以下、本発明に係る読取装置及びそれを備える画像作成装置における一実施形態について、図1〜図10を参酌して説明する。なお、本実施形態においては、平面部(背景部、即ち、凹凸部以外の平面状の部位)に対してエッジのある凹凸部を有する被写体、具体的には、平面部(背景部)との境界線が不連続になっている凹凸部を有する被写体、さらに具体的には、筆圧痕を有する紙を被写体として、以下説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る読取装置1は、本体2に対して引き出し(スライド)可能に構成される引出部3を備える。また、読取装置1は、図2〜4に示すように、平面部を有し、平面部に少なくとも一つの凹凸部を有する被写体Xに対し、被写体Xの平面部に斜めから光を入射する光源4,4と、被写体Xの平面部で反射する光を読み取る読取部5とを有する読取ヘッド6を備える。そして、読取装置1は、被写体Xを支持する支持部7を備える。なお、読取ヘッド6は、本体2内に設けられ、支持部7は、引出部3に設けられる。そして、引出部3(支持部7)が本体2内に収容された状態で、読取ヘッド6は、支持部7に対向し、且つ上方に配置される。
光源4,4は、読取部5が読み取る被写体Xの平面部の部位に対して異なる方向から光を入射すべく複数設けられる。具体的には、光源4,4は、被写体Xの平面部に光を入射する各光軸L1が、読取部5が読み取る反射光(被写体Xで反射する光)の方向L2に対して略対称となるように一対設けられる。そして、光源4,4は、それぞれが個別に点灯(消灯)可能に構成される。また、光源4は、ライン状に構成される。具体的には、光源4は、被写体Xの平面部と平行な方向にライン状に構成される。より具体的には、光源4は、LED(白色)がライン状に配置されて構成される。
読取部5は、被写体Xの平面部で反射(拡散)した光のうち、所定の方向L2の光を読み取り可能に構成される。具体的には、読取部5は、被写体Xの平面部で反射(拡散)した光のうち、被写体Xの平面部に対して直交する方向L2の光を読み取り可能に構成される。より具体的には、読取部5は、ライン状に形成される光源4と平行な方向である被写体Xの平面部におけるライン状の部位を読み取り可能に構成される。
また、読取部5は、被写体Xの平面部で反射(拡散)する光の少なくとも一部を収束させる光学系(図示しない)と、収束した光を受光する撮像素子(図示しない)とを備える。そして、光学系は、光を収束させるレンズ(図示しない)を備える。なお、光学系は、必要に応じて、光路を変更させる反射ミラーを備えてもよい。また、撮像素子は、ライン状に構成される。具体的には、撮像素子は、ラインCCDセンサとしている。なお、撮像素子は、ラインCCDセンサに限らず、エリアCCDセンサ、CMOSセンサ等の受光量を電気的なデータに変換するものであればよい。
支持部7は、被写体Xを載置可能に構成される。具体的には、支持部7は、平面状に形成される上面部に被写体Xを載置可能に構成される。また、支持部7は、被写体Xを固定可能に構成される。具体的には、支持部7は、被写体Xを固定すべく、被写体Xを吸着可能に構成される。より具体的には、支持部7は、被写体Xと接する部位(上面部)に複数の気孔(図示しない)を備え、気孔から被写体Xを吸引可能に構成される。例えば、支持部7の上面部が硬質な多孔質材料で形成されるため、支持部7は、上面部の全体に設けられる気孔(例えば、直径約5μm)により、被写体Xを上面部の全面で均一な荷重により吸着可能に構成される。
また、読取装置1は、読取ヘッド6及び支持部7の少なくとも何れか一方が被写体Xの平面部と平行な方向に移動可能に構成される。具体的には、読取ヘッド6及び支持部7の少なくとも何れか一方は、光源4,4の入射角度(光源4が被写体Xに光を入射する光軸L1と被写体Xの平面部との角度)を維持しつつ、読取ヘッド6が被写体Xの平面部に沿って相対変位するように、移動可能に構成される。
