実施の形態1.
先ず、本実施の形態は、以下に示すに点に特徴がある。
(1)一般的なスクロール圧縮機は、逆転運転時に吐出空間圧力Pdが吸入空間圧力Psより大きくならないため、主軸の上端面と下端面に差圧が生じないので軸受部に差圧給油出来ず、主軸が焼き付いてしまう。しかし、本実施の形態のスクロール圧縮機は、逆転運転時に揺動スクロールのボス部空間を低圧にするために揺動スクロールに、圧縮室からボス部空間に連通する第一の連通穴を設け、さらに逆転運転時にコンプライアントフレームを浮上可能とする為に、高圧となる吸入圧力空間からフレーム背圧空間へ高い圧力を引き込むように、コンプライアントフレームに連通穴を設け、正転運転時はコンプライアント背圧空間から吸入空間へ圧力が逃げないように連通穴に逆止弁を設ける。そうすることで、逆転運転中にコンプライアントフレームが浮上し揺動スクロールのボス部空間の圧力を密閉容器の圧力より低下させることが出来る。そのため、逆転運転しても冷凍機油が差圧により、各軸受部に給油され、逆転運転中の軸焼付を防止し信頼性の向上を図ることが出来る。また、コンプライアントフレームに設けた第二の連通穴に逆止弁を設けることで、正転運転時にもコンプライアントフレームを浮上させることができ、性能低下を防ぐことが出来る。
(2)本実施の形態のスクロール圧縮機において、逆転運転時に揺動スクロールのボス部空間を低圧にするために、揺動スクロールにボス部空間に連通する第一の連通穴を設けるとともに、第一の連通穴に連通逆止弁を設ける。さらに逆転運転時にコンプライアントフレームを浮上可能とする為に、高圧の吸入圧力空間からフレーム背圧空間へ高い圧力を引き込む為にコンプライアントフレームに第二の連通穴を設け、正転運転時はコンプライアント背圧空間から吸入空間へ圧力が逃げないように第二の連通穴に逆止弁を設ける。そうすることで逆転運転中に、コンプライアントフレームが浮上し揺動スクロールのボス部空間の圧力を密閉容器の圧力より低下させることが出来る。そのため、逆転運転しても冷凍機油が差圧により、各軸受部に給油され、逆転運転中の軸焼付を防止し信頼性の向上を図ることが出来る。また、コンプライアントフレームに設けた連通穴に逆止弁を設けることで、正転運転時にもコンプライアントフレームを浮上させることができ、性能低下を防ぐことが出来る。
(3)本実施の形態のスクロール圧縮機は、固定スクロールの台板部の板状渦巻歯と反対側の面で、吸入圧力空間に対応する位置に、リリーフ弁と、弁押えとを備えるリリーフ弁組立が設けられている。吸入逆止弁組立を備えるスクロール圧縮機が、圧縮室に液冷媒が満たされた状態のときに、何らかの理由で正回転の反対の逆転運転始動すると、液圧縮によるパンピング圧が発生する。パンピング圧により、固定スクロールの板状渦巻歯がずれることでメカがロックするか、もしくは圧縮性能が低下する。リリーフ弁組立は、圧縮室で液圧縮が発生する場合に、液冷媒を圧縮室の外部(密閉容器の内部空間)に逃がして液圧縮によるパンピング圧の発生を抑制する。
図1乃至図27は実施の形態1を示す図で、図1はスクロール圧縮機100の縦断面図、図2は固定スクロール1付近の縦断面図、図3は固定スクロール1の板状渦巻歯1bに直角方向から吸入圧力空間1gに連通する弁通路17dを示す図、図4は吸入逆止弁組立17の断面図、図5は図2のA部付近の拡大図、図6はオルダムリング9を示す図((a)は平面図、(b)は右側面図、(c)は正面図)、図7は固定スクロール1の板状渦巻歯1b側の平面図、図8は揺動スクロール2の縦断面図、図9は揺動スクロール2の板状渦巻歯2bの反対側の面の平面図、図10は揺動スクロール2の板状渦巻歯2b側の面の平面図、図11はコンプライアントフレーム3の縦断面図、図12は主軸4の縦断面図、図13はガイドフレーム15の縦断面図、図14は電動機20の縦断面図、図15はサブフレーム6の縦断面図、図16は揺動スクロール2の揺動に伴う連通穴2kの軌跡を示す図、図17は吸入完了状態を回転角度0°として、固定スクロール1に対する揺動スクロール2の相対位置および連通穴2kとの相関を、主軸4の回転角度0°と回転角度90°とについて示した図、図18は吸入完了状態を回転角度0°として、固定スクロール1に対する揺動スクロール2の相対位置および連通穴2kとの相関を、主軸4の回転角度180°と回転角度270°とについて示した図、図19は吸入完了状態を回転角度0°として、固定スクロール1に対する揺動スクロール2の相対位置および連通穴2kとの相関を、主軸4の回転角度360°と回転角度450°とについて示した図、図20は吸入完了状態を回転角度0°として、固定スクロール1に対する揺動スクロール2の相対位置および連通穴2kとの相関を、主軸4の回転角度540°と回転角度と630°とについて示した図、図21は第一の室20aの圧力と主軸4の回転角度との関係を示す図、図22は三相誘導電動機の結線を示す図、図23は単相誘導電動機の結線を示す図、図24はスクロール圧縮機100が組み込まれる空気調和機200の冷媒回路の一例を示す図、図25は空気調和機200の冷凍サイクルのph線図(モリエル線図)、図26は変形例のスクロール圧縮機300の縦断面図、図27はコンプライアントフレーム330の縦断面図である。
図1に示すように、スクロール圧縮機100は、密閉容器10内に、少なくとも圧縮機構部40と、電動機20と、圧縮機構部40と電動機20とを連結する主軸4と、主軸4の圧縮機構部40の反対側の端部(副軸部4d(図12参照))を支持するサブフレーム6と、密閉容器10の底部の油だめ10gに貯留される冷凍機油10eと、を備える。
圧縮機構部40は、少なくともそれぞれの板状渦巻歯1b(図2、図7参照)、板状渦巻歯2b(図8、図10参照)が相互間に圧縮室1d(図2参照)を形成するように噛み合わされる固定スクロール1及び揺動スクロール2と、オルダムリング9と、コンプライアントフレーム3と、ガイドフレーム15と、を備える。
以下、圧縮機構部40の主要な構成要素について、順に説明する。
主に図2乃至図7を参照しながら、固定スクロール1について説明する(オルダムリング9についても言及する)。固定スクロール1は、その外周部近傍においてガイドフレーム15にボルト(図示せず)によって締結されている。
図7に示すように、固定スクロール1の台板部1a(固定スクロール台板部)の外周部近傍には、複数の孔が開けられている(図7では、12個)。固定スクロール1のガイドフレーム15に対する位置を決める、二つの位置決め用孔1jが、略対角線上に位置する。
二つの位置決め用孔1j以外の孔は、固定スクロール1をガイドフレーム15にボルトにて締結するときのボルト孔1kで、図7ではボルト孔1kは10個設けられている。これは、一例であって、ボルト孔1kの数は任意でよい。
台板部1aの一方の面(図2において下側)には、板状渦巻歯1bが形成されている。
図7に示すように、固定スクロール1の外周部には、一対のオルダム案内溝1cが、固定スクロール1の中心線から所定寸法d1ずれた直線上に形成されている。
このオルダム案内溝1cには、オルダムリング9の一対の固定スクロール側爪9c(図6参照)が往復摺動自在に係合されている。
図6に示すように、オルダムリング9には同じ面に、略180°の位相を持つ一対の固定スクロール側爪9cと、一対の固定スクロール側爪9cと略90°位相が異なり、略180°の位相を持つ一対の揺動スクロール側爪9aが形成されている。
一対の揺動スクロール側爪9aは、揺動スクロール2の揺動スクロールオルダム案内溝2e(図9参照)に係合している。オルダムリング9は、揺動スクロール2の自転を防止する。
また、固定スクロール1の板状渦巻歯1bに直角方向から吸入圧力空間1gに連通するように弁通路17dが設けられる(図3参照)。
固定スクロール1の板状渦巻歯1bに直角方向から吸入圧力空間1gに連通するように、吸入管10a(図1、図2)が密閉容器10を貫通して、固定スクロール1の圧入されている。
また、吸入逆止弁組立17が、弁通路17d(図3参照)に摺動するように設けられる。
