JP4888784B2 - 絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子 - Google Patents

絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子 Download PDF

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Description

本発明は、絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子に関する。この絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子を用いて形成された圧粉磁心はスイッチング電源用トランス、リアクトルなどに用いる複合磁性材料および磁気部品として有用である。
近年、各種電子機器は、小形化、軽量化されてきており、これに伴い電子機器に搭載されているスイッチング電源も小形化の要求が高まっている。特にノート型パソコンや小型携帯機器、薄型CRT、フラットパネルディスプレイに用いられるスイッチング電源では、小型化、薄型化が強く求められている。しかしながら、従来のスイッチング電源は、その主要な構成部品であるトランス、リアクトル等の磁気部品が、大きな体積を占め、小型化、薄型化することに限界があった。これら磁気部品の体積を小型、薄型化しない限り、スイッチング電源を小型化、薄型化することは困難となっていた。
従来、このようなスイッチング電源に使用されているトランス、リアクトルなどの磁気部品には、センダストやパーマロイなどの金属磁性材料や、フェライトなどの酸化物磁性材料が使用されていた。
そのうち金属磁性材料は、一般に高い飽和磁束密度と透磁率を有するが、電気抵抗率が低いため、特に高周波数領域では渦電流損失が大きくなってしまう。近年、電源回路を高周波駆動して必要なインダクタンス値を下げることにより磁気部品を小型化する傾向にあるが、渦電流損失の影響から金属磁性材料を高周波で使用することはできない。
一方、酸化物磁性材料は、金属磁性材料に比べ、電気抵抗率が高いため、高周波数領域でも発生する渦電流損失が小さい。しかしながら、飽和磁束密度が小さいため、磁気飽和しやすいことから、その体積を小さくすることができなかった。つまり、いずれの場合でも、磁性体コアの体積がインダクタンス値を決定付ける一番大きな要因となっていて、磁性材料の磁気特性を向上させない限り、小型化、薄型化が困難となっていた。
このように、従来の磁気部品では、小型化に限界があり、電子機器の小型化、薄型化の要求に充分に応えられるものではなかった。
この課題を解決する方法として、1〜10μmの粒子からなる金属磁性材料の表面をM−Fex4(但しM=Ni、Mn、Zn、x≦2)で表されるスピネル組成の金属酸化物磁性材で被覆してなる高密度焼結磁性体が提案されている(特許文献1参照)。
さらに、特許文献2では、表面に超音波励起フェライトめっきによって形成されたフェライト層の被覆を有する金属または金属間化合物の強磁性体微粒子粉末が圧縮成形され、前記フェライト層を介して前記強磁性体粒子問に磁路を形成するものであることを特徴とする複合磁性材料が提案されている。
また、高密度で、かつ、比抵抗が高い軟磁性成形体を得る方法として、軟磁性の金属粒子と、その表面に被覆された高抵抗物質と、該高抵抗物質の表面に被覆されたリン酸系化成処理被膜とよりなることを特徴とする軟磁性粒子が提案されている(特許文献3参照)。
また、近年金属磁性材料の欠点である抵抗率を向上するために、飽和磁束密度および透磁率が高い軟磁性金属粒子の表面に、電気抵抗率の高い非磁性絶縁酸化物の被膜を形成してなる複合磁性粒子を用いた磁性材料が提案されている。
この手法によると、非磁性絶縁膜の効果により電気抵抗率が上昇することで渦電流を抑制できる、つまりMHz帯域などの高周波でも使用することができる。
また、高周波特性の改善のため、絶縁性向上を図る方法として、ベア粒子(未処理の粒子)を有機バインダーや湿式処理により形成した湿式被膜(例えば、水ガラス法を用いたSiO2被覆)で被覆することが検討されている。
