JP4872172B2 - フッ素樹脂被覆物製造方法及びフッ素樹脂被覆物 - Google Patents

フッ素樹脂被覆物製造方法及びフッ素樹脂被覆物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ素樹脂及びフッ素ゴムを用いて塗装により得られるフッ素樹脂被覆物の製造方法に関し、詳しくは、表面平滑化処理を別途行わずとも表面平滑性を有し、フッ素ゴムの加硫を単独の工程として行う必要がないフッ素樹脂被覆物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フッ素樹脂は、耐熱性、耐候性、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性、非粘着性、耐汚染性等の優れた特性を有することから、例えば、金属、ゴム等の種々の基材の被覆材として用いられている。
【0003】
被覆材としては、例えば、被塗装物としての基材に、フッ素樹脂を含有する塗料組成物を塗装して形成される塗膜を用いることができる。フッ素樹脂を用いる塗装は、フッ素樹脂の種類等によるが、通常、被塗装物に塗布し、必要に応じて乾燥し、更に焼成することにより、行われている。
【0004】
被塗装物としてゴム等の柔軟性を有する基材を用いる場合や、得られる塗膜に柔軟性が要求される場合等は、フッ素樹脂にフッ素ゴムを配合して塗装すると、焼成時にフッ素樹脂を塗膜表面にブリードアップさせることができるので、表面にフッ素樹脂の特性を備えた柔軟性を有する塗膜を得ることができる。
【0005】
しかしながら、このようにして得られる塗膜表面のフッ素樹脂層は、通常比較的薄いので、特に、例えばオフィスオートメーション〔OA〕機器用ロール、OA機器用ベルト等の他材との接触や摩擦が不可欠な用途に用いられる場合、塗膜表面の磨耗により耐久性が不充分となる問題があった。
【0006】
塗膜表面のフッ素樹脂層の耐久性向上を目的として、フッ素樹脂とフッ素ゴムとの配合物を塗装しブリードアップさせたフッ素樹脂層の上に、フッ素樹脂を含有する塗料組成物を塗装して更にフッ素樹脂層を形成させることにより、フッ素樹脂の層を厚くすることが行われている。
【0007】
フッ素樹脂を含有する塗料組成物を上塗りする方法として、特開2000−263715号公報には、塗布したフッ素樹脂とフッ素ゴムとの配合物を特定の加硫到達度に達するまで加硫させた後、フッ素樹脂を含有する塗料組成物を塗装する方法が開示されている。
【0008】
フッ素樹脂の層の耐久性を向上させるためには、ある程度の厚さを有するフッ素樹脂層を形成させるとともに、塗膜表面への汚染物質の付着を防止することが効果的である。汚染物質としては、例えば紙粉、トナー等がある。汚染物質は、塗膜表面の凹部に入り込むと、これを核として更に付着が容易になり、固着する。
【0009】
従って、汚染物質の付着を防止するためには、塗膜表面が平滑であることが望ましい。塗膜表面を平滑化すると、例えばOA機器用ロール等として用いる場合、被記録媒体へのトナーの定着性を向上させることができ、また、耐汚染性が向上されるので、画像の汚れやジャム等の問題をも防止することができる。
【0010】
塗膜表面を平滑化する方法として、特開2000−305396号公報には、フッ素樹脂とフッ素ゴムとの混合物を塗装し、次いでフッ素樹脂を含有する分散液を塗装して得られる被覆物を内壁が平滑なチューブ内に入れ、加熱して被覆物の表層をチューブ内壁に押し付けることにより表面平滑化処理を行う方法が開示されている。
【0011】
しかしながら、この方法では、表面平滑化処理が別途必要であるのみならず、フッ素樹脂とフッ素ゴムとの混合物を塗布し乾燥し、更に加熱によるゴム硬化工程を経た後、フッ素樹脂を含有する分散液を塗布し乾燥し、焼成するものであるので、ゴム硬化を単独の工程として行う必要があるほか、加熱する工程の数が増し、費用、労力、エネルギー等の増大をもたらすという問題がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記に鑑み、フッ素ゴムの加硫を行う工程及び表面平滑化処理工程を別途経る必要なくして、表面平滑性が良好な塗膜を有するフッ素樹脂被覆物を製造するための方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、溶融性フッ素樹脂(a1)及びフッ素ゴム(a2)を含有する塗料組成物(A)を被塗装物に塗布し、乾燥した後、溶融性フッ素樹脂(b)を含有する塗料組成物(B)を塗布し、焼成することよりなるフッ素樹脂被覆物を製造するためのフッ素樹脂被覆物製造方法であって、上記塗料組成物(B)は、上記フッ素ゴム(a2)を加硫する前に塗布するものであり、上記焼成は、下限が上記溶融性フッ素樹脂(a1)の融点及び上記溶融性フッ素樹脂(b)の融点のうち高い方の温度よりも10℃高い温度であり、上限が上記溶融性フッ素樹脂(a1)の分解温度、上記溶融性フッ素樹脂(b)の分解温度及び上記被塗装物の耐熱温度のうち最も低い温度未満の温度である温度範囲において行うものであり、上記フッ素樹脂被覆物は、表面粗さ〔Rz〕が2μm以下であることを特徴とするフッ素樹脂被覆物製造方法である。
【0014】
上記塗料組成物(B)は、溶融性フッ素樹脂(b)の水性分散液であることが好ましい。
上記溶融性フッ素樹脂(b)は、平均粒子径が0.2〜1μmであることが好ましい。
上記塗料組成物(B)は、更に、非イオン性界面活性剤を含有するものであり、上記非イオン性界面活性剤は、親水親油バランス〔HLB〕が15以上であり、上記非イオン性界面活性剤は、固形分基準で溶融性フッ素樹脂(b)100質量部に対し8〜20質量部であることが好ましい。
【0015】
上記フッ素樹脂被覆物は、表面の光沢(60°−60°)が50%以上であることが好ましい。
上記塗料組成物(B)から形成される塗膜の膜厚は、1〜20μmであることが好ましい。
【0016】
上記フッ素ゴム(a2)と上記溶融性フッ素樹脂(a1)との配合比は、固形分基準の質量比として上記フッ素ゴム(a2):上記溶融性フッ素樹脂(a1)が30:70〜70:30であることが好ましい。
上記溶融性フッ素樹脂(a1)及び上記溶融性フッ素樹脂(b)は、融点が320℃以下であることが好ましい。
上記溶融性フッ素樹脂(b)は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体又はテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体であることが好ましい。
上記溶融性フッ素樹脂(b)は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体であることがより好ましい。
【0017】
上記被塗装物は、シリコーンゴムを含有するものであって、プライマーが塗布されたものであり、上記焼成を行う温度範囲の上限は、上記シリコーンゴムの耐熱温度及び上記プライマーの耐熱温度のうち低い方の温度未満の温度であることが好ましい。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明のフッ素樹脂被覆物製造方法は、溶融性フッ素樹脂(a1)及びフッ素ゴム(a2)を含有する塗料組成物(A)を被塗装物に塗布し、乾燥した後、溶融性フッ素樹脂(b)を含有する塗料組成物(B)を塗布し、焼成することよりなるフッ素樹脂被覆物を製造するためのフッ素樹脂被覆物製造方法であって、上記塗料組成物(B)は、上記フッ素ゴム(a2)を加硫する前に塗布するものである。
【0019】
本明細書において、上記塗料組成物(A)から形成される塗膜を塗料組成物(A)層ということがある。上記塗料組成物(A)層は、上記塗料組成物(A)を塗布し、乾燥した後の塗膜であって、上記塗料組成物(B)を塗布する前のもの、又は、上記フッ素樹脂被覆物製造方法において上記塗料組成物(B)を焼成する工程を経た後に上記被塗装物上に形成されている塗膜のうち、上記塗料組成物(A)に由来する部分を含むものである。
