JP4938793B2 - モジュール式義足 - Google Patents

Description

本発明はモジュール式義足に関する。モジュール式義足は、世界中の種々の地方、地域で利用することができる。モジュール式義足の単純かつ耐久性のある設計により、モジュール式義足は、ほとんどの下肢切断患者に対し有用なものになっている。

本ＰＣＴ国際出願は、２００５年１２月２２日出願の、米国仮出願第６０／７５６，６２３号の優先権を主張する。
人工くるぶしや人工足は周知である。例えば、下記特許文献１は、人の足に於ける３つの基本的な動作カテゴリを模倣する生体力学的くるぶしを開示している。平行な足底プレートおよび脚部支持板が、上方に延びる
柱により離間した状態で保持されている。脚部支持板は、球関節でこの柱に接合されている。板同士の間につる巻きばねを固定し、これにより、通常の筋肉制御を模倣して、足の前部分を柔軟に支持している。ばねと協働するこの球関節により、生体力学的くるぶしは、通常の人の足に於いて見られる内反―外反、足底の背屈−底屈および側方回転を模倣できるようにされている。

下記特許文献２は、ウォーキング、ランニング、ジャンプなどの活動に関わる切断患者の歩行や快適さの質を改善する人工器官を開示している。この人工器官の足とくるぶしとは、くるぶし関節を形成する支柱を含む柔軟部材として一体的に形成されている。孔が柔軟部材を貫通しており、孔周辺が支柱の前側面を形成している。孔の前方の柔軟部材は間隙を含み、背屈動作に於いて停止させながら、足関節軸周りの動作を可能にする。孔は上方に延びており、これにより、支柱は上方に延びておりかつ前方へ凸面をなしている。
米国特許第５，０３０，２３９号明細書 米国特許第７，１０８，７２３号明細書

しかしながら、モジュール式義足には、特に、人間の足の距骨下関節をまねたモジュール式義足にはまだ必要なことが残っている。

本発明の１つの局面に於いて、くるぶし構成部材と、前足構成部材であって、曲面状頂面と少なくとも１つの平坦な側面とを備え、前記前足構成部材の後部に接続された円形部を有する前足構成部材と、前記円形部の周囲に位置している前足クッション緩衝部と、かかと構成部材とを有することを特徴とするモジュール式義足が提供される。
本発明の別の局面に於いて、前記くるぶし構成部材の前部は、前記くるぶし構成部材の後部より約５°〜約２０°高い。

本発明の更に別の局面に於いて、前記くるぶし構成部材は、人工器官の一部または仮義足へ接合するための孔を更に含む。
本発明の更に別の局面に於いて、前記義足はマイクロプロセッサー装置を備えている。
下記の図面の説明により、本装置は当業者にとって明白になるであろう。
図面の詳細な説明
図１〜図１１は本発明に係るモジュール式義足を示す。本発明は解剖学に基づいたモジュール式義足である。本義足は解剖学的な足の運動生理学に基づいて設計された。特に、本義足の構造は、図１に示すような距骨下関節１００を模倣することに重点を置いている。解剖学的に、脛骨が内側に回転すると、距骨下関節は外反する（回内する）。反対に、脛骨が外側に回転すると、距骨下関節は内反する（回外する）。このように、理論的には、距骨下関節は楕円状ヒンジとして機能する。

本明細書の説明に於いて、「１つの実施形態」、「ある実施形態」、または「実施形態に於いて」という形で言及する場合、言及されている特徴が本発明の少なくとも１つの実施形態に於いて含まれているということを意味している。更に、「１つの実施形態」、「ある実施形態」、または「実施形態に於いて」という別の言及は、必ずしも同一の実施形態に言及しているわけではない。しかしながら、別様に記載されている場合および当業者にとって容易に自明なものである場合を除いて、このような実施形態は相互に排他的なものではない。したがって、本発明は、本明細書に記載の実施形態の種々の組合せおよび／または統合を含むことができるものである。

本発明の義足はモジュール式であるので、個々の使用者に於けるばらつきおよび要求される機能に対応する。図２に示すように、義足２００は３つの基本的構成部材を含んでいる。すなわち、（１）くるぶし構成部材２０５としての中間部分、（２）前足構成部材２１０としてのつま先部分、および（３）かかと構成部材２１５としてのかかと部分の３つである。前足構成部材２１０は、前部２１０aと後部２１０ｂとを有している。かかと構成部材２１５は前部２１５aと後部２１５ｂとを有している。