より具体的には、読取ヘッド6は、被写体Xを載置する平面状である支持部7の上面部と平行方向であって、読取部5が読み取る被写体Xの平面部におけるライン状の部位に対して直交する方向に往復移動可能に構成される(図4における矢印の方向)。即ち、読取ヘッド6は、ライン状の光源4,4に対して直交する方向に往復移動可能に構成される。
さらに、読取装置1は、読取ヘッド6及び支持部7の少なくとも何れか一方が被写体Xの平面部と直交する方向を軸にして回転可能に構成される。具体的には、読取ヘッド6及び支持部7の少なくとも何れか一方は、光源4,4の入射角度を維持しつつ、読取ヘッド6及び被写体Xが対向する方向を軸にして回転可能に構成される。より具体的には、支持部7は、被写体Xを固定すると共に、読取ヘッド6が往復移動する方向に対して被写体Xの平面部が平行な状態を維持しつつ、回転可能に構成される。
また、読取ヘッド6は、被写体Xの平面部と平行方向に移動することにより、被写体Xの全域を読み取り可能に構成される。具体的には、読取ヘッド6は、支持部7の上面部と平行な方向に移動することにより、支持部7の上面部に載置される被写体Xの全域を読み取り可能に構成される。より具体的には、図5に示すように、長方形状の被写体X(長方形状の支持部7の上面部)に対して、読取ヘッド6は、読み取り幅D1が被写体X(支持部7の上面部)の対角線の長さ以上となるように構成される。そして、読取ヘッド6の読み取り領域S1は、読取ヘッド6の読み取り幅D1と読取ヘッド6の移動距離D2とが各辺となって形成される長方形状の領域である。
また、図6に示すように、本実施形態に係る読取装置1を備える画像作成装置100(以下、単に「画像作成装置」という)は、読取ヘッド6及び支持部7の少なくとも何れか一方を回転させて被写体Xを所定角度回転させ、さらに、所定角度ごとに被写体Xを読み取る(詳しくは、光源4が被写体Xの平面部に光を入射し、被写体Xの平面部で反射した光を読み取る)ように制御可能に構成される制御部101と、読み取った複数のデータの角度位相を合わせて合成画像を作成可能に構成される演算部102とを備える。また、制御部101は、読取ヘッド6及び支持部7の少なくとも何れか一方を移動させて、読取ヘッド6で被写体Xの全域を読み取るように制御可能に構成される。
具体的には、演算部102は、読取ヘッド6で被写体Xを複数方向から読み取ったデータ(画像)を、読取ヘッド6及び支持部7(被写体X)間における任意の基準方向からの相対変位角度分だけ逆回転させて正立可能に構成される。また、演算部102は、読取ヘッド6(撮像素子)の受光量が小さい画素(濃度の低い画素)を優先させて画像の重ね合わせを実施可能に構成される。
また、画像作成装置100は、所定の読み取り対象領域(以下、単に「対象領域」ともいう)について画像を作成可能に構成される。具体的には、画像作成装置100は、事前に設定した対象領域に基づき、読取ヘッド6及び支持部7(被写体X)間の相対変位角度に応じて対象領域を自動計算し、そして、読取ヘッド6の移動距離及びデータ処理領域の少なくとも何れか一方を調整可能に構成される。
なお、画像作成装置100は、各種データを記憶する記憶部103を備える。さらに、画像作成装置100は、各種データを出力したり、表示したりする出力部104を備える。また、制御部101は、読取装置1、演算部102、記憶部103、及び出力部104をそれぞれ制御可能に構成される。例えば、制御部101は、読取ヘッド6を往復移動させて被写体Xを読み取る際に、往路と復路とで点灯させる光源4,4を切り替えたり、両方の光源4,4を点灯させたりするように制御可能に構成される。
本実施形態に係る読取装置1及び画像作成装置100の構成は以上の通りであり、次に、本実施形態に係る読取装置1及び画像作成装置100の作用について説明する。
まず、引出部3を本体2からスライドさせて引き出し、引出部3に設けられる支持部7に被写体Xを載置する。そして、被写体Xを載置する平面状の支持部7の上面部に設けられる複数の気孔から被写体Xを吸引すると、被写体Xが支持部7に固定される。なお、被写体Xの平面部が確実に平面状となって固定されない(シワ等が発生した状態で固定された)場合、シワ等が凹凸部(筆圧痕)を読み取るのに障害となるため、平面状の部位を有する治具等を用いて被写体Xを伸ばして固定させる。