【0020】
本明細書において、上記塗料組成物(B)から形成される塗膜を塗料組成物(B)層ということがある。上記塗料組成物(B)層は、上記フッ素樹脂被覆物製造方法において上記塗料組成物(B)を焼成する工程を経た後に上記被塗装物上に形成されている塗膜のうち、上記塗料組成物(B)に由来する部分である。
【0021】
上記塗料組成物(A)は、溶融性フッ素樹脂(a1)及びフッ素ゴム(a2)を含有するものである。
上記溶融性フッ素樹脂(a1)に属する物質は、上記溶融性フッ素樹脂(b)に属する物質と同じものであってもよいし、異なるものであってもよいが、上記塗料組成物(A)層と上記塗料組成物(B)層との接着性や融着性を向上させる点から、同じものであることが好ましい。本明細書において、上記溶融性フッ素樹脂(a1)及び上記溶融性フッ素樹脂(b)に共通する事項について記載する場合、両者を区別することなく、上記溶融性フッ素樹脂ということがある。
【0022】
上記溶融性フッ素樹脂としては、本発明のフッ素樹脂被覆物製造方法において加熱により溶融させ、塗膜を形成させることができる点から、溶融加工性フッ素樹脂が好ましく、融点が320℃以下の溶融加工性フッ素樹脂がより好ましい。融点が320℃を超えると、上記塗料組成物(A)層と上記塗料組成物(B)層との接着性が低下する傾向にあり、得られる塗膜表面の平滑性が不充分となることがある。融点は、より好ましくは、200〜320℃であり、更に好ましくは、230〜320℃である。
【0023】
上記溶融性フッ素樹脂としては、後述の焼成時に溶融して充分な造膜性と塗膜表面の平滑性が得られるような溶融粘度を有するものが好ましく、例えば後述のPFAの場合、ASTM D3307の方法で測定したメルトフローレート〔MFR〕が1〜80g/10分であることがより好ましい。80g/10分を超えると、焼成時の流動性が高くなりすぎ、曲面等の被塗装物の形状によっては均一な膜厚にすることが困難となる場合がある。1g/10分未満であると、焼成時の流動性が低くなりすぎ、クラック発生等の要因となる。更に好ましくは、10〜40g/10分である。
【0024】
上記溶融性フッ素樹脂としては特に限定されず、例えば、テトラフルオロエチレン〔TFE〕/ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕共重合体〔FEP〕、TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PFVE〕共重合体〔PFA〕、TFE/HFP/PFVE共重合体〔EPA〕、TFE/クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕共重合体、TFE/エチレン共重合体〔ETFE〕等のTFE系含フッ素共重合体;分子量30万以下のポリテトラフルオロエチレン〔LMW−PTFE〕等の含フッ素単独重合体等が挙げられる。
【0025】
本明細書において、上記含フッ素共重合体及び上記含フッ素単独重合体とは、主鎖を構成する炭素原子に直接結合しているフッ素原子を有する共重合体又は単独重合体である。上記TFE系含フッ素共重合体とは、単量体成分としてTFEを含有する含フッ素共重合体である。
【0026】
上記PFVEとしては特に限定されず、例えば、下式(1)〜(5)で示す化合物が包含される。下記式においてn、m及びkは、何れも整数である。
式(1)CF=CFO(CF)n−CF〔n=1〜9〕式(2)CF=CFO(CFCFCFO)−CFCFCF〔1≦m≦5〕
式(3)CF=CFO[CFCF(CF)]−CFCFCF〔1≦m≦5〕
式(4)CF=CFO[CFCF(CF)]−CFCFCHI〔1≦m≦5〕
式(5)CF=CFOCFOCH(CFX〔k=1〜12、X=H、F又はCl〕
【0027】
上記溶融性フッ素樹脂としては、非粘着性、表面平滑性の点から、FEP、PFA及びEPAが好ましく、FEP及びPFAがより好ましく、PFAが更に好ましい。上記溶融性フッ素樹脂としては、1種又は2種以上を用いることができる。
【0028】
上記溶融性フッ素樹脂の調製方法としては特に限定されず、例えば、乳化重合、懸濁重合等の従来公知の方法等を用いることができる。
【0029】
上記塗料組成物(A)は、上記溶融性フッ素樹脂(a1)とともに、フッ素ゴム(a2)を含有するものである。
上記フッ素ゴム(a2)としては特に限定されないが、主鎖に−CH−で示される繰り返し単位を有する含フッ素共重合体であることが好ましい。
【0030】
このようなフッ素ゴム(a2)としては、例えば、主鎖が以下の繰り返し単位を含む分子構造を有する共重合体等が挙げられる。
−CF−CH−、−CH−CH−及びCH−CH(CH)−から選択される少なくとも1種の繰り返し単位、並びに、
−CF−CF(CF)−、−CF−CF−、−CF−CFCl−、−CF−CF(CFH)−及びCF−CF(ORf)−
〔式中、Rfは炭素数1〜9のフルオロアルキル基である。〕から選択される少なくとも1種の繰り返し単位。
【0031】
上記フッ素ゴム(a2)としては、例えば、ビニリデンジフルオライド〔VdF〕とHFPの共重合体、VdFとTFEとHFPの共重合体等のVdF系含フッ素共重合体;TFEとプロピレンの共重合体、エチレンとHFPの共重合体等のPFVEとアルケンの共重合体等が挙げられる。なかでも、架橋性の点から、VdF系含フッ素共重合体が好ましい。ここで、VdF系含フッ素共重合体とは、単量体成分としてVdFを含有する含フッ素共重合体である。
【0032】
上記フッ素ゴム(a2)の分子量は、好ましくは5000〜200000である。5000未満であると、加硫度に劣る場合があり、200000を超えると、上記塗料組成物(A)の流動性が悪化し、塗装作業性に劣る場合がある。
【0033】
上記フッ素ゴム(a2)としては、弾性を呈することができる含フッ素共重合体であることが好ましく、例えば、市販品を用いることができ、例えば、「ダイエル」(登録商標、ダイキン工業社製)、「バイトン・フローム」(登録商標、E.I.デュポン社製)、「アフラス」(登録商標、旭硝子社製)等が挙げられる。上記フッ素ゴム(a2)としては、また、例えば乳化重合等の従来公知の方法等により合成したものであってもよい。
上記フッ素ゴム(a2)としては、1種又は2種以上を用いることができる。
【0034】
上記フッ素ゴム(a2)は、本発明のフッ素樹脂被覆物製造方法において、後述する焼成により加硫され、硬化される。上記加硫に用いられる加硫剤としては特に限定されず、例えば、通常使用されるフッ素ゴムの加硫剤を用いることができる。上記加硫剤としては、好ましくは下記のものが用いられる。
【0035】
(1)ポリアミン系加硫剤
トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、エタノールアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサ−2−スピロ[5.5]−ウンデカン等の脂肪族ポリアミン及びその塩;ジアミノジフェニルメタン、キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族アミン及びその塩;変性ポリアミン;ポリアミドアミン;さらに下記一般式:
【0036】
【化1】
Figure 0004872172
【0037】
[式中、Rはメチル基又はエチル基を表し、Xは単結合、−CNH−、−CONH−又はCNH−CNH−NH−を表し、yは2又は3である。]
で表されるアミノシラン化合物又はその部分若しくは完全加水分解物等が挙げられる。
【0038】
