JP4889164B2 - ポリアミドフィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアミドフィルム及びその製造方法に関するものである。特に、高湿度雰囲気下での吸湿伸び率が低く、透明性や機械的強力に優れたポリアミドフィルムおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
二軸延伸ポリアミドフィルムは、機械的特性、光学的特性、熱的特性、ガスバリヤー性をはじめとして、耐衝撃性、耐磨耗性、耐ピンホール性などに優れていることから、食品などの包装材料用フィルムとして広く利用されている。ポリアミドフィルムは単体フィルムで使用されることはほとんどなく、通常は、印刷やラミネート加工が施されて使用される。
【0003】
ところで、ポリアミドフィルムは、ポリアミド樹脂の分子構造上、吸湿性が高いため、吸湿による寸法変化、いわゆる「吸湿伸び」が発生しやすく、フィルムの加工においては、特に横方向(TD方向)の吸湿伸びが発生しやすい。このような吸湿伸びが発生すると、製品の表層に吸湿シワが多く入って表層部が使い物にならなくなるため、巻長さを長めにする、いわゆる「入り目」を多くとる必要が生じ、コスト高となる。また、製品に多段印刷を施す場合には、吸湿による寸法変化が大きいと、印刷した図柄がずれる「印刷ピッチずれ」と呼ばれる現象が生じやすいという問題がある。
【0004】
また、このような印刷フィルムには、通常、製袋などのためにラミネート加工が施されるが、印刷直後にラミネート加工を施すことは作業都合上ほとんど行われず、印刷後しばらく放置した後、ラミネート加工を施すことが一般的である。そのため、放置中に過度の吸湿伸びが発生して、ドライラミネートの場合には、接着剤をグラビアロール等で塗布する際に、所望する幅を塗布できなくなるなどのトラブルが生じる。
【0005】
吸湿伸びを制御する方法として、例えば、特開平8−197619号公報には、無定形の未延伸ポリアミドフィルムを逐次二軸延伸する際に、2段分割にてMD(縦)延伸したあとTD(横)延伸し、かつその温度を制御して延伸応力を低下させ、吸湿による図柄歪みを低減する方法が提案されている。しかし、この方法では、逐次二軸延伸した後に行われる熱処理する際にリラックス率が大きくなり、やはり最終的には、吸湿伸びが大きくなるという問題がある。
【0006】
また、特開平4−173229号には、未延伸ポリアミドフィルムをTD延伸及びMD延伸したあと、TDリラックスと熱固定およびMDリラックスと熱固定を行い、続いて水蒸気下で熱固定を行うという方法が提案されている。しかし、この方法は工程が複雑で、安定した品質のポリアミドフィルムが得られないという問題がある。
【0007】
このような問題を解決するものとして、特開2000−26627号などでは、ポリアミド樹脂として、脂肪族ポリアミド樹脂よりも比較的、吸湿性の低い芳香族ポリアミド樹脂を主成分として用いたポリアミドフィルムが提案されているが、現在、2軸延伸フィルムとして広く用いられているナイロン6などの脂肪族ポリアミドを主成分とする構成では、未だ上記の問題を解決できるものではない。また、上記のポリアミドフィルムは、耐屈曲疲労性などの機械的特性に劣る芳香族ポリアミド樹脂を主成分としているため、耐屈曲疲労性改良剤の配合による改良を施してはいるが、その性能はナイロン6などの脂肪族ポリアミドを主成分とするフィルムに比較すると明らかに劣るという問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記問題点を解決し、高湿度雰囲気下での吸湿伸び率が低く、かつ透明性や機械的強力に優れたポリアミドフィルムおよびその製造方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討をした結果、本発明に至ったものである。すなわち本発明は、ポリアミド樹脂99.9〜99.0質量%にモンモリロナイト0.1〜1.0質量%が均一に分散された樹脂組成物からなるフィルムであって、20℃、40%RH雰囲気下から20℃、80%RH雰囲気下へ湿度変化させたときのTD方向の吸湿伸び率が1.3%以下であり、ヘーズが5.0%以下であり、面配向係数が0.05以上であることを特徴とするポリアミドフィルムを要旨とするものである。
【0010】
このように、ポリアミド樹脂にモンモリロナイトを所定の割合で均一に分散させて面配向係数を高くすることで、機械的強力に優れ、高湿度雰囲気下での吸湿伸び率の変化が小さく、透明性に優れたポリアミドフィルムが得られ、印刷性やラミネート加工性の向上が図れる。また、ポリアミド樹脂にモンモリロナイトを分散させて面配向係数を高くすると、ヘーズが高くなる傾向にあるが、本発明では、下記の製造方法を採用することで、ヘーズを抑えて透明性に優れたポリアミドフィルムを得ることができる。
【0011】
ポリアミド樹脂を二軸延伸する方法としては、縦方向に延伸処理した後、横方向に延伸処理する逐次二軸延伸と、縦横同時に延伸処理を行う同時二軸延伸とがあり、本発明では、逐次二軸延伸と同時二軸延伸とでその製造条件を異ならせている。
【0012】
