JP4868391B2 - 転写機構を利用した知能型核酸配列センシングシステム - Google Patents

転写機構を利用した知能型核酸配列センシングシステム Download PDF

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Description

本発明は、サンプル核酸の配列情報を有する核酸プローブの作製方法、及び試料中のターゲット核酸の検出方法に関する。また本発明は、上記方法において使用するための核酸プローブ及びキットに関する。
生体高分子である核酸分子は遺伝情報の記憶媒体としてだけでなく、酵素としての生理活性及び結合ポケットとなる立体構造を形成して、核酸、タンパク質、小有機化合物又は小生命体を認識する機能などを有している。近年、核酸分子の持つ情報処理機能を利用して、その多様な機能を目的に従って発揮するようプログラムされた核酸分子の創薬や医療への応用に関する研究が、生体分子による分子コンピューティングの有望な応用分野として注目を集めている。
これらの核酸分子の機能は、大別すると「プログラミング機能」、「メモリ機能」、「生理活性物質としての機能」、「その他の結合機能性物質としての機能」などに分けることができ、「遺伝子診断技術」への利用における進歩が著しい。
「プログラミング(情報処理)機能」のうち、核酸分子配列に情報をプログラムして診断・治療に応用する手法としては、Benensonらが、特殊な配列を認識する制限酵素をハードウェアとして、診断と治療に関する情報を核酸分子にプログラムし、前立腺癌や小細胞型肺癌に特異的に発現するRNAの存在を判定してDNAドラッグを放出する核酸分子を用いたシステムを開発し、その核酸分子が生体外で機能することを確認したが、生体内ではその機能は確認されていない(非特許文献1)。
「メモリ機能」のうち、核酸分子の配列に特定の配列情報を学習させ、メモリとして使用する方法として、Chenらは、不正確なハイブリダイゼーションを形成するDNA間のランダムな相互作用を利用して学習及び読み出しを行えるDNAメモリの開発に成功し、それを発現遺伝子の解析及び分類に使用できることを提案した(非特許文献2)。しかしながら、RNAを記憶することのできるメモリを作製する手法は具体的には提示されていない。唾液中からも採取可能なRNAで、同様なメモリが作製可能であれば、RNA診断が有効な疾患領域が今後広がることにより、侵襲性の低い簡便な診断による早期発見、早期治療への展開が期待される(非特許文献6)。
「生理活性物質としての機能」として、核酸は診断ばかりでなく、治療薬としての効果も持っている。特定の配列を持った核酸分子のうちDNAドラッグとして治療に有効であることが確認されているものにはすでに実用化されているものがある。p53癌抑制タンパク質の不活性化に重要な役割を担う癌遺伝子タンパク質MDM2の合成を阻害するssDNA薬であり、エイズにおけるCMV(サイトメガロウィルス)による網膜炎治療に効果があるVitravene(アンチセンス医薬;非特許文献3)、進行した悪性黒色腫を対象とするOblimersen(アンチセンス医薬;非特許文献4)などである。また特定の配列をもった核酸分子のうちRNAドラッグとして治療に有効であることが確認されているものとして、老人性黄斑変性症の治療薬である血管内皮増殖因子(VEGF)に対するRNAアプタマー(NX1838)がある(非特許文献5)。RNAドラッグはDNAと同様、機能改良と大量生産が可能で、抗体薬に比べて免疫排除が生じないなどの利点があり、安定性の面でDNAに劣るという問題はあるが、反面DNAに比べて一定時間で分解され、時間的な投薬制御が容易であるため、近年特に注目が集まっている。
また、「その他の結合機能性物質」としての核酸分子のうち、特殊な機能を持つものとしてGrateらが分子進化工学的手法により創成したマラカイトリーンアプタマーがある(
非特許文献7)。マラカイトグリーンアプタマーは、結合機能性核酸とも呼ばれるアプタマーの一種で、結合ポケットとなる立体構造を形成してマラカイトグリーン(MG)と結合する能力を持ち、マラカイトグリーンがレーザーで励起されたときに放出される活性酸素を利用してマラカイトグリーンアプタマー配列を組み込んだRNAを不活性化して、ターゲット遺伝子の機能解析を転写レベルで行うことのできるRNA−CALI(chromophore-assisted laser inactivation)を行う目的で開発されたものである(非特許文献7
)。マラカイトグリーンアプタマーにはその他の性質として、マラカイトグリーンを結合ポケットに取り込んだ時に、マラカイトグリーンの蛍光を増強することが知られており、マラカイトグリーンアプタマーを改良して、生体内でDNAの構成成分となるなど重要な役割を果たしているアデノシン三リン酸(ATP)や気管支拡張剤のテオフィリンなどを認識することのできるモジュール配列を組み込むことにより、これらの物質を蛍光により検出することのできるセンサーとして使用できることが示されている(非特許文献8)。また、マラカイトグリーンアプタマーの転写に必要な最小限のDNA配列としてT7プロモーター配列とアプタマーの鋳型となる配列の一部を相補鎖として含むT7センスDNAとT7プロモーター配列の相補鎖となる配列及びアプタマーの鋳型となる配列を含むアンチセンスDNAの配列はすでに明らかになっている(非特許文献9)。
RNAを蛍光増強によって検出する方法としては、マラカイトグリーンを用いる方法以外にも、有機電界発光素子として知られるピレンをウリジンの糖環の2’水酸基に導入した2’−O−メチル型RNA(OMUpy)も合成されており、これを用いて2’−O−メチル型RNAと相補的な配列を持ったRNAを検出する方法がすでに明らかになっている(非特許文献10)。
このような方法の他にも例えば当業者に公知の方法によって放射性物質などで標識された基質を取り込むことにより、放射線を測定することでRNAの検出を行うことができる。
また蛍光によらずRNAが転写されたことを検出する方法としては、ビオチン化基質(yTPなど)を導入してターゲットタンパク質との結合機能をもったアプタマーをビオチン化することにより、アビジン化された水晶発振子や表面プラズモン共鳴を利用した相互作用測定装置(例えばBIACORE)のセンサーチップにアビジン−ビオチン結合を利用してアプタマーを効率よく固定し、固定したアプタマーを使ってターゲットタンパク質との結合活性を観察することによってターゲットRNAの存在を検出する方法が知られている(非特許文献11)。
さらに、唾液中のmRNAの転写量の変化に基づいて乳癌と口腔癌を非侵襲的かつ簡便かつ正確に判定できることが報告されており、今後唾液中のmRNAで診断できる疾病の研究も進展するであろうと考えられている(非特許文献6)。非特許文献6では、唾液中のmRNAによる診断を行える対象は乳癌と口腔癌に限定されるわけではなく、唾液中のmRNAパターンが他の癌や頻度の高い病気に関する情報を提供する可能性が示唆されている。唾液は血液の状態を反映しており、唾液検査によって多くの疾患を発見できるであろうと期待されている。難治性疾患の病因遺伝子を対象とした治療、診断研究も進んでおり、最近の脳科学の成果から統合失調症やアルツハイマー病などの精神・神経疾患において脳に特異的に発現している遺伝子の解析が進んでいる。唾液中のRNAパターンによる早期診断、早期治療システムを整えるには、病因遺伝子の変化を唾液中のRNAパターンから診断できる疾患を探索する網羅的な研究が必要になってくる。唾液は、容易かつ大量に採取でき、また特異性と感度が乳癌と口腔癌では血液診断よりも良好であることが確認されている(非特許文献6)。唾液中には約3000種類のmRNAがあり、そのうち健
常者の唾液に固有なものは約280種類と言われている。癌や全身疾患を血液中のRNAパターンから判定するには、残りの約2700種類のmRNAのうち、癌や全身疾患に特異的なmRNAパターンを患者集団よりサンプルを集め、大規模解析により決定する必要がある。現在は、DNAチップを用いて得られたデータを回帰樹モデルやロジスティック回帰モデルを用いて解析が行われているが、疾患の判定に使えるバイオマーカーとしてのmRNAパターンを決定するのは難しい。それは、mRNAの変動には様々な要因が関与しているだけでなく、潜在的に複数の病気を発症している可能性もあるためであり、データからノイズを排除して特定の疾患への罹患及び罹患リスクを判定し、テーラーメイド医療を実現するには安価で簡便で網羅的な解析を行うことのできる感度のよい検査システムの実現が望まれる。
Benenson, Y.; Gil, B.; Ben-Dor, U.; Adar R.; Shapiro, E.; Nature 2004, 429, 423-429. Chen, J.; Deaton, R.; Wang, Y-Z.; LNCS 2004, 2943, 145-156. Holmlund, J. T.; Ann. NY Acad. Sci. 2003, 1002, 244-251. Klasa, R. J.; Gillum, A. M.; Klem, R. E.; Frankel, S. R.; Nucleic Acid Drug Dev. 2002, 12, 193-213. Drolet, DW.; Nelson, J.; Tucker, CE.; Zack, PM.; Nixon, K.; Bolin. R.; Judkins, MB.; Farmer, JA.; Wolf, JL.; Gill, SC.; Bendele, RA.; Pharm Res. 2000, 17(12), 1503-1510. Li Y.; St. John, MAR.; Zhou, Z.; Kim, Y.; Sinha, U.; Jordan, RCK.; Eisele, D.; Abemayor, E.;2 Elashoff, D.; Park N-H.; Wong, DT.; Clinical Cancer Research 2004 10, 8442-8450. Grate, D.; Wilson, C.; Proc. Natl. Acad. Sci. 1999, 96, 6131-6136. Stojanovic, MN.; Kolpashchikov, DM.; J. AM. CHEM. SOC. 2004, 126, 9266-9270. Babendure, J.R.; Adams, SR.; Tsein RY.; J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 14716-14717. Mahara, A.; Iwase, R.; Sakamoto, T.; Yamaoka, T.; Yamana, K.; Murakami, A.; Bioorg. Med. Chem. 2003, 11, 2783-2790. Moriyama,K.; Kimoto, M.; Mistui, T.; Yokoyama, S.; Hirao, I.; Nucleic Acids Res. 2005 33, e129.