また、被写体Xが支持部7の上面部を全て覆えない(上面部の全ての気孔を塞げない)程度に小さい場合、被写体Xを固定させるための吸引力が低下するため、開放状態の気孔を閉塞可能に形成される閉塞部材(図示しない)を支持部7上に配置してもよい。閉塞部材としては、例えば、支持部7の上面部における被写体Xで覆えない部位を覆うような、即ち、被写体Xの外縁の外側に配置される環状のシート部材等でよい。そして、引出部3を再度スライドさせて、被写体Xをセットする。
ここで、平面部に凹凸部を有する被写体Xに対し、読取ヘッド6において、光源4,4が被写体Xの平面部に斜めから光を入射し、読取部5が被写体Xの平面部と直交方向に反射(拡散)する光を読み取る。具体的には、光源4,4が傾斜させて被写体Xに光を入射すると、凹凸部(筆圧痕)におけるエッジの影が形成されるため、凹凸部(筆圧痕)を周囲の平面状の部位(背景部)よりも暗く捉えることができる。
そして、光源4,4の入射角度を維持した状態で、読取ヘッド6が支持部7に固定される被写体Xの平面部に沿って往復移動することにより、読取ヘッド6は、入射光の方向が一方向分の被写体Xを読み取る。かかる場合、光源4,4が互いに独立して点灯(消灯)できるため、往路と復路とで点灯させる光源4を切り替える。これにより、読取ヘッド6は、一度の往復移動で入射光の方向が二方向分の被写体Xを読み取ることができる。
さらに、光源4,4の入射角度を維持した状態で、支持部7が被写体Xの平面部と直交方向を軸にして所定の角度に回転する。そして、それぞれの角度(位置)において、読取ヘッド6が被写体Xの平面部と平行な方向に移動することにより、読取ヘッド6が各角度における被写体Xを読み取る。
そして、図7(a)に示すように、読み取り対象領域S2が長方形状の被写体X全域である場合、支持部7の回転角度に応じて、読取ヘッド6の移動距離D3が変化する。具体的には、回転角に応じて被写体Xの存在する領域(読み取り対象領域S2)を自動計算し、回転角度毎に読取ヘッド6の移動距離D3を変化させる。
例えば、回転角が0度のときにおける読取ヘッド6の移動距離D3が長方形状の長辺であった場合、被写体X(支持部7)が90度回転したときは、読取ヘッド6の移動距離D3が長方形状の短辺となって最小となる。かかる場合、読取ヘッド6の移動距離D3の最大値は、被写体X(読み取り対象領域S2)における長方形状の対角線長である。そして、読取ヘッド6の移動可能距離D4は、かかる長方形状の対角線長よりも大きく設定されている。即ち、読取ヘッド6の移動距離D3は、何れの回転角度に対しても、読取ヘッド6の移動可能距離D4に含まれ、また、読み取り対象領域S2は、読み取り可能領域S3に含まれる。
なお、上記のように読取ヘッド6の移動距離を調整するのではなく、被写体Xの存在する領域(読み取り対象領域S2)のデータについてのみ、データの取得や画像の回転及び重ね合わせという画像処理を行ってもよい。さらに、図7(b)に示すように、読み取り対象領域S4が被写体Xの一部である場合、事前に設定した読み取り対象領域S4に基づいて、読取ヘッド6の移動距離D5を変化させてもよく、或いは、読み取り対象領域S4のデータについてのみ、データの取得や画像の回転及び重ね合わせという画像処理を行ってもよい。
すると、図8(a)に示すように、略A字状の凹凸部を有する被写体Xを複数の方向から読み取ると、取得した複数の画像は、図8(b)〜(g)に示すように、読取ヘッド6の移動方向(図8(b)〜(g)における矢印の方向)に対して直交する方向の凹凸部(筆圧痕)が暗く明瞭に表れ、読取ヘッド6の移動方向に対して平行な方向の凹凸部(筆圧痕)が表れず、さらに、それ以外の凹凸部(筆圧痕)がこれらの中間の濃度で表れる(図8(b)〜(g)において読み取り可能領域を点線、読み取り対象領域を実線で表している)。
