JP4886947B2 - 半導体レーザ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ファブリ・ペロー型半導体レーザ装置やDBR構造を有する半導体レーザ装置などに適した半導体レーザ装置の構造に係り、特に光出力の向上対策に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、書き込み・書き換えが可能な光ディスク装置では、高速書き込みの必要性から、赤外半導体レーザの高出力化が重要な課題となっている。半導体レーザの高出力化のためには、端面の光学損傷(Catastrophic Optical Damage 、以下CODという)レベルの向上と出力の熱飽和の改善が必要である。
【0003】
もっとも一般的な半導体レーザ装置に関する第1の従来例として、GaAs層からなる活性層と、この活性層を上下から挟む2つの(Alx Ga1-x )As(0≦x≦1、場合によってはAlGaAsという)からなるクラッド層とを備えた半導体レーザ装置が知られている。
【0004】
また、第2の従来例として、GaAs,Alx1Ga1-x1As(0≦x1≦1、以下、場合によってはAlGaAsという)またはInx2Ga1-x2As(0≦x2≦1、以下、場合によってはInGaAsという)からなる活性層と、この活性層を上下から挟む2つのバンドギャップの大きな(Alx3Ga1-x3y In1-y P(0≦x3≦1、0≦y≦1、以下、場合によってはAlGaInPという)からなるクラッド層とを備えた半導体レーザ装置が知られている(例えば特開平5−218582号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の半導体レーザにおいては、以下に説明するような改善すべき点があった。
【0006】
例えば、半導体レーザ装置の高出力発振状態において活性層の温度上昇が著しくなると、活性層に注入されるキャリアの密度が過剰になってキャリアのクラッド層への溢れ(オーバーフロー)が生じることがあった。キャリアが活性層からクラッドへ溢れ出すと、これらのキャリアは非発光再結合に消費され、活性層のさらなる温度上昇を引き起こす。その結果、高出力発振状態ではチップ温度上昇のためにキャリアが消費され、電流量を増大していっても光出力がある値以上には増大しないという熱飽和現象が生じる。特に、単一の量子井戸層を有するものでは、この現象が生じやすかった。
【0007】
また、半導体レーザ装置の高出力発振状態において活性層の温度上昇が著しくなると、共振器端面の温度が著しく上昇することから、共振器端面での光吸収が増大し、ある電流量に達すると局所的に結晶が破壊される(溶融する),いわゆるCODが起こることがあった。
【0008】
そして、以上のような熱飽和現象やCODは、半導体レーザ装置の効率の向上に対する障害となっていた。
【0009】
また、燐を含む化合物半導体の結晶成長、例えばAlGaInP膜の結晶成長の後に燐を含まない結晶、例えばAlGaAs膜を結晶成長する場合、燐を含むガスが分解してできる燐がAlGaAs膜に混入することがある。したがって、AlGaAs膜を発光素子の活性層に用いた場合、AlGaAs層への燐の混入により活性層の特性が変化して、半導体レーザ装置の発光効率,発光波長の制御が困難になり、半導体レーザ装置の製造歩留まりが低下するおそれがあった。
【0010】
本発明の第1の目的は、比較的小さい電流量での熱飽和現象やCODの発生を抑制する手段を講ずることにより、半導体レーザ装置における光出力の向上を図ることにある。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、製造歩留まりの高い半導体レーザ装置の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の半導体レーザ装置は、基板上に設けられたレーザ発生領域である活性層を有する半導体レーザ装置であって、上記活性層の上方又は下方に設けられ、2以上の構成元素を含む第1の半導体からなるn型クラッド層と、上記活性層を挟んで上記n型クラッド層に対向する側に設けられ、2以上の構成元素を含む第2の半導体からなる障壁高さ規定用p型クラッド層とを備え、上記第2の半導体は、上記第1の半導体よりも多くの構成元素を含んでいる。
【0013】
この構成により、第2の半導体の組成を調整する範囲が広くなり、障壁高さ規定用p型クラッド層と活性層との伝導帯端のポテンシャル差を大きくして、障壁規定用p型クラッド層への電子のオーバーフローを低減することができるので、活性層への電子の閉じ込め効率が向上する。また、n型クラッド層の熱伝導率が障壁高さ規定用p型クラッド層の熱伝導率よりも大きくなるように調整することも容易となり、半導体レーザ装置の放熱性を向上させることができる。その結果、半導体レーザ装置の光出力の向上を図ることができる。
【0014】
上記障壁高さ規定用p型クラッド層と上記活性層との伝導帯端のポテンシャル差が、上記n型クラッド層と上記活性層との伝導帯端のポテンシャル差よりも大きいことにより、障壁高さ規定用p型クラッド層への電子のオーバーフロー抑制効果が確実に得られる。
【0015】
上記活性層は、AlGaAs又はGaAsによって構成されており、上記障壁高さ規定用p型クラッド層を構成する第2の半導体は、(Alx Ga1-xy In1-y P(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される組成を有することにより、障壁高さ規定用p型クラッド層と活性層との間の伝導帯端のポテンシャル差を、大きくすることがさらに容易となる。
【0016】
上記障壁高さ規定用p型クラッド層の層厚が、10nm以上300nmかつ以下であることにより、活性層から障壁高さ規定用p型クラッド層を通る熱伝導経路の熱抵抗を低く抑えることができる。
【0017】
上記第2の半導体のAl組成比xは、0.3<x≦0.7の範囲内にあることにより、障壁高さ規定用p型クラッド層と活性層との伝導帯端のポテンシャル差を350meVよりも大きくすることができ、活性層からの電子のオーバーフローを効果的に抑制することができる。
【0018】
上記第2の半導体のIn組成比yは、0.45≦y≦0.55の範囲内にあることにより、活性層を構成するGaAsと第2の半導体との格子整合を実現することができ、第2の半導体の結晶性が向上する。
【0019】
上記n型クラッド層を構成する第1の半導体は、Alx1Ga1-x1As(0≦x1≦1)で表される組成を有することにより、n型クラッド層の熱伝導率を障壁高さ規定用p型クラッド層の熱伝導率よりも確実に大きくすることができ、放熱特性を向上させることができる。
【0020】
上記第1の半導体のAl組成比x1は、0.2≦x1≦0.7の範囲内にあることが好ましい。
【0021】
上記活性層の層厚は、0.5nm以上5nm以下であることにより、端面での熱吸収を抑制することができ、光出力を向上させることができる。
【0022】
上記障壁高さ規定用p型層を挟んで上記活性層に対向する側に設けられ、Alx2Ga1-x2As(0≦x2≦1))からなる半導体層をさらに備えることにより、活性層で発生する熱をより効果的に放散することができる。
【0023】
上記障壁高さ規定用p型クラッド層は上記活性層の上方に設けられ、構成元素としての燐を含んでおり、上記活性層は、燐を含まない半導体によって構成されていることにより、活性層が形成された後に、燐を含む障壁高さ規定用p型クラッド層が形成される構造となるので、活性層への燐の混入を抑制することができる。それにより、活性層の特性が変化せず、半導体レーザ装置の発光効率、発光波長がほとんど変化しない。
【0024】
同様の理由により、上記n型クラッド層は上記活性層の下方に設けられ、燐を含まない半導体によって構成されていることが好ましい。
【0025】
本発明の半導体レーザ装置は、ファブリ・ペロー(FP)共振器を有するものにも適用することができ、分布ブラッグ反射型(DBR)構造を有するものにも適用することができる。
【0026】
本発明の第2の半導体レーザ装置は、基板上に設けられたレーザ発生領域である活性層を有する半導体レーザ装置であって、上記活性層の上方又は下方に設けられ、第1の半導体からなるn型クラッド層と、上記活性層を挟んで上記n型クラッド層に対向する側に設けられ、第2の半導体からなる障壁高さ規定用p型クラッド層と、上記障壁高さ規定用p型クラッド層と上記活性層との間に設けられた少なくとも1つの第1スパイク緩和用p型クラッド層とを備え、上記障壁高さ規定用p型クラッド層と上記活性層との価電子帯端のポテンシャル差の大きさは、上記第1スパイク緩和用クラッド層と上記活性層との価電子帯端のポテンシャル差よりも大きい。
【0027】
この構成により、障壁高さ規定用p型クラッド層と活性層との価電子帯端のポテンシャル差に応じて発生するスパイクによる障壁高さ又はバンド不連続量を小さくすることができ、動作電圧の低減を図ることができる。
【0028】
上記活性層は、AlGaAs又はGaAsによって構成されており、上記障壁高さ規定用p型クラッド層を構成する第2の半導体は、(Alx1Ga1-x1y1In1-y1P(0≦x1≦1、0≦y1≦1)で表される組成を有することにより、活性層への電子の閉じ込め効率の向上による光出力の向上を図ることができる。
【0029】
上記第1スパイク緩和用p型クラッド層は、Alx2Ga1-x2As(0≦x2≦1)で表される組成を有し、上記x2は、上記活性層から上記障壁高さ規定用p型クラッド層へ向かう方向に増大していることにより、障壁高さ規定用p型クラッド層から活性層に至るまでの領域におけるスパイクをほとんどなくすことができる。
【0030】
上記第1スパイク緩和用p型クラッド層は、(Alx3Ga1-x3y2In1-y2P(0≦x3≦1、0≦y2≦1)で表される組成を有し、上記x3は、上記活性層から上記障壁高さ規定用p型クラッド層へ向かう方向に増大していることによっても、障壁高さ規定用p型クラッド層から活性層に至るまでの領域におけるスパイクをほとんどなくすことができる。
【0031】
