JP4945873B2 - 光電変換材料用半導体、光電変換素子及び太陽電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光電変換材料用半導体、光電変換素子及び太陽電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
光電変換材料とは、電極間の電気化学反応を利用して光エネルギーを電気エネルギーに変換する材料である。光電変換材料に光を照射すると、一方の電極側で電子が発生し、対電極に移動する。対電極に移動した電子は、電解質中をイオンとして移動して一方の電極にもどる。
【0003】
すなわち、光電変換材料は光エネルギーを電気エネルギーとして連続して取り出せる材料であり、たとえば、太陽電池などに利用されている。太陽電池にはいくつかの種類があるが、住居設置用発電パネル、卓上計算機、時計、携帯用ゲーム機等に実用化されているものの大部分はシリコン太陽電池である。
【0004】
しかし、最近になって色素増感型太陽電池が注目され、実用化を目指して研究されている。色素増感型太陽電池は古くから研究されており、その基本構造は、具体的には色素を吸着した金属酸化物半導体、導電性支持体、電荷輸送層及び対向電極からなる。この場合の光電変換材料は、半導体表面に可視光領域に吸収を持つ分光増感色素を吸着させたものが用いられている。
【0005】
特開平1−220380号には、金属酸化物半導体の表面に、遷移金属錯体などの分光増感色素層を有する太陽電池が記載されている。また、特表平5−504023号には、金属イオンでドープした酸化チタン半導体層の表面に、遷移金属錯体などの分光増感色素層を有する太陽電池を記載している。
【0006】
一方、光電変換能力を有する酸化物半導体としては、初期の頃は半導体の単結晶電極が用いられてきた。その種類としては、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)等がある。
【0007】
しかし、単結晶電極は色素の吸着量が少ないため効率は非常に低く、コストが高いというデメリットがあった。そこで考え出されてきたのが、微粒子を焼結して形成された多数の細孔を有する高表面積半導体電極である。坪村らによって有機色素を吸着した多孔質酸化亜鉛電極が非常に性能が高いことが報告された。(Nature,261(1976)p402)。
【0008】
半導体に吸着させる色素にも改良がされるようになり、Graetzelらはルテニウム系色素を多孔質酸化チタン電極に吸着させることで、現在、シリコン太陽電池並みの性能を有するまでになっている(J.Am.Chem.Soc.115(1993)6382)。しかし、シリコン太陽電池を代替する実用化のためには、今まで以上に高いエネルギー変換効率や、さらに高い短絡電流、開放電圧、形状因子が必要になってくる。現在のところ、多孔質半導体電極で報告されている物質としてはZnO、TiO2、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ニオブ(Nb2O5)等が挙げられる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
色素増感型湿式太陽電池はシリコン太陽電池に比べ製造コストが非常に安いため、将来的には先述の種々の製品に用いられているシリコン太陽電池を代替する可能性があるが、その際にはそれぞれの製品に応じた太陽電池の特性が重要になる。太陽電池の特性には様々なものがあり中でも
1.短絡電流
2.開放電圧
3.形状因子
4.エネルギー変換効率
5.光吸収スペクトル
などが重要であるが、特に4.のエネルギー変換効率は太陽電池の最大の課題であり、その改良が強く望まれていた。その効率を左右する技術課題の一つとして、光励起された電子を効率的に半導体に移動する能力を有する増感色素が求められている。
【0010】
また、とくに半導体の用途が太陽電池である場合においては、照射される太陽光を効率よく利用するという観点から光電変換の波長域をできるだけ広くできるように、二種類以上の色素を混合して用いることが好ましいが、そうした用途に使用できる色素は限られており、赤色光ないし近赤外線により半導体を増感する新規な色素が待望されていた。
【0011】
本発明の目的は、優れた光電変換効率と耐久性とを両立する、光電変換材料用半導体、該光電変換材料用半導体を有する光電変換素子、該光電変換素子を用いた太陽電池を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定構造のスクアリリウム又はクロコニウム色素を用いて増感した光電変換材料用半導体によって本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の上記目的は下記構成によって達成される。
(1) 半導体を前記一般式1〜4で示される化合物の少なくとも1種によって増感させていることを特徴とする光電変換材料用半導体。
