JP4895597B2 - 高性能断熱構造 - Google Patents

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Description

本発明は、多孔質断熱材の断熱性能を向上した高性能断熱材に関し、特に液化天然ガスや液化石油ガスの低温貯蔵容器に最適に使用することができる高性能断熱材に関する。
発泡性ウレタン樹脂などの多孔質断熱材は、樹脂固体中に気泡が大量に存在する状態になっていて、全体の伝熱量Qは樹脂固体中を伝導する熱Qsと発泡セル中のガス対流を介して伝導する熱Qgと断熱材を透過する輻射伝熱Qrの和で表わすことができる。そこで、断熱材の断熱性能を向上させる一般的な方法は、気孔径を1mm以下に抑えてガス対流熱伝達作用を抑制し、伝導率が比較的大きな樹脂固体伝導熱Qsを低減することであった。
多孔質断熱材の密度を下げると樹脂固体の部分が少なくなり、気泡の部分が増加する。このため、伝導率の大きな樹脂固体における伝導熱Qsが低下し熱伝導率の小さなガス伝導熱Qgの寄与が増大する。したがって、密度が低下するにしたがって見かけの熱伝導率が低下し、断熱材が薄くても断熱性能を維持することができる。
特に、極低温の液化天然ガスや液化石油ガスの貯蔵タンクに施す断熱材において、断熱材を薄く軽量に形成することができれば断熱材原料の節約ばかりでなく、運搬船にタンクを搭載する場合に運行経費の節減に結びつくので効果が大きい。
しかし、たとえば図7に見られるように、ある密度以下になると、逆に熱伝導率が急激に増加し断熱性能が劣化する。ある密度以下では、気泡を形成する樹脂膜が薄くなり断熱材を透過する赤外線量が大きくなって輻射伝熱Qrが無視できなくなるためである。なお、図7は硬質ウレタンフォームについて測定例を示すグラフであり、密度に対する熱伝導率の関係は、樹脂材質、発泡ガス、気泡径などによって大きく変化することは言うまでもない。
このように低密度領域で赤外線透過量が増加するため、低密度化による熱伝導率低下を利用した断熱材の薄型軽量化には限界があった。
なお、断熱材の赤外線透過を減少させる方法として、発泡体内に赤外線減衰剤材を混入することが効果があることが知られている。赤外線減衰剤は赤外線反射物質もしくは赤外線吸収物質で、たとえばアルミニウムなどの金属の粒状フレーク、カーボンブラック、グラファイト、二酸化チタンなどが使用される。
特許文献1には、粒径が150nmより大きいサーマルグレードと呼ばれる品質のカーボンブラックを混入した断熱フォーム構造物が開示されている。サーマルグレードカーボンブラックは、通常の赤外線に対してレイリー散乱をするので、赤外線散乱を増してフォーム構造物の熱伝導率を小さくする。また、サーマルグレードカーボンブラックはフォームの気泡壁に堆積しやすい特性を有することから固体伝熱熱伝導率と放射熱伝導率が低下し、フォーム構造物の実効的熱伝導率が低下する。
なお、特許文献2には、発泡体に赤外線減衰剤を混入した上で、気泡径を70μm以下にすることにより、顕著に熱伝導率が低下することが開示されている。特に、平均気泡径が1.0μm以下であるとき、および気泡が絶対圧力0.1Torr(約13Pa)以下に排気されているときに最も大きな熱伝導率低下が見られる。
しかし、カーボンブラックは自身の赤外線吸収率が高く熱伝導率が大きいので、これを混合した低密度断熱材は固体部分の熱伝導熱が増加し、断熱材の熱伝導率が十分低下しない。また、赤外線減衰剤混入発泡体で気泡率が大きいごく低密度のフォーム構造物を形成すると、粒状の減衰剤が融着しにくい状態で含まれた固体部分の脆性が高くなり、特に薄い気泡膜部分が脆くなって、フォーム構造物が破損しやすい。
特表平8−504856号公報 特表平8−504859号公報
