JP4867382B2 - 調質処理後に高強度および優れた耐遅れ破壊特性を有する鋼材 - Google Patents
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Description
高強度化の活用は、利用する鋼材の板厚、肉厚を減らし、軽量化を図れる等のメリットが享受できるものの、高強度化に伴い、遅れ破壊の危険性が増大する。
そこで、耐遅れ破壊特性を向上させるために、従来から、鋼成分を工夫したり、添加元素を活用したり、熱処理方法等の製造的な観点での作りこみ等によって、鋼の析出物等を制御することによって、耐遅れ破壊特性を向上させることを志向し、すでに開示されている方法も多い。
よって、本発明においては、V添加を基本として、窒素量、かつ、窒化物形成元素量、これらの元素の総合的なバランス、及び、Si量の規定によって、耐遅れ破壊特性の向上を図り、および、その製造方法を示す。SCM系ばかりではなく、CrやMoを含まない系にも適用できる手段を提供するものである。
[2]V添加を含めた、窒化物形成元素の規定
[3]V系析出物を作る際に、結びつくN量(析出物として固定される分を除くように配慮)
[4]Si量に関する規定
更に、[5]B、Al、Mo量の規定等を実施し、また、[6]鋼管材料として、Si(%)/Mn(%)比を規定した。また、[7]成分系によっては、焼戻し温度を上げることを規定した。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
1.質量%で、C:0.15〜0.65%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.20〜1.8%、Cr:無添加を含み1.5%以下、N:0.015%以下、Ti:無添加を含み0.1%以下、V:0.02〜0.3%、Al:0.027〜0.07%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、調質処理される鋼材において、該鋼材がMn/Si=2.5〜9とされた、電縫溶接用鋼板又は電縫鋼管であり、
Ti:0.010〜0.1%、かつ、N−(14/48)Ti:0.002%以下としてなることを特徴とする、調質処理後に高強度および優れた耐遅れ破壊特性を有する鋼材。
3. さらに、V:0.02〜0.15%としたことを特徴とする、前項2に記載の、調質処理後に高強度および優れた耐遅れ破壊特性を有する鋼材。
4.質量%で、C:0.15〜0.65%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.20〜1.8%、Cr:無添加を含み1.5%以下、N:0.015%以下、Ti:無添加を含み0.1%以下、V:0.02〜0.3%、Al:0.027〜0.07%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、調質処理される鋼材において、該鋼材がMn/Si=2.5〜9とされた、電縫溶接用鋼板又は電縫鋼管であり、
Ti:0.004%以上0.010%未満、Si:0.80〜2.5%としてなることを特徴とする、調質処理後に高強度および優れた耐遅れ破壊特性を有する鋼材。
6.質量%で、C:0.15〜0.65%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.20〜1.8%、Cr:無添加を含み1.5%以下、N:0.015%以下、Ti:無添加を含み0.1%以下、V:0.02〜0.3%、Al:0.027〜0.07%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、調質処理される鋼材において、該鋼材がMn/Si=2.5〜9とされた、電縫溶接用鋼板又は電縫鋼管であり、
Ti:0.004%以上0.010%未満、Si:0.01〜0.20%、Cr:0.7〜1.5%、N:0.005%以下としてなることを特徴とする、調質処理後に高強度および優れた耐遅れ破壊特性を有する鋼材。
