JP4919548B2 - プランジャポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体を吐出するプランジャポンプであって、特に低粘度から中粘度の液体を微少流量で吐出するのに適したプランジャポンプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のプランジャポンプとしては、例えば、図3に示すようなものがある。同図に示すように、このプランジャポンプ51は、吐出口53及び吸入口55を備えたシリンダ57と、このシリンダ57に形成された挿通口59に挿通され、往復動自在に構成されたプランジャ61と、吸入口55を介してシリンダ57に液体を供給するタンク63とを備えている。
【0003】
吐出口53には、シリンダ57の圧力が正圧になると開く第1逆止弁65が配設される一方、吸入口55には、シリンダ57の圧力が負圧になると開く第2逆止弁67が配設されている。挿通口59の内壁面には、プランジャ61の外周面と摺接するシール部材69が設けられており、このシール部材69により、シリンダ57内を密閉状態に保ち、液体が漏れるのを防止している。
【0004】
そして、プランジャ61が図中のX方向に進入すると、シリンダ57内の圧力が高くなって第1逆止弁65が開き、プランジャ61の進入量に応じた液体が吐出口53から吐出される。一方、進入したプランジャ61が後退すると、後退したプランジャ61の体積分だけ密閉状態のシリンダ57内の容積が増加するため、シリンダ57内がタンク63に対して負圧になる。その結果、第2逆止弁67が開き、後退したプランジャ61の体積分と同じ量の液体がタンク63から吸入される。
【0005】
このようなプランジャポンプ51では、プランジャ61の進入により液体を押し出しているため、温度の高低に関わらず所望の量の液体を吐出することができる。また、シリンダ57には液体が充満しているため、水頭差が生じることもなく、しかもプランジャ61により液体を直接押圧しているため、50,000mPa・s程度の中粘度の液体まで対応できるという利点もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このようなプランジャポンプ51では、上記のように進入したプランジャ61の体積量で液体の吐出量が決まるため、微少な液体を吐出するためには、プランジャ61の径や進入量を小さくする必要がある。しかしながら、プランジャ61の径を小さくすると、シール部材69との密着状態を維持するのが困難になるという問題があり、進入量を小さくすると、誤差が生じやすく吐出量にばらつきが生ずるという問題があった。したがって、従来のプランジャポンプで微少吐出量を実現するのは困難であった。
【0007】
一方、微少な液体を吐出し得る吐出装置として、特開平4−200671号公報、或いは特開平5−200352号公報に記載の吐出装置が提案されている。これらの装置では、容器内の液体をエアで加圧し、吐出口の「開」時間を短くすることで微少吐出量を実現している。しかしながら、これらの装置では、液体の水頭差による吐出量のばらつきをなくすための、各種センサーや複雑な制御装置を設けているため、設備コストが高くなるという問題があった。さらに、これらの吐出装置は、その構成上、低粘度の液体にしか適用できないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、吐出量が微少であっても高精度で液体の吐出を行うことができるプランジャポンプを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の前記目的は、吐出口及び吸入口を備えたシリンダと、前記シリンダに形成された挿通口に往復摺動自在に設けられたプランジャとを備え、前記プランジャの往復動に伴って、密閉状態の前記シリンダの容積縮小により前記吐出口から液体が吐出される一方、密閉状態の前記シリンダの容積拡大により前記吸入口から前記シリンダ内に液体が吸入されるプランジャポンプであって、前記シリンダは、前記プランジャの先端部が係合した状態で往復摺動自在な係合口を備えており、前記挿通口及び係合口が、異なる開口断面積を有していることを特徴とするプランジャポンプによって達成される。
【0010】