(2)ポリオール系加硫剤
水酸基、特にフェノール性水酸基を分子内に少なくとも2個有する化合物及び高分子化合物であって、加硫性能を有するものが挙げられる。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAF、ヒドロキノン等のフェノール誘導体及びその塩;フェノール樹脂等エノール型水酸基を分子内に2個以上有するポリヒドロキシ化合物及びその塩;下記一般式
Rf′(CHOH)
〔ただし、Rf′は、パーフルオロアルキルポリエーテル基である。〕で表される化合物等が挙げられる。
【0039】
(3)ポリチオール系加硫剤
トリアジンチオール、1,6−ヘキサンジチオール、4,4’−ジメチルメルカプトジフェニル、1,5−ナフタレンジチオール等が挙げられる。
【0040】
上記加硫剤としては、上記以外にも、フッ素ゴム用加硫剤として市販されている加硫剤はいずれも使用することができ、1種又は2種以上を用いることができる。
上記加硫剤としては、後述する媒体が有機溶剤の場合にはその有機溶剤に可溶なものを用いることが好ましく、上記媒体が水の場合には水に可溶なものを用いることが好ましい。
【0041】
上記加硫剤は、効率よく充分に上記加硫を行わせる点から、固形分基準で上記フッ素ゴム(a2)100質量部に対し、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜15質量部であることがより好ましい。
【0042】
上記フッ素ゴム(a2)には、上記加硫を促進させるために、加硫助剤を用いることもできる。上記加硫助剤としては特に限定されないが、例えば、トリフェニルホスフィンベンジルクロライド塩等の4級ホスフォニウム塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルn−プロピルアミン、ジメチルn−ブチルアミン、ジメチルイソブチルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、ジメチル−sec−ブチルアミン、ジメチル−tert−ブチルアミン、トリアリルアミン、ジアリルメチルアミン、アリルジメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン、N−アリルピペリジン、N−エチルピペリジン、N−ブチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N−シクロヘキシルピロリジン、N−n−ブチルピロリジン、N−エチルピロリジン、N−ベンジルピロリジン、2,4,6−トリメチルピリジン等の3級アミン;第4級アンモニウム塩等の化合物が好ましい。
【0043】
上記第4級アンモニウム塩としては、例えば、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、ジメチルデシルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、ミリスチルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルテトラデシルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチルテトラデシルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、1,4−フェニレンジメチレンビストリメチルアンモニウムジクロライド、1,4−フェニレンジメチレンビストリエチルアンモニウムジクロライド、エチレンビストリエチルアンモニウムジブロマイド等のアルキル及びアラルキル第4級アンモニウム塩;
【0044】
8−メチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−メチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムアイオダイド、8−メチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムハイドロオキサイド、8−メチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム−メチルサルフェート、8−メチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムブロマイド、8−プロピル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムブロマイド、8−ドデシル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ドデシル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムハイドロオキサイド、8−エイコシル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4、0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−テトラコシル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ベンジル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ベンジル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムハイドロオキサイド、8−フェネチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−(3−フェニルプロピル)−1,8−ジアザ−ピシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド等の第4級1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム塩等が挙げられる。
【0045】
上記加硫助剤としては、上記媒体が有機溶剤の場合にはその有機溶剤に可溶なものを用いることが好ましく、上記媒体が水の場合には水に可溶なものを用いることが好ましい。
【0046】
上記加硫助剤は、効率よく充分に上記加硫を行わせる点から、固形分基準で上記フッ素ゴム(a2)100質量部に対し、0〜10質量部が好ましく、0.1〜8質量部がより好ましい。
【0047】
上記塗料組成物(A)は、上記溶融性フッ素樹脂(a1)及び上記フッ素ゴム(a2)に加え、一般的なフッ素ゴム組成物に通常添加される各種添加剤、例えば充填材、着色剤、受酸剤等を必要に応じて配合したものであってよい。
【0048】
上記充填材としては特に限定されず、例えば、カーボンブラック、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、珪酸カルシウム等が挙げられる。
上記着色剤としては特に限定されず、例えば、無機顔料、複合酸化物顔料等が挙げられる。
上記受酸剤としては特に限定されず、例えば、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化亜鉛、炭酸鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト等の複塩が挙げられる。上記受酸剤は、通常、その活性度に応じ、固形分基準で上記フッ素ゴム(a2)100質量部に対し、1〜40質量部を配合することができる。
【0049】
上記塗料組成物(A)は、更に、媒体を含有するものであってよい。本明細書において、上記媒体とは、塗料組成物の成分を溶解又は分散させる物質である。
上記塗料組成物(A)に用いられる媒体としては特に限定されず、有機溶剤又は水の何れを用いてもよい。
