JP4864348B2 - 神経再生チューブ - Google Patents
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Description
端端縫合法は損傷、切断された神経の断端間隔が5mm前後である場合に適応できる可能性がある。しかし、その縫合は慎重を期して行わなければならず、神経断端間の緊張が強い場合には、その神経の再生は不良となる、というような、手技的な問題があり、神経の治療技術としては確立、成熟はしていない。
また、自家神経移植は、端端縫合が困難と判断されるような、神経断端間の間隙が大きい場合に、適用される。自家神経移植は、大きい間隙を架橋するために他部位から自家神経を採取して、それを移植する。採取する神経は通常患者の運動機能を損なわない部位、例えば下腿後面の腓腹神経などが採取使用されるが、まれに知覚障害などを起こす危険性があり、また患者のQOLを考えれば、許容できるものではなかった。
そこで、新たな神経治療デバイスとして、断絶、損傷した神経端を管の両端から互いに向かい合うように挿入する管が検討され始め、管内神経形成による神経再生が検討されていることは公知の事実である。この技術は、切断された神経両端の間に、結合組織や線維芽細胞のような物理的あるいは生物学的障害物が入り込むことを防ぎ、神経再生の場を提供する事で神経の再生を促すというコンセプトである。
シリコーン管を用いた、神経再生実験モデルでは、末梢神経がシリコーン菅壁に沿って、再生することも、血管がシリコーン管に沿って伸長することも認められなかった。また、シリコーン管はシリコーン管内外に存在する、種種の液性因子や細胞の交流を阻害するため、決して最良のデバイス足り得なかった。また、シリコーン管は生体内で分解されないで、神経周囲慢性的な異物反応を引き起こし、2次的な拘扼や癒着を生じる可能性があった。
これらの問題を解決するために、これまで多くの技術が提案されている。
しかしながら、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン分解酵素を神経組織の修復に適応することのみでは、神経の再生は不十分である。
例えこれらの生物由来材料を使用し、神経再生が促進しようとも生体由来材料の使用は、あくまでも動物実験レベルの議論であり、実際の臨床への応用は、医療における安全性の確保を最優先しようとする社会的要請に整合するものではない。
また、特許文献2には生体内分解吸収性材料からなる人工神経管について記載されているが、神経再生管に対しての考察が不十分であり、特に神経再生管が生体内で神経軸策の再生伸長を妨げることなく生体内で空隙を維持出来うるかという課題に対しての解決も得ていない。
実質的に使用可能としているメッシュ状材料の神経再生効果は、メッシュ状材料の生体内での強度不足から起因する内腔閉塞が発生し、安定的に良好な結果を得ることができないと推測される。
さらに特許文献2には、神経再生管の材料としては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、グリコール酸と乳酸との共重合体、乳酸とε−カプロラクトンとの共重合体、ポリジオキサノン、及びグリコール酸とトリメチレンカーボネートとの共重合体などが挙げられているが、神経再生管が生体内で十分な機能を発揮するためには、神経再生までの期間、強度を維持し、神経再生管内腔の保持が必要になるし、神経が再生した後には迅速に分解吸収されるような緒性質が必要であるという論点から考えて、それら列挙されているポリマー全てがこのような緒性質を満たしているとは考えられない。もともとそのような思想にもとづいていないために、決して良好な神経再生が安定的に認められ得ないし、技術的にも不十分である。もっとも実質的に特許文献2の神経再生管の材料はポリグリコール酸を想定した発明であるとも考えられるが、材料の生分解性を考察する上で、また、神経再生管の形状という面からみても不十分である。
さらに、縫合時の針穴の拡大という技術上の課題に対して何の解決も得ていない。通常、神経の断絶が起きた場合の縫合は、切れた神経を端部より若干張力をかけるようにして縫合する。縫合時の針穴の拡大が押さえられなかった場合、接合しようとしている神経と神経再生管の距離が開いてしまい、神経再生が不良となる可能性がある。
