JP4910213B2 - 絣調織編布帛 - Google Patents
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Description
そのように薄く扁平な紙テープを加撚し始めると、その撚数に応じた数箇所で紙テープが捩じれ、その捩じれた箇所では紙テープが幅方向に2つ折りになって重なり、その重なり合う表裏の紙面間に隙間14が発生する。
加撚し続けると、紙テープの全長に亙って略均等に捩じれが発生し、紙テープ全体が2重折りになり、表裏の紙面間に内部隙間14が紙テープの全長に亙って発生する。
更に加撚し続けると、所々に撚目20が細かく発生し、幅方向に紙テープが絞り込まれ、扁平断面の紙テープから円形断面の紙糸に変形する。
そのように絞り込まれて幅を縮めると、紙糸の長さ方向に続く縦皺が発生し、その縦皺の数に応じて紙糸の内部隙間14が細かく分かれ、同時に、縦皺に沿って外部に溝(19)が発生し、その外部溝隙間19が撚目となって紙糸の周面に細かく現われる。
その閉鎖された状態では、水系樹脂組成物や染液等の流動性組成物や液体が、紙糸内部に滲み込まず、紙糸の周面にだけ付着し、紙糸の周面だけが濡れて膨潤する。
そして、膨潤した紙糸の周面は止水層となり、水系樹脂組成物や染液等は益々紙糸内部に滲み込み難くなる。
この点、加撚前の紙テープには内部隙間14や外部溝隙間19がないので、粘性のない液体は、紙テープを構成している天然パルプ繊維間の微細な隙間や繊維内部に吸収されるとしても、樹脂粒子が細かく分散して粘性を帯びた水系樹脂組成物では、その樹脂粒子が紙テープに吸収されることはなく、濾紙に濾し分けられるように紙テープの外面に付着するだけとなる。
本発明の甘撚紙糸11は、坪量10〜40g/m2 の天然パルプ抄造紙を裁断して成る幅1.5〜15mmの紙テープを加撚したものであり、その内外に内部隙間14や外部溝隙間19が形成されており、その撚数が40〜200回/mと少ないので内部隙間14や外部溝隙間19は閉鎖されることなく介在し、その紙面と紙面に挟まれた内部隙間14や外部溝隙間19に毛細管現象が起きる。
その水系樹脂組成物13が着色成分を含有していれば、天然パルプ抄造紙の坪量が10〜40g/m2 なので内部隙間14や外部溝隙間19に固着した着色成分の色彩が滲み出て加撚紙糸11が着色され、難燃剤や消臭剤、芳香剤、抗菌剤、害虫忌避剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等の機能性物質を含有していれば、それらの物質の機能性が加撚紙糸11に付与される。
その着色成分や機能性物質は、外部からは擦り取ることの出来ない内部隙間14や外部溝隙間19に固着しているので、耐水性を有し、耐久性が高く、変褪色することなく、機能性に優れた紙製織編布帛が得られることになる。
このため、甘撚紙糸11の周面には、その周面が湿潤する程度の水系樹脂組成物しか固着せず、その垂れ落ちることなく僅かに固着した水系樹脂組成物によって極薄皮膜が形成されることになる。
そして、内部隙間14や外部溝隙間19に水系樹脂組成物が固着しているのであれば、その固着した水系樹脂組成物によって所要の物性や機能性が紙糸11に付与されることになるので、水系樹脂組成物を増粘して甘撚紙糸11の周面に厚く固着させる必要はなく、却って水系樹脂組成物を増粘すれば、毛細管現象による内部隙間14や外部溝隙間19への浸入効果は薄れる。
そのように、水系樹脂組成物を増粘する必要がないので、水系樹脂組成物は、甘撚紙糸11の周面に極薄皮膜を形成することになる。
そのように水系樹脂組成物が内部隙間14や外部溝隙間19に吸着保持されるので、内部隙間14や外部溝隙間19の多い強撚部21には、内部隙間14や外部溝隙間19の少ない甘撚部22に比して水系樹脂組成物が多く吸着保持されることになる。
従って、水系樹脂組成物13が着色成分を含有していれば、強撚部21が甘撚部22に比して濃く着色されることになり、強撚部21と甘撚部22との外観上の差異が一層鮮明になり、強撚部21と甘撚部22との外観上の相違によって描出される絣調地模様が一層鮮明になる。