吸入逆止弁組立17は、図4に示すように、吸入逆止弁17aと、バネ17bとからなる。吸入逆止弁17aは、バネ17bにより吸入管10aの方向に閉じるように付勢されている。吸入逆止弁17aは、吸入管10aの端面に当接して止まり、シールされて冷媒の逆流を防ぐ。
また、高圧の冷媒ガスが吐出される吐出ポート1fが、固定スクロール1の台板部1aの略中央部に形成されている(図2、図7参照)。
また、図7において、リリーフ穴1h近傍に形成されている二つの長穴1mは、詳細は省くが、ここも冷媒を圧縮室1dに吸入する吸入口となる。
固定スクロール1の板状渦巻歯1b(図2参照)と、揺動スクロール2の板状渦巻歯2b(図3参照)が噛み合わされて、相互間に圧縮室1d(図2参照)が形成される。
また、固定スクロール1の台板部1aの板状渦巻歯1bと反対側の面で、吸入圧力空間1gに対応する位置に、リリーフ弁組立50が設けられている。
図5に示すように、リリーフ弁組立50は、リリーフ弁50aと、弁押え50bとを備える。
固定スクロール1の台板部1aにリリーフ穴1hが貫通している。リリーフ穴1hは、吸入圧力空間1gに連通する。リリーフ穴1hの吸入圧力空間1gと反対側の開口部をリリーフ弁50aが開閉自在に閉塞している。
詳細は後述するが、スクロール圧縮機100が、圧縮室1dに液冷媒が満たされた状態のときに、何らかの理由で正回転の反対の逆転運転始動すると、液圧縮によるパンピング圧が発生する。パンピング圧により、固定スクロール1の板状渦巻歯1bがずれることでメカがロックするか、もしくは圧縮性能が低下する。リリーフ弁組立50は、圧縮室1dで液圧縮が発生する場合に、液冷媒を圧縮室1dの外部(密閉容器10の内部空間)に逃がして液圧縮によるパンピング圧の発生を抑制する。
図8乃至図10を参照しながら、揺動スクロール2について説明する。揺動スクロール2は、2a(揺動スクロール台板部)の一方の面に固定スクロール1の板状渦巻歯1bと実質的に同一形状の板状渦巻歯2bが設けられており、固定スクロール1の板状渦巻歯1bと組み合わされて圧縮室1d(図2参照)を形成している。
図8に示すように、台板部2aの板状渦巻歯2bと反対側の面の略中心部に、中空円筒状のボス部2fが形成されており、主軸4上端の揺動軸部4bと回転自在に係合している。
また、台板部2aの板状渦巻歯2bと反対側の面に、コンプライアントフレーム3のスラスト軸受3aと圧接摺動可能なスラスト面2dが形成されている。
図9に示すように、揺動スクロール2の台板部2aの外周部には、固定スクロール1のオルダム案内溝1cと90度の位相差を持つ一対のオルダム案内溝2eが、ほぼ一直線上に二個形成されている。このオルダム案内溝2eに、オルダムリング9の揺動スクロール側爪9a(図6参照)が往復摺動自在に係合している。
また、台板部2aには、圧縮室1dとスラスト面2dとを連通させる抽出孔2jが設けられ、圧縮途中の冷媒ガスを抽出してスラスト面2dに導く構造となっている。
さらに、台板部2aには、圧縮室1dとボス部空間2hとを連通させる連通穴2kが設けられる(図8〜図10参照)。この圧縮室1dとボス部空間2hとを連通させる連通穴2kが、本実施の形態において重要な構成要素である。
詳細は後述するが、スクロール圧縮機100の逆転運転時に、揺動スクロール2のボス部空間2hを油だめ10g(密閉容器10内部)よりも低圧にして、冷凍機油10eを油だめ10gから主軸4の中空空間4gを経てボス部空間2hに導くために、連通穴2kは設けられる。
図11を参照しながら、コンプライアントフレーム3について説明する。コンプライアントフレーム3は、その外周部に設けられた上下二つの上側円筒面3d、下側円筒面3eが、ガイドフレーム15の内周部に設けた上側円筒面15a、下側円筒面15b(図13参照)により半径方向に支持されている。
コンプライアントフレーム3の略中心部には、電動機20(図1、図14参照)により回転駆動される主軸4を半径方向に支持する、コンプライアントフレーム3とは別部品の主軸受3c及び副主軸受3hが嵌合されている。
また、スラスト軸受3a面内から軸方向に貫通する連絡通路3sが設けてあり、そのスラスト軸受側の開口部3kは揺動スクロール抽出孔2jに対面して配置されている。
さらに、コンプライアントフレーム3には、吸入圧力空間1gに開口して連通する連通穴30a(軸直交方向)と、この連通穴30aに連通するとともにフレーム空間15fに開口して連通する連通穴30b(軸方向)とが形成されている。
そして、図11に示すように、連通穴30b(軸方向)に、逆止弁部19aとバネ19bとを有する逆止弁19が収納される。吸入圧力空間1gの冷媒の圧力が、フレーム空間15fの冷媒の圧力より高く、且つバネ19bの力よりもその差圧による力が上回ると、逆止弁19は開く。その反対の吸入圧力空間1gの冷媒の圧力が、フレーム空間15fの冷媒の圧力より低い場合は、閉じている。本実施の形態において、連通穴30a(軸直交方向)、連通穴30b(軸方向)、及び逆止弁19も、重要な構成要素である。
図12を参照しながら、主軸4について説明する。主軸4の上端部に、揺動スクロール2の揺動軸受2cと回転自在に係合し、主軸部4cと所定寸法偏芯した揺動軸部4bが形成されている。
揺動軸部4bの下側に、主軸バランサ4eが焼きばめられている。
また、主軸バランサ4eが嵌合される部分の下に、コンプライアントフレーム3の主軸受3c及び副主軸受3hと回転自在に係合する主軸部4cが形成されている。
また、主軸部4cの下部は、サブフレーム6の副軸受6a(図15参照)と回転自在に係合する副軸部4dが形成されている。この副軸部4dと主軸部4cとの間には、電動機20の回転子8が焼き嵌めにより、固定されている。
回転子8の上端のエンドリング8c(図14参照)に、上バランサ8aが固定されている。また、回転子8の下端のエンドリング8c(図14参照)に、下バランサ8bが上バランサ8aと180°の位相で固定されている。
合計3個のバランサ(主軸バランサ4e、上バランサ8a、下バランサ8b)により、主軸4の静バランス及び動バランスがとられている。
さらに、主軸4の下端にはオイルパイプ4fが圧入されており、密閉容器10底部の油だめ10gにたまった冷凍機油10eを吸上げる構造となっている。
図13を参照しながら、ガイドフレーム15について説明する。尚、図13には、一点鎖線でコンプライアントフレーム3、密閉容器10の一部を示している。
ガイドフレーム15の外周面15gは、焼きばめ、もしくは溶接などによって密閉容器10に固定されている。そして、ガイドフレーム15の外周部を切り欠いた切り欠き部15cにより、固定スクロール1の吐出ポート1fから吐出される高圧の冷媒ガスを圧縮機構部40と電動機20との間に設けられた吐出管10b(図1参照)に導く流路10h(図13参照)が確保されている。切り欠き部15cは、吐出管10bとは反対側の位置(略180°位相が異なる位置)に設けられている。
また、ガイドフレーム15の内周面には、コンプライアントフレーム3の外周面に形成された上側円筒面3d、下側円筒面3eと係合する上側円筒面15a、下側円筒面15b、及びシール材を収納するシール溝が二ヶ所に設けられている。
シール溝15hにシール材16aが設置され、シール溝15iにシール材16bが設置されている。これらの二つのシール材16a,16bを用いて密封されたガイドフレーム15の内周面とコンプライアントフレーム3の外周面とからなるフレーム空間15f(図13参照)は、コンプライアントフレーム3の連絡通路3sと連通しており、抽出孔2jより供給される圧縮途中の冷媒ガスを封入する構造となっている。
また、フレーム空間15f(図13参照)は、コンプライアントフレーム3の吸入圧力空間1gに開口して連通する連通穴30a(軸直交方向)と、この連通穴30aに連通するとともにフレーム空間15fに開口して連通する連通穴30b(軸方向)に連通している。
図14を参照しながら電動機20について説明する。電動機は、少なくとも固定子7と、回転子8とを備える。ここでは、電動機20は誘導電動機(単相、三相)とする。但し、その他のブラシレスDCモータでもよい。