本発明は、生体高分子である核酸分子のもつ情報処理機能をはじめとする多彩な機能に着目し、特定の状態(例えば疾患又は障害)に特異的な遺伝子発現パターンを簡便に判定分類及び診断できる手法及び手段を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、プロモーターセンス配列の下流に検出用レポーター分子をコードするセンス配列と20塩基程度のランダム配列を含む核酸プローブ(ランダムDNAプローブ)に、特定のDNA/RNAの配列情報を記憶させ、そしてその配列情報を記憶させたメモリ核酸プローブと、上記プロモーターセンス配列と検出用レポーター分子をコードするセンス配列に対して相補的な配列を有する核酸分子を用いて、試料中に存在する目的のDNA/RNAを検出し、分類することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の1〜4である。
1.以下のステップ:
(a)プロモーターセンス配列及び5〜100000塩基からなるランダム配列を含む核酸プローブとサンプル核酸とを接触させ、該核酸プローブのランダム配列と該サンプル核酸との間で二本鎖を形成させるステップ、
(b)上記核酸プローブの3’末端から、上記核酸プローブとサンプル核酸とが二本鎖を形成している部分まで、上記核酸プローブの一本鎖を分解するステップ、
(c)上記核酸プローブとサンプル核酸とが二本鎖を形成している部分から上記核酸プローブの3’末端側に、サンプル核酸を鋳型としてサンプル核酸の配列に相補的な配列を伸長させるステップ、
(d)上記サンプル核酸を除去し、サンプル核酸の配列に相補的な配列を含む核酸プローブを回収するステップ、
を含む、サンプル核酸の配列情報を有する核酸プローブの作製方法。
上記方法において、核酸は、限定されるものではないが、DNA又はRNAである。具体的には、例えば核酸プローブがDNAであり、サンプル核酸がRNAである。サンプル核酸としては、限定されるものではないが、体液(唾液、血液、尿など)、細胞若しくは組織、又はこれらから採取した核酸を用いることができる。
また上記方法において、プロモーター配列としては、例えばT7プロモーター配列、T3プロモーター配列、SP6プロモーター配列及びこれらの配列を連結したタンデム配列などを用いることができる。
上記方法において、ステップ(b)の一本鎖の分解は、例えばエキソヌクレアーゼIにより行うことができる。またステップ(c)の配列の伸長は、逆転写又は複製により行うことができる。
上記方法において、核酸プローブは、プロモーターセンス配列の下流にさらに検出用レポーター分子をコードするセンス配列を含んでもよい。該検出用レポーター分子は、マラカイトグリーンアプタマーRNA分子などの検出が容易なRNA分子であることが好ましい。
さらに上記方法では、複数のサンプル核酸を用いて、各サンプル核酸の配列情報を有する複数の核酸プローブを作製することができる。また、サンプル核酸として、配列が特定されていないものを用いることができる。
2.以下のステップ:
(a)プロモーターセンス配列及びターゲット核酸の全体又は一部に対し相補的な配列を含む核酸プローブと試料とを接触させ、該核酸プローブと該試料に含まれるターゲット核酸との間で二本鎖を形成させるステップ、
(b)上記核酸プローブの3’末端から上記核酸プローブの一本鎖を分解するステップであって、ここで上記核酸プローブとターゲット核酸とが二本鎖を形成している場合には、二本鎖を形成している部分まで上記核酸プローブを分解するステップ、
(c)プロモーターセンス配列に対し相補的な配列及び検出用レポーター分子をコードするアンチセンス配列を含む検出用アンチセンス核酸を添加し、該プロモーターセンス配列と該相補的配列との間で二本鎖を形成させるステップ、
(d)ポリメラーゼを添加して上記検出用レポーター分子をコードするアンチセンス配列を転写させて検出用レポーター分子を形成させるステップ、
(e)ステップ(d)における転写反応を確認して試料中のターゲット核酸を検出するステップ、
を含む、試料中のターゲット核酸の検出方法。
上記方法において、ステップ(a)において使用する核酸プローブは、例えば前項1に記載の方法により作製されたものである。
上記方法において、試料としては、限定されるものではないが、体液(唾液、血液、尿など)、細胞若しくは組織、又はこれらから採取した核酸を用いることができる。
また、核酸としては、限定されるものではないが、DNA又はRNAを用いることができる。具体的には、例えば核酸プローブがDNAであり、ターゲット核酸がRNAである。
また上記方法において、プロモーター配列としては、例えばT7プロモーター配列、T3プロモーター配列、SP6プロモーター配列及びこれらの配列を連結したタンデム配列などを用いる。その場合、ステップ(c)のポリメラーゼとしては、それぞれプロモーター配列に応じてT7RNAポリメラーゼ、T3RNAポリメラーゼ、又はSP6RNAポリメラーゼを用いることができる。
上記方法において、ステップ(b)の一本鎖の分解は、例えばエキソヌクレアーゼIにより行うことができる。
また、検出用レポーター分子としては、例えば蛍光試薬と結合して蛍光観察が可能になるようなRNAアプタマー分子であるマラカイトグリーンアプタマーRNA分子を用いることができ、その場合、検出用試薬としてはマラカイトグリーンを使用する。
上記方法において、核酸プローブは、プロモーターセンス配列の下流にさらに検出用レポーター分子をコードするセンス配列を含んでいてもよく、それにより、ステップ(c)において該検出用レポーター分子をコードするセンス配列と検出用アンチセンス核酸における検出用レポーター分子をコードするアンチセンス配列との間で二本鎖が形成される。
さらに上記方法においては、ターゲット核酸として配列が特定されていないものを用いることができる。
3.プロモーターセンス配列及び5〜100000塩基からなるランダム配列を含む核酸プローブ又はプロモーターセンス配列及びターゲット核酸の全体若しくは一部に対し相補的な配列を含む核酸プローブを含むことを特徴とするターゲット核酸を検出するためのキット。
上記キットにおいて、ランダム配列は、10〜1000塩基からなるものが好ましい。また核酸分子は、DNA又はRNAであることが好ましい。
上記キットにおいて、核酸プローブのプロモーター配列は、限定されるものではないが、T7プロモーター配列、T3プロモーター配列、SP6プロモーター配列及びこれらの配列が連結したタンデム配列などである。核酸プローブは、プロモーター配列の下流にさらに検出用レポーター分子をコードするセンス配列を含んでもよい。
また上記キットは、プロモーターアンチセンス配列部分が核酸プローブのプロモーターセンス配列と二本鎖を形成し、自身がコードする検出用レポーター分子を転写できるように設計されたプロモーターセンス配列に対し相補的な配列及び検出用レポーター分子をコードするアンチセンス配列を含む核酸をさらに含んでもよい。この検出用レポーター分子をコードするアンチセンス配列は、検出が容易なRNA分子を形成することができること
が好ましく、蛍光試薬であるマラカイトグリーンと結合して蛍光を測定することのできるマラカイトグリーンアプタマーRNA分子を用いることができる。
さらに上記キットは、エキソヌクレアーゼI、プローブ伸長用酵素(逆転写又は複製)、RNAポリメラーゼ、基質及び検出用試薬からなる群より選択される少なくとも1つをさらに含んでもよい。
4.以下のステップ:
(a)前項1に記載の方法を用いて、基準被験体に由来する核酸の配列情報を有するメモリ核酸プローブを作製するステップ、
(b)上記メモリ核酸プローブを、特定の状態又は特徴を示す被験体に由来する核酸と接触させ、上記メモリ核酸プローブが有する配列情報と同じ配列情報を有する核酸と二本鎖を形成させるステップ、
(c)上記メモリ核酸プローブを取り除くことにより、特定の状態又は特徴を示す被験体に固有の核酸群を取得するステップ、
を含む、特定の状態又は特徴を示す被験体に特異的な遺伝子のライブラリの作製方法。
上記方法において、基準被験体としては、例えば健康又は正常な被験体を用いることができる。特定の状態としては、例えば疾患又は障害がある。また、基準被験体に由来する核酸及び特定の状態又は特徴を示す被験体に由来する核酸は、例えばmRNAである。
上記方法においては、さらに(d)上記の特定の状態又は特徴を示す被験体に固有の核酸群より、前項1に記載の方法を用いて、特定の状態又は特徴を示す被験体に固有の配列情報を有するメモリ核酸プローブを作製するステップを行って、特定の状態又は特徴を示す被験体に特異的な遺伝子の配列情報を有するメモリ核酸プローブライブラリを作製することも可能である。
本発明の方法により、核酸分子(核酸プローブ)上に、任意の核酸の配列情報を、その配列が特定されていなくても記憶させることができる。これは、ノイズを含む膨大なデータから効率よく目的の核酸の存在パターンを分類する際に有効である。これにより疾病診断に有効なバイオマーカーの網羅的な探索が容易になり、遺伝子診断による早期発見、早期治療が有効な疾病領域の拡大を可能にする。
また上述のように記憶させた配列情報を利用して、試料中の目的の核酸を簡便にかつ高感度で検出することができる。さらに本発明の方法により網羅的に分類された核酸パターンを基に、多様なメモリ核酸プローブライブラリを用いて、目的の核酸パターンを示す被験体又は被験体集団を容易に診断することができ、診断医療の分野で大きな効果を発揮すると期待される。
本発明においては、配列情報を記憶する機能と発光を誘導する機能を有する核酸分子(ランダム核酸プローブ)に、特定の配列情報を記憶させ(メモリ核酸プローブ)、該メモリ核酸プローブと、これと一部相補鎖を形成して、検出用レポーター分子の転写を可能にする機能を有する核酸分子(検出用アンチセンス核酸)を用いて特定の配列情報を有するターゲット核酸を検出し、又は特定の配列情報を有するターゲット核酸を除去する。本発明のランダム核酸プローブには、配列が特定されていない配列情報を記憶させることができ、また複数の配列情報を同一反応系において複数のランダム核酸プローブに記憶させることができる。
1.ランダム核酸プローブ
本発明において用いる核酸分子の1つはランダム核酸プローブである。このランダム核酸プローブは、配列情報を記憶するための基盤となる核酸分子であり、プロモーターセンス配列及びランダム配列から構成される(図1A)。核酸分子は、後述するターゲット核酸の検出において特に有用な検出用レポーター分子をコードするセンス配列をさらに含んでいてもよい(図1A)。これは必須の構成要素ではないが、後述する検出用レポーター分子の転写反応を安定化することが期待される。
ランダム核酸プローブは、これらの配列が配列情報記憶機能と転写反応を利用した検出機能を発揮できるようにこれらの配列を含む限り、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド核酸、ペプチド核酸(PNA)などのいずれであってもよい。好ましくは、ランダム核酸プローブはDNAである。
プロモーター配列は、ポリメラーゼによる転写を開始することができる配列であり、具体的な配列は当業者に公知である。例えば限定されるものではないが、RNAポリメラーゼによる転写を開始することができる配列(例:T7プロモーター配列(配列番号1)、T3プロモーター配列(配列番号10)、SP6プロモーター配列(配列番号11))、及びこれらの配列を連結したタンデム配列が挙げられる。好ましくは、T7RNAポリメラーゼの存在下でDNAからRNAへの転写を開始することができるT7プロモーター配列(配列番号1)をカスタマイズした配列番号16を使用する。