有機バインダーや湿式被膜以外に、特許文献4では、軟磁性金属粒子の表面に絶縁性の高い酸化物粉末(チタニア、シリカ、アルミナなど)をまぶした粉末を用いる方法や、そのような粉末に圧縮・せん断作用を機械的に反復負荷する表面融合処理した粉末を用いる方法や、軟磁性金属粒子と酸化物粉末とを混合して表面融合処理した粉末を用いる方法が提案されている(ここでは上記の方法によって形成した被膜を乾式被膜と略す)。
また、軟磁性金属粒子が酸化されるのを防止するため、軟磁性金属粒子に鉄より酸化しやすい(平衡酸素圧の低い)シリコン、アルミニウムなどの元素を微量含有させて、熱処理によって含有元素の酸化物を軟磁性金属粒子表面に形成させるという提案もある。(例えば、特許文献3、5、6参照。)
特開昭56−38402号公報 国際公開第03/015109号パンフレット 特開2001−85211号公報 特開2003−332116号公報 特開2002−343618号公報 特開平7−179982号公報
しかし、前述した特許文献1〜3に記載した手法や電気抵抗率の高い非磁性絶縁酸化物の被膜を形成してなる複合磁性粒子を用いた磁性材料についても、透磁率向上と電気抵抗率向上がトレードオフの関係にあり、透磁率が大きな材料は抵抗率が低いため高周波では使用できず、抵抗率の高い材料は透磁率が数10〜100程度であり、高透磁率が得られないという問題がある。
たとえば、Fe−Ni系金属粒子(未処理状態のもの。以下ベア粒子と呼ぶ)を、充填率95%以上でプレスした場合、プレス後の状態では透磁率は100程度である。本材料を熱処理することで、透磁率は1000程度まで向上させることができるが、ベア粒子では粒子同士の界面での拡散結合で、ほぼ金属結晶レベルまで抵抗率が低下してしまい、数10kHzレベルまでの周波数帯域でしか使用できない。
特許文献3では、鉄を主成分としている金属粒子に酸化性の高い元素を添加して、それを酸化させて高抵抗層を得ようとしているが、酸化させるのは表面に近いところであり、金属粒子表面と内部では組成が異なり、透磁率が低下する。即ち、粒子の表面は「鉄+酸化性の高い元素の酸化物」の合金構造、内部は「鉄+酸化性の高い元素」の合金構造となっていて、合金構造では添加物の組成により透磁率が左右されるため、表面と内部では透磁率が異なる。従って、酸化後に表面と内部の一方が最適な組成になるよう酸化性の高い元素の濃度を調整すると、他方は高い透磁率が得られず、粒子全体の透磁率としては問題が生じる。
さらに、軟磁性金属粒子として広く用いられているパーマロイでは高透磁率を得るために酸化性の高いSiやAlなどは入れないので、このような手法は適用できない。
ベア粒子を被覆する有機バインダーや湿式処理により形成した湿式被膜は、いずれも耐熱性に乏しいという問題がある。
例えばベア粒子に水ガラス法を用いたSiO2被覆を形成した粒子を用いた場合、プレス後の抵抗率は1〜100Ωcmと大きな抵抗率を示すが、透磁率は30〜100程度であり、高い透磁率が得られない。プレス時に軟磁性金属粒子に生じた歪みを解放し透磁率を増加させるために500〜900℃の熱処理を実施すると、透磁率は大きくなるが、絶縁被膜の破壊によって抵抗率が低下し、周波数特性が悪化してしまう欠点がある。
また、特許文献4に記載の方法では、軟磁性金属粒子への被覆性を均一にすることは困難であり、被覆されていない部分で軟磁性金属粒子同士が接触することによって絶縁性が低下し、高周波特性が劣化してしまう欠点がある。
また、熱処理温度が高温になってくると、軟磁性金属粒子が急激に酸化し、そのために透磁率の向上が阻害され、場合によっては熱処理前より減少してしまうという欠点がある。さらに、熱処理はコスト面、量産性から大気雰囲気で実施するのが望ましいが、そうすると大気中の酸素によって酸化されてしまうという問題がある。
特許文献5、6、7の方法では、含有元素種によっては軟磁性金属粒子の磁気特性を変化させてしまうという問題がある。また、含有した元素の大半が軟磁性金属粒子表面で酸化物を形成するとは限らない。
