JP4920377B2 - 燻煙剤組成物 - Google Patents
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Description
従来、微生物対策としては、清掃活動の一環として、次亜塩素酸ソーダやエタノール等の水溶液を主剤としたエアゾール剤やスプレー製剤を使用する薬剤噴霧処理が一般的に行われている。また、抗微生物剤の1つとして、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート等のヨード含有化合物があり、上記薬剤噴霧処理等の様々な用途に用いられている(たとえば特許文献1〜7参照。)。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、微生物防除効果に優れた燻煙剤組成物を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメートと、イソプロピルメチルフェノールと、アゾジカルボンアミドとを含有することを特徴とする燻煙剤組成物である。
本発明の燻煙剤組成物は、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート(以下、IPBCという。)と、イソプロピルメチルフェノール(以下、IPMPという。)と、アゾジカルボンアミド(以下、ADCAという。)とを含有する。
本発明の燻煙剤組成物中、IPBCとIPMPとの含有量の比(質量比)は、IPBC/IPMP=2/1〜1/1であることが好ましく、3/2〜1/1であることがより好ましい。上記範囲内であると、微生物防除効果が高く、たとえばIPBCおよびIPMPをそれぞれ単独で用いた場合にはほとんど防除効果が得られないクロカビ(Cladosporium属)に対しても優れた防除効果を発揮する。
本発明の燻煙剤組成物中、IPBCとIPMPとの合計量は、当該燻煙剤組成物の総質量の5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、7.5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。該合計量が5質量%以上であると微生物防除効果、特に抗カビ効果が高く、当該燻煙剤組成物を用いて燻煙処理を行った後のカビ臭気を大幅に低減できる。20質量%以下であると、燻煙処理後の薬剤臭気を抑制できる。
試料を内容積6.38m3の室内で5分間燻煙し、室内空気をファンにより撹拌した後、室内空気約20Lを、真空ポンプを用いて、クロマト用シリカゲルを充填したガラス管内に通過させて、有効成分をシリカゲルに吸着させる。次いで、吸着した有効成分をアセトンにより溶出、回収し、ガスクロマトグラフ法により定量して、捕集した室内空気中の有効成分量(A)を求める。一方、燻煙前の試料中の有効成分量(B)はガスクロマトグラフ法により求める。これらの値から、下記式(1)により煙化率を求める。
本発明の燻煙剤組成物は、任意成分として、燃焼補助剤を含有することが好ましい。
燃焼補助剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、尿素等が挙げられる。
燻煙剤組成物中、燃焼補助剤の含有量は、燻煙剤組成物の総質量の0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.1質量%以上15質量%以下がより好ましい。
ADCA以外の燻煙基剤としては、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル等のガス発生剤、ニトロセルロース、ニトログアニジン、硝酸グアニジン、硝酸アンモニウム、塩素酸カリウム等の発熱剤が挙げられる。
また、本発明の燻煙剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、IPBCおよびIPMP以外の活性成分、たとえば抗菌剤、抗カビ剤、殺虫剤等を含有してもよい。
