JP4943001B2 - トコトリエノール類含有組成物の製造方法 - Google Patents

トコトリエノール類含有組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、健康食品、機能性化粧品、酸化安定剤に好適に使用されるトコトリエノール類を含有する組成物の製造方法に関する。
トコトリエノール類は、粗パーム油などの植物油に微量に含まれるビタミンE成分として知られていて、健康食品、機能性化粧品、酸化安定剤などに好適に使用されるものである。このようなトコトリエノール類を含有する組成物の製造方法としては、例えば、特許文献1に開示された方法がある。なお、本明細書では、トコトリエノールとその異性体であるトコフェロールとをまとめてトコトリエノール類とよぶ。トコトリエノール、トコフェロールとしては、それぞれα体、β体、γ体、δ体の異性体が知られている。
特開2003−171376号公報
しかしながら、このような従来の製造方法では、製造過程において、トコトリエノール類が変性したり分解したりして、トコトリエノール類が高収率で得られない傾向があった。また、植物油からトコトリエノール類含有組成物を製造するプロセスにおいては、トコトリエノール類含有組成物とともに、洗剤原料などとして有用な脂肪酸低級アルキルエステルも高純度かつ高収率で得られることが望まれるが、そのような方法は従来見出されていなかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、トコトリエノール類の変質や分解を抑制し、トコトリエノール類を高濃度で含む組成物を高いトコトリエノール類収率で得ることができるとともに、好適には高純度の脂肪酸低級アルキルエステルを高収率で得ることのできる製造方法の提供を課題とする。
本発明のトコトリエノール類含有組成物の製造方法は、粗パーム油からガム質を除去し、脱ガム物を得る脱ガム工程(P)と、カチオン交換樹脂を使用して、前記脱ガム物中の脂肪酸を低級アルキルアルコールでエステル化し、酸価が2以下のエステル混合油を含む反応混合物を得るエステル化工程(A)と、前記エステル混合油中の油脂を低級アルキルアルコールでエステル交換するエステル交換反応工程(B)と、前記エステル交換反応工程(B)で得られた油相を蒸留して、脂肪酸低級アルキルエステルを留出させるとともに、トコトリエノール類を含有する組成物を残留させる蒸留工程(C)とを有し、前記脱ガム工程(P)は、前記粗パーム油にリン酸からなる変性剤とパーライトからなる吸着剤とを混合し、得られた混合物をろ過する工程であるとともに、前記蒸留工程(C)は、蒸留塔のボトム温度が220℃以下の条件で行われ、少なくとも1段の減圧蒸留工程を有していることを特徴とする。
前記エステル交換反応工程(B)は2段の工程からなり、エステル交換反応率が98%以上になるように行われることが好ましい。
前記減圧蒸留工程のうち、最後段の工程の残留物中のトコトリエノール類の濃度が1質量%以上となるように、前記最後段の工程の蒸留条件を下記(i)〜(iii)を満足するように設定することが好ましい。
(i)蒸留塔のトップ圧力を0.1〜1kPaとし、ボトム圧力を2.0〜5.0kPaとする。
(ii)蒸留塔のトップ温度を150〜180℃とし、ボトム温度を190〜220℃とする。
(iii)還流比を0〜1とする。
本発明によれば、トコトリエノール類の変質や分解を抑制し、トコトリエノール類を高濃度で含む組成物を高いトコトリエノール類収率で得ることができるとともに、好適には高純度の脂肪酸低級アルキルエステルを高収率で得ることのできる製造方法を提供できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法で原料として使用される粗パーム油とは、アブラヤシの果肉を圧搾して得られ、炭素数16〜18の脂肪酸の油脂を主成分とする未精製の混合物である。粗パーム油には、他に、カロチン、リン脂質、タンパク質、樹脂状物質などのガム質、遊離脂肪酸、炭素数20の脂肪酸の油脂などが含まれるほか、トコトリエノール類が通常650〜1000ppm含まれる。本発明では、トコトリエノール類を含有する粗パーム油であればどのようなものでも好適に使用できるが、特に遊離脂肪酸含有量が5質量%以下、過酸化物価が5 m equivalent/kg以下の粗パーム油が好ましい。なお、以下、主成分とは、少なくとも50%を占める成分のことを指す。
図1は、本発明の製造方法の一例を示す概略工程図であって、脱ガム工程(P)を行った後、原料中の脂肪酸のエステル化工程(A)を行い、その後、エステル交換反応工程(B)、蒸留工程(C)を実施する。
[脱ガム工程(P)]
脱ガム工程(P)は、粗パーム油に含まれるリン脂質を主成分とするガム質や、コロイド状不純物などの不溶物をあらかじめ除去するための工程であって、本発明では、粗パーム油に、変性剤としてリン酸を添加するとともに吸着剤としてパーライトを添加し、得られた混合物をろ過する方法で行う。
リン酸とパーライトは、他の酸からなる変性剤や他の吸着剤と異なり、トコトリエノール類を変質させることがない。よって、トコトリエノール類を高い収率で得ることができる。また、リン酸を使用すると脱ガム率が高まり、後の各工程で副生物を分離し易くなるため分離効率が向上する。その結果、蒸留工程(C)後に残留物として得られるトコトリエノール類含有組成物は、トコトリエノール類を高濃度で含むものとなりやすく、かつ、高純度の脂肪酸低級アルキルエステルが留出液として高収率で得られやすくなる。また、パーライトは、より高い吸着能を有していることからも好ましい。なお、パーライトとは、黒曜石を高温で熱処理してできる発泡体である。