固定子7は、少なくとも、図示しない固定子鉄心と、巻線と、絶縁材(スロットセル等)とを備える。
固定子鉄心は、全体の断面形状が略ドーナッツ状で、外周側に断面形状がリング状のコアバックが形成されている。このコアバックから、内側に放射状に歯部が周方向に略等間隔に設けられている。
歯部の周方向の幅は、径方向に略均一である。即ち、歯部は、回転子鉄心の内周側に向かって略平行の形状を有している。歯部の内径側の先端部は、両サイドが周方向に広がるような円弧状をなしている。
隣接する二つの歯部と、コアバックの一部とで囲まれる空間をスロットと呼ぶ。歯部の数と、スロットの数は同じである。
歯部の周方向の幅は径方向に略均一であるから、スロットの周方向の幅は内側から外側に向かって徐々に大きくなる。
スロットの内周側(回転子側)は、開口している。このスロットの内周側(回転子側)の開口している部分を、スロット開口部と呼ぶ。
巻線は、このスロット開口部からスロット内に挿入される。
各々のスロットの内部には、スロットセルなどの絶縁材(図示せず)を介して、三相または単相の集中巻方式もしくは分布巻方式で巻かれる巻線が施されている。巻線には、銅線の外側に絶縁被膜が施されたマグネットワイヤなどが用いられる。
固定子鉄心は、薄板の電磁鋼板(例えば0.1〜1.0mm程度の板厚の無方向性電磁鋼板(鋼板の特定方向に偏って磁気特性を示さないよう、各結晶の結晶軸方向をできる限りランダムに配置させたもの))を所定の形状に金型で打ち抜き、所定の枚数(複数枚)積層して構成される。
固定子7の内径側に空隙(図示せず)を介して配置される回転子8は、電磁鋼板を積層した回転子鉄心にかご形巻線がダイキャストにより形成されるものである。
回転子鉄心も、固定子鉄心と同様に薄板の電磁鋼板(例えば0.1〜1.0mm程度の板厚の無方向性電磁鋼板)を所定の形状に金型で打ち抜き、所定の枚数(複数枚)積層して構成される。
固定子7と回転子8との間の空隙は、例えば、径方向寸法が0.2〜2.0mm程度である。
また、図示はしないが、固定子7には、密閉容器10内の上部から下部に落ちる冷凍機油10eが通過する穴もしくは切り欠きが形成されている。
図15を参照しながらサブフレーム6について説明する。サブフレーム6は、主軸4の圧縮機構部40の反対側の端部(副軸部4d(図10参照)を支持する。
サブフレーム6には、主軸4の副軸部4dが回転自在に摺動する副軸部4dが形成されている。
また、サブフレーム6には、電動機20から下方に落下する冷凍機油10eを油だめ10gに落とす油孔6bが形成されている。
次に高圧シェルタイプ(密閉容器10内部が、冷凍サイクルの高圧側)のコンプライアントフレーム3を用いるスクロール圧縮機100の基本動作について説明する。
スクロール圧縮機100の運転により冷凍サイクルの吸入側から、吸入冷媒(低圧の冷媒)が吸入管10aより吸入される。吸入冷媒の吸入圧力により、吸入逆止弁17aはバネ力に打ち勝って弁止まり面(図示せず)まで押し下げられ、吸入冷媒は固定スクロール1及び揺動スクロール2の板状渦巻歯2bで形成される圧縮室1dに入る。
電動機20により主軸4を介して駆動される揺動スクロール2は、偏芯旋回運動を行い圧縮室1dの容積を減少させる。この圧縮行程により吸入冷媒は高圧となり、固定スクロール1の吐出ポート1fより密閉容器10内に吐き出される。
尚、圧縮行程において、圧縮途中の中間圧力の冷媒ガスは揺動スクロール2の抽出孔2j(図8参照)よりコンプライアントフレーム3の連絡通路3sを経て、フレーム空間15fに導かれ、この空間の中間圧力雰囲気を維持する(抽出孔2j以外は、図2参照)。高圧となった吐出ガスは、密閉容器10内を高圧雰囲気で満たし、吐出管10bからスクロール圧縮機100の外に放出される。
密閉容器10底部の油だめ10gに貯められた冷凍機油10eは、差圧(密閉容器10内の高圧と、ボス部空間2hの中間圧との差圧)により、主軸4を軸方向に貫通する中空空間4gを通り揺動軸受空間2g(図8参照)に導かれる。この揺動軸受空間2gの絞り作用によって中間圧力となった冷凍機油10eは、揺動スクロール2とコンプライアントフレーム3によって囲まれた空間であるボス部空間2hを満たす。
中間圧力となった冷凍機油10eは、ボス部空間2hと低圧雰囲気空間を連絡する圧力調整弁(図示せず)を経由して低圧空間(吸入圧力空間1g)に導かれ、低圧の冷媒ガスとともに圧縮室1dに吸入される。圧縮行程により冷凍機油10eは高圧の冷媒ガスとともに吐出ポート1fから密閉容器10内に吐出される。
本実施の形態のスクロール圧縮機100は、ボス部空間2hが、主軸4の回転角度の所定の範囲において、固定スクロール1の板状渦巻歯1bと、揺動スクロール2の板状渦巻歯2bとを噛み合わせることにより形成される最外周の室(この室を最外周室とする)と、連通穴2kを介して連通する点に特徴がある。
本実施の形態のスクロール圧縮機100における上記特徴の作用効果は、追って説明する。
固定スクロール1の板状渦巻歯1bと、揺動スクロール2の板状渦巻歯2bとを噛み合わせることにより形成される圧縮室1d(最外周室)は、主軸4の回転により徐々に圧縮されて、圧力を高めながら中央部へ移動していく。
例えば、図17を参照する。主軸4の回転角度が0°のときに、冷媒の吸入を完了した状態となり、密閉された第一の室20a(最外周室)ができるとする。この密閉された第一の室20aは、主軸4の回転が進むにつれ、容積を小さくしながら圧力を高めつつ、中央部(吐出ポート1f付近)へ移動していく。
図2に示す圧縮室1dは、固定スクロール1の板状渦巻歯1bと揺動スクロール2の板状渦巻歯2bとの噛み合わせの最外周(図17の主軸4の回転角度が略0°〜90°)にあるときの第一の室20aに略一致する。
固定スクロール1の板状渦巻歯1bと揺動スクロール2の板状渦巻歯2bとの噛み合わせの最外周に形成される最外周室は、主軸4の回転角度360°毎に新たに形成される。
図2に示す圧縮室1dは、主軸4の回転角度360°毎に新たに形成される固定スクロール1の板状渦巻歯1bと揺動スクロール2の板状渦巻歯2bとの噛み合わせの最外周に形成される最外周室を示している。
ここでは、次々と形成される固定スクロール1の板状渦巻歯1bと揺動スクロール2の板状渦巻歯2bとの噛み合わせの最外周に形成される最外周室の中の一つを、第一の室20a(圧縮室1d)とする。
図16は揺動スクロール2の台板部2aに形成されている連通穴2kの、揺動スクロール2の揺動に伴う回転の軌跡を示すが、図中、ボス部空間2hに連通していない連通穴2kを細い実線の円で示し、ボス部空間2hに連通している連通穴2kを太い実線の円で示している。
図16に示すように、連通穴2kは主軸4の回転角度の略90°の範囲でボス部空間2hに連通する。主軸4の回転角度の他の略270°の範囲では、連通穴2kは、コンプライアントフレーム3のスラスト軸受3aの面で閉塞される。
ここで、主軸4の回転角度の定義を行う。図17に示すように、第一の室20aが冷媒の吸入を完了したときの、主軸4の回転角度を0°とする。
図16の「主軸4の回転角度0°」は、図17の(主軸4の回転角度0°)と一致する。また、図16の「主軸4の回転角度90°」は、図17の(主軸4の回転角度90°)と一致する。
従って、連通穴2kのコンプライアントフレーム3側の開口部は、以下の条件を満たすことが必須となる。
(1)連通穴2kのコンプライアントフレーム3側の開口部は、主軸4の回転角度0°〜90°(概略の範囲)の間で、ボス部空間2hに連通する。
(2)連通穴2kのコンプライアントフレーム3側の開口部は、主軸4の回転角度90°〜360°(概略の範囲)の間で、ボス部空間2hに連通しない(連通穴2kは、コンプライアントフレーム3のスラスト軸受3aの面で閉塞される)。
連通穴2kのコンプライアントフレーム3と反対側の開口部(板状渦巻歯2b側)の第一の室20a(圧縮室1dの一つ)との連通は、少なくとも連通穴2kのコンプライアントフレーム3側の開口部がボス部空間2hと連通しているときは、連通状態にあることが必須である。