そこで、本発明が解決しようとする課題は、低密度で低い熱伝導率を持ち強度の大きい高性能断熱材を利用して、液化天然ガス貯蔵槽などに適用できる高性能断熱構造を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明の高性能断熱材は、発泡体材料に針状単結晶を加えて、発泡体材料自体の発泡体における熱伝導率が最低になる密度より低い密度になるように発泡させたことを特徴とする。
発泡体材料は、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、エーロゲル、セラミックス、ガラスなど、各種の有機及び無機の材料を含む。なお、これら発泡体材料には、必要に応じて公知の発泡剤が添加される。
針状単結晶は、ウィスカーとも呼ばれ、たとえばカーボンウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、炭化珪素ウィスカーなどが比較的容易に入手できる。ウィスカーは、極めて剛性が強い針のような細長い形状を持っている。たとえばカーボンウィスカーで径0.3μmから0.6μm、長さ5μmから15μmと細長い。発泡体にウィスカーを添加して気泡壁を強化することにより、断熱材の強度は格段に増大する。なお、ウィスカーは気泡壁内に完全に埋め込まれて気泡内にはみ出ないことが好ましい。
断熱材への輻射線は、断熱材表面で一部反射した残りが断熱材に吸収、散乱あるいは透過する。断熱材を透過する輻射が大きくなると見かけの熱伝導率が大きくなる。輻射線のうち、特に熱線と呼ばれる0.8μmから2.4μmの赤外線が伝熱に大きな影響を持つ。そこで、本発明の高性能断熱材は、発泡体材料に剛性の強い繊維であるウィスカーを1重量%から5重量%添加することにより強化すると共に、赤外線透過量を小さくして熱伝導率を低下させる。
針状単結晶などの添加は、発泡体の赤外線透過割合が大きくなる低密度領域で、熱伝導率が上昇する領域において特に効果的である。
たとえば硬質ウレタンフォームでは、フォームとしての密度が約35kg/m3程度で熱伝導率が最低になり、密度がそれ以下に減少すると熱伝導率が急激に増加する。
したがって、たとえば密度を10〜30kg/m3、特に20kg/m3程度にして使用する場合に針状単結晶を添加すると効果が高い。10kg/m3以下では固体比率が低くなりすぎて破損しやすくなり、30kg/m3以上では赤外線透過率が大きくないので本発明固有の効果が余り期待できない。
赤外線伝導阻止のための添加剤は、添加量の発泡体材料に対する割合や添加剤の大きさにより、熱伝導率に対する低減効果が異なる。一般に添加剤の径が光の波長より小さくなるとレイリー散乱効果により分散性が良くなるが、光の反射が小さくなるので適当な領域がある。実験結果から重量割合で1%から5%程度、レイリー散乱効果から粒径1μm前後が特に効果が大きいことが分かっている。
本発明において使用するウィスカーは径が1μmに近いので、この条件に適合する。
本発明の高性能断熱材について、見かけの熱伝導率を測定した結果、未添加の発泡体と比較して、カーボンウィスカー添加の場合16%、酸化亜鉛ウィスカー添加の場合19%の低下が観察された。カーボンブラックでは、9.4%の低下率であったことと比較すると、本発明の熱伝導率改善は極めて顕著であると言える。
カーボンブラックは、高い赤外線吸収率を持ち赤外線をほぼ遮断するまで透過率を低下させるが、カーボンブラック自体の高い熱伝導率のため断熱材全体の熱伝導率は十分に低下させることができない。
これに対して、ウィスカーは、適度な反射率と吸収率を持って赤外線の透過率を低下させ、また熱伝導率も高くないため、断熱材の熱伝導率を実質的に低下させることができる。
本発明の高性能断熱構造は、保冷する容器の壁表面にクライオポンプシステムのクライオ面を配置し、クライオ面の上発泡体断熱材からなる低温断熱部材を被覆し、さらにその上に気密シートを被覆し、さらに高性能断熱材で構成される高温断熱部材を配置し、それらの表面に防水・防湿シートを被覆したことを特徴とする。