さらに、特許文献3について詳細に記載すると、強化材の構成要素としては、モノフィラメント、マルチフィラメント、紐などの繊維、シート、不織布が例示されており、該繊維の直径は10〜2000μm程度、好ましくは50〜1000μm程度である。筒状の強化材としては、組紐、織物、編物、不織布、パンチングシートまたはフィラメント糸で螺旋状に編んだスパイラルメッシュ等が例示され、好ましくは組紐が例示される。筒状強化材の厚みは10〜2000μm程度、好ましくは50〜1000μmと記載されている。特許文献3のスポンジの厚みは0.1〜5mm程度、好ましくは0.5〜2mm程度であり、スポンジの孔径は1〜500μm程度、好ましくは10〜200μm程度と記載されている。
しかしながら、特許文献3に記載のスポンジは神経再生に適切な神経軸策の伸長を考えた場合、それらスポンジの孔が、神経再生チューブの長手方向に対して連続であることを証明しなければ何の効果も期待できない。
仮に特許文献3に記載のように孔径が10〜200μmであることのみでは安定的な神経再生効果は望めない。さらに詳述すれば、スポンジの孔径が大きければ結合組織および線維芽細胞が通り得るため、それによって神経端部の架橋が妨げられ、他方、孔径が小さければ神経細胞の端部を挿入することができず、仮にできたとしてもその神経の再生が充填物自体によって阻害される。また、それらの製造工程に関して神経再生チューブの長手方向に連続的な孔を得ることが容易ではないことが、容易に推測可能である。
より詳述すれば特許文献2で述べたように、生体分解性の期間及び、縫合時の強度、針穴の拡大の問題である。
また、特許文献3に記載のシュワン細胞の潘種は、通常、傷害された神経の再生治療がもとめられている、整形外科領域では応用がほぼ不可能であると考えられる。即ち、これまでの技術で神経の再生がもとめられている多くの症例は事故などで四肢の末梢神経を損傷した場合の、その救急処置としての神経再生であることから、無論対象となるシュワン細胞の培養期間が設けられないためである。
さらに、特許文献3に記載のコラーゲンの使用は生物感染の危険性を考慮すれば命に関わる疾病以外には、できる限り合成材料の使用が望まれているのが現状である。例えこれらの生物由来材料を使用し、神経再生が促進しようとも生体由来材料の使用は、安全な医療を求める社会的要請と整合しないことは、先に述べた通りである。
われわれの調査例を以下に示す。
(1)ポリ乳酸製骨固定ピン :43.0ppm
(2)グリコール酸製インプラント用メッシュ :22.5ppm
(3)ポリジオキサン酸製縫合糸 :38.4ppm
(4)乳酸-グリコール酸共重合体製縫合糸 :24.7ppm
(5)グリコール酸-ポリジオキサン-トリメチレンカーボネート製縫合糸:58.6ppm、
いずれも20ppm以上のスズが含有されていた。
上記(1)から(5)の用途であれば、これらスズの残存は実使用上問題視されないが、神経再生を目的とする医療器具の場合、神経毒性を有する有機スズの残存量は神経再生効果及び、再生した神経の正常性に大きく影響を及ぼす可能性が容易に想定される。
現在、スズの含有濃度に着目した神経再生用のデバイスは発明されていない。
また、改めて述べると現在発明されている神経再生チューブには、管内充填物として、スポンジ等が記載され、神経再生を促す因子としては、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン分解酵素などの記載が見られるが、過去に出願されているほとんどの特許は、構成する材料の種類と形状にのみとらわれ、治療結果に大きく影響を及ぼすであろう、デバイスの物性に関する記載がほとんど為されていない。
以上の事から、神経再生チューブは従来より数多く検討されているにもかかわらず、それらの検討結果は実際に製品として医療分野で貢献するまでには到っていないのが現状である。
(1)従来の脂肪族ポリエステル系材料の医療用具は、スズ含有量が過多である点、
(2)従来の生物由来材料の使用による感染のリスクがある点、
(3)従来の脂肪族ポリエステル系材料は、
(A)神経再生までの強度維持の欠如がある点、
(B)神経再生後の分解吸収が遅延する点、
(C)縫合時の強度不足および、針穴の容易な拡大がある点、
(4)従来の神経再生管は、容易に管内閉塞(キンク)が生じる点、
(5)従来の神経再生管は、神経再生援助組織が欠乏する点である。
(A)スズの含有量が低減された生分解性材料より構成される。
(B)感染の危険性を持たない。
(C)神経断端からの神経の再生を妨げない。
(D)手術時の操作性に優れた物性を持つ。