連通穴2kのコンプライアントフレーム3側の開口部がボス部空間2hに連通していないときは、連通穴2kのコンプライアントフレーム3と反対側の開口部(板状渦巻歯2b側)の第一の室20a(圧縮室1dの一つ)との連通は、連通していてもよいし、連通していなくてもよい。
図17乃至図20は、吸入完了状態を回転角度0°として、固定スクロール1に対する揺動スクロール2の相対位置および連通穴2kとの相関を、主軸4の回転角度0°、90°、180°、270°、360°、450°、540°、630°について示している。
図17に示すように、主軸4の回転角度が0°で吸入を完了して第一の室20aが形成される。第一の室20aの容積は、このときが最も大きい。そして、図に示すように、第一の室20aは連通穴2kと連通している。
また、図16に示すように、連通穴2kはボス部空間2hと連通を開始しているので、ボス部空間2hと第一の室20aとは連通状態にある。
主軸4が回転角度0°から90°回転すると、第一の室20aは反時計方向に、且つ内側に、その容積を小さくしながら移動する。主軸4の回転角度が90°でも、連通穴2kと連通している。
また、図16に示すように、連通穴2kはボス部空間2hとまだ連通しているので、ボス部空間2hと第一の室20aとは連通状態にある。
図18に示すように、主軸4が回転角度90°から90°回転して180°になると、第一の室20aは反時計方向に、且つ内側に、さらにその容積を小さくしながら移動する。主軸4の回転角度が180°では、連通穴2kと連通していない。主軸4が回転角度90°から180°の間のどこかで、連通穴2kの板状渦巻歯2b側の開口部は、第一の室20aと非連通状態になる。固定スクロール1の板状渦巻歯1bで、連通穴2kの板状渦巻歯2b側の開口部が閉塞される。または、連通穴2kの板状渦巻歯2b側の開口部が、まだ吸入を完了していない次の最外周室候補の空間に開口している。
図18に示すように、主軸4が回転角度180°から90°回転して270°になると、第一の室20aは反時計方向に、且つ内側に、さらにその容積を小さくしながら移動する。主軸4の回転角度が270°では、連通穴2kはまだ吸入を完了していない次の最外周室候補の空間に開口しているので、連通穴2kの板状渦巻歯2b側の開口部は、第一の室20aと非連通状態にある。
図19に示すように、主軸4が回転角度270°から90°回転して360°になると(主軸4が一回転したことになる)、第一の室20aは反時計方向に内側に、さらにその容積を小さくしながら移動する。主軸4の回転角度が360°では、連通穴2kは吸入を完了した次の最外周室の空間に開口しているので、連通穴2kの板状渦巻歯2b側の開口部は、第一の室20aと非連通状態にある。
図19に示すように、主軸4が回転角度360°から90°回転して450°になると、第一の室20aは反時計方向に、且つ内側に、さらにその容積を小さくしながら移動する。主軸4の回転角度が450°では、連通穴2kは吸入を完了した次の最外周室の空間に開口しているので、連通穴2kの板状渦巻歯2b側の開口部は、第一の室20aと非連通状態にある。
図20に示すように、主軸4が回転角度450°から90°回転して540°になると、第一の室20aは反時計方向に、且つ内側に、さらにその容積を小さくしながら移動する。第一の室20aは、主軸4が回転角度540°では、吐出ポート1fと連通している。そのため、第一の室20aの圧力は吐出圧力Pdと略等しくなる。正確には、主軸4が回転角度540°よりも前で、第一の室20aは、吐出ポート1fと連通している。
図20に示すように、主軸4が回転角度540°から90°回転して630°になると、第一の室20aは反時計方向に、且つ内側に、さらにその容積を小さくしながら吐出ポート1fと連通した状態で移動する。
図21は第一の室20aの圧力と主軸4の回転角度との関係を示すグラフであり、吸入冷媒の吸入を完了して第一の室20aが形成される主軸4の回転角度0°から主軸4の回転角度630°までの、第一の室20aの圧力の変化を示している。
主軸4の回転角度0°では、吸入冷媒の吸入を完了して第一の室20aが形成されるので、第一の室20aの圧力は吸入圧力Psに等しい。
その後、主軸4の回転とともに、第一の室20aは、その容積を小さくしながら内側に移動し、第一の室20a内の圧力は徐々に上昇する。
主軸4の回転角度0°〜90°の区間は、上記のように、ボス部空間2hと第一の室20aとが連通している。図21にも示すように、この主軸4の回転角度0°〜90°の区間は、ボス部空間2hの中間圧よりも第一の室20aの圧力が低い。従って、ボス部空間2hの冷媒及び冷凍機油10eは第一の室20aに引き込まれる。従って、ボス部空間2hと第一の室20aとが連通していても、ボス部空間2hへ第一の室20aの圧力が逃げることはない。
主軸4の回転角度が90°を超えると、ボス部空間2hと第一の室20aとが非連通状態となり、第一の室20aの圧力は上昇を続ける。図17〜図20の固定スクロール1の板状渦巻歯1bと揺動スクロール2の板状渦巻歯2bとの仕様では、主軸4の回転角度が450°〜540°のどこかで、第一の室20aが吐出ポート1fに連通して、第一の室20aの圧力は吐出圧力Pdになる。
主軸4の回転角度0°〜90°の区間で、ボス部空間2hと第一の室20aとが連通していることによる効果を説明する。
電動機20に三相もしくは単相の誘導電動機を使用する場合は、ユニット(例えば、空気調和機)の組立において、三相誘導電動機でのスクロール圧縮機100のガラス端子10f(図1参照)への電源端子の接続ミス、単相誘導電動機での運転コンデンサの結線ミス等により、製造ラインのテストにて電動機20が逆転する場合がある。
インバータで駆動するブシレスDCモータの場合は、通常駆動回路に電源の逆相を検知してブシレスDCモータへの通電を遮断する保護回路が内蔵されているため、スクロール圧縮機100のガラス端子10f(図1参照)への電源端子の接続ミスがあると、スクロール圧縮機100は始動しない。しかし、駆動回路に電源の逆相を検知してブシレスDCモータへの通電を遮断する保護回路が内蔵されていない場合、スクロール圧縮機100への電源端子の接続ミスがあると、スクロール圧縮機は逆転する場合がある。
図22の三相誘導電動機の結線において、三個ある電源端子(U相、V相、W相)を正しくスクロール圧縮機100のガラス端子10f(図1参照)に接続すれば、電動機20は所定の正転運転を行う。しかし、例えば、図22に示すように、U相とV相との接続を間違えると(U相巻線に電源のV相を接続し、V相巻線に電源のU相を接続する)、電動機20は所定の正転運転とは反対の逆転運転を行う。
また、図23の単相誘導電動機の結線において、通常は運転コンデンサが補助巻線に直列に接続され、その直列回路が主巻線に並列に接続される。
運転コンデンサの接続ミスで、運転コンデンサが主巻線に接続され、その直列回路が補助巻線に並列に接続されると(図23のカッコ内)、電動機20は所定の正転運転とは反対の逆転運転を行う。
ここで、スクロール圧縮機100が組み込まれるユニット(空気調和機200)の冷媒回路の一例を、図24を参照しながら説明しておく。
空気調和機200は、室外機201と、室内機202とを備える。室外機201と室内機202とは、接続配管(延長配管)であるガス管205及び液管207で接続される。
室外機201は、ガス管205を接続するためのガス側バルブ214と、液管207を接続するための液側バルブ215とを備える。
室内機202は、ガス管205を接続するためのガス側接続部216と、液管207を接続するための液側接続部217とを備える。
ガス管205及び液管207には、所定の径・長さの銅管が使用される。空気調和機200の据付時に、ガス管205及び液管207は現地の状況に合わせて作られる。
ガス管205及び液管207は、ガス側バルブ214、液側バルブ215、ガス側接続部216と、液側接続部217がそれぞれ備えるフレアナット(図示せず)によって固定される。
