。加えて、積層鋼板ティースの数をより増やして、圧粉磁心部分をより減らすことができる。
また、前記バックヨークのうち隣設するh個の積層鋼板ティースの外周側部分に、除去部が形成されていると、当該除去部を利用して冷却効果の向上を図ることができる。
また、積層鋼板ティースの数よりも圧粉ティースの数の方が多い場合には、前記m個の積層鋼板ティースが前記回転軸周りに間隔をあけて配設されると共に、前記各積層鋼板ティースのm個の各間に、前記各圧粉ティースがi個ずつ間隔をあけて配設されるようにするとよい。そして、前記各積層鋼板ティースが前記回転軸と略直交する平面において略四角形状の断面形状部分を有すると共に、前記圧粉ティースが、前記回転軸と略直交する平面において、隣設された前記圧粉ティース又は前記積層鋼板ティースの断面部分の辺と略平行な2辺と、前記略平行な2辺同士を前記バックヨークの外周側で繋ぐ辺とで囲まれる断面形状部分を有するようにすることで、各積層鋼板ティースと各圧粉ティース間の隙間を等幅にして、巻線占積率及びティースの断面積を十分に確保することができる。また、前記各積層鋼板ティースが、前記回転軸と略直交する平面において略四角形状の断面形状部分を有しているため、そのような積層鋼板ティースをより少ない打抜き金型で形成することができる。これにより、第2の課題が実現される。加えて、各コイルの内周側及び外周側の位置を比較的揃えることができる。
また、前記バックヨークは、前記各積層鋼板ティース及び前記各圧粉ティースが部分的に、前記バックヨークの厚み方向全体又は一部に埋設される嵌合凹部を有する構成とすることで、各ティースを強固に一定位置に保持することができる。また、バックヨークと各ティース間で磁束が円滑に通過する。
また、前記回転軸と略直交する平面において、前記各積層鋼板ティースのうち前記コイルの巻回位置に応じた部分の断面積と、前記圧粉ティースのうち前記コイルの巻回位置に応じた部分の断面積とが略同一であると、各ティースでの飽和磁束密度が略同じである場合に、各ティースで磁束密度を略均一にすることで、各ティースでの磁気飽和を緩和すると共に、ティース部分を必要最低限にして、巻線スペースをなるべく大きく確保できる。
前記回転軸と略直交する平面において、前記各積層鋼板ティースのうち前記コイルの巻回位置に応じた部分の断面積は、前記各圧粉ティースのうち前記コイルの巻回位置に応じた部分の断面積より小さいと、圧粉ティースの飽和磁束密度が小さい場合に、各ティースで磁気抵抗が同じになるように近づけて、各ティースでの磁気飽和を緩和すると共に、ティース部分を必要最低限にして、巻線スペースをなるべく大きく確保できる。
また、前記各積層鋼板ティースの積層方向は、前記バックヨークの径方向に略直交する方向であると、ティース数が多い場合に、すなわち、ティースの径方向長さより周方向長さが小さい場合、積層数を少なくして容易に積層鋼板ティースを製造することができる。
前記各積層鋼板ティースの積層方向が、前記バックヨークの径方向であると、バックヨークを介して隣設するティースを通過する磁束の流れに沿って、薄板を配設することができる。特に、積層鋼板ティースがバックヨークに埋設された部分において、磁気抵抗を小さくできる。
また、前記積層鋼板ティースを構成する前記薄板は、磁気特性の良好な方向が前記回転軸方向に略平行な方向性電磁鋼板であると、積層鋼板ティースの透磁率を向上させて、積層鋼板ティースをより小型化できると共に、鉄損も低減できる。
前記圧粉ティースの断面積形状が、丸められた角部形状を有していると、ティースでコイルの巻太りを防止して、巻線占積率をさらに向上させることができる。
また、前記各積層鋼板ティースは、前記界磁子と対向する部分を幅広にした薄板を複数積層することで形成されていると、その幅広部分の積層部分によって、つばを構成することができる。これにより、界磁子と電機子間でのギャップパーミアンスを高くして、界磁子側からの磁束を多く電機子側で鎖交させることができる。また、積層鋼板ティースの形成と同時に容易につばを形成できる。
また、前記圧粉ティースのうち前記界磁子と対向する部分が幅広に形成されていると、その幅広部分によって、つばを構成することができる。これにより、界磁子と電機子間でのギャップパーミアンスを高くして、界磁子側からの磁束を多く電機子側で鎖交させることができる。また、圧粉ティースの形成と同時に容易につばを形成できる。
また、前記電機子は、前記各積層鋼板ティースの前記界磁子側端部に取付けられ、前記積層鋼板ティースよりも幅広の第1磁性体部と、前記圧粉ティースの前記界磁子側端部に取付けられ、前記圧粉ティースよりも幅広の第2磁性体部とを有し、前記第1磁性体部と前記第2磁性体部とが、磁気的に独立した状態で配設されていると、その各磁性体部によって界磁子と電機子間でのギャップパーミアンスを高くして、界磁子側からの磁束を多く電機子側で鎖交させることができる。また、前記各第1磁性体部と前記各第2磁性体部とが、磁気的に独立した状態で連結された略円盤状の磁性体板部材とされているため、取扱いも容易である。
また、前記各第1磁性体部及び前記各第2磁性体部は、前記各積層鋼板ティースの前記界磁子側端部及び前記各圧粉ティースの前記界磁子側端部が嵌め込まれる凹部又は孔部を有していると、各積層鋼板ティース及び各圧粉ティースと、各磁性体部とを容易に位置決めして強く結合させることができる。また、その各磁性体部によって界磁子と電機子間でのギャップパーミアンスを高くして、界磁子側からの磁束を多く電機子側で鎖交させることができる。
前記各積層鋼板ティースの前記界磁子側端部と前記各圧粉ティースの前記界磁子側端部とに、それぞれ幅広磁心が設けられており、前記各幅広磁心間のスリットが、前記バックヨークの径方向に対して傾斜する方向に延在していると、いわゆるスキューによって、コギングトルクを低減できる。
また、一方の前記電機子の前記各積層鋼板ティースが、他方の前記電機子の前記各圧粉ティースに対向すると共に、一方の前記電機子の前記各圧粉ティースが、他方の前記電機子の前記各積層鋼板ティースに対向していると、各磁気回路において、磁束が積層鋼板ティース及び圧粉ティースを同数経由することなる。このため、電機子極間の磁束量等をバランスよくすることができる。
前記界磁子は、前記両電機子に対して磁極を呈する永久磁石を有していると、各磁気回路において、磁束が界磁子の永久磁石を貫通して両電機子間を通過することになる。このため、電機子極間の磁束量等をよりバランスよくすることができる。
前記各コイルが、前記各積層鋼板ティース及び前記各圧粉ティースのうちの複数に亘って分布巻された3相巻線であると、磁束の空間高調波を少なくして、振動、騒音を少なくすることができる。
また、前記各コイルは、前記各積層鋼板ティースの角部で曲げられるように巻回されていると、コイルの曲げ角度が鋭角とならず略90゜になる。これにより、コイルの巻太りを防止できると共に、コイルの周長を小さくすることができる。
また、前記各コイルは、前記各積層鋼板ティース及び前記各圧粉ティースの複数に亘って波巻された3相巻線であると、磁束の空間高調波を少なくして、振動、騒音を少なくすることができる。また、コイル数を減らすと共に、コイルの総周長も減らすことができる。
また、前記各コイルが、前記各積層鋼板ティースの角部に沿って曲げられると共に、前記各圧粉ティースの角部で略90゜以上の角度で曲げられていると、コイルの巻太りを防止できると共に、コイルの周長を小さくすることができる。
また、前記各コイルは、前記各積層鋼板ティース及び前記各圧粉ティースのそれぞれに集中巻された3相巻線であると、各コイルを重なり合わずに配設することができるので、モータの全体サイズの小型化が可能になる。