【0014】
(2) 前記一般式1〜4で示される化合物よりも短波長に最大吸収波長を有する化合物によって、さらに増感させていることを特徴とする(1)に記載の光電変換材料用半導体。
【0015】
(3) 半導体に前記一般式1〜4で示される化合物の少なくとも1種を吸着させていることを特徴とする光電変換材料用半導体。
【0016】
(4) 前記一般式1〜4で示される化合物よりも短波長に最大吸収波長を有する化合物をさらに吸着させていることを特徴とする(3)記載の光電変換材料用半導体。
【0017】
(5) 前記半導体が金属酸化物又は金属硫化物であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の光電変換材料用半導体。
【0018】
(6) 前記一般式1〜3のAが前記A1であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の光電変換材料用半導体。
【0019】
(7) 前記一般式4のBが前記B1であることを特徴とする(1)〜(6)9のいずれか1項に記載の光電変換材料用半導体。
【0020】
(8) 前記X1および前記X2が硫黄原子又はセレン原子であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の光電変換材料用半導体。
【0021】
(9) (1)〜(8)のいずれか1項に記載の光電変換材料用半導体を含有する層を有することを特徴とする光電変換素子。
【0022】
(10) (9)に記載の光電変換素子を用いたことを特徴とする太陽電池。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の光電変換材料用半導体、光電変換素子、太陽電池を、図を用いて説明するが、本発明はこれに限定されない。また、以下の説明には用語等に対する断定的な表現が含まれている場合があるが、本発明の好ましい例を示すものであって、本発明の用語の意義や技術的な範囲を限定するものではない。
【0024】
図1は、本発明の光電変換素子の構造の一例を示す部分断面図である。
1は導電性支持体である。2は光電変換材料用半導体を含有する層(以下感光層ともいう)である。3は電荷移動層である。4は対向電極である。尚、導電性支持体1と感光層2をあわせて半導体電極ともいう。
【0025】
本発明の光電変換素子は、この感光層2に含有される光電変換材料用半導体に本発明の光電変換材料用半導体を用いたものである。
【0026】
本発明の光電変換材料用半導体は、半導体に一般式1〜4に示される化合物の少なくとも1種を半導体に吸着させて半導体を増感させているものである。
【0027】
一般式1においてAとは一般式A1で表されるスクアリリウム核もしくは一般式A2で表されるクロコニウム核を表し、好ましくはスクアリリウム核である。
X1およびX2はカルコゲン原子を表し、具体的には酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子より選ばれるが、好ましくは硫黄原子またはセレン原子であって、X1とX2は同じであっても互いに異なっていてもよい。置換基R11、R12、R13、R14は互いに異なっていてもよいアルキル基、アリール基、複素環基のいずれかであり、それらはさらに置換されていてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−オクチル基、t−アミル基、2−エチルヘキシル基、2−クロロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、6−シアノヘキシル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、4−トリフルオロメチルシクロヘキシル基、フェニル基、o−トリル基、p−トリル基、4−クロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−シアノフェニル基、4−t−アミルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、ピリジル基、4−トリフルオロメチル−ピリジル基、フリル基、チエニル基、5−メチル−2−チエニル基、ピラゾリル基、1,3−ジオキソラン−2−イル基、ベンズチアゾール−2−イル基などが挙げられ、好ましくはt−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、o−トリル基、4−t−アミルフェニル基であり、特に好ましくはt−ブチル基、シクロヘキシル基、o−トリル基である。
【0028】
