本発明の電子写真用カプセルトナー(以下単に「カプセルトナー」という)は、コア粒子表面をシェル層によって被覆してなるコア/シェル型構造を有するトナーである。
[シェル層]
シェル層は、ポリエーテルポリオール樹脂を含有する。ポリエーテルポリオール樹脂としては公知のものを使用でき、たとえば、エポキシ樹脂と、エポキシ基との反応性を有する活性水素を持つ化合物(以下「活性水素化合物」という)との反応物であるポリエーテルポリオール樹脂が挙げられる。このポリエーテルポリオール樹脂は、数平均分子量(GPC法)が好ましくは1000〜10000、さらに好ましくは2000〜5000である。
エポキシ樹脂としては、たとえば、一般式
〔式中、R1およびR2は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、メチル基、エチル基またはフェニル基であり、nは0以上の整数である。〕
で表されるビスフェノール型エポキシ樹脂(以下「ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)」という)を使用できる。上記一般式(1)において、nは好ましくは0〜2である。ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)のゲルパーミエーション(GPC)法による数平均分子量は300〜1000、好ましくは350〜800である。またビスフェノール型エポキシ樹脂(1)のエポキシ当量は150〜500(g/eq)、好ましくは170〜400(g/eq)である。
活性水素化合物としては、たとえば、1価フェノール類、2価フェノール類、カルボン酸類、アルコール類、2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物(以下「アルキレンオキサイド付加物」という)などが挙げられる。
1価フェノール類としては、たとえば、フェノール、クレゾール、イソプロピルフェノール、アミノフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、キシレノール、p−クミルフェノール、p−オクチルフェノール、t−ブチルフェノールなどが挙げられる。1価フェノール類は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
2価フェノール類としては、たとえば、一般式
〔式中、R3およびR4は同一でも異なっていてもよく、水素原子、メチル基、エチル基またはフェニル基である。〕
で表される2価フェノール(以下「2価フェノール(2)」という)が挙げられる。2価フェノール(2)の具体例としては、たとえば、ハイドロキノン、レゾルシンなどの単核2価フェノール類、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールAD)などが挙げられる。2価フェノール類は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
カルボン酸類としては、たとえば、一般式
R5(COOH)m …(3)
〔式中R5は炭素数1〜20のアルキル基またはフェニル基を示す。mは1〜4の整数である。〕
で表されるカルボン酸(以下「カルボン酸(3)」という)が挙げられる。一般式(3)において、mが1〜4の整数であることによって、製造時の反応制御が容易になる。またmは、1〜3の整数であることが好ましい。
カルボン酸(3)の具体例としては、たとえば、酢酸、プロピオン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アクリル酸、オレイン酸、アラキン酸、リノール酸、ヒマシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、安息香酸などの1価カルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、マレイン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、マコン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸などの2価カルボン酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシルプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸などの3価以上の多価カルボン酸などが挙げられる。カルボン酸類は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
アルコール類としては、たとえば、一般式
R6(OH)q …(4)
〔式中mは上記に同じ。R6は炭素数1〜10のアルキル基またはアルキレン基を示す。qは1〜20の整数を示す。〕
で表されるアルコール(以下「アルコール(4)」という)が挙げられる。一般式(4)において、qが1〜20の整数であることによって、製造時の反応制御が容易になる。またqは、1〜3の整数であることが好ましい。
アルコール(4)の具体例としては、たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノールなどの1価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオールなどの2価アルコール、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエルスリトール、ジペンタエルスリトール、トリペンタエルスリトール、ショ糖、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンなどの多価アルコールなどが挙げられる。アルコール類は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
アルキレンオキサイド付加物としては、たとえば、一般式