ランダム配列は、5〜100000塩基前後のランダムな一本鎖の核酸配列であれば任意の配列とすることができる。ランダム配列は、後述するように、サンプル核酸とアニーリングさせていくつかの処理を行うことにより、サンプル核酸の配列情報を記憶するものである。ここで非特許文献9によれば、ランダム配列部分は20塩基で約5Mbpの大腸菌のゲノムの配列情報を記憶し、記憶した配列情報に基づく読み出しを行うことができることが確認されている。したがって、ランダム配列は、5〜100000塩基、好ましくは10〜1000塩基、より好ましくは10〜100塩基程度の長さである。ランダム配列は、当業者であれば公知の方法を用いて容易に作製することができる。例えばDNA合成装置を用いて、保護基のついたヌクレオチドを基質として脱保護されたヌクレオチドに付加させる。保護基がついていることによりその後にさらにヌクレオチドが付加しないようになっており、1塩基付加→脱保護処理を繰り返して目的の配列を合成する。付加する塩基をランダムに決定することにより容易にランダム配列を合成することができる。
後述するメモリDNAプローブの作製において、サンプルRNA約10pmolを用いて、100塩基以上の長さを持つ精製メモリDNAプローブ1pmolを得るのに使用したランダムDNAプローブの量は約100pmolであった。ここでは、ランダムDNAプローブはサンプルRNAに対して大過剰に使用している。ランダムDNAプローブは一本一本が異なるランダム配列を持っているので、RNAと反応するランダムDNAプローブの多様性を確保するためである。ランダム配列作製に当たっては、多様なターゲット核酸の配列情報を記憶できるように偏りのないランダムな配列になるよう留意すべきである。また読み出し時の注意としては、精製したメモリ核酸プローブはターゲット核酸と1:1で反応すると考えられるので、メモリ核酸プローブは、ターゲット核酸量より多く投入する必要はないはずであるが、ターゲット核酸の濃度が低い場合には反応確率が下がるので過剰量のメモリ核酸プローブの投入を行うことにより、反応時間を短縮し、反応効率を上げることができると期待される。
任意によりランダム核酸プローブに含まれる検出用レポーター分子をコードするセンス配列は、後述する反応において、検出用アンチセンス核酸に含まれる検出用レポーター分子をコードするアンチセンス配列と二本鎖を形成しうるように設計する。そして、検出用
レポーター分子をコードするセンス配列がメモリ核酸プローブに含まれるか否かにかかわらず、プロモーター配列部分が二本鎖を形成していれば、RNAポリメラーゼにより検出用レポーター分子をコードするアンチセンス配列が転写されて検出用レポーター分子となる。従って、転写反応を検出することにより、プロモーター配列部分が二本鎖を形成したことがわかり、センス側の核酸プローブのプロモーター配列部分が検出用アンチセンス核酸と結合できる状態で反応液中に存在していることが確認できる。
検出用レポーター分子をコードする配列としては、当業者に公知の任意の配列を用いることができる。例えば、有機色素であるマラカイトグリーンと結合してマラカイトグリーンの蛍光を増幅する機能を有するマラカイトグリーンアプタマー分子、あるいはこれを機能改良したアデノシン三リン酸(ATP)アプタマー分子、フラビンモノヌクレオチド(FMN)アプタマー分子、スルホローダミンBの蛍光を増幅する機能を有するスルホローダミンBアプタマー分子、タンパク質などの物質との結合活性を有するアプタマーに、ビオチン化された基質(yTP)(非特許文献11)を取り込ませ、水晶発振子や表面プラズモン共鳴を利用したタンパク質相互作用測定装置(例えばBIACORE)のアビジンセンサーチップにアビジン−ビオチン結合を利用して、アプタマーを固定して、該タンパク質とアプタマーとの結合活性を測定することにより転写の有無を判断することができるビオチン化アプタマー分子、有機電界発光素子ピレンを導入した2’−O−メチル型RNAと結合して蛍光観察が可能になるRNA分子などをコードする配列が挙げられる。また転写と同時に蛍光を発するなどにより転写反応が起きたことを観察できる機能性RNA分子が開発されれば、それを用いることができる。このような方法の他にも例えば当業者に公知の方法によって放射性物質などで標識された基質を取り込むことにより、放射線を測定することでRNAの検出を行うことができる。
好ましくは、検出用レポーター分子をコードする配列としては、検出手順が簡便であることから、転写された配列がマラカイトグリーンアプタマーRNA(配列番号3、5等)を形成することができるDNA配列を使用する。マラカイトグリーンアプタマーRNA分子をコードするDNA配列としては、限定されるものではないが、配列番号2、4等(センス配列)が挙げられる(非特許文献7〜9)。また、スルホローダミンBアプタマーRNA分子(配列番号7)をコードするDNA配列(配列番号6)(センス配列)を使用することも可能である。また、例えばRaf−1タンパク質と結合することのできるビオチン化アプタマー分子(配列番号17)(非特許文献11)を形成できるDNA配列(配列番号18)(センス配列)(非特許文献11)を使用することも可能である。さらに、RNAを特異的に検出する蛍光核酸プローブである2’−O−メチルRNAのようなRNA検出試薬を用いることができる。この場合には、2’−O−メチルRNAと反応するRNAを転写することができる配列(配列番号12)(非特許文献10)などの配列(センス配列)を使用することが可能である。本発明においては、マラカイトグリーンアプタマーRNA分子をコードするDNA配列(配列番号2)(センス配列)を用いることが好ましい。
本発明のランダム核酸プローブは、5’から3’に向かって、プロモーターセンス配列及びランダム配列の順で含む。検出用レポーター分子をコードするセンス配列は、プロモーターセンス配列の下流に、すなわちプロモーターセンス配列とランダム配列との間に含まれる。これらの配列は直接連結していてもよいし、適当なリンカーを介して連結していてもよい。
プロモーターセンス配列の最後(3’側)の3塩基は、安定な転写反応を行うために、検出用レポーター分子をコードするセンス配列の最初(5’側)の3塩基と重なるように設計することが好ましい。これは、ランダム核酸プローブが検出用レポーター分子をコードするセンス配列を含まない場合であっても、後述する反応において、検出用アンチセンス核酸と二本鎖を形成し、安定な転写反応を行うために用いる。例えば、実施例1におい
て作製しているランダム核酸プローブにおけるT7プロモーターセンス配列の最後尾のGで始まる3塩基(GGA)は、後述する検出用アンチセンス核酸との二本鎖形成後に転写されてRNAとなる部分である。この3塩基を含めた配列が、検出用アンチセンス核酸と二本鎖を形成し、RNAポリメラーゼによりG以降の配列の転写を開始するために重要であり、この3塩基は転写されて検出用レポーター分子の一部となる。ここで用いられる安定な転写反応を行うためにプロモーター配列の最後に加えられる塩基配列は、検出用レポーター分子の機能に影響を及ぼさない配列であればよく、実施例1で実際に作製しているG以降の塩基は、プロモーター配列の最初からGを含めて3塩基以上まで二本鎖を形成するようにセンス鎖、アンチセンス鎖が設計されており、好ましくは少なくとも3塩基が二本鎖を形成できればそれ以降は一本鎖でも安定な転写を行えることから、その塩基数及び塩基種は限定されるものではない。
また、本発明のランダム核酸プローブは、検出用レポーター分子をコードするセンス配列の部分に、後述する反応において転写された分子内で相補鎖を形成して転写終了時に転写されたRNA分子が核酸プローブから離れやすくするために転写開始部分と転写終了部分が相補配列になるような配列を組み込んでもよいし(例えば、ここではマラカイトグリーンアプタマーの転写された最初の3塩基はGGAで最後の3塩基はUCCであるがこの部分が相補鎖となっており、転写後、それぞれG−C、G−C、A−Uとアニールすることにより、鋳型から離れやすくなる。本目的で組み込まれる配列は、相補鎖を形成し、アプタマーの機能を阻害しないものならどのような組み合わせでもよい)、蛍光強度を増幅するためのコミュニケーションモジュール(セカンドモジュールとの連結部分であり、ファーストモジュールとセカンドモジュールが結合ポケットを作るのを妨げないように配慮されたつなぎの配列。ファーストモジュールとセカンドモジュールに応じて設計される。)に連結するセカンドモジュール(例えばマラカイトグリーンアプタマーの場合は、テオフィリン若しくはATP又はフラビンモノヌクレオチド(FMN)などに対する結合ポケットとなるモジュールをコミュニケーションモジュールを介して接続することにより蛍光強度が増幅されることが知られている)に相当する配列を組み込んでもよいし(配列番号13〜15)(非特許文献8)、あるいは検出用レポーター分子をコードするセンス配列とランダム配列の間に分子間及び分子内で好ましくない二次構造を形成するのを防ぐための配列を組み込んでもよい。
さらに、実施例1において作製したランダム核酸プローブのプロモーターセンス配列の先頭(5’側)には、T7プロモーターが機能するのに必要なミニマム配列として知られている配列の直前に4塩基の配列「AGCT」が含まれている。この配列は、T7プロモーター結合部位のすぐ上流への数塩基の付加がT7RNAポリメラーゼによる転写開始を助け、転写量が改善されると一般に報告されていることから、付加された配列である。この数塩基の配列は特に限定されるものではない。ランダム核酸プローブのプロモーター配列としてT7プロモーター配列を選択した場合には、T7プロモーターの機能を促進するため、このような任意の数塩基を付加することが好ましい。付加することができる塩基は、T7プロモーターの機能を促進することができるものであれば特に限定されるものではなく、1〜5塩基程度で、塩基数及び塩基種は限定されるものではない。
2.メモリ核酸プローブ
本発明において用いる別の核酸分子はメモリ核酸プローブであり、これは、特定の配列情報が記憶された核酸分子である。メモリ核酸プローブは、プロモーターセンス配列及び配列情報が記憶された配列(メモリ部分)から構成され、例えば図1Aに示すように作製することができる。また、メモリ核酸プローブは、後述するターゲット核酸の検出において特に有用な検出用レポーター分子をコードするセンス配列を含んでいてもよい(図1A)。これは必須の構成要素ではないが、後述する検出用レポーター分子の転写反応を安定化することが期待される。
まず、ランダム核酸プローブと、記憶させようとする配列情報を有するサンプル核酸とを接触させる(図1Aのa及びb)。サンプル核酸は、配列情報を記憶することができる限り、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド核酸、ペプチド核酸(PNA)などのいずれであってもよい。また、サンプル核酸を鋳型とした伸長反応を行うことで、使用するサンプル核酸の配列は、特定されているものだけでなく、特定されていないものも用いることができる。
反応条件は、ランダム核酸プローブにおけるランダム配列とサンプル核酸とが、その相補性に基づいて二本鎖を形成することが可能な条件であり、そのような条件は当業者には公知である。但し、ランダム配列とサンプル核酸の配列が完全な相補性に基づいて二本鎖を形成する必要はなく、以降の3’→5’エキソヌクレアーゼによる切断、逆転写又は複製による伸長の際に離れない程度の親和力があればよく、部分的な相補性に基づいて二本鎖を形成してもよい。例えば、1塩基でも二本鎖を形成していれば、サンプル核酸を鋳型としたプローブ伸長反応を行うことができる。サンプル核酸がRNAの場合は反応液のセットアップに際しては、RNAの分解及び連続する反応で不完全なメモリ核酸プローブの合成を避けるためにすべて氷上で行うという条件が好ましい。またこのとき、特別にRNAの変性及びアニーリングを行う必要はないが、複雑な二次構造を有するRNAの場合には、変性ステップを必要とする場合もあり、その際は、ヌクレアーゼ不含水に溶解したRNAを65℃〜70℃で5分〜10分インキュベーション後すぐに氷上に反応チューブをおくという操作を行うことが好ましい。より好ましくは70℃で10分のインキュベーションを行う。RNAの変性は逆転写溶液中では行わないことが好ましい。さらに、ランダム核酸プローブは100塩基以上になるので、サンプル核酸と接触させる前に、94℃で30秒インキュベーションののち、氷上で急冷という、変性操作を行って分子内の高次構造の形成を壊しておく操作を必要に応じて行う。ランダム核酸プローブのエキソヌクレアーゼ反応中の濃度は、例えば50〜150mg/L、好ましくは約100mg/L、逆転
