本発明は、現像剤担持体及びその製造方法並びにその現像剤担持体を用いる現像装置に関し、特に、プリンタ、複写機、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置に用いられる現像剤担持体及び現像装置等の改良に関するものである。
電子写真技術等を利用したプリンタや複写機では、帯電装置で帯電された後の感光体上に露光装置により静電潜像を形成し、その静電潜像に現像装置から供給する現像剤を静電吸着させることによりその潜像の現像を行っている。また、その現像装置では、その現像剤の供給を一般に円筒状の現像剤担持体を使用して行っており、その現像の際には感光体の帯電電位に応じた量の現像剤を静電潜像に供給することが必要とされている。
ところが、現像剤として小粒径のものや帯電性能の高いものを用いたときには、現像剤担持体に現像履歴による現像能力の分布が生じ、その結果として、感光体の帯電部位に応じた量の現像剤の供給が行われないことがあり、予定外の像が現像結果に現れる現象、いわゆる現像ゴーストが発生する。例えば、ベタ画像を形成した後にそのベタ画像よりも広いハーフトーン画像を形成した際に顕著に確認される。この現像ゴーストの発生原因は、定性的には以下のように説明することができる。
図8に、磁性現像剤を用いる現像装置の概要を示す。この現像装置は、磁性現像剤109を収容するハウジング110に、マグネット部材125が内部に設置されて回転する円筒状の現像剤担持体120と、この現像剤担持体120の外周面に圧接される弾性体等からなる層形成ブレード140とを少なくとも設けた構成になっている。
この現像装置による現像動作は、ハウジング110内の磁性現像剤109がマグネット部材125の磁力により現像剤担持体120に引き付けられた後、その回転する現像剤担持体120により搬送されて層形成ブレード140を通過することで所定の層厚からなる状態にされる。磁性現像剤109は、現像剤どうしの摩擦や層形成ブレード130との摩擦により帯電される。続いて、この帯電した磁性現像剤が,現像剤担持体120の回転により感光体等の潜像担持体200と対向する現像領域まで搬送されると、その現像領域において現像剤担持体120から潜像担持体200上の静電潜像へ現像バイアスの作用をうけることで転移して静電的に付着し、これにより静電潜像が現像されて顕像化される。この現像の際には、現像剤担持体120上の現像剤のうち静電潜像に対応した部分に位置した現像剤だけが消費されることになる。また、その現像剤担持体120の現像剤が消費された部分には、ハウジング110内において新たな現像剤が供給されて層形成ブレード140を通過する際等に帯電される。
そして、このような現像動作においては、現像工程で現像剤が消費された現像剤担持体の部分に新たに供給された現像剤は層形成ブレードによる摩擦帯電を初めて又は少ない回数だけ受けることになるのに対し、消費されなかった現像剤担持体の部分にある現像剤は層形成ブレードによる摩擦帯電を重ねて受けることになる。この結果、その現像履歴に応じて現像剤担持体上の現像剤の帯電量が分布を持つことになる。特にこの帯電量が高くなると、現像剤と静電潜像とのクーロン相互作用が強くなるが、これと同時に現像剤と現像剤担持体との間に鏡像力による引力も強くなる。現像剤の静電潜像への転移量、すなわち現像能力は、これらの力の大小関係により決まる。
このため、実際の現像においては、新たに現像剤が供給された現像剤担持体の部分の現像力が他の部分に比べて高くなる場合と低くなる場合とが生じ、それに応じて画像形成されて得られる画像に静電潜像とは異なる像(現像ゴースト)が現れることになる。このような要因で現れる現像ゴーストとしては、主に、静電潜像にはない像(先行して現像した像)が現像結果に現れるタイプのゴースト(ポジゴースト)と、静電潜像が存在するにもかかわらずその潜像の一部が現像されないことで現れるタイプのゴースト(ネガゴースト)がある。
このように現像ゴーストは、現像剤の帯電性能に関係するものであるため、高品位な画質を得るために有利とされる小粒径の現像剤や帯電性能を向上させた現像剤を用いたときに顕著に発生する傾向にある。
これに対して従来においても、現像ゴーストに対処するための技術として、例えば、現像剤担持体の表面にカーボンを含むフェノール樹脂からなり、導電性と表面潤滑性が付与された樹脂層を設けることにより現像ゴーストの発生を抑制する方法が知られている(例えば特許文献1)。また、現像剤担持体の表面にモリブテンからなる皮膜を設けることにより現像ゴーストの発生を抑制する方法が知られている(例えば特許文献1)。
しかし、その樹脂層を設ける前者の方法では、樹脂層が磨耗しやすいため、現像動作が繰り返されるにしたがって現像剤担持体の表面状態が変わってしまうことにより、現像ゴーストを抑制できる期間が短くなるという問題があった。また、そのモリブテン皮膜を設ける後者の方法では、近年開発された低温定着用の現像剤を用いたときに、モリブテンの帯電性が低いために得られる画像の濃度が低くなってしまうという問題があった。