〔式中、R7およびR8は同一でも異なっていてもよく、エチレン基またはプロピレン基を示す。R9およびR10は同一でも異なっていてもよく、水素原子、グリシジル基または酸無水物付加基を示す。xおよびyは1以上の整数を示し、x+yは2〜10である。〕
で表されるアルキレンオキサイド付加物(以下「アルキレンオキサイド付加物(5)」という)が挙げられる。
アルキレンオキサイド付加物(5)の具体例としては、たとえば、ポリオキシエチレン−(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(1,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(1,1)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2,2)−ポリオキシエチレン−(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(3,3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。また本発明においては、p−キシレングリコール、m−キシレングリコールなどの芳香族ジオールも使用できる。アルキレンオキサイド付加物は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
また本発明においては、酸付加型ポリエーテルポリオール樹脂も、ポリエーテルポリオール樹脂として使用できる。酸付加型ポリエーテルポリオール樹脂は、ポリエーテルポリオール樹脂と酸無水物とを反応させることによって製造できる。またポリエーテルポリオール樹脂の第二級水酸基とラクトン類とを反応させた後、酸無水物を付加することによって製造できる。酸付加型ポリエーテルポリオール樹脂は、分子内にカルボン酸ハーフエステル基を含む。その量は、酸価として2〜50KOHmg/g、好ましくは5〜30(KOHmg/g)である。酸価がこの範囲にあることによって、トナー化した時、荷電調整剤を多量に用いることなく、容易に帯電させることができる点で好ましい。さらに、酸付加型ポリエーテルポリオール樹脂をシェル層に含むことによって、高湿下でも帯電性能の低下が少ないカプセルトナーが得られる。
酸付加型ポリエーテルポリオール樹脂の軟化点は、80〜140℃であり、好ましくは85℃〜130℃である。軟化点がこの範囲にあることによって、定着開始温度を低くすることができ、低温定着化の点から好ましい。酸付加型ポリエーテルポリオール樹脂のガラス転移点(Tg)は50〜90℃、好ましくは55〜60℃である。ガラス転移点(Tg)がこの範囲にあることによって、高温・高湿度下における耐ブロッキング性が向上する。酸付加型ポリエーテルポリオール樹脂は、数平均分子量(GPC法)が、通常1000〜10000程度、好ましくは2000〜5000程度である。重量平均分子量は、通常2000〜80000程度、好ましくは5000〜50000程度である。平均分子量がこの範囲にあることによって、定着温度幅を調整することができる点から好ましい。
酸無水物は、多塩基酸の二個のカルボキシル基が脱水縮合した化合物であり、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビスグリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、無水マレイン酸、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、アルケニル無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、クロレンド酸無水物、テトラブロム無水フタル酸などなどが挙げられる。酸無水物は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。ポリエーテルポリオール樹脂に対する酸無水物の使用割合は特に制限されないけれども、好ましくはポリエーテルポリオール樹脂100重量部に対して、好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは1〜10重量部である。これによって、酸価2〜50KOHmg/gの酸付加型ポリエーテルポリオールが得られる。
ラクトン類としては、たとえば、β−プロピオラクトン、ジメチルプロピオラクトン、ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−カプリロラクトン、γ−ラウロラクトン、γ−パルミトラクトン、γ−ステアロラクトン、クロトラクロン、α−アンゲリラクトン、β−アンゲリラクトン、σ−バレロラクトン、σ−カプロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。ラクトン類は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
また本発明において、ポリエーテルポリオール樹脂および酸付加型ポリエーテルポリオール樹脂の合成に際しては、前記した必須化合物の他に、ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)以外の二官能エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、2価フェノール(2)以外の2価フェノール、多価フェノールなどのフェノール化合物などから選ばれる1種または2種以上を使用できる。これらのエポキシ樹脂およびフェノール化合物は、その合計量で、得られるポリエーテルポリオール樹脂の全重量における30重量%以下の割合でポリエーテルポリオール樹脂に含まれるのが好ましい。またこれらのエポキシ樹脂およびフェノール化合物を用いる場合は、得られるポリエーテルポリオール樹脂の数平均分子量が1000〜10000、好ましくは2000〜5000となるように使用することが好ましい。
ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)以外の二官能エポキシ樹脂としては、たとえば、エーテル化ジフェノール類のジグリシジル化物、グリセロールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルなどの脂肪族二官能エポキシ樹脂、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、ジグリシジルp−オキシ安息香酸などのジグリシジルエステル類などが挙げられる。二官能エポキシ樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
多官能エポキシ樹脂としては、たとえば、多価フェノール類のポリグリシジル化物、グリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネレート、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルなどの脂肪族多官能エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルm−アミノフェノール、テトラグリシジルm−キシリレンジアミンなどのグリシジルアミンなどが挙げられる。多官能エポキシ樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
2価フェノール(2)以外の2価フェノールとしては、たとえば、ハイドロキノン、レゾルシンなどの単核2価フェノール類、1,4−ビス〔α−(4−ヒドロキシフェニル)−α−メチルエチル〕ベンゼンなどの三核2価フェノール類などが挙げられる。2価フェノール(2)以外の2価フェノールは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
多価フェノールとしては、たとえば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などのフェノール/ホルマリン縮合物、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1−〔α−メチル−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α’,α’−ビス(4”−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼンなどが挙げられる。多価フェノールは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
ポリエーテルポリオール樹脂および酸付加型ポリエーテルポリオール樹脂は、前記したエポキシ樹脂および化合物を原料化合物として用い、一段の重合および付加反応(以下「重付加反応」という)によって製造できる。重付加反応は、触媒の存在下、適当な溶媒中にて行われる。触媒としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、ナトリウムメチラートなどのアルカリ金属アルコラート、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどの第3級アミン、テトラメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリドなどの第4級アンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリエチルホスフィンなどの有機リン化合物、塩化リチウム、臭化リチウムなどのアルカリ金属塩、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化スズなどのルイス酸などが挙げられる。触媒の使用量は特に制限されないけれども、原料化合物の全重量に対して、通常1〜1000ppm、好ましくは5〜500ppmである。溶媒としては、キシレン、トルエンなどの芳香族化合物、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエ−テル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル類、N,N−ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルホキシド、1−メチル−2−ピロリジノンなどの非プロトン性極性溶媒を例示することができる。これらの溶媒は1種単独でも2種以上を混合して使用することもできる。溶媒の使用量は特に制限されないけれども、原料化合物の全重量の1〜100%、好ましくは5〜50%である。重付加反応の反応温度は、触媒量に応じて適宜選択されるけれども、通常は120〜180℃程度である。また重付加反応は、一般的にはエポキシ当量、軟化点、GPCによる数平均分子量を測定することによって追跡することが可能であるけれども、本発明では、実質的にエポキシ基が消失した時点、すなわち、エポキシ当量として20000g/当量以上となった時点を反応終点とする方法が簡便である。エポキシ当量の測定方法は、以下の通りである。
〔エポキシ当量〕
試料0.2〜5gを200mlの三角フラスコに入れた後、ジオキサン25mlを加えて溶解させた。これに塩酸の0.2Nジオキサン溶液25mlを加え、密栓して充分混合した後、30分間静置した。次に、トルエン−エタノール混合溶液(1:1容量比)50mlを加えた後、クレゾールレッドを指示薬として1/10規定水酸化ナトリウム水溶液を滴定した。滴定結果に基づいて下記式に従ってエポキシ当量(g/当量)を算出した。
エポキシ当量(g/当量)=1000×W/〔(B−S)×N×F〕
W:試料採取量(g)
B:空試験に要した水酸化ナトリウム水溶液の量(ml)
S:試料の試験に要した規定水酸化ナトリウム水溶液の量(ml)
N:水酸化ナトリウム水溶液の規定度
F:水酸化ナトリウム水溶液の力価
このようなポリエーテルポリオール樹脂の軟化点は、80〜140℃であり、好ましくは85℃〜130℃である。軟化点がこの範囲にあることによって、定着開始温度を低くすることができ、低温定着化の点から好ましい。