本発明の高性能断熱構造は、極低温の液化天然ガス容器に適用することができる。この場合、断熱構造の外表面温度は外気温度(例えば300K)、内表面温度は液化天然ガス沸点はメタン沸点(111K)に近くなるが、両者のほぼ中間位置、たとえば200Kになるあたりにグラファイトシート等の気密シートが介装されて低温断熱部材と高温断熱部材に分割される。
クライオポンプシステムは、真空容器内に極低温のクライオ面を設置し、これに容器内の気体分子を凝縮または吸着させて捕捉し、排気する周知のポンプシステムであって、低温断熱部材を真空に維持する機能を有するものである。
低温断熱部材は、発泡体を発泡させて作った気泡で全体を形成した断熱材からなる。気泡はごく微細で、大部分が互いに連通した連続気泡になっていることが好ましい。雰囲気を真空にする場合は、連続気泡は雰囲気と連通して内部も真空になるので、ガスの対流による伝熱が排除され熱伝導率は十分に低い。対流のない自由分子熱伝導の領域では伝導伝熱量は圧力に比例し、完全真空ではゼロになる。
さらに、気泡の平均径を1μm以下のガスの平均自由行程水準にすると、見かけの熱伝導率がガス静止熱伝導率と比較しても約1/3まで低減するので効果的である。なお、ガス分子の平均自由行程は、大気圧下では0.1μm程度であるが、極めて低圧になると非常に大きくなって、10Paでは1mm程度になる。
クライオポンプに負荷をかけず簡単に到達する水準として1000Paで運転するとすれば、平均自由行程はほぼ7μmになり、100Paで運転すれば70μm程度になる。
高温断熱部材に使用する高性能断熱材は、発泡体材料に赤外線遮断物質を加えて、発泡体材料自体の発泡体における熱伝導率が最低になる密度より低い密度になるように発泡させたものである。
赤外線遮断物質として好ましいものには、カーボンウィスカーや酸化亜鉛ウィスカーなどの針状単結晶がある。なお、針状単結晶に代えて、炭素繊維などの細長い硬質繊維物体でも良い。また、防水・防湿シートなどによる保護が十分であるときなど高温断熱部材に高い強度が要求されないときは、針状単結晶を酸化鉄粉末に置き換えてもよい。
このような高性能断熱材は、単位体積当たりの重量が小さいのに断熱効率がよいので、使用量を抑えることができ、また高温断熱部材の重量も軽減する。
高性能断熱構造の外表面に入射する日射は、アルミニウムシートなどの防水・防湿シートで大部分が反射され一部が防水・防湿シートに吸収される。防水・防湿シートは加熱されて、その温度に対応した熱線を内側に輻射する。高温断熱部材は防水・防湿シートからの輻射線を効果的に遮断して、中間のグラファイトシートを保冷する。グラファイトシートは約200Kに維持されるので、その温度に対応する長波長の赤外線を内側に輻射する。低温断熱部材はグラファイトシートから輻射される赤外線を遮断して容器壁を保冷する。
以下、本発明について実施例に基づき図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の高性能断熱材の1実施例を表わす概念的な構成図、図2は本実施例に使用する赤外線遮断物質の比較表、図3は高性能断熱材の赤外線透過率の測定例を示すグラフ、図4は高性能断熱材の赤外線反射率の測定例を示すグラフ、図5は高性能断熱材の性能を説明する表、図6は本発明の第2実施例に係る高性能断熱構造を概念的に説明する断面図である。図7は硬質ウレタンフォームの密度と熱伝導率の関係を示す図である。
本実施例の高性能断熱材10は、針状単結晶を加えた発泡体材料を発泡させて形成したもので、針状単結晶13が散在した発泡体マトリックス11内に多数の気泡12が形成されている。
