JP4938260B2 - 使い捨てマスク - Google Patents

Description

この発明は、使い捨てマスクに関し、さらに詳しくは、エレクトレット繊維層を含む使い捨てマスクに関する。

従来、装着者の顔面に装着するマスクにおいて、マスク本体の一部又は全部をエレクトレット繊維層から構成したものが知られている。例えば、特許文献１は、エレクトレットメルトブロー不織布からなる内材とこれを被覆するレーヨン短繊維不織布からなる外材から構成し、低圧力損失で高捕集性を両立させたマスクを開示する。

特許文献２は、スパンボンド／メルトブロー／スパンボンドの不織布からなる外層と、エレクトレットメルトブロー材料からなる中間層と、前記不織布からなる内層とから構成したマスクを開示する。
特開昭６１−２７２０６３号公報 特表２００１−５１６２３７号公報

特許文献１において、内材と外材との接合態様に関して言及されていない。また、特許文献２においても、層の全てまたは一部が隣接層に結合されていればよいとの開示があるだけで、その結合態様に関して具体的に言及されていない。

しかしながら、マスクを複数層から構成する場合には、当業者には周知のように、例えば、各層をホットメルト接着剤の塗布加工によって一体に接合して積層することになる。

ところが、エレクトレット性能は、高温（約１３０℃以上）の下では熱による電荷の漏洩により減衰することが知られている。したがって、複数のエレクトレット繊維層を接合するため、該層にホットメルト接着剤の塗布加工を施すと、前記性能が損なわれる。

また、特許文献２では、内外層がスパンボンド不織布からなるところ、一般に、該不織布はこれを構成する繊維の交点における接合強度が比較的低かったり、未接合部が存在していたりすることから、擦られると容易に毛羽立ち易いという問題がある。

この発明は、ホットメルト接着剤を介してエレクトレット繊維層を含む複数の繊維層を接合することにより、使い捨てマスク本体を得るものであるところ、ホットメルト接着剤によってエレクトレット性能をあまり損なわず、保形性、低毛羽立ち、低圧力損失及び高捕集性等の性能を有するマスク本体を実現することを目的とする。

この発明によれば、前記目的を達成するための使い捨てマスクは、装着者の鼻及び口許を覆うマスク本体が、繊維シートそれぞれから形成される内外層と、エレクトレット繊維シートから形成され前記内外層間に一体的に介在する中間層とを含む。

この発明が特徴とする一つの構成態様は、前記マスクにおいて、前記内外層と前記中間層との各接合面が該各接合面に間欠的に介在するホットメルト接着剤を介して接合し、前記中間層の前記内外層に対する前記各接合面における前記ホットメルト接着剤の付着量が、前記内外層の前記中間層に対する前記各接合面における前記ホットメルト接着剤の付着量よりも少ないこと、前記中間層を形成する前記エレクトレット繊維シートが、メルトブロー不織布であること、前記内外層を形成する前記繊維シートが、ポイントボンド不織布であること、前記中間層の繊維密度が、前記内外層それぞれの繊維密度よりも高いこと、前記内外層それぞれの目付が、前記中間層の目付よりも大きいこと、及び前記内外層を形成する前記繊維シートの繊維径が、前記中間層を形成する前記エレクトレット繊維シートの繊維径よりも大きいことを含む。

前記中間層を形成する前記エレクトレット繊維シートは、メルトブロー不織布であり、前記内外層を形成する前記繊維シートは、ポイントボンド不織布であることが好ましい。かかる構成態様であると、前記内外層によるマスク本体の保形性に優れるとともに擦られることによる毛羽立ちを抑制し、圧力損失を低くして比較的粗い粒子の粉塵を捕集することができ、かつ、前記中間層において比較的微小粒子の粉塵を捕集することができる。