熱処理の観点から上記従来技術の課題を整理すると次のようになる。即ち、プレスによって軟磁性粉末に生じた歪みを解放し透磁率を向上するために高温熱処理を実施すると、耐熱性の弱い絶縁被膜では被膜が破壊し、また耐熱性の高い乾式被膜では均一性に乏しく、良好な高周波特性が得られないという問題がある。
また、熱処理温度が高温になると、軟磁性金属粒子の急激な酸化が起こり、飽和磁化量の低下、透磁率の向上が阻害されてしまう欠点がある。
上述の課題を解決するため、本発明の絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子は、圧粉磁心のプレス成型に用いられる、軟磁性金属粒子の表面に絶縁酸化被膜を有する絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子であって、該絶縁酸化被膜が乾式被膜と湿式被膜とを積層してなる構造であることを特徴とする。
本発明の絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子は、乾式被膜と湿式被膜とを積層してなる構造を有しているので、乾式被膜の耐熱性と湿式被膜の均一性の特徴を組み合わせることによって、湿式被膜のみで起こる被膜破壊による急激な抵抗率減少や、乾式被膜のみで起こる被覆されていない部分での絶縁性低下を抑制し、プレス成型時に軟磁性金属粒子に生じた歪みを解放するための高温熱処理を可能にし、高透磁率で良好な高周波特性を得ることが可能となる。
本発明の絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子における湿式被膜としては水ガラス法によって形成したSiO2被膜を挙げることができるが、これに限定されるわけではない。
また、乾式被膜としては例えばアルミナ、シリカ、チタニア、マグネシアなどの酸化物のうち1種、または2種以上を混合して形成したものを用いることができる。
乾式被膜と湿式被膜を組み合わせる上で、軟磁性金属粒子表面に乾式被膜、湿式被膜の順に積層することが好ましい。つまり、先に乾式被膜を形成し、その後湿式被膜を形成する工程にすることが好ましい。耐熱性の高い乾式被膜を先に形成することで、熱処理による被膜破壊を抑制することができるからである。即ち、湿式被膜を先に形成すると、熱処理により湿式被膜が破壊された場合に、その外側に形成した乾式被膜が軟磁性金属粒子と湿式被膜を介して接続する構造も維持できなくなるのに対し、先に乾式被膜を形成しておけば、湿式被膜が熱処理により破壊されても乾式被膜と軟磁性金属粒子の接続を維持することができる。
また、高温熱処理による軟磁性金属粒子の急激な酸化を防止するために、熱処理温度において軟磁性金属粒子の主成分元素より平衡酸素圧の低い(酸化されやすい)元素からなる粒子を絶縁酸化被膜中に混合するのが好ましい。軟磁性金属粒子の近傍に軟磁性金属粒子の主成分元素より平衡酸素圧の低い元素が存在することによって、軟磁性金属粒子近傍の酸素と結合しやすくし、軟磁性金属粒子の酸化を効率的に抑制することが可能となる。即ち、この元素は、単一元素からなる粒子として絶縁酸化被膜に添加すると、熱処理時にこの粒子が先に酸化されるため、軟磁性金属粒子の急激な酸化を防止することができる。また、軟磁性金属粒子が既に酸化されている場合は、少なくともその一部を還元することができる。この粒子の粒径は、0.02〜0.2μmであることが好ましい。
この絶縁酸化被膜は乾式被膜であってもよく、湿式被膜であってもよく、乾式被膜と湿式被膜の両方であってもよいが、乾式被膜中に混合するのがより好ましい。特に、乾式被膜を軟磁性金属粒子の表面に先に形成する場合は、より効果的に上記の効果を奏させるために、乾式被膜中に上記粒子を混合することが有効である。また、乾式被膜に比べ、水ガラス法などで形成する湿式被膜に単一元素からなる粒子を均一に混合するのは難しいことからも、乾式被膜中に混合するのがより好ましい。
また、乾式または/および乾式被膜中に混合する単一元素粒子としては、乾式被膜および湿式被膜を構成する絶縁酸化被膜(より正確にはこの絶縁酸化被膜を構成する酸素以外の元素)より平衡酸素圧の高い、あるいは同等である元素を用いることが好ましい。