なお、図8(b)は基準位置(0度)、図8(c)は基準位置から被写体Xが約20度回転した位置、図8(d)は基準位置から被写体Xが約70度回転した位置、図8(e)は基準位置から被写体Xが約90度回転した位置、図8(f)は基準位置から被写体Xが約110度回転した位置、図8(g)は基準位置から被写体Xが約160度回転した位置において取得した画像である。
そして、図9(a)に示すように、取得した各角度における画像(読み取り可能領域を点線、読み取り対象領域を実線で表している)を、図9(b)に示すように、読取ヘッド6及び支持部7(被写体X)間の相対変位角度分だけ逆回転させて正立させる。さらに、図9(c)に示すように、読み取り対象領域に対して余分な領域における画像をトリミングする。
また、図10に示すように、かかる処理をそれぞれの画像で行った後、濃度の低い画素を優先させて画像の重ね合わせを行う。具体的には、画像間の濃度の最小値を選ぶMIN演算により画像を重ね合わせる(なお、図10においては、読み取り対象領域のみの画像を表し、画像の読み取り状態、画像の正立状態、及び画像の重ね合わせ状態を示している)。したがって、それぞれの画像から様々な方向成分を有する凹凸部(筆圧痕)の影を抽出でき、得られた重ね合わせ画像には、明瞭な文字や図を表すことできる。
なお、画像の回転処理(逆回転)には、アフィン変換という行列の積演算等の演算を用いる。また、重ね合わせ画像や読み取り画像といった各画像は、ビットマップ形式やJPEG形式等のデジタルデータとして出力する。
以上より、本実施形態に係る読取装置1は、読取ヘッド6が被写体Xの平面部に平行な方向に移動できるため、略均一な光の状態で被写体X全域を読み取ることができる。さらに、支持部7が被写体Xの平面部に直交する方向を軸にして回転できるため、略均一な光の状態で被写体X(凹凸部)を複数の方向から読み取ることができる。したがって、被写体Xの大きさに関わらず、被写体Xの凹凸部を安定的に読み取ることができる。
また、本実施形態に係る読取装置1は、一対の光源4,4における被写体Xに光を入射する各光軸L1が、被写体Xの平面部に直交する読取部5が読み取る反射光(被写体Xで反射する光)の方向L2に対して略対称であるため、一方の光源4を点灯して被写体Xを読み取る状態と、他方の光源4を点灯して被写体Xを読み取る状態とが、支持部7が読取ヘッド6に対して180度回転した状態と略同じ状態となる。したがって、例えば、支持部7が読取ヘッド6に対して180度回転させるだけで、被写体Xを全方向(360度)から読み取ることもできる。
また、本実施形態に係る画像作成装置100は、読取ヘッド6及び支持部7(被写体X)間の任意の相対変位角度において、読取ヘッド6で被写体Xの狭域撮像を逐次行い、この狭域画像を連結して全体画像を作成する。つまり、所謂スキャナ方式なので、何れの狭域も同じ状態の光(入射角度、光量)で撮像でき、実質的に被写体X全域を同一の入射角度で且つ均一な光量で撮像できる。したがって、被写体Xのサイズに関係なく、凹凸部(筆圧痕)に生じる影や背景部を安定して撮像でき、濃度のバラツキがない全体画像を作成できる。
また、支持部7を読取ヘッド6に対して回転させて、読取ヘッド6で複数方向から被写体Xを読み取るので、何れの方向における凹凸部(筆圧痕)も何れかの画像上に捉えることができる。そして、読み取った複数のデータの角度位相を合わせて合成画像を作成することができるため、様々な方向成分を有する被写体Xの凹凸部(筆圧痕)を明瞭にした画像を作成することができる。したがって、形態が明瞭となった凹凸部(筆圧痕の文字や図)の画像が出力されるので、例えば、筆圧痕の判読作業を容易なものにすることができる。
また、本実施形態に係る画像作成装置100は、読取ヘッド6の移動距離D3を読み取り対象領域S2に限定するため、トータルの読み取り時間を短縮でき、さらに、読み取ったデータにおける読み取り対象領域S2(被写体Xの存在する領域)のデータのみについて画像処理を行うため、データ量を減らすことができる。したがって、CPUの負荷やメモリアクセス回数が低減できるため、処理時間の短縮化が図れる。
