JP4950414B2 - 核酸の測定方法、それに用いる核酸プローブ及びその方法によって得られるデータを解析する方法 - Google Patents

核酸の測定方法、それに用いる核酸プローブ及びその方法によって得られるデータを解析する方法 Download PDF

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Description

本発明は、標的核酸の濃度を測定する方法、その方法のための核酸プローブ及びその方法によって得られるデータを解析する方法に関する。詳しくは蛍光色素で標識された核酸プローブを用いる各種核酸の濃度の各種測定方法に関し、蛍光色素で標識された核酸プローブを標的核酸にハイブリダイズさせたときに、その蛍光色素の発光が減少するという原理に基づき、すなわち、ハイブリダイゼーション前後における蛍光色素の発光の減少量を測定することによる各種核酸の濃度の各種新規測定方法、それに用いる核酸プローブ及びデバイス(devices)、それら測定方法の一つであるPCR方法によって得られるデータを解析する方法、それぞれの解析方法を実施するための手段を備えた解析装置、解析方法の各手順をプログラムとして記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
従来、蛍光色素で標識された核酸プローブを用いて核酸濃度を測定する各種方法が知られている。該方法には、以下のようなものがある。
(1)ドットブロッテング法
この方法は、標的核酸と蛍光色素で標識された核酸プローブをメンブラン上でハイブリダイズさせた後、未反応の核酸プローブを洗い流し、標的核酸とハイブリダイズした核酸プローブに標識された蛍光色素分子のみの蛍光強度を測定するものである。
(2)インターカレーター方法(非特許文献1)
この方法は、インターカレーターと称されるある種の蛍光色素が核酸の二重鎖内にはまりこんだときに、強く発光するのでその発光の増加量を測定する方法である。その蛍光色素として、例えば、エチジウムブロマイド(非特許文献2)、SYBR Rグリーン(Green)I(非特許文献3)を挙げることができる。
(3)FRET(fluorescence energy transfer)を利用する方法(非特許文献4)
この方法は、標的核酸に二つの核酸プローブをハイブリダイズさせることからなる。二つの核酸プローブは、各々異なった蛍光色素で標識されている。二つのプローブの内の一方の蛍光色素は、FRET現象を通して、エネルギーを他方のプローブの蛍光色素に送りこれを発光させることができる。二つのプローブは、蛍光色素が向き合うように、かつ1〜9塩基離れてハイブリダイズするように設計されている。それで、二つの核酸プローブが標的核酸にハイブリダイズすると後者の蛍光色素の発光が起こり、発光の強さが標的核酸の複製量に比例する。
(4)分子ビーコン方法(非特許文献5)
この方法で使用する核酸プローブは、核酸プローブの一端にレポーター色素、他端にクエンチャー色素が標識さている。そしてその両端部は塩基配列において互いに相補性があるので、プローブ全体としてヘアーピン構造(hairpin stem)を形成するように塩基配列が設計されている。その構造のために液中に浮遊している状態では、Forster共鳴エネルギーのため、レポーター色素の発光は、クエンチャー色素により抑制されている。しかし、標的核酸にハイブリダイズするとヘアーピン構造が壊れるために、レポーター色素とクエンチャー色素の距離が大きくなるので、Forster共鳴エネルギーの移動が起こらなくなる。そのために、レポーター色素の発光が起こるようになる。
(5)デービスの方法(非特許文献6)
デービスは、オリゴヌクレオチドの3’末端に蛍光色素を、炭素原子18個を有するスペサーを介して結合したプローブを作成した。これをフローサイトメトリーに適用した。3’末端に蛍光色素を直接に結合した場合より、ハイブリダイズした場合、10倍の蛍光強度が得られることを報告した。
これらの方法は、核酸の各種測定方法、FISH方法(fluorescent in situ hybridization assays)、PCR方法、LCR方法(ligase chain reaction)、SD方法(strand displacement assays)、競合的ハイブリダイゼーション方法(competitive hybridization)などに適用されてめざましい発展をとげている。
これらの方法は、現在一般的に使用されいるが、蛍光色素で標識した核酸プローブと標的核酸のハイブリダイゼーション反応を行った後、ハイブリダイズしなかった当該核酸プローブを反応系から洗い流す必要があるという好ましくない手順を有している。このような手順を除くと測定時間の短縮、測定の簡便性、測定の正確性をもたらすことは明らかである。そこで、このような手順を有さない核酸測定方法の開発が望まれていた。
Glazer et al., Nature 359:959,1992 実験医学、15巻、7号、46〜51ページ、1997年、羊土社 LightCyclerTM System;1999年4月5日、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社発行のパンフレット Mergney et al.,Nucleic Acid Res., 22:920-928,1994. Tyagi et al., Nature Biotech.,14:303-308,1996. Davis et al.、Nucleic acids Res.24:702-706、1996
本発明の課題は、前記の状況に鑑み、蛍光色素で標識された核酸プローブを用いる標的核酸濃度の測定方法において、より短時間に、より簡便、より正確に標的核酸の濃度を測定できる方法を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決するにあたり、核酸プローブを用いた核酸の濃度を測定する方法について検討を重ねた。その結果、蛍光色素で標識された核酸プローブが標的核酸にハイブリダイズしたときに、蛍光色素の発光が減少するという現象(蛍光消光現象)があり、特定の色素においてはその減少が顕著であり、特にその減少の程度は、蛍光色素が結合した部分の塩基の種類又は塩基配列に依存するということを発見した。本発明はかかる発見に基づいて完成されたものである。
即ち、本発明は、
1)蛍光色素で標識された核酸プローブを用いる核酸測定方法において、前記核酸プローブが標的核酸にハイブリダイズしたときに、蛍光色素が、その発光を減少させる核酸プローブであり、前記核酸プローブを標的核酸にハイブリダイズさせ、ハイブリダイゼーション前後における蛍光色素の発光の減少量を測定することを特徴とする標的核酸の濃度の測定方法、また、
2)蛍光色素で標識された核酸プローブが標的核酸にハイブリダイズしたときに、前記蛍光色素が、その発光を減少させる核酸プローブであり、かつ、当該プローブは、その末端部において前記蛍光色素で標識されており、当該核酸プローブが当該末端部において標的核酸にハイブリダイズしたとき、当該プローブにハイブリダイズした標的核酸の末端塩基から1ないし3塩基離れて、標的核酸の塩基配列にG(グアニン)が少なくとも1塩基存在するように、当該プローブの塩基配列が設計されていることを特徴とする標的核酸の濃度測定用の蛍光色素で標識された核酸プローブ、また、
3)核酸プローブが3’末端において蛍光色素で標識されている前記2)に記載の標的核酸の濃度測定用の蛍光色素で標識された核酸プローブ、また
4)核酸プローブが5’末端において蛍光色素で標識されている前記2)に記載の標的核酸の濃度測定用の蛍光色素で標識された核酸プローブ、また、
5)蛍光色素で標識された核酸プローブが標的核酸にハイブリダイズしたときに、上記蛍光色素が、その発光を減少させる核酸プローブであり、かつ、当該プローブは、その末端部において前記蛍光色素で標識されており、当該核酸プローブが、前記標的核酸にハイブリダイズしたとき、当該末端部分においてプローブ−核酸ハイブリッド複合体の複数塩基対が少なくとも一つのG(グアニン)とC(シトシン)のペアーを形成するように、当該プローブの塩基配列が設計されていることを特徴とする標的核酸の濃度測定用の蛍光色素で標識された核酸プローブ、また、
6)核酸プローブの3’末端塩基がG又はCで、かつ3’末端が蛍光色素で標識されている前記5)に記載の標的核酸の濃度測定用の蛍光色素で標識された核酸プローブ、また、
7)核酸プローブの5’末端塩基がG又はCで、かつ5’末端が蛍光色素で標識されている前記5)に記載の標的核酸の濃度測定用の蛍光色素で標識された核酸プローブ、また、
8)核酸プローブが、3’末端のリボース若しくはデオキシリボースの3’炭素の水酸基、又は3’末端のリボースの3’若しくは2’炭素の水酸基がリン酸化されている前記4)又は前記7)に記載の標的核酸の濃度測定用の蛍光色素で標識された核酸プローブ、また、
9)核酸測定用核酸プローブのオリゴヌクレオチドが、化学的に修飾した核酸である前記2)〜8)の何れか1項に記載の標的核酸の濃度測定用の蛍光色素で標識された核酸プローブ、また、
10)化学的に修飾した核酸が2'-O-メチルオリゴヌクレオチド、2'-O-エチルオリゴヌクレオチド、2'-O-ブチルオリゴヌクレオチド又は2'-O-ベンジルオリゴヌクレオチドである前記9)に記載の標的核酸の濃度測定用の蛍光色素で標識された核酸プローブ、また、
11)核酸測定用核酸プローブのオリゴヌクレオチドが、リボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドを含むキメリックオリゴヌクレトチド(chimeric oligonucleotide)である前記2)〜8)の何れか1項に記載の標的核酸の濃度測定用の蛍光色素で標識された核酸プローブ、また、
12)キメリックオリゴヌクレトチドが、2'-O-メチルオリゴリボヌクレオチド、2'-O-エチルオリゴヌクレオチド、2'-O-ブチルオリゴヌクレオチド、2'-O-アルキレンオリゴヌクレオチド又は2'-O-ベンジルオリゴヌクレオチドを介在するものである前記11)に記載の標的核酸の濃度測定用の蛍光色素で標識された核酸プローブ、また、
13)前記2)〜8)の何れか1項に記載の核酸測定用核酸プローブを、標的核酸にハイブリダイズさせ、ハイブリダイゼーション前後における蛍光色素の発光の減少量を測定することを特徴とする標的核酸の濃度測定方法、また、
14)前記9)〜12)の何れか1項に記載の核酸測定用核酸プローブを、標的核酸にハイブリダイズさせ、ハイブリダイゼーション前後における蛍光色素の発光の減少量を測定することを特徴とする標的核酸の濃度測定方法、また、
15)標的核酸をその高次構造が十分に破壊されるに適した条件で加熱処理後、核酸プローブと標的核酸をハイブリダイズさせる前記14)に記載の標的核酸の濃度測定方法。
16)ハイブリダイゼーション反応前にハイブリダイゼーション反応実施のためのハイブリダイゼーション反応系にヘルパープローブを添加する前記14)又は前記15)に記載の標的核酸の濃度測定方法、また、
17)ヘルパープローブの塩基配列が(5')TCCTTTGAGT TCCCGGCCGG A(3')又は/及び(5')CCCTGGTCGT AAGGGCCATG ATGACTTGAC GT(3')である前記16)に記載の標的核酸の濃度測定方法、また、
18)加熱処理条件が80〜100℃、1〜15分である前記15)〜17)のいずれか1項に記載の標的核酸の濃度測定方法、また、
19)標的核酸がRNAである前記13)〜18)のいずれか1項に記載の標的核酸の濃度測定方法、また、
20)標的核酸の濃度を測定するキットにおいて、前記2)〜12)の何れか1項に記載の核酸プローブを含有又は付帯することを特徴とする標的核酸の濃度測定用キット、また、
21)ヘルパープローブを含有又は付帯する前記20)に記載の標的核酸の濃度測定用キット、また、
22)標的核酸の多型(polymorphism)又は/及び変異(mutation)を解析若しくは測定する方法において、前記2)〜12)の何れか1項に記載の核酸プローブを標的核酸にハイブリダイズさせ、蛍光強度の変化量を測定することを特徴とする標的核酸の多型又は/及び変異を解析若しくは測定する方法、また、
23)標的核酸の多型又は/及び変異を解析若しくは測定する測定キットにおいて、前記2)〜12)の何れか1項に記載の核酸プローブを含有又は付帯することを特徴とする標的核酸の多型又は/及び変異を解析若しくは測定するキット、また、
24)ハイブリダイゼーション反応系に添加するためのヘルパープローブを含有又は付帯する前記23)に記載の標的核酸の多型又は/及び変異を解析若しくは測定するキット、また、
25)前記22)に記載の方法により得られるデータを解析する方法において、標的核酸が蛍光色素で標識された核酸プローブとハイブリダイズしたときの反応系の蛍光強度値を、前記のハイブリダイズしていないときの反応系の蛍光強度値により補正処理する過程を有することを特徴とする標的核酸の多型又は/及び変異を解析若しくは測定する方法のためのデータ解析方法、また、
26)標的核酸の多型又は/及び変異を解析若しくは測定する測定装置において、前記25)に記載のデータ解析方法を実施するための手段を有することを特徴とする標的核酸の多型又は/及び変異を解析若しくは測定する測定装置、また、
27)前記25)に記載の補正処理過程をコンピュータに実行させるための手順をプログラムとして記録したコンピュータ読取可能な記録媒体、また、
28)前記2)〜12)の何れか1項に記載の核酸プローブ、又は一つの分子内に二つの異なった蛍光色素を有し、標的核酸にハイブリダイズしていないときは、二つの蛍光色素の相互作用により消光若しくは発光しているが、標的核酸にハイブリダイズすると発光若しくは消光するように設計された構造をもつ別の核酸プローブを複数個固体支持体表面に結合させ、それに標的核酸をハイブリダイズさせて標的核酸の濃度を測定することができるようにしたことを特徴とする単数種若しくは複数種の核酸の濃度をそれぞれ測定するためのデバイス、また、
29)前記28)に記載の核酸測定用デバイスにおいて、核酸プローブが固体支持体表面にアレー状に配列、結合させた単数種若しくは複数種の核酸の濃度をそれぞれ測定するためのデバイス(チップ)、また、
30)固体支持体表面に結合させられた核酸プローブ毎に、反対側の表面に少なくとも一つの温度センサーとヒーターが設置され、核酸プローブ結合領域が最適温度条件になるように温度調節され得る前記28)、又は前記29)に記載の単数種若しくは複数種の核酸の濃度をそれぞれ測定するためのデバイス、また、 31)核酸プローブを蛍光色素で標識していない端部で固体支持体表面に結合させた前記28)〜30)の何れか1項に記載の単数種若しくは複数種の核酸の濃度をそれぞれ測定するためのデバイス、また、
32)前記28)〜30)の何れか1項に記載の核酸測定用デバイスを用いて標的核酸を測定することを特徴とする標的核酸の濃度測定方法、また、
33)前記1)、13)〜19)の何れか1項、又は前記32)に記載の核酸の測定方法において、標的核酸が、純粋分離して得た微生物由来、又は動物由来であることを特徴とする標的核酸の濃度測定方法、また、
34)標的核酸が、複合微生物系、又は共生微生物系の細胞内若しくは細胞のホモジネートに含まれる核酸である前記1)、又は前記13)〜19)の何れか1項、又は32)に記載の標的核酸の濃度測定方法、また、
35)PCR方法において、前記2)〜3)、5)、6)、又は前記8)〜12)の何れか1項に記載の核酸プローブを用いて反応を行い、核酸伸長反応時当該プローブがポリメラーゼにより分解除去されている反応系又は核酸変性反応時若しくは核酸変性反応が完了している反応系の蛍光強度値と標的核酸若しくは増幅標的核酸が該核酸プローブとハイブリダイズしているときの反応系の蛍光強度値を測定し、前者からの蛍光強度値の減少率を算出することを特徴とするPCRで増幅された標的核酸の濃度測定方法、また、
36)PCR方法において、前記4)又は前記7)に記載の核酸プローブをプライマーとして反応を行い、当該プローブと標的核酸若しくは増幅標的核酸がハイブリダイズしていない反応系の蛍光強度値と該核酸プローブが標的核酸若しくは増幅標的核酸とハイブリダイズしているときの反応系の蛍光強度値を測定し、前者の蛍光強度値の減少率を算出することを特徴とするPCRで増幅された標的核酸の濃度測定方法、また、
37)PCR方法がリアルタイム定量的PCR方法である前記35)又は前記36)に記載のPCR方法の標的の増幅核酸の濃度測定方法、また、
38)前記1)、13)〜19)の何れか1項、又は前記32)〜37)の何れか1項に記載の核酸測定法で得られたデータを解析する方法において、標的核酸が蛍光色素で標識された核酸プローブとハイブリダイズした後の反応系の蛍光強度値を、そのように形成されたプローブ−核酸ハイブリッド複合体が解離した後で得られる反応系の蛍光強度値により補正することを特徴とする標的核酸の濃度測定方法のためのデータ解析方法、また、
39)前記37)に記載のリアルタイム定量的PCR方法で得られたデータを解析する方法において、各サイクルにおける増幅した核酸が蛍光色素と結合した後、あるいは増幅した核酸が蛍光色素で標識された核酸プローブとハイブリダイズした後の反応系の蛍光強度値を、各サイクルにおける形成された蛍光色素−核酸複合体、あるいはそのようにして形成されたプローブ−核酸ハイブリッド複合体が解離した後で得られる反応系の蛍光強度値により補正する演算処理過程(以下、補正演算処理過程という。)を有することを特徴とするリアルタイム定量的PCR方法のためのデータ解析方法、また、
