JP4891786B2 - 超硬複合化金属体およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は超硬複合化金属体および熱間等方圧縮処理(Hot Isostatic Pressing 以下、HIP処理と記す)工程を備えた該超硬複合化金属体の製造方法に関する。
超硬合金はタングステンカ−バイド(以下「WC」と記す)を主とする硬質物質成分とコバルト(以下「Co」と記す)やニッケル(以下「Ni」と記す)の結合相金属成分からなる焼結材料で、硬度が高く、延性は規定されていない合金である。この超硬合金の使用にあたっては、その特性である高面圧下での耐磨耗性を効果的に利用するために、主要な構造材料であり、延靭性のある鋼鉄との力学的結合がなされて使用される場合が多い。
上記超硬合金と鋼鉄の間の結合処理はロー付け、嵌め合い、ネジ止めの工法でなされる。一方、溶接は超硬合金のビードワレを避けることが出来ないので全く実施されない。
固相拡散接合法はビードを発生させない過程でなされて溶接と同等の接合強度が得られる工法とされるが、超硬合金に対して拡散接合される相手材が鋼である特定の場合には、接合部位の強度が両部材の強度よりも低く、実質的に零となる現象(以下「拡散接合脆性」と記す)が発生するという問題が知られている。
そこで、超硬合金との拡散接合において接合脆性を発生せしめない冶金特性(以下「超硬可接性」と記す)が考究され、超硬可接性である金属・合金(以下「超硬可接性金属」と記す)が考えられた。すなわち、超硬可接性金属と超硬合金とを拡散接合させた複合体では接合部に偏した破断が生じないという有用な特徴が具現する。超硬可接性が特定される金属は、(1)超硬合金、(2)硬質物質と鉄系金属を結合した合金(以下「結合合金」と記す)(特許文献1参照)、(3)炭素(以下「C」と記す)−タングステン(以下「W」と記す)−残部Coおよび/またはNi系の溶解・鋳造による合金(以下「溶製合金」と記す)(特許文献2参照)などである。
超硬可接性金属は硬度、延靭性、熱膨張率、鋼との接合性などの特性が更に考慮されて使用される。更に、超硬合金と超硬可接性金属を拡散接合させてなす2層の複合化金属体(以下「超硬複合化金属体」と記す)が有用であるので、その研究が推進された。鋼との接合性がある場合は超硬合金と鋼の中間に配してなる3層の複合化金属体が形成される。また、比較的低硬度で低WC量の超硬合金種と高WC量の超硬合金種を複合化した組成層化超硬合金体がある。
(4)拡散接合をなす方法として摩擦圧接法,通電圧接法があるが、これらの方法は接合部位に局部加熱がなされることや拡散時間が限られるという理由のために、内部応力が高い状態や、接合部の空疎・空孔の消滅が不十分な状態が生じ易い。このため、超硬合金が係わる複合化金属体の形成にこれらの方法を適用した場合に、加工時の超硬合金部のワレや使用時の超硬合金寿命の不足などの安定性に欠けるという問題があった。
(5)そこで、HIP処理が被処理物全体を均一に加熱・保持し、かつ、拡散接合を接合面の全面で任意の時間にわたり実行する方法であるので、超硬合金が係わる拡散接合の施工に好適な方法として適用が望まれた。また、超硬合金の焼結後のHIP処理が内部の空孔欠陥を消滅させる作用があることから、超硬合金の寿命向上やワレ防止に有効であるとされているので、この点からも、超硬合金を部材とする複合化金属体を安定的に形成する方法としてHIP処理の適用が望まれている。
しかしながら、超硬複合化金属体に係わる複合化施工を、従来の方式によるHIP処理でなした場合は以下の問題が生じる。
従来方式のHIP処理では、超硬合金と超硬可接性金属の部材とを組み合せて鋼製密閉缶に挿入し、外周から高温・高圧気体を作用させて、鋼製缶が外表でなるHIP被処理体を得る。該処理において、密閉缶内では組み合せた部材の合わせ目の隙間が閉塞し、緻密に一体化した超硬複合化金属体が形成され、かつ同時に、超硬複合化金属体に鋼缶材が全外周から拡散接合で一体化される。
HIP被処理体は小別体に分割するためのワイヤ−放電切断や、外周缶鋼材部は切削と研磨で除去する加工(以下「脱缶加工」と記す)を必要とし、また、型彫放電加工や研磨加工などの製品形状加工がなされる。しかしながら、従来のHIP処理による被処理体は外周加工の初期的段階で、内部の超硬複合化金属体の超硬合金部にワレが発生する特有の現象があって、被処理体に加工を付加することが困難である。また、減圧密閉缶の製造と脱缶加工は高コストであり製品の市場を拡大することが困難である。
特開平06−71502号公報 特開平11−80868号公報
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、超硬合金部にワレが発生しない超硬複合化金属体およびその製造方法の提供を目的とする。
本発明の超硬複合化金属体は、超硬合金部材と、該超硬合金部材以外の超硬合金、硬質物質と鉄系金属を結合した結合合金、または、C−W−残部Coおよび/またはNi系の溶解・鋳造による溶製合金とを熱間等方圧縮処理により複合一体化してなる超硬複合化金属体であって、上記超硬合金部材と他の金属部材との接合部外周に延性のある、超硬合金、硬質物質と鉄系金属を結合した結合合金、または、C−W−残部Coおよび/またはNi系の溶解・鋳造による溶製合金を配して、固着処理をして一体の超硬合金固着体とし、該超硬合金固着体にガラスを介して高温・高圧気体を作用させる熱間等方圧縮処理により得られることを特徴とする。