安定化剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドキシアニソール、没食子酸プロピル、エポキシ化合物(エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油など)等が挙げられる。
結合剤としては、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、デキストリン、ヒドロキシプロピルスターチ、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
賦形剤としては、クレー(含水ケイ酸アルミニウム)、タルク、珪藻土、カオリン、ベントナイト、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム等が挙げられる。
押出し造粒法による製造方法の具体例を挙げると、組成物各成分を、ニーダー等により混合し、適量の水を加えて練合し、得られた練合物を、一定面積の開孔を有するダイスを用い、前押し出しあるいは横押し出し造粒機を用い造粒する。該造粒物は、さらにカッター等を用いて一定の大きさに切断し乾燥してもよい。
本発明の燻煙剤組成物を加熱する方法の具体例としては、発熱体である酸化カルシウムにより蒸散する方法、点火具等を熱源として製剤の一部分を加熱することで薬剤の自己熱分解を利用した方法が挙げられる。本発明においては、どちらの方法も好ましく用いられる。
前記点火具としては、発熱剤として塩素酸カリウム、硝酸カリウム、鉛丹、酸化鉄、酸化銅等の酸化剤のいずれかと、還元剤として糖類、珪素、鉄、珪素鉄、アルミニウム等のいずれかを混合したものが挙げられる。この酸化剤と還元剤とを組み合わせた点火具は、燃焼による熱を利用するものである。また、前記酸化カルシウムは、水との反応熱を利用するものである。
本発明の燻煙剤組成物の使用量は、燻煙処理を行う空間の容積に応じて適宜設定すればよく、通常、1m3あたり、0.2〜1.0gが好ましく、0.3〜0.8gがより好ましい。
燻煙処理時間(燻煙開始後、当該空間を密閉する時間)は、特に限定されず、1〜4時間が好ましく、2〜3時間がより好ましい。
本発明の燻煙剤組成物は、スプレー剤等を使用できない天井や、浴室、押入れ等、従来、日常の清掃では処理困難な場所や手の行き届かない場所での微生物防除に特に有用である。
[実施例1〜13,比較例1〜4]
表1〜4に示す組成の燻煙剤組成物を製造した。これらの製造は、各成分を所定量計り取り、ニーダー(モリヤマ社製、S5−2G型)によって十分混合撹拌した後に水を加えて練合し、ダイス径2mmの造粒機(不二パウダル社製、EXK−1)を用いて造粒後、乾燥機(アルプ社製、RT−120HL)を用い、70℃で2時間乾燥させることにより行った。
得られた顆粒状の燻煙剤組成物を用いて以下の試験例1〜3を行った。その結果を表1〜4に併記する。
有効成分(IPBCおよびIPMP)の煙化率は以下の手順で測定した。
燻煙剤組成物12.5gを、発熱剤として酸化カルシウムを使用した加熱用容器に収納し、6.38m3の密閉室内で燻煙を開始した後、5分後に室内空気をファン(ORIX社製、MU1238A−11B)により1分間攪拌し、室内空気約20Lを、真空ポンプを用いて、クロマト用シリカゲルを充填したガラス管内を通過させ、有効成分をシリカゲルに吸着させた。
次いで、吸着した有効成分をアセトン100mLで溶出、回収し、得られた抽出溶液を200mL容量のナス型フラスコに採り、エヴァポレーター(ヤマト科学製 ロータリーエヴァポレーター RE−46)で完全に蒸散乾固させた。そこへ、内標準溶液として0.1質量%となるようにアセトンで調製したフタル酸ジ−n−ブチル溶液5mLを加え溶解し、試料溶液とした。
また、別途、検量線作成用にIPBC0.2g、IPMP0.1gそれぞれを精密に50mL容量メスフラスコに計り取り、アセトンを加えて50mLにメスアップした。その溶液2,4,6,8,10mLを新たな50mL容量メスフラスコに計り取り、1質量%となるようにアセトンで調製したフタル酸−n−ブチルの内標準溶液5mLを加えアセトンで50mLにメスアップし、検量線作成用の標準溶液とした。
これらの試料溶液、標準溶液2μLを用いて、下記の条件によるガスクロマトグラフ法により定量し、捕集した室内空気中の有効成分量(A)を求めた。