なお、本発明に係る読取装置及び画像作成方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、本発明に係る読取装置においては、一方の面における凹部が他方の面における凸部となるように(凹凸部が両面に跨って)形成され、且つ外力で変形する平板状の被写体Xに対して、被写体Xに沿って接触する状態で被写体Xを支持(固定)する支持部が、凹凸部が平坦状となるように被写体Xを変形させるのを防止すべく、支持部は、被写体Xに沿って接触する部位が被写体Xより変形しやすい弾性材で形成されてもよい。
かかる構成によれば、外力で変形する平板状の被写体Xに対して、支持部における被写体Xに沿って接触する部位が被写体Xより変形しやすい弾性材で形成されているため、支持部が、被写体Xに沿って接触する状態であって、吸着や押圧といった外力が加わるような方法で被写体Xを支持(固定)する際に、凹凸部が平坦状となるように被写体Xを変形させるのを防止できる。
したがって、被写体Xを確実に支持(固定)しつつも、凹凸部の形状を維持することにより、凹凸部を確実に読み取ることができる。具体的には、上記実施形態に係る読取装置1のように、即ち、上面部で被写体Xを載置して支持(固定)する支持部7においては、上面部が被写体Xより変形しやすい、例えば、スポンジ状の弾性材で形成されてもよい。
また、本発明に係る画像作成方法においては、光源が、読取部が読み取る被写体Xの平面部の部位に対して異なる方向から光を入射すべく複数設けられ、それぞれが個別に点灯(消灯)可能な読取装置で、何れか一つの光源を点灯させて被写体Xを読み取るステップと、他の光源を少なくとも一つ点灯させて被写体Xを読み取るステップと、それぞれ読み取ったデータを用いて凹凸部を抽出させる差分画像を作成するステップとを備えてもよい。
かかる画像作成方法を実施可能にすべく、例えば、画像作成装置は、制御部が、何れか一つの光源を点灯させて被写体Xを読み取り、また、他の光源を少なくとも一つ点灯させて被写体Xを読み取る(或いはその逆の順で)ように制御可能に構成され、さらに、演算部が、それぞれ読み取ったデータを用いて凹凸部を抽出させる差分画像を作成可能に構成されてもよい。なお、他の光源を少なくとも一つ点灯させて被写体Xを読み取る際に、何れか一つ点灯させた光源を点灯したままの状態でもよく、消灯させた状態でもよい。
かかる構成によれば、何れか一つの光源を点灯させて被写体Xを読み取り、そして、他の光源を少なくとも一つ点灯させて被写体Xを読み取るため、被写体Xの背景部(凹凸部以外の平面状の部位)に対して凹凸部を強めて読み取ったり、弱めて読み取ったりすることができる。これにより、それぞれ読み取ったデータを用いて被写体Xの背景部(模様等)を消すようにデータを処理することにより、凹凸部を抽出させる差分画像を作成することができる。したがって、模様等がある被写体Xを読み取ると、データ上においては凹凸部が模様等と同じように認識されてしまうが、かかる両方のデータの差分により、凹凸部を抽出した画像を取得することができる。
具体的には、上記実施形態に係る画像作成装置100のように、即ち、読取ヘッド6が一対の光源4,4を備える画像作成装置100においては、何れか一方の光源4を点灯する場合と、両方の光源4,4を点灯する場合とで読み取ったデータを比較できる。例えば、模様(文字)が描かれた用紙に凹凸部(筆圧痕)を有する被写体Xに対し、何れか一方の光源4を点灯して被写体Xを読み取ると、模様(文字)と共に、凹凸部も明瞭に表れる。
そして、両方の光源4,4を点灯して被写体Xを読み取ると、両方の光源4,4で凹凸部の影を表れ難くするため、殆ど凹凸部が表れず、模様(文字)のみが表れる。したがって、それぞれのデータの差分で模様(文字)を消滅可能にデータ処理した上で両データの差分画像を作成すると、凹凸部を抽出した画像(データ)が得られる。
また、本発明に係る画像作成方法においては、平板状の被写体Xに対し、被写体Xの両面をそれぞれ読み取るステップを備えてもよい。かかる画像作成方法を実施可能にすべく、例えば、本発明に係る読取装置は、支持部が、被写体Xの平面部に平行な方向を軸にして、被写体Xを回転可能に構成してもよく、読取ヘッドが、被写体Xを介在して一対設けられ、支持部が、一対の読取ヘッドが被写体Xの平面部をそれぞれ読み取り可能なように被写体Xを支持してもよい。