40)前記39)に記載の補正演算処理過程が、次の〔数式1〕あるいは〔数式2〕によるものである前記39)に記載のリアルタイム定量的PCR方法のためのデータ解析方法、また、
n=fhyb,n/fden,n 〔数式1〕
n=fden,n/fhyb,n 〔数式2〕
〔式中、
n:〔数式1〕あるいは〔数式2〕により算出されたn次サイクルにおける補正演算処理値、
hyb,n:n次サイクルにおいて、増幅した核酸が蛍光色素と結合した後、あるいは増幅した核酸が蛍光色素で標識された核酸プローブとハイブリダイズした後の反応系の蛍光強度値、
den,n:n次サイクルにおける、形成された蛍光色素−核酸複合体、あるいは形成されたプローブ−核酸ハイブリッド複合体が解離した後の反応系の蛍光強度値〕、また、
41)前記37)に記載のリアルタイム定量的PCR方法で得られたデータを解析する前記40)に記載の方法において、各サイクルにおける〔数式1〕あるいは〔数式2〕により算出された補正演算処理値を次の〔数式3〕あるいは〔数式4〕に代入し、各サイクルにおける各サンプル間の蛍光変化割合あるいは蛍光変化率を算出し、それらを比較することを特徴とするリアルタイム定量的PCR方法のためのデータ解析方法、また、
n=fn/fa 〔数式3〕
n=fa/fn 〔数式4〕
〔式中、
n:n次サイクルにおける、〔数式3〕あるいは〔数式4〕により算出された蛍光変化割合あるいは蛍光変化率、
n:〔数式1〕あるいは〔数式2〕による補正演算処理値
a:〔数式1〕あるいは〔数式2〕による補正演算処理値で、fnの変化が観察される以前の任意のサイクル数のもの〕、また、
42)前記37)に記載のリアルタイム定量的PCR方法で得られたデータを解析する前記41)に記載の方法において、
(a)〔数式3〕あるいは〔数式4〕により算出された蛍光変化割合あるいは蛍光変化率のデータを用いて、〔数式5〕、〔数式6〕あるいは〔数式7〕による演算処理する過程、
logb(Fn)、ln(Fn) 〔数式5〕
logb{(1−Fn)×A}、ln{(1−Fn)×A} 〔数式6〕
logb{(Fn−1)×A}、ln{(Fn−1)×A} 〔数式7〕
〔式中、
A、b:任意の数値、
n:〔数式3〕あるいは〔数式4〕により算出されたn次サイクルにおける蛍光変化割合あるいは蛍光変化率〕、
(b)前記(a)の演算処理値が一定値に達したサイクル数を求める演算処理過程、
(c)既知濃度の核酸試料におけるサイクル数と反応開始時の標的核酸のコピー数の関係式を計算する演算処理過程、
(d)未知試料におけるPCR開始時の標的核酸のコピー数を求める演算処理過程、
を有することを特徴とするリアルタイム定量的PCR方法のためのデータ解析方法、また、
43)標的核酸について前記2)〜12)の何れか1項に記載の核酸プローブを用いてPCRを行い、標的核酸の融解曲線の分析を行って各増幅核酸のTm値を求めることを特徴とする標的核酸の融解曲線の分析方法、また、
44)標的核酸について前記4)又は前記7)に記載の核酸プローブをプライマーとして用いてPCRを行い、標的核酸の融解曲線の分析を行って各増幅核酸のTm値を求めることを特徴とする標的核酸の融解曲線の分析方法、また、
45)前記39)〜42)の何れか1項に記載のリアルタイム定量的PCR方法のためのデータ解析方法において、PCR法により増幅された核酸を、低い温度から核酸が完全に変性するまで、温度を徐々に上げる過程、この過程において、所定の時間間隔で蛍光強度を測定する過程、測定結果を時間に対する関数としてデスプレー上に表示して核酸の融解曲線をデスプレー上に描く過程、この融解曲線を微分して微分した値(−dF/dT、F:蛍光強度、T:時間)を得る過程、前記微分した値を微分値としてデスプレー上に表示する過程、その微分値から変曲点を求める過程、を有することを特徴とするリアルタイム定量的PCR方法のためのデータ解析方法、また、
46)前記39)に記載のデータ解析方法によりデータを解析する過程、前記40)に記載のデータ解析方法によりデータを解析する過程、前記41)に記載のデータ解析方法によりデータを解析する過程、前記42)に記載のデータ解析方法によりデータを解析する過程、前記45)に記載のデータ解析方法によりデータを解析する過程、を実施するための手段をそれぞれ有することを特徴とするリアルタイム定量的PCRの測定及び/又は解析装置、また、
47)前記39)に記載のデータ解析方法によりデータを解析する過程、前記40)に記載のデータ解析方法によりデータを解析する過程、前記41)に記載のデータ解析方法によりデータを解析する過程、前記42)に記載のデータ解析方法によりデータを解析する過程、前記45)に記載のデータ解析方法によりデータを解析する過程を、コンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体、また、
48)核酸定量方法において、前記39)〜42)何れか1項、又は前記45)に記載のリアルタイム定量的PCR方法のためのデータ解析方法を利用することを特徴とする核酸の定量方法、また、
49)核酸定量方法において、前記46)に記載の装置を利用することを特徴とする核酸の定量方法、また、
50)核酸定量方法において、前記47)に記載のコンピュータ読取可能な記録媒体を用いることを特徴とする核酸の定量方法、
を提供する。
本発明は次のような効果を有する。
1)本発明の標的核酸の濃度を測定する方法、本発明の各種の核酸プローブ、特に2−O−アルキルオリゴヌクレオチド若しくは2−O−アルキレンオリゴヌクレオチド、2−O−ベンジルオリゴヌクレオチドなど化学的修飾オリゴヌクレオチドなどからなる本発明の核酸プローブ、またオリゴリボヌクレオチドとオリゴデオキシリボヌクレオチドが介在するキメリックオリゴヌクレオチドなどからなる本発明の核酸プローブ、それらの本発明の核酸プローブを含有若しくは付帯する、標的核酸の濃度を測定する測定キット、及び前記の本発明の核酸プローブを結合してなるDNAチップなどの核酸チップ若しくは核酸デバイスを用いると、測定系から未反応の核酸プローブを除く等の操作をすることがないので、標的核酸の濃度を短時間でかつ簡便に測定できる。また、複合微生物系又は共生微生物系に適用すると、当該系における特定菌株の存在量を特異的かつ短時間に測定できる。また、本発明は標的核酸若しくは遺伝子のSNPなどの多型又は変異などの解析若しくは測定する簡便な方法を提供している。
2)また、本発明の定量的PCR方法は、次のような効果を有する。
a.TaqDNAポリメラーゼによる標的核酸の増幅に阻害的に作用する因子が添加されていないことから、従来公知の特異性のある通常のPCRと同様の条件で定量的PCRを行うことができる。
b.また、PCRの特異性を高く保つことができるので、プライマーダイマーの増幅が遅くなることから、従来公知の定量的PCRと比較すると定量限界が約1桁のオーダー低くなる。
c.複雑な核酸プローブを用意する必要がないので、それに要する時間と費用が節約できる。
d.標的核酸の増幅効果も大きく、増幅過程をリアルタイムでモニタリングすることができる。
3)また、リアルタイム定量的PCR方法で得られたデータを解析する際、本発明のデータ解析方法を用いて、未知核酸コピー数の核酸試料について核酸のコピー数を求める検量直線を作成すると、検量線の相関係数は従来の方法により得られたものに較べて格段に高い。それで、本発明のデータ解析方法を用いると核酸の正確なコピー数を求めることができる。
4)また、本発明のリアルタイム定量的PCR方法によって得られたデータの解析方法に係るデータ解析用ソフトウエア、また、その解析方法の手順をプログラムとして記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、また、それを用いたリアルタイム定量的PCRの測定若しくは解析装置を用いると、相関係数の高い検量直線を自動的に作成することができる。
5)また、本発明の新規な核酸の融解曲線の分析方法を用いると、精度の高い、核酸のTm値を求めることができる。更に、当該方法に係るデータ解析用ソフトウエア、また、その分析方法の手順をプログラムとして記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、また、それを用いたリアルタイム定量的PCRの測定若しくは解析装置を用いると、正確なTm値を求めることができる
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
本発明の第一の特徴は、蛍光色素で標識された核酸プローブを用いる標的核酸の濃度を測定する方法において、当該核酸プローブが標的核酸にハイブリダイズしたときに生ずる、ハイブリダイゼーション前後における蛍光色素の発光の減少量を測定することにある。
本発明において、プローブ−核酸ハイブリッド複合体とは、本発明の蛍光色素で標識された核酸プローブが標的核酸とハイブリダイズした状態のもの(複合体)のことを云う。そして簡便化のために、以下、核酸ハイブリッド複合体と略称する。
蛍光色素−核酸複合体とは、蛍光色素が標的核酸と結合した複合体のことを云う。例えば、2重鎖核酸内にインターカレターが結合した状態ものを挙げることができる。
また、本発明において、DNA、RNA、cDNA、mRNA、rRNA、XTPs、dXTPs、NTPs、dNTPs、核酸プローブ、ヘルパー核酸プローブ(又は核酸ヘルパープローブ、又は単にヘルパープローブ)、ハイブリダイズ、ハイブリダイゼーション、インターカレーター、プライマー、アニーリング、伸長反応、熱変性反応、核酸融解曲線、PCR、RT−PCR、RNA−primed PCR、Stretch PCR、逆PCR、Alu配列を利用したPCR、多重PCR、混合プライマーを用いたPCR、PNAを用いたPCR法、ハイブリダイゼーションアッセイ方法(hybridization assays)、FISH(fluorescent in situ hybridization assays)方法、PCR方法(polymerase chain assays)、LCR方法(ligase chain reaction)、SD方法(strand displacement assays)、競合的ハイブリダイゼーション方法(competitive hybridization)、DNAチップ、核酸検出用(遺伝子検出用)デバイス,SNP(スニップ:一塩基置換多型)、複合微生物系等の用語は、現在、分子生物学、遺伝子工学、微生物工学等で一般的に使用されている用語と同じ意味である。
本発明において標的核酸の濃度を測定するとは、測定系の単数種若しくは複数種の核酸について、濃度を定量をすること、定量的検出をすること、単なる検出をすること、または、多型・変異などの解析をすることなどを云う。なお、複数種の核酸の場合は、同時に複数種の核酸の定量的検出、同時に複数種の核酸の単なる検出、または、同時に複数種の核酸の多型・変異などの解析をすることなどは、当然本発明の技術的範囲内のものである。
標的核酸濃度測定用デバイスとは各種のDNAチップなどのことをいう。その具体例としては、とりもなおさず各種のDNAチップを挙げることができる。本発明においては本発明の核酸プローブが適用できるならば、どのような形式のDNAチップでもよい。
蛍光色素で標識された核酸プローブ(以下、単に本発明の核酸プローブ又は本発明のプローブという。)を用いて、標的核酸の濃度を測定する方法(以下、簡便化のために、単に核酸測定方法という。)とは、ハイブリダイゼーション方法(hybridization assays)、FISH方法(fluorescent in situ hybridization assays)、PCR方法(polymerase chain assays)、LCR方法(ligase chain reaction)、SD方法(strand displacement assays)、競合的ハイブリダイゼーション方法(competitive hybridization)などの方法により標的核酸の濃度を測定することをいう。
従来、これらの方法では、蛍光色素で標識された核酸プローブを加えた後、標的核酸にハイブリダイズしなかった未反応の当該核酸プローブの蛍光色素を測定系から洗浄等の方法で除去し、標的核酸にハイブリダイズした当該核酸プローブに標識された蛍光色素を当該プローブから直接的に、又は当該プローブに間接的な手段を施して(例えば、酵素を作用させたりして)、発光させて、その発光量を測定する方法である。本発明は、これらの方法においてこのような複雑な操作をしないで目的核酸を測定することに特徴がある。
本発明において標的核酸とは、濃度の測定を目的とする核酸若しくは遺伝子のことを云う。精製の有無を問わない。また、濃度の大小も問わない。各種の核酸が混在していてもよい。例えば、複合微生物系(複数微生物のRNA若しくは遺伝子DNAの混在系)又は共生微生物系(複数の動植物及び/又は複数の微生物のRNA若しくは遺伝子DNAの混在系)における濃度の測定を目的とする特定核酸である。尚、標的核酸の精製が必要な場合は従来公知の方法で行うことができる。例えば、市販されている精製キット等を使用して行うことができる。上記の核酸の具体例として、DNA、RNA、PNA、オリゴデオキシリボヌクレオチド(oligodeoxyribonucleotides)、オリゴリボヌクレオチド(oligoribonucleotides)等、また、前記核酸の化学的修飾核酸を挙げることができる。化学的修飾核酸として2'-O-メチル(Me)RNA等を例示することができる。
本発明において蛍光色素は、一般に核酸プローブに標識して、核酸の測定・検出に用いられるものが便利に使用できるが、蛍光色素で標識された核酸プローブが標的核酸にハイブリダイズしたときに、プローブに標識した当該蛍光色素が、その発光を減少させるものが好適に用いられる。例えば、フルオレセイン(fluorescein)又はその誘導体類{例えば、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate)(FITC)若しくはその誘導体等、Alexa 488、Alexa 532、cy3、cy5、EDANS(5-(2'-aminoethyl)amino-1-naphthalene sulfonic acid)}、ローダミン(rhodamine)6G(R6G)又はその誘導体(例えば、テトラメチルローダミン(teramethylrhodamine)(TMR)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(tetramethylrhodamine isothiocyanate)(TMRITC)、x−ローダミン(x-rhodamine)、テキサスレッド(Texas red)、ボデピー(BODIPY)FL(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)、ボデピー(BODIPY)FL/C3(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)、ボデピー(BODIPY)FL/C6(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)、ボデピー(BODIPY)5-FAM(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)、ボデピー(BODIPY)TMR(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)、又はその誘導体(例えば、ボデピー(BODIPY)TR(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)、デピー(BODIPY)R6G(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)、ボデピー(BODIPY)564(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)、ボデピー(BODIPY)581(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)等を挙げることができる。これらの中でも、FITC、EDANS、6-joe、TMR、Alexa 488、Alexa 532、ボデピー(BODIPY)FL/C3(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)、ボデピー(BODIPY)FL/C6(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)等を好適なものとして、また、FITC、TMR、6-jeo、ボデピー(BODIPY)FL/C3(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)、ボデピー(BODIPY)FL/C6(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)をより好適なものとして挙げることができる。