上記障壁高さ規定用p型クラッド層を挟んで上記活性層に対向する側に設けられたp型コンタクト層と、上記障壁高さ規定用p型クラッド層と上記p型コンタクト層との間に設けられた少なくとも1つの第2スパイク緩和用p型クラッド層とをさらに備え、上記障壁高さ規定用p型クラッド層と上記第2スパイク緩和用p型クラッド層との価電子帯端のポテンシャル差は、上記障壁高さ規定用p型クラッド層と上記p型コンタクト層との価電子帯端のポテンシャル差よりも小さいことにより、障壁高さ規定用p型クラッド層とp型コンタクト層との価電子帯端のポテンシャル差によるスパイクによる障壁高さ又はバンド不連続量を小さくすることができ、動作電圧の低減を図ることができる。
【0032】
上記第2スパイク緩和用p型クラッド層は、Alx4Ga1-x4As(0≦x4≦1)で表される組成を有し、上記x4は、上記障壁高さ規定用p型クラッド層から上記p型コンタクト層へ向かう方向に減少していることにより、障壁高さ規定用p型クラッド層からp型コンタクト層に至るまでの領域におけるスパイクをほとんどなくすことができる。
【0033】
上記第2スパイク緩和用p型クラッド層は、(Alx5Ga1-x5y3In1-y3P(0≦x5≦1、0≦y3≦1)で表される組成を有し、上記x5は、上記障壁高さ規定用p型クラッド層かた上記p型コンタクト層へ向かう方向に減少していることによっても、障壁高さ規定用p型クラッド層からp型コンタクト層に至るまでの領域におけるスパイクをほとんどなくすことができる。
【0034】
上記障壁高さ規定用p型クラッド層を挟んで上記活性層とは対向する側に設けられ、窓部を有する電流ブロック層と、上記電流ブロック層の上記窓部を埋めるように形成された埋め込みp型クラッド層とをさらに備え、上記電流ブロック層の屈折率は、上記障壁高さ規定用p型クラッド層の屈折率および上記埋め込みp型クラッド層の屈折率よりも小さいことが好ましい。これにより、実屈折率導波構造が実現され、光の導波損失を低く抑制することができる。
【0035】
上記電流ブロック層はAlx6Ga1-x6As(0≦x6≦1)で表される組成を有しており、上記障壁高さ規定用p型クラッド層と上記埋め込みクラッド層との間に設けられ、(Alx7Ga1-x7y4In1-y4P(0≦x7≦1、0≦y4≦1)からなるエッチング停止層をさらに備えていることが好ましい。
【0036】
上記障壁高さ規定用p型クラッド層を挟んで上記活性層に対向する側に設けられたp型コンタクト層と、上記埋め込みp型クラッド層と上記p型コンタクト層との間に設けられた少なくとも1つの第2スパイク緩和用p型クラッド層とをさらに備え、上記第2スパイク緩和用p型クラッド層と上記p型コンタクト層との価電子帯端のポテンシャル差は、上記埋め込みp型クラッド層と上記p型コンタクト層との価電子帯端のポテンシャル差よりも小さいことにより、動作電圧をさらに低減することができる。
【0037】
上記第2スパイク緩和用p型クラッド層は、Alx8Ga1-x8As(0≦x8≦1)で表される組成を有し、上記x8は、上記埋め込みp型クラッド層から上記p型コンタクト層へ向かう方向に減少していることにより、埋め込みp型クラッド層から上記p型コンタクト層に至る領域におけるスパイクをほとんどなくすことができる。
【0038】
この第2の半導体レーザ装置は、ファブリ・ペロー(FP)共振器を有するものであってもよいし、分布ブラッグ反射型(DBR)構造を有するものであってもよい。
【0039】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
−半導体レーザ装置の構成及び製造方法−
図1は、本発明の第1の実施形態における半導体レーザ装置のストライプ方向に直交する方向の断面図である。本実施形態においては、ファブリ・ペロー(FP)共振器を有する半導体レーザ装置について説明する。
【0040】
図1に示すように、本実施形態の半導体レーザ装置は、n型GaAs基板1の上に、n型Al0.5 Ga0.5 As結晶からなる厚さ3μmのn型クラッド層2と、Al0.3 Ga0.7 As結晶からなる厚さ40nmの光導波路層3と、GaAs結晶からなる厚さ3nmの単一量子井戸型の活性層4と、Al0.3 Ga0.7 As結晶からなる厚さ40nmの光導波路層5と、p型(Al0.7 Ga0.30.5 In0.5 P結晶からなる厚さ50nmの障壁高さ規定用のp型第1クラッド層6と、p型Al0.5 Ga0.5 As結晶からなる厚さ100nmのp型第2クラッド層7と、p型Al0.2 Ga0.8 As結晶からなる厚さ10nmのエッチング停止層(以下ES層という)8と、n型Al0.6 Ga0.4 As結晶からなる厚さ700nmの電流ブロック層9と、p型Al0.5 Ga0.5 As結晶からなる厚さ2.5μmのp型第3クラッド層10と、p型GaAs結晶からなる厚さ2.5μmのコンタクト層11とを順次形成して構成されている。また、図示されていないが、n型GaAs基板1の裏面およびコンタクト層11の上に、それぞれn型電極およびp型電極が設けられた構成となっている。
【0041】
上記半導体レーザ装置を構成する部材のうち化合物半導体層の結晶成長は、有機金属気相エピタキシャル(以下MOVPEという)装置を用い、MOVPE法により、以下の手順で行なった。
【0042】
まず、n型GaAs基板1の上に、クラッド層2,光導波路層3,活性層4,光導波路層5及びp型第1クラッド層6を順次エピタキシャル成長させた。その後、p型第1クラッド層6の上に、p型第2クラッド層7,ES層8及び電流ブロック層9を順次エピタキシャル成長させた。以下、n型GaAs基板1の上に、何らかの結晶膜が形成されたものを単にエピタキシャル基板という。
【0043】
続いて、エピタキシャル基板を、MOVPE装置から取り出し、電流ブロック層9の選択エッチングを行なって、ES層8に達する溝を形成する。
【0044】
その後、エピタキシャル基板を再びMOVPE装置に戻し、ES層8及び電流ブロック層9の上に、電流ブロック層9に設けられた溝を埋めるp型第3クラッド層10をエピタキシャル成長させた後、p型第3クラッド層10の上にコンタクト層11をエピタキシャル成長させる。
【0045】
その後、エピタキシャル基板をMOVPE装置から取り出し、n型GaAs基板1の裏面およびコンタクト層11の上に、それぞれn型電極およびp型電極を設ける。
【0046】
その後、エピタキシャル基板を、劈開により複数個の共振器長800μmのレーザチップに分割した。その後、レーザチップの相対向する2つの劈開面いわゆる端面に、端面保護コーティングとしてアモルファスシリコンとSiO2 との多層膜をコーティングした。また、高い光出力を得るために、レーザチップの後端面を高反射率(90%)に、レーザチップの前端面を低反射率(10%)になるように、非対称コーティングを施した。
【0047】
本実施形態の半導体発光装置(半導体レーザ装置)によると、活性層4を上下から挟む2つのクラッド層のうち,障壁高さ規定用のp型第1クラッド層6をAlGaInPによって構成しているので、活性層4とp型第1クラッド層6との間の伝導帯におけるポテンシャル差ΔEcを大きくすることができる。その結果、活性層4中の電子(キャリア)のp型第1クラッド層6へのオーバーフローを抑制することが可能となり、キャリアのオーバーフローに起因する,高出力発振状態における熱飽和現象の発生が抑制されることになる。
【0048】
また、n型クラッド層2が比較的熱伝導率の高いAlGaAsによって構成されているので、半導体レーザ装置の高出力発振状態においても、活性層の温度上昇が小さくなり、共振器端面における温度上昇が抑制されることから、共振器端面での光吸収が小さくなる。その結果、光学損傷(Catastrophic Optical Damage )いわゆるCODの発生が抑制される。
【0049】
また、本実施形態の製造方法によると、GaAsからなる活性層4を結晶成長した後に、活性層4の上に、ホスフィンを用いてp型(Al0.7 Ga0.30.5 In0.5 P結晶をエピタキシャル成長させているので、ホスフィンが分解してできる燐が活性層4に混入することはほとんどないといえる。したがって、活性層4の特性が変化して半導体レーザ装置の発光効率、発光波長が変化するような特性劣化が生じることがほとんどない。その結果、半導体レーザ装置を多量生産する場合においても、半導体レーザ装置の光学特性ばらつきを小さく抑えることができ、半導体レーザ装置の製造歩留まり率を向上させることができる。
【0050】
−第1の従来例との比較−
本実施形態の半導体発光装置の効果を確かめるために、本発明の半導体レーザ装置について、以下に述べるような検討および考察を行った。
【0051】
図2は、本実施形態及び第1の従来例の半導体レーザ装置の電流−光出力特性(以下I−L特性という)を比較して示す図である。図2において、実線A1は、本実施形態の半導体レーザ装置のI−L特性を、破線B1は厚さ3nmの単一量子井戸活性層を有する第1の従来例の半導体レーザ装置のI−L特性を、破線B2は厚さ3nmの2つの量子井戸からなる二重量子井戸活性層を有する第1の従来例の半導体レーザのI−L特性をそれぞれ示している。図2に示す本実施形態の半導体レーザ装置においては、活性層の下方に設けられるクラッド層(n型クラッド層2)はn型Al0.5 Ga0.5 As結晶により構成され、活性層の上方に設けられるクラッド層(p型第1クラッド層6)はp型(Al0.7 Ga0.30.5 In0.5 Pにより構成されている。それに対し、図2に示す従来の各半導体レーザ装置においては、活性層の下方に設けられるクラッド層はn型Al0.5 Ga0.5 As結晶により構成され、活性層の上方に設けられるクラッド層はp型Al0.5 Ga0.5 As結晶によって構成されている。
【0052】
図2からわかるように、第1の従来例の半導体レーザ装置のうち単一量子井戸型のもの(破線B1参照)においては、CODは生じないが、電流値500mA付近を越えても光出力が220mW以上に高くならずに、逆に、光出力が減少していくという熱飽和現象が生じている。一方、二重量子井戸型のもの(破線B2参照)においては、熱飽和現象が生じる前に、電流値が300mA付近,光出力が200mW付近でCODが発生している。つまり、活性層の上下のクラッド層をAlGaAsにより構成した従来の半導体レーザ装置では、光出力200mW以上で安定したレーザ発振を実現することは困難であった。
【0053】
それに対し、本発明の半導体レーザ装置では、電流値が380mA付近,光出力が340mWにおいてCODが発生するまで、光出力の飽和が生じなかった。これは、活性層4の上方のクラッド層であるp型第1クラッド層6を(Al0.7 Ga0.30.5 In0.5 Pにより構成していることによるもので、以下の理由によると考えられる。