撚数を200回/m以下とするのは、内部隙間14が閉鎖されることなく介在し、紙テープの全長にわたって毛細管現象が起きるようにするためである。
それと共に、坪量が10〜40g/m2 であり、幅が1.5mmであり、断面の扁平率が30以下の紙テープを、撚数が40〜200回/mとなる範囲において加撚するとき、紙テープの全長に亙って撚目20が均等には発生せず、紙テープが捩じれて2つ折りになって撚目20のピッチの長い撚数の粗い平坦なテープ状の太い甘撚部22と、紙テープが絞り込まれて実撚紡績糸の如く円形断面形状に変形した撚目20のピッチの長い撚数の緻密な細い強撚部21とがランダムに発生し、甘撚紙糸は、スラブヤーンやネップヤーン等の意匠撚糸や絣糸の如き観を呈する。
特に、本発明に係る紙製織編布帛を裏打紙に貼り合わせて壁装内装材や表装材等として使用するときは、壁面下地等に貼り合わせるために裏面に水系接着剤を塗工しても、織編布帛と裏打紙が共に吸湿して膨潤し易い天然パルプを素材原料としているので、それらの湿潤膨潤差に起因する伸縮差は発生せず、従って、その伸縮差に起因する端縁での反り上がり(カール)が発生せず、平坦に拡布された状態を維持するので、施工し易い壁装内装材や表装材等が得られる。
そのように甘撚紙糸を通常の紡績糸やマルチフィラメント糸等の繊維糸条と併用する場合、甘撚紙糸の繊度を繊維糸条よりも太くし、天然パルプ抄造紙固有の感触・風合いが繊維糸条によって損なわれないようにする。
そのように紙テープの幅を細くすると、甘撚紙糸に発生する内部隙間14や外部溝隙間19も細かくなって押し潰され難くなるので好都合である。
強撚部21の撚数(H)と甘撚部22の撚数(L)とは、それぞれ甘撚紙糸の長さ2cmの部分での撚数を測定して比較し、強撚部21の撚数(H)が甘撚部22の撚数(L)
の3倍以上、好ましくは5倍以上になるように、甘撚紙糸11の平均撚数を設定する。
撚数が増えるにつれて、撚目20と撚目20の間のピッチが平均化され、紙テープが絞り込まれて実撚紡績糸の如く円形断面形状に変形し、強撚部21と甘撚部22との差異が少なくなる。
従って、強撚部21と甘撚部22との差異が明確な甘撚紙糸11を得るためには、その平均撚数を100回/m以下に、好ましくは45〜75回/mに設定し、坪量15g/m2 前後の極薄抄造紙を使用し、その紙テープの幅を2〜5mmに設定することが推奨される。
坪量40g/m2 前後の極薄抄造紙を使用した幅2mmの紙テープ、幅4mmの紙テープ、幅10mmの紙テープに成る加撚紙糸の繊度は、それぞれ概して800dtex、1600dtex、4000dtexとなる。
繊度が5000dtexを超える太手の加撚紙糸を使用すると、織編布帛の可撓性が損なわれ、カーテン地や壁装内装材、表装材等に好適な織編布帛は得難い。
しかし、織編布帛のデザイン構成の都合上、5000dtexを超える太手の紙糸を必要とする場合もある。
そのような場合には、5000dtexを超える太手の加撚紙糸ではなく、2000dtex未満の加撚紙糸、好ましくは1000dtex未満の加撚紙糸、例えば坪量15g/m2 前後の極薄抄造紙を使用した幅4mmの紙テープに成る600dtex前後の加撚紙糸に成るリリーヤーン、例えば、600dtex前後の加撚紙糸を経編機によって鎖編に編成した経編リリーヤーン、或いは、600dtex前後の複数本の加撚紙糸を組み上げた組紐リリーヤーンを使用することが推奨される。
着色成分を含む水系樹脂組成物としては、アマニ油と松ヤニを出発原料とするテルペン樹脂に顔料を配合したステイン塗料のように乾性塗膜を形成する水性塗料を使用するとよい。
着色成分を含む水系樹脂組成物としては柿渋を使用することが出来、その場合、着色成分は媒染剤によって発色処理される。
着色成分は、染料、顔料、柿渋等の樹液の何れであってもよい。
何故なら、天然パルプ抄造紙や紙テープに付与したのでは、水系樹脂組成物を吸着保持する内部隙間14や外部溝隙間19を甘撚紙糸に設ける意味がなくなるからである。
水系樹脂組成物は、織編布帛を構成する前の甘撚紙糸に付与してもよく、又、織編布帛を構成している甘撚紙糸、つまり紙製織編布帛に付与してもよい。