また、本発明の前記目的は、吐出口及び吸入口を備えたシリンダと、前記シリンダに形成された挿通口に往復摺動自在に設けられたプランジャとを備え、前記プランジャの往復動に伴って、密閉状態の前記シリンダの容積縮小により前記吐出口から液体が吐出される一方、密閉状態の前記シリンダの容積拡大により前記吸入口から前記シリンダ内に液体が吸入されるプランジャポンプであって、前記プランジャの先端部は、前記吸入口に対して係脱自在で、しかも係合状態において前記吸入口に往復摺動自在となっており、前記吸入口は、前記挿通口より小さい開口断面積を有していることを特徴とするプランジャポンプによっても達成される。
【0011】
また、前記プランジャは、断面積が一定の第1棒状部の先端に該第1棒状部と異なる一定断面積を有する第2棒状部を備えることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明に係るプランジャポンプの第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1はこの実施形態に係るプランジャポンプの断面図である。
【0013】
このプランジャポンプは、低粘度から中粘度の液体、例えば接着剤を吐出するためのものであり、図1に示すように、吐出口3及び吸入口5を備えたシリンダ7と、シリンダ7に形成された挿通口9に往復摺動自在に設けられたプランジャ11と、吸入口5を介してシリンダ7に液体を供給するタンク13とを備えている。なお、プランジャ11は図示を省略する駆動装置により駆動される。
【0014】
吐出口3及び吸入口5には、ボール、弁座、バネからなる第1逆止弁15及び第2逆止弁17がそれぞれ配設されている。第1逆止弁15は、シリンダ7内の圧力が正圧になると、ボールがバネの付勢力に抗して弁座から離間し開状態となるように構成されている。一方、第2逆止弁17はシリンダ7内の圧力が負圧になると開状態となるように構成されている。
【0015】
プランジャ11は、直径の異なる2つの円柱部、つまり直径D1が2.0mmの第1円柱部(第1棒状部)11aと、その先端に形成された直径D2が1.9mmの第2円柱部(第2棒状部)11bとからなり、第1円柱部11aの外周面が上記した挿通口9に摺接している。一方、第2円柱部11bは、挿通口9と対向するシリンダ7の内壁面に形成され挿通口9より開口断面積が小さい係合口19に係合しており、この状態で係合口19に往復摺動自在になっている。なお、挿通口9及び係合口19の内壁面には、第1及び第2円柱部11a,11bの外周面と密着するシール部材21,23が設けられており、これによって、シリンダ7内を密閉状態に保ち、液体が漏れるのを防止している。
【0016】
次に、上記のように構成されたプランジャポンプの動作について説明する。図1に示す初期状態から図中のX方向にプランジャ11を移動すると、第2円柱部11bがシリンダ7内から退出していく一方、第1円柱部11aがシリンダ7内に進入してくる。そして、密閉状態のシリンダ7の容積は、進入した第1円柱部11aの体積と退出した第2円柱部11bの体積との差だけ減少し、これにより、シリンダ7内の圧力が上昇して第1逆止弁15が開き、液体が吐出される。このとき、プランジャ11の移動距離L1を10mmにすると、吐出量Q1はシリンダ7内の容積の減少分に相当する量、つまり
Q1=(π/4)×(2.02−1.92)×10=3.0mm3
となる。一方、この進入状態からプランジャ11が後退すると、密閉状態のシリンダ7の容積が進入時よりも増大するため、シリンダ7が負圧になる。これにより、第2逆止弁17が開き、容積増大分に相当する液体がタンク13からシリンダ7内に流れ込む。
【0017】
以上のように構成されたプランジャポンプ1では、異なる断面積を有する2つの円柱部11a,11bからなるプランジャ11を使用することにより、進入してくる第1円柱部11aの体積と、退出していく第2円柱部11bの体積との差が吐出量となるため、微少量の液体の吐出が可能となる。ここで、第1円柱部11aと同一構成のプランジャを使用した従来例と比較すると、従来例において移動距離が10mmの場合の吐出量Q2は
Q2=(π/4)×2.02×10=31.4mm3
となる。このように、本実施形態に係るプランジャポンプ1では、従来例と同等の形状のプランジャを使用しているにも関わらず、従来例に比べ10分の1の吐出量を実現することができる。したがって、プランジャの直径及び進入量を小さくすることなく、高精度で微少量の液体を吐出することができる。