【0050】
上記有機溶剤としては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸ブチル、酢酸イソペンチル等のエステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;トルエン、キシレン等の炭化水素類;N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類等が挙げられる。上記有機溶剤は、上記塗料組成物(A)全体の質量を基準にして40〜90質量%用いることが好ましい。
【0051】
上記媒体として水を用いる場合には、上記フッ素ゴム(a2)及び上記溶融性フッ素樹脂(a1)を上記媒体中に分散させるため、分散剤を用いることが好ましい。
上記分散剤としては、ラウリル硫酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、ω−ハイドロパーフルオロアルキルカルボン酸塩等のアニオン系界面活性剤;ポリエチレングリコール誘導体、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール誘導体等の非イオン性界面活性剤;アルキルポリエチレングリコールエーテル、アルキルフェニルポリエチレングリコールエーテル、アルキルポリエチレングリコールエステル、エチレングリコール/プロピレングリコール共重合体、ポリエチレングリコールアルキルエステル、ポリカルボン酸塩等の樹脂系分散剤等が挙げられる。上記分散剤は、上記塗料組成物(A)全体の質量を基準にして0.1〜10質量%用いることが好ましい。
【0052】
上記媒体として水を用いる場合、乾燥遅延剤を用いてもよい。上記乾燥遅延剤としては特に限定されず、例えば、水溶性かつ高沸点の有機溶剤等が挙げられ、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ブチルカルビトール、セロソルブ、酢酸セロソルブ等が挙げられる。乾燥遅延剤を加えることが好ましい。
【0053】
上記媒体としての水は、上記塗料組成物(A)全体の質量を基準にして30〜90質量%用いることが好ましい。
上記媒体としては、得られる塗膜の表面平滑化、環境保護等の点から、水を用いることが好ましく、上記水は上記媒体中70〜100質量%であることがより好ましい。
【0054】
上記塗料組成物(A)としては、保存安定性の向上を目的として、安定剤を添加したものであってよい。上記安定剤としては特に限定されず、例えば、炭素数1〜12の有機酸等が挙げられ、炭素数1〜9の有機酸が好ましい。炭素数が9を越える有機酸は、塗膜中に残存しやすい。より好ましくは、炭素数1〜4の有機酸である。上記安定剤として更に好ましい有機酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸等のジカルボン酸等が挙げられる。
【0055】
上記塗料組成物(A)は、更に、接着性付与剤を添加したものであってもよい。
上記塗料組成物(A)は、上記接着性付与剤を添加することにより、被塗装物との親和性や接着性を高めることができ、上記被塗装物が後述のプライマーを塗布したものである場合、プライマーとの親和性を付与することもできる。
【0056】
上記接着性付与剤としては特に限定されず、例えば、上記被塗装物が金属又はガラスである場合、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等のカップリング剤等が挙げられる。上記接着性付与剤としては、また、上記加硫剤の中で接着性を有するものを用いることができ、例えば、アミノシラン化合物、ポリアミドアミン、フェノール樹脂等の添加量に応じて接着性付与剤として機能し得るもの等が挙げられる。
【0057】
上記塗料組成物(A)は、上述のフッ素ゴム(a2)、溶融性フッ素樹脂(a1)、加硫剤及び所望により用いるその他の成分を、例えばオープンロール又はニーダー等を用いて混練することにより、容易に調製することができる。上記塗料組成物(A)の調製方法としては、例えば、上述のフッ素ゴム(a2)、加硫剤及び必要に応じ加硫助剤等のその他の成分を配合してフッ素ゴム組成物を調製し、別途調製した上記溶融性フッ素樹脂(a1)を更に加える方法等を用いることができる。
【0058】
上記フッ素ゴム組成物の調製方法としては特に限定されず、例えば、次のいずれかの方法で行うことができる。
(1)上記媒体が有機溶剤の場合
乳化重合で得られた上記フッ素ゴム(a2)のベースポリマーを凝析・乾燥させることによりフッ素生ゴムが得られる。これに、任意成分である上述の充填材、受酸剤及び着色剤をオープンロール又はニーダーで混練し、コンパウンドとする。このコンパウンドを上記有機溶剤に溶解又は分散し、必要に応じて上記安定剤を加えてP液とする。一方、上述の加硫剤並びに任意成分である加硫助剤及び接着性付与剤を有機溶剤に溶解してQ液とする。1液型の場合には、はじめからP液とQ液を混合して、調製する。
【0059】
(2)上記媒体が水の場合
上記分散剤の存在下で水に分散させたフッ素ゴム(a2)の濃縮液を調製する。フッ素ゴム(a2)のラテックスをそのまま使用してもよい。任意成分である上述の充填材、受酸剤、着色剤も分散剤を用いて予めミル分散させる。これらの液を混合し、必要ならば上記安定剤を加え、更に水で適当な濃度及び粘度に調製してR液とする。一方、上述の加硫剤及び加硫助剤を別途用い、これらが水溶性の場合、これらの水溶液を調製し、これらが非水溶性の場合、分散剤を用いたこれらの水系分散液を調製し、得られる調製液に必要に応じて上記接着性付与剤を加え、S液とする。1液型の場合には、はじめからR液とS液を混合して、調製する。
【0060】
上記フッ素ゴム(a2)と上記溶融性フッ素樹脂(a1)とを配合する方法としては特に限定されず、例えば、以下の方法を用いることができる。
(1)上記溶融性フッ素樹脂(a1)を固体のまま配合する場合
上記溶融性フッ素樹脂(a1)を微粉末状に粉砕し、上述のフッ素ゴム(a2)のコンパウンドに混練する。
【0061】
(2)上記媒体が有機溶剤の場合
上記溶融性フッ素樹脂(a1)の微粉末を有機溶剤に分散させるか、または、上記溶融性フッ素樹脂(a1)のディスパージョンを有機溶剤に転相してオルガノゾルを作成し、これを有機溶剤媒体である上記塗料組成物(A)の他の成分と混合する。
【0062】
(3)上記媒体が水の場合
上記溶融性フッ素樹脂(a1)の微紛末を上述の分散剤を用いて分散させる。または、上記溶融性フッ素樹脂(a1)のディスパージョンをそのまま分散させるか若しくは分散剤を用いて分散させる。これらの分散系を水媒体である上記塗料組成物(A)の他の成分と混合する。
【0063】
上記フッ素ゴム(a2)と上記溶融性フッ素樹脂(a1)との配合比は、固形分基準の質量比として上記フッ素ゴム(a2):上記溶融性フッ素樹脂(a1)が30:70〜70:30であることが好ましい。上記フッ素ゴム(a2)が30:70未満であると、フッ素ゴム本来の弾性が失われたり、得られる塗膜にひび割れ等の欠陥が生じたり、上記フッ素ゴム(a2)と被塗装物との接着性に劣ったりすることがある。上記フッ素ゴム(a2)が70:30を越えると、得られる上記溶融性フッ素樹脂(A)層は上記溶融性フッ素樹脂(B)層との融着が悪くなり、層間剥離を起こすことがある。より好ましくは、40:60〜60:40である。
【0064】
上記塗料組成物(B)は、溶融性フッ素樹脂(b)を含有するものである。
上記溶融性フッ素樹脂(b)は、上記溶融性フッ素樹脂として上述した特徴を有するものである。
【0065】
上記溶融性フッ素樹脂(b)は、更に、造膜性及び得られる塗膜の表面平滑性の点から、上記溶融性フッ素樹脂(b)を構成する粒子の平均粒子径が0.2μm以上であるものが好ましい。0.2μm未満であると、塗膜表面の平滑性が不充分となるほか、造膜性が低下して塗膜にクラックを生じる場合がある。