神経再生チューブを提供することである。
以上の目的を達成する神経再生チューブとして、以下のような材料からなるデバイスの神経再生チューブが提供される。
[1]本発明は、脂肪族ポリエステル系樹脂により、細長い管状体に形成し、前記脂肪族ポリエステル系樹脂のスズ含有量が20ppm以下であり、
前記脂肪族ポリエステル系樹脂は、乳酸、グリコール酸及びε−カプロラクトンの三元共重合体であり、
当該三元共重合体は、
数平均分子量:100,000〜1,000,000、
モル比率は、乳酸:30〜90%、グリコール酸:5〜50%、ε−カプロラクトン:5〜75%であり、
管内にゲル状の充填物を充填し、当該充填物が自己血由来フィブリンゲルであり、
管壁が長手方向に対して垂直に山谷が連なる蛇腹構造であり、外力をかけない状態で山−山の間隔がチューブ半径以下であり、山−谷の垂直方向の落差がチューブ半径の10倍以下である神経再生チューブを提供する。
[2]本発明は、生体内で強度を80%以上失うまでの期間が4週間以上から24週間以内である[1]に記載の神経再生チューブを提供する。
[3]本発明は、神経断端と縫合可能で、5−0の絹糸による糸裂き強度が3N以上である[1]または[2]に記載の神経再生チューブを提供する。
[4]本発明は、JIS K 6301に準拠して100%まで材料を引き伸ばした際の永久伸び率(%)が50%以下である[1]から[3]のいずれか1に記載の神経再生チューブを提供する。
[5]本発明は、37℃における最小キンク角度が60度以下である[1]から[4]のいずれか1に記載の神経再生チューブを提供する。[6]本発明は、壁が多孔質の連続孔を有し、そのポアサイズが30μm以上から200μm以下である[1]から[5」のいずれか1に記載の神経再生チューブを提供する。
なお、本発明の神経再生チューブは今後管状の生体組織、より詳細には血管、胆管、尿管、食道、消化器官などの再生へ応用されることが期待される。
[神経再生チューブの概要]
本発明の神経再生チューブ1は、図1に例示するように、細長い管状体2から構成され、当該管状体2の内部に、充填物3が充填されている。
[神経再生チューブの材料]
本発明の神経再生チューブを構成する材料は、100%化学合成材料である脂肪族ポリエステル系樹脂が主成分として使用される。本発明の「脂肪族ポリエステル樹脂」とは、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリε−カプロラクトン、ポリジオキサン、ポリメチレンカーボネート並びに、これらのモノマーを二種類以上任意に組み合わせた共重合体等が挙げられる。これら材料の物性は、その組み合わせ、モル比率、分子量等によって、適宜調整することができる。
最も好ましい実施例は、乳酸、グリコール酸、ε−カプロラクトンの三元共重合体である。本発明の後述する性能(分解性、強度等)を、充足するために、三元共重合体の数平均分子量は100000〜1000000、モル比率(後述の実施例では、共重合比ともいう)は乳酸30〜90%、グリコール酸5〜50%、ε−カプロラクトン5〜75%が好ましい。
また本発明の神経再生チューブは、同性能(分解性、強度等)を充足できれば、前記「脂肪族ポリエステル樹脂」に、さらに、必要に応じて、少量の他の高分子材料を共重合、混合することもできるし、同性能を維持するための材料の積層および外添も可能である。
[神経再生チューブのスズ含有量]
本発明の材料で、第一に重要なのは、材料に含まれるスズの含有量である。現在市販されている脂肪族ポリエステル樹脂は、全てスズを触媒とした重合によって合成されている。使用される触媒は多様だが、中にはスズ系の有機化合物が利用されている。しかしながら有機スズは神経毒性を有する事が一般的に知られており、神経再生チューブとして使用する材料はスズの含有量を低減すべきである。
具体的なスズの含有量の低減の方法としては、如何なる方法にも限定されるものではないが、一般的な手法を挙げるのであれば、(1)無触媒合成、(2)他の金属触媒(チタン系、鉄系など)による合成、(3)精製工程の増加、(4)フィルターなどによる残留触媒の選択的除去などが挙げられる。神経や脳組織周辺へのインプラントとして使用するのであれば、いずれの方法によっても原材料のスズ含有量は可能な限り低減させるべきであり、現在工業的に製造可能である範囲として、20ppm以下に低減されるべきである。
[有機スズが持つ毒性について]