発泡体材料は、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、エーロゲル、セラミックス、ガラスなど、各種の有機及び無機の材料などで、これら発泡体材料にはそれぞれ適合する発泡剤が添加される。発泡剤には、二酸化炭素、窒素、アルゴン、水、空気、ヘリウムなどの無機発泡剤、メタン、プロパン、ブタンなどの脂肪族炭化水素やハロゲンか炭化水素などの有機発泡剤、アゾジカルボンアミド等化学作用による発泡剤がある。
気泡12は、針状単結晶13を含む発泡体材料11で形成された薄い膜で囲まれた空間である。発泡剤や発泡条件あるいは重炭酸アトリウムなどからなる成核剤等を調整することにより気泡の大きさを制御することができる。
気泡の大きさを内部ガスの平均自由行程程度の径を持つように調整すると、ガス伝導熱Qgは、たとえばガス静止伝導熱の1/3以下になり断熱材10の熱伝導率を効果的に低下させる。
また、気泡はそれぞれ独立した空間として形成される場合と、互いに連続して気通するように形成される場合がある。連続気泡は雰囲気を排気することにより容易に真空状態にすることができる。気泡中の気体分子密度が低いほど熱伝導率が低下するので、連続気泡にして雰囲気を真空にすることが好ましい。
針状単結晶13は、極めて高い剛性を持った細長い形状の単結晶で、ウィスカーとも呼ばれる。比較的利用しやすいウィスカーとして、たとえばカーボンウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、炭化珪素ウィスカーなどがある。
断熱材10の伝熱量Qは、樹脂などで形成されるマトリックス内を伝導する固体伝導熱Qs、気泡中のガスにより伝導するガス伝導熱Qg、および断熱材を透過する赤外線による輻射伝熱Qrの和になる。すなわち、
Q=Qs+Qg+Qr
と表わすことができる。
普通最も寄与率の高い固体伝導熱Qsは、発泡体材料と発泡体材料の断熱材に対する存在比によって決まり、断熱材10の見かけの密度が減少するに連れて、固体伝導熱Qsが減少するため見かけの熱伝導率も減少する。しかし、見かけ密度が非常に小さいところでは、気泡の存在比が大きくなりまた気泡の壁が極めて薄くなるため、赤外線が透過しやすくなって輻射伝熱Qrの寄与が大きくなり、見かけの熱伝導率が大きくなる。
そこで、低密度の断熱材10で見かけの熱伝導率を低減させるためには、輻射伝熱Qr、あるいはガス伝導熱Qgを低減させることが必要になる。
本実施例の高性能断熱材は、見かけの密度が極めて小さく発泡体材料自体の熱伝導率が大きくなる断熱材に対して、輻射伝熱Qrを低減するため、発泡体材料11に針状単結晶13を添加して、マトリックス中に分散させたものである。
従来から、赤外線吸収能が大きくほぼ完全に赤外線を遮断するカーボンブラックなどを添加して輻射伝熱Qrを低減し熱伝導率を低下させた断熱材があるが、本実施例の高性能断熱材では、むしろ適度な散乱と吸収を行わせることによって、断熱材の熱伝導率をさらに効果的に低減することに成功したものである。
また、発泡体材料からなる気泡壁の薄膜に粒子が混入されると脆くなり断熱材が破損しやすくなるので、本実施例では、単なる粒状体ではなく、プラスチック強化材として有効なウィスカーを使用することによりむしろ強化するようにした。
発泡質断熱材に種々の赤外線遮断物質を添加剤として添加したサンプルについて赤外線透過特性、反射特性、見かけの熱伝導率を測定して、赤外線遮断効果を確認した。
断熱材としてウレタンフォームを使い、サンプル材は、P液(ポリオール)とI液(イソシアネート液)の2液混合法により作製した。上記添加剤は、2液の混合時に添加し、発泡ガスとしてフロンHFC14bを使って発泡させた。サンプル材のかさ密度は約20kg/m3、気泡率は約98%であった。なお、気泡率は、
気泡率(%)=(1−(見かけ密度)/真密度)×100(%)
により求めた。