また、前記各コイルは、前記各積層鋼板ティースだけに集中巻された3相巻線であると、各コイルを重なり合わずに配設することができるので、モータの全体サイズの小型化が可能になる。また、コイルを鋭角で曲げずに巻回することができる。さらに、コイル数を少なくすることができるため、この点からも小型化を図ることができる。
また、前記各圧粉ティースが、前記各積層鋼板ティースよりも外周側であって、前記各積層鋼板ティースに巻回された各コイルの隙間となる位置に設けられていると、各コイル間の隙間を有効利用して、圧粉ティースを設けることができる。
また、前記各幅広磁心は、前記各積層鋼板ティース及び前記各圧粉ティースの最外周側部分と略同じ径方向位置又はそれよりも外周側の外周部と、前記各積層鋼板ティース及び前記各圧粉ティースの最内周側部分と略同じ径方向位置又はそれよりも内周側の外周部とを有すると、各ティースと界磁子間で磁束を漏れ少なく通過させることができる。
また、前記各圧粉ティースが前記バックヨークの各嵌合凹部に嵌合されて前記バックヨークに固定されていると、各圧粉ティースをバックヨークにその外周側から容易に嵌め込むようにして固定できる。
前記各圧粉ティースの断面形状のうち、前記各積層鋼板ティースに巻回されたコイルに対向する部分は、その内側に凹んだ略円弧状形状に形成されていると、積層鋼板ティースに巻回されたコイルの巻太り形状を考慮して、各コイル間でなるべく隙間を無くして、圧粉ティースを配設することができる。
また、前記界磁子が、前記各積層鋼板ティースの前記界磁子側端面の径方向全体及び前記圧粉ティースの界磁子側端面の径方向全体と、対向可能な界磁子側磁性体部材を有していると、各ティースと界磁子間で磁束を漏れ少なく通過させることができる。
{第1実施形態}
以下、第1実施形態に係るアキシャルギャップ型モータについて説明する。図1はアキシャルギャップ型モータの要部断面を示す図であり、図2はアキシャルギャップ型モータの要部分解斜視図であり、図3は同アキシャルギャップ型モータにおけるステータを示す斜視図であり、図4は同アキシャルギャップ型モータにおけるステータ及び磁性体板を示す平面図である。
このアキシャルギャップ型モータ10は、所定の回転軸18a回りの回転力を発生させるものであり、界磁子としてのロータ20と、電機子としてのステータ30とを備えている。
上記ステータ30は、略円盤状の全体形状を有し、ケーシング12内の一定位置に固定されている。
ロータ20も略円盤状の全体形状を有しており、上記ステータ30の一方面側(ここでは上面側)にギャップを介して配設されている。このロータ20はシャフト18に連結固定されており、当該シャフト18は、ステータ30を貫通して外方(ここでは下方)に向けて延出し、図示省略の軸受に回転自在に支持されている。これにより、ステータ30は、シャフト18の中心軸でもある上記回転軸18aを中心として回転自在に支持されている。そして、ロータ20の回転力がシャフト18を介して外部に伝達される。本モータは、界磁子としてのロータ20と、電機子としてのステータ30とが回転軸18a方向にギャップを隔てて対向する、アキシャルギャップ型モータである。
ステータ30は、電機子コアとしてのステータコア32と、ステータコア32に取付けられた複数のコイル40,42とを有している。このステータ30は、後述する各ティース36,38を上記ロータ20に向けた姿勢で、当該ロータ20に対してギャップを介して対向している。
ステータコア32は、略円盤状のバックヨーク34と、複数個のティース36,38とを有している。
バックヨーク34は、磁性体によって略円板状に形成されている。ここでは、回転軸18aに略直交する方向に延在する電磁鋼板等の薄板を、回転軸18a方向に積層した積層鋼板によって形成されている。積層される薄板は、例えば、珪素鋼板、その他、アモルファスやパーマロイ等の磁性材料で形成された薄板である。このバックヨーク34は、ケーシング12内に、圧入又は焼きばめ等によって取付固定されている。このようにバックヨーク34を積層鋼板で形成することで、圧粉磁心の使用部分をより減らすことができる。
なお、バックヨーク34の内径は、シャフト18と接触しない程度の大きさに形成されている。このバックヨーク34の略中央部にシャフト18を支持する軸受を設けてもよい。
上記複数個のティース36,38は、バックヨーク34のうちロータ20と対向する側の面から突出するように、回転軸18a周りに円環状に配設されている。各ティース36,38は、回転軸18a方向に沿ってロータ20側に突出しており、その突出部分周りにコイル40,42が巻回されている。つまり、各ティース36,38のそれぞれにコイル40,42が巻回された集中巻形態である。このような集中巻は、コイル40,42の巻回形態が簡易で、かつ、各コイル40,42を回転軸18a方向で重ね合せずに密に配設することができるので、モータの全体サイズの小型化、巻線として用いられる銅使用量を低減することができるというメリットがある。なお、各コイル40,42と各ティース36,38との間には、実際には、絶縁フィルム等の絶縁物が介在しているが、以下の説明では省略する。
より具体的には、各ティース36,38は合計12個あり、それぞれに合計12個のコイル40,42が集中巻されている。ちなみに、ロータ20は、8極の磁極を呈している。各コイル40,42は、例えば、ステータ30の周方向にそって、U相、V相、W相の順で繰返し配置されると共に、この3相のコイル40,42それぞれがスター結線されており、インバータ回路から電流が供給される。これにより、各コイル40,42で励磁して、各ティース36,38の突出方向の磁束を発生し、上記ロータ20が回転するようになっている。つまり、このアキシャルギャップ型モータ10は、集中巻8極12スロットに相当する。
また、これらの複数個のティース36,38は、複数個の積層鋼板ティース36と、圧粉ティース38とを含んでいる。
また、上記各ティース36,38は、複数の積層鋼板ティース36と、複数の圧粉ティース38とを含んでいる。
積層鋼板ティース36は、薄板が、回転軸18aと略直交する方向に積層された積層鋼板で形成されている。積層される薄板としては、珪素鋼板の他、アモルファスやパーマロイ等の磁性材料で形成された薄板であってもよい。これらは、必要な特性に応じて適宜選択される。また、積層される薄板としては、回転軸18a方向に略一致する磁化容易軸を持つ方向性電磁鋼板を用いるとよい。積層鋼板ティース36内の磁束の流れは、ほぼ回転軸18a方向に沿っているからである。また、同様の理由により、薄板として無方向性電磁鋼板を用いた場合には、圧延方向を軸方向に一致させて打抜くとよい。
また、積層鋼板ティース36は、回転軸18aと略直交する平面において略四角形状の断面形状部分を有している。ここでは、本実施形態では、積層鋼板ティース36の全体が略直方体状の形状を有している。また、積層鋼板ティース36のうち略四角形状の断面形状部分は、バックヨーク34の径方向に沿って長く、その径方向と略直交する方向で短くなっている。なお、積層鋼板ティース36は、コイル40の巻回部分に応じた部分で、上記略四角形状の断面形状部分であればよく、例えば、バックヨーク34に埋込まれる部分やロータ20と対向する部分等は、その他の断面形状であってもよい。もっとも、積層鋼板ティース36の全体が、回転軸18aと略直交する平面において、正方形や長方形等を含む平行四辺形状断面形状を有すること、すなわち、略同一形状の薄板を積層することで形成される構成であることが好ましい。