標的核酸にハイブリダイズさせる本発明の核酸プローブは、オリゴデオキシリボヌクレオチドで構成されていてもよいし、オリゴリボヌクレオチドで構成されていてもよい。また、それらの両方を含むキメリックオリゴヌクレオチド(chimeric oligonucleodite)でもよい。それらのオリゴヌクレオチドは化学的修飾を受けたものでもよい。化学的修飾を受けたオリゴヌクレオチドをキメリックオリゴヌクレオチドの鎖中に介在させてもよい。
前記の化学的修飾を受けたオリゴヌクレオチドの修飾部位として、オリゴヌクレオチド末端部の末端水酸基若しくは末端リン酸基、インターヌクレオシドリン酸部位、ピリミジン環の5位の炭素、ヌクレオシドの糖(リボース若しくはデオキシリボース)部位を挙げることができる。好適にはリボース若しくはデオキシリボース部位を挙げることができる。具体的には、2'-O-アルキルオリゴリボヌクレオチド(2'-O-alkyloligoribonucleotides)(以下、2'-O-を2-O-に略記する。)、2-O-アルキレンオリゴリボヌクレオチド(2-o-alkyleneoligoribonucleotides)、2-O-ベンジルオリゴリボヌクレオチド(2-o-benzyloligoribonucleotides)を例示することができる。当該オリゴヌクレオチドは、オリゴリボヌクレオチドの任意の位置の単数若しくは複数のリボースの2’位炭素のOH基がアルキル基、アルキレン基若しくはベンジル基で修飾(エーテル結合で)されているものである。本発明においては、好適には、2-O-アルキルオリゴリボヌクレオチドのなかでも、2-O-メチルオリゴリボヌクレオチド、2-O-エチルオリゴリボヌクレオチド、2-O-ブチルオリゴリボヌクレオチド、2-O-ベンジルオリゴリボヌクレオチドが、2-O-アルキレンオリゴリボヌクレオチドの中では、2-O-エチレンオリゴリボクレオチドが、及び2-O-ベンジルオリゴリボヌクレオチドが、特に好適には、2-O-メチルオリゴリボヌクレオチド(以下、単に2-O-Meオリゴリボヌクレオチドと略記する。)が用いられる。このような化学的修飾を、オリゴヌクレオチドに施すことにより、標的核酸との親和性が高まり、本発明の核酸プローブのハイブリダイゼーション効率が向上する。ハイブリダイゼーション効率が高まると、本発明の核酸プローブの蛍光色素の蛍光強度の減少率が更に向上するので、標的核酸の濃度の測定が精度が更に向上する。
なお、本発明において、オリゴヌクレオチドなる用語は、オリゴデオキシリボヌクレオチド又はオリゴリボヌクレオチド若しくはその双方を意味するもので、それらを総称するものとする。
2-O-アルキルオリゴリボヌクレオチド、2-O-アルキレンオリゴリボヌクレオチド、2-O-ベンジルオリゴリボヌクレオチドは、公知の方法(Nucleic Acids Research、26巻、2224〜2229ページ、1998年)で合成できる。また、GENSET(株式会社)(フランス)が委託合成を行っているので、容易に入手できる。本発明者らは当該会社に当該化合物の合成を委託して実験を行って、本発明を完成した。
尚、2-O-メチルオリゴリボヌクレオチド(以下、単に2-O-Meオリゴリボヌクレオチドという。)のような修飾されたRNAをオリゴデオキシリボヌクレオチドの中に介在させた本発明の核酸プローブは主にRNA特にrRNAの測定に用いると好ましい結果が得られる。
本発明の核酸プローブを使用してRNAを測定する場合、当該プローブとハイブリダイズさせる前に、試料であるRNA溶液を、80〜100℃、好ましくは90〜100℃、最適には93〜97℃で、1〜15分間、好ましくは2〜10分間、最適には3〜7分間、加熱処理してRNAの高次構造を破壊することがハイブリダイゼーション効率を向上させるのに好適である。
更に、本発明の核酸プローブの、ハイブリダイゼーション配列領域へのハイブリダイゼーション効率を更に上げるためにヘルパープローブ(helper probe)をハイブリダイゼーション反応溶液に添加することが好適である。この場合、ヘルパープローブのオリゴヌクレオチドはオリゴデオキシリボヌクレオチド、オリゴリボヌクレオチドでも、また、前記と同様な化学的修飾を受けたオリゴヌクレオチドでもよい。前記のオリゴヌクレオチドの一例として、フォワード(forward)型として(5')TCCTTTGAGT TCCCGGCCGG A(3')、バックワード(back ward)型若しくはリバース(reverse ward)型として(5')CCCTGGTCGT AAGGGCCATG ATGACTTGAC GT(3')なる塩基配列のものを挙げることができる。化学的修飾を受けたオリゴヌクレオチドの好適な例として、2-O-アルキルオリゴリボヌクレオチド、特に2-O-Meオリゴリボヌクレオチドを例示できる。
本発明の核酸プローブの塩基鎖が35塩基以下の場合、ヘルパープローブの利用は、特に効果的である。35塩基鎖を超える本発明の核酸プローブを使用する場合は、標的のRNAを熱変性するだけでよい場合もある。
前記のようにして、本発明の核酸プローブをRNAにハイブリダイズさせると、ハイブリダイゼーション効率が高まるので反応液中のRNAの量に応じて蛍光強度が減少し、最終RNA濃度が約150pMまでRNAを測定できるようになる。
かくして、本発明は、本発明の核酸プローブを含有若しくは付帯する、標的核酸の濃度を測定する測定キットに前記のヘルパープローブを含有、付帯させるなる、標的核酸の濃度を測定する測定キットでもある。
核酸プローブを用いる従来のハイブリダイゼーション方法によるRNAの測定において、核酸プローブとしてオリゴデオキシリボヌクレオチド体又はオリゴリボヌクレオチド体が用いられてきた。RNAはそれ自体が強固な高次構造をとるため、プローブと標的RNAとのハイブリダイゼーション効率が悪く、定量性に乏しかった。そのために、RNAを変性させた後、メンブランに固定してからハイブリダイゼーション反応を行うという繁雑性を従来方法は有していた。これに対して、前記の本発明方法は、RNAの特定構造部と高い親和性を有するリボース部修飾核酸プローブを用いているので、従来方法に較べて高い温度でハイブリダイゼーション反応を行うことができる。それで、RNAの高次構造の前記悪影響は、前処理としての加熱変性処理、ヘルパープローブの併用だけで克服可能である。これにより本発明方法においてハイブリダイゼーション効率は実質的に100%になり、定量性が向上する。また、従来方法に較べて格段に簡便になる。
本発明のプローブの塩基数は5〜50であり、好ましくは10〜25、特に好ましくは15〜20である。50を超える場合は、FISH方法に用いたとき細胞膜の透過性が悪くなり、本発明の適用範囲を狭めることになる。5未満の場合は、非特異的ハイブリダイゼーションが惹起し易くなり、測定誤差が大きくなる。
そのプローブの塩基配列は、標的核酸に特異的にハイブリダイズするものであればよく、特に限定されない。好ましくは、蛍光色素で標識された核酸プローブが標的核酸にハイブリダイズしたとき、
(1)当該プローブにハイブリダイズした標的核酸の末端塩基部から1ないし3塩基離れて、標的核酸の塩基配列にG(グアニン)がすくなとも1塩基以上存在するように、当該プローブの塩基配列が設計されいる塩基配列、
(2)当該プローブの末端部分において核酸ハイブリッド複合体の複数の塩基対が少なくとも1対のG(グアニン)とC(シトシン)のペアーを形成するように、当該プローブの塩基配列が設計されている塩基配列、が好ましい。
本発明の核酸プローブのオリゴヌクレオチドは、通常の一般的オリゴヌクレオチドの製造方法で製造できる。例えば、化学合成法、プラスミドベクター、ファージベクター等を使用する微生物法等で製造できる(Tetrahedron letters、22巻、1859〜1862頁、1981年;Nucleic acids Research、14巻、6227〜6245頁、1986年)。尚、現在、市販されている核酸合成機を使用するのが好適である(例えば、ABI394(Perkin Elmer社製、USA))。
オリゴヌクレオチドに蛍光色素を標識するには、従来公知の標識法のうちの所望のものを利用することができる(Nature Biotechnology、14巻、303〜308頁、1996年;Applied and Environmental Microbiology、63巻、1143〜1147頁、1997年;Nucleic acids Research、24巻、4532〜4535頁、1996年)。例えば、5´末端に蛍光色素分子を結合させる場合は、先ず、常法に従って5´末端のリン酸基にスペーサーとして、例えば、-(CH2)n-SHを導入する。これらの導入体は市販されているので市販品を購入してもよい(メドランド・サーテイファイド・レージント・カンパニー(Midland Certified Reagent Company))。この場合、nは3〜8、好ましくは6である。このスペーサーにSH基反応性を有する蛍光色素又はその誘導体を結合させることにより標識したオリゴヌクレオチドを合成できる。このようにして合成された蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチドは、逆相等のクロマトグラフィー等で精製して本発明の核酸プローブとすることができる。
また、オリゴヌクレオチドの3’末端に蛍光色素を結合させることもできる。この場合は、リボース又はデオキシリボースの3’位CのOH基にスペーサーとして、例えば、-(CH2)n-NH2を導入する。これらの導入体も前記と同様にして市販されているので市販品を購入してもよい(メドランド・サーテイファイフド・レージント・カンパニー(Midland Certified Reagent Company))。また、リン酸基を導入して、リン酸基のOH基にスペサーとして、例えば、-(CH2)n-SHを導入する。これらの場合、nは3〜8、好ましくは4〜7である。このスペーサーにアミノ基、SH基に反応性を有する蛍光色素又はその誘導体を結合させることにより標識したオリゴヌクレオチドを合成できる。このようにして合成された蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチドは、逆相等のクロマトグラフィー等で精製して本発明の核酸プローブとすることができる。このアミノ基を導入する場合、キット試薬(例えば、Uni-link aminomodifier(CLONTECH社製、米国)、フルオ・リポターキット(FluoReporter Kit)F-6082、F-6083、F-6084、F-10220(いずれもモレクキュラー・プローベ(Molecular Probes)社製、米国))を用いるのが便利である。そして、常法に従って当該オリゴリボヌクレオチドに蛍光色素分子を結合させることができる。また、プローブ核酸の鎖内に蛍光色素分子を導入することも可能である(ANALYTICAL BIOCHEMISTRY 225,32-38頁(1998年))。
以上のようにして本発明の核酸プローブが調製できるが、好ましいプローブの形態は、3’又は5’末端が蛍光色素が標識されたものであり、その標識されている末端の塩基がG又はCであるものである。5’末端が標識され、3’末端が標識されていない場合、3’末端のリボース又はデオキシリボースの3’位炭素のOH基をリン酸基等、また3’末端のリボースの2’位炭素のOH基をリン酸基等で修飾してもよく何ら制限されない。
本発明の核酸プローブは、単に核酸測定だけでなく、標的核酸の多型(polymorphism)又は/及び変異(mutation)を解析若しくは測定する方法に好適に利用できる。特に標的核酸濃度測定用デバイス{DNAチップ(蛋白質 核酸 酵素、43巻、2004〜2011ページ、1998年)}に応用することによりより便利な標的核酸濃度測定用デバイスを提供する。また、当該デバイスを用いて標的核酸の多型(polymorphism)又は/及び変異(mutation)を解析若しくは測定する方法は極めて便利な方法である。すなわち、本発明の核酸プローブとのハイブリダイゼーションにおいて、GCペアーを形成するかどうかにより、蛍光強度が変化する。それで、本発明の核酸プローブを標的核酸にハイブリダイズさせ、発光強度を測定することにより、標的核酸の多型(polymorphism)又は/及び変異(mutation)を解析若しくは測定することができる。具体的方法は、実施例14、15に記した。この場合、標的核酸は各種の核酸増幅方法のうちの一つの方法により増幅された増幅物でもよいし、抽出されたものでもよい。また標的核酸はその種類を問わない。ただ、鎖中又は末端にグアニン塩基又はシトシン塩基が存在しておればよい。鎖中又は末端にグアニン塩基又はシトシン塩基が存在しないと蛍光強度が減少しない。よって、本発明方法により、G→A、G←A、C→T、C←T、G→C、G←Cの変異、又は置換、すなわち、1塩基多型(single nucleotide polymorphism(SNP))などの多型(polymorphism)等を解析若しくは測定することができる。なお、現在、多型分析は、マキサム・ギルバート(Maxam-Gilbert)法、ジデオキシ(dideoxy)法を用いて標的核酸の塩基配列を決定することにより行われているのが現状である。
それで、本発明の核酸プローブを標的核酸の多型(polymorphism)及び変異(mutation)を解析若しくは測定する測定キットに含有させることにより、標的核酸の多型(polymorphism)又は/及び変異(mutation)を解析若しくは測定する測定キットとして好適に使用することができる。
本発明の標的核酸の多型(polymorphism)又は/及び変異(mutation)を解析若しくは測定する方法により得られるデータを解析する場合に、標的核酸が本発明の核酸プローブとハイブリダイズしたときの反応系の蛍光強度値を、前記のものがハイブリダイズしていないときの反応系の蛍光強度値により補正する処理過程を設けると、処理されたデータは信頼性の高いものになる。
それで本発明は、標的核酸の多型(polymorphism)又は/及び変異(mutation)を解析若しくは測定する方法のためのデータ解析方法を提供する。
また、本発明の特徴は、標的核酸の多型(polymorphism)又は/及び変異(mutation)を解析若しくは測定する測定装置において、標的核酸が本発明の核酸プローブとハイブリダイズしたときの反応系の蛍光強度値を、前記のものがハイブリダイズしていないときの反応系の蛍光強度値により補正処理する手段を有することを特徴とする標的核酸の多型(polymorphism)又は/及び変異(mutation)を解析若しくは測定する測定装置である。
また、本発明の特徴は、標的核酸の多型(polymorphism)又は/及び変異(mutation)を解析若しくは測定する方法により得られるデータを解析する場合に、標的核酸が本発明の核酸プローブとハイブリダイズしたときの反応系の蛍光強度値を、前記のものがハイブリダイズしていないときの反応系の蛍光強度値により補正する処理過程をコンピュータに実行させるための手順をプログラムとして記録したコンピュータ読取可能な記録媒体である。
本発明の核酸プローブは固体(支持層)表面、例えばスライドガラスの表面に固定されていてもよい。この場合、蛍光色素で標識されていない端が固定されているのが好ましい。この形式は現在DNAチップと言われる。遺伝子発現(gene expression)のモニタリング、塩基配列(base sequence)の決定,変異解析(mutation analysis),1塩基多型(single nucleotide polymorphism(SNP))などの多型解析(polymorphism analysis)等に使用できる。勿論、核酸測定用デバイス(チップ)として使用することもできる。
本発明の核酸プローブを例えばスライドガラスの表面に結合させるには、ポリリジン、ポリエチレンイミン、ポリアルキルアミンなどのポリ陽イオンをコートしたスライドガラス、アルデヒド基を導入したスライドガラス、アミノ基を導入したスライドガラスを先ず用意する。そして、i)ポリ陽イオンをコートしたスライドガラスには、プローブのリン酸基を反応させる、ii)アルデヒド基を導入したスライドガラスには、アミノ基を導入したプローブを反応させる、iii)アミノ基を導入したスライドガラスには、PDC(pyridinium dichromate)導入、アミノ基又はアルデヒド基導入したプローブを反応させる、などにより達成できる(Fodor,P.A.,et al.,Science,251,767-773(1991);Schena,M.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.,93,10614-10619(1996);McGal,G.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.,93,13555-13560(1996);Blanchad,A.P.,et al.,Biosens.Bioelectron.,11,687-690(1996))。
本発明の核酸プローブを固体表面にアレー状に配列、結合させたデバイスは核酸測定がより便利になる。
この場合、塩基配列の異なる多くの本発明の核酸プローブを、個別に同一固体表面上に結合しているデバイスをつくることにより、同時に多種類の標的核酸を測定できる。
このデバイスにおいては、プローブ毎に、前記固体の本発明の核酸プローブを結合した面と反対側の面に少なくとも一つの温度センサーとヒーターが設け、そのプローブを結合した前記固体の領域が最適温度条件になるように温度調節され得るように設計されているのが好適である。