室外機201は、冷媒を圧縮する圧縮機(ここでは、スクロール圧縮機100)、冷媒の流れる方向を冷房運転と暖房運転とで切り替える四方弁204(オフ状態では冷房運転)、熱源側熱交換器である室外熱交換器211、第1の減圧装置210、中圧レシーバ209、第2の減圧装置208を備える。
冷媒の流れる方向を冷房運転と暖房運転とで切り替える四方弁204は、図24では、冷房暖房運転時の冷媒の流路を実線で示している。また、暖房運転時の冷媒の流路を破線で示している。
熱源側熱交換器である室外熱交換器211は、冷房運転時は凝縮器として動作し、暖房運転時は蒸発器として動作する。また、室外送風機(図示せず)により室外熱交換器211に送風が行われて冷媒と空気との熱交換が促進される。
第1の減圧装置210、第2の減圧装置208には、例えば、電子膨張弁が使用される。
中圧レシーバ209では、気液二相冷媒が流入し、スクロール圧縮機100の吸入配管218と熱交換して液冷媒となって流出する。
室内機202は、利用側熱交換器である室内熱交換器206を備える。室内熱交換器206は、冷房運転時は蒸発器として動作する。また、暖房運転時は凝縮器として動作する。また、室内送風機(図示せず)により室内熱交換器206に送風が行われて冷媒と空気との熱交換が促進されるとともに、調和空気を空調空間に送出する。室内機202の冷媒回路を室内冷媒回路とする。
図25により空気調和機200の冷媒回路の動作を、暖房運転と冷房運転のそれぞれについて説明する。
暖房運転時は、スクロール圧縮機100から吐出された高圧・高温のガス冷媒(図25の点1)は、四方弁204を通りガス側バルブ214、ガス管205、ガス側接続部216を通り室内熱交換器206に流入する。
室内熱交換器206では、ガス冷媒は室内空気(ガス冷媒の温度より低い)と熱交換することにより冷却されて凝縮する。室内熱交換器206の出口付近では、高圧の液冷媒となる(図25の点2)。尚、この高圧の液冷媒は、凝縮温度よりも所定温度低く過冷却されている。
室内熱交換器206を出た高圧の液冷媒は、液側接続部217、液管207、液側バルブ215を経て第2の減圧装置208に流入する。第2の減圧装置208で、高圧の液冷媒は減圧されて中圧の気液二相冷媒になる(図25の点3)。
第2の減圧装置208を出た中圧の気液二相冷媒は、中圧レシーバ209に流入する。中圧レシーバ209に流入した中圧の気液二相冷媒は、スクロール圧縮機100の吸入配管218を流れる低圧・低温のガス冷媒と熱交換して、中圧の液冷媒となる(図25の点4)。
中圧レシーバ209を出た中圧の液冷媒は、第1の減圧装置210にて減圧されて低圧の気液二相冷媒になる(図25の点5)。
第1の減圧装置210を出た低圧の気液二相冷媒は、室外熱交換器211に流入する。室外熱交換器211では、低圧の気液二相冷媒は外気(低圧の気液二相冷媒より温度が高い)と熱交換して蒸発する。そして、低圧のガス冷媒となる(図25の点6)。
さらに、低圧のガス冷媒は、中圧レシーバ209の中圧の気液二相冷媒と熱交換することにより加熱され(図25の点7)、スクロール圧縮機100に吸入される。
冷房運転時は、スクロール圧縮機100から吐出された高圧・高温のガス冷媒(図25の点1)は、室外熱交換器211に流入する。
室外熱交換器211では、ガス冷媒は外気(ガス冷媒の温度より低い)と熱交換することにより冷却されて凝縮する。室外熱交換器211の出口付近では、高圧の液冷媒となる(図25の点2)。尚、この高圧の液冷媒は、凝縮温度よりも所定温度低く過冷却されている。
室外熱交換器211を出た高圧の液冷媒は、第1の減圧装置210に流入する。第1の減圧装置210で、高圧の液冷媒は減圧されて中圧の気液二相冷媒になる(図25の点3)。
第1の減圧装置210を出た中圧の気液二相冷媒は、中圧レシーバ209に流入する。中圧レシーバ209に流入した中圧の気液二相冷媒は、スクロール圧縮機100の吸入配管218を流れる低圧・低温のガス冷媒と熱交換して、中圧の液冷媒となる(図25の点4)。
中圧レシーバ209を出た中圧の液冷媒は、第2の減圧装置208にて減圧されて低圧の気液二相冷媒になる(図25の点5)。
第2の減圧装置208を出た低圧の気液二相冷媒は、液側バルブ215、液管207、液側接続部217を経て室内熱交換器206に流入する。室内熱交換器206では、低圧の気液二相冷媒は室内空気(低圧の気液二相冷媒より温度が高い)と熱交換して蒸発する。そして、低圧のガス冷媒となる(図25の点6)。
さらに、低圧のガス冷媒は、中圧レシーバ209の中圧の気液二相冷媒と熱交換することにより加熱され(図25の点7)、スクロール圧縮機100に吸入される。
電動機20に三相もしくは単相の誘導電動機を使用する場合で、ユニット(例えば、空気調和機)の組立において、三相誘導電動機でのスクロール圧縮機100のガラス端子10f(図1参照)への電源端子の接続ミス、単相誘導電動機での運転コンデンサの結線ミス等により、製造ラインのテストにて電動機20が逆転する場合の問題点について言及する。
製造ラインにおいて、空気調和機200は、室外機201と室内機202とが別々に組立られる。
室外機201は、スクロール圧縮機100等を用いて冷媒回路が組立られると、冷媒(例えば、R22、R410A、R407C等)が、四方弁204と室外熱交換器211との間に設けられるチャージポートから冷媒回路に充填される。このとき、四方弁204はオフで冷房運転の回路になっている。従って、スクロール圧縮機100の吐出側と室外熱交換器211とが連通している。チャージポートから冷媒回路に充填される冷媒は、室外熱交換器211及びスクロール圧縮機100の密閉容器10内部に充填される。
空気調和機200の製造ラインでは、ダミーの室内機202に製造中の室外機201を接続して、出荷テストを行う。このとき、三相誘導電動機でのスクロール圧縮機100のガラス端子10f(図1参照)への電源端子の接続ミス、単相誘導電動機での運転コンデンサの結線ミスがあると、スクロール圧縮機100の始動時に、電動機20は逆転運転する。
この電動機20の逆転運転により、圧縮機構部40は圧縮機ではなく膨張機となる。即ち、吐出弁を持たないスクロール圧縮機100の、冷媒を充填後の始動時の動作は、以下のようになる。尚、スクロール圧縮機100は、吸入逆止弁組立17を備えるものとする。
(1)吐出ポート1fに連通している一つの圧縮室1d(圧縮室Aとする)は、密閉容器10内の冷媒(冷凍サイクル全体の冷媒が同一圧力にバランスしている)を吸入し、主軸4の逆転が進み圧縮室Aが閉じると、容積を拡大しながら外側に移動する。このとき、圧縮室A内の圧力は徐々に低下する。
(2)圧縮室Aがボス部空間2hと連通穴2kを介して連通すると、圧縮室Aの圧力が冷凍サイクルのバランス圧力よりも低いので、冷凍サイクルのバランス圧力であったボス部空間2hの圧力は下がる。ボス部空間2hと圧縮室Aとの容積比は、例えば、10:1程度であり、この容積比と連通する前のそれぞれの圧力で、圧縮室Aがボス部空間2hと連通後のボス部空間2h及び圧縮室Aの圧力は決まる。主軸4の逆転がさらに進むと、圧縮室Aの容積が増加する分、ボス部空間2h及び圧縮室Aの圧力はさらに低下する。
(3)主軸4の逆転がさらに進み、圧縮室Aが解放されると、圧縮室Aは吸入圧力空間1gと連通する。吸入圧力空間1gは、吸入逆止弁組立17で閉じているので、吸入圧力空間1gの冷媒量は増加する。
(4)圧縮室Aの内側に形成される次の圧縮室Bも同様の動作を行う。そのため、ボス部空間2hの圧力はさらに低下する。また、吸入圧力空間1gの冷媒量もさらに増加する。