8.質量%で、C:0.15〜0.65%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.20〜1.8%、Cr:無添加を含み1.5%以下、N:0.015%以下、Ti:無添加を含み0.1%以下、V:0.02〜0.3%、Al:0.027〜0.07%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、調質処理される鋼材において、該鋼材がMn/Si=2.5〜9とされた、電縫溶接用鋼板又は電縫鋼管であり、
Ti:0.004%以上0.010%未満、Si:0.01〜0.25%、Cr:0.7〜1.5%とし、前記調質処理を焼入れ‐焼戻し処理とし該焼戻し処理の温度を550〜700℃としてなることを特徴とする、調質処理後に高強度および優れた耐遅れ破壊特性を有する鋼材。
本発明の実施例では、実際にはありえない程度の、非常に厳しい水素チャージ条件として、5%塩酸に浸漬したまま、定荷重試験を実施し、100時間を満了条件として、未破断応力を用いて判断する。本判断手法で判断した結果(V添加による耐遅れ破壊特性の向上の有無)は、評価方法、水素チャージ条件に限らず、差こそあれ、普遍的に成立する。
それゆえ、窒素含有量自体の規定、V添加を含めた窒化物形成元素の規定、「V系析出物」を作る際に結びつくN量(析出物として固定される分を除いたN量)、および、焼入しやすい状態して「V系析出物」を作りにくい状態するためことが重要であり、Si量等の規定によって、焼入れ性を向上させることによって、整理できるものと考えられる。また、形成されてしまった「V系析出物」を、N-richから、C-richへ推移させるために、焼戻し温度を上げる等の整理ができると考えられる。
(1) N:0.015%以下(望ましくは0.005%以下)
(2) V:0.02%以上0.3%以下
(3) Ti:無添加を含めて0.1%以下、
(4) Cr:無添加を含めて1.5%以下
(5) Si:0.01%以上2.5%以下
更なる限定条件として、
(6) Ti添加の場合、N−(14/48)Ti:0.002%以下
(7) Ti無添加の場合(その1)、Si:0.80%以上2.5%以下、望ましくはCr:無添加を含めて0.30%以下
(8) Ti無添加の場合(その2)、Si:0.01%以上0.20%以下(望ましくは0.05%以下)、Cr:0.7%以上1.5%以下、N:0.005%以下
(9) Ti無添加の場合(その3)、Si:0.01%以上0.25%以下、Cr:0.7%以上1.5%以下、調質=焼入れ‐焼戻し、焼戻し温度=550℃以上700℃以下
以上のような項目毎の上下限値は、後述の実施例での実験結果に基づく。
固溶Vの確保、かつ、「V系析出物」が無いか少ない状況を実現するため、個々の元素の含有量、添加量のバランスが決まってくると推定される。
a)V添加量(添加量は鋼中含有量で表す。他の元素についても同じ)
固溶量として有効に機能するV量を確保する最低限量から、下限が決まってくると推定され、上限は、「V系析出物」を無しとするか、問題の無いレベルで少ないことを達成する観点から、上限が決まってくると推定される。
b)窒素量
V添加により固溶Vを確保し、「V系析出物」を形成しない、形成させても少なくすることが重要であることが推定される。窒素は、「V系析出物」を形成させない観点で、耐遅れ破壊特性を劣化させないため、重要であると推定される。
窒素は少ない方が良いが、下限は製鋼上の技術的限界から決定されうる。上限については、以下の3つの方向性によって異なる。推定の域を出ないものの、「V系析出物」をゼロにするか少なくすることによって、耐遅れ破壊特性を劣化させないことが可能であり、その状況に応じて、上限の設定は変わっていると推定される。
c)Ti量
上述のように、Ti添加により窒素を固定させることによって、固溶Vを確保することに影響を与えるため、重要な元素である。また、Ti無添加の場合でも、Cr添加や、Si量の制御、N量、焼戻し温度等によって、固溶Vの確保は達成されうるので、Ti無添加もありうる。
d)Cr量