Ａ．くるぶし構成部材
くるぶし構成部材は、かかと構成部材と前足構成部材との両方を接合することを可能にする効果的な形状と寸法を有する一体構造体である。
くるぶし構成部材２０５は、図２に示すように、人工器官の一部または仮義足（パイロン）２２０に接合してもよい。したがって、くるぶし構成部材は、図３〜図４および図８に示すように、人工器官の一部または仮義足に接合できるよう差込口、つまり開口部３０５を含んでいる。人工器官の一部への接合または仮義足への接合は、世界全体で使用されている内骨格または外骨格の人工装具システムを取付けるために最も一般的になされている２つの方法である。実施形態に於いて、差込口、つまり開口部３０５は、前足構成部材２１０およびかかと構成部材２１５が接合または装着される面と反対側にある、くるぶし構成部材２０５の表面にあってもよい。くるぶし構成部材は、少なくとも１つの接合部により、人工器官部分または仮義足に接合してもよい。この接合部は、ピン、ねじ、ボルト、軸、粘着性化合物、またはこれらの組合せであってもよいが、これらに限定されるわけではない。

Ｂ．前足構成部材
前足構成部材２１０は、効果的な形状および寸法であればよい。実施形態に於いて、前足構成部材は、楕円形状、Ｊ字状、Ｃ字状、またはＳ字状であってもよい。
図２および図９に示すように、前足構成部材２１０の後部２１０ｂは、くるぶし構成部材２０５に接合されている。

図５および図６Ａに示すように、前足構成部材２１０の後部２１０ｂは、曲面状、つまり凸状頂面と少なくとも１つの平坦な側面とを備えた円形部５１０を含む。円形部５１０は、２つの平坦な側面（すなわち、平坦な前面および平坦な後面）を有することが好ましい。実施形態に於いて、円形部５１０は、図５および図６Ａに示すように、その側面を貫通する孔５１５を有していてもよい。

円形部５１０は、図６Ｂ〜図６Ｃに示すように、くるぶし構成部材２０５の前部に位置するスロット、つまり孔６１０に嵌合される。くるぶし構成部材２０５の棒部材６１５（図６Ｃ参照）を孔５１５に嵌通してもよい。このように、円形部５１０は、くるぶし構成部材に於いて、棒部材６１５の周囲を回転してもよい。または、円形部はその頂面に凹み部を有して、くるぶし構成部材の棒部材をその凹み部に嵌合または載置するようにしてもよい。

図４に示すように、くるぶし構成部材２０５の前部４１０は、約５°〜約２５°、好ましくは約１０°〜約１５°だけ、くるぶし構成部材の後部４１５よりも高くなっており、これにより、距骨下関節の自然な足角度を模倣している。したがって、円形部５１０は、くるぶし構成部材内部に於いてある角度をつけて設置されている。円形部は、水平な地面に平行である水平軸に対して垂直ではない。

円形部５１０の構造および、そのくるぶし構成部材内部に於ける角度により、円形部が、正常な足の距骨下関節（すなわち、楕円状ヒンジ）を模倣して回動することが可能になる。このように、円形部は外反（回内）および内反（回外）する。更に、円形部の少なくとも１つの平坦面は、義足があまりにも前方および／またはあまりにも後方に回転しすぎることを防止している。

実施形態に於いて、図７に示すように、少なくとも１つの接合部７０５により、円形部を、前足構成部材に接合または装着するようにしてもよい。実施形態に於いて、接合部は、ピン、ねじ、ボルト、軸、粘着性化合物、またはこれらの組合せであってもよいが、これらに限定されるわけではない。
Ｃ．前足クッション緩衝部
モジュール式義足の動作（外反および内反）は、図３〜図４に示すように、円形部の周囲に位置する前足クッション緩衝部３１０により制限または制御されてもよい。前足クッション緩衝部３１０は、効果的な形状および寸法であればよい。実施形態に於いて、前足クッション緩衝部はＵ字状または馬蹄状（図６Ｄ）であってもよく、これにより、前足クッション緩衝部を、前足構成部材２１０の後部２１０ｂの円形部５１０の周囲にしっかり固定または圧入することができる。

前足クッション緩衝部は、義足の動作範囲を制御するとともに、圧縮することもできる。実施形態に於いて、前足クッション緩衝部は、ウレタン、高密度発泡体、または電気活性化ポリマーや圧電材のような電子感応材で形成されてもよく、それらを含んでいてもよい。
Ｄ．かかと構成部材
かかと構成部材は、効果的な形状および寸法であればよい。実施形態に於いて、かかと構成部材は、楕円形状、Ｊ字状、Ｃ字状、またはＳ字状であってもよい。