上記乾式または/および乾式被膜中に混合する単一元素粒子の元素としては、例えば、アルミ、シリコン、チタン、マグネシウム、クロム、カルシウム、亜鉛などの、軟磁性金属粒子の主成分である鉄やニッケル、コバルトより酸化されやすい元素が用いられる。ただし、これらの元素をあらかじめ軟磁性金属粒子に含有させると、軟磁性金属粒子の透磁率を低下させる可能性が高いので好ましくない。
単一元素としてこのような元素を用いることにより、混合した単一元素粒子によって乾式被膜、湿式被膜が還元されることを防止することができる。
また、乾式被膜と湿式被膜を概略同一組成にし、さらに、乾式被膜に混合する単一元素粒子として、該単一元素粒子が酸化によって乾式被膜と湿式被膜を構成する絶縁酸化物と同一になる元素を用いると、単一元素粒子が酸化された際乾式被膜と湿式被膜に融合しやすくなるので好ましい。
単一元素粒子の混合割合については、軟磁性金属粒子の酸化している割合が少なければ、単一元素粒子の割合を小さくすればよく、酸化の割合が多ければ、単体元素粒子の割合を大きくすればよい。軟磁性金属粒子が酸化されていなければ単一元素粒子が添加されていなくてもよく、酸化されている割合が極度に高ければ絶縁酸化被膜全体が単一元素粒子からなってもよく、乾式被膜全体が単一元素粒子からなってもよい。
以下、実施例を用いて、本発明の実施の形態を説明する。
<実施例1>
図1に、軟磁性金属粒子1に乾式被膜3を形成した後、湿式被膜2を形成した絶縁被膜付き軟磁性金属粒子の模式断面図を示す。
本実施例では、軟磁性金属粒子1として水アトマイズ法にて作製したNi78Mo5Fe粒子(Niが78重量%,Moが5重量%,残りがFeからなる粒子、以下同様)(平均粒径8μm)を用いた。
乾式被膜ではシリカを用い、湿式被膜には水ガラス法で形成したSiO2被膜を用いることにより、乾式被膜と湿式被膜を概略同一組成とした。
乾式被膜3の形成には、圧縮せん断型の機械式粒子複合化装置と呼ばれる装置による表面融合処理法を用いた。すなわち、この装置に粒径の大きい母粒子と粒径の小さい子粒子の混合物を投入し、圧縮・せん断作用を機械的に繰り返し、母粒子上に子粒子を固着(融合)させる処理を実施した。
より具体的には、平均粒径8μmの軟磁性金属粒子に、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を重量比で0.5%混合したものを装置に投入し、圧縮・せん断作用を機械的に連続的に加えて軟磁性金属粒子表面に乾式被膜を固着(融合)した。
こうして得られた乾式被膜は図1に示すように、軟磁性金属粒子1の周りに0.1μmのシリカ粒子(乾式被膜3)がところどころ固着(融合)した構造をしていた。
次いで、こうして得られた乾式被膜を有する軟磁性金属粒子の表面に、湿式被膜2のSiO2被膜を、平均被膜厚さが5nmになるように形成した。即ち、Na2O・xSiO2・nH2O(x=2〜4)の組成の水ガラス(この水ガラスの水溶液はアルカリ性を示す)を水に溶かした水溶液に乾式被膜付き軟磁性金属粒子を入れ、塩酸を溶液に加え、pHをコントロールして加水分解させ、ゲル状の珪酸(H2SiO3)を乾式被膜付き軟磁性金属粒子表面に付着させた。この後、この乾式被膜付き軟磁性金属粒子を乾燥させることでSiO2被膜を形成した。水ガラス水溶液の濃度を調節することで、SiO2被膜の膜厚を5nmに制御した。
上記のようにして得られた絶縁被膜付き軟磁性金属粒子を、超硬合金製の金型に充填し、1961MPa(20ton/cm2)の一軸プレスにより内径3mmφ、外形8mmφ、高さ約0.5mmのリングコア形状に成型した。成型後、電気炉にて大気中で熱処理をした。熱処理条件は設定温度700℃、保持時間1時間とした。
こうして得られたリングコアに1次および2次巻線をそれぞれ5ターン巻回し、B−Hアナライザにて複素透磁率μ=μ’+1μ”をIkHz〜10MHzの周波数領域で測定した。透磁率μ’の周波数特性を図5に示す。
また、抵抗率を四探針法で測定した。その結果を表1に示す。
<実施例2>