また、同様にして、燻煙前の燻煙剤組成物中の有効成分量(B)をガスクロマトグラフ法により求め、前記式(1)により煙化率(%)を求めた。
<ガスクロマトグラフ分析条件>
機器:SHIMADZU GC−14B、Chromatopac C−R6A
カラム:内径約1.2mm、長さ約20cmのガラス管の内面にガスクロマトグラフ用メチルシリコーンポリマーを厚さ0.5μmで被覆したもの(G−Column G−100、(財)化学物質評価研究機構)
検出器:水素炎イオン化検出器
カラム温度:開始温度120℃(2min)、昇温速度10℃/min、最終温度200℃(5min)
インジェクター温度:230℃
ディテクター温度:230℃
キャリアーガス:N2
N2:60kPa〜80kPa(保持時間においてIPBCが7分,IPMPが3.5分になるよう調整)
H2,Air:50kPa
細菌用のトリプチックソイ寒天培地(商品名Difco、ベクトン・ティッキンソン社)を、水1Lに対して40gとなる割合で滅菌可能なガラス製容器に計り取り、また、真菌用のポテトデキストロース寒天培地(商品名Difco、ベクトン・ティッキンソン社)を、水1Lに対して39gとなる割合で滅菌可能なガラス製容器に計り取り、これらにそれぞれ水を加え、オートクレーブにより121℃、20分間の高圧蒸気滅菌(平山製作所製、HVA−85)を行った。滅菌終了後、寒天が溶解している間に、該培地溶液約20mLを、滅菌済みシャーレ(φ9cmプラスチック製)へ充填し、安全キャビネット(AirTech社バイオロジカルセーフティキャビネット、BHC−1306IIA/B3)内で3〜4時間殺菌灯点灯下で固化させた。そうして得られた平板培地を用い、細菌および酵母ではシャーレ一枚あたり30〜300cfu(コロニー数:colony forming unit)、カビではシャーレ一枚あたり10〜100cfuとなるように供試菌液濃度を調製し、各シャーレ上に0.5mL塗抹した。この菌を接種したシャーレ(以下、菌接種シャーレという。)を、容積0.5m3のアクリル製チャンバー(65×65×120cm)の底面に配置した。
菌接種シャーレの蓋を開けた後に、上記で得た燻煙剤組成物0.5gを、発熱剤として酸化カルシウムを使用した50mL容量の加熱用金属製容器に収納し、加熱燻煙させ1時間密閉した。
処理終了後、各菌接種シャーレについて、細菌の場合は32℃、カビ、酵母の場合は25℃に設定したそれぞれの恒温槽(福島工業社製低温インキュベーター、FMU132I)にいれ、細菌の場合は3日間、カビ、酵母の場合は5日間培養し、培養後の菌数を測定した。
(判定基準)
×:Xが1未満。
△:Xが1以上2未満。
○:Xが2以上3未満。
◎:Xが3以上。
また、実施例2、10〜13および比較例1〜3の結果から、IPBCとIPMPは両者の合計量が5質量%以上、特に7.5質量%以上であると、高い抗微生物効果が発揮され、それぞれ単独ではあまり効果がないクロカビ(Cladosporium属)に対しても優れた抗カビ力が発揮されることがわかった。
また、実施例1〜4の結果から、ADCAの配合量が55質量%以上であると、高い抗微生物効果を呈することがわかった。特に、浴室等の生活空間に多く存在するクロカビ(Cladosporium属)に対しても顕著な効果を呈することから、家庭内に棲息するカビに対して優れた抗カビ力を有すると考えられる。また、この結果と煙化率の値とを考慮すると、ADCAの配合量とIPBCの煙化率との間に相関関係があり、上記抗微生物効果にIPBCの煙化率が影響していることが推察された。
燻煙剤組成物の燻煙が、家庭の浴室およびリビングの空中浮遊カビ胞子数に及ぼす影響を検討した。
空気中に浮遊するカビ胞子数を正確に測定するため、細菌等の汚染を防ぐ目的から、試験例1と同様に作成した真菌用のポテトデキストロース寒天培地(商品名Difco、ベクトン・ティッキンソン社)に抗生物質(クロラムフェニコール、ナカライテスク社製)を100ppmとなるよう添加した培地溶液を調製し、オートクレーブにより121℃、20分間の高圧蒸気滅菌(平山製作所製、HVA−85)を行った。滅菌終了後、寒天が溶解している間に、該培地溶液約20mLを滅菌済みシャーレ(φ9cmプラスチック製)へ充填し、安全キャビネット(AirTech社バイオロジカルセーフティキャビネット、BHC−1306IIA/B3)内で3〜4時間殺菌灯点灯下で固化させた。