上記積層鋼板ティース36の積層方向についてより具体的に説明する。図5は積層鋼板ティースの積層方向を示す図である。同図に示すように、積層鋼板ティース36における薄板の積層方向としては、バックヨーク34の径方向rにするとよい。つまり、バックヨーク34を介して隣設するティース36,38を通過する磁束は、バックヨーク34の周方向に沿った方向成分が多いと考えられる。そこで、そのような磁束成分の磁路を積層間の隙間や絶縁層により妨げられないよう、積層方向をバックヨーク34の径方向にすることで、隣設するティース36,38間で、多くの磁束を通過させることができる。
図6は積層鋼板ティースの積層方向の他の例を示す図である。同図に示すように、この積層鋼板ティース36Bにおける薄板の積層方向は、バックヨーク34の径方向rに略直交する方向となっている。なお、この積層方向を除いて、積層鋼板ティース36Bは、積層鋼板ティース36と同様構成である。
つまり、ティース36B,38数が多い場合には、積層鋼板ティース36Bの上記断面形状が径方向rに沿って長くなる。そこで、積層方向を径方向rに略直交する方向にすることで、積層数を少なくして容易に積層鋼板ティース36を製造できる。
いずれにせよ、積層鋼板ティース36,36Bを、長方形断面形状部分のいずれかの辺方向、つまり、バックヨーク34の径方向r又はそれに直交する方向に積層した構成とすることで、同一形状の薄板を積層することで、積層鋼板ティース36,36Bを製造できる。つまり、より少ない種類の打抜き金型で積層鋼板ティース36,36Bを製造できる。
また、上記積層鋼板ティース36,36Bを構成する薄板は、磁気特性の良好な方向が回転軸18a方向に略平行な方向性電磁鋼板であることが好ましい。これにより、磁束の主な通過方向に沿って積層鋼板ティース36,36Bの透磁率を向上させて、積層鋼板ティース36,36Bをより小型化できると共に、鉄損を低減できるからである。
なお、この積層鋼板ティース36,36Bに巻回されるコイル40は、当該積層鋼板ティース36,36Bの略四角形断面形状に対応する略四角形環状に巻回されている。コイル40は、積層鋼板ティース36,36Bに直接的に巻回されても、又は、積層鋼板ティース36,36Bとは別箇所で巻回されて積層鋼板ティース36,36Bに外嵌めされる構成であってもよい。
圧粉ティース38は、磁性粉を固めた圧粉磁心、好ましくは、圧粉鉄心で形成されている。この圧粉ティース38は、回転軸18aと略直交する平面において、隣設するティース36,38の断面部分の辺(図4の辺36a参照)と略平行な2辺38a,38a(図4参照)と、それら略平行な2辺38a,38a同士をバックヨーク34の外周側で繋ぐ辺38bとで囲まれる断面形状部分を有している。ここでは、外周側の辺38bは弧状であり、従って、圧粉ティース38の当該断面形状は、中心角を回転軸18aに向けた略扇形状の断面形状である。もっとも、外周側の辺38bが直線状で、圧粉ティース38の当該断面形状が略三角形状を有していてもよい。なお、圧粉磁心38は、コイル40の巻回部分に応じた部分で、上記略扇形状又は略三角形状の断面形状部分であればよく、例えば、バックヨーク34に埋込まれる部分やロータ20と対向する部分等は、その他の断面形状であってもよい。
なお、この圧粉ティース38に巻回されるコイル42は、圧粉ティース38の上記略扇形状断面又は略三角形状断面に対応する略扇環状形状又は略三角環状形状に巻回されている。コイル42は、圧粉ティース38に直接的に巻回されても、又は、圧粉ティース38とは別箇所で巻回されて圧粉ティース38に外嵌めされる構成であってもよい。
ところで、コイル42を角張った形状に巻回しようとすると、当該角張った角部に密着状に巻回することはできず、角部で巻太りが生じてしまう。
そこで、ここでは、上記圧粉ティース38の上記断面において、3つの角部を丸めるように形成している。圧粉ティース38は、圧粉磁心で形成されているので、そのような丸めた角部を容易に形成できる。
このように、上記圧粉ティース38の上記断面において、角部を丸めることで、コイル42を丸められた角部に沿って巻回することができ、コイル42の巻太りを防止して、巻線占積率をさらに向上させることができる。
上記各積層鋼板ティース36と、各圧粉ティース38の配設形態について説明する。本実施形態では、上記各積層鋼板ティース36と各圧粉ティース38とを、同数(ここでは6個ずつ)有している。そして、各上記各積層鋼板ティース36と各圧粉ティース38とが、上記バックヨーク34のロータ20対向面において、回転軸18a周りに交互に環状に配設されている。このような配設形態とすることで、各ティース36,38間を略等幅にして、ティース36,38の断面積を十分に確保すると共に、コイル40,42を高占積率で配設することができる。
特に、ティース36,38の総数をs個とすると、各圧粉ティース38の回転軸18a側の角度は、(360/(s/2))゜、つまり、(720/s)゜(ここでは、60゜)にするのがよい。これにより、各ティース36,38間をより略等幅にして、ティース36,38の断面積をより十分に確保すると共に、コイル40,42をより高占積率で配設することができる。なお、各圧粉ティース38の回転軸18a側の角度が60゜程度であれば、コイル42をあまり巻太りさせることなく巻回できる。ちなみに、比較対象として、全ての12個のティースを略三角形状断面とした場合を考えると、その回転軸18a側の角度は30゜となり、コイルの巻太りはかなり大きくなってしまう。
次に、積層鋼板ティース36と圧粉ティース38との断面積の関係について説明する。
回転軸18aと略直交する平面において、積層鋼板ティース36のうちコイル40の巻回位置に応じた部分(本実施形態では実際にコイル40が巻回される部分、下記の実施形態では他の部分に巻回されたコイルの対応部分である場合もある)の断面積と、圧粉ティース38のうちコイル42の巻回位置に応じた部分(本実施形態では実際にコイル42が巻回される部分、下記の実施形態では他の部分に巻回されたコイルの対応部分である場合もある)の断面積とを略同一にするとよい。
これにより、各ティース36,38での磁束飽和密度が略同じである場合に、各ティース36,38での磁束密度を略均一にすることができる。そして、各ティース36,38での磁気飽和を緩和すると共に、ティース36,38部分を必要最低限の鉄量に設計して、コイル40,42の巻線スペースを最大限確保するようにできる。
もっとも、圧粉磁心で形成された圧粉ティース38は、絶縁を施した微粉末を固めたものであるため、比較的低い飽和磁束密度を持つ傾向にある。そこで、このような場合には、回転軸18aと略直交する平面において、積層鋼板ティース36のうちコイル40の巻回位置に応じた部分の断面積を、圧粉ティース38のうちコイル42の巻回位置に応じた部分の断面積よりも小さくするとよい。特に、積層鋼板ティース36に方向性電磁鋼板を用いた場合には特にこの効果が顕著であり、積層鋼板ティース36のうちコイル40の巻回位置に応じた部分の断面積を相当小さくすることができる。
これにより、圧粉ティース38の飽和磁束密度が積層鋼板ティース36の飽和磁束密度よりも小さい場合に、両ティース36,38で磁気抵抗が略同じになるように近づけて、各ティース36,38での磁気飽和を緩和すると共に、ティース36,38部分を必要最低限の鉄量にして、コイル40,42の巻線スペースを最大限確保するようにができる。
次に、各ティース36,38をバックヨーク34に固定する構成について説明する。