具体的には、粗パーム油を好ましくは50〜70℃、より好ましくは60〜70℃に加熱し、これにリン酸とパーライトとを添加し、好ましくは1〜60分間、より好ましくは10〜40分間混合撹拌する。混合撹拌の後、この混合物を、布フィルタなどのフィルタを備えたろ過器でろ過することにより、不溶物が除去され、脱ガム物がろ液として得られる。処理温度が50〜70℃であると、粗パーム油中の有用な成分(例えば酸化防止成分)を変質させたり、劣化させたりすることがないとともに、効果的に脱ガムできる。
ここでリン酸の添加量は、粗パーム油100質量部に対して0.01〜0.1質量部が好ましい。0.01質量部以上であると、脱ガムが効果的に進行し、一方、0.1質量部以下であると、脱ガムに寄与しなかったリン酸が残存しにくく、残存リン酸に由来するエステル交換反応工程(B)での不溶塩の生成も抑制される傾向がある。また、リン酸の添加量は、粗パーム油のガム質含有量に応じて、適宜調整することがより好ましい。なお、ガム質含有量は、A.O.C.S試験法Ca 9f−57により測定可能である。
また、リン酸は水溶液の形態で添加されることが好ましく、その場合、リン酸水溶液のリン酸濃度は70質量%以上が好ましく、より好ましくは75〜90質量%である。このような濃度であると、溶媒である水が脱ガム工程(P)よりも後段の工程に悪影響を与えるおそれや、ガム質のろ過性が悪化するおそれが少なく、好適である。
パーライトの添加量は、粗パーム油100質量部に対して、0.03〜0.15質量部が好ましく、より好ましくは0.03〜0.1質量部であり、さらに好ましくは0.03〜0.05質量部である。0.03質量部以上であると、脱ガムが効果的に進行し、一方、0.15質量部以下であると、粗パーム油のロスが抑えられるとともに、廃棄されるパーライト量も少なくできる。
なお、脱ガム工程(P)では、吸着剤を多めに配合した粗パーム油をフィルタに循環供給して、フィルタの表面にプレコート相を形成させ、ろ過をより円滑に行えるようにしてもよい。その際のパーライトの添加量は、粗パーム油100質量部に対して、好ましくは0.2〜1.0質量部、より好ましくは0.2〜0.7質量部、さらに好ましくは0.2〜0.4質量部である。この場合でも、パーライトの添加量がこのような範囲であると、粗パーム油のロスを抑え、廃棄されるパーライト量を少なくしつつ、効果的に脱ガムすることができる。
また、脱ガム工程(P)の前後や、脱ガム工程(P)中において、必要に応じて粗パーム油から夾雑物を除去することが好ましい。夾雑物は、前記ガム質の除去と同じ方法、同じ装置により除去してもよいし、粗パーム油貯蔵タンクでの静置分離またはろ過装置、遠心分離等の方法で除去することができる。夾雑物としては、土、砂利、ゴミがあり、場合によっては金属分等が含まれることもある。また、脱ガム物の水分含有量は2000ppm以下であることが好ましく、これを超える場合には、ここで水分を適宜除去することが好ましい。これは、多量の水分は後のエステル交換反応工程(B)におけるエステル交換反応率に悪影響を与えるおそれがあるためである。
[エステル化工程(A)]
エステル化工程(A)は、カチオン交換樹脂を使用して粗パーム中の脂肪酸(以下、遊離脂肪酸という場合もある。)を低級アルキルアルコールでエステル化し、エステル混合油を含む反応混合物を得る工程である。
なお、ここで反応混合物とは、エステル化工程(A)で得られた未処理の混合物のことであって、エステル化工程(A)で生成したエステルと、原料の主成分である油脂と、原料に元々含まれる他の成分とからなるエステル混合油に加えて、未反応の低級アルキルアルコールや副生した水分を含んだものを指す。すなわち、エステル化工程(A)で得られた未処理の混合物である反応混合物から、低級アルキルアルコールと水分とを除いたものがエステル混合油である。
このエステル化工程(A)では、エステル混合油の酸価が2以下、好ましくは1以下、より好ましくは0.1〜0.5となるように、エステル化を行う。エステル化工程(A)で到達させるエステル混合油の酸価は低いほど好ましいが、現実的な下限は0.1程度である。酸価を2以下とするためには、カラムの種類、カラム温度、カラム滞留時間、低級アルキルアルコールの使用量などの条件を調整すればよい。
このようなエステル化工程(A)をエステル交換反応工程(B)の前に行うことは、最終的に得られるトコトリエノール類や脂肪酸低級アルキルエステルを効果的に得るために非常に重要である。
すなわち、エステル混合油に、その酸価が2を超えるほどの脂肪酸が含まれると、エステル交換反応工程(B)で使用するアルカリ触媒がこの脂肪酸に消費されてしまい、目的とするエステル交換が進行しないばかりでなく、大量のセッケンが副生することになる。それでも尚、エステル交換を進行させようとすれば、アルカリ触媒が大量に必要になり、油脂のケン化が進行しセッケンの生成量がますます増大する。セッケンが大量に生成すると、その分離作業に悪影響を及ぼし、トコトリエノール類の収率や組成物中の濃度、脂肪酸メチルエステルの純度、製造歩留まりを低下させる原因となる。
なお、酸価とは、試料1gあたり、中和に要した水酸化カリウムの質量(mg)で表される酸性物質の濃度であって、油脂の場合、脂肪酸の濃度を意味する。酸価=1とは、脂肪酸濃度0.46質量%(パルミチン酸換算)に相当する。酸価はAVと呼ばれる場合もある。