神経毒性を有する有機スズの一例として、塩化トリメチルスズを2000ppmの濃度で含有する生分解性ポリマーを0.85g、5匹のラット神経組織に埋植した。結果、いずれのラットも埋植後一週間以内に死亡した。
また塩化トリメチルスズは、ラットに対して2mg/kgの静脈投与により、海馬を破壊し、死に至らしめることが知られている。
これら事実より、神経組織周辺へのインプラントを目的とする材料のスズ含有量は、可能な限り低減させるべきであり、現在工業的に製造可能である範囲として、20ppm以下に低減されるべきである。
また本発明の他の特徴は、管状体、管状体内の充填物を併せて、自己由来以外の生物由来材料を一切含まないことである。ここで記載した自己由来材料とは望ましくは患者の自己血由来物質、更に望ましくは患者の自己血由来フィブリンゲル等が挙げられる。
[充填物]
また管状体内の充填物は、結合組織および線維芽細胞が侵入せず、且つ神経の再生を妨げない材料であり、術中に神経断端部を挿入可能な材料でなければならない。さらに望ましくは神経組織に対して再生に必要な栄養分を供給できる材料が良い。これら目的を達成できる好ましい材料は、実質的に液状、ゾル状またはゲル状物である。これらの具体例としては、前記した患者の自己血由来フィブリノーゲンリッチ成分を術場で混液し、ゲル状にした自己血由来フィブリンゲルを管状体内に充填して使用することができる。
まず材料の分解吸収期間についてであるが、神経が再生する間は形状を維持でき、神経再生後は速やかに分解吸収されるのが望ましい。切断された神経が再生し、架橋する以前に内腔が閉塞してしまえば、その目的は達成されない。反対に、神経が再生後も長期に渡って体内に異物が残存した場合、炎症反応や周辺組織の異常化を引き起こす可能性がある。この期間を具体的に示せば、生体内での破断強度が80%以上低下するまでの期間が4週間以上24週間以内の材料である。分解吸収期間の測定は、リン酸生理食塩液中での分解性試験を実施し、破断強度を測定する。
なお、脂肪族ポリエステル系材料で上記分解吸収期間の目的を達成するには、数平均分子量が100,000から1,000,000が望ましい。
次に、神経再生チューブは使用中にキンクしないことが重要である。生体内埋植後にキンクを生じれば、神経の伸張はキンク部分で止まり、切断した神経の再接続は不可能である。また、キンクするような神経再生チューブではキンクを避けるために術後に長期間神経再生部を固定する必要があり、このことは関節の拘縮をもたらす危険性がある。キンクしない神経再生チューブを用いれば、術後早期のリハビリテーションが可能になり、関節の拘縮などの危険を避けることが可能である。
なお本発明の「キンク」とは、管状体(チューブともいう)が折れ曲がったときに折れ曲がり部のチューブ断面積の60%以上が閉塞することである。
よって、37℃における神経再生チューブのキンク角度は図2に例示するように60度以下が望ましく、さらに望ましくは45度以下である。
なお「キンク角度」とは、キンクを生じるときのチューブ折れ曲がりの角度であり、チューブ折れ曲がりの角度は折れ曲がったチューブの、谷側の壁面が成す角度である。具体的な測定方法は、60度の角度を有する角にチューブの外面を密着させ、チューブ断面積の60%以上が閉塞されているか否かで評価するのが良い。
このような「耐キンク性」を向上させる為には、図3例示するようにその構造を管壁が長手方向に対して垂直に山13と谷14が連なる蛇腹構造にすることが効果的である。また蛇腹の具体的な構造は、外力をかけない状態で山13−山13の間隔がチューブ半径以下であり、山13−谷14の垂直方向の落差がチューブ半径の10倍以下であることが望ましい。山13−山13の間隔がチューブの半径より大きくなると、耐キンク性という目的に対して、蛇腹構造をとる意味がなくなり、山13と谷14の垂直方向の落差が半径の10倍を越えると実質的に、キンクを抑制する働きは小さくなりすぎる。
なお「蛇腹構造の山」とは、連続したスクリュウ状であっても良いし、それぞれの山が独立していてもよい。また山の先端形状は何でも良く、例えば、台形状、三角状、半円状等どのような形状でも良い。また蛇腹の谷の構造も、山の構造と同じく、何でも良い。さらに詳述すれば、前記した山13と谷14の形状の違い(変化)は、蛇腹構造の機能的な低下を生じない。なお「チューブ径」とは、蛇腹構造の谷の部分の径を意味する。
さらに加えれば、このような蛇腹構造を持つことは、内部に充填するゲル材料の流出を抑止するという効果も期待される。