このデバイスにおいては、本発明の核酸プローブ以外のプローブ、例えば、一つの分子内に二つの異なった蛍光色素を有し、標的核酸にハイブリダイズしていないときは、二つの蛍光色素の相互作用により、消光若しくは発光しているが、標的核酸にハイブリダイズすると発光若しくは消光するように設計された構造をもつ核酸プローブ、即ち、前記の分子ビーコン(Tyagi et al.,Nature Biotech.,14:303-308,1996)等を結合したものも好適に使用できる。それで、このようなデバイスも本発明の技術的範囲内に含まれる。
本発明のデバイスを用いる測定方法の基本的操作は、核酸プローブを結合した固体表面上にmRNA、cDNA、rRNA等の標的核酸を含む溶液をのせ、ハイブリダイズさせるだけである。これにより、標的核酸量に応じて蛍光量の変化がおこり、その蛍光変化量から標的核酸の測定が可能となる。また、一つの固体表面上に塩基配列の異なる本発明の核酸プローブを多数種結合させることにより、一度に多くの標的核酸の濃度を測定することができる。それで、DNAチップと全く同じ用途で標的核酸の測定に使用できるので新規のDNAチップである。最適の反応条件では標的核酸以外の核酸は蛍光の発光量を変化させないために、未反応な核酸を洗浄する操作は必要がない。更に、微小ヒーターにて本発明の核酸プローブ毎に温度コントロールすることにより、当該プローブ毎に最適反応条件にコントロールできるために正確な濃度の測定が可能となる。また、微小ヒーターにて温度を連続的に変化させ、その間、蛍光量を測定することにより、本発明の核酸プローブと標的核酸との解離曲線を解析することができる。その解離曲線の違いからハイブリダイズした核酸の性質の判定や、SNPの検出ができる。
従来の標的核酸の濃度測定用デバイスは、蛍光色素で修飾されていない核酸プローブを固体表面に結合(固定:fix)し、それに蛍光色素で標識した標的核酸をハイブリダイズさせた後、ハイブリダイズしていない標的核酸を洗い流して、残存している蛍光色素の蛍光強度を測定していた。
蛍光色素で標的核酸を標識するには、例えば、特定mRNAを標的とした場合、次のステップ(steps)を取る:(1)細胞から抽出されたmRNA全部を抽出する。(2)それから、逆転写酵素(reverse transcriptase)を用いて、蛍光色素で修飾されヌクレオサイドをとり込ませながらcDNAを合成する。本発明ではこのような操作は必要がない。
当該デバイスには各種のプローブが多数スポットしてあるが、その各々のプローブにハイブリダイズする核酸の最適ハイブリダイゼーション条件、例えば、温度等は各々異なる。よって本来であれば、プローブ毎(スポット毎)に、ハイブリダイゼーション反応、洗浄操作を最適な条件で行う必要がある。しかし、それは物理的に不可能であるので、すべてのプローブ毎に同一の温度でハイブリダイゼーションを行い、また、洗浄も同一温度で同一洗浄液で行われている。それで、ハイブリダイゼーションが期待されている核酸がハイブリダイズしなかったり、ハイブリダイズしてもハイブリダイゼーションが強固でないので容易に洗い流されてしまう等の欠点を有していた。そのような原因で核酸の定量性が低いものであった。本発明ではこの洗浄操作が必要ないのでこのような欠点を有しない。また、スポットの底に微小ヒータを設け、ハイブリダイゼーション温度をコントロールすることで、本発明のプローブ毎に最適温度でハイブリダイゼーション反応を行わせることができる。それで、本発明は定量性が格段に向上したものである。
本発明においては、前記した本発明の核酸プローブ又はデバイスを使用することで、標的核酸の濃度を短時間で、簡便かつ特異的に測定することができる。以下に測定法を述べる。
本発明の測定方法において、先ず、測定系に本発明の核酸プローブを添加し、標的核酸にハイブリダイズさせる。その方法は、通常の既知方法で行なうことができる(Analytical Biochemistry、183巻、231〜244頁、1989年;Nature Biotechnology、14巻、303〜308頁、1996年;Applied and Environmental Microbiology、63巻、1143-1147頁、1997年)。例えば、ハイブリダイゼーションの条件は、塩濃度が0〜2モル濃度、好ましくは0.1〜1.0モル濃度、pHは6〜8、好ましくは6.5〜7.5である。
反応温度は、本発明の核酸プローブが標的核酸の特異的部位にハイブリダイズして得られる核酸ハイブリッド複合体のTm値±10℃の範囲内であるのが好ましい。このようにすることにより非特異的なハイブリダイゼーションを防止することができる。Tm−10℃未満のときは、非特異的ハイブリダイゼーション起こり、Tm+10℃を越えるときは、ハイブリダイゼーションが起こらない。尚、Tm値は本発明の核酸プローブを設計するのに必要な実験と同様にして求めることができる。すなわち、本発明の核酸プローブとハイブリダイズする(当該核酸プローブに対して相補する塩基配列の)オリゴヌクレオチドを前記の核酸合成機等で化学合成し、当該核酸プローブとの核酸ハイブリッド複合体のTm値を通常の方法で測定する。
また、その反応時間は1秒間〜180分間、好ましくは5秒間〜90分間である。1秒間未満のときは、ハイブリダイゼーションにおいて未反応の本発明の核酸プローブが多くなる。また、反応時間を余り長くしても特に意味がない。なお、反応時間は核酸種、すなわち、核酸の長さ、あるいは塩基配列によって大きく影響を受ける。
前記のようにして、本発明の核酸プローブを標的核酸にハイブリダイズさせる。そして、ハイブリダイゼーションの前後で、蛍光色素の発光量を蛍光光度計で測定し、発光の減少量を計算する。その減少量の大きさは標的核酸の濃度と比例するので、標的核酸の濃度を求めることができる。
反応液中の標的核酸の濃度:0.1〜10.0nMであるのが好ましい。反応液中の本発明の核酸プローブの濃度:1.0〜25.0nMであるが好ましい。検量線を作成する場合は、標的核酸に対して、本発明の核酸プローブを1.0〜2.5の比率で用いるのが望ましい。
実際、試料中の未知濃度の標的核酸を測定する場合、上記の条件で先ず、検量線を作成する。そして、複数の濃度の対応する本発明の核酸プローブを試料に添加して、それぞれ蛍光強度値の減少を測定する。そして、測定された蛍光強度の減少値のうちの最大なものに対応するプローブ濃度を好ましいプローブ濃度とする。好ましい濃度のプローブで測定された蛍光強度の減少値もって、検量線から標的核酸の定量値を求めることになる。
本発明の核酸測定法の原理は、前記のごとくであるが、本発明は各種の核酸測定方法、例えば、FISH方法、PCR方法、LCR方法、SD方法、競合的ハイブリダイゼーション方法、TAS方法、などに適用できる。
以下にその例を記す。
a)FISH方法に適用した場合
即ち、本発明は色々の種類の微生物が混在するか、若しくは一種類以上の微生物が動物や植物由来の細胞と共に混在していて、相互に単離できない微生物系(複合微生物系、共生微生物系)の細胞内若しくは細胞のホモジネート等の核酸測定に好適に適用できる。ここでいう微生物とは一般的にいう微生物のことで、特に限定されるものではない。例えば、真核微生物、原核微生物、その他、マイコプラズマ、ウイルス、リッケチャ等を挙げることができる。そして、ここの系でいう標的核酸とは、これらの微生物系において、例えば、どのように活躍しているのか調べたい菌株の細胞に特異性を有する塩基配列をもつ核酸のことである。例えば、特定菌株の5SrRNA、16SrRNA若しくは23SrRNA又はそれらの遺伝子DNAの特定配列である。
本発明の核酸プローブを複合微生物系又は共生微生物系に添加し、特定菌株の5SrRNA、16SrRNA若しくは23SrRNA又はそれらの遺伝子DNAの量を測定することにより、当該系における特定菌株の存在量を測定することできる。尚、複合微生物系又は共生微生物系のホモジネートに前記核酸プローブを添加して、ハイブリダイゼーション前後における蛍光色素の発光の減少量を測定して特定菌株の存在量を測定する方法も、本発明の技術的範囲内とする。
前記の測定方法は、例えば、以下の如くである。即ち、本発明の核酸プローブを添加する前に、複合微生物系又は共生微生物系の温度、塩濃度、pHを前記の条件に調整する。複合微生物系又は共生微生物系における特定菌株は、細胞数として107〜1012個/ml、好ましくは109〜1010個/mlに調整することが好適である。それは希釈、又は遠心分離等による濃縮等で行うことができる。細胞数が107個/ml未満のときは、蛍光強度が弱く、測定誤差が大きくなる。1012個/mlを超えるときは、複合微生物系又は共生微生物系の蛍光強度が強すぎるため、特定微生物の存在量を定量的に測定することができなくなる。
添加する本発明の核酸プローブの濃度は、複合微生物系又は共生微生物系における特定菌株の細胞数に依存する。細胞数1×108/mlに対して0.1〜10.0nM濃度、好ましくは0.5〜5nM濃度、より好ましくは1.0nM濃度である。0.1nM未満のときは、特定微生物の存在量を正確に反映したデータにならない。しかし、最適な本発明の核酸プローブの量は、細胞内の標的核酸量に依存するために一概にはいえない。
次に本発明において前記核酸プローブと特定菌株の5SrRNA、16SrRNA若しくは23SrRNA又はその遺伝子DNAにハイブリダイズさせるときの反応温度は、前記した条件と同様である。また、その反応時間も前記の条件と同様である。
前記のような条件で本発明の核酸プローブを特定菌株の5SrRNA、16SrRNA若しくは23SrRNA又はそれの遺伝子DNAにハイブリダイズさせ、ハイブリダイゼーション前後の複合微生物系又は共生微生物系の蛍光色素の発光の減少量を測定する。
前記のようにして測定された蛍光色素の発光の減少量は、複合微生物系又は共生微生物系における特定菌株の存在量と比例する。それは5SrRNA、16SrRNA若しくは23SrRNA又はそれらの遺伝子DNAの量と特定菌株の存在量とが比例するからである。
尚、本発明において、複合微生物系又は共生微生物系における微生物以外の成分は、本発明の核酸プローブと特定菌株の5SrRNA、16SrRNA若しくは23SrRNA又はそれらの遺伝子DNAとのハイブリダイゼーションを阻害しない限り、また、本発明の核酸プローブの蛍光色素の発光を阻害をしない限り、特に限定されない。例えば、KH2PO4、K2HPO4、NaH2PO4、Na2HPO4等のリン酸塩、硫安、硝安、尿素等の無機窒素類、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムイオン等の金属イオンの各種塩類、マンガン、亜鉛、鉄、コバルトイオン等の微量金属イオンの硫酸塩、塩酸塩、炭酸塩等の各種塩類、更にビタミン類等が適当に含まれていてもよい。もし、上記の阻害が観察される場合は、遠心分離等の操作で複数の微生物が混在する細胞系から細胞を分離し、再び緩衝液系等に懸濁すればよい。
上記の緩衝液としては、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、トリス・塩酸緩衝液、トリス・グリシン緩衝液、クエン酸緩衝液、グット緩衝液等の各種緩衝液をも用いることができる。緩衝液の濃度は、ハイブリダイゼーション、FRET現象、蛍光色素の発光を阻害しない濃度である。その濃度は緩衝液の種類に依存する。緩衝液のpHは4〜12、好ましくは5〜9である。
b)PCR方法に適用する場合
PCR方法であればどのような方法でも適用できるのであるが、リアルタイム定量的PCR方法に適用する場合を以下に記す。
即ち、リアルタイム定量的PCR方法において、本発明の特定の核酸プローブを用いてPCRを行い、反応前後の蛍光色素の発光の減少をリアルタイムで測定するものである。
本発明のPCRとは各種方法のPCRを意味するものである。例えば、RT−PCR、RNA−primed PCR、Stretch PCR、逆PCR、Alu配列を利用したPCR、多重PCR、混合プライマーを用いたPCR、PNAを用いたPCR法等をも含む。また、定量的とは、本来の定量測定の他に、検出程度の定量測定をも意味するのは前記同様である。
前記のとおり、標的核酸とは、存在量を測定する核酸のことを云う。精製の有無を問わない。また、濃度の大小も問わない。各種の核酸が混在していてもよい。例えば、複合微生物系(複数微生物のRNA若しくは遺伝子DNAの混在系)又は共生微生物系(複数の動植物及び/又は複数微生物のRNA若しくは遺伝子DNAの混在系)における増幅目的の特定核酸である。尚、標的核酸の精製が必要な場合は従来公知の方法で行うことができる。例えば、市販されている精製キット等を使用して行うことができる。
従来公知の定量的PCR方法はdATP、dGTP、dCTP、dTTP若しくはdUTP、標的核酸(DNA又はRNA)、Taqポリメラーゼ、プライマー、並びに蛍光色素で標識した核酸プローブ若しくはインターカレーターを用いてMgイオンの存在下に、温度を低温、高温を繰り返しつつ標的核酸を増幅し、増幅過程の蛍光色素の発光の増加量をリアルタイムでモニタリングするものである(実験医学、15巻、7号、46〜51ページ、1997年、羊土社)。
本発明の定量的PCR方法は、本発明の核酸プローブを用いて標的核酸を増幅させ、増幅過程において、蛍光色素の発光の減少量を測定することを特徴とするものである。本発明の定量的PCRにおいて、好ましい本発明の核酸プローブとしては、その塩基数は5〜50であり、好ましくは10〜25、特に好ましくは15〜20で、PCRサイクル中に標的核酸の増幅産物とハイブリダイズするものであれば、どのようなものでもよい。また、フォワード(forward)型、リバース(reverse)型のどちらに設計してもよい。
例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)核酸プローブの末端部、好ましくは末端が、本発明の蛍光色素で標識されており、当該核酸プローブが標的核酸にハイブリダイズしたとき、当該プローブの蛍光色素で標識された末端部もしくは末端にハイブリダイズした標的核酸の末端塩基から1ないし3塩基離れて、標的核酸の塩基配列にG(グアニン)が少なくとも1塩基存在するように、当該プローブの塩基配列が設計されている。
(2)前記(1)のうち、核酸プローブが3’末端において蛍光色素で標識されている。
(3)前記(1)のうち、核酸プローブが5’末端において蛍光色素で標識されている。
(4)核酸プローブが、標的核酸にハイブリダイズしたとき、プローブ末端部分において核酸ハイブリッド複合体の複数塩基対が少なくとも一つのG(グアニン)とC(シトシン)のペアーを形成するように、当該プローブの塩基配列が設計されている。
(5)前記(4)のうち、核酸プローブの3’末端塩基がG又はCで、かつ3’末端が蛍光色素で標識されている。
(6)前記(4)のうち、核酸プローブの5’末端塩基がG又はCで、かつ5’末端が蛍光色素で標識されている。
(7)前記(1)〜(6)の核酸プローブが、3’末端のリボース若しくはデオキシリボースの3’位炭素の水酸基、又は3’末端のリボースの3’位若しくは2’位炭素の水酸基がリン酸化されている。
(8)前記(1)〜(6)の核酸プローブのオリゴヌクレオチドが、化学的に修飾されている。
前記(6)の場合、標的核酸の塩基配列から、どうしても3’若しくは5’末端がG又はCに設計できない場合は、標的核酸の塩基配列から設計したプライマーであるオリゴヌクレオチドの5’末端に、5’−グアニル酸若しくはグアノシン又は5’−シチジル酸若しくはシチジンを付加しても、本発明の目的は好適に達成できる。3’末端に5’−グアニル酸若又は5’−シチジル酸を付加しても、本発明の目的は好適に達成できる。よって、本発明において、3’、又は5’末端の塩基がG又はCになるように設計した核酸プローブとは、標的核酸の塩基配列から設計したプローブの他に、当該のプローブの5’末端に5’−グアニル酸若しくはグアノシン又は5’−シチジル酸もしくはシチジンを付加してなるプローブ、並びに当該のプローブの5’末端に5’−グアニル酸又は5’−シチジル酸を付加してなるプローブを含むものと定義する。
特に上記の(7)の本発明の核酸プローブはプライマーとして利用されないように設計したものである。FRET現象を用いるリアルタイム定量的PCR方法において使用する(蛍光色素で標識した)二つのプローブの代わりに、一つの本発明の核酸プローブを用いてPCRを行うものである。PCRの反応系に当該プローブを添加し、PCRを行う。核酸伸長反応時、標的核酸若しくは増幅標的核酸にハイブリダイズしていた当該プローブがポリメラーゼにより分解され、核酸ハイブリッド複合体から分解除去される。このときの反応系又は核酸変性反応が完了した反応系の蛍光強度値を測定する。また、標的核酸若しくは増幅した増幅標的核酸が当該プローブとハイブリダイズしている反応系(アニーリング反応、若しくはポリメラーゼにより当該プローブが核酸ハイブリッド複合体から除かれるまでの核酸伸長反応時の反応系)の蛍光強度値を測定する。そして、前者からの蛍光強度値の減少率を算出することにより増幅された核酸を測定する。当該プローブが標的核酸若しくは増幅標的核酸から、核酸変性反応により完全に解離するか、又は核酸伸長時にポリメラーゼにより当該プローブと標的核酸若しくは増幅標的核酸との核酸ハイブリッド複合体から分解除去されたときは蛍光強度値は大きい。しかし、当該プローブが標的核酸若しくは増幅標的核酸に十分にハイブリダイズしているアニーリング反応が完了している反応系若しくは核酸伸長反応時にポリメラーゼにより当該プローブと標的核酸若しくは増幅標的核酸との核酸ハイブリッド複合体から分解除去されるまでの反応系の蛍光強度値は前者より減少している。蛍光強度値の減少は増幅された核酸量に比例する。