一般式2におけるAは一般式1におけるAと同義である。R21、R22、R23、R24は互いに異なっていてもよいアルキル基、アリール基、複素環基のいずれかであり、それらはさらに置換されていてもよく、その具体例としては一般式1のR11、R12、R13、R14について挙げたものと同じ置換基を挙げることができる。R25及びR26はアルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基であり、その例としてはR21、R22、R23、R24の例として挙げたものおよびフッ素原子、塩素原子を挙げることができる。R21とR22、およびR23とR24は互いに結合して環を形成していてもよい。m、nは0、1、2、3、4のいずれかの数を表し、mとnが同じであっても異なっていてもよい。mが0でない場合R25とR21又はR22が、nが0でない場合R26とR23又はR24が互いに結合して環を形成してもよいし、mが2以上である場合にはR25どうしが、nが2以上である場合にはR26どうしが互いに結合して環を形成していてもよい。たとえばR23とR24が結合してピペリジン環を形成してもよいし、あるいはmが2のとき2つのR25で表される置換基とR21及びR22が結合して、R25が結合しているベンゼン環とともにジュロリジン環を形成してもよい。R25及びR26の特に好ましい例としては、スクアリリウム核もしくはクロコニウム核と結合した炭素原子に隣接する炭素原子に結合したヒドロキシ基を挙げることができる。
【0029】
一般式3におけるAは一般式1におけるAと同義である。R31及びR32は互いに異なっていてもよいアルキル基、アリール基、複素環基のいずれかであり、それらはさらに置換されていてもよく、その具体例としては一般式1のR11、R12、R13、R14について挙げたものと同じ置換基を挙げることができる。R33及びR34はアルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基であり、その例としては一般式1のR11、R12、R13、R14について挙げたものおよびフッ素原子、塩素原子を挙げることができる。p、qは0、1、2、3、4のいずれかの数を表す。R31とR33は互いに結合して環を形成していてもよいし、R32とR34の組み合わせについても同様である。pもしくはqが2以上のときにはR33どうし、もしくはR34どうしで互いに結合して環を形成していてもよい。
【0030】
一般式4におけるBは一般式B1で表されるスクアリリウム核もしくは一般式B2で表されるクロコニウム核を表し、好ましくはスクアリリウム核である。Y1及びY2は互いに異なっていてもよい−O−、−S−、−NH−から選択される2価置換基であって、Z1及びZ2はそれぞれ一般式4の窒素原子およびY1もしくはY2と結合して6員もしくは7員脂肪族環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。形成される環の例としてジヒドロペリミジン環、テトラヒドロジアゼピン環、オキサジニン環などが挙げられ、それらはさらに置換されていてもよい。R41及びR42は互いに異なっていてもよいアルキル基、アリール基、複素環基のいずれかであり、それらはさらに置換されていてもよく、その具体例としては一般式1のR11、R12、R13、R14について挙げたものと同じ置換基を挙げることができる。
【0031】
以下に、本発明における一般式1〜4で表される化合物の具体例を示すが、請求項に記載された発明の趣旨を超えないかぎり、本発明の内容がこれら例示化合物に限定されるものではない。
【0032】
【化3】
【0033】
【化4】
【0034】
【化5】
【0035】
【化6】
【0036】
【化7】
【0037】
【化8】
【0038】
【化9】
【0039】
【化10】
【0040】
【化11】
【0041】
【化12】
【0042】
【化13】
【0043】
上記例示化合物はDyes & Pigments1988年9月号85〜107ページ、特開平10−036695号、特開平10−158253号、特開2001−117201号、特開2001−011070号等に記載の方法により容易に合成することができる。以下に合成例として、一般式1〜4で示される化合物の合成法の一部を示す。
【0044】
合成例1(例示化合物1−1の合成)
2,6−ジ−tert−ブチル−4H−チオピラン−4−オン10gをジエチルエーテル150mlに溶解し、氷水浴にて冷却しながら窒素雰囲気下にてヨウ化メチルマグネシウムの1Mジエチルエーテル溶液20mlを滴下し、室温下3時間撹拌して反応させた。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液700mlに注ぎ入れ、有機物を抽出し、分離した有機層に60%過塩素酸水溶液を100ml加えたのち一晩静置結析させた。析出した結晶を濾取して、過塩素酸2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−4H−チオピリリウムを9.3g得た。(収率55%)