すなわち、逐次二軸延伸する場合には、ポリアミド樹脂99.9〜99.0質量%にモンモリロナイト0.1〜1.0質量%が均一に分散された樹脂組成物を溶融製膜し、この未延伸フィルムを縦方向に延伸した後に、横延伸倍率が2倍に至るまではフィルム温度(Ti)をTg≦Ti≦Tcpの範囲とし、横延伸倍率が最大となる最大延伸倍率点でのフィルム温度(Te)をTm−70≦Te≦Tmの範囲として横方向に延伸し、この逐次二軸延伸によりフィルム化することを特徴とするポリアミドフィルムの製造方法を要旨とするものである。ここで、Tgはポリアミド樹脂のガラス転移温度、Tcpはポリアミド樹脂の結晶化ピーク温度、Tmはポリアミド樹脂の融点である。
【0013】
また、同時二軸延伸する場合には、ポリアミド樹脂99.9〜99.0質量%にモンモリロナイト0.1〜1.0質量%が均一に分散された樹脂組成物を溶融製膜し、この未延伸フィルムを、面倍率が4倍に至るまではフィルム温度(Ti)をTg≦Ti≦Tcpの範囲とし、面倍率が最大となる最大延伸倍率点でのフィルム温度(Te)をTm−70≦Te≦Tmの範囲として同時二軸延伸し、フィルム化することを特徴とするポリアミドフィルムの製造方法を要旨とするものである。ここで、Tgはポリアミド樹脂のガラス転移温度、Tcpはポリアミド樹脂の結晶化ピーク温度、Tmはポリアミド樹脂の融点である。
【0014】
このように、モンモリロナイトを特定の比率で配合したポリアミド樹脂組成物を特定の条件下で逐次延伸あるいは同時二軸延伸することにより、高湿度雰囲気下での吸湿伸び率を抑え、機械的強力が高く、かつ透明性に優れたポリアミドフィルムを容易に製造することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のポリアミドフィルムは、ポリアミド樹脂99.9〜99.0質量%にモンモリロナイト0.1〜1.0質量%が均一に分散された樹脂組成物からなる必要がある。モンモリロナイトの配合割合が0.1質量%より少なくなると、得られたフィルムは、吸湿伸び率が大きく、寸法安定性に劣るものとなる。また、モンモリロナイトの配合割合が1.0質量%より多くなると、フィルムのヘーズが高くなり、透明性に劣るものとなる。特に本発明のように面配向係数を高くしてフィルムの強度性能を良くする場合には、この配合割合が重要な要件となる。
【0016】
また、この樹脂組成物からなるフィルムは、20℃、40%RH雰囲気下から20℃、80%RH雰囲気下へ湿度変化させたときのTD方向の吸湿伸び率が1.3%以下である必要がある。このように湿度変化させたときのTD方向の吸湿伸び率が1.3%を超えると、このフィルムに印刷を施す際に印刷ピッチずれが生じて印刷性に劣るものとなり、さらにフィルムが吸湿して寸法変化が生じやすくなるため、良好なラミネート加工が行えなくなる。
【0017】
また、本発明のポリアミドフィルムは、面配向係数が0.05以上である必要がある。面配向係数は、フィルムの機械的強力に影響を与えるものであり、本発明のように面配向係数を0.05以上とすることで、従来より包装用途などとして市販されているポリアミド2軸延伸フィルムと同等以上の強度性能、具体的には、厚み15μmの延伸フィルムである場合に、突刺強力で10N以上の強力を付与することができる。面配向係数が0.05未満であると、機械的強力に劣るものとなり、包装用途などに使用した場合に破袋などのトラブルが発生しやすく、実使用に適さなくなる。従って、面配向係数は、0.055以上とすることがより好ましい。この面配向係数を0.05以上にするためには、後述のように、上記の樹脂組成物を溶融して作成した未延伸フィルムを延伸処理する場合に、その延伸倍率を面倍率で9倍以上となるようにする必要がある。これは逐次二軸延伸、同時二軸延伸のいずれの場合についても同様である。
【0018】
また、本発明のポリアミドフィルムは、ヘーズが5.0%以下であることが必要である。ヘーズが5.0%を超えると、フィルムの透明性が悪くなり、印刷の見栄えが劣るものとなる。通常、フィルムには滑り性が求められるため、シリカなどの微粒子を添加することから、フィルムのヘーズは3〜5%レベルの範囲にあるのが一般的である。これらの微粒子を添加しなければ、よりヘーズを低くすることが可能であるが、滑り性が悪くなり、印刷、ラミネートなどの加工ができなくなる。また、本発明のようにモンモリロナイトを添加し、かつ、面配向係数を高くした場合の透明性の悪化は、不均一なボイド形成によるものであるので、シリカなどの滑剤添加による透明性の悪化とは異なり、著しい外観不良(不均一感)が生じることとなる。なお、特殊な装飾上の要求から、白色顔料などの無機物や他のポリマーを配合させ、意図してフィルムの透明性を悪くする場合は、この限りでない。
【0019】
本発明のポリアミドフィルムを構成するポリアミド樹脂としては、脂肪族ポリアミドを主成分とするものが好適に使用できる。脂肪族ポリアミドとしては、3員環以上のラクタム、重合可能なω−アミノ酸、二塩基酸とジアミンなどの重縮合によって得られるポリアミド樹脂、具体的には、ε−カプロラクタム、アミノカプロン酸、エナントラクタム、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、9−アミノノナン酸、α−ピロリドン、α−ピペリドンなどの重合体、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンなどのジアミンと、アジピン酸、セバチン酸、ドデカン二塩基酸、グルタール酸などのジカルボン酸との塩を重縮合させて得られる重合体またはこれらの共重合体が挙げられ、中でもナイロン4、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン8、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロン6/12等が好適に使用でき、特に、機械的特性や熱的特性に優れることから、ナイロン6やナイロン66を主成分とする重合体がより好適に使用でき、ナイロン6が最適である。