【0066】
上記溶融性フッ素樹脂(b)は、後述の水性媒体を用いる場合、上記平均粒子径が0.2〜1μmであるものが好ましい。1μmを超えると、かえって塗膜表面の平滑性が悪化し、後述する表面粗さ〔Rz〕が2μmを超える場合がある。より好ましくは、0.2〜0.4μmである。
本明細書において、上記平均粒子径は、電子顕微鏡、遠心沈降分離法又は光散乱法を用いて測定した個々の粒子の粒子径の平均値である。
上記平均粒子径は、通常、適宜粒度分布を用い、目的とする対象粒径に適した測定法により測定した値の平均値として求められる。上記対象粒径に適した測定法としては、通常、平均粒子径1μmを超える場合、光散乱(レーザー)法、平均粒子径0.2〜1μmの場合、遠心分離沈降法又は光散乱法、及び、平均粒子径0.2μm未満の場合、電子顕微鏡又は光散乱法がそれぞれ用いられる。
【0067】
上記塗料組成物(B)は、上記溶融性フッ素樹脂(b)に加え、一般的なフッ素樹脂組成物に通常添加される各種添加剤、例えば乾燥遅延剤、充填材、着色剤、安定剤、接着性付与剤等を必要に応じて配合したものであってよい。上記各種添加剤としては、上記塗料組成物(A)について上述したものと同様のものを用いることができる。
【0068】
上記塗料組成物(B)は、上記媒体を用いることなく粉体塗料としてもよいが、得られる塗膜表面の平滑化の点から、上記媒体を用いることが好ましい。上記媒体としては特に限定されず、有機溶剤又は水の何れを用いてもよい。
【0069】
上記有機溶剤としては、上記塗料組成物(A)の媒体として上述した有機溶剤と同様のものが挙げられる。この場合、上記塗料組成物(B)は、例えば、乳化重合により得られた上記溶融性フッ素樹脂(b)のディスパージョンを上記有機溶剤に転相してオルガノゾルとし、塗装することができる。
【0070】
上記塗料組成物(B)は、造膜性、塗膜表面の平滑化及び環境保護の点から、上記媒体として水を含有する水性媒体を用いることがより好ましい。
上記水性媒体としては上記媒体に水を用いるものであれば特に限定されず、例えば、上記有機溶剤を含有するものであってもよいが、環境保護の点から、水は上記媒体中70〜100質量%であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
【0071】
上記媒体として上記水性媒体を用いる場合、上記溶融性フッ素樹脂(b)の分散性と造膜性を向上させるため、分散剤を用いることが好ましい。上記分散剤としては、例えば、上記塗料組成物(A)について上述した分散剤と同様のものを用いてもよいが、本発明においては、得られる塗膜表面の平滑性を高めるため、非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0072】
上記非イオン性界面活性剤としては、造膜性及び分解性が良好である点から、親水親油バランス〔HLB〕が15以上であることが好ましい。15未満であると、造膜性が不充分となって塗膜にクラックを生じたり、後述の焼成時に充分に分解せず、塗膜に残存して塗膜物性を劣化させる場合がある。より好ましくは、15〜20であり、更に好ましくは、15〜18である。
本明細書において、HLBとは、下記式により求められる値をいう。
HLB=親水性基の重量%/5
【0073】
このような非イオン性界面活性剤としてはHLBが15以上であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルエステル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリエチレングリコールブロックコポリマー、ポリオキシエチレンソルビタンモノアルキレート等であって、HLBが15以上のものであればよく、これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0074】
上記非イオン性界面活性剤は、固形分基準で上記溶融性フッ素樹脂(b)100質量部に対し8〜20質量部であることが好ましい。8質量部未満であると、造膜性が不充分となる傾向にあり、20質量部を超えると、塗膜における残存量が多くなり、塗膜物性の低下を招きかねない。より好ましくは、12〜18質量部である。
【0075】
上記塗料組成物(B)としては、上記溶融性フッ素樹脂(b)の水性分散液であることが好ましい。上記溶融性フッ素樹脂(b)の水性分散液とは、上記媒体として上記水性媒体を用いてこれを分散媒とし、上記溶融性フッ素樹脂(b)を分散質とする分散系である。
【0076】
上記溶融性フッ素樹脂(b)の水性分散液は、好ましくは上記分散剤を含有し、より好ましくは上記非イオン性界面活性剤を含有するものである。上記溶融性フッ素樹脂(b)の水性分散液は、また、乾燥遅延剤を用いることが好ましい。上記乾燥遅延剤としては、例えば、上記塗料組成物(A)について上述したものと同様のものを用いることができる。
【0077】
上記溶融性フッ素樹脂(b)の水性分散液は、例えば、乳化重合により得られた上記溶融性フッ素樹脂(b)のディスパージョンを上記水性媒体及び好適には上記分散剤及び上記乾燥遅延剤を用いて、水性塗料とし、塗装することができる。
【0078】
上記塗料組成物(B)は、上記溶融性フッ素樹脂(b)並びに所望により上記媒体及び/又は上記各種添加剤を用い、例えば従来公知の方法等により容易に調製することができる。上記塗料組成物(B)の調製方法としては、例えば、上述のフッ素ゴム(a2)、加硫剤、加硫助剤及び受酸剤は加えないものの、既に述べた上記溶融性フッ素樹脂(a1)を上記フッ素ゴム(a2)と配合する方法に準じて調製することができる。
【0079】
本発明のフッ素樹脂被覆物製造方法は、上記塗料組成物(A)を被塗装物に塗布し、乾燥した後、上記塗料組成物(B)を塗布し、焼成することよりなるフッ素樹脂被覆物を製造する方法であって、上記塗料組成物(B)は、上記フッ素ゴム(a2)を加硫させる前に塗布するものである。
【0080】
上記被塗装物としては上記焼成を行う温度を超える耐熱温度を有するものであれば特に限定されず、用途に応じて選択することができ、例えば、鉄、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、真鍮等の金属類;ガラス板、ガラス繊維の織布及び不織布等のガラス製品;ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン等の汎用樹脂及び耐熱性樹脂の成形品及び被覆物;SBR、ブチルゴム、NBR、EPDM等の汎用ゴムの成形品及び被覆物;シリコーンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性ゴムの成形品及び被覆物;天然繊維及び合成繊維の織布及び不織布等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いたものであってもよい。
【0081】
上記被塗装物としては、なかでも、後述する用途に好適である場合が多く、多用されている点から、金属類及び/又は弾性体を含有するものが好ましい。上記弾性体とは、上述の汎用ゴム、耐熱性ゴム等の弾性を有する材料を含有するものである。上記弾性体としては、後述の焼成による劣化を防止するため、上記耐熱性ゴムを用いたものが好ましく、シリコーンゴムを用いたものがより好ましい。
【0082】
上記被塗装物は、用途によるが、例えばOA機器用ロール、OA機器用ベルト等の他材と接触する用途に用いられる基板である場合、他材との接触面積を確保するため、弾性を有することが好ましい。弾性を有する上記被塗装物としては、上記弾性体が好ましく、金属類等の非弾性体を含有するものである場合、弾性を得るため、上記非弾性体の上に上記弾性体を積層させたものが好ましい。