そこで、本出願人は、このような問題を解消するための手段として、粗面化された円筒状の基体上に特定の鏡面光沢度が発現される金属表面層を有する現像剤担持体やそれを用いた現像装置などの提案(特許出願:本出願時未公開)を行っている。
この現像剤担持体120は、例えば、図9に示すように、アルミウム基材121に粗面化処理として球形の研磨剤(FGB#60又は#40など)でブラスト処理を施し、エッチング処理などを行った後、光沢剤を添加した電解液でメッキ処理して特定の鏡面光沢度からなる金属表面層122を形成したものである。
そして、このような現像剤担持体では、同図に示すように、粗面化してマクロな凹凸Rを有する基材121に単に金属表面層(122a)を形成しただけではそのマクロな凹凸Rにほぼ追従した状態の凹凸表面にミクロな凹凸rが存在するが、その光沢剤を含有させて鏡面光沢度を調整した金属表面層122bを形成することによりミクロな凹凸rを平坦化するとともにマクロな凹凸Rも基材121の凹凸よりも滑らかな表面になるようにしている。これにより、現像剤担持体の現像剤の搬送性を確保しつつ、その担持体表面の微小な粗さを低下させて現像剤がその表面に付着する力を弱めるようにして現像剤が現像剤担持表面(特にミクロな凹凸部)に残存することを防止し、その現像剤の残存に起因した現像ゴーストの発生を長期にわたって抑えることを可能にしている。
特開2000−231257号公報
特開平7−281517号公報
特開平3−36562号公報
特開平3−36563号公報
しかしながら、この提案する現像剤担持体を使用する現像装置においても次のような問題がある。
すなわち、特に低温低湿の環境下であって現像剤担持体(現像装置を含む)が初期の段階にあるときに、例えばプロセス方向に沿う帯状の画像が連続して現像された後にハーフトーンの画像が現像されると、そのハーフトーンの画像中に先の帯状の画像に相応するように現像されない部分が、実用上の許容レベルから外れる程度のネガゴーストとして発生することがある(図10、図11参照)。図10は、Gゴースト(ロール状の現像剤担持体の1周のピッチで前の現像画像の履歴が次の1周の現像画像中に濃淡むらとして現れるゴースト現象)の場合の発生状況を示す。図11は、HTラダーゴースト(画像形成プロセス方向に長い帯状の画像を連続して現像した後に現像されるハーフトーン画像中に、その帯状画像に対応する部分がそれ以外の部分に比べて濃く又は薄く現像された濃淡むらとして現れるポジ又はネガのゴースト現象)の場合の発生状況を示す。このようなネガゴーストは、画像形成(現像)枚数が100〜500枚を超える段階になると許容レベルのグレード±0.25を超えるものが発生しなくなる。
本発明者らの研究によれば、前記した提案の現像剤担持体を使用する現像装置では、特に低温低湿の環境下で現像剤担持体が初期の段階にあるときには、その現像剤担持体の表面に現像剤が約1mmピッチで波状になって過剰に搬送される現象(波状搬送)が発生することが確認されている。そして、現像剤担持体による現像剤の搬送量は、通常であれば図12に例示するように現像剤の帯電量とほぼ一定した比例関係になるのに対し、この波状搬送が発生すると過剰に上昇するような結果となるのである。図中の点線で囲む範囲に存在する結果部分が、その波状搬送の発生した場合を示す。また、図中ではその範囲内にある各結果についての金属表面層の種類を括弧書きしている。これにより、現像可能な現像剤の量が増えて現像量も増加するようになるため、先行する画像以外の部分(非画像部)に相当する後続の画像部分の現像濃度が高くなる一方で、その先行する画像部分に相当する後続の画像部分の現像濃度が低くなるようになり、これが原因でネガゴーストが発生するものと推測している。
なお、上記波状搬送の発生については、次の理由で発生しているものと推測している。まず、現像剤が低湿環境下で帯電量が上昇しやすく、初期段階でフレッシュな時期には小粒径のものが多く存在するため、それらが現像剤担持体上に現像工程で消費されずに残ると、高帯電の状態にある現像剤が濃縮されて静電的に強く付着するようになる。その一方で、現像剤担持体の表面が滑らかな凹凸面であるため、その現像剤が現像剤担持体上でスリップしやすい状態に置かれる。この結果、現像剤担持体上では、現像剤の搬送性を確保する要素とその搬送性を阻害する要素が同時に働くようになる。これにより、現像剤の搬送が不安定な状態に置かれ、特に現像剤(層)が層形成ブレードを通過する際に現像剤担持体との間で大量に通過するときとスリップして滞留するときが繰り返えされる状態になり、これが原因で現像剤が現像剤担持体上で波状に変動した層状態になって搬送されるものと考えられる。
また、本発明者らは、上記ネガゴーストの発生を防止する対策について研究を重ねていた段階において、鋭利な角をもつ不定形粒子を衝突させて細かなピッチの鋭利な突起をもつように粗面化された突起表面が、その不定形粒子の平均粒径よりも大なる平均粒径の滑らかな表面をもつ定形粒子の衝突をうけることにより大きなピッチの波状の凹凸部をもつように形成され、これにより当該突起表面がその凸部におけるよりも凹部において鈍化されている表面からなる現像剤担持体を用いる現像装置が提案されていることを知った(例えば特許文献3、4)。