本発明の超硬複合化金属体の製造方法は、上記超硬合金固着体をガラス粉粒体中に埋設し、その後ガラス粉粒体を減圧下で溶融して冷却することにより包摂処理を施す第1工程と、該ガラスの外周から高温、高圧の気体を作用させて超硬合金固着体に熱間等方圧縮処理を施す第2工程とを備えてなる、超硬複合化金属体の製造方法であって、上記第2工程は、ガラス固化体処理工程と、その後のガラス溶融体処理工程とからなり、ガラス固化体処理工程は、500℃以上、上記ガラスの加工点温度以下の温度で熱間等方圧縮処理を施す工程であることを特徴とする。
本発明の超硬複合化金属体は、鋼缶材が外周で一体化していないので脱缶加工が不要ある。また、該超硬複合化金属体は従来方式と同等強度の応力があるが、超硬合金外郭に脆化部がないので、外周加工時および/または加工時に超硬合金にワレが発生しない。更に、接合部や内部の空孔欠陥が十分に解消されているので、使用時の安定性も高い。
従来方式のHIP処理で形成された、外周で鋼缶材が一体化した超硬複合化金属体に、加工を付加する際に内部の超硬合金に発生するワレ(以下「加工付加内部ワレ」と記す)の発生原因について、本発明者は以下の(i)〜(v)の如く考察した。本願発明はこのような考察結果に基づいてなされたものである。
(i)超硬合金は、図1に示す、「Co−WC;擬2元系平衡状態図」に示すように、WC63重量%以上の共晶点をこえる組成範囲と1320℃の共晶温度をこえる温度範囲で加熱・保持する処理(いわゆる、液相焼結処理または結合処理)が施されて、常温で「C−W−残部Co;γ相」の固溶体がWC粒と結合した「γ+WC」の微視的組織をもつ合金である。「Co−WC;擬2元系平衡状態図」は「Ni−WC;擬2元系」も同様である。また、1320℃の共晶温度は1280℃であるとの説もある。
(ii)超硬合金には強度や寿命性能に大なる影響を及ぼす脆化現象が知られている。詳しくは、図2に示す、「W−C−Co;3元系のCo隅平衡状態図」(なお、「W−C−Ni;3元系」も同様である)の(2a)に示す如く、「γ+WC」相と隣接してη相が存在する。ηは、図2の(2b)に示す如く、「γ+WC」から低C(および/または)高Wとなる組成相であり、超硬合金内に生成して脆化部となる。超硬合金内の応力の強度が該脆化部の強度を越えた場合に、その部分を起点とするワレが発生し、高硬度,低延性の超硬合金内で急速に伝播する現象がおこる。
(iii)金属部材間の拡散接合処理においては、部材間の隙間が閉塞する。すなわち空孔の拡散によって合わせ目の隙間の空疎が消滅する。続いて、部材金属の拡散による組成傾斜分布層が接合界面を基準として双方の部材に生じる。その結果として、両部材の金属成分系の平衡相が組成傾斜分布層中に生成する可能性が生じる。上記の超硬合金と鋼の間の接合脆性は該η生成事象の結果であって、接合部の超硬合金中Cの鋼中への拡散・逸散による低C化によるη生成現象であると本発明者は考察した。
(iv)上記の「加工付加内部ワレ」は、HIP被処理体に加工を付加した際に、内包される超硬合金内の応力が部分的に大となり、すなわち応力集中が起こり、応力が集中した脆化部を起点として超硬合金がワレる現象であると考察した。この際、ワレの駆動力は超硬合金と超硬可接性金属の複合化に起因する内部応力である。
(v)HIP被処理体には、超硬合金の部材と超硬可接金属の部材が高温で拡散接合されて結合された後に常温に至る行程を経ることによって、内包される超硬複合化金属体部に両者の熱膨張の差に起因した内部応力が不可避的に発生することが知られている(例えば特開2003−53554号公報)。
ここで、超硬合金の熱膨張率は、硬質物質成分の含有量に依存するが、商用の超硬合金のそれは概ね[7.0×10-6/℃以下]であり、超硬可接金属の熱膨張率は、結合合金は[8.5×10-6〜13.0×10-6/℃]であり(特許文献1)、後述する実施例に示すように溶製合金の熱膨張率は[13×10-6/℃]であるので、HIP被処理体内の超硬複合化金属体部は常温で応力を固有し、また、その強度が非常に高い場合がある。
しかして、加工付加によって応力状態が変化して、すなわち応力変化と集中により、応力が脆化部の強度をこえる事態が容易に発生すると推察される。また、超硬合金の加工に重用される放電加工はスパークによるヘアークラック発生を伴うので、加工面の微視的応力集中点の発生が不可避であるとされる。
すなわち、内包される超硬複合化金属体部の超硬合金に脆化部が存在する場合は、加工付加時にワレが誘起される可能性が極めて高いと推察され、HIP被処理体の「加工付加内部ワレ」の対策としては、内包される超硬複合化金属体部の超硬合金外郭の脆化部発生防止が第一義であると本発明者は考察した。
本発明に使用するWCを主成分とする超硬合金は高面圧下での耐磨耗性を応用するべく、延靭性がある鋼鉄と結合されて使用される合金であればよい。具体的には、WCを主とする硬質物質成分とCoおよび/またはNiとの結合相金属成分からなる焼結材料で、硬度が高く、商用の技術基準では延性は規定されていない合金である。WCは70重量%をこえる量含まれていることが好ましい。商用合金の例としては概ね30重量%Co以下であって、13重量%Coを含み残部がWCである超硬合金や6重量%Co−残部WC超硬合金が挙げられる。
また、超硬合金の平均炭化物粒度は1.0μ以上が好ましい。平均炭化物粒度1.0μ未満の場合、単体の正常な状態であっても、加工付加時にワレが誘起される可能性が極めて高い。このため、平均炭化物粒度1.0μ未満の超硬合金は、応力を固有する超硬複合化金属体の部材として複合化するのは不適である。なお、超硬合金の炭化物粒度は原材料であるWCの粒度によって制御される。
上記超硬合金部材と複合一体化される他の金属部材は、延性のある超硬可接性金属が好ましい。延性のある超硬可接性金属はWCが30重量%以下であることが好ましい。WCが30重量%以下であることにより固着処理が可能になる。