上記バックヨーク34は、各ティース36,38が配設される各位置に、各ティース36,38が部分的に、当該バックヨーク34の厚み方向全体又は一部に埋設される複数の嵌合凹部35a,35bを有している。ここでは、嵌合凹部35a,35bは、バックヨーク34を貫通する孔形状である(図1及び図2参照)。また、嵌合凹部35aは積層鋼板ティース36が埋設される孔であり、略四角形孔状に形成されている。また、嵌合凹部35bは圧粉ティース38が埋設される孔であり、略三角孔状に形成されている。また、各ティース36,38は、ロータ20からの突出寸法よりも、嵌合凹部35a,35bに埋込まれる分、長寸に形成されている。そして、各ティース36,38が各嵌合凹部35a,35bに嵌め込まれ、圧入固定や接着固定等によって固定保持されている。この状態で、各ティース36,38は、バックヨーク34を介して磁気的に連結される。
図7に嵌合凹部の変形例を示す。この変形例では、バックヨーク34Bに、貫通しない有底凹み状の嵌合凹部35Ba,35Bbが形成されている。そして、各ティース36,38が部分的に各嵌合凹部35Ba,35Bbに非貫通状に嵌め込まれて上記と同様に固定保持されている。これらの嵌合凹部35Ba,35Bbは、所定深さの有底である点を除いて、上記嵌合凹部35a,35bと同様構成である。
このように、各ティース36,38を部分的に嵌合凹部35a,35b,35Ba,35Bbに埋設することで、各ティース36,38を強固に一定位置に保持できると共に、バックヨーク34Bと各ティース36,38間で磁束が円滑に渡される。
もっとも、バックヨーク34,34Bの嵌合凹部35a,35b,35Ba,35Bbの深さは、磁束が軸方向成分を有する範囲まであることが望ましい。例えば、バックヨーク34,34Bの磁束密度がほぼ飽和領域に近ければ、各ティース36,38間を流れる磁束は、バックヨーク34,34Bの反ロータ20側部分も通るところ、積層鋼板で形成されたバックヨーク34,34Bではその厚み方向で磁気抵抗が大きい。そこで、各ティース36,38とバックヨーク34,34Bの反ロータ20側部分との間でも磁束を十分に渡すことができるように、貫通した嵌合凹部35a,35bを有するバックヨーク34であることが望ましい。また、この態様では、バックヨーク34を構成する薄板の形状をひとつにすることができ、形成用の打抜き金型を一種だけにすることができる。
その他の場合でも、一般的には、35Ba,35Bbの深さは、バックヨーク34,34Bの厚み寸法の半分以上であることが好ましい。これにより、ティース36,38を通って十分な深さまで磁束が達してからバックヨーク34,34Bとの間で磁束を渡すことができるため、磁気抵抗を低くし、鉄損を少なくすることができるからである。
なお、図7では、ステータ30のうち各ティース36,38の突出部分を除く部分では、各ティース36,38の埋込み部分を流れるものと、そのティース36,38を通過して隣のティース36,38に流れるものとがある。後者は、積層鋼板等によって形成されたバックヨーク34自体を通過することになる。
図2に示すように、ロータ20は、シャフト18に取付けられた円環状のロータ側バックヨーク22と、このロータ側バックヨーク22のステータ30側の面に設けられた複数の永久磁石24とを有している。また、複数の永久磁石24のステータ30側には、界磁子側磁性体部材としてロータ磁性体26が設けられている。
ロータ側バックヨーク22は、積層鋼板磁心又は圧粉磁心等の磁性体によって形成されている。このロータ側バックヨーク22は、永久磁石24を固定保持すると共に、磁気抵抗を小さくして永久磁石24の動作点磁束密度を向上させる。
また、永久磁石24は、ここでは、8個設けられている。各永久磁石24は、ロータ側バックヨーク22のステータ30側の面に、回転軸18a周りに等間隔をあけて環状に配設される。また、各永久磁石24は、回転軸18a周りに交互に異なる極性を呈するように配設されており、それぞれ回転軸18a方向に沿った磁束を発生する。
ロータ磁性体26は、上記各ティース36,38に対向する略環板状に形成されている(図2及び図4参照)。ロータ磁性体26の内周部は、全てのティース36,38の内周部よりも内周側にあり、ロータ磁性体26の外周部は、全てのティース36,38の外周部よりも外周側にある。つまり、このロータ磁性体26は、全体として、各積層鋼板ティース36のロータ20側端面の径方向全体と、各圧粉ティース38のロータ20側端面の径方向全体と、対向可能な広がりを有している。
また、このロータ磁性体26には、各永久磁石24間に対応して径方向に延びるスリット26sが形成されている。このスリット26sによって、ロータ磁性体26が各永久磁石に対応した部分毎に磁気的に分割されている。各スリット26sの内周部は、全てのティース36,38の内周部よりも内周側にあり、また、各スリット26sの外周部は、全てのティース36,38の外周部よりも外周側にあることが好ましい。
このロータ磁性体26は、各ティース36,38のギャップ対向面が小さい場合に、各永久磁石の磁束を各ティース36,38が存在する部分に集中させ、各ティース36,38とロータ20間で磁束をより多く通過させる役割を有している。また、永久磁石の減磁や渦電流損の低減に寄与する。もっとも、本ロータ磁性体26は省略してもよい。
上記のように構成されたアキシャルギャップ型モータ10の製造方法について説明する。
まず、各積層鋼板ティース36及び各圧粉ティース38の周りにコイル40,42を装着する。この際、巻線を直接各ティース36,38に巻回しても、予め巻回されたコイル40,42を外嵌めするようにしてもよい。その後、各ティース36,38をバックヨーク34に嵌め込む。この際、各ティース36,38のギャップ対向面を基準にして、それらをバックヨーク34に嵌め込むようにすると、エアギャップ精度が良好になる。
この後、ステータ30をケーシング12内の一定位置に固定すると共に、ロータ20をケーシング12内に回転自在に組込むことで、アキシャルギャップ型モータ10が製造される。
このように構成されたアキシャルギャップ型モータ10によると、複数個のティース36,38は、積層鋼板ティース36と圧粉ティース38とを含んでいるため、圧粉磁心の使用部分をなるべく減らすことができる。また、積層鋼板ティース36でヒステリシス損を小さくしつつかつ飽和磁束密度を大きくできるので、比較的低回転数でかつ大きなトルクを発生する場合でも、低鉄損及び低銅損にできる。また、圧粉ティース38を併用して上記略三角柱形状にする等、形状の自由度を得ることができる。
以下では、上記第1実施形態の変形例に係る構成について説明する。なお、以下の説明では、上記実施形態で説明したものと同様構成については同一符号を付してその説明を省略し、主に相違点を説明する。
まず、積層鋼板ティース36及び圧粉ティース38の配設形態に係る変形例について説明する。上記実施形態では、積層鋼板ティース36と圧粉ティース38とが同数である場合で説明したが、必ずしも同数である必要はない。
図8は圧粉ティースの数よりも積層鋼板ティースの数の方が多い場合の配設形態を示している。
図8に示す例では、n個(nは2以上の整数)の圧粉ティース38Cと、(n×h)個(hは2以上の整数)の積層鋼板ティース36Cとを含んでいる。ここでは、n=4であり、h=2であり、つまり、4個の圧粉ティース38Cと、その2倍の8個の積層鋼板ティース36Cとを含んでいる。なお、圧粉ティース38Cは、回転軸18a側の角度を除いて圧粉ティース38と同様構成であり、積層鋼板ティース36Cは各辺の寸法を除いて積層鋼板ティース36と同様構成である。