【0054】
図3は、AlGaAs/GaAs/AlGaInPの各層のバンド構造の相違を、AlGaAs層及びAlGaInP層の組成を変化させて示す図である。同図において、中央にはGaAs層のバンド構造を示し、左方にはAlx Ga1-x As層におけるAl組成比xを0(右端)から1(左端)まで変化させたもののバンド構造を示し、右方には(Alx Ga1-x0.5 In0.5 P層におけるAl組成比xを0(左端)から1(右端)まで変化させたもののバンド構造を示している。なお、半導体レーザ装置においては、伝導帯の電子の分布がポテンシャルの高い領域まで広がるのに対し、価電子帯では正孔の分布がポテンシャルの低い領域のみに限定されることから、価電子帯端のポテンシャル差は伝導帯端のポテンシャル差に比べてレーザ特性には影響が少ない。そこで、以下の考察においては、各層の伝導帯端のポテンシャルのみについて説明する。
【0055】
図3に示すように、Alx Ga1-x As層におけるAl組成比xを1から0まで変化させると、Al組成比xが0.4付近のときに伝導帯端のポテンシャルがもっとも高くなっており、このときのGaAs層の伝導帯端とのポテンシャル差ΔEcmax は約0.34eV(340meV)である。従来の半導体レーザ装置における2つのクラッド層(組成Al0.5 Ga0.5 As)においても、GaAs層とのポテンシャル差は約340meVである。それに対し、(Alx Ga1-x0.5 In0.5 P層におけるAl組成比xを0から1まで変化させると、Al組成比xが0.7付近のときに伝導帯端のポテンシャルがもっとも高くなっており、このときのGaAs層の伝導帯端とのポテンシャル差ΔEcmax は約0.39eV(390meV)である。したがって、本実施形態のp型第1クラッド層6(組成(Al0.7 Ga0.30.5 In0.5 P)の伝導帯端と、GaAs層である活性層4の伝導帯端とのポテンシャル差は、約390meVである。
【0056】
図5は、本実施形態の半導体レーザ装置における電圧印加時のバンド状態を模式的に示す図である。同図に示すように、本実施形態の半導体レーザ装置において、n型クラッド層2の伝導帯端と活性層4の伝導帯端とのポテンシャル差は約340meVであるが、p型第1クラッド層6の伝導帯端と活性層4の伝導帯端とのポテンシャル差は約390meVである。
【0057】
その結果、GaAs基板1からn型クラッド層2を経て活性層4に注入される電子は、高さ約390meVの障壁によって量子井戸である活性層4に閉じ込められることになる。一方、図5において破線で示す従来の半導体レーザ装置の活性層の上方にあるp型クラッド層の伝導帯端は、GaAs層の伝導帯端に対して340meVのポテンシャル差しかない。
【0058】
以上の実験データから得られた事実を総合すると、本実施形態の半導体レーザ装置の場合、(Al0.7 Ga0.30.5 In0.5 Pからなるp型第1クラッド層6の伝導帯端と、GaAsからなる活性層4の伝導帯端とのポテンシャル差ΔEcmax が390meVであり、従来のp型クラッド層の伝導帯端と活性層の伝導帯端とのポテンシャル差340meVよりも大きいことから、活性層への電子の閉じ込め効率が向上し、その結果、伝導帯端におけるキャリアのオーバーフローが抑制され、高い光出力が得られるものと考えられる。
【0059】
特に、本実施形態の半導体レーザ装置のごとく、活性層4を厚さ3nmの単一量子井戸により構成することにより、二重量子井戸構造を有するものよりも、端面における光吸収量を低減することができる。その結果、本実施形態では、共振器端面における発熱が抑制され、340mWという高いCODレベルが得られることになる。
【0060】
−第2の従来例との比較−
図4は、本実施形態及び第2の従来例の半導体レーザ装置のI−L特性を比較して示す図である。図4において、実線A1は、図2に示すと同様に本実施形態の半導体レーザ装置のI−L特性を、破線B3は厚さ3nmの単一量子井戸活性層を有する第2の従来例の半導体レーザ装置のI−L特性をそれぞれ示している。図4に示す第2の従来例の各半導体レーザ装置においては、活性層の下方に設けられるクラッド層はn型(Al0.7 Ga0.30.5 In0.5 Pにより構成され活性層の上方に設けられるクラッド層はp型(Al0.7 Ga0.30.5 In0.5 Pにより構成されている。つまり、第2の従来例の半導体レーザ装置においては、上下双方にAlGaInP層からなるクラッド層が設けられている。
【0061】
図4からわかるように、第2の従来例の半導体レーザ装置では、電流値が340mA付近,光出力が260mW付近でCODが発生している。つまり、活性層の上下のクラッド層をAlGaInPにより構成した第2の従来例の半導体レーザ装置では、光出力300mW以上で安定したレーザ発振を実現することは困難であった。
【0062】
それに対し、本実施形態の半導体レーザ装置では、電流値が400mA付近,光出力が340mWにおいてCODが発生するまで、光出力の飽和が生じていない。また、本実施形態の半導体レーザ装置のスロープ効率(特性線A1の傾斜)は第2の従来例のスロープ効率(特性線B3の傾斜)よりも大きい。
【0063】
これは、活性層4の上方のクラッド層であるp型第1クラッド層6を(Al0.7 Ga0.30.5 In0.5 Pにより構成する一方、活性層4の下方のクラッド層であるn型クラッド層2をAlGaAsにより構成していることによるものと考えられる。
【0064】
第2の従来例では、活性層の上下に、AlGaAsよりもバンドギャップの大きいAlGaInPからなる2つのクラッド層を設けることにより、GaAsからなる活性層とクラッド層との間における伝導帯端のポテンシャル差を第1の従来例よりも拡大し、第1の従来例よりも大きな光出力を実現している。
【0065】
しかし、一般に、AlGaInPの熱伝導率はAlGaAsの熱伝導率よりも小さい。下記表1は、(Al0.7 Ga0.30.5 In0.5 Pと、Al0.5 Ga0.5 Asとの熱伝導率を示す表である。
【0066】
【表1】
Figure 0004886947
【0067】
上記表1に示すように、(Al0.7 Ga0.30.5 In0.5 Pの熱伝導率は、Al0.5 Ga0.5 Asの熱伝導率に比べて2倍近く大きいことがわかる。
【0068】
そのために、第2の従来例においては、活性層において発生した熱の放熱性がよくないために、第1の従来例よりも共振器端面の温度が上昇しやすくなっていて、CODが生じている可能性がある。
【0069】
それに対し、本実施形態の半導体レーザ装置においては、活性層を挟む2つのクラッド層のうち一方のクラッド層(p型第1クラッド層6)のみを熱伝導率の小さい(Al0.7 Ga0.30.5 In0.5 P層とし、他方のクラッド層(n型クラッド層2)は比較的熱伝導率の高いAl0.5 Ga0.5 As層としているので、第2の従来例に比べて放熱性が向上しているはずである。そして、その結果、本実施形態の半導体レーザ装置の光出力が第2の従来例よりも向上しているものと思われる。
【0070】
また、図5に示すように、障壁高さ規定用のp型クラッド層のみを大きなΔEcを有する(Al0.7 Ga0.30.5 In0.5 P層とすれば、GaAs基板1からn型クラッド層2を経て活性層4に注入される電子を、高さ約390meVの障壁によって量子井戸である活性層4に閉じ込めることができるので、本実施形態の半導体レーザ装置における活性層への電子の閉じ込め機能は、第2の従来例に比べてほとんど劣っていないと思われる。
【0071】
なお、p型第1クラッド層6に(Alx Ga1-xy In1-y P(0≦x≦1、0≦y≦1)を用いる場合、yが約0.5であること、とりわけ0.45≦y≦0.55であることにより、p型第1クラッド層6と下地のAl0.3 Ga0.7 As結晶からなる光導波路層5との格子定数がほぼ一致して、両層が格子整合状態になる。
【0072】
そして、yが約0.5である場合には、0.3<x≦0.7であることが好ましい。その第1の理由は、0.3<xのときは350meV<ΔEcとなって第1の従来例の半導体レーザ装置よりも電子のオーバーフローが起こりにくくなるからである。また、第2の理由は、x≦0.7の場合にはAl(Al1-x Gaxy In1-y Pが直接遷移型半導体となるが、x>0.7の場合にはAl(Al1-x Gaxy In1-y Pが間接遷移型半導体となって、伝導帯の底がΓ点からX点に移り、ΔEcが減少し、活性層に注入される電子に対するオーバーフローの抑制効果が低下するからである。さらに、Al(Al1-x Gaxy In1-y Pが直接遷移型半導体であるという条件下(x≦0.7)では、Al組成比が増大するほどΔEcが増大するので、特に、x=0.7であることが好ましい。
【0073】
また、本実施形態においては、p型第1クラッド層6の厚さを50nmと薄くしたが、これは活性層4からp型電極までの熱抵抗を低く抑えるためである。一方、表1に示すように、AlGaInPの熱伝導率はAlGaAsの熱伝導率に比べて小さいので、p型第1クラッド層6の厚さは、キャリアの閉じ込め機能を発揮しうる範囲すなわち電子のド・ブロイ波長程度(約10nm)以上で、放熱性を害さない厚さである300nm以下とするのが望ましい。
【0074】
なお、活性層4の厚さは、光閉じ込め係数をできるだけ小さくして端面での光吸収をできるだけ抑えるためにはできるだけ薄いことが好ましく、また、単一量子井戸型の活性層であることが好ましい。さらに、単一量子井戸の膜厚は、0.5nm以上で5nm以下であることが好ましい。そのようにすれば、半導体レーザ装置のCODレベルをより向上させることができる。なお、電流ブロック層としては、レーザ光の吸収がほとんどなく、かつ、熱伝導率の高い半導体材料を用いることが好ましく、とりわけAlGaAsが好ましい。
【0075】
なお、AlGaAsやAlGaInPに限らず、他の半導体材料、例えばInx Ga1-x Asy1-y (0≦x≦1、0≦y≦1、InGaAsP)や、Bx Aly Ga1-x-y-z Inz N(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、BAlGaInN)などの4元以上の混晶は、3元混晶よりも熱伝導率が小さい。一般に、混晶を構成する元素数が大きいほど熱伝導率が小さい。そこで、活性層を挟む2つのクラッド層のうち一方をn元混晶(nは3以上の整数)とし、他方を(n−1)元混晶としても、上記実施形態において得られたのと同様の効果が得られる。そのとき、活性層としてはAlGaAs以外の材料を用いてもよいことはいうまでもない。