実際の測定に際しては、反応混合物をエバポレータで吸引して未反応の低級アルキルアルコールや水分を除去してエステル混合油を得て、これをさらに無水硫酸ナトリウムを含ませたろ紙に通して前処理した後、中和滴定する方法が好ましい。
さらに、このようなエステル化工程(A)は、脂肪酸を系外へ除去するのではなく、脂肪酸低級アルキルエステルに変換するものであるので、原料ベースの脂肪酸メチルエステル製造歩留まりを高く維持することができる。しかも、このようなエステル化工程(A)は、脱ガム工程(P)とエステル交換反応工程(B)との間に連続的に行われるものであるので、非常に効率的である。系外に除去した脂肪酸を別のラインでエステル化した後、これを最終的に得られる脂肪酸低級アルキルエステルに混合することで製造歩留まりを維持する方法なども考えられるが、そのような方法は効率的ではない。
また、エステル化工程(A)では、脂肪酸の低級アルキルエステルとともに水が生成するため、原料中に大量の脂肪酸が含まれると、エステル化で生成する水の量もそれにともなって多くなる。多量の水の存在は、先述したように、ついで実施されるエステル交換反応工程(B)でのエステル交換反応率に悪影響を与えるおそれがある。よって、エステル化工程(A)で処理される原料中の脂肪酸の量は、酸価として15以下であることが好ましく、12以下がより好ましく、10以下がさらに好ましい。原料の酸価が15以下であると、エステル化工程(B)において、エステル混合油の酸価が2以下になるように原料をエステル化した場合に、エステル化にともなって生成する水の量が過剰にならず、反応混合物中の水分含有量が5000ppm以下に抑えられる傾向にある。このような水分含有量であれば、反応混合物から水分を分離せずに、これをエステル交換反応工程(B)に供しても、水分がエステル交換反応率に悪影響を与えることはない。
さらに本発明におけるエステル化工程(A)では、カチオン交換樹脂を使用してエステル化を行う。よって、原料をカチオン交換樹脂に接触させる簡単な方法で、連続的にエステル化を進行させることができるうえ、固体触媒を使用する方法や、硫酸などの酸を加える方法などの他のエステル化方法に比べて、高いエステル化反応率が達成できる。また、酸を加える方法では、装置の腐食などの問題もあるとともに、トコトリエノール類を変質させるおそれがある。しなしながら、カチオン交換樹脂を使用した方法では、このような問題も生じない。
さらに、カチオン交換樹脂としては、酸型固形カチオン交換樹脂、酸性ゲル型カチオン交換樹脂などがあるが、特に酸性ゲル型カチオン交換樹脂を使用すると、エステル化反応率がより高まるため好ましい。この理由については明らかではないが次のように推察できる。すなわち、酸型固形カチオン交換樹脂は、エステル化反応で生成した水が付着または吸着することにより触媒能が低下するが、酸性ゲル型カチオン交換樹脂では、水を水和水として取り込むことができるため、水による触媒能の低下が生じないことに起因すると考えられる。
酸性ゲル型カチオン交換樹脂の架橋度は、3〜10%の範囲が好ましい。3%以上であれば、樹脂強度の点で好ましく、10%以下であれば、脂肪酸の除去効率の点から好ましい。架橋度は、さらに好ましくは4〜8%である。なかでも、脂肪酸のエステル化反応率が最も高く、樹脂の機械的強度が十分であることなどから、架橋度4%のものが特に好ましい。
好適に使用できる酸性ゲル型カチオン交換樹脂としては、例えば、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーのスルホン化物などが挙げられ、例えば、三菱化学社製のダイヤイオンSK104(商品名、架橋度4%)、同SK106(商品名、架橋度6%)、同SK 1B(商品名、架橋度6%)および同SK110(商品名、架橋度10%)や、ダウケミカル社製ダウエックス(商品名、架橋度4%)、ローム・アンド・ハース社製のアンバーライト(商品名、架橋度4%)などが挙げられる。
エステル化工程(A)の具体的な方法としては、カチオン交換樹脂が充填されたカラムを用意し、低級アルキルアルコールと脱ガム物との混合物をカラムに供給し、通過させる方法が挙げられる。
カラムを通過させる際の条件は、カラム温度が好ましくは40〜70℃、より好ましくは50〜65℃、さらに好ましくは60〜65℃で、カラム滞留時間が好ましくは60〜480分間、より好ましくは90〜360分間、さらに好ましくは90〜240分間である。このような温度およびカラム滞留時間であると、混合物の流動性が良好で、反応速度も十分であるとともに、カラムを過度に大型化したり、耐圧化したりする必要もなく、効率的である。
なお、低級アルキルアルコールと脱ガム物との混合物をカラムに供給する前には、前処理として、カチオン交換樹脂をアルコールで洗浄しておくことが好ましい。洗浄のためのアルコールとしては、エステル化反応に使用するものと同じ低級アルキルアルコールを使用することが好ましい。また、このような洗浄は、カラムに通す前後のアルコール中の水分が変化しなくなるまで行うことが好ましい。このように洗浄することにより、カチオン交換樹脂中の水分がアルコールで置換され、脂肪酸のエステル化効率をより高めることができる。具体的には、カチオン交換樹脂の2〜5倍容量のアルコールで洗浄することが好ましい。
低級アルキルアルコールとしては、炭素数4以下のアルコールが使用でき、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよいが、好適には、図示のようにメタノールを使用する。