なお、本発明の効果を大きく損なわない限りにおいて、メタキシリレンジアミン、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族成分を共重合したり、ナイロン6T、ナイロン6/6T、ナイロン6I/6T等の芳香族ポリアミドを添加しても良い。
【0020】
ポリアミド樹脂の相対粘度は特に限定されないが、溶媒として98質量%濃硫酸を用い、温度25℃、濃度1g/dlの条件で測定された相対粘度が1.5〜5.0の範囲にあるものが好ましい。相対粘度が1.5未満のものでは、フィルムの機械的性能が低下し、相対粘度が5.0を超えるものでは、製膜性が低下する。
【0021】
本発明で使用されるモンモリロナイトは、層の厚みが6〜12Å、層の一辺の長さが0.001〜10μmの結晶単位からなるものが好ましい。
【0022】
上記のポリアミド樹脂にモンモリロナイトを均一に分散させた樹脂組成物を得るには、モンモリロナイトを膨潤化剤、例えば、12アミドドデカン酸と接触させて、予めモンモリロナイトの層間を広げて、層間にモノマーを取り込みやすくした後、ポリアミドモノマーと混合し、重合すれば良い。
【0023】
また、本発明のポリアミドフィルムを構成する樹脂組成物には、その特性を大きく損なわない限りにおいて、滑剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、可塑剤、着色剤、離型剤、顔料等の添加剤を添加してもよく、これらは樹脂組成物の溶融混練時もしくは重合時に加えられる。
【0024】
上記のように構成されたポリアミドフィルムは、以下のような方法により製造される。本発明のポリアミドフィルムは、例えば、ポリアミド樹脂にモンモリロナイトを上記の配合割合にて均一に分散させた樹脂組成物を押出機で加熱溶融してTダイよりフィルム状に押出し、エアーナイフキャスト法、静電印キャスト法など公知のキャスティング法により回転する冷却ドラム上で冷却固化して未延伸フィルムを製膜し、この未延伸フィルムに延伸処理を施すことで得られる。未延伸フィルムが配向していると、後工程で延伸性が低下することがあるため、この未延伸フィルムは、実質的に無定形、無配向の状態であることが好ましい。
【0025】
延伸処理には、縦方向に延伸した後、横方向に延伸処理する逐次二軸延伸と、縦横同時に延伸処理を行う同時二軸延伸とがあり、本発明では、逐次二軸延伸を行う場合と同時二軸延伸を行う場合とでその製造条件が異なるが、いずれの延伸方法においても、0.05以上の面配向係数が得られるように面倍率が9倍以上になるようにして延伸処理することが必要である。
【0026】
逐次二軸延伸は以下のように行われる。まず、未延伸フィルムにフィルム延伸のための予熱を行い、周速の異なる加熱ローラ群からなるローラ式縦延伸機を用いて縦延伸処理を行う。縦延伸機の加熱ローラ群は未延伸フィルムのガラス転移点以上の温度となるように設定し、この加熱延伸ロールとフィルム冷却のための冷却ロールとの間での縦延伸倍率が、2.6〜3.2倍となるように縦延伸処理を行うことが好ましい。
【0027】
次いで、テンター式横延伸機にてフィルム延伸のための予熱を行った後、横延伸処理を行うが、本発明では、横延伸倍率が2倍に至るまではフィルム温度TiをTg≦Ti≦Tcpの範囲とし、横延伸倍率が2倍を超え最大延伸倍率となった時点におけるフィルム温度TeをTm−70≦Te<Tmの範囲とする必要がある。ここで、Tgはポリアミド樹脂のガラス転移温度、Tcpはポリアミド樹脂の結晶化ピーク温度、Tmはポリアミド樹脂の融点である。
【0028】
横延伸倍率が2倍に至るまでのフィルム温度Tiがガラス転移温度Tgより低いと、初期の延伸応力(降伏点応力)が高くなり、フィルムにネックやボイドが発生して初期切断が発生する。また、たとえ延伸できたとしても、横延伸倍率が2倍を越えた後にフィルム温度が高くなると、フィルムが白化して外観性に劣るものとなる。逆に、横延伸倍率が2倍に至るまでのフィルム温度Tiがポリアミド樹脂の結晶化ピーク温度Tcpよりも高いと、フィルムが弾性変形している段階で結晶化が進むためフィルム白化を誘発し、外観性に劣るだけでなく、フィルム白化に起因するフィルム切れが頻発して、操業性が著しく低下する。横延伸倍率が2倍を超え最大延伸倍率となった時点におけるフィルム温度Teが、Tm−70よりも低いとフィルム切れや操業性の低下が生じ、フィルム温度TeがTm以上となると、吸湿伸びを低減させる結晶構造が破壊されるためか、吸湿伸びが大きくなり、フィルム温度TeがTmを大きく超えると、フィルム自体が融解し、破断する。また、フィルム温度Tiでの延伸処理を横延伸倍率が2倍に満たないうちに終了し、フィルム温度Teでの延伸処理に切り替えると、弾性変形が優先的に進行して、いまだ塑性変形の割合が小さい状態で続く高温での延伸処理に供給されるため、弾性変形部のフィルムでボイドが発生して白化する。逆に、フィルム温度Tiでの延伸処理を横延伸倍率が2倍を超えるまで行うと、フィルム温度Teでの延伸処理において、フィルムの吸湿伸びを抑え、かつ、透明性を良くする効果が発現しなくなる。従って、延伸倍率が2倍を超えた時点で速やかにフィルム温度TeをTm−70≦Te<Tmの範囲に上げることが望ましい。