そして、上記n(=4)個の圧粉ティース38Cが、バックヨーク34Cのロータ20側の面に、回転軸18a周りに間隔(ここでは略等間隔)をあけて配設されている。なお、圧粉ティース38Cの回転軸18a側の角度は、(360/n)゜、つまり、(360/4)゜=90゜である。
また、各圧粉ティース38Cのn(=4)個の各間に、各積層鋼板ティース36Cがh(=2)個ずつ間隔(ここでは略等間隔)をあけて配設されている。なお、積層鋼板ティース36Cの各辺の長さは、当該各圧粉ティース38C間に配設可能な大きさに適宜設定されている。
そして、各積層鋼板ティース36Cと上記各圧粉ティース38Cとに、上記コイル40,42と同様構成のコイル40C,42Cがそれぞれ配設される。
これにより、圧粉ティース38Cと積層鋼板ティース36Cとを回転対称形状に配設することができる。
なお、上記バックヨーク34Cには、隣設するh(=2)個の積層鋼板ティース36お外周側部分に除去部としてのカット部34Caが形成されている。ここでは、略円盤状の外周部を、積層鋼板ティース36及びそれに巻回されるコイル40Cを避けた位置で直線状に切除したような形状のカット部34Caが形成されている。バックヨーク34Cのその他の構成は、上記バックヨーク34と略同様構成である。
図8に示す配設形態でも上記実施形態と同様の効果を奏することができる。加えて、積層鋼板ティース36Cの割合を増やすことで、圧粉磁心部分をより減らすことができる。また、圧粉ティース38Cと積層鋼板ティース36Cとの隙間は、バックヨーク34Cの径方向に対してより斜行することになるので、特に、ロータ20とステータ30との間に上記ロータ磁性体26のような幅広磁心が無い場合に、コギングを低減することができるというメリットがある。
また、バックヨーク34Cにカット部34Caを形成しているため、当該除去部を冷媒通路や風の通路として利用して、冷却効果の向上を図ることができる。
なお、積層鋼板ティース36Cは、回転軸18aに略直交する平面において、略平行四辺形形状あってもよい。この場合でも、同一形状の薄板を積層して積層鋼板ティース36Cを製造することができる。
また、勿論、圧粉ティース38Cの外周部は、略円弧状であっても略直線状であってもよい。
図9は積層鋼板ティースの数よりも圧粉ティースの数の方が多い場合の配設形態を示している。
図9に示す例では、m個(mは2以上の整数)の積層鋼板ティース36Dと、m×i個(iは2以上の整数)の圧粉ティース38Dとを含んでいる。ここでは、m=4であり、i=2であり、つまり、4個の積層鋼板ティース36Dと、その2倍の8個の圧粉ティース38Dとを含んでいる。なお、圧粉ティース38Dは、回転軸18a側の角度を除いて圧粉ティース38と同様構成であり、積層鋼板ティース36Dは各辺の寸法を除いて積層鋼板ティース36と同様構成である。
そして、上記m(=4)個の積層鋼板ティース36Dが、バックヨーク34Dのロータ20側の面に、回転軸18a周りに間隔(ここでは略等間隔)をあけて配設されている。なお、積層鋼板ティース36Dの各辺の長さは、当該各圧粉ティース38D間に配設可能な大きさに適宜設定されている。
また、各積層鋼板ティース36Dのm(=4)個の各間に、各圧粉ティース38Dがi(=2)個ずつ間隔(ここでは略等間隔)をあけて配設されている。なお、圧粉ティース38Dの回転軸18a側の角度は、(360/(m×i))゜、つまり、(360/8)゜=45゜である。
そして、各積層鋼板ティース36Dと上記各圧粉ティース38Dとに、上記コイル40,42と同様構成のコイル40D,42Dがそれぞれ配設される。
これにより、圧粉ティース38Dと積層鋼板ティース36Dとを回転対称形状に配設することができる。
図9に示す配設形態でも上記実施形態と同様の効果を奏することができる。加えて、各積層鋼板ティース36Dや上記各圧粉ティース38Dい巻回されたコイル40D,42Dの外周側部分及び内周側部分の位置を、回転軸18aを中心とする円の周方向に沿って比較的揃えることができる。また、圧粉ティース38Dと積層鋼板ティース36Dとの隙間は、バックヨーク34Dの径方向に対してより斜行することになるので、特に、ロータ20とステータ30との間に上記ロータ磁性体26のような幅広磁心が無い場合に、コギングを低減することができるというメリットがある。
また、勿論、圧粉ティース38Dの外周部は、略円弧状であっても略直線状であってもよい。
図10は積層鋼板ティースにつばを設けた変形例を示す斜視図である。
この積層鋼板ティース36Eは、界磁子であるロータ20と対向する部分を幅広に形成した薄板を、バックヨーク34の径方向rに略直交する方向(回転方向に対する法線方向)に複数積層することで形成されている。これにより、径方向に延出するつば部36Eaが形成されている。なお、積層鋼板ティース36Eのその他の構成は、図6に示す積層鋼板ティース36Bと同様構成である。
このつば部36Eaは、ロータ20とステータ30間でのギャップパーミアンスを高くして、ロータ20からの磁束を多くステータ30側で鎖交させるという役割を有している。また、コイル40の抜けを防止する役割をも有している。このような方向に延出するつば部36Eaは、積層鋼板ティース36Eの形成と同時に容易に形成できる。
図11は積層鋼板ティース及び圧粉ティースの双方につばを設けた変形例を示す図である。
この積層鋼板ティース36Fは、界磁子であるロータ20と対向する部分を幅広に形成した薄板を、バックヨーク34の径方向rに複数積層することで形成されている。これにより、径方向に略直交する方向に延出するつば部36Faが形成されている。なお、積層鋼板ティース36Fのその他の構成は、図5に示す積層鋼板ティース36と同様構成である。このような方向に延出するつば部36Faは、積層鋼板ティース36Fの形成と同時に容易に形成できる。
また、圧粉ティース38Fのうち界磁子であるロータ20と対向する部分が、その周囲全体に亘って幅広に形成されてつば部38Faが形成されている。圧粉ティース38は金型形成等されるため、上記のように周囲全体に亘って延出するつば部38Faを設けることは容易である。
上記つば部36Fa,38Faは、ロータ20とステータ30間でのギャップパーミアンスを高くして、ロータ20からの磁束を多くステータ30側で鎖交させるという役割を有している。また、コイル40の抜けを防止する役割をも有している。また、つば部36Fa,38Fa間のスリットは、ステータ30の径方向に対して傾斜しているため、いわゆるスキュー効果を有し、コギングトルクを低減できる。
{第2実施形態}
第2実施形態に係るアキシャルギャップ型モータのステータについて説明する。図12は同ステータを示す斜視図であり、図13は同ステータを示す分解斜視図である。
本実施形態に係るアキシャルギャップ型モータのステータ130は、第1実施形態に対してステータつば部150,152を設けた点で相違している。その他の構成は、第1実施形態と同様構成であるので、同一符号を付して説明を省略する。
ステータつば部150,152は、積層鋼板ティース36のロータ20(図1参照)側端面に取付けられた第1磁性体部としての第1ステータつば部150と、圧粉ティース38のロータ20側端面に取付けられた第2磁性体部としての第2ステータつば部152とを有している。
各ステータつば部150,152は、積層鋼板ティース36及び圧粉ティース38の端面形状よりも幅広、ここでは、周方向全体で幅広に形成されている。ここでは、各ステータつば部150,152は、所定幅を有する帯を弧状にした板形状を有している。