(5)コンプライアントフレーム3に、吸入圧力空間1gとフレーム空間15fとを、連通させる吸入圧力空間1gに開口する連通穴30a(軸直交方向)及びフレーム空間15fに開口する連通穴30b(軸方向)とが形成されている。連通穴30b(軸方向)に、逆止弁部19aとバネ19bとを有する逆止弁19が収納され、吸入圧力空間1gの冷媒の圧力が、フレーム空間15fの冷媒の圧力より高く、且つバネ19bの力よりもその差圧による力が上回ると、逆止弁19は開く。吸入圧力空間1gの冷媒量が増加して、吸入圧力空間1gの冷媒の圧力が、フレーム空間15fの冷媒の圧力より高く、且つバネ19bの力よりもその差圧による力が上回ると、吸入圧力空間1gとフレーム空間15fとが連通し、吸入圧力空間1gの高圧の冷媒が、フレーム空間15fに流入してフレーム空間15fの圧力を上昇させる。それにより、コンプライアントフレーム3は、揺動スクロール2側に浮上する。すると、コンプライアントフレーム3のスラスト軸受3aと揺動スクロール2のスラスト面2dが当接して、コンプライアントフレーム3のスラスト軸受3aと揺動スクロール2のスラスト面2dとの隙間がなくなり、冷凍サイクルのバランス圧力(ボス部空間2hの圧力より高い)が流入しないため、ボス部空間2hは低下した圧力のままの状態を維持する。
(6)上記の動作を繰り返すことで、ボス部空間2hの圧力は、密閉容器10内の圧力(始動前の冷凍サイクルのバランス圧力に略等しい)よりも低くなる。即ち、油だめ10gの圧力がボス部空間2hの圧力よりも大きくなるので、その差圧により冷凍機油10eは、主軸4の中空空間4gを上昇して、ボス部空間2hに流入する。それにより、揺動軸受2c等の各軸受に給油することができる。従って、ボス部空間2hと圧縮室1dとを連通させる連通穴2kがない場合に発生する、電動機20の逆転運転時の主軸4の焼きつきを抑制することができる。
(7)吸入圧力空間1gの冷媒量は増え続けるが、吸入圧力空間1gの圧力が所定の圧力を超えると、リリーフ弁50aが開き、吸入圧力空間1gの冷媒は密閉容器10内へ解放される。リリーフ弁50aが開く吸入圧力空間1gの圧力は、逆止弁19が開く吸入圧力空間1gの圧力よりも高く設定される。
従って、吸入逆止弁組立17を備えるスクロール圧縮機100では、電動機20の逆転運転時の主軸4の焼きつきを抑制するため、以下の構成要素が必須となる。
(1)固定スクロール1の板状渦巻歯1bと揺動スクロール2の板状渦巻歯2bとの噛み合わせにより最外周室が形成される主軸4の回転角度が0°とし、例えば、主軸4の回転角度が略0°〜90°(所定の主軸4の回転角度範囲)のときにボス部空間2hと最外周室とを連通させる連通穴2k。
(2)弁通路17dに摺動するように設けられ、吸入逆止弁17aと、バネ17bとからなり、吸入逆止弁17aが吸入管10aの端面に当接して止まり、シールされて冷媒の冷凍サイクルの吸入側への逆流を防ぐ吸入逆止弁組立17。
(3)固定スクロール1の台板部1aの板状渦巻歯1bと反対側の面で、吸入圧力空間1gに対応する位置で、固定スクロール1の台板部1aのリリーフ穴1hを開閉自在に閉塞するリリーフ弁50aと弁押え50bとを備えるリリーフ弁組立50。
(4)コンプライアントフレーム3に形成される、吸入圧力空間1gに開口する連通穴30a(軸直交方向)、フレーム空間15fに開口する連通穴30b(軸方向)、及び連通穴30b(軸方向)に収納される、逆止弁部19aとバネ19bとを有する逆止弁19。
次に、スクロール圧縮機100を搭載した室外機201と、室内機202とを備える空気調和機200の据付時の結線ミスによる逆転運転について言及する。
この場合、電動機20に三相誘導電動機を使用するスクロール圧縮機100が対象となる。電動機20がインバータで駆動されるブシレスDCモータの場合は、駆動回路に電源の逆相を検知してブシレスDCモータへの通電を遮断する保護回路が内蔵されていない場合、据付時の室外機201の電源接続端子への三相電源の接続において、相の順序がずれてしまうと、スクロール圧縮機100は逆転してしまうので対象となる。また、電動機20に単相誘導電動機を使用するスクロール圧縮機100の場合は、据付時の室外機201の電源接続端子への単相電源の接続において、相(二相)の順序がずれても、電動機20の逆転運転は発生しない。据付後の運転コンデンサのサービス(交換)時に、可なり低い確率での結線ミスによる逆転運転の発生が考えられる程度である。
室内機202と室外機201とを有する空気調和機200は、据付時に現地で室内機202と室外機201とを接続配管で接続する必要がある。
室内機202は、ガス管205を接続するためのガス側接続部216と、液管207を接続するための液側接続部217とを備える。
工場出荷時、室内機202の冷媒回路(室内熱交換器206)には窒素ガス等が封入されている。室内機202の冷媒回路の二つの開放端部は、例えば、キャップ付きのフレアナットで閉塞され、窒素ガスが外部へ漏れないようになっている(ガス側接続部216、液側接続部217)。
また、室外機201の冷媒回路には、工場出荷時に所定量の冷媒が充填されている。また、スクロール圧縮機100には、圧縮機構を潤滑するための冷凍機油10eが所定量封入されている。
室外機201の冷媒回路の二つの開放端部には、それぞれバルブ(ガス管205を接続するためのガス側バルブ214、液管207を接続するための液側バル215)が接続され、冷媒が漏れないようになっている。室外機201のバルブ(ガス管205を接続するためのガス側バルブ214、液管207を接続するための液側バル215)には、室内機202と同様のキャップ付きのフレアナットが取り付けられている。バルブで冷媒回路は閉塞されているので、キャップ付きのフレアナットは、据付時に接続配管を接続するために必要なものである。室内機202と同様のキャップ付きのフレアナットを使用するのは、部品を共通化するためである。
空気調和機200の据付時における室内機202と室外機201との接続方法について説明する。
先ず、室内機202の冷媒回路における二つの開放端部を閉塞しているキャップ付きのフレアナットを工具を用いて取り外す。このとき室内機202の冷媒回路に封入されていた窒素ガスは大気に放出される。
また、室外機201のバルブ(ガス管205を接続するためのガス側バルブ214、液管207を接続するための液側バル215)に取り付けられているキャップ付きのフレアナットも工具を用いて取り外す。このときバルブは閉じているので、冷媒は室外機201の冷媒回路に充填された状態を維持する。
次に、室内機202、室外機201のキャップ付きのフレアナット(計4個)からキャップを取り外す。
さらに、接続配管として用いる銅管(二本)を所定の長さに切断する。所定の長さとは、据付状態の室内機202と室外機201との間の距離に略一致する。
二本の接続配管に、キャップを取り外したフレアナットをそれぞれ2個挿入する。そして、二本の接続配管のそれぞれの両端を拡管する。
4個のフレアナットを室内機202、室外機201の元の部位に締結する。これで、接続配管の接続が完了する。
接続が完了した室内機202の冷媒回路と接続配管の内部は、空気もしくは放出されずに残った窒素ガスを含む空気が残存している。
そのため、室外機201のバルブに設けられている冷媒チャージポート(閉止弁を押し開いて接続配管側に連通する)に真空ポンプを接続し、室内機202の冷媒回路と接続配管の内部の真空引きを行う。
室内機202の冷媒回路と接続配管の内部の真空引きが完了したら、室外機201の二つのバルブ(ガス管205を接続するためのガス側バルブ214、液管207を接続するための液側バル215)を開き、室外機201に充填されている冷媒を冷媒回路全体に移動させて据付工事は完了する。
接続配管(ガス管205及び液207)には、所定の径・長さの銅管が使用される。空気調和機200の据付時に、ガス管205及び液管207は現地の状況に合わせて作られる。
一例では、接続配管(ガス管205及び液207)が30mまでは、冷媒の追加充填は不要となっている。
接続配管(ガス管205及び液207)が30m以上の場合は、接続配管サイズと配管長さに応じて所定の追加冷媒を充填する。その手順は、室内機202の冷媒回路と接続配管の内部の真空引きが完了したら、室外機201の二つのバルブ(ガス管205を接続するためのガス側バルブ214、液管207を接続するための液側バル215)を開いて冷媒を室内側へ開放し、試運転(冷房運転)を行いながら、室外機201のバルブに設けられている冷媒チャージポート(閉止弁を押し開いて接続配管側に連通する)から追加冷媒を充填(正確には、冷媒回路に引き込まれる)する。