写反応液中の最終濃度は2〜3mg/Lとなるように、試料を調製する。
続いて、ランダム核酸プローブの3’末端から二本鎖を形成していない核酸を分解する(図1Aのc)。このときランダム核酸プローブの3’末端側配列がサンプル核酸と二本鎖形成している部分まで分解される。この分解は、3’から5’の方向に一本鎖の核酸配列を分解することができれば、その分解方法は特に限定されるものではない。例えば、一本鎖DNAの3’−OH末端から5’方向へ3’,5’−ホスホジエステル結合を順次分解する活性を有する3’→5’エキソヌクレアーゼIを使用することができる。3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有する酵素としては、エキソヌクレアーゼI、KOD DN
Aポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼなどが挙げられる。本発明においては、好ま
しくはエキソヌクレアーゼIを使用する。エキソヌクレアーゼIの一本鎖DNAに対する特異性は高く、二本鎖DNA及びRNAは分解しない。なお、エキソヌクレアーゼIは、80℃、15分間の熱処理によって失活するため、反応停止のためにさらなる化学的処理を必要としない。
次に、ランダム核酸プローブの3’末端から、サンプル核酸を鋳型としてプローブを伸長する(図1Aのd)。例えばランダム核酸プローブがDNAであり、サンプル核酸がRNAの場合には、逆転写酵素を用いて、ランダムDNAプローブとサンプルRNAとが二本鎖を形成している部分からサンプルRNAの5’末端側の一本鎖を鋳型として、DNAプローブを伸長してサンプルRNAに相補的な配列を合成する(逆転写)。このとき用いられる逆転写酵素は逆転写を行えるものであれば限定されるものではない。またランダム核酸プローブがDNAであり、サンプル核酸がDNAの場合は、DNA複製酵素(DNAポリメラーゼ)を用いて、ランダムDNAプローブとサンプルDNAとが二本鎖を形成している部分からサンプルDNAの5’末端側の一本鎖を鋳型として、DNAプローブを伸
長してサンプルDNAに相補的な配列を合成する(複製)。一方、例えばランダム核酸プローブがRNAであり、サンプル核酸がDNAの場合には、酵素による伸長が難しいのでサンプル核酸の配列を決定して核酸合成装置を用いた合成により、メモリ部分を有するランダムプローブを作製することが好ましい。このようにして新たに合成された配列は、サンプル核酸の配列情報が記憶されたメモリ部分を有することになる(図1A)。
本発明においては、上述のように配列情報が記憶された核酸プローブを、「メモリ核酸プローブ」という。メモリ核酸プローブを回収するため、メモリ核酸プローブと二本鎖を形成して結合しているサンプル核酸を除去する(図1Aのe)。メモリ核酸プローブがDNAであり、サンプル核酸がRNAの場合には、DNA−RNAハイブリッドを認識してRNAを分解する酵素を用いて、サンプルRNAを除去し、メモリDNAプローブを回収する。そのようなRNAを特異的に認識して分解する酵素としては、特に限定されるものではないが、例えばE.coliリボヌクレアーゼH、TthリボヌクレアーゼHが挙げられる。失活操作が容易なことから、好ましくはE.coliリボヌクレアーゼHが用いられる。また、メモリ核酸プローブがDNAであり、サンプル核酸がDNAである場合には、DNA二本鎖を分離することができる方法であれば任意の方法を用いることができる。具体的には、例えば、あらかじめランダムDNAプローブをビオチン化しておき、該メモリを形成したランダムDNAプローブがサンプルDNAと形成している二本鎖を一本鎖に変性させてサンプルDNAを切り離した後、アビジンビーズなどを用いてメモリDNAプローブのみを容易に回収することができる。またメモリ核酸プローブがRNAであり、サンプル核酸がDNAである場合にも同様に、ランダム核酸プローブをビオチン化しておき、該メモリを形成したRNAプローブがサンプルRNAと形成している二本鎖を一本鎖に変性させてサンプルRNAを切り離した後、アビジンビーズなどを用いてメモリRNAプローブのみを回収するなどの方法によりメモリ核酸プローブを容易に取得することができる。
また、メモリ核酸プローブは、既知の配列情報を記憶させたメモリ部分を含むものとして、プロモーターセンス配列及びメモリ部分を含む核酸分子、あるいは任意によりさらに検出用レポーター分子をコードするセンス配列を含む核酸分子を、当技術分野で公知の任意の方法により合成することにより作製してもよい。
本発明においては、複数のサンプル核酸を用いて、その複数の配列情報を同一反応系においてメモリ核酸プローブに記憶させることができる。サンプル核酸は、複数種のサンプルDNA又はサンプルRNAでもよいし、サンプルDNAとサンプルRNAとの組み合わせでもよい。また、サンプル核酸の配列情報は、合成によらずランダム配列を利用してメモリを作製する場合には、サンプル核酸の全て若しくは一部について特定されているものであってもよいし、又は特定されていないものであってもよい。
例えば、基準となる被験体や特定の状態又は特徴を示す被験体からゲノムDNA又はmRNAを採取し、そのゲノムDNA又はmRNAをサンプル核酸として用いて、ランダム核酸プローブに配列情報を記憶させ、基準となる被験体の配列情報が記憶されたメモリ核酸プローブライブラリ、又は特定の状態若しくは特徴を示す被験体の配列情報が記憶されたメモリ核酸プローブライブラリを作製することができる(図2のa及びc)。ここで、基準となる被験体とは、特定の状態又は特徴を示さない被験体であり、例えば健常又は正常な被験体を用いることができる。
また、上記ライブラリ作製の際には、メモリ核酸プローブを、特定の核酸(DNA/RNA)の除去に用いることもできる。例えば特定のDNAを除去する場合には、メモリDNA核酸プローブにビオチン修飾を行い、アビジンビーズで回収するなどの手法により、特定のDNAと特異的に結合したメモリ核酸プローブを複合体として除去することが可能
である。特定のRNAを除去する場合には、特定のRNAが結合したメモリDNAプローブの回収による除去の他に、メモリDNAプローブに特異的に結合したRNAのみを分解する酵素(例えばE.coliリボヌクレアーゼH、TthリボヌクレアーゼH等)を用いてRNAを選択的に除去することもできる。
メモリ核酸プローブの上記の選択排除機能を利用することによって、例えば特定の状態又は特徴に特異的な遺伝子(例えば癌マーカー遺伝子)のライブラリ作製を効率的に行うことができる。例えば、癌患者の唾液中のmRNAに、健常者のmRNAの配列情報を記憶させたメモリ核酸プローブライブラリを投入して、癌患者のmRNAと健常者が有するmRNAの配列情報を有するメモリ核酸プローブとをハイブリダイゼーションさせたのち、分解酵素を用いてメモリ核酸プローブとハイブリダイゼーションしているmRNAを分解すると、健常者と同じ配列を有するmRNAを選択的に排除することができる(図2のb)。すなわち、癌患者に特異的なmRNAを収集することができる。このようにして収集した癌患者に特異的なmRNAをサンプル核酸として用いることによって、癌患者に特異的な配列情報が記憶されたメモリ核酸プローブライブラリを作製することができる(図2のc)。さらに、癌患者に特異的な配列情報が記憶されたメモリ核酸プローブライブラリの配列を決定することによって、癌に特異的な遺伝子の配列情報を明らかにすることも可能である。本発明の方法は、ランダム核酸プローブのランダム配列部分におけるハイブリダイゼーションを利用することにより、ターゲットとする核酸配列が未知の場合でもメモリ核酸プローブを作製してライブラリを作ることが可能で、またサンプル核酸から、あらかじめ配列を決定することなく不要なノイズとなる配列を排除することが可能であり(つまり癌患者のmRNAから健常者のmRNAを除去するなど)、それゆえ解析の効率を上げ、大規模解析により疾病の診断に使用可能な新規バイオマーカーの網羅的な探索を行う際に有効である。特定の病気で異常発現を示す遺伝子群を探索する際にも、解析の妨げとなるノイズを除去することにより、回帰樹モデルやロジスティック回帰モデルなどによる解析を容易にし、大量のサンプルから有意な特異性をもつ診断に有効な未知の遺伝子を簡便に分類することが可能であり、遺伝子決定のプロセスの効率をあげることができる。
3.メモリ核酸プローブを用いたターゲット核酸の検出
本発明においては、メモリ核酸プローブと試料とを接触させると(図1Bのf)、試料中にメモリ核酸プローブに記憶された配列情報と相補的な配列を有するターゲット核酸(すなわち、配列情報の記憶に用いたサンプル核酸の全体又は一部と同じ配列を有する核酸)が含まれる場合には、そのターゲット核酸とメモリ核酸プローブとの間で反応が起こり、その反応を検出することにより、ターゲット核酸を試料中で検出することができる。
メモリ核酸プローブと反応させる試料は、配列情報を有する核酸(ゲノムDNA、cDNA、mRNA、総RNAなど)を含むものであれば特に限定されるものではない。例えば、被験体に由来する体液(唾液、血液、尿など)、細胞、組織とすることができる。好ましくは、これらの供与源から核酸成分を精製及び/又は増幅して、試料として用いる。また、試料は、天然に由来するものであってもよいし(被験体から調製された試料、ゲノムDNA、mRNAなど)、又は合成されたサンプル(例えばDNAライブラリ、ゲノムライブラリなど)であってもよい。試料中に含まれる核酸は、1種類でもよいし、複数種であってもよい。
試料中にメモリ核酸プローブに記憶された配列情報と相補的な配列を有するターゲット核酸が存在する場合には、メモリ核酸プローブのメモリ部分とターゲット核酸の全体又は一部とが結合(DNA−DNAハイブリッド又はDNA−RNAハイブリッド形成)する(図1Bのg)。ここで、メモリ核酸プローブを作製したときと同様に、メモリ核酸プローブとターゲット核酸とが二本鎖を形成している部分まで3’末端から核酸を分解する活性を有する酵素、例えばエキソヌクレアーゼIを用いて、二本鎖を形成していないメモリ
核酸プローブをすべて分解する。ターゲット核酸とハイブリダイズしていないメモリ核酸プローブは、ほとんどの場合、分解される(分子間又は分子内で相補鎖を形成した場合は、一部は分解されずに残る)。従って、試料中にターゲット核酸が存在する場合には、メモリ核酸プローブは分解されずに残り(図1Bのh)、ターゲット核酸が存在しない場合には、メモリ核酸プローブはほぼ全てが分解されることになる。
続いて、プロモーターアンチセンス配列及び検出用レポーター分子をコードするアンチセンス配列を含む検出用アンチセンス核酸を投入する(図1Bのi)。本発明において用いる検出用アンチセンス核酸は、転写反応に基づいて試料中のターゲット核酸を検出するために必要な核酸分子であり、ランダム核酸プローブ又はメモリ核酸プローブのプロモーター配列に対して相補的な配列と、検出用レポーター分子をコードするアンチセンス配列から構成される。検出用アンチセンス核酸は、ランダム核酸プローブ又はメモリ核酸プローブが検出用レポーター分子をコードするセンス配列を含む場合であっても又は含まない場合であっても、検出用レポーター分子をコードするアンチセンス配列を含む必要がある。これは、後述する蛍光の検出において転写される検出用レポーター分子の鋳型となるのが、ランダム核酸プローブ又はメモリ核酸プローブにおける検出用レポーター分子をコードするセンス配列ではなく、ここで投入する検出用アンチセンス核酸における検出用レポーター分子をコードするアンチセンス配列であるためである。
検出用アンチセンス核酸は、試料中にターゲット核酸が存在していることにより起きる反応を検出する機能を発揮できるようにこれらの配列を含む限り、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド核酸、ペプチド核酸(PNA)などのいずれであってもよい。好ましくは、検出用アンチセンス核酸はDNAである。