超硬可接性金属としては、(1)超硬合金、(2)硬質物質と鉄系金属を結合した、上記結合合金、(3)C−W−残部Coおよび/またはNi系の溶解・鋳造による、上記溶製合金などが挙げられる。また、超硬可接性金属は、その硬度、延靭性、熱膨張率、鋼との接合性などに優れた金属部材であることが好ましい。
上記結合合金の場合、熱膨張の特性のみを考慮するとWCを20〜80重量%含むことが望まれているが、延性を考慮するとWCは30重量%以下であることが好ましい。このことは、後述する実施例2に示されている。
上記溶製合金の場合、WCを10〜30重量%含むことが好ましい。WCが30重量%以上では延性が不足し、10重量%以下では機械的強度が不足する。
超硬合金と超硬可接性金属とを固着処理してHIP処理する。図3は、超硬合金と超硬可接性金属との超硬合金固着体1をガラス固化体2で包摂した状態の模式図である図3の。7は金属製開放容器を表す。固着処理は必須であって、超硬合金3と超硬可接性金属の部材4とを組み合せ、機械的操作によって部材間の合わせ目の開口幅を狭くおよび/または閉口させて、同時に部材間を固定して全体を一体に保持する処理をなす。該処理によって超硬合金固着体の合わせ目の隙間に対するガラス侵入を防止する状態を整える。
この固着処理によって合わせ目にガラスの侵入を防ぎ,ガラスを介した加圧によって超硬合金固着体に対して圧力が等方的に伝播し、超硬合金固着体は全体が緻密に一体化する。ここで、本発明におけるHIP処理で形成された超硬複合化金属体内の応力はガラスを用いない従来方式のHIP処理と同等である。
超硬合金固着体1を得るための固着処理は、第一段階で超硬合金3と超硬可接性金属4の部材を組み合せ、第二段階で「超硬可接性であって延性を併せて有する金属」(以下「延性のある超硬可接性金属」と記す)の部材を少なくとも一個以上最外周に配して組み合せ、該延性のある超硬可接性金属5の部材を塑性変形させて他部材に固定する操作である。固着処理の態様を図4により説明する。図4は、超硬合金固着体の断面形状模式図を示す。図4において、太線部分は合わせ目を表す。
(イ)超硬合金3の部材(以下「甲部材」と記す)と超硬可接性金属4の部材(以下「乙部材」と記す)を当接して組み合わせる。更に、甲部材と乙部材とに接して,且つ、両者が接してなす合わせ目の隙間を覆う様に延性のある超硬可接性金属5の部材(以下「丙部材」と記す。)を配して組み合わせる。
その態様は、図4(4a)に示す「突合せ」と、同(4b)および同(4c)に示す「嵌め合い」と、び同(4d)、同(4e)に示す「突合せと嵌め合いの折衷」による。乙部材は公知の超硬合金または前述の焼結合金または溶製合金である。ここで、乙部材と丙部材は特性が許容する場合は一体化して形成することができる。その態様は図4の(4f)、同(4g)、同(4h)、同(4i)、同(4j)にそれぞれ示す。(4f)は(4a)の、(4g)は(4b)の、(4h)は(4c)の、(4i)は(4d)の、(4j)は(4e)の、乙部材と丙部材との一体化の状態をそれぞれ示す。
さらに、甲部材は2個以上積層等して使用できる(4a)、(4b)、(4c)、(4d)、(4f)、(4g)、(4h)、(4i)。乙部材は2個以上積層等して使用できる(4e)。丙部材は2個以上積層等して使用できる(4j)。
(ロ)全部材を加圧して密着させた状態で、丙部材を塑性変形させて甲部材および/または乙部材に固定する操作をなす。該操作によって超硬合金固着体は定形を保持する状態になり、ガラスに接触する合わせ目の隙間は閉口し、その開口幅は通常略10μm以下になる。丙部材の塑性変形は、甲部材にたいして圧縮力が作用するように配してなされるのが好ましい。甲部材である超硬合金は延性が規定されていないためである。
(ハ)部材の当接する面の加工精度とアラサは、従来方式のHIP処理と同等であればよい。固着強度は焼付け、加熱などで補完してもよい。ただし、加熱温度は、部材での融体生成を避ける必要があるので、共晶温度以下に限られる。
固着処理に加えて、開口幅と閉口状態を修整するために、金属塑性加工的手段による閉口処理を丙部材になしてもよい。金属塑性加工的手段とは、コイニング、スエージング、転造、ショット、鍛金などの加工方法である。組み合わせと固着処理と閉口処理は同時、同一操作に含んでもよい。必要に応じて、超硬合金固着体の隙間の開口や部材の形状などに応じてこれらの手段を一つ以上選択して行なう。閉口処理は丙部材自体の溝,疵および開放孔にも有効であり、合わせ目の隙間の閉塞と丙部材自体の溝、疵および開放孔の閉塞を同時に一回のHIP処理でなすことが出来る。
(ニ)形成された超硬複合化金属体は「耐加工性がある」ので、丙部材部は切削と研磨で容易に除去できる。丙部材はHIP処理後の除去が予定される場合は固着処理に必要な最低量とすればよい。
包摂処理によって超硬合金固着体をガラス固化体で包摂した状態にする包摂処理を施す。
(ホ)合わせ目の開口幅より大なる粒子径を有するガラス粉、粒を収納する金属製開放容器中に超硬合金固着体を埋設し、該ガラスの加工点温度以上〜1280℃未満(共晶温度)で加熱・溶融して単層の浴を生成せしめ、浴中で保持して冷却する。
(ヘ)ガラスの溶融は減圧下でなし、脱気とガラス中のガスと気泡を除去し、部材の酸化を防いでガラスとの密着性を確保する。
(ト)ガラス溶融体は表面張力によって合わせ目の隙間の外に留まって単層化し、冷却後にガラス固化体となって超硬合金固着体を包摂する。
(チ)ガラスの種類はソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウ珪酸ガラスなどである。ガラスの加工点温度とはガラスの粘性が1×10−3Pa・sになる温度をいう。加工点温度はソーダ石灰ガラスおよび鉛ガラスの場合は略900〜980℃、ホウ珪酸ガラスおよびアルミノ珪酸ガラス場合は略1200℃である。例えば、ソーダ石灰ガラスで包摂処理する条件は1000℃以上〜1280℃以下,1×10−3気圧以下の真空度,処理時間は0.5〜3時間が好ましい。