この場合、当該プローブが標的核酸とハイブリダイズしたときのその核酸ハイブリッド複合体のTmが、プライマーの核酸ハイブリッド複合体のTm値の±15℃、好ましくは±5℃の範囲になるように、(7)のプローブの塩基配列が設計されることが望ましい。プローブのTm値が、プライマーのTm値−5℃、特に−15℃未満であると、プローブがハイブリダイズしないために、蛍光色素の発光の減少は起こらない。反対にプライマーのTm値+5℃、特に+15℃を超えると、プローブが標的核酸以外の核酸ともハイブリダイズするので、プローブの特異性が失われる。
上記(7)以外のプローブ、特に(6)のプローブは、プライマーとしてPCRの反応系に添加するものである。蛍光色素で標識されたプライマーを用いるPCR方法は本発明以外未だ知られていない。PCRの反応が進むに従い、増幅された核酸は本発明の実施に有用な蛍光色素で2次標識される。それで、核酸変性反応が完了している反応系の蛍光強度値は大きいが、アニーリング反応が完了しているか若しくは核酸伸長反応時の反応系においては、反応系の蛍光強度は前者の蛍光強度より減少する。
PCRの反応は通常のPCR方法と同様の反応条件で行うことができる。それで、Mgイオン濃度が低濃度(1〜2mM)である反応系で標的核酸の増幅を行うことができる。勿論、従来公知の定量的PCRにおいて使用されている高濃度(2〜4mM)のMgイオン存在下の反応系でも本発明は実施できる。
尚、本発明のPCR方法において、本発明のPCRを行い、その増幅産物について核酸の融解曲線を分析を行ってTm値を求めるできる。この方法は新規な核酸の融解曲線の分析方法である。本方法において本発明のPCR方法に用いた核酸プローブ又はプライマーとして用いた本発明の核酸プローブが好適に利用できる。
この場合、本発明の核酸プローブの塩基配列を、SNP(スニップ;一塩基置換多型)を含む領域と相補的な配列にすることで、PCR終了後、その核酸の本発明の核酸プローブから解離曲線を解析することにより、その解離曲線の違いからSNPの検出ができる。本発明の核酸プローブの配列としてSNPを含む配列と相補的な塩基配列を使用すれば、プローブ配列とSNPを含む配列との解離曲線より得られるTm値は、SNPを含まない配列との解離曲線から得られるTm値より高くなる。
本発明の第二の特徴は、前記のリアルタイム定量的PCR方法ので得られるデータを解析する方法の発明である。
リアルタイム定量的PCR方法は、現在、PCRを行わせる反応装置、蛍光色素の発光を検出する装置、ユーザーインターフェース、即ち、データ解析方法の各手順をプログラム化して、それを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体(別称:Sequence Detection Software System)、及びそれらを制御し、データ解析するコンピュータから構成される装置で、リアルタイムで測定されている。それで、本発明の測定もこのような装置で行われる。
以下に、先ず、リアルタイム定量的PCRの解析装置から説明する。本発明において用いる装置は、PCRをリアルタイムでモニタリングできる装置であればどのような装置でもよいが、例えば、ABI PRISMTM 7700塩基配列検出システム(Sequence Detection System SDS 7700)(パーキン・エルマー・アプライド・バイオシステム社(Perkin Elmer Applied Biosytems社、USA))、ライトサイクラーTMシステム(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社、ドイツ)等を特に好適なものとして挙げることができる。
尚、前記のPCR反応装置は、標的核酸の熱変性反応、アニーリング反応、核酸の伸長反応を繰り返し行う装置(例えば、温度を95℃、60℃、72℃に繰り返し行うことができる。)である。また、検出システムは、蛍光励起用アルゴンレーザー、スペクトログラフ並びにCCDカメラからなっている。更に、データ解析方法の各手順をプログラム化して、それを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、コンピュータにインストールされて使用され、コンピュータを介して上記のシステムを制御し、検出システムから出力されたデータを解析処理するプログラムを記録したものである。
コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されているデータ解析用プログラムは、サイクルごとの蛍光強度を測定する過程、測定された蛍光強度を、サイクルの関数として、すなわちPCRのamplification plotとしてコンピュータのデスプレー上に表示する過程、蛍光強度が検出され始めるPCRサイクル数(threshold cycle number:Ct)を算出する過程、Ct値から試料核酸のコピー数を求める検量線を作成する過程、前記各過程のデータ、プロット値を印字する過程、からなっている。PCRが指数的に進行している場合、PCR開始時の標的核酸のコピー数のLog値と、Ctとの間には直線関係が成り立つ。従って標的核酸の既知量のコピー数を用いて検量線を作成し、未知コピー数の標的核酸を含有するサンプルのCtを検出することにより、標的核酸のPCR開始時のコピー数を計算できる。
上記のデータ解析方法等のPCR関連発明は、前記のようなリアルタイム定量的PCR方法で得られたデータを解析する方法である。以下に各特徴について記す。
第一の特徴は、リアルタイム定量的PCR方法で得られたデータを解析する方法において、各サイクルにおける増幅した核酸が蛍光色素と結合したとき、あるいは増幅した核酸が本発明の核酸プローブとハイブリダイズしたときの反応系の蛍光強度値を、各サイクルにおける前記の蛍光色素と核酸が結合したもの、すなわち蛍光色素−核酸複合体、あるいは前記本発明の核酸プローブと標的核酸がハイブリダイズしたもの、すなわち核酸ハイブリッド複合体が解離したときの反応系の蛍光強度値により補正する演算処理過程、即ち、補正演算処理過程である。
「増幅した標的核酸が蛍光色素と結合したとき、あるいは増幅した標的核酸が本発明の核酸プローブとハイブリダイズしたときの反応系」とは、具体的に例示すると、PCRの各サイクルにおける40〜85℃、好ましくは50〜80℃の反応温度を有する核酸伸長反応あるいはアニーリングのときの反応系を挙げることができる。そして、反応が完了した反応系を意味する。実際の温度は増幅した核酸の長さに依存する。
また、「前記の蛍光色素−核酸複合体、あるいは前記の核酸ハイブリッド複合体が解離したときの反応系」とは、PCRの各サイクルにおける核酸の熱変性の反応系、具体的には、反応温度90〜100℃、好ましくは94〜96℃のときのもので、反応が完了した系を例示できる。
補正演算処理過程の補正演算処理としては本発明の目的に合致するものであればどのようなものでもよいのであるが、具体的には、次の〔数式1〕あるいは〔数式2〕による処理過程を含むものを例示することができる。
n=fhyb,n/fden,n 〔数式1〕
n=fden,n/fhyb,n 〔数式2〕
〔式中、
n:〔数式1〕あるいは〔数式2〕により算出されたn次サイクルにおける補正演算処理値、
hyb,n:n次サイクルにおける、増幅した核酸が蛍光色素と結合したとき、あるいは増幅した核酸が本発明の核酸プローブとハイブリダイズしたときの反応系の蛍光強度値、
den,n:n次サイクルにおける、前記の蛍光色素−核酸複合体、あるいは核酸ハイブリッド複合体が解離したときの反応系の蛍光強度値〕
尚、本過程においては、上記の処理で得られた補正演算処理値をコンピュータのデスプレー上に表示及び/又は当該値を各サイクル数の関数としてグラフの形で同様に表示及び/又は印字するサブステップを含むものである。
第二の特徴は、各サイクルにおける〔数式1〕あるいは〔数式2〕による補正演算処理値を次の〔数式3〕あるいは〔数式4〕に代入し、各サンプル間の蛍光変化割合あるいは蛍光変化率を算出し、それらを比較するデータ解析方法である。
n=fn/fa 〔数式3〕
n=fa/fn 〔数式4〕
〔式中、
n:n次サイクルにおける、〔数式3〕あるいは〔数式4〕により算出された蛍光変化割合あるいは蛍光変化率、
n:n次サイクルにおける〔数式1〕あるいは〔数式2〕による補正演算処理値
a:〔数式1〕あるいは〔数式2〕による補正演算処理値で、fnの変化が観察される以前の任意のサイクル数のものであるが、通常は、例えば、10〜40サイクルのもの、好適には15〜30サイクルのもの、より好適には20〜30サイクルのものが採用される。〕
尚、本過程においては、上記処理で得られた算出値コンピュータのデスプレー上に表示及び/又は印字する、又は比較値若しくは当該値を各サイクル数の関数としてグラフの形で同様に表示及び/又は印字するサブステップを含むものであるが、〔数式1〕あるいは〔数式2〕による補正演算処理値については、上記サブステップを適用しても、しなくともよい。
第三の特徴は、
(3.1)〔数式3〕あるいは〔数式4〕により算出された蛍光変化割合あるいは蛍光変化率のデータを用いて、〔数式5〕、〔数式6〕あるいは〔数式7〕による演算処理する過程、
logb(Fn)、ln(Fn) 〔数式5〕
logb{(1−Fn)×A}、ln{(1−Fn)×A} 〔数式6〕
logb{(Fn−1)×A}、ln{(Fn−1)×A} 〔数式7〕
〔式中、
A、b:任意の数値、好ましくは整数値、より好ましくは自然数である。そして、A=100、b=10のときは、{(Fn−1)×A}は百分率(%)で表わされる。
n:〔数式3〕あるいは〔数式4〕により算出されたnサイクルにおける蛍
光変化割合あるいは蛍光変化率〕、
(3.2)前記(3.1)の演算処理値が一定値に達したサイクル数を求める演算処理過程、
(3.3)既知濃度の核酸試料におけるサイクル数と反応開始時の標的核酸のコピー数の関係式を計算する演算処理過程、
(3.4)未知試料におけるPCR開始時の標的核酸のコピー数を求める演算処理過程、
を有するデータ解析方法である。そして、(3.1)→(3.2)→(3.3)→(3.4)の順からなる過程が好適である。
前記(3.1)〜(3.3)の各過程は、それぞれの処理で得られた演算処理値をコンピュータのデスプレー上に表示及び/又は当該値を各サイクル数の関数としてグラフの形で前記同様に表示及び/又は印字するサブステップを含むものであってもよい。前記(3.4)の過程で得られた演算処理値は、少なくとも印字される必要があるので、当該過程は印字するサブステップを含む。前記(3.4)で得られた演算処理値を更にコンピュータのデスプレイ上に表示してもよい。
尚、〔数式1〕あるいは〔数式2〕による補正演算処理値、〔数式3〕あるいは〔数式4〕による算出処理値を、各サイクル数の関数としてにグラフの形でコンピュータのデスプレー上に表示及び/又は印字しても、しなくてもよいので、それらの表示及び/又は印字のサブステップは必要に応じて追加すればよい。
前記データ解析方法は、リアルタイム定量的PCR方法が蛍光色素の発光の減少量を測定するものである場合に特に有効である。その具体例として、前記の本発明のリアルタイム定量的PCR方法である。
第4の特徴は、リアルタイム定量的PCRの解析装置において、前記本発明のリアルタイム定量的PCR方法のためのデータ解析方法を実行する演算及び記憶手段を有するリアルタイム定量的PCRの測定及び/又は解析装置である。
第5の特徴は、リアルタイム定量的PCRの解析装置を用いてPCRを解析するデータ解析方法の各手順をプログラム化して、そのプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体において、前記本発明のデータ解析方法の各手順をコンピュータに実行させることができるようにしたプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体である。
第6の特徴は、核酸測定方法において、前記本発明のデータ解析方法、測定及び/又は解析装置、記録媒体を利用する新規な核酸の測定方法である。
また、第7の特徴は、前記の本発明の核酸の融解曲線の分析方法、即ち、本発明のPCR方法を行って核酸のTm値を求める方法によって得られるデータを解析する方法である。
即ち、本発明のPCR法により増幅された核酸について、低い温度から核酸が完全に変性するまで、温度を徐々に上げる過程(例えば、50℃から95℃まで)、この過程において、短い時間間隔(例えば、0.2℃〜0.5℃の温度上昇に相当する間隔)で蛍光強度を測定する過程、測定結果を時間の関数としてデスプレー上に表示する過程、即ち、核酸の融解曲線を表示する過程、この融解曲線を微分して微分値(−dF/dT、F:蛍光強度、T:時間)を得る過程、その値を微分値としてデスプレー上に表示する過程、その微分値から変曲点を求める過程からなる、解析方法である。本発明においては、蛍光強度は温度が上がるごとに増加する。本発明においては、各サイクルにおける核酸伸長反応時、好ましくはPCR反応終了時の蛍光強度値を熱変性反応時の蛍光強度値を用いて割る演算処理する過程を上記の過程に追加することにより、より好ましい結果が得られる。
前記の本発明の新規なPCR方法のデータ解析方法に、本発明の核酸の融解曲線の分析をする方法を追加してなる本発明のリアルタイム定量的PCRの測定及び/又は解析装置も本発明の技術的範囲内である。
更に、本発明の特徴の一つは、本発明の核酸の融解曲線の分析をする方法の各手順をコンピュータに実行させることができるようにしたプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体、また、前記本発明のPCR方法のデータ解析方法の各手順をコンピュータに実行させることができるようにしたプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体において、本発明の核酸の融解曲線の分析をする方法の各手順をコンピュータに実行させることができるようにしたプログラムを追加して記録したコンピュータ読取可能な記録媒体である。
本発明の前記のデータ解析方法、装置、及び記録媒体は、医学、法医学、人類学、古代生物学、生物学、遺伝子工学、分子生物学、農学、植物育種学等の各種の分野で利用できる。また、複合微生物系、共生微生物系と云われ、色々の種類の微生物が混在するか若しくは少なくとも一種類の微生物が他の動物、植物由来の細胞と共に混在していて相互に単離できない微生物系等に好適に利用できる。ここで云う微生物とは一般的に云う微生物のことで、特に限定されるものではない。例えば、真核微生物、原核微生物、その他マイコプラズマ、ウイルス、リッケチャ等を挙げることができる。
また、本発明の前記データ解析方法、装置及び記録媒体の一つ又はそれ以上を用いて、複合微生物系又は共生微生物系における特定菌株の5SrRNA、16SrRNA若しくは23SrRNA又はそれらの遺伝子DNAのコピー数を定量することにより、当該系における特定菌株の存在量を測定することができる。それは、5SrRNA、16SrRNA若しくは23SrRNAの遺伝子DNAのコピー数は菌株よって一定であるからである。本発明においては、複合微生物系又は共生微生物系のホモジネートを用いて、本発明のリアルタイム定量的PCRを行い、特定菌株の存在量を測定することが可能である。この方法も、本発明の技術的範囲内とする。
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
実施例1
大腸菌(Escherichia coli)の16SrRNAの核酸塩基配列にハイブリダイズする、即ち、(3')CCGCTCACGC ATC(5')の塩基配列を有する核酸プローブの調製を以下の通りに行った。
核酸プローブの調製:(3')CCGCTCACGC ATC(5')の塩基配列をもつオリゴデオキシリボヌクレオチドの3’末端のデオキシリボースの3’位炭素のOH基に、−(CH27−NH2を結合したものを、メドランド・サーテイファイド・レージント・カンパニー社(Midland Certified Reagent Company、米国)から購入した。更に、モレキュラープローブ(Molecular Probes)社からフロオ・リポーターキット(FluoReporter Kit)F-6082(ボデピーFLのプロピオン酸サクシニミジルエステル(BODIPY FL propionic acid succinimidyl ester)の他に、当該化合物をオリゴヌクレオチドのアミン誘導体に結合する試薬を含有するキット)を購入した。当該キットを前記購入のオリゴヌクレオチドに作用させて、本実施例で使用するボデピーFLで標識した核酸プローブを合成した。
合成物の精製:得られた合成物を乾固し乾固物を得た。それを0.5M NaHCO3/Na2CO3緩衝液(pH9.0)に溶解した。当該溶解物をNAP−25カラム(ファルマシア社製)でゲルろ過を行い、未反応物を除去した。更に逆相HPLC(B gradient:15〜65%、25分間)を以下の条件で行った。そして、溶出するメインピークを分取した。分取した画分を凍結乾燥して、最初のオリゴヌクレオチド原料2mMより23%の収率で核酸プローブを得た。
Figure 0004950414
実施例2