検出用アンチセンス核酸におけるプロモーターアンチセンス配列は、ポリメラーゼによる転写を開始することができる配列であり、上述のランダム核酸プローブ又はメモリ核酸プローブにおいて使用したプロモーターセンス配列に対して相補的なものであれば特に限定されるものではない。
また、RNAポリメラーゼにより、検出用レポーター分子をコードするアンチセンス配列を鋳型として転写反応が起きることによって、検出用レポーター分子が形成されるため、検出用レポーター分子を検出することにより転写反応を観察する。後述するように、転写反応が観察された場合には、メモリ核酸プローブがターゲット核酸を認識して二本鎖を形成することにより、エキソヌクレアーゼによる切断を免れ、あるいはターゲット核酸によって、転写反応を妨げるプロモーター配列部分との分子間あるいは分子内高次構造の形成が阻害されてプロモーター配列が二本鎖を形成できる状態にあることになどにより、メモリ核酸プローブと検出用アンチセンス核酸の間でプロモーター部分の二本鎖が形成されていることを示す。もしターゲット核酸がないことによりすべてエキソヌクレアーゼにより切断されて、メモリ核酸プローブが存在しなければ、検出用アンチセンス核酸に対応するセンス配列が存在しないし、若しくはターゲット核酸がないことにより、メモリ配列部分がプロモーター配列部分と分子間又は分子内で非特異的な高次構造を形成してプロモーター配列部分が検出用アンチセンス核酸と二本鎖を形成することを阻害している場合には、ポリメラーゼが転写すべき核酸配列を認識することができないため、転写反応は起こらない。プロモーター配列がセンス配列とアンチセンス配列の間で二本鎖を形成していれば、ポリメラーゼによる転写が起こり、アンチセンス核酸の検出用レポーター分子をコードするアンチセンス配列が転写され、検出操作を行うことで、メモリ核酸プローブが記憶している配列情報を有するターゲット核酸分子が存在していることが示される。
検出用レポーター分子をコードするアンチセンス配列としては、当業者に公知の任意の配列を用いることができる。例えば、有機色素であるマラカイトグリーンと結合してマラ
カイトグリーンの蛍光を増幅する機能を有するマラカイトグリーンアプタマー分子、あるいはこれを機能改良したアデノシン三リン酸(ATP)アプタマー分子、フラビンモノヌクレオチド(FMN)アプタマー分子、スルホローダミンBの蛍光を増幅する機能を有するスルホローダミンBアプタマー分子、タンパク質などの物質との結合活性を有するアプタマーに、ビオチン化された基質(yTP)(非特許文献11)を取り込ませ、水晶発振子や表面プラズモン共鳴を利用したタンパク質相互作用測定装置(例えばBIACORE)のアビジンセンサーチップにアビジン−ビオチン結合を利用して、アプタマーを固定して、該タンパク質とアプタマーとの結合活性を測定することにより転写の有無を判断することができるビオチン化アプタマー分子、有機電界発光素子ピレンを導入した2’−O−メチル型RNAと結合して蛍光を増幅させるRNA分子をコードする配列が挙げられる。
好ましくは、検出用レポーター分子をコードするアンチセンス配列としては、転写された配列がマラカイトグリーンアプタマーRNA(配列番号3、5等)を形成することができるDNAをコードする配列のアンチセンス配列を使用する。マラカイトグリーンアプタマーRNA分子をコードするDNA配列としては、限定されるものではないが、配列番号2、4等に対するアンチセンス配列が挙げられる(非特許文献7〜9)。また、スルホローダミンBアプタマーRNA分子(配列番号7)をコードするDNA配列(配列番号6)のアンチセンス配列を使用することも可能である。さらに、RNAを特異的に検出する蛍光核酸プローブである2’−O−メチルRNAのようなRNA検出試薬を用いることができる。RNA検出試薬をRNAの検出に用いる場合には、2’−O−メチルRNAと反応するRNAを転写することができる配列(配列番号12)(非特許文献10)などのアンチセンス配列を使用することも可能である。また、例えばRaf−1タンパク質と結合することのできるビオチン化アプタマー分子(配列番号17)(非特許文献11)を形成できるDNA配列(配列番号18)(非特許文献11)のアンチセンス配列を使用すること
も可能である。本発明においては、マラカイトグリーンアプタマーRNA分子をコードするDNA配列(配列番号2)のアンチセンス配列を用いることが好ましい。
ランダム核酸プローブ又はメモリ核酸プローブに検出用レポーター分子をコードするセンス配列が含まれる場合には、検出用レポーター分子をコードするアンチセンス配列は、検出用レポーター分子をコードするセンス配列に対して相補的となるように適切な配列を選択する。
検出用アンチセンス核酸は、5’から3’に向かって、検出用レポーター分子をコードするアンチセンス配列、及びプロモーターセンス配列に対し相補的な配列の順で含む。これらの配列は直接連結していてもよいし、適当なリンカーを介して連結していてもよい。また、使用するランダム核酸プローブ又はメモリ核酸プローブがプロモーターセンス配列部の前、あるいはプロモーター配列部とランダム配列部又はメモリ配列部の間にさらに追加の配列(塩基)を含む場合には、その追加の配列に対して相補的となるように、検出用アンチセンス核酸に適宜配列又は塩基を追加することが好ましい。
検出用アンチセンス核酸は、上記の構成要素を含むように当業者であれば容易に設計することができる。例えば、ランダム核酸プローブ又はメモリ核酸プローブにおいて配列番号16に示されるT7プロモーターセンス配列と配列番号2に示される検出用レポーター分子をコードするセンス配列を用いた場合には、検出用アンチセンス核酸として配列番号9に示される配列を用いることができる。
上述の分解反応(図1Bのh)においてメモリ核酸プローブが分解されずに残っている場合には(あるいはターゲット核酸の存在によりメモリ核酸プローブのプロモーター配列部分が高次構造を形成せずにフリーとなっている場合には)、検出用アンチセンス核酸がメモリ核酸プローブのプロモーターセンス配列とハイブリダイズし、二本鎖を形成する(
図1Bのj)ことにより、RNAポリメラーゼによる認識が可能となり、RNAポリメラーゼによって検出用レポーター分子をコードするアンチセンス配列を鋳型として転写反応が起きることになる(図1Bのk)。
そこで、二本鎖のプロモーター配列を認識して転写開始するポリメラーゼ(RNAポリメラーゼ)を投入し、検出用レポーター分子をコードする配列を転写させて、検出用レポーター分子を形成させる(図1Cのk)。使用するポリメラーゼは特に限定されるものではなく、プロモーター配列に応じて適宜選択することができる。例えば、T7RNAポリメラーゼ、T3RNAポリメラーゼ又はSP6RNAポリメラーゼなどを用いることができるし、タンデムプロモーターを用いた場合はこれらのポリメラーゼのうち任意の一つを用いることができる。上記ステップにおいてT7プロモーターアンチセンス配列を含む検出用アンチセンス核酸を投入して二本鎖を形成させている場合には、二本鎖を形成しているT7プロモーター配列を認識して転写反応を行うT7RNAポリメラーゼ(Ambionなどより入手可)を用いることが好ましい。
次に形成された検出用レポーター分子の特性に基づいてレポーター分子の存在を観察する。図1Cのl及びmには、検出用試薬(発光を誘起する又は増幅する物質)であるマラカイトグリーンと結合することにより蛍光が観察可能になるマラカイトグリーンアプタマーの例を示してある。レポーター分子の観察方法は、検出用レポーター分子の種類に応じて異なり、例えばマラカイトグリーンアプタマーの場合はマラカイトグリーンを投入し、スルホローダミンBアプタマーの場合はスルホローダミンB、OMUpyアプタマーの場合は有機電界発光素子ピレンを導入した2’−O−メチル型RNAなどである。蛍光を観察する場合は、蛍光検出用試薬の種類に適した波長で蛍光を励起し、例えば蛍光顕微鏡を用いて行うことができる。転写されることにより自ら蛍光を発するような分子は現在開発されていないがそのような分子が開発されればそのような分子も検出用レポーター分子として用いることができる。
この検出用レポーター分子の転写反応の確認は、蛍光観察によるものでなくてもよい。例えば、タンパク質などとの結合特性を持つアプタマーにビオチン化された基質を取り込ませたビオチン化アプタマー分子は、水晶発振子や表面プラズモン共鳴を利用した相互作用測定装置(例えばBIACORE)のアビジンセンサーチップにアビジン−ビオチン結合を用いて固定することによりアプタマーとタンパク質などとの結合活性を測定することにより転写反応を定量的、定性的に判定することができる。
検出用レポーター分子が転写されていることが確認された場合には、試料中にターゲット核酸が含まれていたと判定することができる。本発明において「検出」とは、単にターゲット核酸の存在を判定することのみならず、ターゲット核酸を定量することも意味する。ターゲット核酸の量は、例えばコントロールとの蛍光強度の比較によって行うことができる。
本発明の方法を用いて、被験体の病気の罹患の有無又は罹患リスクを判断し又は予測することが可能となる。この判断は、例えば、上述のように健常又は正常な被験体の配列情報が記憶されたメモリ核酸プローブライブラリ、及び特定の病気に罹患した被験体の配列情報が記憶されたメモリ核酸プローブライブラリ(図2)を用いて、被験体の試料における病気に特異的な核酸の存在の有無を検出することによって行う(図3A及びB)。メモリ核酸プローブは、当技術分野で公知の技法により、マイクロアレイ又はマイクロチップ上に固定することが好ましい(図3A)。被験体の試料としては、限定されるものではないが、唾液、血液、尿などの体液や、細胞、組織などの他、これらより精製された核酸などを用いることができる。特に、採取の簡便性の点から、試料として唾液又は唾液より精製された核酸を用いることが好ましい。唾液中には約3000種のmRNAが存在し、そ
のうち健常者に特異的なmRNAは約280種であることが知られている。また、口腔癌患者の唾液中に含まれる1679の遺伝子が健常者のものと異なる発現性を示し、特に7種のmRNAが癌患者において約3.5倍増大していることも報告されており、唾液中のmRNAをバイオマーカーとした疾病の判定はこの2つの疾病の診断においては既に実用化が進められている。
上記の本発明の方法は、キットを利用することでより簡便に行うことができる。そのようなキットは、ランダム核酸プローブ又はメモリ核酸プローブ(核酸分子)、及び検出用アンチセンス核酸と、反応に必要な酵素及び試薬、例えばエキソヌクレアーゼI、逆転写酵素、ポリメラーゼ、基質及び必要な検出用試薬を含む。キットは、さらにリボヌクレアーゼH、バッファーなどを含んでもよい。
また本発明の方法を利用して、DNA/RNAを分類することができる。分類は、例えば同じ又は類似するRNA発現パターンを示すサンプル群を、そのパターンに基づいて整理するなどの目的をもって行われる。具体的には、同じ又は類似するRNA発現パターンを示すサンプル群を分類する方法は次のように行うことができる。
ある特定のRNA発現パターンを示すサンプル群より、その発現RNAを記憶させたメモリ核酸プローブライブラリを作製し、cDNAアレイを用いてメモリ核酸プローブがどの遺伝子と反応するかを網羅的に調べ、その反応したメモリ核酸プローブのみを含む専用cDNAアレイを作製する。次いで、発現パターン未解析のサンプルを複数用意し、作製した専用cDNAアレイを用いてこれらを解析する。すべての又は大部分の反応において発光が生じた場合には、同じ又は類似する発現パターンをもったサンプルであるといえる。メモリ核酸プローブのDNAアレイ上の反応は、ARESTM DNA標識キット(インビトロジェン)のような標識を使用して検体であるメモリ核酸プローブを標識して観察することができる。あるいは、検出用レポーター分子が蛍光による観察機能を有する場合には、このような標識を行うことなく、検出用アンチセンス核酸とT7ポリメラーゼ、検出用試薬など必要な試薬を投入することにより、簡便かつ容易に反応を観察できる。また、サンプルRNAのアレイ上での観察のためのRNAの標識はULYSIS(登録商標)直接ラベリングキット(インビトロジェン)などで当業者に知られた公知の方法を利用しても容易に行うことができる。アレイ自身に本発明の検出用レポーター分子がマラカイトグリーンアプタマーのような蛍光による観察機能を有するメモリ核酸プローブ及び検出用キットを用いた場合はこのような標識を行う必要がなく、メモリ核酸プローブの蛍光検出機能を利用することができる。