【0076】
なお、4元以上の混晶では、格子定数とエネルギー・バンドギャップとを独立に制御できることから、格子不整合に起因する結晶欠陥の発生を抑制しつつ,所望のバンドギャップを得ることができるため、4元以上の混晶を一方のクラッド層に用いることが好ましい。3元混晶においても、膜厚が、転位発生の臨界膜厚以下であれば、クラッド層に用いることができる。なお、p型第3クラッド層10としてはリッジ形状のものでもよい。
【0077】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態における半導体レーザ装置のストライプ方向に直交する方向の断面図である。
【0078】
図6に示すように、本実施形態の半導体レーザ装置は、n型GaAs基板11の上に、n型Al0.5 Ga0.5 As結晶からなる厚さ3μmのn型クラッド層12と、Al0.3 Ga0.7 As結晶からなる厚さ50nmの光導波路層13と、GaAs結晶からなる厚さ3nmの単一量子井戸型の活性層14と、Al0.3 Ga0.7 As結晶からなる厚さ50nmの光導波路層15と、第1スパイク緩和用のp型Al0.65Ga0.35Asからなる厚さ25nmの第1クラッド層16と、障壁高さ規定用のp型(Al0.7 Ga0.30.5 In0.5 P結晶からなる厚さ40nmのp型第2クラッド層17と、p型Al0.75Ga0.25As結晶からなる厚さ40nmのp型第3クラッド層18と、p型Al0.5 Ga0.5 As結晶からなる厚さ40nmのp型第4クラッド層19と、p型Al0.2 Ga0.8 As結晶からなる厚さ10nmのエッチング停止層20と、n型Al0.7 Ga0.3 As結晶からなりストライプ状の窓部21aを有する厚さ700nmの電流ブロック層21と、電流ブロック層21の窓部21aを埋めて電流ブロック層21の上に延びるp型Al0.5 Ga0.5 As結晶からなる最大厚さ2.5μmのp型第5クラッド層22と、p型Al0.25Ga0.75As結晶からなる厚さ40nmのp型第6クラッド層23と、p型GaAs結晶からなる厚さ2.5μmのp型コンタクト層24とを順次形成して構成されている。また、図示されていないが、n型GaAs基板11の裏面にはn型電極が、p型コンタクト層24にはp型電極がそれぞれ設けられた構成となっている。
【0079】
図7は、本実施形態の半導体レーザ装置の光導波路層13からp型コンタクト層24までの伝導帯と価電子帯とのバンドダイアグラムを示すエネルギバンド図である。ただし、図7においては、バンド構造のみについて理解を容易にするために、活性層以外の各層の厚みをほぼ均一化して表している。同図に示すように、光導波路層15と、p型(Al0.7 Ga0.30.5 In0.5 P結晶からなるp型第2クラッド層17との間に、バンドギャップが光導波路層15よりも大きくp型第2クラッド層17よりも小さいp型Al0.65Ga0.35Asからなる第1クラッド層16が設けられている。ここでは、光導波路層15のp型キャリアの密度を1×1016cm-3、p型第1クラッド層16のキャリア密度を7×1017cm-3、p型第2クラッド層17のキャリア密度を7×1017cm-3としている。
【0080】
図7に示すように、光導波路層15とp型第1クラッド層16との境界部、p型第1クラッド層16とp型第2クラッド層17との境界部には、それぞれ障壁高さVD16 ,VD17 のスパイク(寄生バリア)が生じている。つまり、第1の実施形態においても、図5には示されていないが、光導波路層5とp型第1クラッド層6との間の価電子帯端には大きなスパイクが生じている。本実施形態は、この価電子帯端の大きなスパイクを2つの小さなスパイクによって緩和したものである。
【0081】
上記半導体レーザ装置を構成する部材のうち化合物半導体層の結晶成長は、有機金属気相エピタキシャル(以下MOVPEという)装置を用いて、基本的には、第1の実施形態と同様の方法により行なわれる。
【0082】
そして、エピタキシャル基板は、劈開により、共振器方向すなわちストライプ方向の長さが800μmのレーザチップに分割されている。レーザチップの相対向する2つの劈開面いわゆる端面に、端面保護コーティングとしてアモルファスシリコンとSiO2 との多層膜がコーティングされる。また、高い光出力を得るために、レーザチップの後端面を高反射率(90%)に、レーザチップの前端面を低反射率(10%)になるように、非対称コーティングが施されている。
【0083】
本実施形態の半導体レーザ装置によれば、p型第2クラッド層17がp型(Al0.7 Ga0.30.5 In0.5 Pにより構成されているので、第1の実施形態で説明したように、活性層14とp型第2クラッド層17との伝導帯端におけるポテンシャル差ΔEcを大きくとることができる。したがって、本実施形態の半導体レーザ装置は、第1の実施形態と同様に、活性層14への電子の閉じ込め効率が向上し、光出力の向上を図ることができる。
【0084】
加えて、本実施形態においては、光導波路層15とp型第2クラッド層17との間に、両者のバンドギャップの中間的なバンドギャップを有するp型Al0.65Ga0.35Asからなるp型第1クラッド層16が介在しているので、価電子帯端に発生するスパイク(寄生バリア)による障壁高さを低く抑えることができる。すなわち、本実施形態の半導体レーザ装置においては、p型第1クラッド層16とp型第2クラッド層17との間に印加すべきバイアス電圧を低減することができるので、半導体レーザ装置の動作電圧を低減することができる。
【0085】
また、このように活性層14への電子の閉じ込め効率の向上作用と、半導体レーザ装置の動作電圧の低減作用とが相俟って、半導体レーザ装置の発熱を抑えることができ、半導体レーザ装置の出力をよりいっそう高くすることができる。
【0086】
本実施形態の半導体レーザ装置において、光学損傷(COD)レベルは350mW以上であり、光出力を200mWとしたときの動作電圧は2.1Vであり、光出力が350mWに至るまでに熱飽和現象は観測されなかった。
【0087】
次に、本実施形態の半導体レーザ装置について、光導波路層15からp型第2クラッド層17までの各層に関し、伝導帯および価電子帯におけるポテンシャル差を検討し、それが半導体レーザ装置の特性にどのように影響を与えるかを議論する。
【0088】
−伝導帯におけるポテンシャル差の検討−
本実施形態の半導体レーザ装置においても、第1の実施形態と同様に、活性層14と障壁高さ規定用のp型第2クラッド層17との伝導帯端におけるポテンシャル差ΔEcは、390meVである。すなわち、本発明の半導体レーザ装置は、従来のAlx Ga1-x As系のみの材料で構成された半導体レーザ装置と比べて、p型クラッド層(p型第2クラッド層17)と活性層とのポテンシャル差ΔEcが大きく、それが活性層14への電子の閉じ込め効率を従来の半導体レーザ装置と比べて大きくすることができるものと考えられる。
【0089】
−価電子帯に発生するスパイクによる障壁高さの検討−
図7に示すように、光導波路層15と障壁高さ規定用のp型第2クラッド層17との間に、p型Al0.65Ga0.35Asからなる第1スパイク緩和用のp型第1クラッド層16が介在している場合、価電子帯には以下の障壁高さを有するスパイクが発生する。光導波路層15とp型第1クラッド層16との間のスパイクによる障壁高さVD16 は0.130eVである。p型第1クラッド層16とp型第2クラッド層17との間のスパイクによる障壁高さVD17 は0.123eVである。これらの値は、p型第1クラッド層16を用いない場合,つまり第1の実施形態の光導波路層5とp型第1クラッド層6との間のスパイクによる障壁高さ0.29eに比べて小さい。すなわち、光導波路層15とp型第2クラッド層17との間にp型Al0.65Ga0.35Asからなるp型第1クラッド層16が介在していることにより、価電子帯に発生するスパイクによる障壁高さを低く抑えることができることを示している。
【0090】
また、同図に示すように、p型第2クラッド層17とp型コンタクト層24の間に配置された各層間には、各々スパイクによる障壁高さVD22 又はバンド不連続量ΔEv18,ΔEv19,ΔEv20,ΔEv23,ΔEv24が生じている。
【0091】
なお、スパイクによる障壁高さは、価電子帯端のバンド不連続量ΔEvと不純物濃度とによって変わる。しかし、実際上、レーザの機能を保持するためには不純物濃度はほとんど変更することができないので、化合物半導体の組成によって定まる価電子帯端のバンド不連続量ΔEvに応じて変化することになる。
【0092】
また、第1スパイク緩和用p型クラッド層は、単数である必要はなく複数個存在していてもよい。
【0093】
−p型第1クラッド層16の最適なAl組成の検討−
次に、光導波路層15とp型第2クラッド層17との間に介在するp型第1クラッド層16のAl組成比xの設定について考察する。ここでは、p型第1クラッド層16としてp型Alx Ga1-x Asを用い、Al組成比xをパラメータとして、価電子帯に発生するスパイクによる障壁高さを調べた。その場合、光導波路層15のp型キャリアの密度を1×1016cm-3、p型第1クラッド層16のキャリア密度を7×1017cm-3、p型第2クラッド層17のキャリア密度を7×1017cm-3に固定している。
【0094】
図8は、p型第1クラッド層16のAl組成比xと価電子帯に発生するスパイクによる障壁高さとの関係を示す図である。同図において、実線曲線は光導波路層15とp型第1クラッド層16との間のスパイクによる障壁高さVD16 を示し、破線曲線はp型第1クラッド層16とp型第2クラッド層17との間のスパイクによる障壁高さVD17 を示している。p型第1クラッド層16のAl組成比xが比較的小さい範囲では、障壁高さVD17 が障壁高さVD16 よりも大きくなる。逆に、p型第1クラッド層16のAl組成比xが比較的大きい範囲では、障壁高さVD16 が障壁高さVD17 よりも大きくなる。動作電圧(しきい値電圧)をできるだけ小さくするためには、各障壁高さVD16 ,VD17 の最大値がもっとも小さいことが好ましい。したがって、各障壁高さVD16 ,VD17 が等しくなる点、すなわちx=0.65付近にp型第1クラッド層16のAl組成比xを設定すればよい。