図2は、測定対象の赤外線遮断物質のリストである。カーボンブラックは比較のため同じ測定をしたものである。なお、酸化鉄は粒状体であるが、熱伝導率を減少させる効果が大きいことを確認するために挙げたものである。構造的な強度を要求されない部位には粒状体でも使用できる。
比較対象のカーボンブラックは、径が0.04μmの粒子で赤外線吸収機能が強い。
酸化鉄粒体はカーボンブラックより粒度が大きいこともあり、赤外線の散乱効果が大きい。
カーボンウィスカーは、径が0.3〜0.6μm、長さが5〜15μmの針状の粒体で、補強材としての機能も有する。酸化亜鉛ウィスカーは、径が0.2〜0.3μm、長さが2〜50μmの針状の粒体で、補強機能を有する。
各添加剤を添加した断熱材サンプルの赤外線透過率と赤外線反射率を図3と図4にそれぞれ示す。透過率と反射率は分光光度計で測定した。測定波長範囲は、300nmから2500nmの可視光から近赤外光の範囲とした。図は、横軸に波長、縦軸に透過率あるいは反射率をとって波長特性を表わしている。なお、比較のため、赤外線遮断物質を添加しない無添加サンプル材についても測定した結果を一緒に示しておいた。
サンプルは30mm×30mm×5mmのサイズで、各添加剤は発泡体材料に対していずれも5重量%添加して比較が容易にできるようにした。
0.8μmから2.5μmの範囲の近赤外線領域における透過率をみると、無添加サンプル材(ブランク)が最も大きく、酸化亜鉛ウィスカーがそれにつぎ、かなり落ちて酸化鉄粉末とカーボンウィスカーがほぼ同じ程度で、カーボンブラックを添加したサンプルでは透過率がゼロになる。なお、長波長側で透過率が減少し添加剤による差も小さくなる傾向が観察される。
一方、同じ範囲における赤外線反射率を見ると、ブランクサンプルに対して酸化亜鉛ウィスカー添加のサンプルが高い反射率を示し、酸化鉄粉末とカーボンウィスカーがブランクサンプルに対してほぼ半分程度に低下し、カーボンブラックを添加したサンプルが最も小さい反射率を示す。
これらの測定結果から下の式を用いて吸収率を求めることができる。
吸収率=1−透過率−反射率
さらに、同じ製法による30mm×50mm×10mmのサンプルについて非定常熱線法を用いて見かけの熱伝導率を測定した。なお、測定は、ほぼ室温の測定環境下で行った。
これら光線の透過率、反射率、吸収率の測定結果を用いて、0.8〜2.5μmの近赤外線領域において平均値を算出し、図5に、これらの平均値と、測定した見かけの熱伝導率と、熱伝導率の低減率を示した。
図から分かるように、酸化鉄を添加した断熱材とカーボンウィスカーを添加した断熱材では赤外線の透過率、反射率、吸収率について類似し、いずれも吸収率が大きい。しかし、熱伝導率の低減に対する寄与は、酸化鉄の方が大きく、添加剤を含まない断熱材に対して22%も低減するのに対して、カーボンウィスカーは16%の低減に止まっている。
また、酸化亜鉛ウィスカー添加断熱材は赤外線の透過率も反射率も大きいところが無添加断熱材(ブランク)と似ているが、透過率が大きく低減し、熱伝導率は無添加断熱材に対して19%減少している。
なお、カーボンブラックを添加した断熱材は、赤外線はほぼ遮断するが、熱伝導率は9.4%減少するだけで、他の添加剤と比較すると寄与が小さいことが分かる。カーボンブラック自体が高い固体熱伝導率を有するためと考えられる。
これらの結果から、酸化鉄添加の断熱材は比較サンプルのうちで最も熱伝導率低減率が大きく、酸化亜鉛ウィスカー添加断熱材とカーボンウィスカー添加断熱材がこれに次いで大きい。カーボンブラック添加の断熱材は、無添加の断熱材より熱伝導率が10%近く減少するが、ウィスカー添加断熱材には及ばないことが分かる。
カーボンブラック添加断熱材では、低密度になると薄膜隔壁に粒状体が混入するため脆くなる畏れがあるが、ウィスカー添加の断熱材は、ウィスカーの補強効果が見込めるので、断熱材の見かけの密度を大幅に低下させても強度が維持できる。