殺菌したニュウトリエントブロス(NB)(Difco社製)液体培地50ml(組成:NB、0.08g/100ml)が添加された200ml容の(殺菌された)三角フラスコを用いて、大腸菌JM109株を37℃で一晩振蘯培養した。次に、本培養液に99.7%エタノールを当量添加した。このエタノール添加培養液2mlを2.0ml容量のエッペンドルフ遠心チューブで遠心分離し、菌体を得た。30mMリン酸緩衝液(ソーダ塩)(pH:7.2)100μlで菌体を一回洗浄した。菌体を130mMのNaCl含有の前記リン酸緩衝液100μlに懸濁した。当該懸濁液を氷冷中で40分間超音波処理し(出力:33w、発振周波数:20kHz、発振法:0.5秒発振、0.5秒休止)、ホモジネートを作製した。
前記ホモジネートを遠心分離した後、上澄液を採取し蛍光光度計のセルに移した。それを36℃に温調した。それに36℃に予め加温した前記核酸プローブの溶液を最終濃度で5nMとなるように添加した。36℃に温調しながら90分間大腸菌16SrRNAと核酸プローブとをハイブリダイズさせた。そして蛍光光度計で蛍光色素の発光量を測定した。
ハイブリダイゼーション前の蛍光色素の発光量は、上記の上澄液の代りに、130mMのNaCl含有の30mMのリン酸緩衝液(ソーダ塩)(pH:7.2)を用いて測定した値を採用した。核酸プローブの量と上澄液の量の比を変えて発光量を測定した(励起光503nm;測定蛍光色512nm)。その結果を図1に示した。図1から分かるように、上澄液の量比が増加することにより蛍光色素の発光が減少した。即ち、本発明においては、核酸プローブにハイブリダイズする標的核酸量に比例して、蛍光色素の発光の減少量の大きさが大きくなることが分かる。
実施例3
核酸プローブの調製:大腸菌JM109株の23SrRNAにハイブリダイズする(5')CCCACATCGTTTTGTCTGGG(3')の塩基配列をもつオリゴヌクレオチドの5’末端ヌクレオチドの3’位炭素のOH基に、−(CH2)7−NH2を結合したものを、実施例1と同様にメドランド・サーテイファイド・レージント・カンパニー社(Midland Certified Reagent Company、米国)から購入した。更に、実施例1と同様にモレキュラープローブ(Molecular Probes)社からフロオ・リポーターキット(FluoReporter Kit)F-6082(ボデピーFLのプロピオン酸サクシニミジルエステル(BODIPY FL propionic acid succinimidyl ester)の他に、当該化合物をオリゴヌクレオチドのアミン誘導体に結合する試薬を含有するキット)を購入した。当該キットを前記オリゴヌクレオチドに作用させて、ボデピーFLで標識した核酸プローブを合成した。得られた合成物を実施例1と同様に精製して、最初のオリゴヌクレオチド原料2mMより25%の収率でボデピーFLで標識した核酸プローブを得た。
実施例4
実施例2で得られた大腸菌JM109株の菌体に実施例2と同一の培地及び培養条件で調製したシュウドモナス・プウシモビルス 421Y株(Pseudomonas paucimobilis)(現在名:スフィンゴモナス・プウシモビルス)(FERM P-5122)の菌体をOD660値で大腸菌JM109株と同濃度混合し、複合微生物系を調製した。得られた混合液(大腸菌JM109株の菌体濃度は実施例2と同一)について実施例2と同じ方法によりホモジネートを調製した。実施例3で調製した核酸プローブを用いて、励起光を543nm、また、測定蛍光色を569nmにする以外は、実施例2と同様な実験を行った結果、実施例2と同様な結果を得た。
実施例5
蛍光消光現象における標的核酸の塩基選択性、即ち、本発明の塩基特異性を検討した。下記に示す標的合成デオキシリボオリゴヌクレオチド(30mer)の10種類(poly a〜poly j)をDNA合成機ABI394(Perkin Elmer社製、米国)で調製した。
更に、上記の合成DNAに対応するデオキシリボオリゴヌクレオチドの5’末端にボデピーFLで標識した下記に示す本発明のプローブを調製した。
上記の合成DNAに対応するプライマーDNAの5’末端のリン酸基に、−(CH2)6-NH2を結合したものをメドランド・サーテイファイド・レージント・カンパニー社(Midland Certified Reagent Company、米国)から購入した。更に、モレキュラープローブ(Molecular Probes)社からフロオ・リポーターキット(FluoReporter Kit)F-6082(ボデピーFL/C6のプロピオン酸サクシニジルエステル(BODIPY FL propionic acid succinidyl ester)の他に、当該化合物をオリゴヌクレオチドのアミン誘導体に結合させる試薬を含有するキット)を購入した。当該キットを前記購入のプライマーDNAに作用させて下記のボデピーFLで標識した本発明のプローブprobe a〜d、及びf〜hのを合成した。そして対応する合成デオキシリボオリゴヌクレオチドとハイブリダイズしたときに、蛍光色素の発光がどの程度減少するかを下記の条件下に調べ、本発明のプローブの特異性を検討した。
Figure 0004950414
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Figure 0004950414
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Figure 0004950414
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その結果を表1に示した。表1から分かるように、蛍光色素で標識された核酸プローブが標的DNA(オリゴデオキシリボヌクレオチド)にハイブリダイズしたときに、当該末端部において、当該プローブと標的DNAとがハイブリダイズした末端塩基部から1〜3塩基離れて、標的DNAの塩基配列にG(グアニン)が少なくとも1塩基以上存在するように、当該プローブの塩基配列が設計されていることが好適である。また、蛍光色素で標識された核酸プローブが標的DNAにハイブリダイズしたときに、当該末端部において核酸ハイブリッド複合体の複数の塩基対がGとCのペアーを少なくとも一対以上形成するように、当該プローブの塩基配列が設計されていることが好適であることが表1から分かる。
実施例6
下記のような塩基配列の標的核酸と本発明の核酸プローブを調製した。標的核酸内のG及び本発明の核酸プローブ内のGの数の影響について、前記実施例と同様にして調べた。
Figure 0004950414
Figure 0004950414
Figure 0004950414
Figure 0004950414
Figure 0004950414
表2から分かるように、標的核酸内のGの数、本発明のプローブ内のGの数はそれほど蛍光強度の減少に影響しないことが認識される。
実施例7
前記と同様にして下記のような塩基配列の標的核酸と本発明の核酸プローブを調製した。なお、本実施例における本発明の核酸プローブはオリゴヌクレオチドの5’末端部をボデピーFL/C6で標識したものである。標的核酸内の塩基種及び本発明の核酸プローブ内の塩基種の影響について、前記実施例と同様にして調べた。
Figure 0004950414
Figure 0004950414
Figure 0004950414
表3及び前記の実施例から分かるように、(i)蛍光色素で標識される本発明のプローブの末端がCで構成され、標的核酸がハイブリダイズしたとき、GCペアーを形成するとき、(ii)蛍光色素で標識される本発明のプローブの末端がC以外の塩基で構成された場合、蛍光色素で標識されている個所の塩基と、標的核酸の塩基との塩基ペアーより、標的核酸の3’末端側にGが少なくとも1個以上存在する場合に、蛍光強度の減少率が大きい。
実施例8
本発明の核酸プローブに標識する色素の種類について、前記実施例と同様にして調べた。なお、本発明のプローブは、前記実施例7のプローブzを、また、標的核酸は前記実施例7のオリゴヌクレオチドzを用いた。
その結果を、表4に示した。表から分かるように、本発明に用いる蛍光色素として好適なものは、FITC、BODIPY FL、BODIPY FL/C3、6-joe、TMRなどを挙げることができる。
Figure 0004950414
実施例9(標的核酸(16SrRNA)の加熱処理の効果の実験)
本発明の核酸プローブの調製:大腸菌JM109株の16SrRNAの1156塩基目から1190塩基の塩基配列に相当するKYM−7株の16SrRNA塩基配列に特異的にハイブリダイズする(5')CATCCCCACC TTCCTCCGAG TTGACCCCGG CAGTC(3')(35塩基対)の塩基配列をもち、1〜16及び25〜35塩基目がデオキシリボヌクレオチド、17〜24塩基目が2’位炭素のOH基をメチル基で修飾(エーテル結合で修飾)したリボオリゴヌクレオチドからなり、その5’末端のリン酸基のOH基を-(CH2)7-NN2で修飾して結合したオリゴヌクレオチドを、実施例1と同様にメドランド・サーテイファイド・レージント・カンパニー社(Midland Certified Reagent Company、米国)から購入した。また、2-O-Meプローブ(2-O-Meオリゴヌクレオチドからなるプローブを単に2-O-Meプローブという。)に使用する2-O-Meオリゴヌクレオチドは、GENSET株式会社(フランス)に合成を委託し、得たものである。
更に実施例1と同様にモレキュラープローブ(Molecular Probes)社からフロオ・リポーターキット(FluoReporter Kit)F-6082(ボデピーFL/C6のプロピオン酸サクシニミジルエステル(BODIPY FL/C6 propionic acid succinimidyl ester)の他に、当該化合物をオリゴヌクレオチドのアミン誘導体に結合する試薬を含有するキット)を購入した。当該キットを前記オリゴヌクレオチドに作用させて、ボデピーFL/C6で標識した本発明の核酸プローブを合成した。得られた合成物を実施例1と同様に精製して、最初のオリゴヌクレオチド原料2mMより23%の収率でボデピーFL/C6で標識した本発明の核酸プローブを得た。このプローブを35塩基鎖2-O-Meプローブと名づけた。
(5')TCCTTTGAGT TCCCGGCCGG A(3')の塩基配列を有するオリゴリボヌクレオチドを前記同様にしてDNA合成機を用いて合成して、フォワード(forward)型のヘルパープローブとした。一方、(5')CCCTGGTCGT AAGGGCCATG ATGACTTGAC GT(3')の塩基配列を有するオリゴリボヌクレオチドを前記同様にしてDNA合成機を用いて合成して、バックワード(back ward)型すなわちリバース型ヘルパープローブとした。
35塩基鎖2-O-Meプローブ、フォワード型のヘルパープローブ及びリバース型ヘルパープローブを各々25nMになるように下記に示す組成の緩衝液に溶解させ、75℃に加温した(プローブ溶液)。
前記の16SrRNAを95℃で5分加熱処理した後、それを下記に示す反応条件においた前記のプローブ溶液に添加した後、蛍光測定機器パーキンエルマー(Perkin Elmer)LS-50Bで蛍光強度を測定した。その結果を図2に示した。尚、上記の加熱処理しない16SrRNAを用いたものをコントロールとした。加熱処理した実験区においては、蛍光強度の減少が大きいことが図2から分かる。この結果は、16SrRNAを95℃で加熱処理することで本発明のプローブとより強いハイブリダイゼーションをしていることを示している。
Figure 0004950414
実施例10(2'-O-Meオリゴヌクレオチド及びヘルパープローブのハイブリダイゼーション効率向上への寄与の実験)
前記の16SrRNAにハイブリダイズする下記の各種の本発明の核酸プローブ及び各種のヘルパープローブを前記実施例9と同様にして調製した。また、2-O-Meプローブに使用する2-O-Meオリゴヌクレオチドは、すべてGENSET株式会社(フランス)に合成を委託し、得たものである。そして下記の条件にて、本発明の2-O-Meプローブの効果、当該プローブの塩基鎖の長さの影響、及びヘルパープローブの効果について、下記の図3A、B、C、及びDの実験系で前記実施例9と同様にして検討した。その結果を図3に示した。
図から、本発明の2-O-Meプローブがハイブリダイゼーション効率に寄与していることが分かる。また、2-O-Meプローブの塩基鎖が短い場合にヘルパープローブがハイブリダイゼーション効率を高めるのに役立っている。
1)35塩基鎖2-O-Meプローブ: 前記実施例9と同じプローブ、
2)35塩基鎖DNAプローブ: 前記1)の35塩基鎖2-O-Meプローブと同じ塩基配列であるが、オリゴヌクレオチドがデオキシリボースで構成されているプローブ、
3)17塩基鎖2-O-Meプローブ: 前記1)の35塩基鎖2-O-Meプローブと同じ塩基配列であるが、5’末端から8塩基分、3’末端から10塩基分のヌクレオチドを削除したプローブ、
4)17塩基鎖DNAプローブ: 前記2)の33塩基鎖DNAプローブと同じ塩基配列であるが、3’末端から16塩基分のヌクレオチドを削除したプローブ、
5)フォワード型2-O-Meヘルパープローブ: 前記実施例9のフォワード型ヘルパープローブの中央8塩基分(5’末端から数えて9塩基〜16塩基分)のリボースの2’位炭素のOH基を、メチル基で修飾(エーテル結合)したヘルパープローブ、
6)リバース型2-O-Meヘルパープローブ: 前記実施例9のリバース型ヘルパープローブの中央8塩基分(5’末端から数えて9塩基〜16塩基分)のリボースの2’位炭素のOH基を、メチル基で修飾(エーテル結合)したヘルパープローブ、
7)フォワード型DNAヘルパープローブ: 前記実施例9のフォワード型ヘルパープローブの塩基配列と同じ塩基配列であるが、オリゴヌクレオチドがデオキシリボヌクレオチドで構成されているヘルパープローブ、
8)リバース型DNAヘルパープローブ: 前記実施例9のリバース型ヘルパープローブの塩基配列と同じ塩基配列であるが、オリゴヌクレオチドがデオキシリボヌクレオチドで構成されているヘルパープローブ、
9)35塩基オリゴリボヌクレオチド: (5')CATCCCCACC TTCCTCCGAG TTGA CCCCGG CAGTC(3')なる塩基配列を有するオリゴリボヌクレオチド、
10)17塩基鎖オリゴリボヌクレオチド: (5')CCTTCCTCCG AGTTGAC(3')なる塩基配列を有するオリゴリボヌクレオチド。
Figure 0004950414
Figure 0004950414
Figure 0004950414
Figure 0004950414
Figure 0004950414
実施例11(rRNA測定のための検量線の作成)
前記rRNAを、0.1〜10nMの範囲のさまざまな濃度において、95℃で5分間加熱後、得られた核酸溶液を予め下記反応条件においた反応液に添加し、1000秒後、蛍光強度の減少をパーキンエルマーLS-50Bを使用して測定した。その結果を図4に示した。図から検量線は0.1〜10nMにおいて直線性を示すことが分かる。なお、下記の35塩基鎖2-O-Meプローブは実施例9と同じプローブである。
Figure 0004950414
実施例12(FISH方法)
セルロモナス(Cellulomonas)sp.KYM-7(FERM P-11339)及びアグロバクテリウム(Agrobacterium)sp. KYM-8(FERM P-16806)の各々のrRNAにハイブリダイズする下記の本発明の35又は36塩基鎖オリゴデオキシリボヌクレオチド2-O-Meプローブを前記と同様にして調製した。各プローブの塩基配列は下記の通りである。
セルロモナスsp.KYM-7のrRNA測定のための35塩基鎖オリゴデオキシリボヌクレオチド2-O-Meプローブ:
(5')CATCCCCACC TTCCTCCGAG TTGACCCCGG CAGTC(3')(アンダーライン部分がメチル基で修飾されている。)。
アグロバクテリウムsp.KYM-8のrRNA測定のための36塩基鎖オリゴデオキシリボヌクレオチド2-O-Meプローブ:
(5')CATCCCCACC TTCCTCTCGG CTTATCACCG GCAGTC(3')(アンダーライン部分がメチル基で修飾されている。)。
セルロモナスsp.KYM-7及びアグロバクテリウムsp.KYM-8を下記の培地組成の培地で下記の培養条件で混合培養し、培養時間毎に培養物を採取した。それらから、rRNAをRNeasy Maxikit(QIAGEN社)を用いて調製した。当該rRNAを95℃で5分加熱後、予め反応条件においた反応液に添加し、70℃、1000秒間反応させた後、蛍光強度をパーキンエルマーLS-50Bを使用して測定した。その結果を図5に示した。尚、全rRNAはリボグリーン(RiboGreen)total RNA Quantification Kit(会社名:モレキュラープローブ(molecular probes)、所在地名:Eugene,Oregon,USA)を用いて測定した。
図から分かるように、各菌株のrRNAの動態は全rRNAの動態と一致した。また、各菌株のrRNAの合計量は全rRNAと一致した。このことは、本発明方法はFISH方法において有効な方法になることを示している。
・培地組成(g/l):デンプン,10.0;アスパラギン酸,0.1;K2HPO4,5.0;KH2PO4,2.0;MgSO4・7H2O,0.2;NaCl,0.1;(NH4)2SO4;0.1.