【0083】
上記被塗装物は、その材質によるが、表面の脱脂及び/又は洗浄を施したものであってもよい。上記被塗装物は、特に金属類である場合、表面の脱脂及び洗浄を行うことが好ましく、この場合、例えば、表面の脱脂及び洗浄を行った後にシリコーンゴムからなる層を形成させることができる。
【0084】
上記被塗装物は、その材質によるが、上記脱脂及び/若しくは洗浄を施した後又は上記脱脂及び/若しくは洗浄を施すことなく、下塗り塗料としてプライマーを塗布したものであってもよい。上記被塗装物は、上記プライマーが塗布されたものであることにより、上述の塗料組成物(A)層との密着性を向上させることができる。
【0085】
上記プライマーとしては特に限定されず、上記被塗装物の材質に応じて選択することができ、例えば、市販のフッ素ゴム用下塗り塗料を用いることができる。上記プライマーとしては、例えば、シランカップリング剤等のシラン系プライマー;シリコーン樹脂等のシリコーン系プライマー;チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等のその他のカップリング剤;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ/フェノール樹脂、アクリル樹脂等のその他の樹脂系プライマー等が挙げられる。
【0086】
上記被塗装物は、シリコーンゴムを表面に有するものである場合、更にその上に上記プライマーを塗布したものであることが好ましい。
【0087】
上記塗料組成物(A)は、塗装作業性の向上、得られる塗膜物性の向上等のため、塗布するに際し、上述の媒体を更に添加する等の従来公知の方法等により、必要に応じて希釈してもよい。なお、上記塗料組成物(B)についても同様に希釈してよい。
【0088】
上記被塗装物に上記塗料組成物(A)を塗布する方法としては特に限定されず、例えば、ハケ塗り、スプレーコーティング、浸漬塗布、フローコーティング、ディスペンサーコーティング、スクリーンコーティング等の従来公知の方法を用いることができる。
【0089】
上記塗料組成物(A)を塗布した後、上述の媒体として用いた有機溶剤又は水を蒸発させるため、通常、乾燥する。上記乾燥は、例えば室温〜100℃で10〜120分間行う。
【0090】
このようにして得られた上記塗料組成物(A)層の上に、上記塗料組成物(B)を塗布する。上記塗料組成物(B)を塗布する段階では、上記塗料組成物(A)層において、上記フッ素ゴム(a2)は実質的に加硫されておらず、上記溶融性フッ素樹脂(a1)は溶融していない。
【0091】
上記塗料組成物(B)の塗布の後、必要に応じて乾燥し、次いで焼成する。上記塗布及び乾燥の方法としては、上記塗料組成物(A)と同様の方法を用いることができる。
上記焼成は、上記被塗装物、上記溶融性フッ素樹脂等の劣化を防止しつつ、得られる塗膜表面を平滑化する点から、特定の範囲内の焼成温度で行う。
【0092】
上記特定の範囲内の焼成温度の下限は、上記溶融性フッ素樹脂(a1)の融点及び上記溶融性フッ素樹脂(b)の融点のうち高い方の温度よりも10℃高い温度である。上記下限未満であると、上記溶融性フッ素樹脂(a1)及び上記溶融性フッ素樹脂(b)が溶融しないか、または、溶融しても溶融粘度が不充分であり、造膜性に劣ったり、充分に平滑な表面を有する塗膜が得られない。
【0093】
上記特定の範囲内の焼成温度の上限は、上記溶融性フッ素樹脂(a1)の分解温度、上記溶融性フッ素樹脂(b)の分解温度及び上記被塗装物の耐熱温度のうち最も低い温度未満の温度である。上記上限を超えると、上記溶融性フッ素樹脂が分解して非粘着性等のフッ素樹脂本来の優れた特性が充分に得られないか、または、上記被塗装物が熱劣化して目的とする品質が得られない。
【0094】
上記焼成温度の上限としては、上記被塗装物がシリコーンゴムを含有するものであって、上記プライマーが塗布されたものである場合、上記シリコーンゴムの耐熱温度及び上記プライマーの耐熱温度のうち低い方の温度未満の温度にすることが好ましい。上記上限を超えると、上記シリコーンゴムが熱劣化して充分な弾性が得られない場合や、上記プライマーが分解して上記被塗装物と上記塗料組成物(A)層との間の接着性が不充分となり、層間剥離等を起す場合がある。なお、通常、上記プライマーの耐熱温度の方が上記シリコーンゴムの耐熱温度よりも低いので、上記焼成温度の上限は上記プライマーの耐熱温度に支配されることが多い。
【0095】
上記焼成温度としては、例えば、上記被塗装物がシリコーンゴムを含有し、上記プライマーが塗布されたものである場合において、用いるシリコーンゴムの耐熱温度と用いるプライマーの耐熱温度によるが、上記溶融性フッ素樹脂としてPFAを用いるとき、320〜330℃が好ましく、上記溶融性フッ素樹脂としてFEPを用いるとき、250〜310℃が好ましい。
【0096】
上記焼成は、焼成温度によるが、通常、0.25〜8時間行うことが好ましい。
上記焼成を行うことにより、上記塗料組成物(A)中の溶融性フッ素樹脂(a1)が上記塗料組成物(A)層の表面にブリードアップし、上記溶融性フッ素樹脂(b)と融着するとともに、上記フッ素ゴム(a2)の加硫が起こり、この加硫の進行につれて上記フッ素ゴム(a2)と上記溶融性フッ素樹脂(a1)との結合が進むものと考えられる。
【0097】
上記塗料組成物(B)から形成される塗膜の膜厚は、用いる上記溶融性フッ素樹脂(b)の平均粒子径、用途等によるが、上記焼成の後において1〜20μmであることが好ましい。1μm未満であると、上記溶融性フッ素樹脂からなる層の使用耐久性が不充分となる場合があり、また、上記溶融性フッ素樹脂からなる層の厚膜化が特に要求されない場合には、通常、本発明のフッ素樹脂被覆物製造方法を用いる必要は特にない。20μmを超えると、上述の範囲内の平均粒子径を有する上記溶融性フッ素樹脂(b)を用いることによっては得ることが容易でない。より好ましくは、1〜15μmであり、更に好ましくは、2〜10μmである。
【0098】
本発明のフッ素樹脂被覆物は、上記フッ素樹脂被覆物製造方法により製造されたものであることを特徴とするものである。本明細書において、上記フッ素樹脂被覆物とは、上記被塗装物の上に形成された塗膜を有するものを意味する。従って、上記フッ素樹脂被覆物は、上記被塗装物の上に形成された塗膜のみであってもよいし、上記被塗装物及びこの被塗装物の上に形成された塗膜であってもよく、これらの表面及び/又は裏面に必要に応じてコーティング等のその他の層の形成、洗浄、裏面の研磨等の表面処理を施したものであってもよい。
【0099】
上記フッ素樹脂被覆物は、表面が平滑性を有するものである。
上記フッ素樹脂被覆物は、表面粗さ〔Rz〕が2μm以下である。2μmを超えると、表面の平滑性が不充分となり、紙片やトナー等の汚染物質が付着しやすく長期間の使用耐久性に劣るほか、例えばOA機器用ロールやOA機器用ベルト等に用いられる場合、記録媒体への定着画像の乱れ、紙皺等を招きやすい等の問題を生じる。好ましくは、1.6μm以下であり、通常、0.8μm以上である。
【0100】
上記表面粗さ〔Rz〕は、JIS−B0601に規定される十点平均粗さである。本明細書において、上記Rzは、測定長を4mmとして、表面粗さ計(商品名:サーフコム470A、東京精機社製)を用いて測定した値である。
【0101】
上記フッ素樹脂被覆物は、表面の水との接触角が102〜130°であることが好ましい。102°未満であると、離型性に劣る場合や、表面の平滑性に劣って汚染物質の付着等の上記問題を生じる場合があり、130°を超えると、別途表面平滑化処理等が必要となる場合があり、工程の簡略化、エネルギー等の低減といった本発明の目的を逸脱する場合がある。より好ましくは、102〜110°である。本明細書において、上記接触角は、接触角計としてゴニオメーター(協和界面科学社製)を用いて測定した値である。