予め試験場所における平時の空中浮遊カビ胞子数を求めるため、前述の抗生物質添加平板培地を収納したエアーサンプラー(ミドリ安全社、BIOSAMP MBS−1000D)を、試験家庭の浴室およびリビングの中央部に設置し、1m3の空気を吸引して前述の平板培地上に集め、25℃の恒温槽(福島工業社製低温インキュベーター、FMU132I)にて5日間培養し、カビ胞子数を求めた。
次に、それぞれの試験場所で、上記で得た燻煙剤組成物10gを用いて加熱燻煙後、3時間居住者の出入りが無く密閉した状態を維持した。
加熱容器としては、発熱剤として酸化カルシウムを使用した「水ではじめるバルサン12.5g」(ライオン社製)を用いた。
処理終了後、換気扇の無い浴室では換気扇を運転し、窓のある試験場所では換気のため窓を開けて60分間換気した後に、前述のエアーサンプラーを用い、同様の方法にて1m3の空気を吸引して寒天培地上に集め、25℃の恒温槽にて5日間培養しカビ胞子数を求めた。
(判定基準)
×:5%未満。
△:5%以上50%未満。
○:50%以上100%未満。
◎:100%(検出されず)。
燻煙剤組成物の燻煙が、家庭の押入れにおけるカビ臭気へ与える影響を評価した。
一般的な家庭の押入れである、長さ×奥行き×高さで約180cm×約90cm×約190cmの大きさのものを使用し、布団等の収納物を撤去後に、予め被験者による臭気確認を行った。その後、押入れの床面中央部で、上記で得た燻煙剤組成物2.5gを用いて加熱燻煙を行った後2時間密閉した。加熱用容器としては、発熱剤として酸化カルシウムを使用した「水ではじめるバルサン12.5g」(ライオン社製)を用いた。
処理終了後、扉を開けて3時間換気し、再び扉を閉め翌日まで静値した後にカビ臭気について、以下の手順で官能評価を行った。
官能評価では、試験前を対照とし、カビ臭気に対する消臭効果を以下の5段階の判定基準で評価した。
(判定基準)
5:カビ臭気が感じられず、カビ臭気に対する消臭効果が非常に高い。
4:ややカビ臭気が感じられる。
3:カビ臭気は感じられるが、対照と比べて明らかに低減している。
2:対照と比べてややカビ臭気が弱くなっている。
1:消臭効果は認められない(対照と変わらず)。
実施例1〜13と同様の方法で、表5に示す組成(%)の燻煙剤組成物を製造した。
得られた燻煙剤組成物について、「バルサンSPジェット25g」(ライオン社製)に付属の点火具を熱源とした、製剤の一部分を加熱することによる薬剤の自己熱分解を利用した方法を燻煙手段に用いた以外は、上記試験例1〜3と同じ評価を行った。
その結果、実施例14〜16は、それぞれ、実施例3、11、9と同様の微生物効力、空中浮遊カビ胞子数低減効果、カビ臭気に対する消臭効果を得ることが出来ることを確認した。
Claims (4)
- 3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメートと、イソプロピルメチルフェノールと、アゾジカルボンアミドとを含有することを特徴とする燻煙剤組成物。
- 3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメートとイソプロピルメチルフェノールとの含有量の比(質量比)が、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート/イソプロピルメチルフェノール=2/1〜1/1である請求項1に記載の燻煙剤組成物。
- 3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメートとイソプロピルメチルフェノールとの合計量が、総質量の5質量%以上20質量%以下である請求項1または2に記載の燻煙剤組成物。
- アゾジカルボンアミドの含有量が、総質量の55質量%以上75質量%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の燻煙剤組成物。
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