前記中間層の繊維密度は、前記内外層それぞれの繊維密度よりも高いこと（ａ）、前記内外層それぞれの目付は、前記中間層の目付よりも大きいこと（ｂ）、前記内外層を形成する前記繊維シートの繊維径が、前記中間層を形成する前記エレクトレット繊維シートの繊維径よりも大きいこと（ｃ）、及び 前記ホットメルト接着剤の塗布量は、前記内層と前記中間層との接合面、前記中間層と前記外層との接合面それぞれにおいて０．５〜２．５ｇ／ｍ^２であること（ｄ）、すなわち、これら（ａ）〜（ｄ）の少なくとも一つ又はそれら複数の組み合せであることが好ましい。特に、かかる構成によれば、粉塵によるマスク本体の圧力損失を低くし、かつ、それによる捕集効率をさらに向上させることができる。

前記ポイントボンド不織布の全域に対するポイントボンドの面積率が１５〜２５％であり、かつ、該ポイントボンドの個々の面積が０．２〜２ｍｍ^２であることが、マスク本体の保形性を向上し、毛羽立ちを抑制するうえで好ましい。

この発明において、「ポインドボンド不織布」とは、繊維ウエブの全方向に一定距離で離間する点状の加圧加熱処理を施して該ウエブの構成繊維を点状に融着させ、かつ、加熱下に該繊維の交点を融着させたものをいう。

前記ホットメルト接着剤の前記間欠的塗布は、繊維状スプレーでなすことが好ましい。かかる構成態様であると、前記間欠的塗布を容易に実施することができる。

前記ホットメルト接着剤の塗布時の温度は、１１０〜１４５℃であることが、前記中間層のエレクトレット効果を低下させないようにするうえで好ましい。

この発明に係る使い捨てマスクによれば、前記内外層と前記中間層とをホットメルト接着剤を介して接合するにもかかわらず、前記中間層におけるエレクトレット性能又は効果をあまり損なうことがなく、保形性に優れ、毛羽立ちを抑制するとともに、低圧力損失及び高捕集性の性能を有する使い捨てマスクを提供することができる。

この発明に係る使い捨てマスクの実施形態を、図示例を参照して、説明すると、以下のとおりである。

図１を参照すると、使い捨てマスク１０は、装着者の鼻及び口許を覆うマスク本体１１と、装着者の耳に掛けてマスク本体１１の装着状態を保持する一対の耳掛け部１２，１２とから構成される。マスク本体１１は、実質的に弾性的に非伸長性を有する同形同大の熱可塑性シート部材１３，１４から、周縁が装着者の顔面にフィットし、かつ、装着者の鼻及び口許と適宜の間隔が生じる形態に形成される。ただし、マスク本体１１は、所要の保形性を確保し得る限り、多少の弾性伸長性を有してもよい。シート部材１３，１４は、それらの前方へ凸状に湾曲する前端縁１５に沿ってヒートシールによって接合している。耳掛け部１２は、弾性的に伸長性を有する同形同大の熱可塑性シート部材１６，１７から形成されている。シート部材１６，１７は、それらの先端部近傍に装着者の耳を通す開口１８，１９を有し、それらの基端縁２０，２１においてシート部材１３，１４の後端縁２２，２３にヒートシールによって接合している。

図２（Ａ）及び（Ｂ）を参照すると、シート部材１３，１４から形成されるマスク本体１１は、マスクの装着時に、装着者の肌当接面に位置する内層２４と、装着者の肌非当接面に位置する外層２５と、内外層２４，２５の間に一体的に介在する中間層２６とを含む。

中間層２６は、エレクトレット繊維シートから形成されている。このエレクトレット繊維シートは、目付１５〜３０ｇ／ｍ^２、見掛密度０．０８〜０．１３ｇ／ｃｍ^３、繊維径０．５〜４．０μｍ、特に１．０〜２．５０μｍのメルトブロー不織布であることが、所要の低圧力損失を維持しつつ高捕集効率を得るうえで、特に粉塵との接触面積を大きくするうえで好ましい。不織布の材料として適当なものは、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の熱可塑性合成繊維である。