具体的には、支持部は、透光可能な一対の板部材(例えばガラス板)を備え、一対の板部材は、被写体Xを支持(固定)すべく、被写体Xを挟持可能に構成されてもよい。その上で、支持部が被写体Xの平面部に平行な方向を軸にして回転可能であったり、読取ヘッドが被写体X(支持部)を介在して一対設けられ、被写体Xの平面部と平行な方向に移動可能であったりしてもよい。
かかる構成によれば、被写体Xの両面をそれぞれ読み取ることができるため、例えば、凹凸部が目視(確認)し難い場合に、凹凸部を見逃すことがなく画像を作成することができる。なお、かかる画像作成方法は、上記のように読取装置に特別な構成を採用することなく、作業者が直接手で被写体Xを裏返すことで実施してもよい。
また、本発明に係る画像作成方法においては、光源が被写体Xに光を入射する方向(光源の入射角度)及び読取部が読み取る反射光(被写体Xで反射する光)の方向(読取部の読み取り反射角度)の少なくとも何れか一方を変更可能な読取ヘッドにより、変更する前における被写体Xを読み取るステップと、光源の入射角度及び読取部の読み取り反射角度の少なくとも何れか一方を変更させるステップと、変更した後における被写体Xを読み取るステップと、変更前後のデータを用いて凹凸部を抽出させる差分画像を作成するステップとを備えてもよい。
かかる画像作成方法を実施可能にすべく、例えば、本発明に係る読取装置においては、読取ヘッドが、光源の入射角度及び読取部の読み取り反射角度の少なくとも何れか一方を変更可能に構成されてもよい。具体的には、光源及び読取部が相対変位可能に構成されてもよく、読取ヘッド及び支持部が相対変位可能に構成されてもよい。
かかる構成によれば、例えば、模様等を有する被写体Xに対して、データ上においては読取部が凹凸部と模様とを同じように認識するが、光源の入射角度及び読取部の読み取り反射角度の少なくとも何れか一方を変更することにより、模様等の変化量と、凹凸部の変化量とに差異が生ずるため、両者の被写体Xの情報を比較することで、凹凸部の情報を抽出することもできる。
例えば、凹凸部(筆圧痕)のエッジにより生じる影を太く(明瞭に)表すためには、凹凸部(筆圧痕)のエッジより外側にできる被写体X(紙)の反り上がり部分で光が遮られない範囲内で、光源が被写体Xに光を入射する入射角度(被写体Xの平面部に直交する方向と光源が被写体Xに入射する方向との角度)を大きくすればよく、また、凹凸部(筆圧痕)のエッジにより生じる影を細く表すためには、かかる入射角度を小さくすればよい。特に、光源が被写体Xに光を入射する方向及び読取部が読み取る反射光(被写体Xで反射する光)の方向が何れも被写体Xの平面部に対して略直交するように光源及び読取部を配置すれば、凹凸部(筆圧痕)のエッジにより生じる影を略無くすこともできる。
また、本発明に係る画像作成方法においては、外力で変形可能な平板状の被写体Xに対して、変形させる前における被写体Xを読み取るステップと、凹凸部が平坦状となるように被写体Xを変形させるステップと、凹凸部が平坦状となるように変形させた後における被写体Xを読み取るステップと、変形前後の読み取りデータを用いて差分画像を作成するステップとを備えてもよい。
かかる画像作成方法を実施可能にすべく、例えば、本発明に係る読取装置においては、読取ヘッド及び被写体Xが対向する方向で被写体Xを介在させて一対配置され、互いに対向する方向に平面状の押圧部を有して、押圧部同士で被写体Xを押圧可能な押圧部材を備え、一対の押圧部材は、少なくとも読取ヘッド側に配置される一方が透光可能な平板状に形成され、さらに、外力で変形する被写体Xに対して、被写体Xが変形するのを防止すべく、少なくとも何れか一方が被写体Xから離間する位置と、凹凸部が平坦状となるように被写体Xを変形させるべく、両方が被写体Xに当接して被写体を押圧する位置とに互いに対向する方向で相対変位可能に構成されてもよい。