神経再生チューブに神経断端を固定する際,および場合によっては神経再生チューブを周囲組織に固定する際に、縫合糸により縫合する。よって、神経再生チューブは縫合によって糸裂けを生じてはならない。以上より、室温における5-0の絹糸による糸裂き強度が3N以上であることが、本目的を達成する上で必要と考えられる。
また、神経再生チューブを縫合するにあたりの針穴の拡大という問題もある。通常、神経の断絶が起きた場合の縫合は、切れた神経を端部より若干張力をかけるようにして縫合するため、材料の性質によっては針穴の拡大を生じる。この問題に対しては、神経再生チューブの永久伸びの低減で対応可能である。神経再生チューブとして使用するには、材料の永久伸びはJIS K 6301に準拠して100%まで材料を引き伸ばした際に50%以下であることが望ましい。さらに好ましくは30%以下である。
[栄養成分の供給]
短距離の神経再生を目的とするデバイスであれば、神経再生チューブの外壁は緻密体で問題ない。しかしながら、長距離の神経再生(具体的な一例としては10mmであるがこの限りではない)を必要とする場合、管壁が多孔質の連続孔である方が望ましい。これは再生中の神経組織に対して、神経再生のために必要な体液中の栄養成分を供給する為である。しかしながら、管壁の孔から結合組織や線維芽細胞が侵入してしまっては神経再生チューブの目的を達成できない為、そのポアサイズは30μm以上から200μm以下、好ましくは100μm以下が望ましい。
乳酸−グリコール酸−ε-カプロラクトン(共重合比:60/22/18)、数平均分子量=200,000の原料を、チューブ径=3mm、長さ=20mm、外力をかけない状態で山の間隔が0.4mmであり、山−谷の垂直方向の落差が0.12mmである蛇腹構造に熱加工する事で、神経再生チューブを作製した。チューブの厚さは0.1mmとした。また、残存スズ濃度は最大限生成を繰り返し、18ppmとした。
ラットの坐骨神経を切断して15mmの欠損を作製し、図4に示すように切断されたそれぞれの神経末端を神経再生チューブの端部から挿入し、7-0縫合糸で固定した。神経再生チューブを埋植後、神経再生に要する期間を測定した。
以上の評価の結果、本神経再生チューブでは4週間で神経端部同士の接続が見られた。しかしながら、接続した神経の径は、前後の坐骨神経と比較して細かった。
比較例1
グリコール酸−ε-カプロラクトン(共重合比:80/20)、数平均分子量=20,000、残存スズ濃度=18ppmの原料を、チューブ径=3mm、長さ=20mm、外力をかけない状態で山の間隔が0.4mmであり、山−谷の垂直方向の落差が0.12mmである蛇腹構造に熱加工する事で、神経再生チューブを作製した。チューブの厚さは0.1mmとした。
本神経再生チューブを、37℃のPBS中に浸漬した結果、4週間後には加水分解が進行し、神経再生チューブはその形状を維持していなかった。本結果及び実施例1の結果より、本材料を神経再生チューブとして使用した場合、神経が架橋する4週間の間に、神経両端部の間に軟組織が入り込み、神経の再生が為されない事が容易に想像できる。
本神経再生チューブに対して分解性試験を実施した後、破断強度を測定した。その結果、破断強度が初期の20%以下になる期間は3日であった。
実施例2
乳酸−グリコール酸−ε-カプロラクトン(共重合比:70/20/10)、数平均分子量=120,000、残存スズ濃度=16ppmの原料をチューブ径=3mm、長さ=20mm、外力をかけない状態で山の間隔が0.4mmであり、山−谷の垂直方向の落差が0.12mmである蛇腹構造に熱加工する事で、神経再生チューブを作製した。チューブの厚さは0.1mmとした。
実験に使用するラットより術前に無菌的に血液を採取し、遠心操作により分離したプラズマをチューブに注入し内部でゲル化させることにより、神経再生チューブ内に充填した。
ラットの坐骨神経を切断して15mmの欠損を作製し、図4に示すように切断されたそれぞれの神経末端を神経再生チューブの端部に挿入し、7-0縫合糸で固定した。このように神経再生チューブを埋植後、所定の期間飼育した。
4週間後にラットに埋植した神経再生チューブを解剖し、神経欠損部を観察した結果、神経端部同士の架橋が認められた。チューブ内部にフィブリンゲルを充填した本デバイスは、再生した神経が太く成長しており、前後の坐骨神経と比較して遜色ないものであった。
実施例3