【0095】
−p型第1クラッド層16およびp型第2クラッド層17の内部に発生する空乏層の影響の検討−
図9は、p型第1クラッド層16のAl組成比xと、p型第1クラッド層16に形成される空乏層の長さL1(図7参照)および蓄積層の長さL2(図7参照)との和(L1+L2)との関係を示す図である。図9からわかるように、動作電圧(しきい値電圧)低減のためにx=0.65を選ぶと、L1+L2=21nmになる。活性層14への電子の閉じ込め効率を向上させるためには、伝導帯端に形成される電子に対する障壁高さを最大にするのがよいが、p型第1クラッド層16の厚さを(L1+L2)より小さくしてしまうと、実際には、空乏層および蓄積層の内部電界の影響によって電子に対する障壁高さを最大にすることができない。そのため、p型第1クラッド層16の厚さを(L1+L2)とするのが好ましい。そこで、本実施形態の半導体レーザ装置においては、p型第1クラッド層16の厚さを25nmとしている。
【0096】
同様に、p型第2クラッド層17の厚さも、その内部に発生する空乏層の長さL3と蓄積層の長さL4との合計(図7参照)を考慮して定めることが好ましい。本実施形態の条件下では、p型第2クラッド層17中に形成される空乏層長さL3と蓄積層長さL4の合計は、L3+L4=36nmである。そして、この厚さ(L3+L4)以下の厚さを有するp型第2クラッド層17を設けた場合、内部電界の影響から電子に対する障壁高さを最大にすることができない。そこで、本実施形態の半導体レーザ装置においては、p型第2クラッド層17の厚さを40nmとした。
【0097】
−p型第1クラッド層16のAl組成比xと半導体レーザ装置の動作電圧との関係−
光導波路層15とp型第2クラッド層17との間にp型Alx Ga1-x Asからなるp型第1クラッド層16が介在している場合に、半導体レーザ装置のしきい値電圧がどのように変化するかを検討したところ、既に説明したようにx=0.65付近が最も動作電圧が小さく、2.1Vであった。
【0098】
次に、p型第2クラッド層17からp型コンタクト層24までの間の価電子帯におけるポテンシャル差が半導体レーザ装置の特性にどのように影響を与えるかを以下に議論する。
【0099】
p型第2クラッド層17からp型コンタクト層24までの間においては、価電子帯におけるポテンシャル差ΔEvが0.5eV程度存在する。したがって、p型第2クラッド層17に直接接するp型コンタクト層24を形成した場合、p電極側から流入した正孔がこの障壁を越えるためには大きなバイアス電圧が必要になる。したがって、p型第2クラッド層17とp型コンタクト層24との間に複数のp型層を挿入して、全体としてのΔEvを小さくすることが望ましい。そこで、本実施形態の半導体レーザ装置においては、p型第2クラッド層17とp型コンタクト層24との間に、p型第3クラッド層18,p型第4クラッド層19,エッチング停止層20,p型第5クラッド層22およびp型第6クラッド層23を挿入している。その結果、本実施形態の半導体レーザ装置のp型第2クラッド層31とp型コンタクト層24との間に発生する各スパイクによる障壁高さV又はバンド不連続量ΔEvは、0.15eV以下である。
【0100】
なお、第2スパイク緩和用p型クラッド層を必ずしも3つ設ける必要はなく、第2スパイク緩和用p型クラッド層を1つ,2つ又は4つ以上設けてもよい。
【0101】
なお、本実施形態の半導体レーザ装置において、光導波路層15とp型第2クラッド層17との間に、p型第1クラッド層16の代わりに、Al組成比xが段階的に異なるp型Alx Ga1-x Asからなる2層以上のp型クラッド層か、Al組成比xがほぼ連続的に変化するp型Alx Ga1-x Asからなるp型クラッド層を用いても、価電子帯におけるスパイク高さを小さくすることができる。
【0102】
(第3の実施形態)
図10は、本発明の第3の実施形態に係る半導体レーザ装置のストライプ方向に対して直交する方向の断面図である。同図に示すように、本実施形態の半導体レーザ装置は、n型GaAs基板31の上に、n型Al0.5 Ga0.5 As結晶からなる厚さ3μmのn型クラッド層32と、Al0.3 Ga0.7 As結晶からなる厚さ50nmの光導波路層33と、GaAs結晶からなる厚さ3nmの単一量子井戸型の活性層34と、Al0.3 Ga0.7 As結晶からなる厚さ50nmの光導波路層35と、p型(Al0.2 Ga0.80.5 In0.5 P結晶からなる厚さ25nmの第1スパイク緩和用のp型第1クラッド層36と、p型(Al0.7 Ga0.30.5 In0.5 P結晶からなる厚さ40nmの障壁高さ規定用のp型第2クラッド層37と、p型(Al0.65Ga0.350.5 In0.5 P結晶からなる厚さ40nmのp型第3クラッド層38と、n型Al0.7 Ga0.3 As結晶からなりストライプ状の窓部39aを有する厚さ700nmの電流ブロック層39と、電流ブロック層39の窓部39aを埋めて電流ブロック層39の上に延びるp型Al0.5 Ga0.5 As結晶からなる最大厚さ2.5μmのp型第5クラッド層40と、p型Al0.25Ga0.75As結晶からなる厚さ40nmのp型第6クラッド層41と、p型GaAs結晶からなる厚さ2.5μmのp型コンタクト層42とを順次形成して構成されている。なお、図示しないが、n型GaAs基板31の裏面にはn電極が、p型コンタクト層42にはp電極がそれぞれ形成されている。
【0103】
図11は、本実施形態の半導体レーザ装置の光導波路層35からp型コンタクト層42までの伝導帯と価電子帯とのバンドダイアグラムを示すエネルギバンド図である。ただし、図11においては、バンド構造のみについて理解を容易にするために、活性層以外の各層の厚みをほぼ均一化して表すとともに、活性層34や光導波路層33の図示を省略している。同図に示すように、光導波路層35と、p型(Al0.7 Ga0.30.5 In0.5 P結晶からなるp型第2クラッド層37との間に、バンドギャップが光導波路層35よりも大きくp型第2クラッド層37よりも小さいp型(Al0.2 Ga0.80.5 In0.5 Pからなる第1クラッド層36が設けられている。ここでは、光導波路層35のp型キャリアの密度を1×1016cm-3、p型第1クラッド層36のキャリア密度を7×1017cm-3、p型第2クラッド層37のキャリア密度を7×1017cm-3としている。
【0104】
図11に示すように、光導波路層35とp型第1クラッド層36との境界部、p型第1クラッド層36とp型第2クラッド層37との境界部には、それぞれ障壁高さVD36 ,VD37 のスパイク(寄生バリア)が生じている。つまり、第1の実施形態においても、図5には示されていないが、光導波路層5とp型第1クラッド層6との間の価電子帯端には大きなスパイクが生じている。本実施形態は、この価電子帯端の大きなスパイクを2つの小さなスパイクによって緩和したものである。
【0105】
また、同図に示すように、p型第2クラッド層37とp型コンタクト層42との間に配置された各層間には、各々スパイクによるバンド不連続量ΔEv38,ΔEv40,ΔEv41,ΔEv42が生じている。
【0106】
なお、スパイクによる障壁高さは、価電子帯端のバンド不連続量ΔEvと不純物濃度とによって変わる。しかし、実際上、レーザの機能を保持するためには不純物濃度はほとんど変更することができないので、化合物半導体の組成によって定まる価電子帯端のバンド不連続量ΔEvに応じて変化することになる。
【0107】
また、第1スパイク緩和用p型クラッド層は、単数である必要はなく複数個存在していてもよい。
【0108】
上記半導体レーザ装置を構成する部材のうち化合物半導体層の結晶成長は、有機金属気相エピタキシャル(以下MOVPEという)装置を用いて、基本的には、第1の実施形態と同様の方法により行なわれる。
【0109】
そして、エピタキシャル基板は、劈開により、共振器方向すなわちストライプ方向の長さが800μmのレーザチップに分割されている。レーザチップの相対向する2つの劈開面いわゆる端面に、端面保護コーティングとしてアモルファスシリコンとSiO2 との多層膜がコーティングされる。また、高い光出力を得るために、レーザチップの後端面を高反射率(90%)に、レーザチップの前端面を低反射率(10%)になるように、非対称コーティングが施されている。
【0110】
本実施形態の半導体レーザ装置によれば、第1,第2の実施形態と同様に、p型第2クラッド層37がp型(Al0.7 Ga0.30.5 In0.5 Pにより構成されているので、第1の実施形態で説明したように、活性層34とp型第2クラッド層37との伝導帯端におけるポテンシャル差ΔEcを大きくとることができる。したがって、本実施形態の半導体レーザ装置は、第1,第2の実施形態と同様に、活性層34への電子の閉じ込め効率が向上し、光出力の向上を図ることができる。
【0111】
また、光導波路層35とp型第2クラッド層37との間に、両者のバンドギャップの中間的なバンドギャップを有するp型(Al0.2 Ga0.80.5 In0.5 Pからなるp型第1クラッド層36を用いているので、第2の実施形態と同様に、価電子帯に発生するスパイクによる障壁高さを低く抑えることができる。すなわち、本実施形態の半導体レーザ装置においては、p型第1クラッド層36とp型第2クラッド層37との間に印加すべきバイアス電圧を低減することができるので、半導体レーザ装置の動作電圧を低減することができる。
【0112】
また、このように活性層34への電子の閉じ込め効率の向上作用と、半導体レーザ装置の動作電圧の低減作用とが相俟って、半導体レーザ装置の発熱を抑えることができ、半導体レーザ装置の出力をよりいっそう高くすることができる。
【0113】
また、第2の実施の形態では、電流ブロック層21の窓部21aを形成するためのエッチングの際に、Al0.7 Ga0.3 Asからなる電流ブロック層21との選択的エッチングが可能な膜として、同じAlGaAs(Al組成比xの小さいAl0.2 Ga0.8 As)からなるエッチング停止層20を設ける必要があった。それに対し、本実施形態では、(Al0.65Ga0.350.5 In0.5 P結晶からなるp型第3クラッド層38を設けているので、AlGaAsからなる電流ブロック層39との選択エッチングは容易である。第2の実施形態においては、後に詳しく説明するように、エッチング停止層20がエッチングされて膜厚がばらつくことによって、ビーム拡がり角の大きな変化量が生じているが、本実施形態においてはこのようなビーム拡がり角の変化を小さく抑えることができる。