しかし、このような現像装置では、その現像剤担持体の表面に不定形粒子の衝突により形成される不定形(鋭利)で微小な凹凸が存在するようになるため、その凹部に現像剤が埋まりこんで現像剤の付着が助長されるようになり、その結果、現像履歴に起因した現像ゴースト(特にポジゴースト)が発生しやすくなってしまうという問題がある。
本発明は、以上のような種々の問題点に鑑みてなされたものであり、現像履歴に起因したポジゴーストの発生を抑制することができることに加えて、特に低温低湿の環境下でしかも初期の段階であるときのネガゴーストの発生を抑制することができる現像剤担持体及びそれを用いた現像装置を提供するとともに、そのような優れた現像剤担持体を製造する方法も提供するものである。
本発明の現像剤担持体は、表面が粗面化された基材の粗面上に60度鏡面光沢度のGs(60°)が10以上40以下の範囲である金属表面層を有する構造からなる、現像剤を担持して搬送する現像剤担持体であって、前記粗面化された基材が、小径の球状粒子を衝突させて形成される微細粗面にその小径の球状粒子よりも大径の球状粒子を衝突させて形成される凹部を点在させた表面状態の基材であることを特徴とするものである。
この現像剤担持体における前記微細粗面は、前記現像剤の体積平均粒径の5〜20倍の値に相当する体積平均粒径からなる前記小径の球状粒子で形成される粗面であることが好ましい。
また、上記現像剤担持体における前記凹部は、前記現像剤の体積平均粒径の30倍以上の値に相当する体積平均粒径からなる前記小径の球状粒子で形成される粗面であることが好ましい。
さらに、上記した各構成のいずれか1つの現像剤担持体における前記凹部は、前記微細粗面の部分が10〜30%の占有割合で点在して残存するように形成される凹部であることが好ましい。
また、本発明の現像装置は、現像剤を担持して搬送する現像剤担持体として、上記した各構成の現像剤担持体のいずれか1つを使用することを特徴とするものである。
さらに、本発明の現像剤担持体の製造方法は、上記した本発明の現像剤担持体の製造方法であって、基材の表面に小径の球状粒子を衝突させることにより微細粗面を形成した後に、その微細粗面にその小径の球状粒子よりも大径の球状粒子を衝突させることにより凹部を点在するように形成する基材の粗面化工程と、この粗面化工程で粗面化された基材を、金属を含有する電解液で電解処理して、その金属で構成される60度鏡面光沢度のGs(60°)が10以上40以下の範囲である金属表面層を当該基材の表面に形成する表面層形成工程とを有することを特徴とするものである。
また、この製造方法においては、前記小径の球状粒子が、前記現像剤の体積平均粒径の5〜20倍の値に相当する体積平均粒径からなる球状粒子であることが好ましい。
また、上記した各構成のいずれか1つの製造方法においては、前記大径の球状粒子が、前記現像剤の体積平均粒径の30倍以上の値に相当する体積平均粒径からなる球状粒子であることが好ましい。
本発明によれば、現像履歴に起因したポジゴーストの発生を抑制することができるとともに、低温低湿の環境下でしかも初期の段階であるときにおけるネガゴーストの発生を抑制することもできる現像剤担持体を得ることが可能となる。また、これにより、かかる現像剤担持体を用いた現像装置では、使用環境や使用時期の違いにかかわらずポジゴーストとネガゴーストの双方の発生が抑制された画質良好な現像を行うことが可能になる。
[現像剤担持体]
本発明の現像剤担持体1は、図1及び図2に示すように、表面が粗面化された基材2の粗面上に60度鏡面光沢度のGs(60°)が10以上40以下の範囲である金属表面層3を有する構造からなる、現像剤を担持して搬送する現像剤担持体であって、その粗面化された基材2が、図2や図3に示すように、小径の球状粒子を衝突させて形成される微細粗面4にその小径の球状粒子よりも大径の球状粒子を衝突させて形成される凹部5を点在させた表面状態の基材である。
基材2は、図3に示すように、その表面が点在するように存在する相対的に大きい球面状の凹部5どうしの間(尾根)に相対的に小さい球面状の凹部が形成された微細粗面4が存在するような状態(粗面2a)になったものであり、凹部5が大径の球面状の谷部として存在し、微細粗面4小径の球面状凹部を複数有する谷部の尾根部として存在するような粗面化が施されている。そして、現像剤担持体1は、このように粗面化された基材2の粗面2a上に金属表面層3を形成することにより、図2に示すように、基材2の微細粗面4と凹部5の双方がそれぞれ平坦化されて基材2の粗面2aよりも滑らかな状態の粗面2bにされ、その60度鏡面光沢度のGs(60°)が特定の範囲におさまるように構成される。図示の金属表面層3は、2層構造のもの(第1金属層3a、第2金属層3b)であるが、1層構造のもの又は3層以上のものであってもよい。