エレクトレット繊維シートは、繊維シート又は不織布の繊維をエレクトレット化して得られ、繊維の表面に所要量の正電荷又は負電荷を有するものである。このエレクトレット化は、公知の方法、例えば、特許文献１及び２に開示の方法を採用することができる。

なお、中間層２６は、その見掛密度、構成繊維径によっては、圧力損失と捕集効率とを適宜制御するため、繊維間隙のほかに多数の微細孔が形成されていてもよい。

内外層２４，２５は、目付２０〜５０ｇ／ｍ^２、見掛密度０．０９〜０．１２ｇ／ｃｍ^３、繊維径１０〜４０μｍのポイントボンド不織布であることが、所要の保形性及び毛羽立ち抑制と、所要の低圧力損失及び高捕集効率を得るうえで好ましい。ここに「ポイントボンド不織布」とは、先に定義したものを意味する。このポイントボンド不織布の全域に対するポイントボンドの面積率が１５〜２５％であり、かつ、該ポイントボンドの個々の面積が０．２〜２ｍｍ^２であることが、低圧力損失及び高捕集効率を維持しつつ、マスク本体１１の保形性を向上し、毛羽立ちを抑制するうえで好ましい。前記面積率が１５％未満であり、かつ、前記個々の面積が０．２ｍｍ^２未満であると、所要の前記保形性及び毛羽立ち抑制が得られない。前記面積率が２５％超であり、かつ、前記個々の面積が２ｍｍ^２超であると、マスク本体１１の剛性が高くなりすぎてマスク装着感を悪くし、圧力損失が高くなり捕集効率が低下することになる。

前述のように、内外層２４，２５の目付が中間層２６のそれよりも大きく、かつ、内外層２４，２５の見掛密度が中間層２６のそれよりも低くすることで、特に外層２５で比較的大きい粒子の粉塵を捕集し、比較的小さい粒子の粉塵をして外層２５を通過させて中間層２６でできるだけ捕集するとともに、内層２４を介しての装着者の呼吸を容易にすることができる。

さらに、中間層２６が、メルトブロー不織布からなっていて、比較的に繊維結合力が低く、他の物体との摺接による毛羽立ち易いものであることから、かかる中間層２６の表面を内外層２４,２５が有効に防護し、マスク本体１１の全体の物理的／機械的強度を向上するうえで、すなわち、マスク本体１１の内外表面強度、マスク本体１１の全体の保形性等を向上するうえで好ましい。内外層２４，２５の不織布材料である合成樹脂は、中間層のそれと同じである必要はない。

内外層２４，２５と中間層２６とは、内外層２４，２５と中間層２６との各接合面、すなわち、接合面２４ａと接合面２６ａ、接合面２６ｂと接合面２５ａとが、それらに間欠的に介在するホットメルト接着剤２７を介して接合している。図では明示してないが、中間層２６の内外層２４，２５に対する各接合面２６ａ，２６ｂにおけるホットメルト接着剤２７の付着量は、内外層２４，２５の中間層２６に対する各接合面２４ａ，２５ａにおけるホットメルト接着剤２７の付着量よりも少なくされている。したがって、中間層２６のエレクトレット繊維に対するホットメルト接着剤２７の塗布時の熱による影響を可及的に少なくするとともに、中間層２６の目詰まりを可及的に少なくして圧力損失を抑制することができる。

内外及び中間層２４，２５，２６、特に装着者の肌に直接当接する内層２４には、化粧的に許容可能であって抗菌や消臭効果を有する薬剤や化学剤、例えば、シクロデキストリンを含ませることが好ましい。また、ホットメルト接着剤２７としては、化粧的に許容可能であって低臭気の合成ゴム系のものが好ましい。