【0114】
本実施形態に半導体レーザ装置においては、光学損傷(COD)レベルは350mW以上であり、光出力を200mWとしたときの動作電圧は2.1Vであり、光出力が350mWに達するまで熱飽和現象は観測されなかった。
【0115】
次に、本実施形態の半導体レーザ装置について、光導波路層35からp型第2クラッド層37までの各層に関し、伝導帯および価電子帯におけるポテンシャル差を検討し、それが半導体レーザ装置の特性にどのように影響を与えるかを議論する。
【0116】
−価電子帯に発生するスパイクによる障壁高さの検討−
図11に示すように、光導波路層35とp型第2クラッド層37との間に、p型(Al0.2 Ga0.80.5 In0.5 Pからなるp型第1クラッド層36が介在している場合、価電子帯には以下の障壁高さを有するスパイクが発生する。光導波路層35とp型第1クラッド層36との間のスパイクによる障壁高さVD36 は0.132eVである。p型第1クラッド層36とp型第2クラッド層37との間のスパイクによる障壁高さVD37 は0.121eVである。これらの値は、p型第1クラッド層16を用いない場合,つまり第1の実施形態の光導波路層5とp型第1クラッド層6との間のスパイクによる障壁高さ0.29eに比べて小さい。すなわち、光導波路層35とp型第2クラッド層37との間にp型Al0.65Ga0.35Asからなるp型第1クラッド層36が介在していることにより、価電子帯に発生するスパイクによる障壁高さを低く抑えることができることを示している。
【0117】
−p型第1クラッド層36の最適なAl組成の検討−
光導波路層35とp型第2クラッド層37との間に介在するp型第1クラッド層36のAl組成比yの設定について考察する。ここでは、p型第1クラッド層36としてp型Alx Ga1-x Asを用い、Al組成比xをパラメータとして、価電子帯に発生するスパイクによる障壁高さを調べた。その場合、光導波路層35のp型キャリアの密度を1×1016cm-3、p型第1クラッド層36のキャリア密度を7×1017cm-3、p型第2クラッド層37のキャリア密度を7×1017cm-3に固定している。
【0118】
図12は、p型第1クラッド層36のAl組成比xと価電子帯に発生するスパイクによる障壁高さとの関係を示す図である。同図において、実線曲線は光導波路層35とp型第1クラッド層36との間のスパイクによる障壁高さVD36 を示し、破線曲線はp型第1クラッド層36とp型第2クラッド層37との間のスパイクによる障壁高さVD37 を示している。p型第1クラッド層36のAl組成比xが極めて小さい範囲では、スパイクによる障壁高さVD37 がスパイクによる障壁高さVD36 よりも大きくなる。逆に、それ以外の範囲では、スパイクによる障壁高さVD36 がスパイクによる障壁高さVD37 よりも大きくなる。動作電圧(しきい値電圧)をできるだけ小さくするためには、各スパイクによる障壁高さVD36 ,VD37 の最大値がもっとも小さいことが好ましい。したがって、各スパイクによる障壁高さVD16 ,VD37 が等しくなる点、すなわちx=0.2付近にp型第1クラッド層36のAl組成比xを設定すればよい。
【0119】
−p型第1クラッド層36およびp型第2クラッド層37の内部に発生する空乏層の影響の検討−
図13は、p型第1クラッド層36のAl組成比xと、p型第1クラッド層36に形成される空乏層の長さL11(図11参照)および蓄積層の長さL12(図11参照)との和(L11+L12)との関係を示す図である。図13からわかるように、動作電圧(しきい値電圧)低減のためにx=0.2を選ぶと、L11+L12=21nmになる。活性層34への電子の閉じ込め効率を向上させるためには、伝導帯端に形成される電子に対する障壁高さを最大にするのがよいが、p型第1クラッド層36の厚さを(L11+L12)より小さくしてしまうと、実際には、空乏層および蓄積層の内部電界の影響によって電子に対する障壁高さを最大にすることができない。そのため、p型第1クラッド層36の厚さを(L11+L12)とするのが好ましい。そこで、本実施形態の半導体レーザ装置においては、p型第1クラッド層36の厚さを25nmとしている。
【0120】
同様に、p型第2クラッド層37の厚さも、その内部に発生する空乏層の長さL13と蓄積層の長さL14との合計(図11参照)を考慮して定めることが好ましい。本実施形態の条件下では、p型第2クラッド層37中に形成される空乏層長さL13と蓄積層長さL14の合計は、L13+L14=36nmである。そして、この厚さ(L13+L14)以下の厚さを有するp型第2クラッド層37を設けた場合、内部電界の影響から電子に対する障壁高さを最大にすることができない。そこで、本実施形態の半導体レーザ装置においては、p型第2クラッド層37の厚さを40nmとした。
【0121】
−p型第1クラッド層36のAl組成比xと半導体レーザ装置の動作電圧との関係−
光導波路層35とp型第2クラッド層37との間にp型(Alx Ga1-x0.5 In0.5 Pからなるp型第1クラッド層36が介在している場合、半導体レーザ装置の動作電圧がどのように変化するかを検討したところ、y=0.20付近が最も動作電圧が小さく、2.1Vであった。
【0122】
次に、p型第2クラッド層37からp型コンタクト層42までの間の価電子帯におけるポテンシャル差が半導体レーザ装置の特性にどのように影響を与えるかを以下に議論する。
【0123】
p型第2クラッド層37からp型コンタクト層42までの間においては、価電子帯におけるポテンシャル差ΔEvが0.5eV程度存在する。したがって、p型第2クラッド層37に直接接するp型コンタクト層42を形成した場合、p電極側から流入した正孔がこの障壁を越えるためには大きなバイアス電圧が必要になる。したがって、p型第2クラッド層37とp型コンタクト層42との間に複数のp型層を挿入して、全体としてのΔEvを小さくすることが望ましい。そこで、本実施形態の半導体レーザ装置においては、p型第2クラッド層37とp型コンタクト層42との間に、各々第2スパイク緩和用p型コンタクト層として機能する,p型第3クラッド層38,p型第5クラッド層40およびp型第6クラッド層41を挿入している。その結果、図11に示すように、本実施形態の半導体レーザ装置のp型第2クラッド層37とp型コンタクト層42との間に発生する各スパイクによる障壁高さV又はバンド不連続量ΔEvは、0.15eV以下である。
【0124】
なお、第2スパイク緩和用p型クラッド層を必ずしも3つ設ける必要はなく、第2スパイク緩和用p型クラッド層を1つ,2つ又は4つ以上設けてもよい。
【0125】
なお、本実施形態に示した半導体レーザ装置の構造では、第2の実施形態の半導体レーザ装置に示すようなエッチング停止層を設ける必要がない。p型第3クラッド層38がエッチング停止層の機能を有するためである。第2の実施形態の半導体レーザ装置においては、AlGaAsからなる電流ブロック層21の下にAl組成比xの小さいAlGaAs(Al0.2 Ga0.8 As)からなるエッチング停止層20を設け、電流ブロック層21とエッチング停止層20のAl組成の違いに起因するエッチング速度の違い,すなわちエッチング選択比を利用して電流ブロック層21の選択的エッチングを行なっている。しかしながら、第1の実施形態においては電流ブロック層21とエッチング停止層20が同じAlGaAs系の材料からなるため、エッチング選択比を大きく確保することができず、選択的エッチング終了後のエッチング停止層20のうち電流ブロック層の窓部に位置する部分の厚さがわずかに薄くなる。これに起因して、半導体レーザ装置においてレーザビームの拡がり角にばらつきが発生し、歩留まりが低下することがあった。これに対して、本実施の形態では、p型第3クラッド層38と電流ブロック層39とは、互いに異なる材料であるAlGaInPとAlGaAsとによって構成されているので、p型第3クラッド層38と電流ブロック層39との間のエッチング選択比を大きく確保することができ、p型第3クラッド層38の厚みのばらつきを抑制することができる。それにより、p型第3クラッド層38の膜厚変化に起因するビーム拡がり角の変化量も小さくなり、半導体レーザ装置の歩留まりが向上する。例えば、第2の実施の形態に係る本発明の半導体レーザ装置では、水平拡がり角のばらつき幅、垂直拡がり角のばらつき幅は共に1°程度あるのに対して、本実施形態に係る本発明の半導体レーザ装置では、水平拡がり角のばらつき幅、垂直拡がり角のばらつき幅は共に0.5°以下に抑制される。
【0126】
なお、本実施形態の半導体レーザ装置において、光導波路層35とp型第2クラッド層37との間に、p型第1クラッド層36の代わりに、Al組成比xが段階的に異なるp型(Alx Ga1-x0.5 In0.5 Pからなる2層以上のp型クラッド層か、Al組成比xがほぼ連続的に変化するp型(Alx Ga1-x0.5 In0.5 Pからなるp型クラッド層を用いても、価電子帯におけるスパイクによる障壁高さを小さくすることができる。
【0127】
(第4の実施形態)
図14は、本発明の第4の実施の形態に係る半導体レーザ装置のストライプ方向に対して直交する方向の断面図である。同図に示すように、本実施形態の半導体レーザ装置は、第2の実施形態の半導体レーザ装置において、第1スパイク緩和用のp型第1クラッド層16の代わりに、Al組成比z1が連続的に変化する厚さ30nmのAlz1Ga1-z1Asからなるp型第1クラッド層51を用い、第2スパイク緩和用のp型第3クラッド層18およびp型第4クラッド層19の代わりに、Al組成比z2が連続的に変化する厚さ40nmのAlz2Ga1-z2Asからなるp型第3クラッド層52を用い、さらにエッチング停止層20の代わりに、p型Al0.2 Ga0.8 Asからなる厚さ10nmのエッチング停止層53を用い、p型第6クラッド層23の代わりに、組成比z3が連続的に変化する厚さ40nmのAlz3Ga1-z3Asからなるp型第6クラッド層54を用いて構成されている。本実施形態の半導体レーザ装置のその他の構成は、第2の実施形態の半導体レーザ装置において説明した通りであり、図6と同じ符号を付して説明を省略する。