(リ)該操作では同一浴中に複数個の超硬合金固着体を装入できる。
HIP処理はガラス固化体処理とガラス溶融体処理とからなる。ガラス固化体処理は昇温・昇圧の初期過程にあって合わせ目の隙間の開口部をガラスの侵入なしに閉塞せしめる。後続のガラス溶融体処理によって隙間の深部を閉塞する過程をなして、緻密に一体化した超硬複合化金属体を形成する。具体的過程を以下に示す。
(ヌ)ガラス固化体処理はガラス固化体で超硬合金固着体を包摂した状態で開始する。処理条件は、500℃以上、ガラスの加工点温度以下、圧力10MPa以上、80MPa以下、処理時間は30分以上が好ましい。固化体処理温度が加工点温度をこえると粘性が低くなり過ぎて隙間の開口部が閉塞する前にガラスが侵入する可能性が有る。又、圧力が10MPa以下では隙間の開口の閉塞が進行しない。該加圧条件は従来公知のHIP処理の昇温、昇圧過程の条件に準ずる。
(ル)ガラス溶融体処理はガラス溶融体の状態で10MPaをこえる圧力で処理を施す過程であり、従来方式のHIP処理に準ずる。ガラス溶融体処理により合わせ目の隙間深部の空疎と空孔を完全に消滅せしめる。しかして、合わせ目にガラス侵入なしに閉塞して緻密に一体化した超硬複合化金属体を形成することが出来る。
(オ)溶融体処理条件は、例えば、温度は下限950℃〜上限1280℃,圧力100〜180MPa、処理時間は1〜10時間が好ましい。処理温度が950℃以下の場合は閉塞が進行しない。被処理体に発生する共晶融体がガラス中に浸出するので1280℃以上のHIP処理は避ける必要がある。
複合化金属体は構成する部材金属の熱膨張の差によって応力が不可避的に発生し、応力ワレの原因となる。2層の複合化金属体は応力ワレを防止するためにその差を30%以下にすることが通常望ましいとされている。また、特許文献1には、超硬合金と鋼の中間に超硬可接性金属を配設して3層の複合体を形成する部材について、その熱膨張率を両者の中間[8.5×10-6〜13.0×10-6/℃]に設定して、複合体内の応力を緩和してワレを防止する方法が開示されている。
本発明による超硬複合化金属体はHIP処理によるので安定性が高く、かつ、超硬合金外殻に脆化部がないので、熱膨張率が[13×10-6/℃]の超硬可接性金属を直接複合化しても応力ワレが発生しない。該熱膨張率は鉄族金属の熱膨張率と同等レベルである。
実施例1
(i)延性のある超硬可接性金属5(上記丙部材)の製造
延性のある超硬可接性金属5として、20重量%WC−残部Coである溶製合金を製造した。
市販の金属溶解用原料「C粉(≦250メッシュ);1.2重量%,W塊(≦20mm);18.8重量%,Co粒(≦10mm);残部%、および各々の不純物元素としての総Fe≦0.5重量%」を配合して1650℃で誘導炉溶解し、Φ40×L100の砂型鋳塊を得た。該鋳塊で熱膨張率を測定した。熱膨張率は実測で13×10-6/℃である。
実施例1で用いるの超硬可接性金属5として、上記鋳塊を旋盤加工で外径Φ30.05;+0.03−0、貫通孔内径Φ20.01;+0.02−0×L35の形状(以下「丙形状」と記す)にした。加工面の表面性状許容限度はRz2.0μm(JISB0031)である。部材は浸透探傷試験で全面に反応はなかった。図5において部材5として示す。
(ii)超硬可接性金属4(上記乙部材)の製造
超硬可接性金属4として、(i)の鋳塊を旋盤加工でΦ20.00;+0−0.01×L15.0の形状(以下「乙形状」と記す)にした。加工面の表面性状許容限度はRz2.0μm(JISB0031)である。部材は浸透探傷試験で全面に反応はなかった。図5において部材4として示す。
(iii)超硬合金3(上記甲部材)の加工
超硬合金3として、市販の[13重量%Co−残部WC超硬合金]を用いた。「平均炭化物粒度2μm、熱膨張率4.5×10-6/℃」の市販品を研磨加工でΦ20.00;+0−0.01×L15.0の形状(以下「甲形状」と記す)にした。加工面の表面性状許容限度はRz0.5である。部材は浸透探傷試験で全面に反応はなかった。図5において部材3として示す。
(iv)超硬可接性金属6の製造
図5に示す部材6として、超硬可接性金属5の鋳塊を旋盤加工でΦ20.00;+0−0.01×L5.0の形状にした。加工面の表面性状許容限度はRz2.0μm(JISB0031)である。部材は浸透探傷試験で全面に反応はなかった。
(v)固着処理として、部材5の貫通孔に部材3、部材4、部材6とを挿入し、全荷重50kgfで加圧して押さえ、部材5を全荷重5000kgfでダイス圧入し外径Φ30.00;+0.02−0×L35の実施例1で用いる超硬合金固着体(以下「固着体」と記する)を得た。この形状を図5の(5a)に示す。合わせ目の隙間の開口幅は光学顕微鏡で10μm以下であることを確認した。
(vi)包摂処理として、該固着体5個を粒径250〜1000μmのソーダ石灰ガラス粒を収納したΦ100×L200鋼管製容器中(片端にJIS SS400鋼板を当てTIG溶接)に埋設した。
(vii)HIP処理として、該容器を真空炉中で真空度1×10-4気圧、温度1030℃で0.5時間加熱、静置、冷却した。容器内のガラスは単層化し、固着体はガラス固化体で包摂された。該容器をそのままHIP炉に挿入しHIP処理をした。処理条件を表1に示す。
比較例1