この現像剤担持体1は、このような表面状態になるため、その滑らかで大きめの凹部5において現像剤が捕捉されて付着することが起こりにくくなる一方で、その滑らかで小さめの凹部を有する微細粗面4において現像剤が埋められて残存することはないが現像剤の安定した層形成や搬送が確保されるようになる。この結果、全体として、現像剤の付着が防止されつつ安定した現像剤の層形成と搬送が確保されるようになるため、使用環境や使用時期にかかわらず現像剤が入れ替えられやすくなるとともに現像剤の安定した帯電と搬送が行われるようになり、これによりネガゴーストの発生とポジゴーストの発生を抑制することが可能になる。
基材2としては、通常、アルミニウム及びその合金、ステンレス等が挙げられるが、その基材の表面を粗面化する観点からするとアルミニウム又はその合金が好ましい。また、基材2は、通常、円筒状のロール形態のものが使用されるが、ベルト形態等の他の形態であっても構わない。
基材2の粗面化は、図3に示すように、粗面化前の基材2の表面(現像剤を担持する側の面)に、小径の球状粒子を衝突させて形成される微細粗面4と、その微細粗面4にその小径の球状粒子よりも大径の球状粒子を衝突させてその粗面4内に点在するように形成される凹部5とが併存する表面状態にするものである。その微細粗面4と凹部5はいずれも球状粒子を衝突させて形成するものであるため、通常は基材の表面に乾式で球状粒子を吹きつけるブラスト加工法が適用されるが、その球状粒子を衝突させて微細粗面3や凹部4を形成することができれば他の方法であってもよい。
微細粗面4は、図4に示すように、粗面化前の基材2の表面(現像剤を担持する側の面)に対して、小径の球状粒子7、好ましくは現像剤の体積平均粒径の5〜20倍の値に相当する体積平均粒径からなる小径の球状粒子7を衝突させることで形成される粗面である。この小径の球状粒子7が現像剤の当該粒径の5倍よりも小さい粒径のものである場合には、その粒子7で形成される粗面の凹部等に現像剤が入り込みやすくなり現像剤の付着性を高めてしまう等の問題があり、反対に20倍を超える粒径のものである場合には、波状搬送が発生するようになる等の問題がある。この微細粗面4は、算術平均表面粗さ(Ra)が0.7μm以上0.9μm以下の範囲となるような粗面とする。この算術平均表面粗さが0.7μmよりも小さいと、前述した小径の球状粒子7として径が小さすぎるものを使用した場合と同様にその粗面凹部等に現像剤が入り込みやすくなり現像剤の付着性を高めてしまう等の問題があり、反対に0.9μmよりも大きいと、やはり同様に波状搬送が発生するようになる等の問題があり好ましくない。このため、微細粗面4を形成する際の小径の球状粒子の衝突条件(圧力、衝突処理時間など)は、その算術平均表面粗さが好ましい範囲内におさまるようにする観点から適宜選定される。
算術平均表面粗さRaは、表面粗さ測定器(東京精密社製:サーフコム590A−3DF)を用い、JIS B0601(2001)に準じて測定される。詳しくは、ピックアップE−DT−S01A、測定長さ4.0mm、触針先端2μmR、測定速度0.3mm/s、カットオフ値0.8mm、カットオフ種別2CR(位相補償)の測定条件にて、回転方向3箇所×軸方向3箇所の計9箇所を軸方向にむかって測定し、そのときの平均値を算出して求められるものである。後記の算術平均表面粗さRaも同じ測定方法によるものである。
凹部5は、図4に示すように、上記微細粗面4を形成した基材2の粗面4側に対して、上記小径の球状粒子7よりも大径の球状粒子8、好ましくは現像剤の体積平均粒径の30倍以上の値に相当する体積平均粒径からなる前記小径の球状粒子8を衝突させることで形成される粗面である。この大径の球状粒子8が現像剤の30倍より小さい粒径のものである場合には、ポジゴーストが発生しやすくなる等の問題がある。
また、この凹部5は、好ましくは微細粗面4の部分が10〜30%の占有割合で点在して残存するように形成される。微細粗面4の部分の占有割合が10%よりも少なくなるような凹部とした場合は、波状搬送が発生するようになる等の問題があり、反対にその占有割合が30%よりも大きくなるような凹部とした場合には、ポジゴーストが発生しやすくなる等の問題がある。このような微細粗面3の部分の占有割合を確保した状態の凹部5を形成するためには、大径の球状粒子の衝突条件(衝突処理時間など)を適宜調整することで対応することができる。例えば、この大径の球状粒子の衝突処理時間を小径の球状粒子の衝突処理時間よりも短い時間に設定すればよい。また、この凹部5が所定の割合で形成されているか否かは、例えば、レーザ顕微鏡(例えばKEYENCE社製:VK−8510)により得られる粗面の凹凸プロファイルをもとに、その粗面中における凹部5に該当する部分の占有面積を求めることにより確認することができる。
金属表面層3は、60度鏡面光沢度のGs(60°)が10以上40以下の範囲、好ましくは13以上35以下の範囲である。このGs(60°)が10未満であると画像にゴーストが発生してしまうことがあり、反対に40を超えると表面の平坦化が強くなり現像剤の搬送が均一になされず画像に濃度むらが生じることがある。60度鏡面光沢度は、JIS Z8741(1997)に準拠し、方法3によって測定した値である。また、このような60度鏡面光沢度にするためには、表面層3の厚さ及び表面粗さ、表面層3を形成する際の光沢剤の濃度及び電流濃度を適宜調整することで対応することができる。