また、低級アルキルアルコールの添加量は、原料として使用される粗パーム中の脂肪酸分布などにより適宜決定されるが、脱ガム物100質量部に対して、好ましくは5〜50質量部であり、より好ましくは10〜30質量部、さらに好ましくは15〜25質量部である。このような範囲内であると、十分なエステル化反応率が得られるとともに、低級アルキルアルコールの回収コストや設備容量の過度の増大を抑制できる。
また、低級アルキルアルコール中の水分量は低いほど好ましいが、現実的には、1500ppm以下が好ましく、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは600ppm以下である。
[エステル交換反応工程(B)]
このようなエステル化工程(A)の後、アルカリ触媒を使用して、エステル混合油中の油脂を低級アルキルアルコールでエステル交換するエステル交換反応工程(B)を行う。ここでエステル交換の対象となる油脂とは、粗パーム油の主成分として存在する炭素数16および18の脂肪酸に由来するものである。このエステル交換により、脂肪酸低級アルキルエステルとグリセリンとが生成する。
アルカリ触媒は、品質の良い脂肪酸低級アルキルエステルが低温で得られやすいことから好ましく、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラートなどが挙げられる。これらのうちの1種以上を使用できるが、コストの点から水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、さらに操作性の点からは図示のように水酸化ナトリウムが好ましい。
このエステル交換反応工程(B)は少なくとも1段の工程からなり、好ましくは2段の工程として、エステル交換反応率が最終的に98%以上になるように行われる。ここでのエステル交換反応率が高いと、蒸留工程(C)で得られる残留物、すなわち、トコトリエノール類含有組成物に含まれる未反応のグリセライドが少なくなり、残留物中のトコトリエノール類の濃度を高めることができる。
また、ここで使用されるアルカリ触媒の量は、適切に制御されることが好ましい。
すなわち、アルカリ触媒量が多いと、エステル交換反応の反応性は高まる。しかしながら、アルカリ触媒量が多いと、アルカリ触媒と脂肪酸や油脂とが反応して副生するセッケンの量も多くなり、その分離作業に悪影響を及ぼし、トコトリエノール類の収率や組成物中の濃度、脂肪酸メチルエステルの純度、製造歩留まりを低下させる原因となりやすい。
具体的には、エステル混合油100質量部に対して、アルカリ触媒量0.1〜1.0質量部、より好ましくは0.2〜0.6質量部、さらに好ましくは0.2〜0.4質量部の範囲内とし、酸価が大きい場合にはアルカリ触媒量も多くし、酸価が小さい場合にはアルカリ触媒量も少なくすることが好ましい。
さらに好ましくは、アルカリ触媒として水酸化ナトリウムを単独で使用し、その際のエステル混合油100質量部に対する触媒量CNaOH[質量部]を、酸価をパラメータとした下記式(1)により決定する。下記式(1)は実験により求めたものである。
NaOH=0.2+0.07×AV・・・(1) ただし、AVは酸価を示し、2以下である。
また、アルカリ触媒として水酸化カリウムを単独で使用する場合には、その際のエステル混合油100質量部に対する触媒量CKOH[質量部]を、酸価をパラメータとした下記式(2)により決定することが好ましい。下記式(2)は実験により求めたものである。
KOH=0.37+0.1×AV・・・(2) ただし、AVは酸価を示し、2以下である。
具体的なエステル交換反応工程(B)の方法としては、エステル化工程(A)で得られた反応混合物に、低級アルキルアルコールとアルカリ触媒とを添加し、後述の条件で反応を進行させればよい。なお、反応混合物には、水分も含まれるが、ここでその水分含有量が5000ppm以下であると、特に上述のアルカリ触媒量とすることが有効である。
使用する低級アルキルアルコールとしては、前述のエステル化工程(B)で例示したものを同様に使用でき、好適には、図示のようにメタノールを使用する。
低級アルキルアルコールの使用量(反応混合物中に含まれる低級アルキルアルコールの量も含む。)は、エステル混合油100質量部に対し、好ましくは10〜50質量部であり、より好ましくは20〜40質量部、さらに好ましくは30〜40質量部である。このような範囲であると、使用する装置を大型化する必要がなく、低級アルキルアルコールの回収、精製も低コストで行えるとともに、十分なエステル交換反応率が得られる。
また、反応温度は、好ましくは40〜120℃であり、より好ましくは50〜100℃、さらに好ましくは60〜80℃である。このような範囲であると、エステル交換反応の速度が十分であるとともに、使用する装置の耐圧性を高めたりする必要がなく、効率的である。また、処理時間は、好ましくは15〜120分間であり、より好ましくは30〜70分間、さらに好ましくは40〜60分間である。このような範囲であると、使用する装置を大型化することなく、高いエステル交換反応率を達成することができる。
このような1段目の工程により、脂肪酸低級アルキルエステルを主成分とする油相と、グリセリンを主成分とする相(以下、グリセリン相という。)とが生成する。