このとき、ガス側バルブ214の冷媒チャージポートから冷凍サイクルの低圧側に冷媒は充填される。
仮に、据付時の室外機201の電源接続端子への三相電源の接続において、相の順序がずれて逆相になっているとする。この状態で追加冷媒を充填する試運転(冷房運転)を実施すると、スクロール圧縮機100は逆転運転を行うことになる。
このときのスクロール圧縮機100の逆転運転は、空気調和機200の製造ラインにおける出荷試験のときと略同じである。
吸入逆止弁組立17を用いるスクロール圧縮機100に液冷媒が存在する状態で、始動し且つそれが逆転運転とすると、吸入圧力空間1gの圧力が急上昇して圧縮機構部40が破壊する恐れがある。
空気調和機200の据付時に、スクロール圧縮機100に液冷媒が存在する状態で、始動し且つそれが逆転運転になる可能性は極めて少ない。
しいて、そのような状態になる条件を挙げると、室内機202の冷媒回路と接続配管の内部の真空引きが完了したら、室外機201の二つのバルブ(ガス管205を接続するためのガス側バルブ214、液管207を接続するための液側バル215)を開き、室外機201に充填されている冷媒を冷媒回路全体に移動させた時点で作業を中断して、追加冷媒の充填等の作業は翌日に持ち越す場合である。
特に、寒冷地において、夜間の寒気によりスクロール圧縮機100の温度が下がると、冷媒がスクロール圧縮機100に寝込む(液冷媒がスクロール圧縮機100に貯まる)。
この状態で、例えば、追加冷媒の充填を行うために、試運転を開始し、且つ結線ミスがあって吸入逆止弁組立17を用いるスクロール圧縮機100が逆転始動すると、吸入圧力空間1gの圧力が急上昇して圧縮機構部40が破壊する恐れがある。
しかし、本実施の形態のスクロール圧縮機100は、吸入逆止弁組立17を用いる場合は、リリーフ弁50aと、弁押え50bとを備えるリリーフ弁組立50を使用するので、その場合でも、リリーフ弁組立50により吸入圧力空間1gの圧力の急上昇を回避することができる。
スクロール圧縮機100の正転運転の場合に、圧縮室1dとボス部空間2hとを連通させる連通穴2kは、冷媒の吸入を完了した状態となり、密閉された最外周室(第一の室20a)が形成されるときの主軸4の回転角度を0°とすると、主軸4の回転角度が略0°〜90°の区間で連通穴2kは最外周室とボス部空間2hとを連通させる。図21に示すように、この区間(主軸4の回転角度が略0°〜90°)では、最外周室の圧力よりもボス部空間2hの圧力(中間圧)が高いので、最外周室の冷媒がボス部空間2hに逃げることはなく、スクロール圧縮機100の性能に影響しない。
また、スクロール圧縮機100の逆転運転の場合、主軸4の回転角度の全範囲において、圧縮室1dとボス部空間2hとを連通穴2kで連通させると、ボス部空間2hに上がる油だめの冷凍機油10eが増え、油だめに冷凍機油10eがなくなる恐れがある。冷媒の吸入を完了した状態となり、密閉された最外周室(第一の室20a)が形成されるときの主軸4の回転角度を0°とすると、主軸4の回転角度が略0°〜90°の区間で連通穴2kは最外周室とボス部空間2hとを連通させるようにしているので、ボス部空間2hに上がる油だめの冷凍機油10eが増え、油だめに冷凍機油10eがなくなる恐れも少ない。
次に、図26、図27により変形例のスクロール圧縮機300について説明する。
変形例のスクロール圧縮機300は、図1のスクロール圧縮機100に対して、圧縮機構部340の構成が異なり、圧縮機構部340のコンプライアントフレーム303の、吸入圧力空間1gとフレーム空間15fとを連通させる構成が異なる。
図27に示すように、コンプライアントフレーム303は、
(1)フレーム空間15fに開口する連通穴31c(軸方向);
(2)連通穴31c(軸方向)に連通し、スラスト軸受3a側に延びる連通穴31b(軸方向);
(3)連通穴31b(軸方向)に連通し、吸入圧力空間1gに連通する連通部31a、を備える。
図27に示すように、連通穴31c(軸方向)に、逆止弁部19aとバネ19bとを有する逆止弁19が収納される。吸入圧力空間1gの冷媒の圧力が、フレーム空間15fの冷媒の圧力より高く、且つバネ19bの力よりもその差圧による力が上回ると、逆止弁19は開く。その反対の吸入圧力空間1gの冷媒の圧力が、フレーム空間15fの冷媒の圧力より低い場合は、閉じている。
図1のスクロール圧縮機100のコンプライアントフレーム3(図11)に比べて、コンプライアントフレーム303の連通穴31c、連通穴31b、連通部31aは、軸方向の一方向の加工で形成することができる。そのため、加工が容易にでき、生産性及びコストの点で、コンプライアントフレーム303は、コンプライアントフレーム3(図11)よりも優れている。
以上のように、本実施の形態のスクロール圧縮機100は、以下に示す効果を奏する。
(1)一般的なスクロール圧縮機は、逆転運転時に吐出空間圧力Pdが吸入空間圧力Psより大きくならないため、主軸4の上端面と下端面に差圧が生じないので軸受部に差圧給油出来ず、主軸4が焼き付いてしまう。しかし、本実施の形態のスクロール圧縮機100は、逆転運転時に吐出差圧給油方式で各軸受部に給油が出来るように、主軸4上端部を含むボス部空間2hへ吐出空間圧力Pdより低い圧力Pm’(膨張行程の渦巻内の圧力)を引き込む為に揺動スクロール2の台板部2aにボス部空間2hへの連通穴2kを設ける。さらに、コンプライアントフレーム3に、吸入圧力空間1gの高圧の冷媒がフレーム空間15fに流入してフレーム空間15fの圧力を上昇させる機構(連通穴及び逆止弁19)を設け、コンプライアントフレーム3を揺動スクロール2側に浮上させる。コンプライアントフレーム3が浮上して、コンプライアントフレーム3のスラスト軸受3aと揺動スクロール2のスラスト面2dが当接して、コンプライアントフレーム3のスラスト軸受3aと揺動スクロール2のスラスト面2dとの隙間がなくなり、冷凍サイクルのバランス圧力(ボス部空間2hの圧力より高い)が流入しないため、ボス部空間2hは低下した圧力のままの状態を維持することができる。そうすることで逆転運転中に主軸4の上端面と下端面と差圧が生じ、差圧給油することが可能となり各軸受部に給油することができ、軸焼付きを防ぎ信頼性の向上を図ることが出来る。
(2)本実施の形態のスクロール圧縮機100において、逆転運転時に軸受部に差圧給油が出来るように揺動軸受2cを含むボス部空間2hへ吐出空間圧力Pdより低い圧力Pm’(膨張行程の渦巻内の圧力)を引き込む為のボス部空間2hへの連通穴2kの位置は、逆転運転時に密閉容器10底部の油だめ10gから冷凍機油10eが連続的に吸い上げられるので冷凍機油10eの枯渇防止のため360°ボス部空間2hと連通穴2kが連通しないような位置、かつ正転運転時にスクロール内の圧縮途中の冷媒がボス部空間2hへ流入しない位置に設ける。そうすることで逆転運転中の油枯渇を防ぎ信頼性の向上を図ることが出来る。また、正転運転時の圧縮ガスのボス部空間2hへの流出を防ぐことができ、正転運転時の性能低下防止をすることが出来る。
(3)本実施の形態のスクロール圧縮機100は、固定スクロール1の台板部1aの板状渦巻歯1bと反対側の面で、吸入圧力空間1gに対応する位置に、リリーフ弁50aと、弁押え50bとを備えるリリーフ弁組立50が設けられている。吸入逆止弁組立17を備えるスクロール圧縮機100が、圧縮室1dに液冷媒が満たされた状態のときに、何らかの理由で正回転の反対の逆転運転始動すると、液圧縮によるパンピング圧が発生する。パンピング圧により、固定スクロール1の板状渦巻歯1bがずれることでメカがロックするか、もしくは圧縮性能が低下する。リリーフ弁組立50は、圧縮室1dで液圧縮が発生する場合に、液冷媒を圧縮室1dの外部(密閉容器10の内部空間)に逃がして液圧縮によるパンピング圧の発生を抑制する。
実施の形態2.