窒素量の項で説明したように、Ti無添加系、微量添加系においては、Cr系の窒化物形成が見られ、固溶Vが確保しやすくなり、「V系析出物」を形成しにくいと推定されるため、重要な元素である。その場合には、Si含有量を低く、かつ、窒素量を少なくする必要がある。Si含有量を抑える理由は、焼入れ性を必要以上に上げず、Cr系析出物(窒化物系)の形成を促進できるためだと推定される。逆に、窒素量が多い場合には、耐遅れ破壊特性が必ずしも向上しない。窒素が多いことで、「V系析出物」の形成が起こるためであろうと推定される。その場合には、焼戻し温度を上げることによって、耐遅れ破壊特性を改善できる。「V系析出物」がN-richから、C-rich状態に改質されるからであると推定される。
e)Si量
Ti無添加系、および、微量添加系では、耐遅れ破壊特性の向上につき、Si含有量を増すことよって、重要な役割を果たす。
一方、逆の方向性もある。つまり、Si量を減らして、N量を減らし、Cr量を増やした場合でも、耐遅れ破壊特性を向上させることができる。Cr系窒化物を形成させることによって、結果として、「V系析出物」を少なくする方向性である。その状況で、N量を増やした場合には、必ずしも、耐遅れ破壊特性は向上できない場合がある。その際には、焼戻温度を上げて調質することによって、耐遅れ破壊特性を向上できる。Nが多い場合には、「V系析出物」が形成されてしまうために、耐遅れ破壊特性が向上できなくなると推定され、焼戻温度を高めることによって、「V系析出物」をN-richから、C-rich状態に“改質”されるからであると推定される。その際には、Si量の上限をやや増やしても(また、N量の上限を緩和しても)同様な効果が期待できる。
[C:0.15〜0.65%]
Cは、調質により、マルテンサイトを生成させて、変態強化をさせて、高強度化するのに必須の元素である。下限は、所望の高強度を安定して得るために必要な量から決定される。上限は、焼入時の焼割れが見られるようになってしまうこと、及び、靭性の劣化の観点から決定され、0.15%以上0.65%以下と規定した。更なる靭性向上の観点や、電縫鋼管向けの材料(電縫溶接性の確保)を考えた場合には、望ましくは、0.45%以下とするとよい。
Siは、焼入れ性の確保、固溶強化、脱酸剤として機能するに加えて、本発明では、耐遅れ破壊特性の向上のため、積極的な意味を持つ元素でもある。
下限は、本発明が意図している鋼において、工業的な製造を考えた場合の不可避レベルから決まってくる。上限は、固溶強化、焼入れ性確保の観点から決まってくる。過剰な添加は、酸化物系の介在物の生成を促進して、破壊の起点や、調質前の状態での表面の肌荒れ、表面欠陥を引き起こしたり、焼入れ時の粒界酸化等を引き起こすことがある。よって、Siは0.01%以上2.5%以下と規定した。
Ti添加系(Ti:0.010〜0.1%)では、Si量は、耐遅れ破壊特性の向上に積極的は意味を持たないため、上記の規定範囲であればよいが、望ましくは、0.50%以下に制御した方がよい。より一層、表面肌を美麗に保つためである。
Tiが無添加の場合、Siを0.80%以上2.5%以下に規定するとよい。上限規定は上述の説明のとおりであるが、下限を、0.80%以上とした時に、耐遅れ破壊特性が向上できる。推定の域を出ないものの、「発明の根幹」の部分で推定したように、Si量アップによって、焼入れ性の向上効果及び、炭窒化物の形成の抑制効果があるため、添加されているVが、「V系析出物」を形成せずに、固溶V状態になっているためであると推定される。
[Mn:0.20〜1.8%]
Mnは、焼入れ性の確保、固溶強化、および、SをMnSで固定して熱間脆性を確保するのに有効な元素である。下限の規定は、これらの特性を満足させるためである。上限は、それ以上の添加は、必要以上の固溶強化を引き起し、製造の際および加工時に問題を生じる可能性が高くなる。よって、Mnは0.20%以上1.8%以下と規定する。望ましくは、0.50%以上1.5%以下である。固溶強化、焼入れ性の確保と共に、一層なる靭性の確保を図るためである。