【0018】
なお、吐出量を変更する場合には、プランジャ11の進入量を変更したり、或いは第1および第2円柱部11a,11bの直径差を変更すればよいが、シール部材との密着状態を適切に維持するため、プランジャ11の直径は1mm以上とするのが望ましい。また、誤差を小さくし吐出量のばらつきを小さくするため、進入量は5mm以上にすることが望ましい。
【0019】
(第2実施形態)
次に、本発明に係るプランジャポンプの第2実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図2は本実施形態に係るプランジャポンプの断面図である。
【0020】
図2に示すように、このプランジャポンプ31は、吐出口32及び吸入口33を備えたシリンダ34と、シリンダ33に形成された挿通口35に往復摺動自在に設けられたプランジャ37と、吸入口33を介してシリンダ34に液体を供給するタンク38と備えている。
【0021】
吸入口33及び挿通口35は、シリンダ34の長手方向に対向配置されており、吸入口33の開口断面積が、挿通口35の開口断面積より小さくなっている。吐出口32には、ボール、弁座、バネからなる逆止弁39が配設されている。この逆止弁39は、シリンダ34の圧力が正圧になると、ボールがバネの付勢力に抗して弁座から離間し開状態になるように構成されている。
【0022】
プランジャ37は、直径の異なる2つの円柱部、つまり直径D1が2.0mmの第1円柱部(第1棒状部)37aと、その先端に形成された直径D2が1.9mmの第2円柱部(第2棒状部)37bとからなり、第1円柱部37aの外周面が上記した挿通口35に摺接している。一方、プランジャ37の先端部を構成する第2円柱部37bは、吸入口33に対して係脱自在になっており、係合状態で吸入口33に往復摺動自在となっている。なお、挿通口35及び吸入口33の内壁面には、第1及び第2円柱部37a,37bの外周面と密着するシール部材41,43が設けられており、これによって、シリンダ34内を密閉状態に保ち、液体が漏れるのを防止している。
【0023】
次に、上記のように構成されたプランジャポンプの動作について説明する。図2に示す初期状態では、第2円柱部37bの先端は、吸入口33からS1離れた位置にある。この位置から図中のX方向にプランジャ37をS1移動すると、第2円柱部37bの先端が吸入口33に係合を開始する。このとき、第2円柱部37bはシール部材43に密着するため、シリンダ34内は密閉状態に移行する。この状態からさらにプランジャ37がS2進入すると、第2円柱部37bがシリンダ34内から退出していく一方、第1円柱部37aがシリンダ34内に進入してくる。そして、シリンダ34内の容積は、進入した第1円柱部37aの体積と退出した第2円柱部37bの体積との差だけ減少し、これにより、密閉状態のシリンダ34内の圧力が上昇して逆止弁39が開き、液体が吐出される。
【0024】
一方、この進入状態からプランジャ37が後退すると、上記進入時とは逆に、密閉状態のシリンダ34内の容積が増大するため、シリンダ34内は負圧になる。そして、プランジャがS2後退し、第2円柱部37bが吸入口33から脱離すると、シリンダ34内の密閉状態が解除され、負圧になったシリンダ34内に吸入口33を介してタンク38から液体が流れ込む。
【0025】
このように、本実施形態に係るプランジャポンプ31によれば、上記第1実施形態と同様に微少量の液体を吐出することができるほか、次のような効果を得ることができる。すなわち、本実施形態では、タンク38と連通しているシリンダ34内の吸入口33にプランジャ37の第2円柱部37bが係脱可能となっており、この第2円柱部37bが係脱することで、吸入口33が開閉され、シリンダ34とタンク38とを連通及び非連通状態にすることができる。そのため、第1実施形態で示した吸入口5の逆止弁17(図1参照)が不要となり、装置コストを低減することができる。また、接着剤等の比較的粘度の高い液体では、逆止弁に液体が付着することがあるため、頻繁なメンテナンスが必要であるが、上記のように構成することで、逆止弁を吐出口にのみに設けることができ、その結果、メンテナンスコストの低減も可能となる。