・培地100mlを500ml容のコニカルフラスコに分注し、該フラスコを120℃で10分間、オートクレーブ釜を用いて殺菌した。
・培養条件:前記の菌株を斜面培地で予め培養した。該斜面培地より1白金耳の菌体をとり、前記の殺菌したコニカルフラスコの培地に接種した。30℃、150rpmで撹拌培養した。
Figure 0004950414
以下実施例13に、標的核酸の多型及び変異を解析若しくは測定する方法を記す。
実施例13
下記に示した塩基配列をもつ4種類のオリゴヌクレオチドを前記実施例5のDNA合成機を用いて合成した。また、前記実施例5と同様にして、下記の塩基配列の本発明の核酸プローブを合成した。該プローブと各々のオリゴヌクレオチドを溶液中でハイブリダイズさせた後、蛍光強度の変化から1塩基置換の評価ができるかどうか検討した。本発明の核酸プローブの塩基配列は、標的オリゴヌクレオチドのうちのいずれかの3’末端にGが存在する場合に、そのオリゴヌクレオチドの塩基配列に100%マッチするように設計されている。ハイブリダイゼーション温度は、プローブと標的オリゴヌクレオチドとの間の全塩基対(base-pairs)が100%ハイブリダイズできる40℃に設定した。プローブ及び標的オリゴヌクレオチドの濃度、緩衝液の濃度,蛍光測定装置、蛍光測定条件、実験操作などは、前記実施例5と同様である。
Figure 0004950414
その結果を表5に示した。表から、標的オリゴヌクレオチドNo.1〜3においては、蛍光強度に変化は観察されなかったが、標的オリゴヌクレオチドNo.4においては84%の減少が観察された。
Figure 0004950414
本発明において、標的核酸(例えば上記標的オリゴヌクレオチドNo.1〜4)の多型及び/又は変異を解析若しくは測定する方法により得られるデータ(例えば表5のカラムA及びBのデータ)を解析する方法において、標的核酸が本発明の核酸プローブ(上記の核酸プローブ)とハイブリダイズしたときの反応系の蛍光強度値を、前記のハイブリダイズしていないときの反応系の蛍光強度値により補正演算処理するとは、表3の(A−B)/Bの計算をいう。
以上の結果より、標的核酸が2本鎖の場合、G→A、G←A、C→T、C←T、G→C、G←Cの置換を検出できることが明らかになった。
実施例14
図6に本発明のDNAチップのモデルの一例を図示した。先ず、実施例13で調製した本発明のプローブである3'TTTTTTTTGGGGGGGGC5'BODIPY FL/C6のの3’末端のリボースの3’位炭素のOH基にアミノ基を導入して調製した修飾プローブ、また、スライドガラスを反応基としてエポキシ基を有するシランカップリン剤でスライドガラスの表面を処理した表面処理済スライドガラスを用意した。上記の修飾プローブを含む溶液をDNAチップ作成装置GMSTM417ARRAYER(TAKARA)で該表面処理済スライドガラス上にスポットした。そうすると、3’末端で上記修飾プローブがガラス面に結合した。該スライドガラスを密閉容器内に4時間位おき反応を完結させた。そして該スライドガラスを0.2%SDS溶液、水に1分程度交互に2回づつ漬けた。更にホウ素溶液(水300mlにNaBH41.0gを溶かしたもの。)に5分位つけた。95℃の水に2分つけてから、素早く0.2%SDS溶液、水に1分程度交互に2回づつ漬けて試薬を洗い流した。室温で乾燥した。このようにして本発明のDNAチップを調製した。
更に、ガラスの下面の修飾プローブの各スポットに対応する位置に図のような微小な温度センサーとヒータを設けることにより、本発明のDNAチップに高性能を付与することができた。
このDNAチップを用いて標的核酸を測定する場合を説明する。該プローブに標的核酸がハイブリダイズしていないとき、又はハイブリダイズしても蛍光色素標識末端でGCペアーを形成しないとき、若しくは当該プローブと標的核酸とがハイブリダイズした末端塩基部分から1ないし3塩基離れて、標的核酸の塩基配列にG(グアニン)又はシトシン(C)が少なくとも1つ存在しないときは、蛍光強度に変化ない。しかし、その反対に、該プローブに標的核酸がハイブリダイズしているとき、又はハイブリダイズしても蛍光色素標識末端でGCペアーを形成しているとき、若しくは当該プローブと標的核酸とがハイブリダイズした末端塩基部分から1ないし3塩基離れて、標的核酸の塩基配列にG(グアニン)又はシトシン(C)が少なくとも1つ存在するときは蛍光強度が減少する。この蛍光強度はDNAチップ解析装置GMSTM418アレースキャナー(Array Scanner)(TAKARA)を使用して測定できる。
実施例15:本発明のDNAチップを用いた一塩基多型(SNPs)の検出実験
I)標的核酸の調製:(5')AAACGATGTG GGAAGGCCCA GACAGCCAGG ATGTTGGCTT AGAAGCAGCC(3')の塩基配列をもつオリゴデオキシリボヌクレオチドを、DNA合成機ABI394(Perkin Elmer社製、米国)を用いて合成し、標的核酸とした。
II)核酸プローブの調製:標的核酸の5’末端から1塩基の配列(アンダーライン部)にハイブリダイズする塩基配列をもつ、下記の6個のオリゴデオキシリボヌクレオチドを、DNA合成機ABI394(Perkin Elmer社製、米国)を用いて合成した。そして、3'-Amino-Modifier C7 CPG(グレンリサーチ、カタログ番号20ー2957)を用いて、3’末端のデオキシリボースの3’位のOH基をアミノ化した。更に5’末端のリン酸基を実施例5と同様な方法でBODIPY FLで標識した。
1)プローブ100(100%マッチ):(5')CCTTCCCACA TCGTTT(3')、
2)プローブ−T(1塩基ミスマッチ):(5')CCTTCCCATA TCGTTT(3')、
3)プローブ−A(1塩基ミスマッチ):(5')CCTTCCCAAA TCGTTT(3')、
4)プローブ−G(1塩基ミスマッチ):(5')CCTTCCCAGA TCGTTT(3')、
5)プローブ−TG(2塩基ミスマッチ):(5')CCTTCCCTGA TCGTTT(3')、
6)プローブ−TGT(3塩基ミスマッチ):(5')CCTTCCCTGT TCGTTT(3')、
III)DNAチップの調製
全てのDNAプローブを、滅菌蒸留水に溶解して、1μM濃度の溶液にした。DNAマイクロアレイヤー装置(DNAマイクロアレイヤーNo.439702、32ピン型、およびDNAスライドインデックスNo.439701からなる手動式のチップアレイヤーである。greiner社)を用いて、DNAチップ用スライドグラス(Black silylated slides、greiner社)の上に、前記プローブ溶液をスポテイング(spotting)した。スポット終了後10分間反応させ、プローブをスライドグラス上に固定化した。その後、50mMのTE緩衝液(pH:7.2)にて洗浄した。なお、各プローブ溶液につき、4スポットづつスポッテングした。
本発明のDNAチップの模式図を図6に示した。スライドグラス上に固定化された本発明のプローブは、標的核酸にハイブリダイズしないときはBODIPY FLは発色しているが、ハイブリダイズしているときは発色が、ハイブリダイズしないときのものよりも少ない。すなわち減少する。スライドグラスはマイクロヒーターで加熱されるようになっている(本発明では、下記に示すように顕微鏡用透明加熱板(MP-10MH-PG、(株式会社)北里サプライ)で行われた。)。
IV)SNPsの検出測定
100μM濃度の標的核酸溶液{50mMのTE緩衝液(pH:7.2)使用}を上記のごとくに調製したDNAチップの上にのせた。カバーグラスで覆い、標的核酸が漏れないようにマニキュアにてカバーグラスをシールした。
検出測定のための装置類の概略は図7に示した。先ず、オリンパス正立顕微鏡(AX80型)の試料台に顕微鏡用透明加熱板(MP-10MH-PG、(株式会社)北里サプライ)をのせた。当該板上に前記に調製した本発明のDNAチップを置き、95℃から33℃まで3℃刻みで変化させ、30分かけて反応させた。各スポットの反応過程の蛍光強度変化を、冷却CCDカメラ(C5810型、浜松フォトニクス社)にて画像取り込み形式で測定した。
取り込み画像を画像解析装置(画像解析ソフト(TPlab spectrum;Signal Analytics社,Verginia)がインストールされたパソコン(NEC))にて解析し、各スポットの輝度を算出し、温度と輝度の関係を求めた。
実験結果を図8に示した。図から全てのプローブで蛍光強度が減少していることが分かる。従って、本発明の方法により、本発明のプローブと標的核酸との解離曲線を簡便にモニタリングすることができる。また、標的核酸と100%マッチするプローブ100と一塩基ミスマッチするプローブとのTm値の差は10℃以上あるので、解離曲線から両者を容易に識別することができる。すなわち本発明のDNAチップを使用することによりSNPsの解析が容易にできることがわかる。
以下、実施例16〜19に本発明のPCR方法を記す。
実施例16
大腸菌のゲノムDNAにおける16SrRNA遺伝子を標的核酸として、当該核酸の増幅のための(BODIPY FL/C6で標識した)プライマー(本発明の核酸プローブ)を調製した。
プライマー1(Eu800R:リバース型)の調製:(5')CATCGTTTAC GGCGTGGAC(3')の塩基配列をもつオリゴデオキシリボヌクレオチドを、DNA合成機ABI394(Perkin Elmer社製、米国)を用いて合成し、更に当該オリゴデオキシリボヌクレオチドの5’末端のリン酸基をホスファターゼ処理してシトシンとし、そのシトシンの5’位の炭素OH基に、-(CH2)9-NH2を結合したオリゴヌクレオチドを、ミドランド・サーテイファイド・レージンド・カンパニー社(米国)から購入した。更に、モレキュラープローブ社からフロオ・リポーターキット(FluoReporter Kits)F-6082(ボデピーFL/C6のプロピオン酸サクシニミジルエステル(BODIPY FL propionic acid succinimidyl ester)の他に、当該化合物をオリゴヌクレオチドのアミン誘導体に結合させる試薬を含有するキット)を購入した。前記購入したオリゴヌクレオチドに当該キットを作用させて、本発明のボデピーFL/C6で標識したプライマー1を合成した。
合成物の精製:得られた合成物を乾固し乾固物を得た。それを0.5M Na2CO3/NaHCO3緩衝液(pH9.0)に溶解した。当該溶解物をNAP−25カラム(ファルマシア社製)でゲルろ過を行い、未反応物を除去した。更に逆相HPLC(B gradient:15〜65%、25分間)を以下の条件で行った。そして、溶出するメインピークを分取した。分取した画分を凍結乾燥して本発明のプライマー1を、最初のオリゴヌクレオチド原料2mMより50%の収率で得た。
Figure 0004950414
実施例17
プライマー2(Eu500R/forward:フォワード型)の調製:(5')CCAGCAGCCG CGGTAATAC(3')の塩基配列をもつオリゴデオキシリボヌクレオチドの5’末端に蛍光色素(BODIPY FL/C6)で標識したプライマー2を実施例14と同様にして収率50%で調製した。
実施例18
殺菌したニュトリエントブロス(NB)(Difco社製)液体培地5ml(組成:NB、0.08g/100ml)を含有する試験管を用いて、大腸菌JM109株を37℃で一晩振蘯培養した。培養液1.5mlを1.5ml容量の遠心チューブで遠心分離し、菌体を得た。この菌体から、DNeasy Tissue Kit(キアゲン(QIAGEN)社、ドイツ国)を用いてゲノムDNAを抽出した。その抽出は本キットのプロトコルに従った。その結果、17ng/μlのDNA溶液を得た。
実施例19
上記の大腸菌のゲノムDNA、プライマー1及び/又はプライマー2を使用して、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社発売のライトサイクラーTMシステム(LightCyclerTM System)を用いて常法通りにPCR反応を行った。操作は当該システム機器の手順書に従った。
また、上記システムにおいてPCRは、当該手順書に記されている核酸プローブ(FRET現象を利用する二個のプローブ)と通常のプライマー(蛍光色素で標識されていない通常のプライマー)の代りに本発明プライマー1及び/又は2を用いる以外は当該手順書通りに行った。
PCRは次のコンポーネントのハイブリダイゼーション溶液中で行った。
Figure 0004950414
尚、標的核酸である大腸菌16SrDNAは、図9の説明欄に示される実験区の濃度で、また、プライマーは、同様に図9の説明欄に示される実験区のプライマー1及び/又は2の組合せで実験を行った。
また、上記のTaq溶液は次の試薬の混合液である。
Figure 0004950414
尚、Taq溶液、Taq DNAポリメラーゼ溶液はロシュ・ダイアグノスティックス株式会社発売のDNAマスターハイブリダイゼーションプローブ(DNA Master Hybridization Probes)キットのものである。特にTaq DNAポリメラーゼ溶液は10×conc.(赤いキャップ)を10倍に希釈して用いた。また、Taqスタートは、クローンテック社(USA)より販売されているTaq DNAポリメラーゼ用の抗体で、これを反応液に添加することで70℃までTaq DNAポリメラーゼの活性を抑えることができる。即ち、ホット・スタート(hot start)を行うことができるものである。
Figure 0004950414
測定は、ライトサイクラーTMシステムを用いて行った。その際、該システムにあるF1〜3の検出器にうち、F1の検出器を用い、その検出器のゲインは10、励起強度は75に固定した。
その結果を図9及び10に示した。図9及び10から、蛍光色素の発光の減少が観察される時点のサイクル数と標的核酸の大腸菌16SrDNAのコピー数が比例していることが分かる。尚、図においては、蛍光色素の発光の減少量を蛍光強度の減少値として表現した。
図11は、サイクル数の関数として、大腸菌16SrDNAのコピー数を表現した大腸菌16SrDNAの検量線を示す。相関係数は0.9973で、極めてよい相関を示した。
以上の結果から分かるように、本発明の定量的PCR方法を用いると標的核酸の当初のコピー数を測定できるようになる。即ち、標的核酸の濃度の測定ができる。
実施例20
実施例19においては、本発明のプローブをプライマーとしてPCRを行ったが、本実施例では従来法に用いるFRET現象を利用する二個のプローブの代わりに本発明のプローブを用いて下記の条件で本発明のPCRを行った。
a)標的核酸:大腸菌の16S−rDNA
b)使用プライマー:
・フォワードプライマー E8F:(5')AGAGTTTGAT CCTGGCTCAG(3')
・リバースプライマー E1492R:(5')GGTTACCTTG TTACGACTT(3')
c)使用プローブ:BODIPY FL-(5')CGGGCGGTGT GTAC(3')
d)使用PCR測定機器:ライトサイクラーTMシステム
e)PCRの条件:
変性反応 :95℃、10秒(第一回のみ、60秒間、95℃)
アニーリング反応:50℃、5秒
核酸伸長反応 :72℃、70秒
全サイクル数 :70サイクル
Figure 0004950414
その結果を図12に示した。図から、蛍光色素の発光の減少が観察される時点のサイクル数と標的核酸の大腸菌16SrDNAのコピー数が比例していることが分かる。
以上の結果から分かるように、本発明の定量的PCR方法を用いると標的核酸の当初のコピー数を測定できるようになる。即ち、標的核酸の測定ができる。
次に以下の実施例に、上記の本発明の定量的PCR方法を用いて得られるデータを解析する本発明のデータ解析方法について記す。
実施例21
ヒトゲノムDNA(ヒトβ−グロビン(globin)(TaKaRaカタログ商品番号 9060)(TaKaRa株式会社製)(以下、ヒトゲノムDNAという。)を標的核酸として、当該核酸の増幅のためのボデピーFL/C6で標識したプライマーを調製した。
プライマーKM38+C(リバース型)の調製:(5')CTGGTCTCCT TAAACCTGTC TTG(3')の塩基配列をもつオリゴデオキシリボヌクレオチドを、DNA合成機ABI394(Perkin Elmer社製、米国)を用いて合成し、更に当該オリゴデオキシリボヌクレオチドの5’末端のリン酸基をホスファターゼ処理してシトシンとし、そのシトシンの5’位の炭素OH基に、-(CH2)9-NH2を結合したものを、ミドランド・サーテイファイド・レージンド・カンパニー社から購入した。更に、モレキュラープローブ社からリポーターキット(FluoReporter Kit)F-6082(ボデピーFL/C6のプロピオン酸サクシニミジルエステル(BODIPY FL propionic acid succinimidyl esters)の他に、当該化合物をオリゴヌクレオチドのアミン誘導体に結合させる試薬を含有するキット)を購入した。前記購入したオリゴヌクレオチドに当該キットを作用させて、本発明のボデピーFL/C6で標識したプライマーKM38+Cを合成した。
合成物の精製:得られた合成物を乾固し乾固物を得た。それを0.5M Na2CO3/NaHCO3緩衝液(pH9.0)に溶解した。当該溶解物をNAP-25カラム(ファルマシア社製)でゲルろ過を行い、未反応物を除去した。更に逆相HPLC(B gradient:15〜65%、25分間)を以下の条件で行った。そして、溶出するメインピークを分取した。分取した画分を凍結乾燥して本発明のプライマーKM38+Cを、最初のオリゴヌクレオチド原料2mMより50%の収率で得た。
Figure 0004950414
実施例21
プライマーKM29(フォワード型)の調製:(5')GGTTGGCCAA TCTACTCCCA GG(3')の塩基配列をもつオリゴデオキシリボヌクレオチドを実施例18と同様に合成した。
比較実験例1
本比較実験例は、核酸伸長反応時の蛍光強度値を、熱変性反応時の蛍光強度値を用いて割る演算処理過程(数式(1)の処理)を有しないデータ解析用ソフトウエアの使用に係るものである。
上記のヒトゲノムDNA、プライマーKM38+C及びプライマーKM29を使用して、ライトサイクラーTMシステムを用いてPCR反応を行い、各サイクル毎の蛍光強度を測定した。
尚、本比較実施例のPCRは、前記に説明した蛍光色素色素で標識したプライマーを用いるものであり、蛍光発光の増加でなく、減少を測定する新規なリアルタイム定量的PCR方法である。データ解析は当該システムのソフトウエアを用いて行った。本比較実験例のPCRは、当該手順書に記されている核酸プローブ(FRET現象を利用する二個のプローブ)と通常のプライマー(蛍光色素で標識されていない通常のプライマー)の代りに本発明プライマーKM38+C及びKM29を用いる以外は当該装置の手順書通りに行った。
PCRは次のコンポーネントのハイブリダイゼーション溶液中で行った。
Figure 0004950414
尚、ヒトゲノムDNAは、図13の簡単な説明欄に示される実験区の濃度で実験を行った。MgCl2の最終濃度は2mMであった。
また、上記のTaq溶液は次に試薬の混合液である。
Figure 0004950414
尚、Taq溶液、Taq DNAポリメラーゼ溶液はロシュ・ダイアグノスティックス株式会社発売のDNAマスターハイブリダイゼーションプローブ(DNA Master Hybridization Probes)キットのものである。特にTaq DNAポリメラーゼ溶液は10×conc.(赤いキャップ)を10倍に希釈して用いた。また、Taqスタートは、クローンテック社(USA)より販売されているTaq DNAポリメラーゼ用の抗体で、これを反応液に添加することで70℃までTaq DNAポリメラーゼの活性を抑えることができる。即ち、ホット・スタートを行うことができるものである。
反応条件は次の如くである。
Figure 0004950414