さらに過塩素酸2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−4H−チオピリリウム8.0gとスクエア酸1.4gを、1−ブタノール50mlとトルエン50mlの混合溶媒に分散し、キノリン1.0gを加えて2時間加熱還流させた。反応混合物を濃縮してトルエン200mlを加えて不溶物を濾別した後、濾液の濃縮物をアセトニトリルから再結晶して、例示化合物1−1を3.9g得た。(収率60%)化合物の構造はNMRスペクトルおよび質量スペクトルにより確認した。
【0045】
合成例2(例示化合物2−11の合成)
3−(N,N−ジヘキサデシルアミノ)フェノール20.0gとクロコン酸2.5gをブタノール/トルエン(1/1)の混合溶媒中で加熱し、共沸温度を保ちながら2.5時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却した後溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィーを用いて化合物を大まかに分離した(ヘキサン/酢酸エチル)。分離したフラクションから赤外吸収を有する粗結晶を得た。この粗結晶をトルエンで溶解し、アセトニトリルで再沈殿させて本発明の例示化合物2−11を13.1g得た。(収率61%)化合物の構造は合成例1と同様の方法で決定した。
【0046】
半導体に一般式1〜4に示される化合物を吸着させる際には、一般式1〜4で示される化合物を単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。さらに、一般式1〜4に示される化合物と他の増感色素化合物(例えば米国特許4,684,537号、同4,927,721号、同5,084,365号、同5,350,644号、同5,463,057号、同5,525,440号の各明細書、特開平7−249790号公報、特開2000−150007号公報に記載の化合物)とを混合して吸着させてもよい。とくに半導体の用途が太陽電池である場合、光電変換の波長域をできるだけ広くして太陽光を有効に利用できるように、二種類以上の色素を混合して用いることが好ましい。
【0047】
一般式1〜4で表される化合物は赤色光ないし近赤外光を吸収する色素であるから、太陽電池として用いる際には太陽光の有効利用という観点より一般式1〜4の化合物と、該化合物よりも短波長領域に最大分光吸収波長を有する増感色素化合物を併用して吸着させることが好ましい。
【0048】
半導体に一般式1〜4に示される化合物を吸着させるには、一般式1〜4に示される化合物を適切な溶媒に溶解し、その溶液中によく乾燥した半導体を長時間浸漬する方法が一般的である。
【0049】
一般式1〜4に示される化合物を複数併用したり、その他の増感色素化合物を併用した光電変換材料用半導体は、それぞれの化合物の混合溶液に浸漬させて作製してもよいし、各化合物について別々の溶液を用意し、各溶液に順に浸漬して作製することもできる。また、各化合物を単独で吸着させた半導体微粒子同士を混合することで作製してもよい。
【0050】
各化合物について別々の溶液を用意し、各溶液に順に浸漬して作製する場合は、半導体に増感色素を吸着させる順番がどのような順番であっても本発明の効果を得ることができる。
【0051】
吸着処理は半導体が粒子状の時に行ってもよいし、支持体上に膜を形成した後に行ってもよい。吸着処理に用いる各化合物を溶解した溶液は、それを常温で用いてもよいし、該化合物が分解せず溶液が沸騰しない温度範囲で加熱して用いてもよい。
【0052】
また、後述する光電変換素子の製造のように、半導体微粒子を導電性支持体への塗布後に、上述の化合物の吸着を実施してもよい。また、半導体微粒子と化合物とを同時に塗布することにより、半導体に化合物を吸着させてもよい。未吸着の化合物は洗浄によって除去する。
【0053】
本発明の光電変換材料用半導体に用いられる半導体としては、シリコン、ゲルマニウムのような単体、III−V系化合物、金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)、金属窒化物、ペロブスカイト構造を有する化合物(例えばチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等)等を使用することができる。
【0054】
好ましい金属のカルコゲニドとして、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、またはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモンまたはビスマスの硫化物、カドミウムまたは鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム・ヒ素または銅・インジウムのセレン化物、銅・インジウムの硫化物、チタンの窒化物等が挙げられる。
【0055】