単一元素粒子として平均粒径0.1μmのシリコン粒子を、シリカ粒子に対して体積比1:4の割合(シリコン粒子がシリカ粒子の1/4)で混合したシリカ粒子を用いた以外は実施例1と同様にして絶縁被膜付き軟磁性金属粒子を得た。得られた絶縁被膜付き軟磁性金属粒子の模式断面図を図2に示す。図中、4が単一元素粒子としてのシリコン粒子である。
この絶縁被膜付き軟磁性金属粒子を用いた以外は実施例1と同様にしてリングコアを成型し、熱処理を行った。
単一元素粒子としてシリコンを選択したのは、軟磁性金属粒子の主成分である鉄、ニッケルより平衡酸素圧が低いためである。また、乾式被膜および湿式被膜を構成する絶縁酸化膜(実施例でSiO2)が還元された状態(Si)と同一元素であるので、生成酸化物は当初より形成されていた絶縁酸化膜となじみやすい。Siよりも平衡酸素圧の高いV、Cr、Mnを混合する粒子に用いても良い。ただし、絶縁酸化膜との親和性はSiより低くなる。
こうして得られたリングコアに1次および2次巻線をそれぞれ5ターン巻回し、B−Hアナライザにて複素透磁率μ=μ’+1μ”をIkHz〜10MHzの周波数領域で測定した。透磁率μ’の周波数特性を実施例1の結果と共に図5に示す。
また、抵抗率を四探針法で測定した。その結果を実施例1の結果と共に表1に示す。
<比較例1>
湿式被膜を形成しなかった以外は実施例1と同様にして乾式被膜付き軟磁性金属粒子を得た。得られた絶縁被膜付き軟磁性金属粒子の模式断面図を図3に示す。
この絶縁被膜付き軟磁性金属粒子を用いた以外は実施例1と同様にしてリングコアを成型し、熱処理を行った。
こうして得られたリングコアに1次および2次巻線をそれぞれ5ターン巻回し、B−Hアナライザにて複素透磁率μ=μ’+1μ”をIkHz〜10MHzの周波数領域で測定した。透磁率μ’の周波数特性を実施例1、2の結果と共に図5に示す。
また、抵抗率を四探針法で測定した。その結果を実施例1、2の結果と共に表1に示す。
<比較例2>
乾式被膜を形成しなかった以外は実施例1と同様にして湿式被膜付き軟磁性金属粒子を得た。得られた絶縁被膜付き軟磁性金属粒子の模式断面図を図4に示す。
この絶縁被膜付き軟磁性金属粒子を用い、熱処理温度を500℃とした以外は実施例1と同様にしてリングコアを成型し、熱処理を行った。
こうして得られたリングコアに1次および2次巻線をそれぞれ5ターン巻回し、B−Hアナライザにて複素透磁率μ=μ’+1μ”をIkHz〜10MHzの周波数領域で測定した。透磁率μ’の周波数特性を実施例1、2の結果と共に図5に示す。
また、抵抗率を四探針法で測定した。その結果を実施例1、2の結果と共に表1に示す。
<比較例3>
熱処理温度を600℃とした以外は比較例2と同様にしてリングコアを成型し、熱処理を行った。
こうして得られたリングコアに1次および2次巻線をそれぞれ5ターン巻回し、B−Hアナライザにて複素透磁率μ=μ’+1μ”をIkHz〜10MHzの周波数領域で測定した。透磁率μ’の周波数特性を実施例1、2の結果と共に図5に示す。
また、抵抗率を四探針法で測定した。その結果を実施例1、2の結果と共に表1に示す。
Figure 0004888784
比較例1では、低周波数領域でμ’が190程度と高くなっているが、数十kHzで透磁率が低下し、周波数特性は悪く、抵抗率も他に比べ低い。これは、被膜が均一に形成されておらず、軟磁性金属粒子が露出している部分で軟磁性金属粒子同士が接触し、抵抗率が減少したためと考えられる。
比較例2では、10MHzまで透磁率が一定で良好な周波数特性を示しているが、熱処理温度が500℃と比較的低かったため、透磁率は100程度と低い。透磁率を向上させるために熱処理温度を600℃に上げた比較例3では、SiO2被膜が破壊したことで、比較例2に比べ抵抗率が2桁程度低下し、周波数特性が悪化した。さらに透磁率を上げようと熱処理温度をさらに上げると、周波数特性はさらに悪化してしまう。
上記比較例1〜3に対し、実施例1では700℃という高温熱処理でも、比較例2の抵抗率より1桁程度の低下にとどまり、良好な高周波数特性を示している。湿式被膜2が熱処理によって破壊されたことによる抵抗率低下はあるが、700℃という高温熱処理でも乾式被膜3が高い絶縁性を維持しているため、抵抗率の急激な減少を抑制しているためと考えられる。また、高温熱処理を実施しているので、軟磁性金属粒子1の歪みが解放され、透磁率が向上している。