こうして得られた油相をそのまま蒸留工程(C)に供してもよいが、好ましくは、このような1段目の工程に引き続いて2段目のエステル交換反応工程を行ってから、蒸留工程(C)を実施することが好ましい。このようにエステル交換反応を2段とすることにより、脂肪酸低級アルキルエステルのエステル交換反応を98%以上とすることも可能となる。
1段目の後には、脂肪酸低級アルキルエステルを主成分とする油相と、グリセリン相とを分離し、油相のみを2段目に供給する。
油相とグリセリン相との分離は、静置分離、遠心分離等で行えばよく、静置分離の場合には、温度は好ましくは30〜70℃、より好ましくは30〜50℃で、静置時間は好ましくは30〜90分間、より好ましくは30〜60分間とすればよい。このような条件とすると、油相の流動性が良好であるとともに、低級アルキルアルコールの蒸気圧も抑制できるため使用する分離装置の耐圧性を高める必要もなく、効率的に分離が行える。
また、油相とグリセリン相とを分離する前には、アルカリ金属を水洗するための水を添加することが好ましい。
2段目では、1段目でのエステル交換反応率に応じて、2段目の低級アルキルアルコール添加量、処理温度や処理時間、触媒添加量などの条件を1段目よりも緩やかに設定すればよいが、好適には、2段目に供給された油相100質量部に対して、低級アルキルアルコール添加量を好ましくは1〜20質量部、より好ましくは5〜10質量部とする。このような範囲であると、低級アルキルアルコールの回収、精製も低コストで行えるとともに、十分なエステル交換反応率が得られる。また、アルカリ触媒の量は、油相100質量部に対して好ましくは0.01〜0.2質量部、より好ましくは0.05〜0.2質量部、さらに好ましくは0.05〜0.1質量部であり、このような範囲であれば、セッケンの副生を少なく抑えつつ、効率的にエステル交換反応を行える。
また、2段目の処理温度は好ましくは40〜70℃であり、より好ましくは50〜60℃である。このような範囲であると、エステル交換反応の速度が十分であるとともに、使用する装置の耐圧性を高めたりする必要がなく、効率的である。また、2段目の処理時間は、好ましくは1〜15分間であり、より好ましくは3〜10分間である。このような範囲であると、過度に時間を要することなく、十分なエステル交換反応率を達成することができる。
このような2段目の終了後、脂肪酸低級アルキルエステルを主成分とする油相と、グリセリン相とを分離し、油相は蒸留工程(C)へと送られる。なお、ここで得られるグリセリン相や1段目で得られるグリセリン相の処理には特に制限はないが、グリセリン相中のセッケンを酸で分解して脂肪酸とし、この脂肪酸を原料などに返送し、再利用してもよい。
油相とグリセリン相との分離は、1段目と2段目との間に実施される分離と同様に静置分離、遠心分離等で行うことができ、分離性が良好となり、分離装置の耐圧性を高める必要がない点から、温度は好ましくは30〜70℃、より好ましくは40〜70℃で、静置時間は好ましくは30〜90分間、より好ましくは30〜60分間とすればよい。また、油相とグリセリン相とを分離する際には、グリセリンや低級アルキルアルコールなどを水洗するための水を添加することが好ましく、その場合、水の添加量は、エステル交換反応工程(B)で得られた混合物100質量部に対して10〜30質量部が好ましく、10〜20質量部がより好ましい。このような範囲であると、乳化を起こすことなく、効果的な水洗が行える。
[蒸留工程(C)]
蒸留工程(C)は、エステル交換反応工程(B)で得られた油相を蒸留して、脂肪酸低級アルキルエステルを含有する留出液を留出させるとともに、トコトリエノール類を含有する組成物を残留物として残留させる工程であるが、特に、蒸留工程(C)をボトム温度220℃以下の条件で行うとともに、少なくとも1段の減圧蒸留工程を有するものとすることにより、トコトリエノール類を分解させたり変質させたりすることなく、これを含有する組成物を塔底に確実に残留させることができ、かつ、高純度の脂肪酸低級アルキルエステルを留出液として得ることができる。ボトム温度が220℃を超えると、トコトリエノール類の分解が起こる。また、減圧蒸留工程であれば、ボトム温度220℃以下の条件でも、高純度の脂肪酸低級アルキルエステルを留出させることができる。
残留物として塔底に残るトコトリエノール類含有組成物には、トコトリエノール類の他、モノグリセライド、ジグリセライド、トリグリセライドなどの未反応のグリセライド、炭素数20の脂肪酸の低級アルキルエステル、アルカリセッケンなどのアルカリ金属に由来した成分、カロチンの分解物などが含まれるため、トコトリエノール類を健康食品などに使用するにあたっては、この組成物を適宜精製処理する。
また、減圧蒸留工程は、留出させる脂肪酸低級アルキルエステルの炭素数が異なる2段以上とすることが好ましい。
具体的には、まず、常圧のフラッシュ蒸留工程をボトム温度220℃以下、好ましくは140〜160℃で行って、低級アルキルアルコール(図示例ではメタノール)と水とを留出液として除去する。ついで、その残留物に対して、ボトム温度220℃以下の条件下、2段以上の減圧蒸留工程を実施する。
2段以上の減圧蒸留工程については、留出させる脂肪酸アルキルエステルの炭素数が各減圧蒸留工程で異なるように、各減圧蒸留工程の蒸留条件を設定することが好ましく、通常、前段側から後段側になるにしたがって、より炭素数の大きな脂肪酸低級アルキルエステルが留出するように条件設定する。なお、各減圧蒸留工程では、異なる炭素数の脂肪酸低級アルキルエステルが複数混合して留出することもあるが、その際には、炭素数の平均値が、前段側から後段側になるにしたがって、より大きくなるようになっていればよい。