比較例1で用いる部材5として実施例1の鋳塊を上記丙形状にした。以下、材質表記を簡略化し、各部材の加工法および寸法公差の記述を省略する。部材3として実施例1の鋳塊を乙形状にした。部材4として[13%Co超硬]を甲形状にした。部材6として[JIS SS400鋼]をΦ20.00×L5.0にした。加工面の表面性状許容限度は実施例1と同様である。各部材は浸透探傷試験で反応はなかった。部材3、4、5、6を使用し、実施例1と同様の固着処理をして比較例1の固着体を得た。図5の(5a)に形状を示す。合わせ目の隙間の閉塞を実施例1と同様に確認した。該固着体5個を同様に包摂処理とHIP処理を行なった。処理条件を表1に示す。
比較例2
比較例2で用いる部材5として、実施例1の鋳塊を上記丙形状にした。部材3として[6%Co超硬]を乙形状にした。部材4として[13%Co超硬]を甲形状にした。部材6として[JIS SS400鋼]をΦ20.00×L5.0にした。加工面の表面性状許容限度は実施例1と同様である。部材は浸透探傷試験で反応はなかった。実施例1と同様の固着処理をして比較例2の固着体を得た。図5の(5a)に形状を示す。合わせ目の隙間の閉塞を実施例1と同様に確認した。該固着体5個を同様に包摂処理とHIP処理を行なった。処理条件を表1に示す。
上記実施例および各比較例で得られた各HIP被処理体をショットブラストで表面を清浄化処理した後に外表面全面の浸透探傷試験を行なった。結果を表1に示す。
各被処理体をワイヤー放電切断「条件:線径0.2Φ、材質真鍮、切断量100mm2/h、電圧100V」で接合面に対して垂直2等分縦断して、切断面の浸透探傷試験を行なった。なお、超硬合金の切断加工法は実用的にはワイヤー放電切断に限定される。結果を表1および図6の(6a)に示す。図6は、実施例と比較例の被処理体の縦断面浸透探傷試験結果の模式図である。なお、図6において、実線は外郭線、太実線は浸透探傷試験において浸透探傷反応箇所、破線は光沢変化線をそれぞれ表す。
Figure 0004891786
実施例1と比較例1および比較例2は外表面浸透探傷試験で全数5個中(以下記述省略)全く反応箇所がなく、ガラスの侵入、隙間の未閉塞、外表に開口するワレはない。
実施例1は切断面浸透探傷試験で全く反応箇所がない。比較例1は部材4と部材6との境界部に反応があり、部材4の隅に接合面に対し角度略45度方向のワレの反応箇所(以下「45度ワレ」と記す)がある。比較例2は部材4と部材6との境界部に反応がある。
比較例1と比較例2は外表面で反応箇所がなく、切断面で部材4と部材6との境界部に反応がある。それゆえ、HIP処理で閉塞した[13%Co超硬]と[SS400鋼]との合わせ目に脆化部が生じ、ワイヤー放電切断時に該脆化部が破壊して反応箇所になったと考えられる。
実施例1は外表面で反応箇所がなく、切断面に反応がない。それゆえ、[13%Co超硬]と[20%WC−Co溶製合金]の境界部ではHIP処理時に脆化部は生じないと考えられる。
実施例1と比較例1で、HIP被処理体の内包された[13%Co超硬]と[20%WC−Co溶製合金]の複合化金属体部において、[13%Co超硬]の頭部外郭に脆化部がある比較例1の切断面に「45度ワレ」があり、脆化部のない実施例1に「45度ワレ」がない。比較例1と比較例2で、内包された複合化金属体部において、頭部外郭に脆化部がある[13%Co超硬]に[20%WC−Co溶製合金]が複合化している場合に「45度ワレ」があり、[6%Co超硬]が複合化している場合は「45度ワレ」はない。それゆえ、[13%Co超硬]の切断面の{45度ワレ」は、ワイヤー放電切断時に[13%Co超硬]の頭部外郭の脆化部に破壊が生じ、該破壊部を起点としたワレが[13%Co超硬]内を伝播して生じたものと考えられ、ワレの駆動力は熱膨張率の大なる[20%WC−Co溶製合金]が複合化したことによる内部応力と考えられる。
実施例2、比較例3および比較例4
実施例2で用いる部材5として実施例1の鋳塊を丙形状にした。部材3として実施例1の鋳塊を乙形状にした。部材4として[6%Co超硬]を甲形状にした。部材6として実施例1の鋳塊をΦ20.00×L5.0にした。
比較例3で用いる部材5として実施例1の鋳塊を丙形状にした。部材3として実施例1の鋳塊を乙形状にした。部材4として[6%Co超硬]を甲形状にした。部材6として[JIS SS400鋼]をΦ20.00×L5.0にした。
比較例4で用いる部材5として実施例1の鋳塊を丙形状にした。部材3として[13%Co超硬]を乙形状にした。部材4として[6%Co超硬]を甲形状にした。部材6として[JIS SS400鋼]をΦ20.00×L5.0にした。
上記各々の部材の加工面の表面性状許容限度は実施例1と同様である。各々の部材は浸透探傷試験で反応はなかった。実施例1と同様の固着処理を行なって固着体を得た。図5の(5a)にその形状を示す。合わせ目は実施例1と同様に閉口していることを確認した。
各々の固着体5個を実施例1と同様に同様に包摂処理とHIP処理をした。処理条件を表1に示す。また、外表面の浸透探傷試験結果を表1に示す。縦断面の浸透探傷試験を表1および図6の(6b)に示す。
実施例2、比較例3と比較例4は外表面で全く反応箇所がない。
実施例2は切断面で全く反応箇所がない。比較例3は部材4と部材6との境界部に反応があり、部材4の隅に「45度ワレ」の反応箇所がある。比較例4は部材4と部材6との境界部に反応がある。
比較例3と比較例4は外表面で反応箇所がなく、切断面で部材4と部材6との境界部に反応がある。それゆえ、HIP処理で閉塞した[6%Co超硬]と[SS400鋼]との合わせ目に脆化部が生じ、ワイヤー放電切断時に該脆化部が破壊して浸透探傷試験の反応箇所になったと考えられる。
実施例2は外表面で反応箇所がなく、切断面で反応がない。それゆえ、[6%Co超硬]と[20%WC-Co溶製合金]の境界部ではHIP処理時に脆化部は生じないと考えられる。