【0128】
なお、p型第1クラッド層51におけるAl組成比z1は、光導波路層15からp型第2クラッド層17に至るまで、p型第1クラッド層51の厚さ位置にほぼ比例させて0.3から1まで変化させた。また、p型第3クラッド層52におけるAl組成比z2は、p型第2クラッド層17からエッチング停止層53に至るまで、p型第3クラッド層52の厚さ位置にほぼ比例させて1から0.2まで変化させた。さらに、p型第6クラッド層54におけるAl組成比z3は、p型第5クラッド層22からp型コンタクト層24に至るまで、p型第6クラッド層54の厚さ位置にほぼ比例させて0.5から0まで変化させた。
【0129】
本実施形態の半導体レーザ装置によれば、Al組成比z1が連続的に変化するAlz1Ga1-z1Asからなるp型第1クラッド層51を用いているので、価電子帯端に発生するスパイクによる障壁高さ又はバンド不連続量を低く抑えることができる。したがって、p型第1クラッド層51とp型第2クラッド層17との間に印加すべきバイアス電圧を低減することができ、それにより、半導体レーザ装置の動作電圧を低減することができる。
【0130】
また、本実施形態の半導体レーザ装置によれば、組成比z2が連続的に変化するAlz2Ga1-z2Asからなるp型第3クラッド層52を用い、組成比z3が連続的に変化するAlz3Ga1-z3Asからなるp型第6クラッド層54を用いているので、p型第2クラッド層17からp型コンタクト層24までの間において、p型第3クラッド層52とp型第2クラッド層17との境界部,p型第3クラッド層52とエッチング停止層53との境界部,p型第6クラッド層54とp型第5クラッド層22との境界部,及びp型第6クラッド層54とp型コンタクト層24との境界部における価電子帯のスパイクによる障壁高さをほとんど0にすることができる。
【0131】
図15は、本実施形態の半導体レーザ装置の光導波路層15からp型コンタクト層24までの伝導帯と価電子帯とのバンドダイアグラムを示すエネルギバンド図である。同図に示すように、本実施形態の半導体レーザ装置においては、エッチング停止層53とp型第5クラッド層22との間の価電子帯端に高さVD22 =0.150eVのスパイクが存在する以外は、価電子帯端におけるスパイクがほとんど生じていないといえる。
【0132】
本実施形態の半導体レーザ装置において、光学損傷(COD)レベルは350mW以上であり、光出力が350mWの出力に至るまでに熱飽和現象は観測されなかった。また、本実施形態の半導体レーザ装置において、光出力を200mWとしたときの動作電圧は2.0Vであり、第2の実施形態の半導体レーザ装置と比べて動作電圧を0.1Vだけ低減することができた。本実施形態において、第2の実施形態の半導体レーザ装置と比べて動作電圧を0.1Vだけ低減させることができた理由は、p型第1クラッド層51、p型第3クラッド層52およびp型第6クラッド層54を用いることにより、価電子帯のスパイクによる障壁高さV又はバンド不連続量ΔEvをほとんど0にすることができたためであると考えられる。とりわけ、価電子帯のスパイクによる障壁高さΔEvを最も低減させることのできるp型第1クラッド層51が動作電圧低減に大きく寄与したものと考えられる。
【0133】
(第5の実施の形態)
図16は、本発明の第5の実施の形態に係る半導体レーザ装置のストライプ方向に対して直交する方向の断面図である。同図に示すように、本実施形態の半導体レーザ装置は、第3の実施形態の半導体レーザ装置において、第1スパイク緩和用のp型第1クラッド層36の代わりに、Al組成比t1が連続的に変化する厚さ30nmのp型(Alt1Ga1-t10.5 In0.5 Pからなるp型第1クラッド層61を用い、第2スパイク緩和用のp型第3クラッド層38の代わりに、Al組成比t2が連続的に変化する厚さ40nmのp型(Alt2Ga1-t20.5 In0.5 Pからなるp型第3クラッド層62を用い、さらに第2スパイク緩和用のp型第6クラッド層41の代わりに、Al組成比t3が連続的に変化する厚さ40nmのAlt3Ga1-t3Asからなるp型第6クラッド層63を用いて構成されている。本実施形態の半導体レーザ装置のその他の構成は、第3の実施形態の半導体レーザ装置において説明した通りであり、図6と同じ符号を付して説明を省略する。
【0134】
なお、p型第1クラッド層61におけるAl組成比t1は、光導波路層35からp型第2クラッド層37に至るまで、p型第1クラッド層61の厚さ位置にほぼ比例させて0.15から0.7まで変化させた。また、p型第3クラッド層62におけるAl組成比t2は、p型第2クラッド層37からp型第5クラッド層40に至るまで、p型第3クラッド層62の厚さ位置にほぼ比例させて0.7から0まで変化させた。さらに、p型第6クラッド層63におけるAl組成比t3は、p型第5クラッド層40からp型コンタクト層42に至るまで、p型第6クラッド層63の厚さ位置にほぼ比例させて0.5から0まで変化させた。
【0135】
本実施形態の半導体レーザ装置によれば、組成比t1が連続的に変化するp型(Alt1Ga1-t10.5 In0.5 Pからなるp型第1クラッド層61を用いているので、価電子帯に発生するスパイクによる障壁高さV又はバンド不連続量ΔEvを低く抑えることができる。その結果、p型第1クラッド層61とp型第2クラッド層37との間に印加すべきバイアス電圧を低減することができ、それにより、半導体レーザ装置の動作電圧を低減することができる。
【0136】
また、本実施形態の半導体レーザ装置によれば、組成比t2が連続的に変化するp型(Alt2Ga1-t20.5 In0.5 Pからなるp型第3クラッド層62を用い、組成比t3が連続的に変化するAlt3Ga1-t3からなるp型第6クラッド層63を用いているので、p型第2クラッド層37からp型コンタクト層42までの間において、p型第3クラッド層62とp型第2クラッド層37との境界部,p型第3クラッド層62とp型第5クラッド層40との境界部,p型第6クラッド層63とp型第5クラッド層40との境界部,及びp型第6クラッド層63とp型コンタクト層42との境界部における価電子帯のスパイクによる障壁高さV又はバンド不連続量ΔEvをほとんど0にすることができる。
【0137】
図17は、本実施形態の半導体レーザ装置の光導波路層35からp型コンタクト層42までの伝導帯と価電子帯とのバンドダイアグラムを示すエネルギバンド図である。同図に示すように、本実施形態の半導体レーザ装置においては、光導波路層35とp型第1クラッド層61との間の価電子帯端に障壁高さVD61 =0.1eVのスパイクが存在する以外は、価電子帯端におけるスパイクがほとんど生じていないといえる。
【0138】
本実施形態の半導体レーザ装置において、光学損傷(COD)レベルは350mW以上であり、光出力が350mWの出力に至るまでに熱飽和現象は観測されなかった。また、本実施形態の半導体レーザ装置において、光出力を200mWとしたときの動作電圧は2.0Vであり、第3の実施形態の半導体レーザ装置と比べて動作電圧を0.1Vだけ低減することができた。本実施形態において、第3の実施形態の半導体レーザ装置と比べて動作電圧を0.1Vだけ低減させることができた理由は、p型第1クラッド層61、p型第3クラッド層62およびp型第6クラッド層63を用いることにより、価電子帯のスパイクによる障壁高さV又はバンド不連続量ΔEvをほとんど0にすることができたためであると考えられる。とりわけ、価電子帯のスパイクによる障壁高さを最も低減させることのできるp型第1クラッド層61が動作電圧低減に大きく寄与したものと考えられる。
【0139】
(第6の実施形態)
上記第1〜第5の実施形態においては、本発明をファブリ・ペロー(FP)共振器を備えた半導体レーザ装置に適用した例について説明した。しかし、本発明は、FP共振器型半導体レーザ装置以外のレーザ装置にも適用することができる。その例として、以下、本発明を分布ブラッグ反射(DBR:Ditributed Bragg Reflector)型半導体レーザ装置に適用した例である第6の実施形態について説明する。
【0140】
図18は、本発明の第6の実施形態の半導体レーザ装置の構成を概略的に示す破断斜視図である。同図に示すように、本実施形態の半導体レーザ装置は、共振器の長手方向に、利得領域70と、位相制御領域71と、DBR領域72と備えている。つまり、利得領域70の端面を構成する劈開面(前面)とDBR領域72の端面(後面)とを反射面とする共振器が構成されている。利得制御領域70の共振器長手方向長さは500μmであり、位相制御領域71の共振器長手方向長さは300μmであり、DBR領域72の共振器長手方向長さは500μmである。
【0141】
そして、本実施形態の半導体レーザ装置は、利得領域70と、位相制御領域71と、DBR領域72とに亘って、n型GaAs基板73の上に、n型Al0.5 Ga0.5 As結晶からなるn型クラッド層74と、Al0.3 Ga0.7 As結晶からなる2つの光導波路層によってGaAs結晶からなる単一量子井戸を挟んだ構造の活性層75と、p型(Al0.7 Ga0.30.5 In0.5 P結晶からなるp型第1クラッド層76と、p型Al0.2 Ga0.8 As結晶からなるp型第2クラッド層77と、p型Al0.5 Ga0.5 As結晶からなるp型第3クラッド層78と、p型Al0.2 Ga0.8 As結晶からなるエッチング停止層79と、n型Al0.6 Ga0.4 As結晶からなりストライプ状の窓部を有する電流ブロック層80と、p型Al0.5 Ga0.5 As結晶からなるp型第4クラッド層81と、p型GaAs結晶からなるp型コンタクト層82とを順次形成して構成されている。
【0142】
ここで、活性層75のうち位相制御領域71及びDBR領域72に位置する部分は、不純物であるZnのドープによる量子井戸構造の無秩序化処理が施されており、発振波長のレーザに対してほぼ透明となっている。また、第2クラッド層77のうちDBR領域72に位置する部分は、回折格子77aとなっている。
【0143】
また、p型コンタクト層82のうち利得領域70,位相制御領域71及びDBR領域72の各境界部に位置する部分は、エッチングにより除去されており、p型コンタクト層82は3つの部分82a,82b,82cに電気的に分離されている。そして、p型コンタクト層82のうち利得領域70,位相制御領域71及びDBR領域72に位置する各部分82a,82b,82cの上に、それぞれ利得制御領域電極83,位相制御領域電極84及びDBR領域電極85が設けられている。また、図示しないが、n型GaAs基板73の裏面には、n型電極が設けられている。