このように減圧蒸留工程を2段以上で行うことによって、より高純度の脂肪酸低級アルキルエステルを得ることができるとともに、残留物中にトコトリエノール類を残存させやすくできる。すなわち、油相には、炭素数が異なる脂肪酸低級アルキルエステルが複数存在し、これらは一般的に沸点も異なる。よって、例えば、減圧蒸留工程を1段で実施し、その際、油相の主成分である高炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルの蒸留に好適な蒸留条件を設定したとすると、蒸留中に、マイナー成分である低炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルが突沸してしまう。その結果、蒸留塔の塔底に残留するモノグリセライドやトコトリエノール類が留出液に同伴されやすくなり、得られる高炭素数側の脂肪酸低級アルキルエステルの純度や性状が低下するとともに、残留物中のトコトリエノール類の濃度が低くなる。その点、減圧蒸留工程を2段以上で行うと、炭素数に応じた最適な蒸留条件を各工程で設定できるため、得られる脂肪酸低級アルキルエステルは高純度なものとなり、残留物中のトコトリエノール類濃度も高まる。
具体的には、まず、第1の減圧蒸留工程で、図1のように、炭素数12、14の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを含む留出液を得て、ついで第2の減圧蒸留工程で、炭素数16、18の脂肪酸に由来する脂肪酸低級アルキルエステルを含む留出液を得る方法(方法(1))が好ましい。
この場合、第1の減圧蒸留工程は、蒸留塔のボトム温度220℃以下とするとともに、トップ圧力を1〜3kPa、トップ温度を178〜184℃とし、還流比を10〜15とすることが好ましい。
また、最後段の減圧蒸留工程である第2の減圧蒸留工程の条件は、以下の(i)〜(iii)をいずれも満足する蒸留条件とすることが好ましい。
(i)蒸留塔のトップ圧力を0.1〜1kPa、好ましくは0.1〜0.5kPaとし、ボトム圧力を2.0〜5.0kPa、好ましくは2.0〜4.0kPaとする。
(ii)蒸留塔のトップ温度を150〜180℃、好ましくは160〜170℃とし、ボトム温度を190〜220℃、好ましくは200〜210℃とする。
(iii)還流比を0〜1、好ましくは0〜0.5とする。
このようにすると、留出する脂肪酸低級アルキルエステルが高純度となるとともに、残留物中のトコトリエノール類の分解を抑制でき、この工程での留出液中のトコトリエノール類の濃度を0.01質量%以下、かつ、残留物中のトコトリエノール類の濃度を1質量%以上に制御することも可能となる。
ここで還流比とは、還流量の留出量に対する比である。また、トップ温度およびトップ圧力、ボトム温度およびボトム圧力とは、蒸留塔のトップ、ボトムでそれぞれ測定された温度と圧力のことであり、トップは留出液が出る塔頂部分、ボトムは残留物が溜まる塔底部分である。
以上説明したような製造方法によれば、脱ガム工程(P)で、変性剤としてリン酸を使用するとともに、吸着剤としてパーライトを使用し、かつ、蒸留工程(C)をボトム温度220℃以下の条件とするとともに、少なくとも1段の減圧蒸留工程を有するものとしているので、これらの相乗効果により、トコトリエノール類を高濃度で含有する組成物を高収率で得ることができる。また、エステル化工程(A)では酸価が2以下のエステル混合油を得ているので、トコトリエノール類を高濃度で含有する組成物を高収率で得られるとともに、脂肪酸低級アルキルエステルも高純度かつ高収率で円滑に得られる。
このように残留物として得られたトコトリエノール類含有組成物からは、トコトリエノール類が適宜単離され、健康食品、機能性化粧品、酸化安定剤などに好適に使用される。
なお、このようにして得られるトコトリエノール類中におけるトコトリエノールとトコフェロールとの存在比率(質量比)は、およそ3:1程度である。
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
また、下記実施例において、特に断りの限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
また、各例中、水分含有量の測定はカールフィッシャー法に準拠した。
[実施例1]
以下の工程により、原料としてマレーシア産の粗パーム油(CPO)を用い、これから脂肪酸メチルエステルを製造した。
この粗パーム油は、トコトリエノール類を840ppm含有し、油脂としては、炭素数12の成分を0.3%、炭素数14の成分を0.9%、炭素数16の成分を45.1%、炭素数18の成分を52.9質量%、炭素数20の成分を0.8質量%含有していた。また、遊離脂肪酸を3.6%、ガム質を0.5%含有し、酸価は8.0であった。
(1)脱ガム工程(P)
65℃に加熱した粗パーム油100質量部に対して、濃度80%のリン酸水溶液0.05部と、吸着剤であるパーライト0.04部を添加して、20分間混合撹拌した。ついで、これをジャケット付加圧ろ過器(KST−142−JA‐S)を用い、Advantec社製NO−5Cろ紙(ろ過面積113cm)で圧力1kg/cm、温度45℃の条件で加圧ろ過し、ガム質を含有する不溶物を除去し、脱ガム物(ガム質含有量0.1%)をろ液として得た。得られた脱ガム物の水分含有量は900ppmであった。