図２および図１０に示すように、後部構成部材の前部２１５aは、くるぶし構成部材２０５に接合されている。実施形態に於いて、かかと構成部材２１５は、図６Ｂに示すように、少なくとも１つの接合部６２０により、くるぶし構成部材２０５に装着されてもよい。実施形態に於いて、接合部は、ピン、ねじ、ボルト、軸、粘着性化合物、またはこれらの組合せであってもよいが、これらに限定されるわけではない。かかと構成部材は、くるぶし構成部材の底部またはくるぶし構成部材の側部に接合されてもよい。

Ｅ．マイクロプロセッサー
実施形態に於いて、本発明のモジュール式義足は、マイクロプロセッサーを含んでいてもよい。このマイクロプロセッサーは義足のいずれの構成部材内に設けてもよいが、前足構成部材または前足クッション緩衝部内部に設けることが好ましい。少なくとも１つのマイクロプロセッサー装置は、モジュール式義足を使用する人がどのように歩行するか監視（モニター）することができるようにしてもよい。

図１１に示すように、マイクロプロセッサー８０５は、前足クッション緩衝部３１０と電源８１０とに接続されている。したがって、マイクロプロセッサー８０５は、前足クッション緩衝部３１０に於ける力を監視してもよい。実施形態に於いて、マイクロプロセッサーを、前足クッション緩衝部の電子感応材の密度を変更するようプログラミングしてもよく、これにより、柔軟性と運動強化のために使用者の歩行サイクルをよりよく適合させることができる。

Ｆ．モジュール方式
本発明の義足のモジュール方式は利点が多い。例えば、１つの前足クッション緩衝部を、１つまたは複数の異なる特性（例えば、異なる材質、異なる厚み、異なる密度、異なる形状）を持つ別の前足クッション緩衝部に取り替えて、運動度または圧縮度を変更するようにしてもよい。更に、単一のくるぶし構成部材に対して、異なる前足構成部材および異なるかかと構成部材を入れ替えるようにしてもよい。

この互換性により、義足のバリエーションを容易にして異なる靴のサイズまたは足の長さに義足を容易に変更できる。もちろん、ある人は男性靴サイズ４３（米国靴サイズ１０）を着用してもよいし、別の人はサイズ３９（米国靴サイズ７）を着用してもよい。くるぶし構成部材が２人に対して同一であっても、適正なかかと構成部材と適正な前足構成部材とを容易に選択することができる。

この互換性はまた、個人の身長、体重、身体的運動度の少なくとも１つ、またはその組合せに基づいて、義足を変化させることも可能である。例えば、かかと構成部材および／または前足構成部材は、個人の行動、体重、身長、または特定の歩行パターンの少なくとも１つに基づいて、多少の圧縮を提供するよう設計してもよい。更に、材料、形状、寸法、密度、または、くるぶし構成部材への装着方法の少なくともひとつは、動作に影響をもたらすものであってもよく、それ故に、個人の特定のニーズに基づいて選択されてもよい。上記互換性はまた、構成部材が故障したり破損した場合に、その構成部材を簡単に取り替えることができる。

個人、例えば患者を評価する医療関係者は、正しい構成部材を発注するのに役立つ目盛り付きマトリックスを有する構成部材リストから、適切なかかと構成部材または前足構成部材の少なくとも１つを発注することができる。目盛り付きマトリックスを設定するためにベンチテストを使用してもよい。したがって、本発明は、多くの変数に依存して、適合可能かつ適切となる。

本発明の義足の種々の構成部材には、適切な材質を使用することができる。実施形態に於いて、義足全体、または、くるぶし構成部材、前足構成部材、かかと構成部材のいずれかひとつをカーボンファイバー材で製造してもよい。カーボンファイバー材はエネルギー収益性とモジュール性との特徴的な性能を達成する。上述したように、前足クッション緩衝部は、ウレタン、高密度発泡体、または電気活性化ポリマーや圧電材のような電子感応材を含んでいてもよい。

種々の構成部品の形状は、本明細書に記載または図示したものに限定されることはない。構成部品の形状は、本発明が意図する目的にかなうものであれば、どのようなものでも使用可能である。当業者であれば、構成部品の適切な材質および／または形状を特定して、本発明の範囲内に於いて使用することは可能であろう。
本発明は特定の実施例や別の実施形態に関して説明を行ってきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されることはない。本発明が包含する別の実施形態や実施例や変更例は、特に上記教示に鑑み、当業者によりなされることができる。