【0029】
このように横延伸倍率が2倍に至るまではフィルム温度Tiをポリアミド樹脂のガラス転移温度から結晶化ピーク温度の間に制御して、塑性変形を優先的に進行させて弾性変形の割合を小さくすることで、延伸応力を低減して横延伸倍率が2倍を超えた後の弾性変形部におけるボイドの発生を押さえることができる。また、横延伸倍率が2倍を超え最大延伸倍率に達する時には、フィルム温度を結晶化温度よりも高くすることでフィルムの結晶化を進行して吸湿伸びを低減でき、さらに延伸変形により、より一層フィルム中の塑性変形率を上げて弾性変形比率を下げることができる。その結果、吸湿伸びが低く、透明性に優れたフィルムを高い操業性で生産できる。また、本発明では、上記構成に加えて、フィルムを形成する樹脂組成物にモンモリロナイトが均一に分散されているため、さらにポリアミド樹脂の結晶化の進行が助長され、結果として高湿度雰囲気下での吸湿伸びを低減でき、透明性の向上が図れる。
【0030】
一方、同時二軸延伸は以下のように行われる。まず、未延伸フィルムにフィルム延伸のための予熱を行い、テンター式同時二軸延伸機を用いて縦横同時に延伸処理を行う。本発明では、面倍率が4倍に至るまではフィルム温度TiをTg≦Ti≦Tcpの範囲とし、面倍率が最大となる最大延伸倍率点でのフィルム温度TeをTm−70≦Te≦Tmの範囲とする必要がある。ここで、Tgはポリアミド樹脂のガラス転移温度、Tcpはポリアミド樹脂の結晶化ピーク温度、Tmはポリアミド樹脂の融点である。
【0031】
面倍率が4倍に至るまでのフィルム温度Tiがガラス転移温度Tgより低いと、初期の延伸応力(降伏点応力)が高くなり、フィルムにネックやボイドが発生して初期切断が発生する。また、たとえ延伸できたとしても、面倍率が4倍を超えた後にフィルム温度が高くなると、フィルムが白化して外観性に劣るものとなる。逆に、面倍率が4倍に至るまでのフィルム温度Tiがポリアミド樹脂の結晶化ピーク温度Tcpよりも高いと、フィルムが弾性変形している段階で結晶化が進むためフィルム白化を誘発し、外観性に劣るだけでなく、フィルム白化に起因するフィルム切れが頻発して、操業性が著しく低下する。面倍率が4倍を超え最大面倍率となった時点におけるフィルム温度TeがTm−70よりも低いと、フィルム切れが発生して操業性が低下し、フィルム温度Teがポリアミド樹脂の融点Tmを超えると、吸湿伸びを低減させる結晶構造が破壊されるためか吸湿伸びが大きくなり、フィルム温度TeがTmを大きく超えると、フィルム自体が融解し、破断する。また、フィルム温度がTiでの延伸処理を面倍率が4倍に満たないうちに終了し、フィルム温度がTeでの延伸処理に変更すると、弾性変形が優先的に進行していまだ塑性変形の割合が小さい状態で、続く高温での延伸処理に供給されるため、弾性変形部のフィルムでボイドが発生して白化する。また、フィルム温度がTiでの延伸処理を面倍率が4倍を超えるまで行うと、フィルム温度Teでの延伸処理において、フィルムの吸湿伸びを抑え、かつ、透明性を良くする効果が発現しなくなる。従って、面倍率が4倍を超えた時点で速やかにフィルム温度TeをTm−70≦Te≦Tmの範囲に上げることが望ましい。
【0032】
このように同時二軸延伸処理を、面倍率が4倍に至るまではフィルム温度Tiをポリアミド樹脂のガラス転移温度Tgから結晶化ピーク温度Teの間に制御して、塑性変形を優先的に進行させて弾性変形の割合を小さくすることで、延伸応力を低減して面倍率が4倍を超えた後の弾性変形部におけるボイドの発生を押さえることができる。また、面倍率が4倍を超えて最大延伸倍率に達する時には、フィルム温度が結晶化温度よりも高くなるように設定してフィルムの結晶化を進行させることができ、吸湿伸びを低減でき、さらに延伸変形を施すことで、より一層フィルム中の塑性変形率を上げて弾性変形比率を下げることができる。その結果、吸湿伸びが低く、透明性に優れたフィルムを高い操業性で生産できる。また、本発明では、上記構成に加えて、フィルムを形成する樹脂組成物にモンモリロナイトが分散されているため、さらにポリアミド樹脂の結晶化が促進され、結果として高湿度雰囲気下での吸湿伸びを低減でき、透明性の向上が図れる。
【0033】
また、上記のように逐次二軸延伸または同時二軸延伸を行う際の温度制御は、1つの延伸部においてフィルム進行方向に向かって徐々に風量を上げたり、また延伸部を2つ以上のゾーンに分割して個別に温度制御したり、また、これらを組み合わせて適用しても良い。
【0034】
上記のように逐次二軸延伸あるいは同時二軸延伸が行われたフィルムは、同テンター内において150〜220℃の温度で熱固定し、必要に応じて0〜10%、好ましくは2〜6%の範囲で縦方向および/または横方向の弛緩処理を施す。
【0035】
本発明のポリアミドフィルムを、シュリンクフィルムなどを除く一般的な包装材料として用いる場合には、熱寸法安定性や湿熱寸法安定性を求められるが、概ね、最大熱水収縮率で4%以下、望ましくは3.5%以下とすることが求められる。熱水収縮率は、温度を上げるほど、また、弛緩処理を大きくするほど低下するため、所望の熱水収縮率が得られるように、温度や弛緩処理を適宜、微調整する必要がある。