金属表面層3を構成する金属としては、ニッケル、銅、亜鉛、錫、金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等を適用することができるが、ニッケル、銅、亜鉛、錫が好ましい。このような金属が好適なのは、ゴーストの抑制には現像剤担持体の表面の帯電性を下げるため帯電性の低いモリブテン等で表面層を形成することが有効であると考えられていたが、本発明の現像剤担持体ではその表面の粗さを滑らかな状態にすることでゴーストの発生を抑制する効果が得られるようになるため、モリブテンよりも帯電性の高い亜鉛や錫などを表面層の形成材料として使用することができ、これによりゴーストの抑制と画像濃度の確保を両立することが可能になり有利となるからである。
また、金属表面層3は、その算術平均表面粗さRaが1.8μm以上2.3μm以下の範囲、好ましくは1.9〜2.2μmとなるような粗面とする。このときの算術平均表面粗さは、特に基材2に形成される凹部5に相応する部位に存在するマクロな凹凸について測定するものに相当する。この算術平均表面粗さRaが1.8μmよりも小さいと、ポジゴーストが発生したり、あるいは現像剤の搬送量が不足して画像濃度が低下するようになる等の問題がある。反対にそれが2.3μmよりも大きいと、波状搬送による搬送むらやネガゴーストが発生するようになる等の問題がある。
さらに、金属表面層3は、その微視的粗さ(二乗平均平方根粗さ)Rqが0.02〜0.04μm、好ましくは0.025〜0.035μmのものである。この微視的粗さRqは、特に基材2に形成される微細粗面4に相応する部位に存在するミクロな凹凸について測定するものに相当する。微視的粗さRqが0.02μmより小さいと、波状搬送による搬送むらが発生するようになる等の問題があり、反対に0.04μmよりも大きいと、ポジゴーストが発生するようになる等の問題がある。また、微視的粗さRqの測定は以下のようにして行われる。まず、レーザ顕微鏡(KEYENCE社製:VK−8500)にて100倍の倍率でスリーブ表面のプロファイル(粗さ測定曲線に相当する)を得、それをもとに求める。具体的には、表面粗さの測定ピッチを長さ方向に0.15μm、高さ方向の分解能を0.01μmに設定して、その長さ方向に1024点の高さデータを採取し、得られた波形(粗さ測定曲線に相当する)をフーリエ変換し、トナー粒径以上の長周波成分をカットしてうねり成分を除去して微小表面プロファイルを得た後、その微小表面プロファイルを二乗平均値として求める。
このような金属表面層3の60度鏡面光沢度、算術平均表面粗さRa及び微視的粗さRqにするためには、光沢剤を添加することが好ましい。この光沢剤の添加量は、金属や光沢剤の種類によって異なるため一概にいうことができず、上記光沢度や算術平均粗さや微視的粗さの範囲に入るように適宜調整される。光沢剤としては、特に限定されないが、例えば、亜鉛用にはデュオジンク100、ジンクライト1600、ジンクライトS−3400、ジンクライトK−2500、ジンクライトK−7500、ジンクNH、ジンクA−100、ジンクA−200、ジンクACK、ジンクA(以上、奥野製薬株式会社製)等を挙げることができる。また、ニッケル用には、スーパーナオライト、スーパーゼナー、モノライト、トップセリーナ、トップルナー、トップレオナNL、アクナB−30、アクナB、ターボライト(以上、奥野製薬株式会社製)、#810、#81、#83、#81−J(以上、荏原ユージライト株式会社製)等を挙げることができる。銅用には、KOTAC1、KOTAC2(以上、大和特殊株式会社製)、エレカッパー25MU、エレカッパー25A(以上、奥野製薬株式会社製)等を挙げることができる。
また、金属表面層3の厚さは、0.3μm以上30μm以下の範囲であることが好ましい。この厚さが0.3μm未満の場合には、現像剤担持体の繰り返し走行による表面層の磨耗により下地が露出し、ゴーストの抑制効果を維持できなくなるおそれがあり、30μmを超えると膜厚が厚くなるため表面層の面内粗度のばらつきが発生し、画像濃度むらが発生するため好ましくなく、また生産コストの点からも好ましくない。この厚さは、蛍光X線膜厚計(SII製:SFT3000S)を用い、現像剤担持体1本あたり回転方向4箇所×軸方向9箇所の計36箇所の膜厚を測定した場合の平均値として算出される。
そして、この金属表面層3は、それを構成する金属を含む電解液で上記粗面化された基材2を電解処理してその基材2の粗面(2a)上に形成されることが好ましい。
この金属表面層3の形成に際し、その表面層の60度鏡面光沢度や各表面粗さについては、添加する光沢剤の添加量や表面層の膜厚を調整することによって制御することができる。また、金属表面層の膜厚については、電解処理の温度、電流密度、電解処理時間等によって調整することができる。この場合、金属表面層に添加する光沢剤を増やせば増やすほど、またその表面層の膜厚を厚くすればするほど、その表面層の60度鏡面光沢度を大きくすることができ、また表面層の表面粗さを小さくすることができる。また、電解処理の温度を高く、電流密度を高く、電解処理時間を長くするほど、表面層の膜厚を大きくすることができる。