また、各ステータつば部150,152を各ティース36,38に取付けた状態で、各ステータつば部150,152間には所定幅の隙間が形成されており、各ステータつば部150,152が磁気的に独立した状態で配設されるようになっている。
また、第1ステータつば部150の一方面には、積層鋼板ティース36の端面形状に応じた略四角形状の凹部150aが形成されている。また、第2ステータつば部152の一方面には、圧粉ティース38の端面形状に応じた略扇形状(又は略三角形状)の凹部152aが形成されている。そして、各ティース36,38の先端部を各ステータつば部150,152の凹部150a,152aに嵌め込むようにして、ステータつば部150,152が各ティース36,38の先端部に固定される。
図14は変形例に係るステータを示す斜視図であり、図15は同ステータを示す分解斜視図である。この変形例に係るステータ130Bが上記第2実施形態と異なる点は、第1ステータつば部150B,152Bに貫通する孔部150Ba,152Baを形成した点である。そして、各ティース36,38の先端部を各ステータつば部150B,152Bの孔部150Ba,152Baに貫通状に嵌め込むようにして、ステータつば部150B,152Bが各ティース36,38の先端部に固定される。
この第2実施形態では、その各ステータつば部150,152又は150B,152Bによって、ロータ20とステータ130間でギャップパーミアンスを高くして、ロータ20からの磁束を多くステータ130側で鎖交させることができる。
また、凹部150a,152a又は孔部150Ba,152Baによって、各ステータつば部150,152又は150B,152Bを、その面方向で各ティース36,38の先端部に容易に位置決め固定して強く固定できる。
特に、図14及び図15に示す例では、各ティース36,38の先端部側面に、ステータつば部150B,152Bの内周面が接することになるので、ステータつば部150B,152Bを回転軸18a方向に積層した積層鋼板としても、鉄損の増加を防止することができる。これに対して、図12及び図13に示す例では、各ティース36,38の先端面にステータつば部150,152が接しているので、それらステータつば部150,152を厚み方向に磁気抵抗が低い圧粉磁心で形成することが好ましい。
また、図12及び図13に示す例は、ステータつば部150,152は各ティース36,38の先端面に当接した状態で固定されるので、位置精度、特に、ギャップ精度を向上させることができるというメリットがある。
{第3実施形態}
第3実施形態に係るアキシャルギャップ型モータのステータについて説明する。図16は同ステータを示す斜視図である。
本実施形態に係るアキシャルギャップ型モータのステータ230は、第1実施形態に対して、磁性体板部材としての環状ステータつば部254を設けた点で相違している。その他の構成は、第1実施形態と同様構成であるので、同一符号を付して説明を省略する。
環状ステータつば部254は、積層鋼板ティース36のロータ20側端面に取付けられた第1磁性体部としての第1ステータつば部250と、圧粉ティース38のロータ20側端面に取付けられた第2磁性体部としての第2ステータつば部252とを有している。
各ステータつば部250,252は、積層鋼板ティース36及び圧粉ティース38の端面形状よりも幅広、ここでは、周方向全体で幅広に形成されている。ここでは、各ステータつば部250,252は、所定幅を有する帯を弧状にした板形状でそれぞれ同形状に形成されている。
そして、これらの各ステータつば部250,252を、磁気的に独立した状態で略環状に連結することで、環状ステータつば部254が形成されている。ここでは、各ステータつば部250,252を、それぞれの外周部及び内周部で連結部254aを介して連結している。連結部254aは、その幅及び厚みで規定されるステータつば部250,252間の断面積が十分に小さく、容易に磁気飽和するようになっており、従って、各ステータつば部250,252は、磁気的に独立している。
このような環状ステータつば部254は、各ステータつば部250,252を一体として取扱って各ティース36,38に対する取付等を行えるので、取扱いが容易であり、かつ、ギャップ精度を向上させることができる。
また、勿論、環状ステータつば部254によって、ロータ20とステータ230間でのギャップパーミアンスを高くして、ロータ20(図1参照)側からの磁束を多くステータ230で鎖交させることができる。
なお、環状ステータつば部254の材質は特に限定されないが、圧粉磁心であることが好ましい。また、各ティース36,38が環状ステータつば部254を貫通する場合には、上記第2実施形態と同様に、回転軸18a方向に沿って積層した電磁鋼板を用いてもよい。
図17は本実施形態の変形例に係るステータを示す斜視図である。この変形例では、環状ステータつば部254Bの各第1ステータつば部250Bと第2ステータつば部252Bとの間のスリット254Bsが、バックヨーク34の径方向に対して傾斜している。ここでは、スリット254Bsは、各ティース36,38の隙間の延在方向に沿って延びるように形成されている。
このスリット254Bsは、いわゆるスキューであり、コギングトルクを低減することができる。
{第4実施形態}
第4実施形態に係るアキシャルギャップ型モータについて説明する。図18は本実施形態に係るアキシャルギャップ型モータを示す分解斜視図である。
本実施形態に係るアキシャルギャップ型モータ310は、第1実施形態に係るアキシャルギャップ型モータ10に対して、主に、ロータ320が両面側に対して磁極を呈する点、及び、ロータ320の両面にステータ330が設けられる点で異なっている。
ロータ320は、複数(ここでは8個)の永久磁石324を有している。各永久磁石324は、回転軸18a周りに等間隔をあけて環状に配設された状態で、樹脂等で形成されたホルダ328で固定保持されている。各永久磁石324は、ロータ320の両端面に露出しており、ロータ320の両面で、回転軸18a周りに交互に異なる極性を呈している。つまり、ひとつひとつの永久磁石324が、両ステータ330に対する界磁用磁石の機能を兼ねている。
また、両ステータ330のそれぞれの構成は、第1実施形態におけるステータ30と同様構成である。そして、各ティース36,38をロータ320に対向させた姿勢で、ロータ320の両面側にギャップを隔てて固定設置されている。また、一方のステータ330の各積層鋼板ティース36が他方のステータ330の各圧粉ティース38に対向すると共に、一方のステータ330の各圧粉ティース38が他方のステータ330の各積層鋼板ティース36に対向する位置関係で、両ロータ320が固定されている。
なお、両ステータ330において、双方の各ティース36,38のU、V、Wの相は同一であり、それぞれをロータ320側から見ると、各ティース36,38は逆の磁極を呈するように各コイル40,42に電流が流される。
本実施形態に係るアキシャルギャップ型モータ310では、ロータ320に働く磁気吸引力を、一方のステータ330による磁気吸引力と、他方のステータ330による磁気吸引力とでキャンセルすることで、シャフトに働くスラスト力を低減し、もって軸受損失の増大を抑えると共に、軸受寿命を延すことができるという利点がある。
また、両ステータ330間で、各積層鋼板ティース36と各圧粉ティース38とが対向する位置関係にあるため、両ティース36,38で構成される磁気回路において、磁束が積層鋼板ティース36と圧粉ティース38とを同数、同態様で経由し、磁気抵抗も略均一になるので、回転方向に沿ってバランスよい設計にすることができる。また、コギングも低減できる。