実施例2と比較例3で、HIP被処理体の内包された[6%Co超硬]と[20%WC−Co溶製合金]の複合化金属体部において、[6%Co超硬]の頭部外郭に脆化部がある。比較例3の切断面に「45度ワレ」があり、脆化部のない実施例2に「45度ワレ」がない。比較例3と比較例4で、内包された複合化金属体部において、頭部外郭に脆化部がある[6%Co超硬]に[20%WC−Co溶製合金]が複合化している場合に「45度ワレ」があり、[13%Co超硬]が複合化している場合は「45度ワレ」はない。それゆえ、[6%Co超硬]の切断面の[45度ワレ」は、ワイヤー放電切断時に[6%Co超硬]の頭部外郭の脆化部に破壊が生じ、該破壊部を起点としたワレが[6%Co超硬]内を伝播したものと考えられ、ワレの駆動力は熱膨張率の大なる[20%WC-Co溶製合金]が複合化したことにとる内部応力と考えられる。
上記比較例1と比較例2との比較、および、比較例3と比較例4との比較から、超硬合金と[20%WC-Co溶製合金]を複合化するHIP処理において、境界部に脆化部は生じないことが確認される。
また、実施例1と比較例1との比較、および、実施例2と比較例3との比較から、HIP被処理体内の熱膨張率が小なる超硬合金と熱膨張率が大なる[20%WC−Co溶製合金]の複合化金属体部において、超硬合金の頭部外郭に脆化部がなければ、ワイヤー放電切断時の「45度ワレ」は生じないことが確認される。
実施例3、実施例4、実施例5および比較例5
実施例3で用いる部材5として実施例1の鋳塊を30.05−Φ20.01×L30の丙形状にした。この形状は、長さLが実施例1で用いた丙形状の長さにたいして5mm縮小された。この形状は、部材6の部分がない形状である(以下、丙(−5)形状と記す)。部材3として実施例1の鋳塊を乙形状にした。部材4として[13%Co超硬]を甲形状にした。
実施例4で用いる部材5として実施例1の鋳塊を丙(−5)形状にした。部材3として実施例1の鋳塊を乙形状にした。部材4として[6%Co超硬]を甲形状にした。
実施例5で用いる部材5として、実施例1の鋳塊を丙(−5)形状にした。部材3として[13%Co超硬]を乙形状にした。部材4として[6%Co超硬]を甲形状にした。
比較例5で用いる部材5として、実施例1の鋳塊を丙(−5)形状にした。部材3として[13%Co超硬]を乙形状にした。部材4として[6%Co超硬]を甲形状にした。
上記各々の部材の加工面の表面性状許容限度は実施例1と同様である。各々の部材は浸透探傷試験で反応はなかった。実施例1と同様の固着処理を行なって固着体を得た。図5の(5b)にその形状を示す。合わせ目は実施例1と同様に閉口していることを確認した。
固着体を実施例1と同様の包摂処理とHIP処理をした。処理条件を表1に示す。なお、比較例5のHIP処理温度を950℃に変更した。
外表面浸透探傷試験の結果を表1示す。切断面浸透探傷試験の結果を表1および図6の(6c)に示す。
実施例3、実施例4、実施例5は外表面で全く反応箇所がない。比較例5は外表面で部材5と部材3および部材5と部材4との境界部に反応がある。
実施例3、実施例4と実施例5とは切断面で全く反応箇所がない。比較例5は部材5と部材3、部材5と部材4および部材3と部材4の境界部に反応がある。
実施例1と、実施例2および実施例3〜5との外表面浸透探傷試験結果の比較から、超硬合金の頭部が露出する構造を持つ実施例3〜5の形状を持つ固着体にソーダ石灰ガラスを介するHIP処理を行ない、ガラスの侵入、隙間の未閉塞、外表に開口するワレのないHIP被処理体を形成することができる。
[13%Co超硬]の頭部外郭がソーダ石灰ガラス溶融体と接触するHIP処理がなされた実施例3で、ワイヤー放電切断時の{45度ワレ」が生じない。実施例1と比較例1および実施例3の比較から、[13%Co超硬]の頭部外郭に脆化部がない実施例1には「45度ワレ」は生じないことから、実施例3の[13%Co超硬]の頭部外郭はHIP処理中にソーダ石灰ガラス溶融体と接触しても脆化部は生じないと考えられる。
[6%Co超硬]の頭部外郭がソーダ石灰ガラス溶融体と接触するHIP処理がなされ実施例4で、ワイヤー放電切断時の「45度ワレ」が生じない。実施例2と比較例3および比較例4の比較から、[6%Co超硬]の頭部外郭に脆化部がない実施例2には「45度ワレ」が生じないことから、実施例4の[6%Co超硬]の頭部外郭はHIP処理中にソーダ石灰ガラス溶融体と接触しても脆化部は生じないと考えられる。
[6%Co超硬]と[13%Co超硬]の両者がソーダ石灰ガラス溶融体と接触するHIP処理がなされた実施例5で、両者に「45度ワレ」が生じないので、脆化部は生じないと考えられる。これは、超硬合金にソーダ石灰ガラス溶融体が接触するHIP処理を行なっても超硬合金外郭に脆化部は生じないないと考えられる。
実施例5は外表面で反応箇所がなく、切断面でも反応箇所がない。比較例5は外表面で各部材の境界部に反応があり、切断面でも各部材の境界部に反応がある。それゆえ、比較例5はHIP処理で固着体の合わせ目の隙間の閉塞が完了していないと考えられる。これは、空疎・空孔のない超硬複合化金属体の形成には、HIP処理温度は950℃以上が好適であると考えられる。
実施例6、実施例7、実施例8および比較例6
実施例6に用いる部材5として実施例1の鋳塊を丙(−20)形状にした。この形状は、丙形状における長さLが20mm縮小されている。
[20%WC−Co結合合金]について、市販の超硬合金用原料の「WC粉(粒度3μ);20.0重量%,Co粉(粒度<500メッシュ);残部%」からなる混合粉を、圧力5000kgf/cm2で金型プレス成型しΦ23.0×L17.0の圧粉体をえた。結合処理として、該圧粉体を焼結温度:1420℃、2時間、水素気流中で保持してΦ21×L16の焼結体を得た。なお、処理温度は、図1に示す共晶温度以上〜Co融点温度以下の範囲に設定した。該焼結体で熱膨張率を測定した。熱膨張率は実測で13×10-6/℃である。