測定は、ライトサイクラーTMシステムを用いて行った。その際、該システムにあるF1〜3の検出器にうち、F1の検出器を用い、その検出器のゲインは10、励起強度は75に固定した。
前記の如くにPCRを行って、各サイクルの蛍光強度を実測した。その結果を図13に示す。即ち、各コピー数のヒトゲノムDNAについて、各サイクルの変性反応時及び核酸伸長反応時の蛍光強度を測定し、印字したものである。どのサイクルにおいても変性反応時には蛍光強度値は一定であるが、核酸伸長反応時には、25サイクル目当たりから蛍光強度が減少しているのが観察される。そうして、減少はヒトゲノムDNAのコピー数が多い順に起こることが分かる。
図13に示すようにヒトゲノムDNAの各コピー数について初期のサイクル数の蛍光強度値が一様でなかった。それで、本比較例で使用するデータ解析方法に以下の過程(b)〜(j)を追加した。
(b)10サイクル目の蛍光強度値を1として各サイクルの蛍光強度値を換算する過程、即ち、下記の〔数式8〕による計算をする過程、
n=Fn(72)/F10(72) 〔数式8〕
ただし、Cn=各サイクルにおける蛍光強度値の換算値、Fn(72)=各サイクルの72℃の蛍光強度値、F10(72)=10サイクル目の72℃における伸長反応後の蛍光強度値。
(c)前記(b)の過程で得られた各換算値を、サイクル数の関数として、デスプレー上に表示及び/又は印字する過程、
(d)前記(b)の過程で得られた各サイクルの換算値から下記の〔数式9〕による蛍光強度の変化率(減少率、消光率)を計算をする過程、
〔数式9〕
dn =log10{100−Cn×100)}
dn =2log10{1−Cn
ただし、Fdn=蛍光強度変化率(減少率、消光率)、Cn=〔数式8〕で得られた値。
(e)前記(d)の過程で得られた各換算値を、サイクル数の関数として、デスプレー上に表示及び/又は印字する過程、
(f)前記(d)の過程で処理されたデータを、スレッシュホールド(threshold)としての0.5と比較し、その値に達したサイクル数を計数する過程、
(g)前記(f)の過程で計数した値をX軸に、反応開始前のコピー数をY軸にプロットしたグラフを作成する過程、
(h)前記(g)の過程で作成したグラフをデスプレー上に表示及び/又は印字する過程、
(i)前記(h)の過程で描かれた直線の相関係数又は関係式を計算する過程、(j)前記(i)の過程で計算された相関係数又は関係式をデスプレー上に表示及び/又は印字する過程。
上記のデータ解析用ソフトウエアを用いて、前記図13で得られたデータを前記に引き続いて以下のように処理した。
図14は、上記(b)の過程で処理されたデータを印字した(前記(c)過程)したものである。即ち、10サイクル目の蛍光強度値を1として各サイクルの蛍光強度を換算し、その換算値を対応するサイクル数に対してプロットしたものである。
図15は、前記(d)の過程で処理したデータを印字した(前記(e)過程)ものである。即ち、図14の各プロット値から蛍光強度の減少率(消光率)を計算して、各計算値を各サイクル数に対してプロットしたものである。
図16は、前記(f)の過程で処理したデータについて、前記(g)の過程で作成したグラフを印字した(前記(h)の過程)ものである。即ち、蛍光強度減少率=0.5をスレッシュホールド(threshold)し、その値に達したサイクル数をX軸に、ヒトゲノムDNAの反応開始前のコピー数をY軸にプロットしたグラフである。このグラフの直線の相関係数(R2)を前記(i)の過程で計算し、印字した(前記(j)の過程)もので、0.9514であった。このように、この相関係数では正確なコピー数を求めるは無理であった。
実施例23(本発明のデータ解析方法を用いてデータ処理がなされた実験例)
PCRは比較実験例1と同様に行った。
データ処理は、比較実験例1の(b)の過程の前に下記の(a)の過程をおき、(b)、(d)の過程を以下のように変更する以外は比較実験例1と同様な過程で行った。
(a)各サイクルにおける増幅した核酸が本発明の核酸プローブである(蛍光色素で標識された)核酸プライマーとハイブリダイズしたときの反応系の蛍光強度値(即ち、核酸伸長反応時(72℃)の蛍光強度値)を、核酸ハイブリッド複合体(増幅した核酸が核酸プライマーとハイブリダイズしたもの)が解離したときに測定された反応系の蛍光強度値(即ち、核酸熱変性反応完了時(95℃)の蛍光強度値)で割る補正演算処理過程、即ち、実測の蛍光強度値を次の〔数式1〕で補正した。
n=fhyb,n/fden,n 〔数式1〕
[式中、fn=サイクルの蛍光強度の補正値、fhyb,n=各サイクルの72℃の蛍光強度値、fden,n=各サイクルの95℃の蛍光強度値]
得られた値を各サイクル数に対してプロットしたのが図17である。
(b)各サイクルにおける〔数式1〕における補正演算処理値を〔数式3〕に代入し、各サイクルにおける各サンプル間の蛍光変化率(減少率又は消光率)を算出する演算処理過程、即ち、下記の〔数式10〕で演算処理する過程、
n=fn/f25 〔数式10〕
[式中、Fn=各サイクルの演算処理値、fn=〔数式1〕で得られた各サイクルの値、f25=〔数式1〕で得られた値で、サイクル数が25回目のもの]。
〔数式10〕は〔数式3〕において、a=25とした場合におけるものである。
(d)前記(b)の過程で得られた各サイクルの演算処理値を〔数式6〕による蛍光強度の変化率(減少率又は消光率)の対数値を得るための演算処理に付す過程、即ち、下記の〔数式11〕で演算処理する過程、
log10{(1−Fn)×100} 〔数式11〕
[式中、Fn=[数式10]で得られた値]。
〔数式11〕は〔数式6〕において、b=10、A=100とした場合におけるものである。
上記の結果を図18及び19に示した。
図18は、前記(a)及び(b)の過程で処理された値をサイクル数に対してプロットし、印字したものである。
図19は、図18で得られた値を前記(d)の過程のように処理して得られた値を、サイクル数に対してプロットし、印字したものである。
次に、図19のグラフを基に、前記(f)、(g)、及び(h)の過程で処理した。即ち、図19のグラフを基に比較実験例1と同様に、log10(蛍光強度変化率)のスレッシュホールド値として、0.1、0.3、0.5、0.7、0.9、1.2を選び、その値に達したサイクル数をX軸に、ヒトゲノムDNAの反応開始前のコピー数をY軸にプロットし、検量線を描かせた。その結果を図20に示した。これらの検量線について前記(i)及び(j)の過程で処理して求めた相関係数(R2)は、前記各スレッシュホールド値に対して、各々0.998、0.999、0.9993、0.9985、0.9989、0.9988であった。これらの相関係数から、スレッシュホールド値として0.5(相関係数0.9993)を採用することが望ましいことが認識できた。この相関係数をもつ検量線であれば、未知コピー数の核酸試料について反応開始前のコピー数を精度よく求めることができることが分かる。
実施例24(核酸の融解曲線分析及びTm値分析の例)
本発明の新規なPCR法により増幅された核酸について、51)低い温度から核酸が完全に変性するまで、温度を徐々に上げるあるいは下げる過程(例えば、50℃から95℃まで)、52)前記51)過程において、短い時間間隔(例えば、0.2℃〜0.5℃の温度上昇に相当する間隔)で蛍光強度を測定する過程、53)前記52)過程の測定結果を時間の関数としてデスプレー上に表示する過程、即ち、核酸の融解曲線を表示する過程、54)前記53)過程の融解曲線を一次微分する過程、55)前記54)過程の微分値(−dF/dT、F:蛍光強度、T:時間)をデスプレー上に表示する過程、56)前記55)から得られる微分値から変曲点を求める過程からなるソフトウエアを作成し、前記本発明のデータ解析用ソフトウエアに合体した。当該データ解析用ソフトウエアを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体をインストールした前記ライトサイクラーTMシステムを用いて本発明の新規リアルタイム定量的PCR反応を行い、核酸融解曲線の分析を行った。本発明においては、蛍光強度は温度が上がるごとに増加する。
実施例23と同じヒトゲノムDNAの1コピーと10コピーについて、実施例21と同様のPCRを行い、前記51)、52)、53)、54)及び55)の過程で処理されたデータを印字したものが図21である。1コピーと10コピーの75回目の増幅産物について、本実施例の51)、52)及び53)の過程で処理した核酸融解曲線の図が図22である。54)の過程でこの曲線を微分し、55)及び56)の過程で変曲点(Tm値)を求めたものが図23である。図23から、1コピーと10コピーの増幅産物のTm値が異なる故に、各増幅産物は異なる産物であることが判明した。
本発明は次のような効果を有する。
1)本発明の標的核酸の濃度を測定する方法、本発明の各種の核酸プローブ、特に2-O-アルキルオリゴヌクレオチド若しくは2-O-アルキレンオリゴヌクレオチド、2-O-ベンジルオリゴヌクレオチドなど化学的修飾オリゴヌクレオチドなどからなる本発明の核酸プローブ、またオリゴリボヌクレオチドとオリゴデオキシリボヌクレオチドが介在するキメリックオリゴヌクレオチドなどからなる本発明の核酸プローブ、それらの本発明の核酸プローブを含有若しくは付帯する、標的核酸の濃度を測定する測定キット、及び前記の本発明の核酸プローブを結合してなるDNAチップなどの核酸チップ若しくは核酸デバイスを用いると、測定系から未反応の核酸プローブを除く等の操作をすることがないので、標的核酸の濃度を短時間でかつ簡便に測定できる。また、複合微生物系又は共生微生物系に適用すると、当該系における特定菌株の存在量を特異的かつ短時間に測定できる。また、本発明は標的核酸若しくは遺伝子のSNPなどの多型又は変異などの解析若しくは測定する簡便な方法を提供している。
2)また、本発明の定量的PCR方法は、次のような効果を有する。
a.TaqDNAポリメラーゼによる標的核酸の増幅に阻害的に作用する因子が添加されていないことから、従来公知の特異性のある通常のPCRと同様の条件で定量的PCRを行うことができる。
b.また、PCRの特異性を高く保つことができるので、プライマーダイマーの増幅が遅くなることから、従来公知の定量的PCRと比較すると定量限界が約1桁のオーダー低くなる。
c.複雑な核酸プローブを用意する必要がないので、それに要する時間と費用が節約できる。
d.標的核酸の増幅効果も大きく、増幅過程をリアルタイムでモニタリングすることができる。
3)また、リアルタイム定量的PCR方法で得られたデータを解析する際、本発明のデータ解析方法を用いて、未知核酸コピー数の核酸試料について核酸のコピー数を求める検量直線を作成すると、検量線の相関係数は従来の方法により得られたものに較べて格段に高い。それで、本発明のデータ解析方法を用いると核酸の正確なコピー数を求めることができる。
4)また、本発明のリアルタイム定量的PCR方法によって得られたデータの解析方法に係るデータ解析用ソフトウエア、また、その解析方法の手順をプログラムとして記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、また、それを用いたリアルタイム定量的PCRの測定若しくは解析装置を用いると、相関係数の高い検量直線を自動的に作成することができる。
5)また、本発明の新規な核酸の融解曲線の分析方法を用いると、精度の高い、核酸のTm値を求めることができる。更に、当該方法に係るデータ解析用ソフトウエア、また、その分析方法の手順をプログラムとして記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、また、それを用いたリアルタイム定量的PCRの測定若しくは解析装置を用いると、正確なTm値を求めることができる
実施例1で得た核酸プローブを用いて大腸菌の16SrRNAの5´末端から数えて335から358番目の核酸塩基配列を測定した場合の蛍光強度測定データを示す図。 35塩基鎖2-O-Meプローブの標的核酸へのハイブリダイゼーションに対する熱処理の効果。 点線:rRNAを加熱処理後,標的核酸が添加された。 実線:非加熱処理rRNA. プローブと標的核酸16SrRNAのハイブリダイゼーションに対するプローブの塩基鎖の塩基数、ヘルパープローブ及びプローブの5’末端のリボースの2’位炭素OH基のメチル基修飾の効果。 本発明方法によるrRNA測定のための検量線。 KYM7株及びKYM8株の複合培養系のrRNA量の時間経過についての本発明のFISH方法による分析。 本発明のDNAチップを説明する図。 本発明のDNAチップを用いるSNPs検出測定のための装置類を説明する図。 本発明のDNAチップを用いるSNPs検出測定の実験結果を示す図。 ボデピーFL/C6で標識したプライマー1及び2を用いた定量的PCR方法:サイクル数と蛍光色素の発光の減少量の関係を示す図。図中の(1)〜(8)なる記号は、下記の意味を表す。 (1)大腸菌ゲノムDNAコピー数:0;プライマー:プライマー1+プライマー2、 (2)大腸菌ゲノムDNAコピー数:2.4×106;プライマー:プライマー1+プライマー2、 (3)大腸菌ゲノムDNAコピー数:2.4×105;プライマー:プライマー1+プライマー2、 (4)大腸菌ゲノムDNAコピー数:2.4×104;プライマー:プライマー1+プライマー2、 (5)大腸菌ゲノムDNAコピー数:2.4×103;プライマー:プライマー1、 (6)大腸菌ゲノムDNAコピー数:2.4×102;プライマー:プライマー1、 (7)大腸菌ゲノムDNAコピー数:2.4×101;プライマー:プライマー1、 (8)大腸菌ゲノムDNAコピー数:2.4×100;プライマー:プライマー1 ボデピーFL/C6で標識したプライマー1及び2を用いた定量的PCR方法:サイクル数と蛍光色素の発光の減少量の対数値の関係を示す図。図中の(1)〜(8)なる記号は、図9と同じ意味を表す。 本発明の定量的PCR方法を用いて作成した大腸菌16SrDNAの検量線を示す図。 n:10n 上図は、FRET現象を用いるリアルタイム定量的PCR方法において使用する蛍光色素で標識した二つのプローブの代わりに、本発明の一つのプローブを用いてリアルタイム定量的PCRを行った場合の蛍光強度の減少率の変化を示す図である。下図は蛍光強度の減少が有為に観察され始めるサイクル数(threshold number:Ct値)を算出し、検量線を作成した図である。 本発明の補正演算処理しない場合の、本発明のボデピーFL/C6で標識したプライマーを用いたリアルタイム定量的PCRによって得られた蛍光減少曲線を示す図。 ■:標的核酸=10コピー;蛍光強度測定の反応系の温度=72℃、 ●:標的核酸=100コピー;蛍光強度測定の反応系の温度=72℃、 ▲:標的核酸=1000コピー;蛍光強度測定の反応系の温度=72℃、 ◆:標的核酸=10000コピー;蛍光強度測定の反応系の温度=72℃、 □:標的核酸=10コピー;蛍光強度測定の反応系の温度=95℃、 ○:標的核酸=100コピー;蛍光強度測定の反応系の温度=95℃、 △:標的核酸=1000コピー;蛍光強度測定の反応系の温度=95℃、 ◇:標的核酸=10000コピー;蛍光強度測定の反応系の温度=95℃ 各曲線の10サイクル目の値を1として補正する以外は、図13の曲線の場合と同様にしたリアルタイム定量的PCRによって得られた蛍光減少曲線を示す図。 ■:標的核酸=10コピー;蛍光強度測定温度=72℃、 ●:標的核酸=100コピー;蛍光強度測定温度=72℃、 ▲:標的核酸=1000コピー;蛍光強度測定温度=72℃、 ◆:標的核酸=10000コピー;蛍光強度測定温度=72℃、 5:標的核酸=10000コピー;蛍光強度測定温度=72℃ 図14の各曲線の各プロット値について、[数式9]の蛍光強度減少率(変化率)を計算し、計算値をプロットした曲線を示す図。 ■:標的核酸=10コピー、 ●:標的核酸=100コピー、 ▲:標的核酸=1000コピー、 ◆:標的核酸=10000コピー 図15のデータから求めたヒトゲノムDNAの検量直線を示す図。 y=ヒトβ−グロビン遺伝子コピー数、 x=サイクル数(Ct)、 R2=相関係数 図13の各サイクルの測定値を〔数式1〕で補正演算処理した値を各サイクル 数に対してプロットした曲線を示す図。 ■:標的核酸=10コピー、 ●:標的核酸=100コピー、 ▲:標的核酸=1000コピー、 ◆:標的核酸=10000コピー 図17の各サイクルの演算処理値を〔数式3〕で演算処理した値をサイクル数に対してプロットした曲線を示す図。 ■:標的核酸=10コピー、 ●:標的核酸=100コピー、 ▲:標的核酸=1000コピー、 ◆:標的核酸=10000コピー 図18の各サイクルの演算処理値を〔数式6〕の式で演算処理した値をサイクル数に対してプロットした曲線を示す図。 ■:標的核酸=10コピー、 ●:標的核酸=100コピー、 ▲:標的核酸=1000コピー、 ◆:標的核酸=10000コピー 図18の各log(蛍光変化率)値からCt値の候補として、0.1、0.3、0.5、0.7、0.9、1.2を適当に選んで、それに対応する検量直線を描かせた場合の図。尚、各検量線における相関係数を下記に示した。 ▲:log10(蛍光変化率)=0.1;相関係数=0.998、 ■:log10(蛍光変化率)=0.3;相関係数=0.999、 ●:log10(蛍光変化率)=0.5;相関係数=0.9993、 △:log10(蛍光変化率)=0.7;相関係数=0.9985、 □:log10(蛍光変化率)=0.9;相関係数=0.9989、 ○:log10(蛍光変化率)=1.2;相関係数=0.9988 1コピー及び10コピーのヒトゲノムDNAについて、本発明のボデピーFL/C6で標識したプライマーを用いてリアルタイム定量的PCRを行った場合の蛍光減少曲線を示す図。ただし、〔数式1〕の補正演算処理を施した。 1:標的核酸=0コピー、 2:標的核酸=1コピー、 3:標的核酸=10コピー 図21に示されるPCRの増幅産物についての核酸の融解曲線分析を行った場合の核酸の融解曲線を示す図。 1:標的核酸=0コピー、 2:標的核酸=1コピー、 3:標的核酸=10コピー 図22の曲線を微分して得られた、Tm値を示す曲線を示す図(谷がTm値)。 2:標的核酸=1コピー、 3:標的核酸=10コピー

Claims (4)

  1. 塩基配列の異なる複数種の核酸プローブを、個別に同一固体表面上の異なるスポットにアレイ状に配列し、結合させた核酸測定用デバイスであって、
    上記複数種の核酸プローブは、その一端が、標的核酸中に存在するグアニン塩基により蛍光強度が減少する蛍光色素で標識されており、もう一端が、上記固体表面に固定され、
    上記蛍光色素が、フルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミン、6−joe、BODIPY FL(商標)、BODIPY FL/C3(商標)およびBODIPY FL/C6(商標)からなる群より選ばれるいずれかであり、
    上記複数種の核酸プローブのうちの一種は、標的核酸と相補的な塩基配列を有し、
    該核酸プローブが上記標的核酸とハイブリダイゼーションしたとき、該プローブの蛍光色素で標識された末端塩基が、G(グアニン)又はC(シトシン)であって、上記標的核酸とGCペアーを形成するように、当該プローブの塩基配列が設計されていることを特徴とする核酸測定用デバイス。
  2. 前記複数種の核酸プローブの5’末端塩基がCで、かつ該5’末端が蛍光色素で標識されている請求項1に記載の核酸測定用デバイス。
  3. 前記複数種の核酸プローブが、標的核酸と100%マッチするプローブ、標的核酸と1塩基ミスマッチを有するプローブおよび標的核酸と2塩基ミスマッチを有するプローブの少なくとも3種を含む請求項1に記載の核酸測定用デバイス。
  4. 請求項1に記載の核酸測定用デバイスに、標的核酸を含む溶液をのせ、該デバイスの温度を連続的に変化させながら各スポットの蛍光量を測定することを特徴とするSNPの検出方法。
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