ポリエーテルポリオール樹脂のガラス転移点(Tg)は、50〜90℃であるけれども、55℃以上65℃以下であることが好ましい。ガラス転移点(Tg)がこの範囲にあることによって、高温・高湿度下における耐ブロッキング性が向上する。ガラス転移点(Tg)が55℃未満では、保存中にカプセルトナー同士が融着し、保存安定性が低下するおそれがある。またガラス転移点(Tg)が65℃を超えると、コア粒子との接着強度が弱くなり、被覆率を高めることができず、保存安定性が低下する。
ポリエーテルポリオール樹脂は、数平均分子量(GPC法)が、通常1000〜10000程度、好ましくは2000〜5000程度である。重量平均分子量は、通常2000〜80000程度、好ましくは5000〜50000程度である。平均分子量がこの範囲にあることによって、定着温度幅を調整することができる点から好ましい。また数平均分子量が1000以上10000以下であるポリエーテルポリオール樹脂は、軟化点Tmおよびガラス転移点Tgが好適な範囲に保持され、樹脂自体が高い安定性を有するので、定着性および保存安定性を一層向上させることができ、長期的にも優れた定着性および保存安定性が保持される。
ポリエーテルポリオール樹脂の水酸基価は、50KOHmg/g以上であることが好ましく、50KOHmg/g以上200KOHmg/g以下であることがさらに好ましい。水酸基価が50KOHmg/g未満であると、コア粒子との接着強度が弱くなり、被覆率を高めることができず、保存安定性が低下するおそれがある。ポリエーテルポリオール樹脂の酸価は、少ないほど好ましく、100KOHmg/g以下であることが好ましい。
またポリエーテルポリオール樹脂の圧縮強度は、0.5kgf/mm2以上20kgf/mm2以下であることが好ましい。ポリエーテルポリオール樹脂の圧縮強度がこのような範囲であると、加熱および加圧によってカプセルトナーを定着させる定着手段によって加圧されることによって、シェル層が破壊され易くなり、記録媒体に対するカプセルトナーの低温定着性を向上させることができる。ポリエーテルポリオール樹脂の圧縮強度が0.5kgf/mm2未満であると、圧縮強度が弱くなり過ぎ、保存安定性が低下する。ポリエーテルポリオール樹脂の圧縮強度が20kgf/mm2を超えると、低温定着性が低下する。
ここで樹脂の圧縮強度は、島津製作所株式会社製の微小圧縮試験機MCT−W500を使用して測定した値である。具体的には、25℃の環境下において、測定試料である樹脂粒子1個を一定の負荷速度で1gfの荷重まで圧縮し、粒子径が10%変形した時の荷重を測定し、その測定値と圧縮前の粒子径とを下記式に代入することにより算出される値である。樹脂粒子の粒子径は、微小圧縮試験機によって得られる粒子径である。
圧縮強度(kgf/mm2)
=2.8×荷重(kgf)/{π×粒子径(mm)×粒子径(mm)}
ポリエーテルポリオール樹脂は、微粒子の形態で用いるのが好ましい。微粒子の粒径は特に制限されないけれども、好ましくは30〜500nm、さらに好ましくは30〜250nmである。このような粒径範囲の微粒子を用いることによって、コア粒子表面に層厚の均一なシェル層を形成できるとともに、トナーを定着させるときに、シェル層に含まれるポリエーテルポリオール樹脂とコア粒子に含まれる合成樹脂とが混じり合い易い。
ポリエーテルポリオール樹脂の微粒子は、公知の方法に従って製造できるけれども、形状が均一でかつ粒度分布の狭い微粒子を得るために、高圧ホモジナイザ法によって製造することが好ましい。高圧ホモジナイザ法によれば、形状が均一で、nm単位の粒径を持ち、かつ粒度分布の狭い微粒子を得ることができる。本明細書において、高圧ホモジナイザ法とは高圧ホモジナイザを用いて合成樹脂などの微粉化または粒状化を行う方法であり、高圧ホモジナイザとは加圧下に粒子を粉砕する装置である。
高圧ホモジナイザとしては、市販品、特許文献に記載のものなどを使用できる。高圧ホモジナイザの市販品としては、たとえば、マイクロフルイダイザー(商品名、マイクロフルディクス(Microfluidics)社製)、ナノマイザー(商品名、ナノマイザー社製)、アルティマイザー(商品名、株式会社スギノマシン製)などのチャンバ式高圧ホモジナイザ、高圧ホモジナイザ(商品名、ラニー(Rannie)社製)、高圧ホモジナイザ(商品名、三丸機械工業株式会社製)、高圧ホモゲナイザ(商品名、株式会社イズミフードマシナリ製)、ナノ3000(商品名、株式会社美粒製)などが挙げられる。また、特許文献に記載の高圧ホモジナイザとしては、たとえば、国際公開第03/059497号パンフレットに記載のものが挙げられる。これらの中でも、国際公開第03/059497号パンフレットに記載の高圧ホモジナイザが好ましい。該高圧ホモジナイザを用いる樹脂粒子の製造方法の一例を図1に示す。
図1は、樹脂粒子の製造方法を概略的に示すフローチャートである。図1に示す製造方法は、粗粉末調製工程S1と、スラリー調製工程S2と、粉砕工程S3と、冷却工程S4と、減圧工程S5とを含む。これらの工程のうち、国際公開第03/059497号パンフレットに記載の高圧ホモジナイザを用いる高圧ホモジナイザ法は、粉砕工程S3、冷却工程S4および減圧工程S5の各工程である。以下、図1に示す樹脂粒子の製造方法について具体的に説明する。
〔粗粉末調製工程S1〕
粗粉末調製工程S1では、ポリエーテルポリオール樹脂を粗粉砕して粗粉末を得る。ポリエーテルポリオール樹脂の粗粉末は、たとえば、ポリエーテルポリオール樹脂を溶融混練し、得られる溶融混練物を冷却し、得られる冷却固化物を粉砕することによって得られる。シクロオレフィン共重合樹脂の溶融混練物は、たとえば、ポリエーテルポリオール樹脂をその溶融温度以上の温度に加熱しながら、溶融混練することにより製造できる。溶融混練には、二軸押出機、三本ロール、ラボブラストミルなどの一般的な混練機を使用できる。さらに具体的には、たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87(商品名、株式会社池貝製)などの1軸もしくは2軸の押出機、ニーディックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式のものが挙げられる。シクロオレフィン共重合樹脂の溶融混練物は冷却されて固化物となる。この冷却固化物は、カッターミル、フェザーミル、ジェットミルなどの粉体粉砕機によって粗粉砕され、ポリエーテルポリオール樹脂の粗粉末が得られる。粗粉末の粒径は特に制限されないけれども、好ましくは450〜1000μm、さらに好ましくは500〜800μm程度である。