【0026】
なお、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、プランジャの形状は上記した円柱状のものだけではなく、例えば、断面多角形の角柱状のものを使用してもよい。また、上記実施形態では、異なる断面積を有する円柱部からなる段付きのプランジャを使用しているが、これに限定されるものではない。すなわち、プランジャの先端部及び後端部と、これに対応するシリンダに形成された開口(挿通口、係合口、吸入口)とが一定断面積で往復摺動可能に構成され、しかも、プランジャの先端部と後端部との摺動部分が異なる断面積を有していればよく、開口に摺動しないプランジャの中間部の構成は特に限定されない。例えば、中間部の外径がテーパ状に変化し、先端部と後端部とで断面積が異なるように構成されたプランジャを用いてもよい。但し、加工性の観点からすれば、上記した段付き部を有するプランジャを使用するのが好ましい。
【0027】
上記各実施形態では、逆止弁の弁体としてボールを用いているが、ニードル弁を用いてもよい。また、シリンダ内の圧力の上昇下降に伴ってバネにより開閉する逆止弁を使用しているが、これ以外に、例えば制御装置により、プランジャの進入後退に同期して開閉する逆止弁を用いてもよい。
【0028】
また、本発明のプランジャポンプは、上記した接着剤以外にも、例えば樹脂や塗料等の低粘度から中粘度の液体に対して適用することができる。
【0029】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、請求項1に記載の発明によれば、プランジャの先端部を、シリンダの係合口に往復摺動自在に係合させ、しかも挿通口と係合口とが異なる開口断面積を有するように構成しているため、プランジャを往復動させた際には、シリンダに進入する部分とシリンダから退出する部分との体積の差が吐出量となる。そのため、プランジャの径や進入量を維持したまま、吐出量を高精度で大幅に微少化することができる。
【0030】
また、請求項2に記載の発明によれば、シリンダの吸入口に対してプランジャの先端部を係脱自在とし、しかも吸入口と挿通口とが異なる開口断面積を有しているため、上記と同様に、吐出量を高精度で微少にすることができる。さらに、プランジャの先端部が、吸入口に対して係脱することで、吸入口を開閉することができるため、吸入口に逆止弁等の開閉機構が不要となる。その結果、装置コスト及びメンテナンスコストの低減が可能となる。
【0031】
また、請求項3に記載の発明によれば、プランジャを、断面積が一定の第1棒状部の先端に該第1棒状部よりも小さい一定断面積を有する第2棒状部を備えるようにしているため、プランジャポンプの製造が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るプランジャポンプの第1実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係るプランジャポンプの第2実施形態を示す断面図である。
【図3】従来のプランジャポンプを示す断面図である。
【符号の説明】
1,31 プランジャポンプ
3,32 吐出口
5,33 吸入口
7,34 シリンダ
9,35 挿通口
11,37 プランジャ
11a,37a 第1円柱部(第1棒状部)
11b,37b 第2円柱部(第2棒状部)
19 係合口
Claims (2)
- 吐出口及び吸入口を備えたシリンダと、前記シリンダに形成された挿通口に往復摺動自在に設けられたプランジャとを備え、前記プランジャの往復動に伴って、密閉状態の前記シリンダの容積縮小により前記吐出口から液体が吐出される一方、密閉状態の前記シリンダの容積拡大により前記吸入口から前記シリンダ内に液体が吸入されるプランジャポンプであって、
前記プランジャの先端部は、前記吸入口に対して係脱自在で、しかも係合状態において前記吸入口に往復摺動自在となっており、
前記吸入口は、前記挿通口より小さい開口断面積を有していることを特徴とするプランジャポンプ。 - 前記プランジャは、断面積が一定の第1棒状部の先端に該第1棒状部と異なる一定断面積を有する第2棒状部を備えることを特徴とする請求項1に記載のプランジャポンプ。
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