(2)エステル化工程(A)
酸性ゲル型カチオン交換樹脂である三菱化学社製のダイヤイオンSK1B(商品名、架橋度8%)を充填したカラムにメタノールを通過させ、洗浄した。ついで、上記脱ガム物100質量部に対してメタノールを20質量部添加した混合物を、カラムに供給して通過させ、反応混合物を得た。反応混合物中のエステル混合油は、酸価が0.32であった。また、反応混合物中の水分含有量は、3000ppmであった。また、カラム温度は65℃、カラム滞留時間は120分間とし、メタノールとしては、水分量が600ppmのものを使用した。
(3)エステル交換反応工程(B)
上記(2)で得られたエステル混合油に対して、エステル交換反応工程(B)(1段)を次のように行った。
まず、エステル混合油を84%含有する反応混合物に対して、メタノールと、アルカリ触媒である水酸化ナトリウムとを添加した。ここで、メタノールの添加量は、反応混合物120部に対して15部であり、水酸化ナトリウムの添加量はエステル混合油100部に対して0.25部となるようにした。
そして、これを処理温度70℃で60分間、パドル攪拌機付オートクレーブで反応させることで、脂肪酸メチルエステルを主成分とする油相と、グリセリン相とを生成させた。
ついで、これを40℃で60分間静置した後、油相とグリセリン相に分離し、油相100部に対して水洗用の水14部を添加し、撹拌後、これを40℃で60分間静置した。その後、これを油相と水相(セッケン、メタノール、グリセリン、水酸化ナトリウムなどの水溶性物質が溶解している相、グリセリン相ともいう。)に分離した。エステル交換反応率(油相中の脂肪酸メチルエステル濃度)は96.3%であった
(4)蒸留工程(C)
上記(3)で得られた油相に対して、まず、常圧、ボトム温度150℃でフラッシュ蒸留して、メタノールと水とを留出液として除去した。
ついで、フラッシュ蒸留の残留物に対して、第1の減圧蒸留工程(ボトム温度200℃、トップ温度180℃、トップ圧力2.0kPa)を行って、炭素数12、14の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを主成分とする留出液を得た。
ついで、第1の減圧蒸留工程の残留物に対して、第2の減圧蒸留工程(トップ圧力0.5kPa、ボトム圧力3kPa、トップ温度170℃、ボトム温度200℃、還流比0.5)を行って、炭素数16、18の脂肪酸に由来する脂肪酸メチルエステルを主成分とする留出液を得るとともに、トコトリエノール類を含有する組成物を残留物として得た。
表1に、第2の減圧蒸留工程で得られた残留物中のトコトリエノール類濃度およびトコトリエノール類変性率、トコトリエノール類収率を示す。
また、第1の減圧蒸留工程で得られた留出液と第2の減圧蒸留工程で得られた留出液とを混合した混合液中の脂肪酸メチルエステル濃度と、脂肪酸メチルエステル収率も表1にまとめる。
[実施例2]
エステル交換反応工程(B)を2段にした以外は実施例1と同様の工程を行った。
具体的には、実施例1の(3)で得られたエステル交換反応率(油相中の脂肪酸メチルエステル濃度)96.3%の油相100部に対してメタノールを5部、アルカリ触媒である水酸化ナトリウムを0.1部添加し、処理温度60℃で5分間、2段目のエステル交換反応を実施した。
得られた混合物100質量部に対して水洗用の水14部を添加し、撹拌後、これを40℃で60分間静置した。その後、これを油相と水相(セッケン、メタノール、グリセリン、水酸化ナトリウムなどの水溶性物質が溶解している相)に分離した。エステル交換反応率(油相中の脂肪酸メチルエステル濃度)は99.2%であった。
表1に、第2の減圧蒸留工程で得られた残留物中のトコトリエノール類濃度およびトコトリエノール類変性率、トコトリエノール類収率を示す。
また、第1の減圧蒸留工程で得られた留出液と第2の減圧蒸留工程で得られた留出液とを混合した混合液中の脂肪酸メチルエステル濃度と、脂肪酸メチルエステル収率も表1にまとめる。
[比較例1]
脱ガム工程(P)で使用する吸着剤として、パーライトの代わりに活性白土を使用するとともに、その使用量を粗パーム油100質量部に対して1部とし、さらに、第2の減圧蒸留工程の条件をトップ圧力1.0kPa、ボトム圧力5kPa、トップ温度190℃、ボトム温度250℃、還流比0.5とした以外は実施例2と同様の工程を行った。得られた脱ガム物のガム質含有量は0.1%で、エステル交換反応率は99.2%であった。結果について、表1に示す。
[比較例2]
脱ガム工程(P)で使用する吸着剤として、パーライトの代わりに活性白土を使用するとともに、その使用量を粗パーム油100質量部に対して1部とした以外は実施例2と同様の工程を行った。得られた脱ガム物のガム質含有量は0.1%で、エステル交換反応率は99.2%であった。結果について、表1に示す。
[比較例3]
第2の減圧蒸留工程の条件をトップ圧力1.5kPa、ボトム圧力7kPa、トップ温度195℃、ボトム温度250℃、還流比0.5とした以外は実施例2と同様の工程を行った。エステル交換反応率は99.5%であった。
結果について表1に示す。
[比較例4]
脱ガム工程(P)とエステル化工程(A)とを行わない以外は実施例1と同様にして(アルカリ触媒(水酸化ナトリウム)量は0.25部)、エステル交換反応工程(B)を行った。しかしながら、エステル交換反応はほとんど進行せず、得られた混合物を40℃で30分間静置したが、油相とグリセリン相に分離しなかった。
[比較例5]