なお、一方の押圧部材が、被写体Xを支持(固定)する支持部であってもよく、一対の押圧部材が被写体Xを支持(固定)する支持部であってもよい。具体的には、上記実施形態に係る読取装置1のように、即ち、平面状に形成される上面部に被写体Xを載置する支持部7を備える読取装置1に対し、読取ヘッド6及び被写体X間に配置され、支持部7の上面部とで被写体Xを押圧可能な押圧部材を備え、押圧部材は、透光可能な平板状に形成され、さらに、外力で変形する被写体X(一方の面における凹部が他方の面における凸部となるように形成され、且つ外力で変形する平板状の被写体X)に対して、被写体Xから離間する位置と、被写体Xを押圧する位置とに移動可能に構成されてもよい。
かかる構成によれば、例えば、模様等を有する被写体Xに対して、読取部が凹凸部と模様とを同じように認識するが、押圧部材により凹凸部を平坦状に変形させることにより、変形前後で読み取るデータにおいて、凹凸部のみに変化が生ずる。したがって、両者の被写体Xの情報を比較することで、凹凸部の情報を抽出することもできる。
また、上記実施形態に係る読取装置1及び画像作成方法は、被写体Xが凹凸部(筆圧痕)を有する紙である場合を説明したが、かかる場合に限られず、平面部を有し、平面部に少なくとも一つの凹凸部を有する被写体Xであればよい。
また、上記実施形態に係る読取装置1は、読取ヘッド6を一つ備える場合を説明したが、読取ヘッドを二つ以上備える場合でもよい。例えば、図11(a)に示すように、読取装置は、二つの読取ヘッド10,10を備え、読取ヘッド10,10は、被写体Xの平面部と平行方向に移動する各方向が交差するように配置されてもよい。具体的には、二つの読取ヘッド10,10は、被写体Xに沿って移動する各方向(図11(a)における矢印の方向)が直交するように配置される。
かかる構成によれば、上記実施形態にかかる読取装置1のように、一対の光源を有する読取ヘッド10で被写体Xを往復移動することにより、上下左右の四方向からの読み取りデータが取得できる。かかる構成において、被写体Xに対して事前に設定した読み取り対象領域S5を読み取る場合、図11(b)に示すように、各読取ヘッド10の移動距離D6,D7やデータ処理領域を設定し、読み取り動作やデータ処理を行う。
また、上記実施形態に係る読取装置1は、読取ヘッド6が光源4,4を二つ備える場合を説明したが、かかる場合に限られず、読取ヘッドが光源を一つ又は三つ以上備える場合でもよい。
なお、読取ヘッドが光源を一つのみ備える場合、被写体Xの回転角度範囲を0〜360度とするのが好ましいが、被写体Xの回転角度が180度異なる場合には明瞭に捉える凹凸部(筆圧痕)が同一であると考えられるので、0〜180度の回転角度範囲としてもよい。かかる場合、被写体Xの回転動作回数や読取ヘッドの読み取り回数が半減されるので、トータルの処理時間は半分程度に短縮できる。
但し、凹凸部(筆圧痕)の一方(片方)のエッジによる影しか捉えることができないため、重ね合わせ画像上の凹凸部(筆圧痕である文字や図)の線の太さは細くなる。したがって、凹凸部の画像の明瞭さ又は処理時間の何れかを優先させるかによって被写体Xの回転角度範囲を決めるべく、被写体Xの回転角度範囲を選択可能としてもよい。
また、上記実施形態に係る読取装置1は、一対の光源4,4がそれぞれ個別に点灯(消灯)可能に構成される場合を説明したが、かかる場合に限られない。例えば、光源と被写体Xとの間に遮光部材を配置して、遮光部材は、光源が被写体Xの読み取り領域に光を入射可能な位置(光源の光を遮光しない位置)と、光源が被写体Xの読み取り領域に光を入射するのを防止すべく光源の光を遮光する位置とに移動可能に構成されてもよい。
或いは、光源と被写体Xとの間(詳しくは、光源から被写体Xまでの光路間)であって、光源から照射される光を入射可能に配置されるミラーが設けられ、ミラーは、反射した光が被写体Xの読み取り領域に入射する位置と、反射した光が被写体Xに入射するのを防止させる位置(被写体X以外の領域に光を反射させる位置)とに調整可能に構成されてもよい。具体的には、ミラーは、光源から照射される光の入射角度(反射角度)を調整するように回転可能に構成されてもよい。