本発明の光電変換材料用半導体に用いる半導体の好ましい具体例は、Si、TiO2、SnO2、Fe2O3、WO3、ZnO、Nb2O5、CdS、ZnS、PbS、Bi2S3、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe2、Ti3N4等であり、より好ましくはTiO2、ZnO、SnO2、Fe2O3、WO3、Nb2O5、CdS、PbS、CdSe、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe2、Ti3N4であり、特に好ましくはTiO2又はNb2O5であり、最も好ましくはTiO2である。
【0056】
また本発明の光電変換材料用半導体に用いる半導体は、上述した複数の半導体を併用して用いてもよい。例えば、上述した金属酸化物もしくは金属硫化物の数種類を併用することもできるし、また、酸化チタン半導体に20質量%の窒化チタン(Ti3N4)を混合して使用してもよい。また、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,15(1999)記載の酸化亜鉛/酸化錫複合としてもよい。このとき、半導体として金属酸化物もしくは金属硫化物以外に成分を加える場合、追加成分の金属酸化物もしくは金属硫化物半導体に対する質量比は30%以下であることが好ましい。
【0057】
導電性支持体上に半導体を焼成により形成する場合は、上述の化合物の吸着は焼成後に実施することが好ましい。焼成後、半導体に水が吸着する前に、素早く化合物の吸着処理を実施することが特に好ましい。
【0058】
本発明の光電変換材料用半導体は、アミンを用いて表面処理してもよい。アミンとしては、ピリジン、4−t−ブチルピリジンおよびポリビニルピリジンが好ましい。アミンが液体の場合はそのまま、固体の場合は有機溶媒に溶解した溶液を準備し、本発明の光電変換材料用半導体を液体アミンまたはアミン溶液に浸漬することで、表面処理を実施できる。
【0059】
本発明の光電変換素子に用いられる導電性支持体1には、金属板のような導電性材料や、ガラス板やプラスチックフイルムのような非導電性材料に導電性物質を設けた構造のものを用いることができる。導電性支持体1に用いられる材料の例としては金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム)あるいは導電性金属酸化物(例えばインジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの)や炭素を挙げることができる。
【0060】
また導電性支持体1は実質的に透明であることが好ましく、実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることが最も好ましい。透明な導電性支持体1を得るためには、ガラス板またはプラスチックフイルムの表面に、導電性金属酸化物からなる導電性層を設けることが好ましい。透明な導電性支持体1を用いる場合、光は支持体側から入射させることが好ましい。
【0061】
導電性支持体1は表面抵抗は、50Ω/cm2以下であることが好ましく、10Ω/cm2以下であることがさらに好ましい。
【0062】
本発明の光電変換材料用半導体が粒子状の場合には、光電変換材料用半導体を導電性支持体1に塗布あるいは吹き付けて、半導体電極を作製するのがよい。また、本発明の光電変換材料用半導体が膜状であって、導電性支持体1上に保持されていない場合には、光電変換材料用半導体を導電性支持体1上に貼合して半導体電極を作製するのがよい。
【0063】
感光層2は上記本発明の光電変換材料用半導体を含有する層である。
電荷移動層3はレドックス電解質を含有し、導電性支持体1、感光層2、対向電極4に接触している。
【0064】
本発明に用いることができるレドックス電解質としては、I-/I3-系や、Br-/Br3-系、キノン/ハイドロキノン系等が挙げられる。このようなレドックス電解質は、従来公知の方法によって得ることができ、例えば、I-/I3-系の電解質は、ヨウ素のアンモニウム塩とヨウ素を混合することによって得ることができる。電荷移動層はこれらレドックス電解質の分散物で構成され、それら分散物は溶液である場合に液体電解質、常温において固体である高分子中に分散させた場合に固体高分子電解質、ゲル状物質に分散された場合にゲル電解質と呼ばれる。電荷移動層として液体電解質が用いられる場合、その溶媒としては、電気化学的に不活性なものが用いられ、例えば、アセトニトリル、炭酸プロピレン、エチレンカーボネート等が用いられる。固体高分子電解質の例としては特開2001−160427記載の電解質が、ゲル電解質の例としては『表面科学』21巻、第5号288ページ〜293ページに記載の電解質が挙げられる。
【0065】
対向電極4は、導電性を有するものであればよく、任意の導電性材料が用いられるが、I3-イオン等の酸化や他のレドックスイオンの還元反応を充分な速さで行わせる触媒能を持ったものの使用が好ましい。このようなものとしては、白金電極、導電材料表面に白金めっきや白金蒸着を施したもの、ロジウム金属、ルテニウム金属、酸化ルテニウム、カーボン等が挙げられる。
【0066】