一方、酸化鉄添加断熱材では熱伝導率低減効果は大きいが、添加物が粒状体なので、脆性が大きくなって断熱材が破損しやすい。したがって、酸化鉄添加断熱材は、強度を問題にしない部分に利用することにより大きな効果が期待できる。
次ぎに、ガス伝導熱の抑制方法について説明する。
気泡内の圧力が小さいほどガス伝熱は小さいので、気泡内圧力をできるだけ低くする。気泡内を低圧力にするためには、発泡を真空下で行う方法がある。また、連続気泡を形成して外部と連通させ、外部の雰囲気を真空にして気泡内を真空にする方法がある。
また、高性能断熱材の見かけ密度が同じであれば気泡が細かいほど熱伝導率が低下する。気泡中のガス対流を抑制し伝熱を抑えるからである。そこで、気泡の径はできるだけ小さくすることが好ましい。なお、同じ見かけ密度で気泡径を小さくすると気泡の仕切壁が薄く弱くなるが、ウィスカーを添加することにより補強することができる。
本実施例の高性能断熱材は、発泡体材料を発泡させて赤外線が透過して熱伝導率が上昇する程度に低密度に形成された断熱材であるが、ウィスカーを添加することにより赤外線の透過を減少させ熱伝導率を減少させると共に構造的な強度を強化したものである。さらに、気泡の平均径を小さくすることにより熱伝導率の減少を図ることが好ましい。
本実施例の高性能断熱材は、住宅用、家電用など各種の用途に利用できるが、特に低温貯蔵容器の断熱材としてあるいはその構成部品として最適に利用することができる。
図6は本発明の高性能断熱構造を概念的に説明する断面図である。
本実施例の高性能断熱構造は、液化天然ガス貯蔵槽や液化石油ガス貯蔵槽など、極低温構造物の表面を被覆して保冷する断熱構造である。液化天然ガス貯蔵槽の表面温度は111Kと考えればよい。
本実施例の高性能断熱構造20は、保冷しようとする貯槽の容器壁21の表面にクライオポンプシステムのクライオ面22を配置し、その上から微細な連続気泡で形成された発泡体断熱材からなる低温断熱部材23を被覆し、さらにその上に気密シート24を被覆して密封し、さらに高性能断熱材で構成される高温断熱部材25を配置し、それらの表面に防水・防湿シート26を被覆して構成される。
アルミシート類を利用した防水・防湿シート26は、太陽光をよく反射し熱線が高温断熱部材25に直接入射することを防ぐ効果があるが、暖まった防水・防湿シート26から発生する赤外線は高温断熱部材25に照射する。
高温断熱部材25に使用する高性能断熱材は、発泡体材料に赤外線遮断物質を加えて、発泡体材料自体の発泡体における熱伝導率が最低になる密度より低い密度になるように発泡させたものである。実施例1に係る高性能断熱材を用いることができることは言うまでもない。
なお、本実施例の断熱構造は、十分対策を講ずることにより、断熱材の強度が多少低下しても利用できるので、赤外線遮断物質として、カーボンウィスカーや酸化亜鉛ウィスカー等の針状単結晶、炭素繊維等の細長い硬質繊維物体などの他に、熱伝導率低減に大きな効果がある酸化鉄粉末などを使用することができる。
クライオポンプシステムは、クライオ面22に凝縮した気体分子を排除して低温断熱部材23を真空に維持する機能を有する。真空を維持するため、気密シート24は十分気密が保てるように精密に施工する。気密シートにはグラファイトシートなどが使用される。クライオポンプシステムは強力なので、比較的容易に低温断熱部材23内の圧力を100〜1000Paに維持することができる。
低温断熱部材23は、発泡体断熱材からなり、容器壁21と気密シート24の間に充填される。内部に形成される気泡はごく微細な連続気泡であって、雰囲気を真空にすれば連続気泡の内部も真空になって、熱伝導率が十分に低くなるようになっている。なお、絶対圧力が低いほどガス伝熱が小さくなり、断熱材の熱伝導率が低下する。
さらに、気泡の平均径を気泡ガスの平均自由行程水準にすると、気体同士の衝突が減るため見かけの熱伝導率が急減し、ガス静止熱伝導率と比較しても約1/3まで低減する。したがって、気泡径をガスの平均自由行程長さ以下にすることが好ましい。