Crは、焼入れ性の確保に有効な元素のひとつであり、耐食性の観点からも有効に機能する。また、本発明においては、耐遅れ破壊特性の向上に積極的な役割を果たすが、他の元素を使って、焼入性や、耐遅れ破壊特性が確保できるのであれば必ずしも添加しなくてもよい。なお、Crの無添加レベルとしては、おおよそ、0.01%程度は含有しうることがあることを考慮して、0.010%未満を無添加とみなす。Cr量の上限は、靭性の劣化や、熱間加工性の劣化等の悪影響があるので、1.5%とした。
Siの説明箇所で述べたように、Ti無添加系で、Crの下限を0.7%とした上で、Nを0.0050%以下かつSiを0.01%以上0.20%以下とするのが重要で、Crが0.7%未満であったり、Nが0.0050%を超えたり、Siが0.20%を超えた場合(0.80%未満)には、耐遅れ破壊特性は必ずしも向上しない。
本発明において、耐遅れ破壊特性を向上させる観点では、Nが多く含有されるのは好ましくないが、上限は、耐遅れ破壊特性を向上するために、含有して問題のない観点から限定される。少ないに越したことはないが、Nが多く含有されていても、本発明で規定されているように、Ti、Cr、Si等の含有量を調整することによって、耐遅れ破壊特性の調整は可能ゆえ、Nは0.015%以下と限定した。望ましくは、0.005%に上限を設定することである。耐遅れ破壊特性を向上させられるためである。更に望ましくは、0.0035%以下である。
また、Ti無添加系、Si添加が少ない時には、Nを0.005%以下と規定し、併せて、Crを0.7%以上1.5%以下と規定することが重要である。その理由は上述した通りである。
一方、N量の下限は限定していないが、N含有量は少ないほどよい。下限は、製鋼技術から決まりうる。高炉・転炉を使った真空脱ガス法を使えば、5ppmが下限であろう。電炉に見られるような大気製鋼法では0.006%程度であろうと推定される。
Tiは、本発明において、耐遅れ破壊特性の向上に効果的に作用する重要な元素である。しかしながら、過剰添加は靭性の劣化をもたらすので、上限を0.1%に規定した。なお、無添加の定義として、ゼロから0.010%までの含有を無添加レベルとする。
望ましくは、下限を0.01%、上限を0.03%に設定するとよい。下限の理由は、無添加レベル以上にTiを添加した方が、V、Cr、Si、N量のバランス等のばらつきによって変動する可能性のある耐遅れ破壊特性につき、安定して確保できる可能性が高くなるからである。望ましい範囲として、上限を0.03%に設定するのは、一層なる靭性の確保のためであり、それと同時に、C、S、Cr等のバランスによっては、TiがTiSとか、Ti4C2S2の析出物を形成して、焼入れ性の低下をもらたす危険性もあるからである。すでに、Si,Cr,N量の項目説明にあるように、Ti無添加の場合でも、耐遅れ破壊特性の改善を図ることができるので、Ti無添加の場合もある。
Vは、本発明で、耐遅れ破壊特性の向上に有効な元素であるが、V以外の元素とのバランス関係で、劣化させる方向にも機能することがあるので、注意が必要である。単なるV添加だけでは、耐遅れ破壊特性の向上には効果がないことに注意が必要である。
上下限の規定は、耐遅れ破壊特性を向上させる条件で、V添加を利用した際の限界値から決まる。下限を0.02%としたのは、V添加の効果を活用できる最低量の観点から決まってくる。上限を0.3%としたのは、過剰なる添加は、耐遅れ破壊特性の劣化に加えて、靭性の劣化を引き起こすためである。更に望ましくは、上限を0.2%にするとよい。過剰なる添加による耐遅れ破壊特性の劣化分が小さいためである。
推定の域を出ないものの、V添加によって、固溶Vを確保しつつ、「V系析出物」をゼロまたは少なくなると、良好な耐遅れ破壊特性を実現できると推定される。V添加が多くなった場合、「V系析出物」の形成されてくる可能性が高くなる。TiまたはCrを添加した系においては、すでに析出した窒化物にVが固溶する形で、「V系析出物」の形成が進むと同時に、固溶Vが確保できなくなるゆえ、V添加の上限が決まってくると推定される。
[B:0.0030%以下、Al:0.01〜0.05%、Mo:0.50%以下のうち1種又は2種以上]
Bについては、添加することによって、焼入れ性を向上させ、粒界の強化にも有効に機能するので、添加してもよい。大量の添加は、靭性を劣化させてしまうので、0.0030%以下とする。