また、各永久磁石324が両ステータ330に対して磁極を呈するため、各磁気回路において、磁束が当該永久磁石324を貫通して両ステータ330を通過することになる。このため、両スタータ330間でも磁束量等をよりバランスよくすることができる。
{第5実施形態}
第5実施形態に係るアキシャルギャップ型モータについて説明する。図19は本実施形態に係るアキシャルギャップ型モータを示す分解斜視図であり、図20は同アキシャルギャップ型モータにおけるロータを示す斜視図である。
本実施形態に係るアキシャルギャップ型モータ410は、第1実施形態に係るアキシャルギャップ型モータ10に対して、積層鋼板ティース36だけにコイル40を設けた点、及び、圧粉ティース38の配設位置で異なっている。その他の構成は、第1実施形態と同様構成であるので、同一符号を付して説明を省略する。
すなわち、このステータ430では、各積層鋼板ティース36だけに集中巻された3相巻線としてのコイル40を備えている。各コイル40は、それぞれU相、V相、W相の順で繰返し配置されている。そして、U相、V相、W相のうちの2つの相のコイル間の圧粉ティース38は、他のひとつの相を示す。例えば、所定の2つの略四角形ティース36にU相のコイル40とW相のコイル40が施されたとき、スター結線では、Iu+Iv+Iw=0であるので(Ixはx相に流れる電流値を示す)、その間にある3頂点ティース38は、Iv=−Iu−Iwとなり、V相を示す。
このように、各積層鋼板ティース36だけにコイル40を巻回することで、各コイル40を重なり合わさずに配設することができ、モータ410の全体サイズの小型化が可能になる。また、全てのコイル40を鋭角で曲げずに略直角で曲げて巻回することができ、巻太り等を有効に防止し、この点からも小型化が可能になる。また、コイル40の数を少なくすることができるので、この点からも小型化を図ることができる。
また、このステータ430では、バックヨーク434による各圧粉ティース38の固定位置が第1実施形態の場合とは異なっており、積層鋼板ティース36よりも外周側で固定されている。つまり、圧粉ティース38の内周部及び外周部それぞれが、積層鋼板ティース36の内周部及び外周部よりも外周側にある。このような配置にする理由は次の通りである。積層鋼板ティース36にコイル40を巻回すると、内周側で隙間が小さくなり、外周側で隙間が大きくなる。一方、圧粉ティース38自体も磁束を通過させるのに最低限の断面積を確保する必要がある。そこで、圧粉ティース38を積層鋼板ティース36の外周側であって、積層鋼板ティース36に巻回された各コイル40の隙間となる位置に設けることで、圧粉ティース38を、コイル40間の隙間を有効利用して十分な断面積を確保しつつ、コイル40間に配設することができる。
また、このように圧粉ティース38を外周側に設けると、積層鋼板ティース36の位置と圧粉ティース38の位置とが径方向に沿ってずれる。そこで、ロータ20側に設けられる界磁子側磁性体部材としてのロータ磁性体426を、その各位置を考慮した形状にすることが好ましい。つまり、第1実施形態のロータ磁性体26に対応するロータ磁性体426の内周部を積層鋼板ティース36の内周部よりも内周側に配設すると共に(図22参照)、ロータ磁性体426の外周部を圧粉ティース38の外周部よりも外周側に配設して(図21参照)、積層鋼板ティース36のロータ20側端面の径方向全体及び圧粉ティース38のロータ20側端面の径方向全体が、ロータ磁性体426に対向可能にするのが好ましい。これにより、各ティース36,38とロータ20間で磁束を漏れ少なく通過させることができる。
図23は本実施形態に係るステータの変形例を示す図である。本変形例に係るステータ430Bは、環状ステータつば部454Bを有している。環状ステータつば部454Bは、第3実施形態に係る環状ステータつば部254と同様に、幅広磁心であるステータつば部450B,452Bを、磁気的に独立した状態で連結部454Baで略環状に連結した構成とされている。また、各ステータつば部450B,452Bは、各ティース36,38の最外周側部分と略同じ径方向位置又はそれよりも外周側の外周部と、各ティース36,38の最内周側部分と略同じ径方向位置又はそれよりも内周側の外周部とを有している。つまり、環状ステータつば部254は、各ティース36,38のロータ20側端面全体を覆っている。
この環状ステータつば部454Bによって、各ティース36,38とロータ20との間で磁束を漏れ少なく通過させることができる。
図24は本実施形態に係る圧粉ティースの変形例を示す斜視図である。この変形例では、回転軸18aと略直交する平面において、各圧粉ティース438Cの断面形状のうち、各積層鋼板ティース36に巻回されたコイル40に対向する部分は、その内側に凹んだ略円弧状形状に形成されている。なお、バックヨーク434Cは、上記と同様に、積層鋼板ティース36よりも外周側の位置に各圧粉ティース438Cを支持している。
このような略円弧状形状にすることで、積層鋼板ティース36に巻回されたコイル40の外側面が巻太りによって外側に膨らむように湾曲している部分を圧粉ティース38の略円弧状に凹んだ部分に収容することができる。これにより、コイル40の収納スペースを十分に確保しつつ、圧粉ティース438Cの断面積をなるべく大きくして十分な大きさを確保できる。
図25は本実施形態に係るバックヨークの変形例を示す斜視図である。この変形例では、バックヨーク434Dの外周部に、各圧粉ティース38をその外周側から嵌合可能な嵌合凹部434Da、ここでは、回転軸18aに略略直交する平面において、略三角凹み状の嵌合凹部434Daが形成されている。そして、各圧粉ティース38がバックヨーク434Dの外周側から嵌合凹部434Daに嵌合されて、バックヨーク434Dに固定されている。
この変形例では、各圧粉ティース38をバックヨーク434Dにその外周側から容易に嵌め込むようにして固定できる。また、この固定構造では、嵌合凹部434Da及び圧粉ティース38のうちの嵌合部分に、回転軸18aに略略直交する方向に沿った凹条部又は突条部を形成して、両者を嵌合固定することができる。これにより、スラスト力によって圧粉ティース38がバックヨーク434Dから抜落ちるのを有効に防止することができる。
{第6実施形態}
第6実施形態に係るアキシャルギャップ型モータについて説明する。図26は本実施形態に係るアキシャルギャップ型モータを示す分解斜視図である。
本実施形態に係るアキシャルギャップ型モータ510は、第5実施形態に係るアキシャルギャップ型モータ410に対して、主に、ロータ520の両面にステータ530が設けられる点で異なっている。なお、ロータ520は、第4実施形態に係るロータ320と同様に、両面に磁極を呈する。また、ステータ530は、第5実施形態に係るステータ430と同様構成である。その他の構成は、第5実施形態と同様構成であるので、同一符号を付して説明を省略する。
この実施形態でも、第4実施形態と同様にスラスト力を低減できる利点を有している。
また、一方のステータ530の積層鋼板ティース36は、他方のステータ530の圧粉ティース38と対向しており、一方のステータ530の圧粉ティース38は、他方のステータ530の積層鋼板ティース36と対向している。
これにより、両ティース36,38で構成される磁気回路において、磁束が積層鋼板ティース36と圧粉ティース38とを同数、同態様で経由し、磁気抵抗も略均一になるので、回転方向に沿ってバランスよい設計にすることができる。