図1に示す光電変換素子を製造する方法を説明する。
まず、半導体の微粒子を含む塗布液を作る。この半導体微粒子は、その1次粒子径が微細な程好ましく、その1次粒子径は、通常、1〜5000nm、好ましくは2〜50nmである。半導体微粒子には本発明の化合物もしくは併用する別の色素、あるいはその両方を吸着させておいてもよいし、膜を形成してから吸着処理を実施することもできる。吸着させる方法としては、前記のとおり化合物の溶液に半導体微粒子もしくは半導体微粒子膜を形成した基板を浸漬する方法が一般的である。
【0067】
色素を溶解するのに用いる溶媒は、色素を溶解することができ、なおかつ半導体を溶解したり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はないが、溶媒に溶解している水分および気体が半導体膜に進入して色素の吸着を妨げることを防ぐために、あらかじめ脱気および蒸留精製しておくことが好ましい。本発明の化合物に対して好ましく用いられる溶媒はメタノール、エタノール、n−プロパノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素溶媒であり、特に好ましくはメタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレンである。
【0068】
半導体微粒子もしくは半導体微粒子膜を形成した基板を色素の溶液に浸漬する時間は、2〜48時間が好ましい。2時間以上とすることで半導体に色素をより吸着させることができ、さらに48時間以下とすることで、色素の分解による影響を抑えることができる。とくに好ましい浸漬時間は4〜24時間である。
【0069】
浸漬しておくにあたり色素溶液は、色素が分解しないかぎりにおいて、沸騰しない温度にまで加熱して用いてもよい。好ましい温度範囲は10〜50℃、特に好ましくは15〜35℃であるが、溶媒が前記温度範囲で沸騰する場合はこの限りでない。
【0070】
半導体微粒子を含む塗布液は、半導体微粒子を溶媒中に分散させることによって調製することができる。溶媒中に分散された半導体微粒子は、その1次粒子状で分散する。溶媒としては、半導体微粒子を分散し得るものであればどのようなものでもよく、特に制約されない。このような溶媒には、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が包含される。有機溶媒としては、メタノールやエタノール等のアルコール、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素等が用いられる。塗布液中には、必要に応じ、界面活性剤や粘度調節剤(ポリエチレングリコール等の多価アルコール等)を加えることができる。溶媒中の半導体微粒子濃度は、0.1〜70質量%、好ましくは0.1〜30質量%である。
【0071】
次に、前記塗布液を導電性支持体1上に塗布、乾燥し、次いで空気中又は不活性ガス中で焼成して、導電性支持体1上に半導体膜を形成する。
【0072】
導電性支持体1としては、少なくともその表面が導電性表面に形成された基板が用いられる。このような基板としては、ガラス等の耐熱性基板上に、In2O3やSnO2の導電性金属酸化物薄膜を形成したものや金属等の導電性材料からなる基板が用いられる。このような導電性基板は従来よく知られたものである。
【0073】
基板の厚さは特に制約されないが、通常、0.3〜5mmである。
導電性支持体1上に塗布液を塗布、乾燥して得られる皮膜は、半導体微粒子の集合体からなるもので、その微粒子の粒径は使用した半導体微粒子の1次粒子径に対応するものである。このようにして導電性支持体1上に形成された半導体膜は、基板との結合力およびその微粒子相互の結合力が弱く、機械的強度の弱いものであることから、これを焼成して機械的強度が高められ、かつ基板に強く固着させることができる。
【0074】
本発明においては、焼成した半導体膜はどのような構造を有していても良いが、多孔質構造膜であることが好ましい。その厚さは少なくとも10nm、好ましくは100〜10000nmである。前記のような多孔質構造の半導体膜は、半導体微粒子を含む塗布液を基板上に塗布、乾燥して形成された微粒子集合体膜を焼成させることによって得ることができる。この場合、焼成温度が1000℃より高くなると、半導体膜の焼成が進みすぎてその実表面積が小さくなり、望ましい半導体膜を得ることが難しくなるため、焼成温度は1000℃より低いことが好ましい。色素を吸着していない半導体微粒子によって形成された半導体膜の焼成温度は通常200〜800℃、好ましくは300〜800℃であるが、色素をあらかじめ吸着した半導体微粒子によって形成された半導体膜の焼成においては、色素が実質的に分解しない温度で焼成を行う必要があるために、好ましい焼成温度は前記温度範囲よりも低い100〜250℃である。ただし、この温度範囲においても色素が分解する場合にこの限りでないことは云うまでもない。また、ここでいう「実質的に分解しない温度」とは、ある温度での焼成処理により吸着した色素が分解する場合において、その分解量が吸着した色素の総量のうち5質量%未満であるような温度である。