距骨下関節を示す人の足の概略側面図である。 仮義足に接合された状態の、本発明の実施形態に係るモジュール式義足の側面図である。 本発明の実施形態に係るモジュール式義足の斜視図である。 本発明の実施形態に係るモジュール式義足の側面図である。 本発明の実施形態に係るモジュール式義足の前足構成部材の正面図である。 本発明の実施形態に係るモジュール式義足の前足構成部材の上面図である。 本発明の実施形態に係るモジュール式義足のくるぶし構成部材とかかと構成部材の側面図である。 本発明の実施形態に係るモジュール式義足のくるぶし構成部材の底面図である。 本発明の実施形態に係るモジュール式義足の前足クッション緩衝部の上面図である。 本発明の実施形態に係るモジュール式義足の底面図である。 本発明の実施形態に係るモジュール式義足の上面図である。 本発明の実施形態に係るモジュール式義足の正面図である。 本発明の実施形態に係るモジュール式義足の後面図である。 本発明の実施形態に係るマイクロプロセッサーと前足クッション緩衝部のブロック図である。

Claims (18)

1. くるぶし構成部材と、
   前足構成部材であって、曲面状頂面と少なくとも１つの平坦な側面とを備えた円形部を有し、この円形部が当該前足構成部材の後部に接合されている前足構成部材と、
   前記円形部の周囲に位置している前足クッション緩衝部と、
   かかと構成部材と
   を含むことを特徴とするモジュール式義足。
2. 前記円形部は、平坦な前面と平坦な背面とを有していることを特徴とする請求項１に記載のモジュール式義足。
3. 前記くるぶし構成部材の前部は、前記くるぶし構成部材の後部より５°〜２０°高いことを特徴とする請求項１〜２のいずれかに記載のモジュール式義足。
4. 前記くるぶし構成部材の前部は、前記くるぶし構成部材の後部より１０°〜１５°高いことを特徴とする請求項１〜２のいずれかに記載のモジュール式義足。
5. 前記円形部は、前記くるぶし構成部材の前部のスロットに嵌合していることを特徴とする請求項１〜４のいずれかに記載のモジュール式義足。
6. 前記円形部はその側面を貫通する孔を有し、その孔に、前記くるぶし構成部材の棒部材が嵌合していることを特徴とする請求項１に記載のモジュール式義足。
7. 前記円形部はその頂面に凹み部を有し、その凹み部に前記くるぶし構成部材の棒部材が嵌合していることを特徴とする請求項１に記載のモジュール式義足。
8. 前記かかと構成部材は、ピン、ねじ、ボルト、軸、粘着性化合物、またはこれらの組合せを含む少なくとも１つの接合部により、前記くるぶし構成部材に接合されていることを特徴とする請求項１に記載のモジュール式義足。
9. 前記円形部は、ピン、ねじ、ボルト、軸、粘着性化合物、またはこれらの組合せを含む少なくとも１つの接合部により、前記前足構成部材に接合されていることを特徴とする請求項１に記載のモジュール式義足。
10. 前記くるぶし構成部材は、人工器官の一部または仮義足へ接合するための孔を更に含むことを特徴とする請求項１に記載のモジュール式義足。
11. マイクロプロセッサー装置を更に特徴とする請求項１〜４のいずれかに記載のモジュール式義足。
12. 前記前足クッション緩衝部は、マイクロプロセッサー装置を含むことを特徴とする請求項１〜４のいずれかに記載のモジュール式義足。
13. 前記前足クッション緩衝部は、電子感応材を含むことを特徴とする請求項１に記載のモジュール式義足。
14. 前記前足クッション緩衝部は、電気活性化ポリマーまたは圧電材を含むことを特徴とする請求項１に記載のモジュール式義足。
15. 前記前足クッション緩衝部は、ウレタン材を含むことを特徴とする請求項１に記載のモジュール式義足。
16. 前記くるぶし構成部材、前記前足構成部材、および前記かかと構成部材はカーボンファイバー材を含むことを特徴とする請求項１に記載のモジュール式義足。
17. 個人の身長、体重、身体活動度のうちの少なくとも１つまたはそれらの組合せに基づいて、異なる前足構成部材と異なるかかと構成部材とを入れ替えることができることを特徴とする請求項１〜４のいずれかに記載のモジュール式義足。
18. くるぶし構成部材と、
    前足構成部材であって、曲面状頂面と少なくとも１つの平坦な側面とを備えた円形部を有し、この円形部が当該前足構成部材の後部に接合されている前足構成部材と、
    前記円形部の周囲に位置している前足クッション緩衝部と、
    かかと構成部材とを有し、
    前記くるぶし構成部材の前部は、前記くるぶし構成部材の後部より５°〜２０°高いことを特徴とするモジュール式義足。

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