一般的なスクロール圧縮機は、逆転運転時に吐出空間圧力Pdが吸入空間圧力Psより大きくならないため、主軸4の上端面と下端面に差圧が生じないので軸受部に差圧給油出来ず、主軸4が焼き付いてしまう。
実施の形態2のスクロール圧縮機400は、逆転運転時に吐出差圧給油方式で各軸受部に給油が出来るように主軸4上端部空間へ渦巻内の吐出空間圧力Pdより低い圧力Pm’(膨張行程の渦巻内の圧力)を引き込む為に、揺動スクロール2にボス部空間2hへの連通穴2nを設け、正転運転時にその連通穴2nから渦巻内へ冷媒が流れ込まないように連通逆止弁2pを設ける。そうすることで逆転運転中に主軸4の上端面と下端面と差圧が生じ、差圧給油することが可能となり各軸受部に給油することができ、軸焼付きを防ぎ信頼性の向上を図ることが出来る。また、正転運転時の圧縮ガスの背圧空間への流出を防ぐことができ、正転運転時の性能低下防止をすることが出来る。
また、逆転運転時にコンプライアントフレームを浮上可能とする為に、高圧となる吸入圧力空間からフレーム背圧空間へ高い圧力を引き込む為に、コンプライアントフレームに連通穴を設け、正転運転時はコンプライアント背圧空間から吸入空間へ圧力が逃げないように連通穴に逆止弁を設ける。そうすることで、逆転運転中にコンプライアントフレームが浮上し揺動スクロールのボス部空間の圧力を密閉容器の圧力より低下させることが出来る。
スクロール圧縮機400において、逆転運転時に軸受部に差圧給油が出来るように揺動軸受2cを含む揺動スクロール2のボス部空間2hへ吐出空間圧力Pdより低い圧力Pm’(膨張行程の渦巻内の圧力)を引き込む為に揺動スクロールに主軸4上端部への連通穴2nの位置は、逆転運転時に密閉容器10底部の油だめ10gから冷凍機油10eが連続的に吸い上げられるので、冷凍機油10eの枯渇防止のため360°ボス部空間2hと連通穴2nが連通しないような位置に設ける。そうすることで逆転運転中の油枯渇を防ぎ信頼性の向上を図ることが出来る。
図28乃至図36は実施の形態2を示す図で、図28はスクロール圧縮機400の部分縦断面図、図29は連通穴2nを示す揺動スクロール2の縦断面図、図30は連通穴2n及び連通逆止弁2pを示す揺動スクロール2の縦断面図、図31は連通逆止弁2pの拡大図、図32は吸入完了状態を回転角度0°として、固定スクロール1に対する揺動スクロール2の相対位置および連通穴2nとの相関を、主軸4の回転角度0°と回転角度90°とについて示した図、図33は吸入完了状態を回転角度0°として、固定スクロール1に対する揺動スクロール2の相対位置および連通穴2nとの相関を、主軸4の回転角度180°と回転角度270°とについて示した図、図34は吸入完了状態を回転角度0°として、固定スクロール1に対する揺動スクロール2の相対位置および連通穴2nとの相関を、主軸4の回転角度360°と回転角度450°とについて示した図、図35は第一の室20aの圧力と主軸4の回転角度との関係を示す図、図36は変形例のスクロール圧縮機500の部分縦断面図である。
図28に示す実施の形態2のスクロール圧縮機400は、実施の形態1のスクロール圧縮機100と以下に示す点が異なる。その他の構成は、同一であるので、説明は省く。図28のB部に以下の構成要素を備える(図29、図30参照)。
(1)固定スクロール1の板状渦巻歯1bと揺動スクロール2の板状渦巻歯2bとの噛み合わせの渦巻(圧縮室1d)内と、ボス部空間2hとを連通する連通穴2nと、連通穴2nに連通して渦巻(圧縮室1d)に開口する逆止弁収納部2qとを設ける。
(2)正転運転時にその連通穴2nを介して渦巻内からボス部空間2hへ冷媒が流れ込まないように連通逆止弁2pを設ける。
スクロール圧縮機300は、台板部2aに設けられる圧縮室1d(第一の室20a、最外周室)とボス部空間2hとを連通させる連通穴2kは設けない。
図29に示すように、揺動スクロール2の台板部2aに、ボス部空間2hに連通する連通穴2nと、連通穴2nと連通して板状渦巻歯2bの間の空間に開口し、連通逆止弁2pを収納する逆止弁収納部2qとを備える。
図30に示すように、逆止弁収納部2qに連通逆止弁2pを収納する。連通逆止弁2pは、ボス部空間2hに連通する連通穴2nの逆止弁収納部2q側の開口部を閉塞している。
図31に示すように、連通逆止弁2pは、逆止弁部2p−1と、逆止弁部2p−1を連通穴2n側に付勢するバネ2p−2とを備える。
連通逆止弁2pは、ボス部空間2hの圧力と渦巻(圧縮室1d)の圧力の差が、バネ2p−2の力より大きくなると開き、ボス部空間2hと渦巻(圧縮室1d)とが連通する。
スクロール圧縮機300の正転運転時は、ボス部空間2hの圧力が渦巻(圧縮室1d)の圧力よりも大きいので、連通逆止弁2pは閉じた状態を維持する。
図32〜図34に示すように、逆止弁収納部2qは、主軸4の回転角度0°を超えた所定の角度で第一の室20aに連通し、主軸4の回転角度270°超えた所定の角度まで連通する。
スクロール圧縮機400の逆転運転時は、上記の主軸4の回転角度0°を超えた所定の角度で第一の室20aに連通し、主軸4の回転角度270°超えた所定の角度において、膨張行程により第一の室20aの圧力がボス部空間2hの圧力よりも低くなるので、その差圧による力がバネ2p−2の力を上回ると逆止弁部2p−1が開き、ボス部空間2hと第一の室20aとが連通する。それにより、ボス部空間2hの圧力が下がる。これを繰り返すことにより、油だめ10gの圧力(密閉容器10内の圧力))よりボス部空間2hの圧力が低くなり、ボス部空間2hへの差圧給油が可能となる。
実施の形態1の連通穴2kと、実施の形態2の固定スクロール1の板状渦巻歯1bと揺動スクロール2の板状渦巻歯2bとの噛み合わせの渦巻(圧縮室1d)内と、ボス部空間2hとを連通する連通穴2nと、連通穴2nに連通して渦巻(圧縮室1d)に開口する逆止弁収納部2qとを設け、正転運転時にその連通穴2nから渦巻内からボス部空間2hへ冷媒が流れ込まないように連通逆止弁2pを設ける構成とを比較すると、以下の点が相違する。
(1)実施の形態1の連通穴2kは、正転運転時に圧縮室1dの圧力が所定の値以上になると圧縮室1dからボス部空間2hに冷媒が流入するので、圧縮室1dとボス部空間2hとが連通する角度(主軸4の回転角度)に制限がある。それに対して、実施の形態2の連通逆止弁2pを用いる方法は、正転運転時に圧縮室1dの圧力が高くなっても、連通逆止弁2pで塞ぐためボス部空間2hへ冷媒が流入しない。従って、連通角度の自由度が実施の形態1より増す。
(2)実施の形態1の連通穴2kは、コンプライアントフレーム3のスラスト軸受3aで連通穴2kを塞ぐ必要があるが、実施の形態2の連通逆止弁2pではその必要がない。
図36の変形例のスクロール圧縮機500は、図28のスクロール圧縮機400と比べると、圧縮機構部440が異なり、特にコンプライアントフレーム303の構成が異なる。
コンプライアントフレーム303は、実施の形態1の図27に示すものと同じである。従って、説明は省く。