【0075】
見かけ表面積に対する実表面積の比は、半導体微粒子の粒径及び比表面積や、焼成温度等によりコントロールすることができる。また、加熱処理後、半導体粒子の表面積を増大させたり、半導体粒子近傍の純度を高め、色素から半導体粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
【0076】
以上のようにして半導体膜を形成した後で色素の吸着処理を施す場合には、半導体膜とその支持体を色素の溶液に浸漬して処理を行う。
【0077】
吸着処理は先に説明したとおり、色素を適切な溶媒に溶解し、その溶液に前記半導体を焼成した基板を浸漬することによって行われるが、その際には半導体膜を形成した基板をあらかじめ減圧処理したり加熱処理したりして膜中の気泡を除去し、色素が半導体膜内部深くに進入できるようにしておくことが好ましく、半導体膜が多孔質構造膜である場合には特に好ましい。
【0078】
本発明の太陽電池は、本発明の光電変換素子を用いて太陽光により光電変換を行うことができる構造としたものである。即ち、光電変換材料用半導体に太陽光が照射されうる構造となっている。本発明の太陽電池を構成する際には、前記半導体電極、電荷移動層及び対向電極をケース内に収納して封止するか、あるいはそれら全体を樹脂封止することが好ましい。
【0079】
本発明の太陽電池に太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、光電変換材料用半導体に吸着された本発明の化合物は、照射された光もしくは電磁波を吸収して励起する。励起によって発生した電子は半導体に移動し、次いで導電性支持体1を経由して対向電極4に移動して、電荷移動層3のレドックス電解質を還元する。一方、半導体に電子を移動させた本発明の化合物は酸化体となっているが、対向電極4から電荷移動層3のレドックス電解質を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に電荷移動層3のレドックス電解質は酸化されて、再び対向電極4から供給される電子により還元されうる状態に戻る。このようにして電子が流れ、本発明の光電変換素子を用いた太陽電池を構成することができる。
【0080】
本発明の太陽電池は、本発明の光電変換素子を用いて太陽光により光電変換を行うことができる構造としたものである。即ち、光電変換材料用半導体に太陽光が照射されうる構造となっている。本発明の太陽電池を構成する際には、前記半導体電極、電荷移動層及び対向電極をケース内に収納して封止するか、あるいはそれら全体を樹脂封止することが好ましい。
【0081】
本発明の太陽電池に太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、光電変換材料用半導体に吸着させている化合物は、照射された光もしくは電磁波を吸収して励起する。励起によって発生した電子は半導体に移動し、次いで導電性支持体1を経由して対向電極4に移動して、電荷移動層3のレドックス電解質を還元する。一方、半導体に電子を移動させた化合物は酸化体となっているが、対向電極4から電荷移動層3のレドックス電解質を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に電荷移動層3のレドックス電解質は酸化されて、再び対向電極4から供給される電子により還元されうる状態に戻る。このようにして電子が流れ、本発明の光電変換素子を用いた太陽電池を構成することができる。
【0082】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
1.光電変換素子1−1〜1−15の作製
チタンテトライソプロポキシド(和光純薬社製一級試薬)62.5mlを純水375ml中に室温下、激しく攪拌しながら10分間で滴下し(白色の析出物が生成する)、次いで70%硝酸水を2.65ml加えて反応系を80℃に加熱した後、8時間攪拌を続けた。さらに該反応混合物の体積が約200mlになるまで減圧下に濃縮した後、純水を125ml、酸化チタン粉末(昭和タイタニウム社製スーパータイタニアF−6)140gを加えて酸化チタン懸濁液(約800ml)を調製した。フッ素をドープした酸化スズをコートした透明導電性ガラス板上に該酸化チタン懸濁液を塗布し、自然乾燥の後300℃で60分間焼成して、支持体上に膜状の酸化チタンを形成した。
【0083】
メタノール溶液200ml中に化合物1−1を5g溶解した溶液を調製し、上記膜状酸化チタンを支持体ごと浸し、さらにトリフルオロ酢酸1gを加えて2時間超音波照射した。反応後膜状酸化チタンをクロロホルムで洗浄し真空乾燥して半導体電極を作製した。対電極として、フッ素をドープした酸化スズをコートし、さらにその上に白金を担持した透明導電性ガラス板を用い、2つの電極の間に体積比が1:4であるアセトニトリル/炭酸エチレンの混合溶媒に、テトラプロピルアンモニウムアイオダイドと沃素とを、それぞれの濃度が0.46モル/リットル、0.06モル/リットルとなるように溶解した電解質を入れ、この側面を樹脂で封入して、光電変換素子1−1を作製した。