【0102】
上記フッ素樹脂被覆物は、表面の光沢(60°−60°)が50%以上であることが好ましい。50%未満であると、表面の平滑性に劣る場合や、用途により商品価値が低下する場合がある。より好ましくは、50〜95%である。本明細書において、上記光沢(60°−60°)は、デジタル変角光沢計(スガ試験機社製)を用いて測定した値である。
【0103】
本発明のフッ素樹脂被覆物製造方法は、上記溶融性フッ素樹脂(a1)及び上記溶融性フッ素樹脂(b)を用い、上記塗料組成物(B)を塗布する前に上記フッ素ゴム(a2)の加硫を行わず、上記特定範囲内の温度で焼成することから、得られるフッ素樹脂被覆物の塗膜表面の良好な平滑性を達成することができる。本発明のフッ素樹脂被覆物製造方法がこのような有利な効果を奏する機構は明確ではないが、次のように考えられる。
【0104】
即ち、従来のようにフッ素ゴムを加硫させた上にフッ素樹脂組成物を塗布し焼成することにより得られる塗膜表面の平滑性が損なわれていたことと異なり、本発明において上記特定範囲内の温度で焼成する時に上記フッ素ゴム(a2)、上記溶融性フッ素樹脂(a1)及び上記溶融性フッ素樹脂(b)が同時期又はほぼ同時期に軟化又は溶融することとなり、更に、上記溶融性フッ素樹脂は溶融粘度が比較的低く溶融時の流動性に優れている結果、得られる塗膜表面は、凹凸がならされて平均化し、平滑になるものと考えられる。
【0105】
本発明のフッ素樹脂被覆物製造方法は、また、上記フッ素ゴム(a2)の加硫を単独の工程として行う必要がなく、塗膜形成後等に表面平滑化処理を別途行う必要もないことから、工程を簡略化し、エネルギー、時間、労力等を低減することができるので、工業的に有利な製造方法である。
【0106】
本発明のフッ素樹脂被覆物製造方法によれば、更に、表面の上記溶融性フッ素樹脂からなる層を比較的厚くすること、及び、造膜性に優れ、クラックや層間剥離のない塗膜を得ることを両立することができ、非粘着性等のフッ素樹脂本来の特性を長期間損なうことなく使用耐久性に優れた塗膜を有するフッ素樹脂被覆物を製造することができる。
【0107】
上記フッ素樹脂被覆物は、表面に上記溶融性フッ素樹脂からなる層を有している点から、耐熱性、耐溶剤性、潤滑性、非粘着性等のフッ素樹脂の特性が要求される分野で好適に使用することができ、例えば、複写機、プリンター、ファクシミリ等のOA機器に用いられる定着ロール、圧着ロール等のOA機器用ロール;上記OA機器用の搬送ベルト;シート及びベルト;O−リング、ダイヤフラム、耐薬品性チューブ、燃料ホース、バルブシール、化学プラント用ガスケット、エンジンガスケット等のその他の工業製品等が挙げられる。
【0108】
上記フッ素樹脂被覆物は、非粘着性等の上記フッ素樹脂本来の特性を発揮することができるとともに、平滑性が良好である表面を有する点から、OA機器用ロール又はOA機器用ベルトに好適に用いられ、OA機器用ロール又はOA機器用ベルトであることが好ましい。
【0109】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
調製例1 「フッ素ゴムディスパージョンA」の調製
乳化重合によりVdFとTFEとHFPの共重合体を製造し、得られた重合混合溶液を、非イオン性界面活性剤としてHS−208(HLB=12.6、日本油脂社製)の20重量%水溶液及びHS−215(HLB=15.0、日本油脂社製)の20重量%水溶液との混合物を用いて濃縮し、固形分濃度を60重量%とした。これを「フッ素ゴムディスパージョンA」とする。
【0110】
調製例2 「Pigペースト」の調製
充填剤(タロックスR−516L、チタン工業社製)3重量部及び受酸剤(DHT−4A、協和化学工業社製)5重量部を、界面活性剤として上記HS−208の20重量%水溶液2重量部とともに純水46重量部に分散させてペーストを調製した。これを「Pigペースト」とする。
【0111】
調製例3 「フッ素ゴム塗料主剤」の調製
「フッ素ゴムディスパージョンA」70重量部、「Pigペースト」23.5重量部、増粘剤AとしてDS−60HN(日本油脂社製)の5重量%水溶液6重量部、増粘剤BとしてUH−140S(旭電化工業社製)の50重量%水溶液0.5重量部を混合して充分に分散させた。
【0112】
調製例4 「FEPディスパージョン」の調製
乳化重合によりTFE/HFP共重合体〔FEP〕を製造し、得られた重合混合溶液を、界面活性剤として上記HS−208及び上記HS−215の各20重量%水溶液を用いて濃縮し、固形分濃度を60重量%とし、固形分基準でFEP100重量部に対し上記HS−208及び上記HS−215はそれぞれ4重量部とした。融点は240℃、MFRは1g/10分、平均粒子径は0.18μmであった。これを「FEPディスパージョン」とする。
【0113】
調製例5 「PFAディスパージョン」の調製
乳化重合によりTFE/PFVE共重合体〔PFA〕を製造し、得られた重合混合溶液を、界面活性剤として上記HS−208及び上記HS−215の各20重量%水溶液を用いて濃縮し、固形分濃度を60重量%とし、固形分基準でPFA100重量部に対し上記HS−208及び上記HS−215はそれぞれ4重量部とした。融点は310℃、MFRは55g/10分、平均粒子径は0.19μmであった。これを「PFAディスパージョン」とする。
【0114】
調製例6 「EPAディスパージョン」の調製
乳化重合によりTFE/HFP/PFVE共重合体〔EPA〕を製造し、得られた重合混合溶液を、界面活性剤として上記HS−208及び上記HS−215の各20重量%水溶液を用いて濃縮し、固形分濃度を60重量%とし、固形分基準でEPA100重量部に対し上記HS−208及び上記HS−215はそれぞれ4重量部とした。融点は275℃、MFRは20g/10分、平均粒子径は0.18μmであった。これを「EPAディスパージョン」とする。
【0115】
調製例7 「加硫剤溶液A」の調製
3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサ−2−スピロ[5,5]−ウンデカン(エポメートF−100、油化シェル社製)50%水溶液に、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(A−1100、日本ユニカー社製)60%水溶液を重量比4/6の比率で混合し調製した。これを「加硫剤溶液A」とする。
【0116】
調製例8 「加硫剤溶液B」の調製
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(A−1100、日本ユニカー社製)60%水溶液を調製した。これを「加硫剤溶液B」とする。
【0117】
調製例9 「塗料A1」の調製
「フッ素ゴム塗料主剤」100重量部、「FEPディスパージョン」70重量部を混合して(固形分基準でフッ素ゴム:FEP=50:50重量比)充分に分散させた。この水性分散液100重量部に「加硫剤溶液A」5重量部を混合し、塗料を調製した。これを「塗料A1」とする。
【0118】
調製例10 「塗料A2」の調製
「フッ素ゴム塗料主剤」100重量部、「FEPディスパージョン」70重量部を混合して(固形分基準でフッ素ゴム:FEP=50:50重量比)充分に分散させた。この水性分散液100重量部に「加硫剤溶液B」5重量部を混合し、塗料を調製した。これを「塗料A2」とする。
【0119】
調製例11 「塗料A3」の調製
「フッ素ゴム塗料主剤」100重量部、「FEPディスパージョン」47重量部を混合して(固形分基準でフッ素ゴム:FEP=60:40重量比)充分に分散させた。この水性分散液100重量部に「加硫剤溶液A」5重量部を混合し、塗料を調製した。これを「塗料A3」とする。
【0120】
調製例12 「塗料A4」の調製