しかし、織編布帛に付与するときは、その織編目において交絡する甘撚紙糸と甘撚紙糸の間が水系樹脂組成物によって接着固定され、織編布帛の寸法・形状安定性が高まる。
特に、水系樹脂組成物にエチレン・酢酸ビニル・塩化ビニル三元共重合体エマルジョンを使用する場合には、リン酸グアニジンを難燃剤として配合することが望ましい。
紙製織編布帛の不燃化のためには、織密度や編密度を粗くして織編布帛の目付を120g/m2 以下に、好ましくは90〜100g/m2 にし、紙製織編布帛に対するリン酸グアニジンの付着量が20〜30g/m2 になるようにすることが望ましい。
そのように、不燃性ガスを徐々に放出する過程において、甘撚紙糸は、高温加熱されて炭化し、炭素繊維と同様の不燃性炭化物となり、完全に灰燼となって消失することがなく、その不燃性炭化物として生じる残渣分だけ可燃分解ガスの発生が抑えられる。
即ち、火炎にあって紙製織編布帛が灰燼となって消失することがなく、炭素繊維に成る不燃性織編布帛としての形状を留めることになる。
そのように防炎性能の高い紙製織編布帛が得られるので、高い防炎性能の求められる自動車、列車、航空機等のカーテン地や壁装内装材に、本発明の紙製織編布帛は特に好適である。
そのエンボスは、織編布帛の片面の一部が他の片面に押し出されるように施す必要はなく、紙糸11の内部隙間14や外部溝隙間19が押し潰されて変形する程度の所謂ペーパーエンボスでよい。
何故なら、甘撚紙糸は、繊維糸条と異なって粘弾性を有せず、略完全に塑性変形し、経時的に原形を弾性回復することはない。
そして、エンボス付形された押圧箇所では、撚目(撚山)が押し潰されて平滑面となり、撚目(撚山)による細かい起伏や凹凸のある非押圧箇所との表面光沢の差によって鮮明に看取されるからである。
従って、ジャカードやドビー等の柄出し装置によって図柄模様を描出することなく、エンボス加工によって簡便且つ効率的に図柄模様を描出することが出来る点でも、本発明に係る紙製織編布帛は実用的である。
12:織編目
14:内部隙間
19:外部溝隙間
20:撚目
21:強撚部
22:甘撚部
Claims (6)
- 坪量10〜40g/m2 の天然パルプ抄造紙を裁断して成る幅1.5〜15mmの紙テープを加撚して、長さ2cm部分での撚数の最大となる強撚部(21)の撚数(H)が長さ2cm部分での撚数の最小となる甘撚部(22)の撚数(L)の3倍以上となるように平均撚数を40〜200回/mに設定した撚斑のある甘撚紙糸(11)が織編込まれており、強撚部(21)と甘撚部(22)との外観上の相違による絣調地模様が描出されている絣調織編布帛。
- 甘撚紙糸(11)には加撚による隙間(14・19)があり、隙間(14・19)のある甘撚紙糸(11)に水系樹脂組成物が付与されており、水系樹脂組成物が甘撚紙糸(11)の隙間(14・19)に浸入して固着している前掲請求項1に記載の絣調織編布帛。
- 織編布帛を構成している甘撚紙糸(11)に水系樹脂組成物が付与されており、織編目(12)において交絡する紙糸間が水系樹脂組成物によって接合されている前掲請求項2に記載の絣調織編布帛。
- 隙間(14・19)が、加撚された紙テープが幅方向に2つ折りになって重なり合う表裏の紙面間の内部隙間(14)と、加撚された紙テープの長さ方向に続く縦皺に沿った外部溝隙間(19)であり、
甘撚紙糸(11)の周面において隣り合う外部溝隙間(19)と外部溝隙間(19)の間が平坦な面である前掲請求項2と3の何れかに記載の絣調織編布帛。 - 水系樹脂組成物が着色成分を含有していて、
甘撚紙糸(11)は、強撚部(21)における隙間(14・19)の数が甘撚部(22)における隙間(14・19)の数より多い前掲請求項2と3と4の何れかに記載の絣調織編布帛。 - 坪量10〜40g/m 2 の天然パルプ抄造紙を裁断して成る幅1.5〜15mmの紙テープを加撚した2000dtex未満の複数本の加撚紙糸によって構成され且つ5000dtexを越えるリリーヤーンが織編込まれている前掲請求項1と2と3と4と5の何れかに記載の絣調織編布帛。
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