Moについては、焼入れ性の確保、および、焼戻し軟化抵抗を有するために、添加してもよい。多すぎる添加は靭性の劣化、および、コストアップを伴うので、0.50%を上限とした。なお、Moは、0.008%未満を無添加とみなす。
Sについても、多く含有した場合には、耐遅れ破壊特性を劣化させる方向にはたらき、添加されているMnと結合してMnSを作り、割れの起点になることが僅かであるがないことはない。少ないほどよいが、製鋼コストとのバランスによって、0.01%以下とするとよい。少ないほど、耐遅れ破壊特性には有利であり、0.003%以下が望ましい。
[Mn/Si:2.5〜9、鋼材=電縫溶接用鋼板または電縫鋼管]
電縫溶接による鋼管を考えた場合には、Mn/Si(すなわちMn(%)/Si(%)比)を2.5以上9以下にすることが望ましい。溶接部の健全性を図るために、上下限が決まってくる。この範囲を外れた時には、電縫鋼管を曲げ加工、扁平加工させた時などに、溶接部を開口させるような介在物(酸化物)が、電縫溶接部に残存しやすくなるため、溶接部が割れる危険性が高くなる。
[焼戻し温度:550〜700℃]
(ただし、Ti:無添加で、かつ、「Si:0.01〜0.25%、Cr:0.7〜1.5%」の場合)
すでに、SiやCrの説明箇所で触れたように、Ti:無添加で、かつ、「Si:0.20%超〜0.25%、Cr:0.7〜1.5%」の場合においては、調質処理を焼入れ‐焼戻し処理に限定し、かつ、焼戻し温度を550℃以上700℃以下に限定することにより、耐遅れ破壊特性が改善できる(Si:0.01〜0.20%の場合も同様に限定して支障はない)。理由の推定としては、この成分系では窒素が多いとどうしても「V系析出物」で形成される場合があるものの、焼戻温度を高めることによって、「V系析出物」が改質して無害化するためと推定している。N-richから、C-richへの変化等が起こっているのではないだろうか。また、その際には、N量は0.015%以下でよい。
鋼の強度によって、耐遅れ破壊特性に優れるという判断は異なり、以下のような判断を行なった。Hv400以上Hv450未満では、第1義、第2義を同時に満たすものを、耐遅れ破壊特性に優れると判断し、Hv450以上のものについては、第1義を満たすものを、耐遅れ破壊特性に優れていると判断する。
サンプルNo.11〜13は、Ti無添加系でSi量が規定外の比較例であり、V添加によって耐遅れ破壊特性が劣化する例である。V無添加のNo.11に対して、V添加、かつ、S含有量が多いものが、No.12であり、No.11の類似組成に、V添加のみを行なったものがNo.13である。No.11に対して、V添加を行なうことによって、No.12やNo.13は、耐遅れ破壊特性が劣化する。この両者を比較することによって、S含有量を少なくすることで耐遅れ破壊特性の向上を図れることは明らかであるが、規定外の組成では、V添加による悪影響が顕著であり、耐遅れ破壊特性を、S量の調整のみでは改善できないことを示している。
もし、単に「V系析出物」だけが影響因子ならば、V添加量に比例する挙動になるはずであるが、No.11とNo.12,13の比較や、No.1とNo.2〜5の比較より、「V系析出物」だけが影響因子ではありえないことは明らかである。固溶Vが、耐遅れ破壊特性を向上することを示唆し、更に、「V系析出物」をゼロにするか、少なくすることが重要なことを示唆している。
サンプルNo.33は、V無添加かつTi無添加の比較例である。サンプルNo.34は、No.33を基本に成分調整した発明例であって、V添加かつTi添加によって、耐遅れ破壊特性が向上することを示している。
2 試験片浸漬用保持容器
3 おもり
Claims (10)
- 質量%で、C:0.15〜0.65%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.20〜1.8%、Cr:無添加を含み1.5%以下、N:0.015%以下、Ti:無添加を含み0.1%以下、V:0.02〜0.3%、Al:0.027〜0.07%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、調質処理される鋼材において、該鋼材がMn/Si=2.5〜9とされた、電縫溶接用鋼板又は電縫鋼管であり、