なお、ガス分子の平均自由行程L(m)は、温度T(K)、圧力P(Pa)、分子平均直径σ(m)を用いて次式で求めることができる。
L=3.11×10-24T/(Pσ2
ガス分子の平均自由行程は、室温大気圧下では0.1μm程度であるが、絶対圧力に反比例するので低圧領域では大きくなって、10Paで1mm程度になる。したがって、実現可能な気泡内圧力と気泡径の組み合わせを選択することができる。
気密シート24は断熱構造の表面温度(300K)と液化天然ガス貯蔵槽の表面温度(111K)の中間に当る200Kになる辺りに設置される。したがって、低温断熱部材23は平均150Kの温度条件下で真空にして使用することになるので、形成される気泡の径と使用時の絶対圧力・絶対温度の組み合わせを適切に選択して、平均径と平均自由行程の関係を整合させることができる。
本実施例では、低温断熱部材23は150K、1000Paのあたりで使用されるので、空気中のガス分子の平均自由行程は、ほぼ7μmと評価される。さらに、100Paで運転する場合は、平均自由行程は70μm程度になる。
なお、低温断熱部材23の発泡体断熱材には外部の赤外線が直接照射することがなく、気密シート24の約200Kにおける再輻射を考えればよいので、赤外線遮断物質を添加する必要性は小さいが、真空下で使用するためマトリックスの補強を目的としてウィスカーや繊維性補強材を添加することは好ましい。
高温断熱部材25に使用される高性能断熱材は、ごく低密度に形成されるので単位体積当たりの重量が小さいのに、赤外線遮断物質を添加したため断熱効率がよいので従来より薄いものを使用することができる。熱伝導率の改善率は約20%であるから、使用量も20%節約できる。
また、低温断熱部材23に使用される断熱材も従来機構と比較して熱伝導率が1/3程度になるので、材料として2/3が節約できることになる。
本発明の高性能断熱材の1実施例を表わす概念的な構成図である。 本実施例に使用する赤外線遮断物質の比較表である。 本実施例の高性能断熱材に関する赤外線透過率の測定例を示すグラフである。 本実施例の高性能断熱材に関する赤外線反射率の測定例を示すグラフである。 本実施例の高性能断熱材の性能を説明する表である。 本発明に係る高性能断熱構造の1実施例を概念的に説明する断面図である。 硬質ウレタンフォームの密度と熱伝導率の関係を示す図である。
符号の説明
10 高性能断熱材
11 発泡体マトリックス
12 気泡
13 針状単結晶
20 高性能断熱構造
21 容器壁
22 クライオポンプシステム
23 低温断熱部材
24 気密シート
25 高温断熱部材
26 防水・防湿シート

Claims (3)

  1. 保冷する容器の壁表面にクライオポンプシステムのクライオ面を配置し、
    該壁表面の上に発泡体断熱材からなる低温断熱部材を被覆し、
    該低温断熱部材の上に気密シートを被覆し、
    該気密シートの上に発泡体材料に赤外線遮断物質を加えた高性能断熱材で構成される高温断熱部材を被覆し、前記赤外線遮断物質は、径0.3〜0.6μm長さ5〜15μmのカーボンウィスカー、または径0.2〜0.3μm長さ2〜50μmの酸化亜鉛ウィスカーであることを特徴とする高性能断熱構造。
  2. 前記高温断熱部材の発泡体材料は硬質ウレタン発泡体であって、発泡により見かけ密度が10〜30kg/mになるようにしたことを特徴とする請求項記載の高性能断熱材。
  3. 前記低温断熱部材は、平均径が1〜70μmの連続気泡がその内部に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の高性能断熱構造。
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