水酸化ナトリウムの量を0.8部とした以外は比較例4と同様にして、エステル交換反応工程(B)を行った。得られた混合物を40℃で30分間静置し、油相とグリセリン相に分離した。その後、油相100部に対して水10部を添加し、攪拌後、これを40℃で60分間静置し油相と水相に分離した。エステル交換反応率は95.1%であった。
ついで、油相に対し、実施例1と同じ条件で蒸留工程(C)を行った。
結果について表1に示す。
Figure 0004943001
トコトリエノール類の濃度は、次のように測定した。
前処理後の各試料0.5gを正確にはかり、これをメスフラスコに入れ、メタノールで50mLにメスアップし、試料溶液とした。。一方、標準品トコフェロール(α、β、γ、δ)の各々を、所定の濃度となるように標準溶液を作製し、この標準溶液を、下記条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析し、各トコフェロールの検量線を予め作成しておいた。なお、各トコトリエノール感度(α、β、γ、δ)は、各トコフェロール感度と同じとした。つぎに、前記試料溶液を同様にして分析し、前記検量線から各濃度を算出し、合計して、トコトリエノール濃度(ppm)を得た。
<HPLCカラム条件>
カラム:デュポン社製、商品名Zorbax ODS4.6φ×250mm 5μm
溶離液:メタノール/水=98/2(v/v) 流速:0.65mL/分
検出器:UV284nm、サンプル量:20μL
また、トコトリエノール類の変性率は、上記トコトリエノール類の濃度測定に際して、未同定であるピークを変性物由来のピークとし、下記式(1)から算出した。
変性率(%)=未同定ピーク面積×100/(トコトリエノール類と同定されたピーク面積+未同定ピーク面積)
脂肪酸メチルエステル濃度は、ガスクロマトグラフィ(GC)により、あらかじめ作製された検量線を用いて求めた。すなわち、前処理後の試料を採血ビンに約0.2g取り、n−ヘキサン約1gを加えて溶解し、下記GC測定条件で操作し、検量線から各留分の濃度を算出した。
なお、検量線は、脂肪酸メチルエステル標準品(炭素数6〜22、和光純薬社製)の各々をn−ヘキサンに溶解し、所定の濃度となるように標準溶液を調製し、各標準溶液を下記条件でGC分析して作製した。
<GC測定条件>
・GC:島津製作所社製、商品名GC6A
・カラム:DEGS(ジエチレングリコールサクシネート20%)、カラム温度:180℃、注入口温度:250℃
・検出器温度:250℃、RANGE(10):n=3
・キャリアーガス:N2、50mL/min、 検出器:FID、注入器:1μL
実施例および比較例の結果から、脱ガム工程(P)においてリン酸からなる変性剤とパーライトからなる吸着剤とを使用するとともに、蒸留工程(C)をボトム温度220℃以下の適切な条件で行った各実施例では、これらの相乗効果が発現し、トコトリエノール類の収率が高く、その残留物中の濃度等も良好であった。
特に、脱ガム工程および蒸留工程がともに適切に実施されなかった比較例1に比べると、実施例3では、トコトリエノール類の収率が63%も高かった。一方、脱ガム工程と蒸留工程のうち、蒸留工程のみが適切に実施された比較例2では、比較例1よりもトコトリエノール類収率が30%上がり、脱ガム工程のみが適切に実施された比較例3では、比較例1よりもトコトリエノール類収率が20%上がったものの、これら収率上昇分を合算しても50%であり、実施例3での上昇分63%には及ばず、上述の相乗効果が確認できた。
本発明の製造方法の一例を示す概略工程図である。

Claims (3)

  1. 粗パーム油からガム質を除去し、脱ガム物を得る脱ガム工程(P)と、
    カチオン交換樹脂を使用して、前記脱ガム物中の脂肪酸を低級アルキルアルコールでエステル化し、酸価が2以下のエステル混合油を含む反応混合物を得るエステル化工程(A)と、
    前記エステル混合油中の油脂を低級アルキルアルコールでエステル交換するエステル交換反応工程(B)と、
    前記エステル交換反応工程(B)で得られた油相を蒸留して、脂肪酸低級アルキルエステルを留出させるとともに、トコトリエノール類を含有する組成物を残留させる蒸留工程(C)とを有し、
    前記脱ガム工程(P)は、前記粗パーム油にリン酸からなる変性剤とパーライトからなる吸着剤とを混合し、得られた混合物をろ過する工程であるとともに、前記蒸留工程(C)は、蒸留塔のボトム温度が220℃以下の条件で行われ、少なくとも1段の減圧蒸留工程を有していることを特徴とするトコトリエノール類含有組成物の製造方法。
  2. 前記エステル交換反応工程(B)は2段の工程からなり、エステル交換反応率が98%以上になるように行われることを特徴とする請求項1に記載のトコトリエノール類含有組成物の製造方法。
  3. 前記減圧蒸留工程のうち、最後段の工程の残留物中のトコトリエノール類の濃度が1質量%以上となるように、前記最後段の工程の蒸留条件を下記(i)〜(iii)を満足するように設定することを特徴とする請求項1または2に記載のトコトリエノール類含有組成物の製造方法。
    (i)蒸留塔のトップ圧力を0.1〜1kPaとし、ボトム圧力を2.0〜5.0kPaとする。
    (ii)蒸留塔のトップ温度を150〜180℃とし、ボトム温度を190〜220℃とする。
    (iii)還流比を0〜1とする。

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