【0144】
すなわち、利得領域70,位相制御領域71及びDBR領域72に各々個別に電流の注入を行なうことが可能に構成されている。したがって、位相制御領域71とDBR領域72とへの注入電流量を個別に制御することにより、レーザの発振波長を連続的に変化させることができる。
【0145】
本実施形態のようなDBR型半導体レーザ装置においては、DBR領域72に形成された回折格子の周期と実効屈折率とによって、レーザの発振波長を制御することができる。しかし、DBR領域72及び位相制御領域71は、利得領域ではないので、導波損失が発生する。そのため、通常のFP共振器型半導体レーザ装置に比べて、レーザ発振に必要な注入キャリア密度は大きくなる。動作キャリア密度が大きくなると、活性層からクラッド層へのキャリアのオーバーフローが多くなるので、温度特性が低下して、高出力動作が困難になる。そこで、第1〜第5の実施形態において説明したように、障壁高さ規定用のp型クラッド層をAlGaInPにより構成することで、キャリアのオーバーフローを抑制し、高出力動作を実現することができる。
【0146】
−半導体レーザ装置の評価−
本実施形態の構造を有する半導体レーザ装置と、本実施形態の半導体レーザにおけるp型第1クラッド層76の代わりに、従来型のp型Al0.5 Ga0.5 Asからなるp型第1クラッド層を設けた比較例の半導体レーザ装置との特性を評価した。このとき、測定を簡略化するために、波長制御は行なっていない。つまり、位相制御領域71及びDBR領域72への電流注入は行なわずに、利得領域70のみに通電した。
【0147】
その結果、p型第1クラッド層76を(Al0.7 Ga0.30.5 In0.5 Pにより構成した本実施形態の半導体レーザ装置では、発振波長850nmのレーザの光出力が200mW以上となる,高出力動作が実現した。CODレベルは220mWであった。一方、p型第1クラッド層をAl0.5 Ga0.5 Asにより構成した比較例の半導体レーザ装置では、CODが生じるまでの光出力が得られず、120mW付近で光出力が飽和した。
【0148】
すなわち、第1の実施形態で説明したように、これは、活性層75の上方のクラッド層であるp型第1クラッド層76を(Al0.7 Ga0.30.5 In0.5 Pにより構成していることにより、伝導帯端におけるキャリアのオーバーフローが抑制され、高い光出力が得られるものと考えられる。また、活性層75の上方のクラッド層であるp型第1クラッド層76を(Al0.7 Ga0.30.5 In0.5 Pにより構成する一方、活性層75の下方のクラッド層であるn型クラッド層74をAlGaAsにより構成していることによるものと考えられる。その結果、本実施形態の半導体レーザ装置においては、発熱中のレーザチップの発熱を抑制することができ、高出力動作が可能になった。
【0149】
本実施形態においては、第1の実施形態をDBR型半導体レーザ装置に適用した例について説明したが、第2〜第5の実施形態をDBR型半導体レーザ装置に適用しても、各実施形態とほぼ同様の効果を発揮することができる。
【0150】
(その他の実施形態)
上記各実施形態においては、p型クラッド層を活性層の上方に、n型クラッド層を活性層の下方にそれぞれ配置したが、p型クラッド層を活性層の下方に、n型クラッド層を活性層の上方にそれぞれ配置してもよい。
【0151】
【発明の効果】
本発明の第1の半導体レーザ装置によれば、活性層と障壁規定用p型クラッド層との間の伝導帯端のポテンシャル差の拡大により障壁規定用クラッド層への電子のオーバーフローを低減することができるので、活性層への電子の閉じ込め効率を向上することができるとともに、活性層の温度上昇を小さくできるので、共振器端面の温度上昇を防止でき、共振器端面での光吸収を小さくでき、CODを起こりにくくすることができる。
【0152】
本発明の第2の半導体レーザ装置によれば、活性層と障壁規定用p型クラッド層との間の伝導帯端のポテンシャル差に応じて発生するスパイクの緩和により、動作電圧の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態における半導体レーザ装置のストライプ方向に直交する方向の断面図である。
【図2】第1の実施形態及び第1の従来例の半導体レーザ装置のI−L特性を比較して示す図である。
【図3】AlGaAs/GaAs/AlGaInPの各層のバンド構造の相違を、AlGaAs層及びAlGaInP層の組成を変化させて示す図である。
【図4】第1の実施形態及び第2の従来例の半導体レーザ装置のI−L特性を比較して示す図である。
【図5】第1の実施形態の半導体レーザ装置における電圧印加時のバンド状態を模式的に示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態における半導体レーザ装置のストライプ方向に直交する方向の断面図である。
【図7】第2の実施形態の半導体レーザ装置の光導波路層からp型コンタクト層までの伝導帯と価電子帯とのバンドダイアグラムを示すエネルギバンド図である。
【図8】第2の実施の形態の半導体レーザ装置のp型第1クラッド層のAl組成比と価電子帯に発生するスパイクによる障壁高さとの関係を示す図である。
【図9】第2の実施の形態の半導体レーザ装置のp型第1クラッド層のAl組成比と、空乏層および蓄積層の長さの和との関係を示す図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る半導体レーザ装置のストライプ方向に対して直交する方向の断面図である。
【図11】第3の実施形態の半導体レーザ装置の光導波路層からp型コンタクト層までの伝導帯と価電子帯とのバンドダイアグラムを示すエネルギバンド図である。
【図12】第3の実施形態の半導体レーザ装置のp型第1クラッド層のAl組成比と価電子帯に発生するスパイクによる障壁高さとの関係を示す図である。
【図13】第3の実施の形態の半導体レーザ装置のp型第1クラッド層のAl組成比と、空乏層および蓄積層の長さの和との関係を示す図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態に係る半導体レーザ装置のストライプ方向に対して直交する方向の断面図である。
【図15】本実施形態の半導体レーザ装置の光導波路層からp型コンタクト層までの伝導帯と価電子帯とのバンドダイアグラムを示すエネルギバンド図である。
【図16】本発明の第5の実施の形態に係る半導体レーザ装置のストライプ方向に対して直交する方向の断面図である。
【図17】第5の実施形態の半導体レーザ装置の光導波路層からp型コンタクト層までの伝導帯と価電子帯とのバンドダイアグラムを示すエネルギバンド図である。
【図18】本発明の第6の実施形態の半導体レーザ装置の構成を概略的に示す破断斜視図である。
【符号の説明】
1 n型GaAs基板
2 n型クラッド層
3,5 光導波路層
4 活性層
6 p型第1クラッド層
7 p型第2クラッド層
8 エッチング停止層(ES層)
9 電流ブロック層
10 p型第3クラッド層
11 コンタクト層
11,31 n型GaAs基板
12,32 n型クラッド層
13,15,33,35 光導波路層
14,34 活性層
16,36,51,61 p型第1クラッド層
17,37 p型第2クラッド層
18,38,52,62 p型第3クラッド層
19 p型第4クラッド層
20,53 エッチング停止層
21,39 電流ブロック層
21a,39a 窓部
22,40 p型第5クラッド層
23,41,54,63 p型第6クラッド層
24,42 p型コンタクト層

Claims (9)

  1. 基板上に設けられたレーザ発生領域であるAlGaAs又はGaAsによって構成された活性層を有する半導体レーザ装置であって、
    上記活性層の上方又は下方に設けられ、Alx1Ga1-x1As(0≦x1≦1)からなるn型クラッド層と、
    上記活性層を挟んで上記n型クラッド層に対向する側に設けられ、(AlxGa1-xyIn1-yP(0≦x≦1、0≦y≦1)からなるp型第1クラッド層と、
    上記p型第1クラッド層を挟んで上記活性層に対向する側に設けられ、Alx2Ga1-x2As(0≦x2≦1)からなるp型第2クラッド層とを備え、
    上記p型第1クラッド層の層厚が、10nm以上かつ300nm以下であること特徴とする半導体レーザ装置。
  2. 請求項1記載の半導体レーザ装置において、
    上記p型第1クラッド層と上記活性層との伝導帯端のポテンシャル差は、上記n型クラッド層と上記活性層との伝導帯端のポテンシャル差よりも大きいことを特徴とする半導体レーザ装置。
  3. 請求項1又は2記載の半導体レーザ装置において、
    上記p型第1クラッド層のAl組成比xは、0.3<x≦0.7の範囲内にあることを特徴とする半導体レーザ装置。
  4. 請求項1又は2記載の半導体レーザ装置において、
    上記p型第1クラッド層のIn組成比yは、0.45≦y≦0.55の範囲内にあることを特徴とする半導体レーザ装置。
  5. 請求項1記載の半導体レーザ装置において、
    上記n型クラッド層のAl組成比x1は、0.2≦x1≦0.7の範囲内にあることを特徴とする半導体レーザ装置。
  6. 請求項1〜5のうちいずれか1つに記載の半導体レーザ装置において、
    上記活性層の層厚は、0.5nm以上5nm以下であることを特徴とする半導体レーザ装置。
  7. 請求項1記載の半導体レーザ装置において、
    上記p型第1クラッド層は上記活性層の上方に設けられ、構成元素としての燐を含んでおり、
    上記活性層は、燐を含まない半導体によって構成されていることを特徴とする半導体レーザ装置。
  8. 請求項1〜7のうちいずれか1つに記載の半導体レーザ装置において、
    ファブリ・ペロー(FP)共振器を有するものであることを特徴とする半導体レーザ装置。
  9. 請求項1〜7のうちいずれか1つに記載の半導体レーザ装置において、
    分布ブラッグ反射型(DBR)構造を有するものであることを特徴とする半導体レーザ装置。
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