また、本発明の現像剤担持体1は、少なくとも前記基材2と金属表面層3を有していれば、その他は特に制限されず、必要に応じて他の層を形成しても構わない。例えば、基材2と金属表面層3との間に密着性を高めたり、帯電量の調整を行ったりするための下引き層を設けてもよい。下引き層としては、例えば、ニッケル、銅、クロム、金などの金属を用いることができ、ニッケル、銅を用いることができる。また、下引き層は、単層であっても2層以上であってもよい。下引き層の層厚は、全体で0.3以上5.0μm以下であることが好ましい。このような下引き層は、電解めっきによって或いは無電開めっきによって形成することが好ましく、特に無電解めっきで形成することが好ましい。
[現像装置]
本発明の現像装置は、現像剤を担持して搬送する現像剤担持体として、上記した本発明の現像剤担持体1を使用するものである。この現像剤担持体1を用いることで、現像履歴に起因したポジゴーストの発生を抑制することができるとともに、低温低湿の環境下で初期の段階におけるネガゴーストの発生を抑制することもできるようになる。
本発明に適用できる現像剤は、磁性一成分現像剤、二成分現像剤のいずれであってもよいが、特に磁性一成分現像剤を適用した場合に有効となる。
図5は、本発明の実施に適した現像装置の一例を示すものである。
図5において、現像装置10は、静電潜像が形成される感光体等の潜像担持体200に対向して配置される。この現像装置10は、潜像担持体200と対向する部位が開口するとともに磁性現像剤9を収容するハウジング11を有し、このハウジング11の開口に面して現像ロール12が回転可能に設置されているとともに、その開口上縁に現像ロール1に圧接してそのロール1上に担持される磁性現像剤9を薄層状態にする層形成部材14が設けられている。
ハウジング11は、そのハウジングの一部で構成される仕切壁部11aを境に、現像ロール1が存在する現像室11bと、この現像室11bの背後で現像剤9を収容するトナー収容室11cとに分けられている。トナー収容室11cには、収容される現像剤9を攪拌しながら現像室11b側に掻き出す(供給する)ための回転攪拌部材15が設置されている。
現像ロール12は、円筒状の現像スリーブ(現像剤担持体)1と、その現像スリーブ1の内部空間に設置されるマグネットロール13とで構成されている。マグネットロール13は、N極及びS極を所定の位置に適宜配置して軸方向に均一な磁場を形成するためのものであり、そのロール両端部がハウジング11に固定されている。この現像ロール12(実際には現像スリーブ1)には、現像バイアス(例えば直流電圧に交流電圧を重畳したもの)がバイアス電源装置16から印加される。
層形成部材14は、ステンレス、銅、鉄又は合成樹脂等からなる支持板14aにゴム等からなる弾性体14bを取り付けたものである。回転攪拌部材15は、例えば、回転体の一部に可撓性フィルムを付けた構造のものである。
この現像装置10は、次のように作動する。
まず、現像時を要する時期になると、現像ロール12(現像スリーブ1)及び回転攪拌部材15が回転し始めるとともに現像ロール12にバイアス電源装置16から現像バイアスが印加される。これにより、ハウジング11内の磁性現像剤9は、そのトナー収容室11c内で回転攪拌部材15によって攪拌されてその一部が現像室11b側へ搬送されて現像ロール12に供給される。
続いて、その磁性現像剤9は、現像室11b内で現像スリーブ1の表面にマグネットロール13の磁力によって付着した後、層形成部材14の突き出し量と当接圧により層厚が規制され、かつ摩擦帯電される。このように帯電及び層形成された現像剤9は、現像ロール12の回転により潜像担持体200と対向する現像領域に搬送され、その現像領域おいて潜像担持体200に形成されている潜像部分に移行して静電的に付着する。これにより静電潜像の現像が行われる。
この現像装置10による現像においては、特に現像ロール12の現像スリーブ1とこれに圧接する層形成部材14との摩擦により、その現像スリーブ1の表面は現像剤9が押し付けられるような強いストレスを受ける。しかし、現像スリーブ1として本発明の現像剤担持体を用いていることにより、現像剤9が現像スリーブ1の表面に埋まりこみにくいためその表面に残存しにくい。また、現像スリーブ1の表面が滑らかな粗面状態であるため、現像剤9の搬送量も安定している。これにより、通常時における現像ゴースト(特にポジゴースト)の発生を抑えることができ、しかも良好な現像を行うことができる。さらに、現像スリーブ1の表面には特に微細な粗面部分(基材2の微細粗面4に対応する金属表面層3の部分)が存在するため、特に低温低湿の環境下でしかも初期使用の段階であっても、現像剤9の一定した所定量の搬送が行われるようになるため、現像ゴースト(特にネガースト)の発生も抑えられるようになり、かかる環境及び使用段階においても良好な現像を行うことができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
<現像剤担持体(現像スリーブ)の製作>
1.基材の粗面化工程:
基材2として引き抜き成形後に切削加工を施してなる円筒状のアルミウム(A6063)管の周面に、小径の球形研磨剤(7)であるFGB#400(粒径44〜53μmに相当)(不二製作所製)を用いて前段のブラスト処理を施した。この前段のブラスト処理は、ブラスト圧力を1.9Mpa、ブラスト処理時間を90秒とし、18rpmの速度で回転させた基材2のアルミウム管に球形研磨剤を吹き付けることで行った。得られたアルミニウム管の算術平均表面粗さRaを測定したところ0.8μであった。
続いて、この前段のブラスト処理を施した後のアルミニウ管に、大径の球形研磨剤(8)であるFGB#60(粒径250〜350μmに相当)を用いて後段のブラスト処理を施した。この後段のブラスト処理は、ブラスト圧力を2.0Mpa、ブラスト処理時間を30秒とし、同じ速度で回転させた基材2のアルミウム管に球形研磨剤を吹き付けることで行った。得られたアルミニウム管の表面をレーザ顕微鏡で凹凸プロファイルを求めて観察したところ、前段で形成された微細粗面(4)が20%程度の占有率で残った状態であることが確認された。
2.表面層形成工程:
上記粗面化処理が施されたアルミウム管(基材2)に対し、めっきの密着性を高めるため、エッチング処理した後にダブルジンケート処理を施した。一方、主剤(奥野製薬株式会社製:トップニコトロンBL−M/BL−1)からなるNi−P(ニッケル−りん)の処理液を用いて処理液を用意した。そして、このNi−P処理液を用いて上記粗面化したアルミウム管を無電解処理し、これにより膜厚が2.0±0.5μmのNi−Pメッキ層(3a)を形成した。
続いて、主剤(昭和化学社製:酸化Zn試薬)を用いて建浴したシアン化Zn浴に対し、光沢剤(奥野製薬株式会社製:ジンクライント1600)を4ml/l添加して調整した処理液を用意した。そして、この光沢剤を含有する処理液を用いて上記Ni−Pめっきを施したアルミウム管を陰極して電解処理し、上記Ni−Pメッキ層上にZn(亜鉛)めっき層(3b)を形成した。ちなみに、光沢剤の添加量については、表面層を形成する金属や光沢剤の種類によって異なるが、上記微視的粗さRqがその所要範囲に入るような観点から適宜調整することが好ましい。
これにより、現像剤担持体である現像スリーブ(1)が得られた(No1)。この現像スリーブの60度鏡面光沢度、算術平均表面粗さRa及び微視的粗さRqについて測定したところ、Gs(60°)が「20」、Raが「2.0μm」、Rqが「0.03μm」であった。また、この現像スリーブは外径が約16mmのものである。この現像スリーブの製作条件や特性の測定結果について図7に示す。
<現像装置の条件>
現像装置10は、現像ロール12の現像スリーブ1として上記の製作されたものを使用し、そのマグネットロール13として磁力が900ガウス(×10-4T)となる現像極を配したものを使用した。この現像ロール12には、現像時に現像バイアスとして−400vの直流電圧に周波数が3.3kHz、ピーク間電圧Vp-pが1.8kVの矩形波からなる交流電圧を重畳したものを印加した。層形成部材14としては、金属支持板にウレタン樹脂からなる弾性体(JIS A硬度65、引っ張り強さ25MPa、厚さ1.3mm)を取り付けたものを使用し、線荷重が60g/cmとなるように現像ロール12に腹当て状態で圧接させた。
この現像装置10は、直径が30mmの有機感光層を形成した潜像担持体200としての感光ドラムに対して250μmの間隔をあけた状態で設置するとともに、その現像スリーブ1を感光ドラムの回転速度(204mm/sec)の1.05〜1.2倍の速度で回転させた。また、現像剤9として以下の条件のものを使用した。
<現像剤の調製>
・結着樹脂:ポリエステル樹脂…50.0重量部
(アルコール成分:ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、酸成分:テレフタル酸、メルトインデックス(MI):6g/10min、ガラス転移点(Tg):58℃)
・磁性体:マグネタイト…45.5重量部
・負帯電性制御剤…1.0重量部
(Fe含有アゾ系染料、保土ヶ谷化学工業社製:T77)
・ポリプロピレンワックス…3.5重量部
(三洋化成社製:660P)
・外添剤:平均一次粒子径12nmのシリカ微粒子
(平均一次粒子径50nmnアナターゼ微粒子をデシルシラン・シリコーンオイルで処理した)
上記組成の材料をヘンシェルミキサーにより混合した後、これを設定温度140℃のエクストルーダにより熱混練した。その混練物を冷却した後、粗粉砕及び微粉砕し、体積平均粒径D50が5.8μmの粉砕物を得た。さらに、この粉砕物を分級してD50が6.2μmで、4μm以下の粒子が22個%のトナー分級品を得た。そして、この得られたトナー分級品100重量部に対して、粒径12nmのジメリツシリコーンオイル処理シルカ微粒子(炭素数7.5重量%)1.2重量部、およびデシルトリメトキシシラン10重量%で表面処理した平均一次粒子50nmの酸化チタン微粒子0.6重量部をヘンシェルミキサーで外添した。これにより、磁性一成分現像剤を得た。
<他の現像剤担持体の製作>