【0036】
引き続いて延伸フィルムは、一旦クリップから解放して、端部の未延伸残部をトリミングした後、原反ロールとして巻き取り、別途、スリッターにて所望の幅にスリットし、製品として巻き取る。
【0037】
なお、本発明のポリアミドフィルムには、機能性を付与するために、各種機能性コート液の塗布を行っても良い。コーティングは、通常、逐次二軸延伸の場合には横延伸直前あるいは横延伸後のフィルムに、また、同時二軸延伸を行う場合には延伸直前あるいは延伸後のフィルムに施される。コーティングの方法は特に限定されるものではなく、例えば、グラビアロール法、リバースロール法、エアーナイフ法、リバースグラビア法、マイヤーバー法、インバースロール法、またはこれらの組み合わせによる各種コーティング方式や、各種噴霧方式などを採用することができる。
【0038】
以上のように本発明によると、ポリアミド樹脂にモンモリロナイトを特定の割合で均一に分散させた樹脂組成物を用いて、特定の条件下で延伸処理することで、機械的強力や透明性に優れ、高湿度雰囲気下でも吸湿変化率が小さいポリアミドフィルムを高い操業性で安定して製造することができる。
【0039】
【実施例】
次に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。
なお、以下の実施例および比較例において、その評価に用いた原料および評価方法は、次のとおりである。
(1)原料
a.マスターチップの作成
平均粒子径が1μmのモンモリロナイト100gに対して、濃度1Nの12−アミドドデカン酸塩化物水溶液10リットルを混合し、攪拌した。次にこれを濾過水洗した後、乾燥し、モンモリロナイトと12−アミノドデカン酸アンモニウムイオンとの複合体を得た。攪拌機を備えた密閉反応容器にε−カプロラクタム10kgと水1kg、さらに樹脂組成物中のモンモリロナイト含有量が4%となるように所定量の複合体を混合し、80℃で反応系が均一な状態になるまで攪拌した。次に反応系を260℃まで加熱し、反応容器内の圧力が1.5MPaの状態で約1時間攪拌した。圧力を常圧に戻し、260℃で約1時間攪拌を行い、さらに窒素気流下で反応系内の水を除去しながら約1時間攪拌した。重合が終了した時点で、上記反応生成物をストランド状に水浴中に払い出し、冷却、固化後、切断して、モンモリロナイトが均一に分散したポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。このペレットを95℃の温水中で約6時間処理し、可溶成分を抽出した後、温度80℃の減圧下で乾燥した。上記の方法により、モンモリロナイトを4%含有したナイロン6樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の相対粘度は2.7であった。
b.シリカマスターチップの作成
攪拌機を備えた密閉反応容器に10kgのε−カプロラクタム、1kgの水、および500gのシリカ(富士シリシア化学社製、商品名:サイリシア310P)を投入し、100℃に保持して、この温度で反応系内が均一になるまで攪拌した。引き続き攪拌しながら260℃に加熱し、圧力1.5MPaを1時間維持し、さらに1時間かけて常圧まで放圧し、さらに1時間重合した。重合が終了した時点で、上記反応生成物をストランド状に払い出し、冷却、固化した後、切断して、ポリアミド樹脂からなるペレットを得た。次いで、このペレットを95℃の温水中で約8時間処理し、可溶成分を抽出した後、温度80℃の減圧下で乾燥した。得られたポリアミド樹脂の相対粘度は2.7であった。
(2)評価方法
a.ポリアミド樹脂の相対粘度:96質量%濃硫酸中にそれぞれの樹脂の乾燥ペレットを濃度が1g/dlとなるように溶解し、温度25℃で測定した。
b.TD方向の吸湿伸び率(%):延伸フィルムを20℃、40%RHの雰囲気下で1日調湿し、MD方向×TD方向=10mm×150mmの試料を作成し、初期サンプルのTD方向の長さ(A)を測定した。続いて20℃、80%RH雰囲気下に湿度変化させ、1日調湿した後、サンプルのTD方向の長さ(B)を測定した。この測定結果を用いて下記式よりTD方向の吸湿伸び率(C)を算出した。
【0040】
C(%)={(B−A)/A}×100
c.熱水収縮率(%):延伸フィルムを20℃、65%RHの条件下で1日調湿し、油性インクで100mm間隔の平行線をマークし、これを10mm幅にスリットした。その後、マーク間の寸法(処理前の寸法:P)を測定した。次いで、このサンプルを100℃熱水中で5分間ボイル処理し、付着水分を除去した後、再度、20℃、65%RHの雰囲気下で1日調湿した後、マーク間の寸法(処理後の寸法:Q)を測定した。この測定結果を用いて下記式より熱水収縮率(BS)を求めた。
【0041】
BS(%)={(P−Q)/P}×100
d.面配向係数:延伸フィルムの主配向方向(Nx)とその垂直方向(Ny)と厚み方向(Nz)の屈折率を、ATAGO社製のデジタル屈折計RX−2000を用いて測定し、下記式より面配向係数(X)を求めた。
【0042】
X={(Nx+Ny)/2}−Nz
e.突刺強力(N):内径100mmφの円形型枠にフィルムを緊張させて固定し、この試料の中央部に先端が曲率半径0.5mmの針を50mm/分の速度で試料面に垂直に当てて突き刺し、フィルムが破れる際の強度を測定した。