Ti:0.010〜0.1%、かつ、N−(14/48)Ti:0.002%以下としてなることを特徴とする、調質処理後に高強度および優れた耐遅れ破壊特性を有する鋼材。 - さらに、Ti:0.015〜0.03%、N:0.005%以下としたことを特徴とする、請求項1に記載の、調質処理後に高強度および優れた耐遅れ破壊特性を有する鋼材。
- さらに、V:0.02〜0.15%としたことを特徴とする、請求項2に記載の、調質処理後に高強度および優れた耐遅れ破壊特性を有する鋼材。
- 質量%で、C:0.15〜0.65%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.20〜1.8%、Cr:無添加を含み1.5%以下、N:0.015%以下、Ti:無添加を含み0.1%以下、V:0.02〜0.3%、Al:0.027〜0.07%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、調質処理される鋼材において、該鋼材がMn/Si=2.5〜9とされた、電縫溶接用鋼板又は電縫鋼管であり、
Ti:0.004%以上0.010%未満、Si:0.80〜2.5%してなることを特徴とする、調質処理後に高強度および優れた耐遅れ破壊特性を有する鋼材。 - さらに、Cr:0.03%以下としたことを特徴とする、請求項4に記載の、調質処理後に高強度および優れた耐遅れ破壊特性を有する鋼材。
- 質量%で、C:0.15〜0.65%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.20〜1.8%、Cr:無添加を含み1.5%以下、N:0.015%以下、Ti:無添加を含み0.1%以下、V:0.02〜0.3%、Al:0.027〜0.07%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、調質処理される鋼材において、該鋼材がMn/Si=2.5〜9とされた、電縫溶接用鋼板又は電縫鋼管であり、
Ti:0.004%以上0.010%未満、Si:0.01〜0.20%、Cr:0.7〜1.5%、N:0.005%以下としてなることを特徴とする、調質処理後に高強度および優れた耐遅れ破壊特性を有する鋼材。 - さらに、Si:0.05%以下としたことを特徴とする、請求項6に記載の、調質処理後に高強度および優れた耐遅れ破壊特性を有する鋼材。
- 質量%で、C:0.15〜0.65%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.20〜1.8%、Cr:無添加を含み1.5%以下、N:0.015%以下、Ti:無添加を含み0.1%以下、V:0.02〜0.3%、Al:0.027〜0.07%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、調質処理される鋼材において、該鋼材がMn/Si=2.5〜9とされた、電縫溶接用鋼板又は電縫鋼管であり、
Ti:0.004%以上0.010%未満、Si:0.01〜0.25%、Cr:0.7〜1.5%とし、前記調質処理を焼入れ‐焼戻し処理とし該焼戻し処理の温度を550〜700℃としてなることを特徴とする、調質処理後に高強度および優れた耐遅れ破壊特性を有する鋼材。 - Feの一部に代えて、質量%で、B:0.0030%以下、Mo:0.50%以下のうち1種又は2種を含有するとしたことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の、調質処理後に高強度および優れた耐遅れ破壊特性を有する鋼材。
- さらに、N:0.005%以下としたことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の、調質処理後に高強度および優れた耐遅れ破壊特性を有する鋼材。
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