また、上述のように本発明の方法を用いて作製したライブラリを用いて、サンプル群から指標にならない(すなわち、サンプル群に特異的ではない)RNAをノイズとしてあらかじめサブトラクションにより除くことによって、サンプル群に特徴的なRNAパターンの分類の効率化を図ることができる。例えば疾病に特徴的な発現パターンを分類するときには、健常者からのサンプルを用いて作製したライブラリを用いてあらかじめライブラリに記憶された健常者の発現パターンにも同様に存在する配列を排除してパターン分類を行うことができる。
また、本発明の方法を用いて、類似する発現パターンを示すサンプルを探索することができる。ここで、類似する発現パターンを示すサンプルとは、例えば、ターゲット核酸がRNAであり、発現量の増加しているRNAの種類を調べている時は、総RNAサンプル中でRNAの定量的な発現量チェックを行い、発現量の増加しているRNAの組み合わせが類似するサンプル同士をいい、このような類似する発現パターンを示すサンプルが採取された生物は、同じ又は類似する状態を示す、すなわち同じ病気を発症していたり、よく似た健康状態にある可能性がある。つまりサンプルが示すRNA発現パターンの類似性を
調べることで、それが共通の病気を持つ患者群から採取したものである場合にはその病気の疾病マーカーとしてのRNAの組み合わせの探索を行うことも可能であるし、あらかじめ明らかになっている疾病マーカーとしてのRNAの組み合わせがあればサンプルを採取した生物の疾病の早期発見にもつなげることが可能である。本発明の利点は、これらの探索を行う際にあらかじめ配列を特定する前に、ノイズとなる核酸分子のサブトラクションを行うことにより分類の効率化が可能である点、試料の蛍光標識プロセスが不要になる点、転写反応を利用してサンプル中のRNAの定量的な増幅が可能である点、転写反応を用いることによりターゲット核酸がプロモーター配列部分の高次構造形成から保護する特性を利用して検出感度の向上が可能になる点などである。なお、検出用アンチセンス核酸に検出用リポーター配列を組み込まなくても当業者に公知の方法(例えば直接検出用アンチセンス核酸に蛍光標識を行って、その蛍光を利用してメモリ核酸プローブを検出する)ことにより、メモリ核酸プローブが残っていること、すなわちサンプル核酸の存在を判定することもできる。その場合には、本発明のように転写反応を利用する場合に可能な定量的な増幅を行うことはできないが、ポリメラーゼによる転写反応を行う必要がなく、簡便である。
さらに本発明は、診断・分類システムとしてばかりでなく、プロモーター配列の下流に薬物をコードする核酸配列(例えばRNAドラッグとして知られるアンチセンスRNA、二本鎖RNA等をコードする核酸配列)を組み込むことにより、特定のターゲット核酸の存在を感知してその薬物を放出する医薬を製造し、疾患又は障害の治療又は予防を行うために用いることができる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
ランダムDNAプローブの作製
本実施例においては、核酸の配列情報を記憶するための基盤となるランダムDNAプローブを作製した。具体的に説明すると、このDNAプローブのモデルDNAとして、T7プロモーターセンス配列(下線部)の下流にマラカイトグリーンアプタマー配列に対して相補的な配列及び20塩基のランダム配列を含む79塩基のセンスDNA(5’-AGCTTAATACGACTCACTATAGGATCCCGACTGGCGAGAGCCAGGTAACGAATGGATCCNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN-3’;配
列番号8)を合成した。また、後述の実施例4において使用する、59塩基の検出用アンチセンスDNA(5’-GGATCCATTCGTTACCTGGCTCTCGCCAGTCGGGATCCTATAGTGAGTCGTATTAAGCT-3’;配列番号9)を準備した。
サンプルRNA及びターゲットRNAの作製
本実施例においては、ランダムDNAプローブに配列情報を記憶するために用いるサンプルRNAと、メモリDNAプローブを用いて検出するためのターゲットRNAを作製した。
サンプルRNA及びターゲットRNAの作製用としてMAXIscript(登録商標)T7キット(Ambion)に含まれる対照実験用のpTRI−β−actin−MouseのDNAコントロールテンプレートを用意する。コントロールテンプレートpTRI−β−actin−Mouseは、アンチセンスマウスβ−アクチンプローブを作製するために用いられ、pAL41からサブクローニングされたマウスβ−アクチン遺伝子の制限酵素サイトKpnI−Xba1の間の250塩基対の断片で、直鎖状に調製されたプラスミドであり、SP6、T7及びT3タンデムプロモーターで転写制御されている。SP6、T7及びT3RNAポリメラーゼで転写された場合、それぞれ334塩基、304
塩基、及び276塩基の長さになる。
本実施例においては、後述するターゲットRNAの検出においてT7RNAポリメラーゼによる転写反応を利用しているため、サンプルRNA及びターゲットRNAの調製はMEGAscript(登録商標)SP6キット(Ambion)を使用してSP6 RN
Aポリメラーゼで行って、RNeasy(登録商標)Mini(QIAGEN)を用いて精製し、吸光光度計(BECKMAN DU640)により定量した。pTRI−β−actin−Mouse(0.5mg/mL)を反応液20μLあたり1μLで5倍量調製し、RNeasyミニカラム2本を用いてそれぞれ30μLのヌクレアーゼ不含水で溶出し精製した。得られたRNAは1.34μg/μLで約60μLであった。分注して使用時まで−80℃で保存しておく。
ランダムDNAプローブを用いたメモリDNAプローブの作製
本実施例においては、実施例1において作製したランダムDNAプローブを用いて、実施例2において作製したサンプルRNAの配列情報を、ランダムDNAプローブに記憶させた(図1A)。
100pmolのランダムDNAプローブ(実施例1)約2.4μgを、1.3μgの12pmol pTRI−β−actin−MouseのサンプルRNA(実施例2)に
投入して(図1Aのa)、ヌクレアーゼ不含水で10μLにして、RNAが分子内で高次構造をとっているのを壊すために、70℃で10分間加熱した。その後、4℃に急冷してから、サンプルRNAとランダムDNAプローブのランダム配列部分をアニールさせるため、30℃で30分間インキュベーションした。ここでは、ランダムDNAプローブが長いので分子内で形成される高次構造を壊すための操作として、サンプルRNAを投入する前にランダムDNAプローブに94℃で30秒のインキュベーションを加えてもよい。この溶液に10μLあたり、エキソヌクレアーゼI(Takara)添付の10×エキソヌクレアーゼIバッファーを1.5μLとエキソヌクレアーゼI(5ユニット/μL)を2μL加えてヌクレアーゼ不含水で15μLにした。ここでエキソヌクレアーゼIの1ユニットは熱変性仔牛胸腺DNAを基質として37℃、pH9.5の条件において、30分間に10nmolの酸可溶性分解物を生成する酵素活性と定義されている。ここでは10ユニット分加えたが、1反応あたり、50ユニット加えると切断がより完全に行える。次に37℃で30分加熱して二本鎖を形成していないランダムDNAプローブの3’末端からの分解を行う(図1Aのc)。二本鎖を形成していればそこで分解は停止する。その後、エキソヌクレアーゼIを失活させるため80℃、15分間の熱処理を行った後、4℃に急冷する。
次にSuperScriptTMII(GIBCOBRL)を用いて二本鎖を形成しているRNAを鋳型として逆転写を行う(図1Aのd)。反応液の全量にSuperScriptTMII添付の4μLの5×First Strandバッファー、2μLの1M DTT、1μLの10mM dNTPミックスを加え、ランダム配列のアニールを促進す
るため、再び25℃で10分間インキュベーションした後、42℃で2分間インキュベートした。さらにSuperScriptTMII1μLを加え、42℃で50分反応させた後、ランダム配列用の処理として55℃で15分インキュベートした後、70℃で15分加熱してSuperScriptTMIIを不活性化した。
アニールしているサンプルRNAを除去するために(図1Aのe)、リボヌクレアーゼH(Takara)60ユニット/μLを2ユニット加えて37℃で20分インキュベートした後、65℃で20分間加熱し、リボヌクレアーゼHの失活処理を行った。ここでリボヌクレアーゼHの1ユニットは、37℃、20分間で1nmol酸可溶性リボヌクレオ
チドの生成を行うために必要な酵素量で、反応溶液として20mM HEPES−KOH
(pH7.8)、50mM KCl、10mMMgCl、1mM DTTを使用し、基質として20μM放射性標識poly(rA):poly(dT)を使用したときの値と定義されている。以上の操作によりpTRI−β−actin−MouseのサンプルRNAの配列情報が記録されたメモリDNAプローブが完成した。
さらにQIAquick PCR Purificationキットを用いて100mer以上のメモリDNAプローブのみを精製した。10倍量の反応液をカラム2本を用いてそれぞれ30μLのヌクレアーゼ不含水で抽出し、吸光光度計により濃度を測定する。0.005μg/μL=〜0.02pmol/μLのメモリDNAプローブが約56μL得られた。使用時まで−20℃でストックする。メモリDNAプローブの作製に投入したランダムDNAプローブ1000pmolのうち、回収できたのは1.12pmolであった。必要に応じてQIAquick PCR Purificationキットによる精製を行わない未精製のものも用意する。
メモリDNAプローブを用いたターゲットRNAの検出
本実施例においては、実施例3において配列情報を記憶させたメモリDNAプローブを用いて、ターゲットRNAの検出を行った(図1B及び図4参照)。具体的には、精製したpTRI−β−actin−Mouse RNA用のメモリDNAプローブ(実施例3
において調製)を用いて図4に示す検出実験を行った。
精製したメモリDNAプローブ46μL(0.23μg)を投入し(図1Bのf、図4のg)、1μLの1.34μg/μL pTRI−β−actin−Mouse RNA(ターゲットRNA、実施例2において調製)をアニールさせた(図1Bのg、図4のh)。RNAが分子内で高次構造をとっているのを壊すために、70℃10分間加熱した後、4℃に急冷してから、30℃で30分間インキュベーションをした。ここでは、メモリDNAプローブが長いので分子内で形成される高次構造を壊すための操作として、ターゲットRNAを投入する前にメモリDNAプローブに94℃で30秒のインキュベーションを加えてもよい。
このアニール液全量に、エキソヌクレアーゼI添付の10×エキソヌクレアーゼIバッファー5μLとエキソヌクレアーゼI(5ユニット/μL)4μLを加えて56μLにして、37℃で30分加熱して二本鎖を形成していないメモリプローブの3’末端からの分解を行った(図1Bのh、図4のi)。二本鎖を形成していればそこで分解は停止する。その後、エキソヌクレアーゼIを失活させるため80℃、15分間の熱処理を行った後、4℃に急冷する。ここでは10ユニット分加えたが、1反応あたり、50ユニット加えると切断がより完全に行える。