実施例6に用いる部材3として、該焼結体を乙形状にした。部材4とし[13%Co超硬]を甲形状にした。
実施例7に用いる部材5として、実施例1の鋳塊を丙(-20)形状にした。部材3として、[20%WC−Ni結合合金]を実施例6の部材3と同様の操作によって乙形状にした。部材4として[13%Co超硬]を甲形状にした。
実施例8に用いる部材5として、実施例1の鋳塊を丙(−20)形状にした。部材3として、[20%WC−40%Co−40%Ni結合合金]を実施例6の部材3と同様の操作によって乙形状にした。部材4として[13%Co超硬]「炭化物粒度2μ」を甲形状にした。
比較例6に用いる部材5として、実施例1の鋳塊を丙(-20)形状にした。部材3として、[20%WC−Co結合合金]を実施例6の部材3と同様の操作によって乙形状にした。部材4として[13%Co超硬]「炭化物粒度2μ」を甲形状にした。
固着処理として、部材5の貫通孔に部材3、部材4を等分挿入し、全荷重50kgfで加圧して押さえ、部材5を全荷重5000kgfでダイス圧入し各例の固着体を得た。図5の(5c)にその形状を示す。合わせ目は同様に閉口していることを確認した。
包摂処理とHIP処理条件は表1による。
外表面浸透探傷試験の結果を表1に示す。切断浸透探傷試験の結果を表1および図6の(6d)に示す。
実施例6、実施例7、実施例8と比較例6は外表面で全く反応箇所がない。また、実施例6、実施例7と実施例8は切断面で全く反応箇所はない。比較例6は部材4に[45度ワレ]の反応箇所がある。
実施例6、実施例7、実施例8は外表面で全く反応箇所がない。この結果と上記各実施例の外表面浸透探傷試験結果から、固着体の外周で固定操作がなされる部材5(丙部材相当)のL(長さ)が段階的に縮小され、各々の固着体にソーダ石灰ガラス溶融体を介するHIP処理を行なって、ガラスの侵入、隙間の未閉塞、外表に開口するワレのないHIP被処理体を形成することができる。それゆえ、(5C)形状を有する固着体の部材5(丙部材相当)のL(長さ)は可及的に縮小することが可能であると考えられる。しかして、実質的に2層でなる固着体に、ソーダ石灰ガラス溶融体を介するHIP処理をなして、ガラスの侵入、隙間の未閉塞、外表に開口するワレのない超硬複合化金属体を形成することができる。
実施例6、実施例7と実施例8は外表面で反応箇所がなく、切断面で反応箇所がない。それゆえ、[20%WC−Co結合合金]、[20%WC−Ni結合合金]および[20%WC−40%Co−40%Ni結合合金]と[13%Co超硬]の拡散接合の境界部に脆化部は生じないと考えられる。
実施例1と比較例1、実施例2と比較例3、および実施例6〜8の切断面浸透探傷試験結果の要約から、超硬合金と公知の超硬可接性金属を複合化するHIP処理において、境界部に脆化部は生じないことが確認された。
比較例1と比較例2、比較例5、および実施例6〜8の切断面浸透探傷試験結果の要約から、熱膨張率が小なる超硬合金と熱膨張率が大なる超硬可接性金属の複合化金属体において、超硬合金の頭部外郭に脆化部がなければ、ワイヤー放電切断時の「45度ワレ」は生じない。また、ソーダ石灰ガラス溶融体を介するHIP処理をなして、ガラス溶融体が接触する超硬合金頭部外郭に脆化部は生じないことが確認された。しかして、熱膨張率が小なる超硬合金と熱膨張率が大なる超硬可接性金属の固着体にソーダ石灰ガラス溶融体を介するHIP処理をなして、ワイヤー放電切断の「45度ワレ」の生じない超硬複合化金属体を形成することができる。
実施例6、実施例7、実施例8と比較例6のワイヤー放電切断で、比較例6は「45度ワレ」が生じ、実施例6は「45度ワレ」が生じない。それゆえ、[13%Co超硬]と[20%WC−Coおよび/またはNi結合合金]がHIP処理で複合化し,[13%Co超硬]の頭部外郭に脆化部がない超硬複合化金属体で、炭化物粒度が0.5μの場合に「45度ワレ」が生じ、2μの場合に「45度ワレ」が生じない。しかして、炭化物粒度が2μの[13%Co超硬]と超硬可接性の結合合金からなる固着体にソーダ石灰ガラス溶融体を介するHIP処理をなして、「45度ワレ」の生じない超硬複合化金属体を形成することができる。
実施例6、実施例7、実施例8と比較例6の超硬複合化金属体で、外周から切削加工と研磨加工でΦ19.95;+0‐0.01×L29.90;+0‐0.10の寸法にして、比較例6はL29.90;+0‐0.10のところで[13%Co超硬]の頭部に略45°円錐のカップ状ワレ(以下「加工ワレ」と記す)が生じ、実施例6、実施例7、実施例8では加工ワレが生じない。それゆえ、[13%Co超硬]と[20%WC−Co結合合金]がHIP処理で複合化し、[13%Co超硬]の外郭に脆化部がない超硬複合化金属体で、炭化物粒度が0.5μの場合に「加工ワレ」が生じ、2μの場合に「加工ワレ」は生じない。しかして、炭化物粒度が2μの[13%Co超硬]と[20%WC−Co結合合金]からなる固着体にソーダ石灰ガラス溶融体を介するHIP処理をなして、「加工ワレ」の生じない超硬複合化金属体を形成することができる。
実施例9
[20%WC−Co結合合金]について、圧力5000kgf/cm2で金型プレス成型しΦ33.0−Φ18.0×L17.0の圧粉体をえた。実施例6と同様の結合処理をなしてΦ31−Φ19×L16の焼結体を得た。
実施例9の部材5として該焼結体を丙(−20)形状にした。部材3として[20%WC−Co結合合金]を乙形状にした。部材4とし[6%Co超硬]「炭化物粒度2μ」を甲形状にした。
実施例6と同様の固着処理をして実施例9の固着体を得た。図5の(5c)にその形状を示す。