乳酸−グリコール酸−ε-カプロラクトン(共重合比:80/10/10)、数平均分子量=120,000、残存スズ濃度=18ppmの原料を、チューブ径=2.5mm、長さ=20mm、外力をかけない状態で山の間隔が0.35mmであり、山−谷の垂直方向の落差が0.135mmである蛇腹構造に熱加工する事で、神経再生チューブを作製した。チューブの厚さは0.1mmとした。
また、同様の原料を内径=2.5mm、長さ=20mmの、ストレートの管状体に熱加工する事で、神経再生チューブを作製した。チューブの厚さは同様に0.1mmとした。
これら両チューブに対して、図5に示す方法で、側面からの圧縮強度試験を実施した。すなわちチューブを上下の台の間において、上側面から3mm /secの速度で圧縮し、圧縮抵抗とチューブの変形の相関を図6にプロットした。その結果、圧縮抵抗は蛇腹構造を有するチューブのほうが遥かに高かった(縮み0.5mmにおいて約3倍)。以上の結果より、蛇腹構造を有する神経再生チューブは、生体内において外力が加わった際にもより良好な内腔確保状態を維持出来ることが示唆された。
実施例4
乳酸−グリコール酸−ε-カプロラクトン(共重合比:80/10/10)、数平均分子量=120,000、残存スズ濃度=18ppmの原料を、チューブ径=2.5mm、長さ=20mm、外力をかけない状態で山の間隔が0.35mmであり、山−谷の垂直方向の落差が0.135mmである蛇腹構造に熱加工する事で、神経再生チューブを作製した。チューブの厚さは0.1mmとした。
また、同様の原料を内径=2.5mm、長さ=20mmの、ストレートの管状体に熱加工する事で、神経再生チューブを作製した。チューブの厚さは同様に0.1mmとした。
これら両チューブに対して図7に示す方法でキンク角度測定試験を実施した。すなわち8mm間隔をあけた二つ台上に神経再生チューブを設置し、中央を送り速度1mm/secで押し込んだ。押し込み距離を1mm(チューブの折れ曲がり角度:28.1°)、2mm(チューブの折れ曲がり角度:53.1°)、3mm(チューブの折れ曲がり角度:73.7°)、4mm(チューブの折れ曲がり角度:90.0°)のそれぞれの条件で評価した結果、ストレート構造の神経再生チューブは3mm(チューブの折れ曲がり角度:73.7°)押し込んだ時点でキンクし、内腔はほとんど確保されていなかった。対して蛇腹構造の神経再生チューブは4mm(チューブの折れ曲がり角度:90.0°)押し込んでも全くキンクする様子はなく、内腔は確保されていた。
以上のことから、蛇腹構造を有する神経再生チューブは、生体内で外力や屈曲が常時加わる、関節可動領域などの移植にも使用可能と考えられる。
2 管状体
3 充填物
12 管状体(蛇腹構造)
13 山
14 谷
Claims (6)
- 脂肪族ポリエステル系樹脂により、細長い管状体に形成し、前記脂肪族ポリエステル系樹脂のスズ含有量が20ppm以下であり、
前記脂肪族ポリエステル系樹脂は、乳酸、グリコール酸及びε−カプロラクトンの三元共重合体であり、
当該三元共重合体は、
数平均分子量:100,000〜1,000,000、
モル比率は、乳酸:30〜90%、グリコール酸:5〜50%、ε−カプロラクトン:5〜75%であり、
管内にゲル状の充填物を充填し、当該充填物が自己血由来フィブリンゲルであり、
管壁が長手方向に対して垂直に山谷が連なる蛇腹構造であり、外力をかけない状態で山−山の間隔がチューブ半径以下であり、山−谷の垂直方向の落差がチューブ半径の10倍以下である、
ことを特徴とする神経再生チューブ。 - 生体内で強度を80%以上失うまでの期間が4週間以上から24週間以内である請求項1に記載の神経再生チューブ。
- 神経断端と縫合可能で、5−0の絹糸による糸裂き強度が3N以上である請求項1または請求項2に記載の神経再生チューブ。
- JIS K 6301に準拠して100%まで材料を引き伸ばした際の永久伸び率(%)が50%以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の神経再生チューブ。
- 37℃における最小キンク角度が60度以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の神経再生チューブ。
- 壁が多孔質の連続孔を有し、そのポアサイズが30μm以上から200μm以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の神経再生チューブ。
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