前述の構成を有するマスク本体１１は、下記の方法によって得ることができる。

内外層２４，２５とすべく予め形成した第１及び第２繊維ウエブ（ポイントボンドボンド不織布ウエブ）の、中間層２６とすべく予め形成した第３繊維ウエブ（メルトブロー不織布ウエブ）に対する接合面、すなわち、接合面２４ａ，２５ａに対して、ホットメルト接着剤２７をエアー吹き付けによる公知のいわゆるカーテンコーターにより、該接着剤の塗布量が接合面２４ａ，２５ａそれぞれにおいて０．５〜２．５ｇ／ｍ^２、好ましくは、０．８〜１．５ｇ／ｍ^２になるよう繊維状に、すなわち、間欠的に塗布する。

この塗布においては、ホットメルト接着剤２７の温度は、前記第１及び第２繊維ウエブ（内外層２４，２５）の構成繊維を溶融しない温度及び／又は前記第３繊維ウエブ（中間層２６）のエレクトレット繊維に影響を与えない又は与えることが少ない温度、すなわち、溶解温度１１０〜１４５℃、であることが好ましい。もっとも、この温度は、前記第１及び第２繊維ウエブに対するホットメルト接着剤２７の塗布装置からの噴射時点から、前記第１及び第２繊維ウエブを第３繊維ウエブに接合する時点までの時間によって適宜制御することができるが、１２０〜１４０℃であることがその制御を考慮してもなお好ましい。ホットメルト接着剤２７の塗布量が前記０．５ｇ／ｍ^２未満であると、内外層２４，２５と中間層２６との層間剥離の虞があり、前記２．５ｇ／ｍ^２超であると、低圧力損失及び高捕集性を確保することができない。

次いで、前記第１及び第２繊維ウエブの接合面２４ａ，２５ａが前記第３繊維ウエブの接合面２６ａ，２６ｂにそれぞれ対向するように前者の繊維ウエブを後者の繊維ウエブに適宜加圧下に重ね合わせることで、ホットメルト接着剤２７を介して第１，第２及び第３繊維ウエブを接合して積層繊維ウエブを形成する。しかるのち、この積層繊維ウエブをマスク本体１１の前記シート部材１３，１４の形状に切断し、これらを前記前端縁１５においてヒートシールすることにより、マスク本体１１を得る。

マスク本体１１は、前記第１及び第２繊維ウエブの接合面２４ａ，２５ａにホットメルト接着剤２７をエアー吹き付けによる公知のいわゆるカーテンコーターにより繊維状に塗布したのち、それら接合面２４ａ，２５ａを前記第３繊維ウエブの接合面２６ａ，２６ｂにそれぞれ接合することから、さらには、第１及び第２繊維ウエブの繊維密度が第３繊維ウエブのそれよりも低いことから、前記第３繊維ウエブの前記第１及び第２繊維ウエブに対する各接合面２６ａ，２６ｂにおけるホットメルト接着剤２７の付着量は、前記第１及び第２繊維ウエブの前記第３繊維ウエブに対する各接合面２４ａ，２５ａにおけるホットメルト接着剤２７の付着量よりも少なくなる。

なお、前述したように、特に内層２４である前記第１繊維ウエブには、前記抗菌や消臭効果を奏するシクロデキストリンを含ませ、また、ホットメルト接着剤としては、前記ゴム系のものを使用することになる。
＜実施例＞

目付２０ｇ／ｍ^２、見掛密度０．１１ｇ／ｃｍ^３、繊維径２．５μｍのポリプロピレン繊維からなりエレクトレット加工したメルトブロー不織布と、目付３０ｇ／ｍ^２、見掛密度０．０９ｇ／ｃｍ^３、繊維径２６μｍの芯がポリプロピレン、鞘がポリエチレンの複合繊維（株）チッソ製「ＥＳＣ」）からなるポイントボンド不織布をそれぞれ製造した。ポイントボンド不織布の片面にホットメルト接着剤（商品名「エバーグリップ」「ＦＭ１６５」）を１ｇ／ｍ^２をカーテンスプレー方式で塗布した。その塗布後1分以内に、その塗布面をメルトブロー不織布の両面に重なり合うようにメルトブロー不織布をポイントボンド不織布で適宜加圧下に挟んでこれら不織布を接合することで、サンプルを得た。
＜比較例１＞