さらに検出用アンチセンスDNA(実施例1にて調製)を1μL、100pmol入れ(図1Bのi)、MEGAscript(登録商標)T7キットを用いて蛍光アプタマー配列を転写させるため、94℃で30秒、68℃で30分インキュベートして、それをメモリDNAプローブのプロモーター配列及びマラカイトグリーンアプタマー配列部分とアニールさせた(図1Bのj、図4のj)。MEGAscript(登録商標)T7キットのインストラクションに従って、ATP、CTP、GTP、UTPを各12.5μL、10×反応バッファーを12.5μL、に試料を全量投入した後、T7ポリメラーゼを含む酵素ミックスを12.5μL投入して37℃で16時間インキュベートし、転写反応を行った(図1Bのk)。
同様に、コントロール1として、ランダムDNAプローブ0.5μL(50pmol)
を投入し(図1Bのf、図4のa)、1.34μg/μL pTRI−β−actin−
Mouse RNA(ターゲットDNA、実施例2において調製)1μLをヌクレアーゼ
不含水で10μLにしてアニールさせた(図1Bのg、図4のb)。RNAが分子内で高次構造をとっているのを壊すために、70℃10分間加熱した後、4℃に急冷してから、30℃で30分間インキュベーションした。このアニール液全量に、エキソヌクレアーゼI添付の10×エキソヌクレアーゼIバッファーを2μLとエキソヌクレアーゼI(5ユニット/μL)を2μL加えてヌクレアーゼ不含水で20μLにする。37℃で30分加熱して二本鎖を形成していないランダムメモリの3’末端からの分解を行った(図1Bのh、図4のc)。二本鎖を形成していればそこで分解は停止する。その後、エキソヌクレアーゼIを失活させるため、80℃、15分間の熱処理を行った後、4℃に急冷した。
さらに検出用アンチセンスDNA(実施例1にて調製)を1μL、100pmol入れ(図1Bのi)、94℃で30秒、68℃で30分インキュベートして、メモリDNAプローブのプロモーター配列とマラカイトグリーンアプタマー配列部分とアニールさせた(図1Bのj、図4のd)。さらにMEGAscript(登録商標)T7キットを用いて蛍光アプタマー配列を転写させる。キットのインストラクションに従ってATP、CTP、GTP、UTPを各5μL、10×反応バッファーを5μL、にサンプルを全量投入した後、T7ポリメラーゼを含む酵素ミックスを5μL投入して37℃で16時間インキュベーションして転写反応を行った(図1Bのk)。
また同様に、コントロール2としてエキソヌクレアーゼIによる切断を行わないランダムDNAプローブ0.5μL(50pmol)と検出用アンチセンスDNAを1μL 1
00pmol投入してヌクレアーゼ不含水で20μLにして94℃で30秒、68℃で30分インキュベートしてアニールさせた。MEGAscript(登録商標)T7キットを用いて蛍光アプタマー配列を転写させた。ATP、CTP、GTP、UTPを各5μL、10×反応バッファーを5μL、にサンプルを全量投入した後、T7ポリメラーゼを含む酵素ミックスを5μL投入して37℃で16時間インキュベーションした。
これらの試料に蛍光試薬を投入し、本発明の検証を行った。ランダム/メモリDNAプローブが残っている試料では、検出用アンチセンスDNAがメモリDNAプローブのセンス部分とアニールしてMEGAscript(登録商標)T7キットに含まれるT7RNAポリメラーゼによりマラカイトグリーンアプタマー分子の転写が開始される(図1Bのk)。観察時にマラカイトグリーンの入った2×観察用バッファー(200mM KCL
、10mMMgCl、20mM HEPES、20μM MG[マラカイトグリーン])を反応液と同体積加えて(図1Cのl、図4のk)、プレートリーダー(モレキュラーデバイス、SPECTRAmax GEMINI)を用いて蛍光の観察を行った。マラカイ
トグリーンは理論値では1:1でアプタマーと反応するため、最終濃度10μMのマラカイトグリーンでは10μMのマラカイトグリーンアプタマーを検出できることになる(図1Cのm、図4のl)。投入したDNAの質量の80倍から120倍のRNAの生成が保障されていることから、10μMは予想される精製メモリDNAプローブによるアプタマー生成量の300倍程度になると思われ、十分量であると考えられる。
ここで転写の効率を比較するために次の量を定義する。ランダム/メモリDNAプローブ50pmol、1.21μgを使って転写反応液20μLを観察用バッファーで2倍に薄めて転写反応を観察したときのランダム/メモリDNAプローブ反応を1ユニットとする。
図5〜6は実施例に基づくプレートリーダー(モレキュラーデバイス、SPECTRAmax GEMINI)による観察結果である。縦軸に620nmで励起したときの蛍光
量、横軸に観測波長をとる。図中のRNA、ExoI及びMGはそれぞれRNA及びエキ
ソヌクレアーゼ及びマラカイトグリーンを表し、+及び−記号でそれぞれを添加した処理を行っているか(+)又は行っていないか(−)を表している。最初に図5に蛍光アプタマー分子とマラカイトグリーンが同時に存在しないと蛍光が観察できないことを示すために、エキソヌクレアーゼ切断を行わないランダムDNAプローブで調製したコントロール2をマラカイトグリーンを添加して観察した結果、マラカイトグリーン添加せずに観察した結果(コントロール3)とマラカイトグリーンの蛍光のみを観察用バッファーで観察した結果(コントロール4)を示す。コントロール3の条件のランダムDNAプローブのみ、あるいはコントロール4のマラカイトグリーン(MG)のみでは本スケールで観測可能な蛍光を示さないことを示している。メモリ作製前のランダムDNAプローブとマラカイトグリーンの蛍光の測定は、それぞれ全量100μLを用いて5ユニットのマラカイトグリーン及び5ユニットのメモリ作製前のランダムDNAプローブで行った。図5〜6では、図6に示すQIAquick PCR Purificationキットによる精製を行う前の未精製メモリ核酸プローブに、メモリ部に記憶されている配列情報を有するRNAを加えて蛍光を観察したときの最大値を1として規格化を行っている。
図6は、100pmolのランダムDNAプローブから作製した未精製メモリDNAプローブと精製メモリDNAプローブ、及び50pmolのランダムDNAプローブ(コン
トロール1)とを、すべてターゲットRNAとの反応とエキソヌクレアーゼI切断を行って実験した観察結果である。
ここで図5と6のターゲットRNAとの反応とエキソヌクレアーゼIによる切断とを行
ったランダムDNAプローブ(コントロール1)と、両者を行わないランダムDNAプローブ(コントロール2)との比較を行うと以下のことが推察される。このときコントロール2ではターゲットRNAとの反応は行わなかったが、コントロール1では、ターゲットRNAと反応させている。コントロール1及び2は同じ程度の蛍光が観察されることを確認した。これはRNAが検出用アンチセンス核酸の配列部分との分子間及び分子内相補鎖を形成することを阻止している可能性を示すものであると考えられる。メモリ核酸プローブのメモリ部分がターゲット核酸との相補鎖を形成するのに十分な特異性がある場合は、ターゲット核酸と検出用アンチセンス核酸がアニールするメモリ核酸プローブのプロモーター配列部分が二本鎖を形成することによりメモリ核酸プローブ同士の好ましくない分子間及び分子内相補鎖の形成を阻止してメモリ核酸プローブのセンス配列部分に検出用アンチセンス核酸がアニールすることができるよう保護することができるが、メモリ核酸プローブに十分な配列情報が記憶されていない場合やターゲット核酸が存在しない場合は、メモリ核酸プローブのメモリを形成せずに残ったランダム配列部分やメモリを形成しているメモリ配列部分が分子間及び分子内でプロモーター配列部分と高次構造を形成して、検出用アンチセンス核酸とのアニールを阻害し、メモリ核酸プローブが十分量存在していると考えられる場合でも蛍光検出反応を著しく阻害すると考えられる。そのため、メモリ核酸プローブが記憶した配列を有するターゲット核酸が存在するときにのみ、検出用アンチセンス核酸のプロモーターアンチセンス配列がメモリ核酸プローブのプロモーターセンス配列部分と二本鎖を形成することができ、RNAポリメラーゼが二本鎖となったプロモーター配列を認識して蛍光を検出するのに必要な反応が起き、この蛍光によってターゲットRNAの検出をより効果的に行うことができると予想される。つまり、ターゲット核酸が存在しないときにプロモーターセンス配列部分と検出用アンチセンス核酸のプロモーターアンチセンス配列との二本鎖形成を阻害するようなメモリ核酸プローブの分子構造自体がRNA検出の特異性を高めているということができる。メモリ作製前のランダムDNAプローブを用いた2つの実験は同じ5ユニットで全量100μLで行った。エキソヌクレアーゼI処理を行ったメモリ作製前のランダムDNAプローブで蛍光が検出されているのは、分子内又は分子間で相補鎖を形成しためエキソヌクレアーゼIによる切断を免れたもの、ある
いはRNAと一部相補鎖を形成して切断されずに残ったもののうち、検出用アンチセンスDNAとメモリ作製前のランダムDNAプローブのプロモーター配列部分とのアニールが
阻害されなかったものであると考えられる。またエキソヌクレアーゼI処理をしていないものは検出用アンチセンスDNAによるメモリ作製前のランダムDNAプローブのプロモーター配列とのアニールが阻害されなかったものと考えられる。ランダム配列部分にメモリを記憶させることにより、プロモーターによる転写開始機構が効率よく作動し、本発明の転写機能が正しく動作するようになると考えられる。
さらに図6では、100pmolのランダムDNAプローブから作製した未精製メモリDNAプローブと精製メモリDNAプローブ、及びエキソヌクレアーゼ切断を行わない50pmolのランダムDNAプローブ(コントロール2)とを比較する。未精製メモリDNAプローブに含まれている100mer以上のメモリDNAプローブは0.5pmol程度と推定されるが、同じ条件のランダムDNAプローブ50pmolよりも強い蛍光を示していることから、50pmol以上の100mer以下のメモリDNAプローブが含まれていると推定されるが、3pmolのメモリDNAプローブのほうが強い蛍光を示している。これらより、メモリDNAプローブは100mer以上のものを精製することにより、特異性が増しメモリDNAプローブの検出感度を上げることができると期待される。さらに前述のように図5のエキソヌクレアーゼ処理を行っていないランダムDNAプローブ(コントロール2)と比較することにより、ランダムDNAプローブでは、プローブ間及びプローブ内部の高次構造形成の弊害のためプロモーター部をポリメラーゼが認識することができず、蛍光の検出量が低下することが推定される。メモリDNAプローブのターゲットRNAに対する特異性の高さについて、精製メモリDNAプローブ(図4のg〜l)と、コントロール1として用意したメモリ作製前のランダムDNAプローブの蛍光観察データを(図4のa〜f)を比較して検討する。最初2倍量で調製した精製メモリDNAプローブは、プレートリーダーの測定可能な蛍光量を上回ったため、2倍に希釈して測定しなおした。RNAとの特異性が高く、RNAが存在するところではRNAと相補鎖を作ることにより、検出反応に重要なプロモーター配列を保護することができ6分の1のプローブ投入でランダムDNAプローブ投入の2.7倍の蛍光量の検出が可能であることがわかる(図6)。ランダムDNAプローブのもつ脆弱なハイブリダイゼーション能力では、エキソヌクレアーゼ切断や、蛍光観察を阻害する分子内の高次構造形成を十分阻止できないため、メモリDNAプローブのような強い蛍光は得られないことが推定される。未精製メモリDNAプローブを用いた予備実験ではこのような感度は達成されなかったこととも併せて、これらの結果より、本発明の方法は精製により感度が上がり、サンプル核酸の配列情報を記憶し、記憶した配列情報を有するターゲット核酸の存在の有無を蛍光量により判定できることがわかった。
ターゲット核酸がPPAP2BやPIM1などの癌マーカー遺伝子より転写されたRNAである場合、ターゲット核酸を検出することにより罹患の有無を診断することができる。また本発明の方法は、配列を事前に決定せずに複数のサンプル核酸が有する複数の類似性パターンを判定することを可能にし、ライブラリの作製にも応用できる優れたシステムである。