また、上記実施形態に係る読取装置1は、読取ヘッド6が読取部5を一つ備える場合を説明したが、かかる場合に限られず、読取ヘッドが読取部を二つ以上備える場合でもよい。
また、上記実施形態に係る読取装置1は、読取ヘッド6が被写体Xの平面部と平行方向に往復移動する場合を説明したが、かかる場合に限られず、支持部が移動する場合でもよく、読取ヘッド及び支持部がそれぞれ移動する場合でもよい。要するに、読取ヘッド及び支持部の少なくとも何れか一方が移動可能であればよい。さらに、読取ヘッドが被写体Xの平面部と平行方向の一方向だけでなく、複数方向、例えば、直交する二方向(前後と左右)に往復移動する場合でもよい。要するに、読取ヘッド及び支持部の少なくとも何れか一方が被写体Xの平面部と平行な方向に移動可能であればよい。
また、上記実施形態に係る読取装置1は、平面状に形成される支持部7の上面部に被写体Xを載置して、支持部7の上方に配置される読取ヘッド6で、被写体Xを上方から読み取る場合を説明したが、かかる場合に限られず、支持部や被写体Xに対して側方や下方に配置される読取ヘッドで、被写体Xを側方や下方から読み取る場合でもよい。例えば、ガラスといった透光可能であって被写体Xを載置可能な板部材の下方に読取ヘッドを配置して、板部材を介して板部材に載置される被写体Xの下面を読み取る構成を採用してもよい。
また、上記実施形態に係る読取装置1は、支持部7が被写体Xの平面部と直交する方向を軸にして回転する場合を説明したが、かかる場合に限られず、読取ヘッドが回転する場合でもよく、読取ヘッド及び支持部がそれぞれ回転する場合でもよい。
また、上記実施形態に係る読取装置1は、支持部7が上面部に設けられる複数の気孔から被写体Xを吸引して被写体Xを固定する場合を説明したが、かかる場合に限られない。例えば、被写体Xを静電気で吸着させて固定してもよく、被写体Xの端部を磁石やクリップ等で固定させて被写体Xを固定してもよく、透光可能な一対の板部材(例えばガラス板)で挟持させて被写体Xを固定してもよい。さらに、被写体Xの自重で被写体Xが動くことがないのであれば、特別な固定手段を備えず、単に被写体Xを載置する載置台等であってもよい。特に、支持部が移動及び回転することなく、読取ヘッドが移動及び回転する場合は、支持部が載置台等であってもよい。
また、上記実施形態に係る画像作成方法は、画像の重ね合わせ時にMIN演算で処理する場合を説明したが、かかる場合に限られない。例えば、画像間における濃度の小さい部位を抽出することを考慮した演算における乗算でもよく、また、凹凸部(筆圧痕)に生じる影を黒に、背景部の明るい部分を白というように二値化してから論理演算してもよい。
かかる二値化してから論理演算する方法では、黒を画素値1、白を画素値0とする二値化の場合には、論理演算としてOR演算を用いれば、演算結果として凹凸部(筆圧痕である文字や図の線部分)を黒、背景部を白として表すことができる。また、黒を画素値0、白を画素値1とする二値化の場合には、論理演算としてAND演算を用いれば、凹凸部を黒、背景部を白として表すことができる。
また、上記実施形態に係る画像作成方法は、読み取った被写体Xのデータをそれぞれ画像として出力する場合を説明したが、かかる場合に限られず、各データを重ね合わせた最終結果の画像のみ出力する場合でもよい。
また、上記実施形態に係る画像作成方法は、事前に設定した被写体Xの領域を読み取る場合を説明したが、かかる場合に限られず、支持部の初期角度(例えば0度)で一度プレスキャニングして被写体Xと支持部との境界を検出し、検出した被写体Xの領域を基に読取ヘッドの移動範囲やデータ処理領域を決定してもよい。かかる場合、被写体Xと支持部との間で色調を相違させ、濃淡画像の二値化処理やエッジ検出処理等により境界部分を容易に検出する方法を採用することができる。
また、上記実施形態に係る画像作成方法は、支持部7が回転することで複数方向の被写体Xを読み取る場合を説明したが、かかる場合に限られず、作業者が直接手で被写体Xを回転させることで実施してもよい。