f.ヘーズ(%):東京電色社製のヘーズメータを用いて、ASTM−D−1003に記載の方法に準じて測定した。
実施例1
主たるポリアミド成分として、相対粘度が3.0、ガラス転移温度Tgが50℃、結晶化ピーク温度Tcpが120℃、融点Tmが225℃であるナイロン6を用いた。そしてこのナイロン6に層状珪酸塩としてモンモリロナイトが0.4質量%、滑剤としてシリカが0.2質量%含まれるように、上記のように作成した各マスターチップを混合して、押出し温度260〜270℃で溶融混練し、幅が630mmのTダイよりシート状に溶融押出した。そして、エアーナイフキャスト法により、20℃の回転ドラムに密着させて急冷し、実質的に無定形で配向していない未延伸ポリアミドフィルムを作製した。
【0043】
次いでこの未延伸フィルムに以下のような逐次二軸延伸を施した。
まず、未延伸フィルムを周速の異なる一連の加熱ローラ群からなる縦延伸機に導き、55℃の温度で2.8倍に縦延伸して縦延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0044】
続いて、この縦延伸フィルムをテンター式横延伸機に導いてクリップに把持し、60℃でフィルム延伸のための予熱を行った。そしてこのフィルムを、横延伸倍率が2倍に至るまではフィルム温度Tiが70℃となるように、すなわち、ナイロン6のガラス転移温度Tgよりも高く、ナイロン6の結晶化ピーク温度Tcpよりも低い温度となるように調節し、延伸処理を行った。横延伸倍率が2倍を超えるとフィルム温度Tiを上げて、延伸倍率が3.8倍となるまで延伸して、面場率を10.6とした。そしてこの最大延伸倍率点におけるフィルム温度Teが180℃となるように、すなわちナイロン6の融点Tm−70よりも高く、ナイロン6の融点Tmよりも低い温度となるように調節し、逐次延伸処理を行った。その後、同テンター内で160〜220℃の定幅熱処理および4%の弛緩熱処理を施した。
【0045】
得られた二軸延伸ポリアミドフィルムのフィルムの両端をクリップから開放し、耳部をトリミングして巻き取り、厚み15μmのフィルムを作製した。得られたフィルム(原反)は、スリッターにて1000mm幅にスリットし、製品として巻き取った。
【0046】
このフィルム製品から、TD吸湿伸び率(%)、面配向係数、突刺強力(N)、熱水収縮率(%)、ヘーズ(%)を測定するための各試験片を作製した。
得られた試験片の物性を表1に示す。
【0047】
【表1】
Figure 0004889164
実施例2
モンモリロナイトの含有量を0.1質量%とした。そして、それ以外は実施例1と同様にしてポリアミドフィルムを作製し、各試験片を作製した。
【0048】
得られた試験片の物性を表1に示す。
実施例3
モンモリロナイトの含有量を1.0質量%とした。そして、それ以外は実施例1と同様にしてポリアミドフィルムを作製し、各試験片を作製した。
【0049】
得られた試験片の物性を表1に示す。
実施例4
フィルム温度Teを200℃とした。そしてそれ以外は、実施例1と同様にしてポリアミドフィルムを作製し、各試験片を作製した。
【0050】
得られた試験片の物性を表1に示す。実施例1〜実施例4で得られたポリアミドフィルムは、ポリアミド樹脂にモンモリロナイトが所定の割合で均一に分散された樹脂組成物を溶融製膜して、本発明の条件下で逐次二軸延伸を行ったため、高湿度雰囲気下でもTD方向の吸湿伸び率が小さく、印刷性やラミネート加工性に優れたフィルムが得られた。また、0.05以上の面配向係数が得られ、突刺強力が10N以上と高く、また、熱水収縮率が小さいフィルムが得られた。さらに、ヘーズが5%以下と低く、透明性に優れたフィルムが得られた。このようなポリアミドフィルムは、包装材料として好適に使用できるものであった。
比較例1
モンモリロナイトを配合しなかった。そして、それ以外は実施例1と同様にして、ポリアミドフィルムを作製し、各試験片を作製した。
【0051】
得られた試験片の物性を表1に示す。
比較例2
モンモリロナイトの配合割合を本発明の範囲よりも少なく0.05質量%にした。そして、それ以外は実施例1と同様にして、ポリアミドフィルムを作製し、各試験片を作製した。
【0052】
得られた試験片の物性を表1に示す。
比較例3
モンモリロナイトの配合割合を本発明の範囲よりも多く2.0質量%にした。そして、それ以外は実施例1と同様にして、ポリアミドフィルムを作製し、各試験片を作製した。
【0053】
得られた試験片の物性を表1に示す。
比較例4
フィルム温度Teを本発明の範囲よりも低く90℃とした。そしてそれ以外は、実施例1と同様にしてポリアミドフィルムを作製し、各試験片を作製した。
【0054】
得られた試験片の物性を表1に示す。
比較例5
フィルム温度Tiを本発明の範囲よりも高く140℃とした。そしてそれ以外は、実施例1と同様にしてポリアミドフィルムを作製したが、フィルム切れが多発して試験片を作製できなかった。
比較例6
フィルム温度Teを本発明の範囲よりも高く240℃とした。そしてそれ以外は、実施例1と同様にしてポリアミドフィルムを作製し、各試験片を作製した。
【0055】
得られた試験片の物性を表1に示す。
比較例7
延伸倍率を縦2.4倍、横3.2倍として、面倍率を7.68倍とした。そしてそれ以外は、実施例1と同様にしてポリアミドフィルムを作製し、各試験片を作製した。