【0084】
光電変換素子1−1の作製において、化合物1−1を、下記に示す表1の通りに変更した以外は同様の方法で光電変換素子1−2〜1−15を作製した。
2.光電変換素子2−1〜2−15、光電変換素子Rの作製
光電変換素子1−1の作製において、膜状酸化チタンを浸した溶液を、メタノール200ml中に本発明の化合物1−1(2.5g)と下記に示す併用化合物A(当業に従事する技術者には周知のN3色素)2.5gの混合溶液とした以外は光電変換素子1−1の作製と同様にして、本発明の光電変換素子2−1を得た。
【0085】
光電変換素子2−1の作製において、化合物1−1を下記に示す表1の通りに変更した以外は同様の方法で、光電変換素子2−2〜2−15を作製した。
【0086】
また、光電変換素子2−1の作製において、上記混合溶液の代わりに併用化合物A5gをメタノール200mlに溶解した溶液を用いた以外は同様の方法で、光電変換素子Rを得た。
【0087】
【化14】
【0088】
3.太陽電池SC−01〜SC−30、SC−Rの作製
光電変換素子1−1〜1−15、2−1〜2−15、R各々にリード線を取り付けて、太陽電池SC−01〜SC−30、SC−Rを作製した。太陽電池SC−01〜SC−30、SC−Rは各々3つずつ作製した。
4.太陽電池SC−01〜SC−30、SC−Rの光電変換特性
作製した太陽電池SC−01〜SC−30、SC−Rにソーラーシミュレーター(JASCO(日本分光)製、低エネルギー分光感度測定装置CEP−25)により100mW/m2の強度の光を照射した時の短絡電流値Jscおよび開放電圧値Vocを測定し、それぞれの太陽電池に用いた化合物・光電変換素子とともに下記表1に示した。示した値は、太陽電池3つについての測定結果の平均値とした。
【0089】
【表1】
【0090】
表1から、本発明の光電変換材料用半導体を有する光電変換素子を用いた太陽電池は高い光電変換効率を有することが分かった。また一般式1〜4に示される化合物よりも短波長領域に感度を有する色素と併用することにより、太陽電池の光電変換効率をより向上させることができたことが分かった。
【0091】
さらに本発明の太陽電池は、ソーラーシミュレーターによる100mW/m2の光照射100時間を経ても光電変換効率の低下が認められなかったことから、本発明の太陽電池が耐久性に優れていることが分かった。
【0092】
【発明の効果】
本発明によって、光電変換効率が高く、耐久性に優れた光電変換材料用半導体、光電変換素子、太陽電池を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光電変換素子の構造の一例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 導電性支持体
2 感光層
3 電荷移動層
4 対向電極
Claims (10)
- 半導体を下記一般式1〜4で示される化合物の少なくとも1種によって増感させていることを特徴とする光電変換材料用半導体。
- 前記一般式1〜4で示される化合物よりも短波長に最大吸収波長を有する化合物によって、さらに増感させていることを特徴とする請求項1に記載の光電変換材料用半導体。
- 半導体に前記一般式1〜4で示される化合物の少なくとも1種を吸着させていることを特徴とする光電変換材料用半導体。
- 前記一般式1〜4で示される化合物よりも短波長に最大吸収波長を有する化合物をさらに吸着させていることを特徴とする請求項3記載の光電変換材料用半導体。
- 前記半導体が金属酸化物又は金属硫化物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換材料用半導体。
- 前記一般式1〜3のAが前記A1であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換材料用半導体。
- 前記一般式4のBが前記B1であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換材料用半導体。
- 前記X1および前記X2が硫黄原子又はセレン原子であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光電変換材料用半導体。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の光電変換材料用半導体を含有する層を有することを特徴とする光電変換素子。
- 請求項9に記載の光電変換素子を用いたことを特徴とする太陽電池。
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