固着体の包摂処理として、粒径250〜1000μのホウ珪酸ガラスを使用し、真空度1×10-4気圧、温度1200℃で1時間加熱、静置、冷却した。実施例9においては、ガラスの種類および包摂処理条件が変更された。
実施例9のHIP処理条件は表1による。なお、HIP処理温度が1200℃に変更された。
外表面浸透探傷試験の結果を表1に示す。切断面浸透探傷試験の結果を表1および図6の(6e)に示す。
実施例9は外表面で全く反応箇所がない。それゆえに、丙部材[20%WC−Co結合合金]は[20%WC−Co溶製合合金]と同等の固着作用効果を持つと考えられる。
実施例9は外表面と切断面で全く反応箇所がない。それゆえに、[6%Co超硬]にホウ珪酸ガラス溶融体を介するHIP処理で、超硬合金外郭に脆化部は生じないと考えられる。しかして、上記実施例6等と実施例9の要約から、固着体にガラス溶融体を介するHIP処理をなして、超硬合金外郭に脆化部は生じないことが確認された。
実施例9で、炭化物粒度が2μの[6%Co超硬]と[20%WC−Co溶製合金]からなる固着体にホウ珪酸ガラス溶融体が接触するHIP処理をなして形成した超硬複合化金属体では、ワイヤー放電切断の「45度ワレ」は生じない。この結果、炭化物粒度が2μの超硬合金と超硬可接性金属からなる固着体に、ガラス溶融体を介するHIP処理をなして、ワイヤー放電切断の「45度ワレ」の生じない超硬複合化金属体を形成することができることが確認された。
実施例9の炭化物粒度が2μの[6%Co超硬]と[20%WC−Co溶製合金からなる固着体にホウ珪酸ガラス溶融体を介するHIP処理をなして形成した超硬複合化金属体では、外周切削加工と外周研磨加工でΦ19.95;+0‐0.01×L29.90;+0‐0.10にして、「加工ワレ」は生じない。この結果、炭化物粒度が2μの超硬合金と超硬可接性金属からなる固着体に、ガラス溶融体を介するHIP処理をなして、「加工ワレ」の生じない超硬複合化金属体を形成することができることが確認された。
上記の要約から、超硬合金と超硬可接性金属からなる超硬合金固着体にガラス溶融体を介するHIP処理をなして、ワイヤー放電切断時の「45度ワレ」と「加工ワレ」の生じない超硬複合化金属体を形成することができることが確認された。しかして、超硬合金固着体にガラスを介するHIP処理をなして、熱膨張率が小なる超硬合金と熱膨張率が大なる超硬可接性金属を複合化させ、「耐加工ワレ性がある」超硬複合化金属体を形成することができる。
(1)超硬合金中のη脆化部は微小の存在でも有害であり、加工や使用時の荷重によるワレやカケの原因なるので、その生成を厳密に排除して製造がおこなわれる。外郭に脆化部がある場合は、研磨による除去が不可欠である。本発明による超硬複合化金属体は脆化部がなく,安定性に優れるので、使用時の有用性が保障される。
(2)延性のある超硬可接性金属はビ−ド形成が可能でありHIP処理後に溶接施工ができる。超硬複合化金属体形成後に鋼部材を溶接して付加することによって3層の複合化金属体を簡便に形成できる。また、HIP処理で第3層を付加する場合は、鉄,鉄基合金,鋼,セラミックス、セラミックス−金属基複合材などが可能となる。
(3)銅と超硬合金は相互の溶解度が極めて小さく拡散層が実際的には生成しないので、η非生成であり超硬可接性である。超硬合金外郭部に脆化部が生じないので、HIP処理温度を銅の融点である1083度℃以下に限定して丙部材として使用できる。その際、超硬合金複合化金属体の接合強度や信頼性を上げるために、銅を除去後に1083℃をこえ〜共晶点温度以下でHIP処理や常圧拡散処理を追加することができる。
ロ−材なども同様の用法を想定することができる。
Co−WC;擬2元系平衡状態図である。 W−C−Co;3元系のCo隅平衡状態図である。 超硬合金固着体をガラス固化体で包摂した状態の模式図である。 超硬合金固着体の断面形状模式図である。 実施例と比較例の超硬合金固着体の縦断面模式図である。 実施例と比較例の被処理体の縦断面浸透探傷試験結果の模式図である。
符号の説明
1 超硬合金固着体
2 ガラス固化体
3 超硬合金(甲部材)
4 超硬可接性金属(乙部材)
5 超硬可接性金属(丙部材)
6 超硬可接性金属(部材6)
7 金属製開放容器

Claims (2)

  1. 超硬合金部材と、該超硬合金部材以外の超硬合金、硬質物質と鉄系金属を結合した結合合金、または、C−W−残部Coおよび/またはNi系の溶解・鋳造による溶製合金とを熱間等方圧縮処理により複合一体化してなる超硬複合化金属体であって、
    前記超硬合金部材と前記超硬合金部材以外の超硬合金、硬質物質と鉄系金属を結合した結合合金、または、C−W−残部Coおよび/またはNi系の溶解・鋳造による溶製合金部材との接合部外周に延性のある、超硬合金、硬質物質と鉄系金属を結合した結合合金、または、C−W−残部Coおよび/またはNi系の溶解・鋳造による溶製合金を配して、固着処理をして一体の超硬合金固着体とし、該超硬合金固着体にガラスを介して高温・高圧気体を作用させる熱間等方圧縮処理により得られることを特徴とする超硬複合化金属体。
  2. 請求項1記載の超硬合金固着体をガラス粉粒体中に埋設し、その後前記ガラス粉粒体を減圧下で溶融して冷却することにより包摂処理を施す第1工程と、該ガラスの外周から高温、高圧の気体を作用させて前記超硬合金固着体に熱間等方圧縮処理を施す第2工程とを備えてなる、超硬複合化金属体の製造方法であって、
    前記第2工程は、ガラス固化体処理工程と、その後のガラス溶融体処理工程とからなり、前記ガラス固化体処理工程は、500℃以上、前記ガラスの加工点温度以下の温度で熱間等方圧縮処理を施す工程であることを特徴とする超硬複合化金属体の製造方法。
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