【0056】
得られた試験片の物性を表1に示す。
比較例1,2は、モンモリロナイトが配合されていない、あるいはその配合割合が少なすぎたため、TD方向の吸湿伸びが大きく、印刷性やラミネート加工性に劣るものとなった。
【0057】
比較例3は、モンモリロナイトの配合割合が本発明の範囲を超えていたため、TD方向の吸湿伸びは小さいものの、ヘーズが高くなり、白化が生じて透明性に劣り、外観に劣るものとなった。
【0058】
比較例4は、フィルム温度をTeを本発明の範囲よりも低くしたため、延伸時にボイドが発生してヘーズが高くなり、外観性に劣るものとなった。
比較例5は、フィルム温度Tiを本発明の範囲よりも高くしたため、延伸初期に結晶化が優先して進行し、フィルムが白化して破断が発生したため、上記のように試験フィルムを作製できなかった。
【0059】
比較例6は、フィルム温度Teを本発明の範囲よりも高くしたため、生成した結晶の融解が進行して結晶化度が低下し、結果として吸湿伸びの大きいものしか得られなかった。
【0060】
比較例7は、延伸倍率が低く、面倍率が9倍未満であったため、フィルムの面配向係数が低くなり、突刺強力が小さく、機械的強力に劣るものとなった。
実施例5
主たるポリアミド成分として、融点が225℃、相対粘度が3.0、ガラス転移温度Tgが50℃、結晶化ピーク温度Tcpが120℃、融点が225℃であるナイロン6を用いた。そしてこのナイロン6に層状珪酸塩としてモンモリロナイトが0.4質量%、滑剤としてシリカが0.15質量%含まれるように、上記のように作成した各マスターチップを混合して押出し温度260〜270℃で溶融混練し、幅が630mmのTダイよりシート状に溶融押出した。そして、エアーナイフキャスト法により、20℃の回転ドラムに密着させて急冷し、実質的に無定形で配向していない未延伸ポリアミドフィルムを作製した。
【0061】
次いでこの未延伸フィルムに以下のような同時二軸延伸を施した。
まず、未延伸フィルムを後述するテンター式同時二軸延伸機の入口幅に合わせるために、その幅が260mmになるように両端をカットし、入口クリッブの先端間幅を210mmにセットしたテンター式同時二軸延伸機に導いてクリップに把持して、60℃でフィルム延伸のための予熱を行った。そして、このフィルムを、面倍率が4倍に至るまではフィルム温度Tiが70℃になるように、すなわち、ナイロン6のガラス転移温度Tgよりも高く、ナイロン6の結晶化ピーク温度Tcpよりも低い温度となるように調節して、延伸処理を行った。面倍率が4倍を超えるとフィルム温度Tiを上げて、面倍率が最大となる最大延伸倍率点におけるフィルム温度Teが180℃となるように、すなわちナイロン6の融点Tm−70よりも高く、ナイロン6の融点Tmよりも低い温度となるように調整して、縦方向に3.0倍、横方向に3.3倍まで延伸した。その後、同テンター内で160〜215℃の定幅熱処理および4%の弛緩熱処理を施した。
【0062】
得られた二軸延伸ポリアミドフィルムのフィルムの両端をクリップから開放し、耳部をトリミングして巻き取り、厚み15μmのフィルムを作製した。得られたフィルム(原反)は、スリッターにて500mm幅にスリットし、製品として巻き取った。
【0063】
このフィルム製品から、TD吸湿伸び率(%)、面配向係数、突刺強力(N)、熱水収縮率(%)、ヘーズ(%)を測定するための各試験片を作製した。
得られた試験片の物性を表2に示す。
【0064】
【表2】
Figure 0004889164
実施例6
モンモリロナイトの含有量を0.1質量%とした。そして、それ以外は実施例5と同様にしてポリアミドフィルムを作製し、各試験片を作製した。
【0065】
得られた試験片の物性を表2に示す。
実施例7
モンモリロナイトの含有量を1.0質量%とした。そして、それ以外は実施例5と同様にしてポリアミドフィルムを作製し、各試験片を作製した。
【0066】
得られた試験片の物性を表2に示す。
実施例8
フィルム温度Teを200℃とした。そしてそれ以外は、実施例5と同様にしてポリアミドフィルムを作製し、各試験片を作製した。
【0067】
得られた試験片の物性を表2に示す。実施例5〜実施例8で得られたポリアミドフィルムは、ポリアミド樹脂にモンモリロナイトが所定の割合で均一に分散された樹脂組成物を溶融製膜して、本発明の条件下で同時二軸延伸を行ったため、高湿度雰囲気下でもTD方向の吸湿伸び率が小さく、印刷性やラミネート加工性に優れたフィルムが得られた。また、0.05以上の面配向係数が得られ、突刺強力が10N以上と高く、また、熱水収縮率が小さいフィルムが得られた。さらに、ヘーズが5%以下と低く、透明性に優れたフィルムが得られた。このようなポリアミドフィルムは、包装材料として好適に使用できるものであった。
比較例8
モンモリロナイトを配合しなかった。そして、それ以外は実施例5と同様にして、ポリアミドフィルムを作製し、各試験片を作製した。
【0068】
得られた試験片の物性を表2に示す。
比較例9
モンモリロナイトの配合割合を本発明の範囲よりも少なく0.05質量%にした。そして、それ以外は実施例5と同様にして、ポリアミドフィルムを作製し、各試験片を作製した。
【0069】
得られた試験片の物性を表2に示す。
比較例10