「フッ素ゴム塗料主剤」95重量部、「FEPディスパージョン」100重量部を混合して(固形分基準でフッ素ゴム:FEP=40:60重量比)充分に分散させた。この水性分散液100重量部に「加硫剤溶液A」5重量部を混合し、塗料を調製した。これを「塗料A4」とする。
【0121】
調製例13 「塗料B」の調製
「フッ素ゴム塗料主剤」100重量部、「PFAディスパージョン」70重量部を混合して(固形分基準でフッ素ゴム:PFA=50:50重量比)充分に分散させた。この水性分散液100重量部に「加硫剤溶液A」5重量部を混合し、塗料を調製した。これを「塗料B」とする。
【0122】
調製例14 「塗料C」の調製
「フッ素ゴム塗料主剤」100重量部、「EPAディスパージョン」70重量部を混合して(固形分基準でフッ素ゴム:EPA=50:50重量比)充分に分散させた。この水性分散液100重量部に「加硫剤溶液A」5重量部を混合し、塗料を調製した。これを「塗料C」とする。
【0123】
調製例15 「PFA塗料」の調製
乳化重合によりTFE/PFVE共重合体〔PFA〕を製造し、得られた重合混合溶液を、界面活性剤として上記HS−208及び上記HS−215の各20重量%水溶液を用いて濃縮し、固形分濃度を60重量%とした。融点は310℃、MFRは25g/10分、平均粒子径は0.24μmであった。このディスパージョン100重量部に、非イオン系界面活性剤としてエマルゲン120(HLB=15.3、花王社製)の30%水溶液を20重量部、エチレングリコールを10重量部を混合分散し、塗料を調製した。これを「PFA塗料」とする。
【0124】
実施例1
(塗装板の作成)
予めアセトンで洗浄したアルミニウム板の表面上半面に、「塗料A1」をスプレー塗装し、80〜100℃で15分間乾燥した後、室温まで空冷し、約30μmの膜厚を有する下層塗膜を作成した。そして、その上から塗板全面に「PFA塗料」をスプレー塗装し、室温で約1時間及び80〜100℃で15分間乾燥した後、325℃で30分間焼成して、総膜厚約40μmの塗装板を作成した。
【0125】
(塗膜特性の評価)
得られた塗装板の塗膜表面の特性を以下のように評価した。結果を表1に示す。
1.塗膜外観
塗膜表面上のクラック、発泡、ブツ、フクレ等の有無を目視で観察し、評価した。
2.対水接触角
塗膜表面に純水を一滴滴下してゴニオメーター(協和界面科学社製)を用いて接触角を測定した。
【0126】
3.表面粗さ
塗膜表面の十点平均表面粗さ〔Rz〕を表面粗さ計(サーフコム470A、東京精機社製)を用い、測定長を4mmとして測定した。
4.光沢
塗膜表面の光沢(60°−60°)を、デジタル変角光沢計(スガ試験機社製)を用いて測定した。
【0127】
実施例2
「塗料A1」に代わり「塗料A2」を用いたこと以外は、実施例1と同様にして塗装板を作成し、評価した。
実施例3
「塗料A1」に代わり「塗料A3」を用いたこと以外は、実施例1と同様にして塗装板を作成し、評価した。
【0128】
実施例4
「塗料A1」に代わり「塗料A4」を用いたこと以外は、実施例1と同様にして塗装板を作成し、評価した。
実施例5
「塗料A1」に代わり「塗料B」を用いたこと以外は、実施例1と同様にして塗装板を作成し、評価した。
【0129】
実施例6
「塗料A1」に代わり「塗料C」を用いたこと以外は、実施例1と同様にして塗装板を作成し、評価した。
比較例1
「PFA塗料」に代わり「PFAディスパージョン」を用いたこと以外は、実施例1と同様にして塗装板を作成し、評価した。
【0130】
比較例2
「PFA塗料」に代わりPFA水性塗料(AW−5000、ダイキン工業社製、融点は300℃、MFRは20g/10分、平均粒子径は25μmであった。)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして塗装板を作成し、評価した。
比較例3
塗装板の作成において、「塗料A1」を塗装し、80〜100℃で15分間乾燥した後空冷前に、200℃で2時間焼成する工程を追加したこと以外は、実施例1と同様にして塗装板を作成し、評価した。
【0131】
【表1】
Figure 0004872172
【0132】
表1から、各実施例は、表面粗さ〔Rz〕が2μm以下であり、光沢及び水接触角が比較的大きい値であるので、表面平滑性が良好であり、また、塗膜外観にも優れるのに対し、各比較例は、Rzが2μmを超え、塗膜外観に劣っており、上述の塗料組成物(B)の塗布前に加硫した比較例3、並びに、上記塗料組成物(B)が非イオン性界面活性剤を含有しなかったり上記溶融性フッ素樹脂(b)の平均粒子径が0.2〜1μmの範囲内にない比較例2及び比較例3では、表面平滑性や塗膜外観に劣ることがわかった。
【0133】
【発明の効果】
本発明のフッ素樹脂被覆物製造方法は、上述の構成よりなるので、フッ素ゴムを加硫するための単独の工程、及び、別途行う表面平滑化処理工程を経る必要なくして、表面平滑性を有する塗膜を得ることができ、工程簡略化や、エネルギー、時間、労力等の削減が可能となり、しかも、フッ素樹脂からなる層を厚くしてその特性の発揮を長期間持続させることができる。

Claims (7)

  1. 溶融性フッ素樹脂(a1)及びフッ素ゴム(a2)を含有する塗料組成物(A)を被塗装物に塗布し、乾燥した後、溶融性フッ素樹脂(b)を含有する塗料組成物(B)を塗布し、焼成することよりなるフッ素樹脂被覆物を製造するためのフッ素樹脂被覆物製造方法であって、
    前記塗料組成物(B)は、平均粒子径が0.2〜1μmである溶融性フッ素樹脂(b)の水性分散液であり、
    前記塗料組成物(B)は、更に、親水親油バランス〔HLB〕が15以上である非イオン性界面活性剤を含有するものであり、該非イオン性界面活性剤は、固形分基準で溶融性フッ素樹脂(b)100質量部に対し8〜20質量部であり、
    前記塗料組成物(B)は、前記フッ素ゴム(a2)を加硫する前に塗布するものであり、
    前記焼成は、下限が前記溶融性フッ素樹脂(a1)の融点及び前記溶融性フッ素樹脂(b)の融点のうち高い方の温度よりも10℃高い温度であり、上限が前記溶融性フッ素樹脂(a1)の分解温度、前記溶融性フッ素樹脂(b)の分解温度及び前記被塗装物の耐熱温度のうち最も低い温度未満の温度である温度範囲において行うものであり、
    前記フッ素樹脂被覆物は、表面粗さ〔Rz〕が2μm以下であることを特徴とするフッ素樹脂被覆物製造方法。
  2. フッ素樹脂被覆物は、表面の光沢(60°−60°)が50%以上である請求項記載のフッ素樹脂被覆物製造方法。
  3. 塗料組成物(B)から形成される塗膜の膜厚は、1〜20μmである請求項1又は2記載のフッ素樹脂被覆物製造方法。
  4. フッ素ゴム(a2)と溶融性フッ素樹脂(a1)との配合比は、固形分基準の質量比として前記フッ素ゴム(a2):前記溶融性フッ素樹脂(a1)が30:70〜70:30である請求項1、2又は3記載のフッ素樹脂被覆物製造方法。
  5. 溶融性フッ素樹脂(a1)及び溶融性フッ素樹脂(b)は、融点が320℃以下である請求項1、2、3又は4記載のフッ素樹脂被覆物製造方法。
  6. 溶融性フッ素樹脂(b)は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体又はテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体である請求項1、2、3、4又は5記載のフッ素樹脂被覆物製造方法。
  7. 溶融性フッ素樹脂(b)は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体である請求項1、2、3、4又は5記載のフッ素樹脂被覆物製造方法。
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