前記ホットメルト接着剤をメルトブロー不織布の両面に塗布した以外は、実施例と同一の条件でサンプルを得た。
＜比較例２＞

目付２０ｇ／ｍ^２、見掛密度０．１１ｇ／ｃｍ^３、繊維径２．５μｍのポリプロピレン繊維からなりエレクトレット加工したメルトブロー不織布と、該不織布の片面に目付３０ｇ／ｍ^２、見掛密度０．０９ｇ／ｃｍ^３、繊維径２６μｍのポリプロピレン繊維からなるスパンボンド不織布を積層し、該不織布のもう一つの片面に前記スパンボンド不織布と同様なスパンボンド不織布を積層した。前記積層に際しては、メルトブロー不織布の各片面にポリエチレン樹脂を厚さ３μｍ、幅１ｍｍ、間隔３ｍｍでストライプ状（筋状）に塗布し、この樹脂を介して前記不織布の各層を接合した。
＜実験例＞

通気度（圧力損失）及び捕集効率の測定は、「ＪＩＳ Ｔ ８１５１ 防じんマスク」に準拠して前記各サンプルを測定した。

測定装置には、「柴田科学製マスクテスターＡＰ−６３１０ＦＰ型」を使用した。

また、毛羽立ちまでの摩擦回数の測定は、「ＪＩＳ Ｌ ０８４９Ｆ 摩擦堅牢度試験」に準拠し、サンプルに５００ｇ荷重をかけ、何回目で毛羽立ちが発生したかを測定した。

実験結果は、下記表に示すとおりであった。

この発明に係る使い捨てマスクの斜視図。 （Ａ）は、図１のＩＩ−ＩＩ線に沿う拡大断面模式図。（Ｂ）はその分離図。

符号の説明

１１ マスク本体
２４ 内層
２５ 外層
２６ 中間層
２４ａ 内層の接合面
２５ａ 外層の接合面
２６ａ，２６ｂ 中間層の接合面
２７ ホットメルト接着剤

Claims (3)

1. 装着者の鼻及び口許を覆うマスク本体が、繊維シートそれぞれから形成される内外層と、エレクトレット繊維シートから形成され前記内外層間に一体的に介在する中間層とを含む使い捨てマスクにおいて、
   前記内外層と前記中間層との各接合面が該各接合面に間欠的に介在するホットメルト接着剤を介して接合し、前記中間層の前記内外層に対する前記各接合面における前記ホットメルト接着剤の付着量が、前記内外層の前記中間層に対する前記各接合面における前記ホットメルト接着剤の付着量よりも少ないこと、
   前記中間層を形成する前記エレクトレット繊維シートが、メルトブロー不織布であり、前記内外層を形成する前記繊維シートが、ポイントボンド不織布であり、
   前記中間層の繊維密度が、前記内外層それぞれの繊維密度よりも高く、前記内外層それぞれの目付が、前記中間層の目付よりも大きいこと、及び
   前記内外層を形成する前記繊維シートの繊維径が、前記中間層を形成する前記エレクトレット繊維シートの繊維径よりも大きいこと
   を含むことを特徴とする前記マスク。
2. 前記ホットメルト接着剤の塗布量は、前記内層と前記中間層との接合面、前記中間層と前記外層との接合面それぞれにおいて０．５〜２．５ｇ／ｍ^２である請求項１記載のマスク。
3. 前記ポイントボンド不織布全域に対するポイントボンドの面積率が１５〜２５％であり、かつ、該ポイントボンドの個々の面積が０．２〜２ｍｍ^２である請求項１又は２記載のマスク。

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