モンモリロナイトの配合割合を本発明の範囲よりも多く2.0質量%にした。そして、それ以外は実施例5と同様にして、ポリアミドフィルムを作製し、各試験片を作製した。
【0070】
得られた試験片の物性を表2に示す。
比較例11
フィルム温度Teを本発明の範囲よりも低く90℃とした。そしてそれ以外は、実施例5と同様にしてポリアミドフィルムを作製し、各試験片を作製した。
【0071】
得られた試験片の物性を表2に示す。
比較例12
フィルム温度Tiを本発明の範囲よりも高く140℃とした。そしてそれ以外は、実施例5と同様にしてポリアミドフィルムを作製したが、フィルム切れが多発して試験片を作製できなかった。
比較例13
フィルム温度Teを本発明の範囲よりも高く230℃とした。そしてそれ以外は、実施例5と同様にしてポリアミドフィルムを作製し、各試験片を作製した。
【0072】
得られた試験片の物性を表2に示す。
比較例14
延伸倍率を縦2.7倍、横3.0倍として面倍率を8.1倍とした。そしてそれ以外は、実施例5と同様にしてポリアミドフィルムを作製し、各試験片を作製した。
【0073】
得られた試験片の物性を表2に示す。
比較例8,9は、モンモリロナイトが配合されていない、あるいはその配合割合が少なすぎたため、TD方向の吸湿伸びが大きく、印刷性やラミネート加工性に劣るものとなった。
【0074】
比較例10は、モンモリロナイトの配合割合が本発明の範囲を超えていたため、TD方向の吸湿伸びは小さいものの、ヘーズが高くなり、白化が生じて透明性に劣り、外観に劣るものとなった。
【0075】
比較例11は、フィルム温度をTeを本発明の範囲よりも低くしたため、延伸時にボイドが発生してヘーズが高くなり、外観性に劣るものとなった。
比較例12は、フィルム温度Tiを本発明の範囲よりも高くしたため、延伸初期に結晶化が優先して進行し、フィルムが白化して破断が発生したため、上記のように試験フィルムを作製できなかった。
【0076】
比較例13は、フィルム温度Teを本発明の範囲よりも高くしたため、生成した結晶の融解が進行して結晶化度が低下し、結果として吸湿伸びの大きいものしか得られなかった。
【0077】
比較例14は、延伸倍率が低く、面倍率が9倍未満であったため、フィルムの面配向係数が低くなり、突刺強力が小さく、機械的強力に劣るものとなった。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリアミド樹脂99.9〜99.0質量%にモンモリロナイト0.1〜1.0質量%が均一に分散された樹脂組成物からなるフィルムであって、20℃、40%RH雰囲気下から20℃、80%RH雰囲気下へ湿度変化させたときのTD方向の吸湿伸び率が1.3%以下であり、ヘーズが5.0%以下であり、面配向係数が0.05以上であるフィルムとすることで、高湿度雰囲気下でも吸湿伸びが小さく、印刷性やラミネート加工性に優れたフィルムが得られ、これまで制限されていた逐次二軸延伸ポリアミドフィルムの利用範囲の拡大が図れる。従って、このようなポリアミドフィルムは、食品や医薬品や雑貨などの包装材料として好適に使用できる。
【0079】
また、本発明のポリアミドフィルムは、上記の配合割合の樹脂組成物を用いて特定の温度条件下で未延伸フィルムに逐次延伸あるいは同時二軸延伸を施すことで、操業性良く、安定して製造できる。

Claims (4)

  1. ポリアミド樹脂99.9〜99.0質量%にモンモリロナイト0.1〜1.0質量%が均一に分散された樹脂組成物からなるフィルムであって、20℃、40%RH雰囲気下から20℃、80%RH雰囲気下へ湿度変化させたときのTD方向の吸湿伸び率が1.3%以下であり、ヘーズが5.0%以下であり、面配向係数が0.05以上であることを特徴とするポリアミドフィルム。
  2. ポリアミド樹脂が脂肪族ポリアミドを主成分とすることを特徴とする請求項1記載のポリアミドフィルム。
  3. 請求項1または2に記載のポリアミドフィルムを製造するための方法であって、ポリアミド樹脂99.9〜99.0質量%にモンモリロナイト0.1〜1.0質量%が均一に分散された樹脂組成物を溶融製膜し、この未延伸フィルムを縦方向に延伸した後に、横延伸倍率が2倍に至るまではフィルム温度(Ti)をTg≦Ti≦Tcpの範囲とし、横延伸倍率が最大となる最大延伸倍率点でのフィルム温度(Te)をTm−70≦Te≦Tmの範囲として横方向に延伸し、この逐次二軸延伸によりフィルム化することを特徴とするポリアミドフィルムの製造方法。
    Tg:ポリアミド樹脂のガラス転移温度
    Tcp:ポリアミド樹脂の結晶化ピーク温度
    Tm:ポリアミド樹脂の融点
  4. 請求項1または2に記載のポリアミドフィルムを製造するための方法であって、ポリアミド樹脂99.9〜99.0質量%にモンモリロナイト0.1〜1.0質量%が均一に分散された樹脂組成物を溶融製膜し、この未延伸フィルムを、面倍率が4倍に至るまではフィルム温度(Ti)をTg≦Ti≦Tcpの範囲とし、面倍率が最大となる最大延伸倍率点でのフィルム温度(Te)をTm−70≦Te≦Tmの範囲として同時二軸延伸し、フィルム化することを特徴とするポリアミドフィルムの製造方法。
    Tg:ポリアミド樹脂のガラス転移温度
    Tcp:ポリアミド樹脂の結晶化ピーク温度
    Tm:ポリアミド樹脂の融点
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