さらに実施例2では軟磁性金属粒子の酸化を抑制した効果により、透磁率を向上させることができた。また、抵抗率は実施例1とほぼ同等の値であった。
本発明によれば、抵抗率減少や絶縁性低下を抑制し、プレス成型時に軟磁性金属粒子に生じた歪みを解放するための高温熱処理を可能にし、高透磁率で良好な高周波特性を有する圧粉磁心を得ることができる。このような圧粉磁心は、スイッチング電源用トランス、リアクトルなどに用いる複合磁性材料および磁気部品として有用である。
本発明の実施例1で用いた絶縁酸化被膜付き金属磁性粒子を示す断面模式図である。 本発明の実施例2で用いた絶縁酸化被膜付き金属磁性粒子を示す段面模式図である。 比較例1で用いた乾式被膜付き金属磁性粒子を示した断面模式図である。 比較例2、3で用いた湿式被膜付き金属磁性粒子を示した断面模式図である。 本発明の実施例、比較例で得たリングコアの透磁率の周波数特性を示した図である。
符号の説明
1 軟磁性金属粒子
2 湿式被膜
3 乾式被膜を構成する酸化物粒子
4 単一元素粒子

Claims (7)

  1. 圧粉磁心のプレス成型に用いられる、軟磁性金属粒子の表面に絶縁酸化被膜を有する絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子であって、該絶縁酸化被膜が乾式被膜と湿式被膜とを積層してなる構造であり、該乾式被膜が、絶縁酸化物と、軟磁性金属粒子の主成分元素より平衡酸素圧の低い単一元素からなる粒子とからなり、前記乾式被膜中に混合される単一元素からなる粒子の元素が、酸化により、乾式被膜を構成する絶縁酸化物と同一になる元素であることを特徴とする絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子。
  2. 前記絶縁酸化被膜が、前記軟磁性金属粒子の表面に乾式被膜、湿式被膜の順に積層してなることを特徴とする請求項1記載の絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子。
  3. 前記乾式被膜を構成する絶縁酸化物と前記湿式被膜を構成する絶縁酸化物の平衡酸素圧が実質的に同一であることを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子。
  4. 前記乾式被膜を構成する絶縁酸化物と前記湿式被膜を構成する絶縁酸化物の組成が同一であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子。
  5. 前記絶縁酸化被膜中に、前記軟磁性金属粒子の主成分元素より平衡酸素圧の低い単一元素からなる粒子を混合してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子。
  6. 前記乾式被膜と前記湿式被膜が実質的に同一組成であることを特徴とする請求項5に記載の絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子。
  7. 圧粉磁心のプレス成型に用いられる、軟磁性金属粒子の表面に絶縁酸化被膜を有する絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子の製造方法であって、該絶縁酸化被膜が乾式被膜と湿式被膜とを積層してなる構造であり、該乾式被膜が、絶縁酸化物と、軟磁性金属粒子の主成分元素より平衡酸素圧の低い単一元素からなる粒子とからなり、前記乾式被膜中に混合される単一元素からなる粒子の元素が、酸化により、乾式被膜を構成する絶縁酸化物と同一になる元素であり、
    前記乾式被膜を構成する絶縁酸化物に、前記単一元素からなる粒子を混合する工程と、得られた混合物を軟磁性金属粒子表面に固着して乾式被膜を形成する工程とを含むことを特徴とする、絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子の製造方法。
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