前記現像剤担持体の製作において、基材であるアルミニウム管の粗面化工程における研磨剤、ブラスト処理条件等を図7に示すような内容に変更した以外は同様にして、各種の現像剤担持体の製作を行った(サンプルNo.0、1、2)。この得られた各現像剤担持体の各物性等について前記の場合と同様に測定した。その結果を図7に示す。
<評価試験>
上記で製作した各現像剤担持体を取り付ける(交換する)とともに上記現像剤を収容した現像装置10を用意し、それを画像形成装置(富士ゼロックス社製:DocuPrint 340A)の現像装置として装着した試験用の改造機を用い、テスト画像をプリントして現像ゴーストの発生状況について調べた。
現像ゴーストについては、低温低湿(10℃、15%RH)の環境下で初期段階(最初のプリント動作の段階)におけるゴースト(特にネガゴース:NG)の発生状況と、常温常湿(22℃、55%RH)の環境下で経時段階(プリント枚数10000枚目の段階)におけるゴースト(特にポジゴースト:PG)の発生状況を調べた。試験は、ベタ黒の画像を1枚、ベタ白の画像を3枚プリントした後に、図6(A)に示すテスト画像としてのゴーストチャート画像(「A」の文字画像とハーフトーン画像)をプリントし、そのプリント結果を目視して検査することにより以下の基準で評価した。図6中の符号Lは現像スリーブの周長である。結果を図7に示す
○:ゴースト未発生。
△:ゴーストの発生があるが、実用上許容可能なレベルである。
×:ゴーストが顕著に発生して許容できないレベルである。
また、ゴーストが発生した場合は、そのプリント画像中のゴースト発生エリアと非発生エリアにおける画像濃度を濃度測定器(X−Rite社製:404a)で測定し、そのときの濃度差(非発生エリアの濃度−発生エリアの濃度)が±0.05のときをゴーストグレード「±0.25」とし、±0.1のときを「±0.5」とし、±0.2のときを「±1」、±0.3のときを「±1.5」、±0.4のときを「±2」、±0.4を超えるときを「±3」となるようにした。このときのゴーストグレードの許容範囲は「±0.25以内」とした。このゴーストグレードの結果について図7に括弧書きで示す。なお、このゴーストグレードが「+」を付した値のものはポジゴーストが発生した場合に相当し、「−」の符号を付した値のものはネガゴーストが発生した場合に相当する。
図7の結果から明らかなように、サンプルNo.0の基材の粗面化処理の前段プラスト処理を行わないで製作した現像スリーブを使用した場合には、10k(10000)枚後における現像ゴーストの発生を抑えることができるが、低温低湿の環境下で初期段階においては現像ゴースト(特にネガゴースト)が発生することがわかる。
図10及び図11は、このサンプルNo.0の現像スリーブを使用した場合における現像ゴースト(Gゴースト及びHTラダーゴースト)の発生状況について調べた結果を示す。ゴーストグレードは前記評価試験で適用したものを同様のものである。また、図12は、サンプルNo.0の現像スリーブを使用した現像装置におけるトナー帯電量とトナー搬送量との関係を調べた結果である。図中の点線で囲む結果は、前述した通りの低温低湿の環境下で初期段階において波状搬送が発生したときの搬送量を示すものである。
そして、図7の結果から、サンプルNo.1、2の現像スリーブを使用した場合には、10k枚後の段階における現像ゴーストの発生と低湿低温で初期段階における現像ゴーストの発生の双方を抑えることができることがわかる。一方、サンプルNo.2の現像スリーブを使用した場合には、初期の段階にポジゴーストが発生したり、あるいは経時でもポジゴーストが発生することが確認された。
このことから、特に10k枚後の段階における現像ゴーストの発生と低湿低温で初期段階における現像ゴーストの発生の双方を抑えるためには、現像スリーブとして以下の条件を満たすものを使用すればよいことが判明した。
本発明の現像剤担持体の一構成例を示す概略説明図である。
図1の円形Sで囲む部分を示す拡大概略断面図である。
図1の現像剤担持体における粗面化された基材を示す拡大概略断面図である。
図3の基材の粗面化処理時の各工程を示す概略断面説明図である。
本発明の現像装置の一構成例を示す概略説明図である。
現像ゴーストの発生を説明するためのものであり、(A)はゴーストチャート画像、(B)はポジゴーストが発生した場合、(C)はネガゴーストが発生した場合を示す平面説明図である。
各現像剤担持体の構成条件及び測定結果と評価試験の結果をそれぞれ示す図表である。
従来の現像装置の一例を示す概略説明図である。
提案する現像剤担持体の一部を拡大して示す概略断面図である。
図9の現像剤担持体を使用した場合のGゴーストの発生状況を調べた結果を示すグラフ図である。
図9の現像剤担持体を使用した場合のHTラダーゴーストの発生状況を調べた結果を示すグラフ図である。
図9の現像剤担持体を使用した場合のトナー帯電量とトナー搬送量の関係を調べた試験の結果を示すグラフ図である。
符号の説明
1…現像スリーブ(現像剤担持体)、2…基材、2a…粗面、3…金属表面層、4…微細粗面、5…凹部、7…小径の球状粒子、8…大径の球状粒子、9…磁性現像剤(現像剤)、10…現像装置。