本発明の方法により、核酸分子上に、任意の核酸の配列情報を、その配列が特定されていなくても記憶させることができる。これは、ノイズを含む膨大なデータから記憶した配列情報をノイズとして除去して、ライブラリの作製を行い効率よく目的の核酸の存在パターンを分類する際に有効である。これにより疾病診断に有効なバイオマーカーを網羅的に探索することが容易になり、遺伝子診断が有効な疾病領域を拡げ、早期発見、早期治療が可能な疾病領域の拡大を可能にする。
また上述のように記憶させた配列情報と蛍光検出機能を利用して、試料中の目的の核酸を簡便にかつ高感度で検出することができる。さらに本発明の方法により分類された核酸
パターンを基に、メモリ核酸プローブライブラリを作製し、目的の核酸パターンを示す被験体又は被験体集団を容易に診断することができ、診断医療の分野で有効である。
また本発明の方法は、医療場面で広く応用できる可能性を秘めたもので、現在遺伝子の特異的な発現が起こることが予測されている精神・神経疾患あるいは癌、その他の全身疾患の診断治療及び予防に効果を発揮することが期待される。
ランダム核酸プローブ及びメモリ核酸プローブの構成の例と、ランダム核酸プローブを用いたメモリ核酸プローブの作製手順を示す。 メモリ核酸プローブを用いたターゲット核酸の検出手順を示す。 検出用レポーター分子をコードする配列から転写された検出用レポーター分子の蛍光発光を利用した検出機構をマラカイトグリーンアプタマーを例にとって示す。 メモリ核酸プローブのライブラリ作製の一例の概要を示す。 メモリ核酸プローブのライブラリを用いたマイクロアレイの作製を示す。 メモリ核酸プローブのライブラリを用いた診断例の概要を示す。 pTRI−β−Actin−Mouse RNAを用いたランダムDNAプローブをコントロールとした、メモリDNAプローブを用いたターゲットRNAの検出実験の概要を示す。 マラカイトグリーンを添加したランダムDNAプローブを用いて得られた転写反応液、マラカイトグリーンを添加していないランダムDNAプローブを用いて得られた転写反応液、及びマラカイトグリーン単独の蛍光強度を示す。 精製メモリDNAプローブと未精製メモリDNAプローブのRNA検出機能の差をランダムDNAプローブとの比較により示す。
配列番号1、2、4、6、8〜16及び18:合成DNA
配列番号3、5、7、及び17:合成RNA
配列番号8の60〜79位のnは任意の塩基を表す
配列番号17の100位のnはビオチン化された塩基を表す
配列番号18の100位のnは2−アミノ−6−(2−チエニル)プリン又は2−アミ
ノ−6−(2−チアゾリル)プリンを表す

Claims (37)

  1. 以下のステップ:
    (a)プロモーターセンス配列及び5〜100000塩基からなるランダム配列を含む核酸プローブとサンプル核酸とを接触させ、該核酸プローブのランダム配列と該サンプル核酸との間で二本鎖を形成させるステップ、
    (b)上記核酸プローブの3’末端から、上記核酸プローブとサンプル核酸とが二本鎖を形成している部分まで、上記核酸プローブの一本鎖を分解するステップ、
    (c)上記核酸プローブとサンプル核酸とが二本鎖を形成している部分から上記核酸プローブの3’末端側に、サンプル核酸を鋳型としてサンプル核酸の配列に相補的な配列を伸長させるステップ、
    (d)上記サンプル核酸を除去し、サンプル核酸の配列に相補的な配列を含む核酸プローブを回収するステップ、
    を含む、サンプル核酸の配列情報を有する核酸プローブの作製方法。
  2. サンプル核酸が体液、細胞若しくは組織又はそれらから採取した核酸である、請求項1記載の方法。
  3. 体液が唾液、血液又は尿である、請求項2記載の方法。
  4. 核酸がDNA又はRNAである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 核酸プローブがDNAであり、サンプル核酸がRNAである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. プロモーター配列が、T7プロモーター配列、T3プロモーター配列若しくはSP6プロモーター配列、又はこれらの配列が連結したタンデム配列である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. ステップ(b)の一本鎖の分解がエキソヌクレアーゼIにより行われる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. ステップ(c)の配列の伸長が、逆転写又は複製である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 核酸プローブがプロモーターセンス配列の下流にさらに検出用レポーター分子をコードするセンス配列を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 検出用レポーター分子がアプタマーRNA分子である、請求項9記載の方法。
  11. 検出用レポーター分子がマラカイトグリーンアプタマーRNA分子である、請求項10記載の方法。
  12. 複数のサンプル核酸を用いて、各サンプル核酸の配列情報を有する複数の核酸プローブを作製する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. サンプル核酸の配列が特定されていないものである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 以下のステップ:
    (a)プロモーターセンス配列及びターゲット核酸の全体又は一部に対し相補的な配列を含む核酸プローブと試料とを接触させ、該核酸プローブと該試料に含まれるターゲット核酸との間で二本鎖を形成させるステップ、
    (b)上記核酸プローブの3’末端から上記核酸プローブの一本鎖を分解するステップであって、ここで上記核酸プローブとターゲット核酸とが二本鎖を形成している場合には、二本鎖を形成している部分まで上記核酸プローブを分解するステップ、
    (c)プロモーターセンス配列に対し相補的な配列及び検出用レポーター分子をコードするアンチセンス配列を含む検出用アンチセンス核酸を添加し、該プロモーターセンス配列と該相補的配列との間で二本鎖を形成させるステップ、
    (d)ポリメラーゼを添加して上記検出用レポーター分子をコードするアンチセンス配列を転写させて検出用レポーター分子を形成させるステップ、
    (e)ステップ(d)における転写反応を確認して試料中のターゲット核酸を検出するステップ、
    を含む、試料中のターゲット核酸の検出方法。
  15. ステップ(a)において使用する核酸プローブが、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法により作製されたものである、請求項14記載の方法。
  16. 試料が体液、細胞、組織又はそれらから採取した核酸である、請求項14又は15記載の方法。
  17. 体液が唾液、血液又は尿である、請求項16記載の方法。
  18. 核酸がDNA又はRNAである、請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
  19. 核酸プローブがDNAであり、ターゲット核酸がRNAである、請求項18記載の方法。
  20. プロモーター配列が、T7プロモーター配列、T3プロモーター配列若しくはSP6プロモーター配列、又はこれらの配列が連結したタンデム配列である、請求項14〜19のいずれか1項に記載の方法。
  21. ステップ(d)のポリメラーゼが、T7RNAポリメラーゼ、T3RNAポリメラーゼ又はSP6RNAポリメラーゼである、請求項14〜20のいずれか1項に記載の方法。
  22. ステップ(b)の一本鎖の分解がエキソヌクレアーゼIにより行われる、請求項14〜21のいずれか1項に記載の方法。
  23. 検出用レポーター分子がマラカイトグリーンアプタマーRNA分子であり、転写反応の確認の検出用試薬としてマラカイトグリーンを使用して試料中のターゲット核酸を検出する、請求項14〜22のいずれか1項に記載の方法。
  24. 核酸プローブがプロモーターセンス配列の下流にさらに検出用レポーター分子をコードするセンス配列を含み、ステップ(c)において該検出用レポーター分子
    をコードするセンス配列と検出用アンチセンス核酸における検出用レポーター分子をコードするアンチセンス配列との間で二本鎖が形成される、請求項 14〜23のいずれか1項に記載の方法。
  25. ターゲット核酸の配列が特定されていないものである、請求項14〜24のいずれか1項に記載の方法。
  26. 下記(1)及び(2)を含むターゲット核酸を検出するためのキット:
    (1)プロモーターセンス配列及び5〜100000塩基からなるランダム配列を含む核酸プローブ又はプロモーターセンス配列及びターゲット核酸の全体若しくは一部に対し相補的な配列を含む核酸プローブ
    (2)プロモーターセンス配列に対し相補的な配列及び検出用レポーター分子をコードするアンチセンス配列を含む検出用アンチセンス核酸
  27. ランダム配列が10〜1000塩基からなるものである、請求項26記載のキット。
  28. 核酸プローブがDNA又はRNAである、請求項26又は27記載のキット。
  29. プロモーター配列が、T7プロモーター配列、T3プロモーター配列若しくはSP6プロモーター配列、又はこれらの配列が連結したタンデム配列である、請求項26〜28のいずれか1項に記載のキット。
  30. 核酸プローブがプロモーターセンス配列の下流にさらに検出用レポーター分子をコードするセンス配列を含む、請求項26〜29のいずれか1項に記載のキット。
  31. 検出用レポーター分子をコードするアンチセンス配列がその転写によりマラカイトグリーンアプタマー分子を形成することができるものである、請求項26〜30のいずれか1項に記載のキット。
  32. エキソヌクレアーゼI、プローブ伸長用酵素(逆転写又は複製)、RNAポリメラーゼ、基質及び検出用試薬からなる群より選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項26〜3のいずれか1項に記載のキット。
  33. 以下のステップ:
    (a)請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法を用いて、基準被験体に由来する核酸の配列情報を有するメモリ核酸プローブを作製するステップ、
    (b)上記メモリ核酸プローブを、特定の状態又は特徴を示す被験体に由来する核酸と接触させ、上記メモリ核酸プローブが有する配列情報と同じ配列情報を有する核酸と二本鎖を形成させるステップ、
    (c)上記メモリ核酸プローブを取り除くことにより、特定の状態又は特徴を示す被験体に固有の核酸群を取得するステップ、
    を含む、特定の状態又は特徴を示す被験体に特異的な遺伝子のライブラリの作製方法。
  34. 基準被験体が健康又は正常な被験体である、請求項3記載の方法。
  35. 特定の状態が疾患又は障害である、請求項3又は3記載の方法。
  36. 基準被験体に由来する核酸及び特定の状態又は特徴を示す被験体に由来する核酸がmRNAである、請求項3〜3のいずれか1項に記載の方法。
  37. さらに(d)上記の特定の状態又は特徴を示す被験体に固有の核酸群より、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法を用いて、特定の状態又は特徴を示す被
    験体に固有の配列情報を有するメモリ核酸プローブを作製するステップを行って、特定の状態又は特徴を示す被験体に特異的な遺伝子の配列情報を有するメモリ 核酸プローブライブラリを作製するものである、請求項3〜3のいずれか1項に記載の方法。
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