また、コイルが巻回されていない圧粉ティース38に対して、コイル40が巻回された積層鋼板ティース36が対向しているため、圧粉ティース38も明確な磁極として働くことが可能となる。なお、積層鋼板ティース36に巻回された所定のコイル40に3相のうちの所定の一相である場合、それに対向する圧粉ティース38に隣設する積層鋼板ティース36のコイル40は他の2相である。例えば、積層鋼板ティース36に巻回された所定のコイル40がU相であれば、それに対向する圧粉ティース38に隣設する積層鋼板ティース36のコイル40はV相及びW相である。
なお、対向する同一相のティース36,38は、ロータ520側から見て逆の磁極を示すように、各コイル40に電流が流される。
{第7実施形態}
第7実施形態に係るアキシャルギャップ型モータのステータについて説明する。図27は本実施形態に係るステータを示す斜視図であり、図28は同ステータを示す分解斜視図である。
本実施形態に係るステータ630は、第1実施形態に係るステータ30に対して、コイル640U1,640V1,640W1,640U2,640V2,640W2の巻き方が異なっている。その他の構成は、第1実施形態と同様構成であるので、同一符号を付して説明を省略する。
すなわち、コイル640U1,640V1,640W1,640U2,640V2,640W2は、各積層鋼板ティース36及び各圧粉ティース38の複数に亘って分布巻されている。より具体的には、上層のコイル640U1,640V1,640W1と、下層のコイル640U2,640V2,640W2との2層構造とされている。下層の各コイル640U2,640V2,640W2は、1つの圧粉ティース38を挟んで隣合う2つの積層鋼板ティース36に亘って巻回されている。つまり、各コイル640U2,640V2,640W2は、各積層鋼板ティース36の略直角状の角部に沿って曲げられるように巻回されている。また、下層においては、各コイル640U2,640V2,640W2は相互に重なり合わないように配設されている。また、上層の各コイル640U1,640V1,640W1も同様に、1つの圧粉ティース38を挟んで隣合う2つの積層鋼板ティース36に亘って巻回されている。つまり、各コイル640U1,640V1,640W1も、各積層鋼板ティース36の略直角状の角部に沿って曲げられるように巻回されている。また、上層においては、各コイル640U1,640V1,640W1は相互に重なり合わないように配設されている。また、上層の各コイルコイル640U1,640V1,640W1と、下層の各コイル640U2,640V2,640W2とは、バックヨーク34の周方向における両端部、ここでは、各積層鋼板ティース36周りで、上下に重なり合うように配設されている。
そして、各コイル640U1,640V1,640W1,640U2,640V2,640W2に3相に整流された交流電流を流すことで、それぞれ励磁され、各ティース36,38に回転軸18a方向に沿った磁束を発生し、4極の回転磁界を発生するようになっている。
本実施形態によると、コイル640U1,640V1,640W1,640U2,640V2,640W2が複数のティース36,38に亘って分布巻された3相巻線であるため、磁束の空間高調波を少なくして、振動、騒音を少なくすることができる。
また、コイル640U1,640V1,640W1,640U2,640V2,640W2が積層鋼板ティース36の角部で曲げられるように巻回されているため、それらの曲げ角度が鋭角にならず略直角となる。これにより、コイル640U1,640V1,640W1,640U2,640V2,640W2の巻太りを防止できると共にその周長を短くすることができる。
なお、図29に示すように、上層の各コイル640BU1,640BV1,640BW1を、その周方向両端部で下方に折曲げると共に、内周側部分及び外周側部分を上方向に向けて折曲げてるようにしてもよい。そして、各ティース36,38間では、下層のコイル640U2,640V2,640W2と、上層の各コイル640BU1,640BV1,640BW1の両端部部分とが1層状に配設するようにしてもよい。また、下層のコイル640U2,640V2,640W2を逆方向に折曲げてもよい。
{第8実施形態}
第8実施形態に係るアキシャルギャップ型モータのステータについて説明する。図30は本実施形態に係るステータを示す斜視図であり、図31は同ステータを示す分解斜視図である。
本実施形態に係るステータ730は、第1実施形態に係るステータ30に対してコイル740U,740V,740Wの巻き方が異なっている。その他の構成は、第1実施形態と同様構成であるので、同一符号を付して説明を省略する。
すなわち、コイル740U,740V,740Wは、各ティース36,38の複数に亘って波巻された3相巻線とされている。
より具体的には、コイル740U,740V,740Wは、各ティース36,38の外周部と外周部とを縫うように巻回されている。また、各コイル740U,740V,740Wは、この順で下から上方に向けて、第1層、第2層、第3層に巻回されている。第1層のコイル740Uは、1つの圧粉ティース38を挟んで隣合う2つの積層鋼板ティース36と、これに対して回転軸18aを挟んで対向する1つの圧粉ティース38を挟んで隣合う2つの積層鋼板ティース36とに亘って巻回される。このコイル740Uは、積層鋼板ティース36の外側の角部に沿って折曲げられると共に、その隣の圧粉ティース38の内側角部で略90゜以上の角度に折曲げられている。圧粉ティース38の内側角部での折曲げ部分間は、シャフト18(図1参照)の外周側を通過すべく、弧状に湾曲している。
また、他のコイル740V,740Wは、各ティース36,38に対して同様の態様で巻回されている。これらの3つのコイル740U,740V,740Wは、回転軸18a周りに(360/3)゜=120゜ずらした姿勢で巻回されている。また、各コイル740U,740V,740Wは、周方向に沿って一部重複、ここでは、積層鋼板ティース36の巻回部分で上下に重複している。つまり、コイル740U,740V,740Wのうち1つの圧粉ティース38を挟んで隣合う2つの積層鋼板ティース36に巻回された部分単位で見ると、上記分布巻と同様の配置関係となっている。
そして、各コイル740U,740V,740Wに3相に整流された交流電流を流すことで、それぞれ励磁され、各ティース36,38に回転軸18a方向に沿った磁束を発生し、4極の回転磁界を発生するようになっている。
本実施形態は、各コイル740U,740V,740Wが波巻された3相巻線であるため、磁束の空間高調波を少なくして、振動、騒音を少なくすることができる。また、コイル数を減らして、また、コイル740U,740V,740Wの総周長を減らすことができる。さらに、極数の多い場合でも結線を減らせるという利点もある。
また、コイル740U,740V,740Wは、積層鋼板ティース36の外側の角部に沿って折曲げられると共に、その隣の圧粉ティース38の内側角部で略90゜以上の角度に折曲げられているため、コイル740U,740V,740Wの巻太りを防止できると共に、コイルの周長を小さくすることができる。
なお、図31に示すように、コイル740BU,740BV,740BWのうち各ティース36,38間に配設される部分を下方に折曲げて、各ティース36,38間に配設される部分については1層状にすると共に、外周側部分及び内周側部分を適宜上方又は下方に折曲げて重ねるようにしてもよい。
{変形例}
なお、本実施形態では、界磁子がロータであり、電機子がステータである形態で説明したが、逆に、界磁子がステータであり、電機子がロータであってもよい。
また、上記各実施形態及び各変形例に係る構成は、相互に反しない限り、互いに適宜組合わせることができる。