〔スラリー調製工程S2〕
スラリー調製工程S2では、粗粉末調製工程で得られるポリエーテルポリオール樹脂の粗粉末(以下特に断らない限り単に「粗粉末」という)と液体とを混合し、液体中に粗粉末を分散させることによって、粗粉末スラリーを調製する。粗粉末と混合する液体には、該粗粉末を溶解せずかつ均一に分散させ得る液状物であれば特に制限されないけれども、工程管理の容易さ、全工程後の廃液処理などを考慮すると、水が好ましく、分散安定剤を含む水がさらに好ましい。分散安定剤は、粗粉末を水に添加する前に、水に添加しておくのが好ましい。
分散安定剤としては特に制限されず、この分野で常用されるものを使用できる。その中でも、水溶性高分子分散安定剤が好ましい。水溶性高分子分散安定剤としては、たとえば、(メタ)アクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのアクリル系単量体、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルなどの水酸基含有アクリル系単量体、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステルなどのエステル系単量体、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのビニルアルコール系単量体、ビニルアルコールとのエーテル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなどのビニルアルキルエーテル系単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルアルキルエステル系単量体、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、これらのメチロール化合物などのアミド系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系単量体、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド系単量体、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどのビニル窒素含有複素環系単量体、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、メタクリル酸アリル、ジビニルベンゼンなどの架橋性単量体などから選ばれる1種または2種の親水性単量体を含む(メタ)アクリル系ポリマー、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系ポリマー、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸カリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル硫酸アンモニウムなどのポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸カリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウムなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩などが挙げられる。分散安定剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。分散安定剤の添加量は特に制限はないけれども、好ましくは水と分散安定剤との合計量の0.05〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜3重量%である。
ポリエーテルポリオール樹脂の粗粉末と液体との混合は、一般的な混合機を用いて行われ、それによって粗粉末のスラリーが得られる。ここで、液体に対する粗粉末の添加量は特に制限はないけれども、好ましくは粗粉末と液体との合計量の3〜45重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。また粗粉末と水との混合は加熱下または冷却下に実施してもよいけれども、通常は室温下に行われる。混合機としては、たとえば、ヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。こうして得られる粗粉末スラリーはそのまま粉砕工程S3に供してもよいけれども、たとえば、前処理として一般的な粗粉砕処理を施し、粗粉末の粒径を好ましくは100μm前後、さらに好ましくは100μm以下に粗粉砕してもよい。粗粉砕処理は、たとえば、粗粉末スラリーを高圧下にてノズルに通過させることによって行われる。
〔粉砕工程S3〕
粉砕工程S3では、スラリー調製工程S2で得られる粗粉末スラリーを加熱加圧下に耐圧ノズルに通過させることによって、粗粉末を粉砕して樹脂微粒子とし、樹脂微粒子のスラリーを得る。粗粉末スラリーの加圧加熱条件は特に制限されないけれども、50〜250MPaに加圧されかつ50℃以上に加熱されるのが好ましく、50〜250MPaに加圧されかつ90℃以上に加熱されるのがさらに好ましく、50〜250MPaに加圧されかつ90〜Tm+25℃(Tm:フローテスターよるポリエーテルポリオール樹脂の1/2軟化温度、℃)に加熱されるのが特に好ましい。50MPa未満では、せん断エネルギー小さくなり、充分な小粒子径化が出来ないおそれがある。250MPaを超えると、実際の生産ラインにおいて危険性が大きくなり過ぎ、現実的ではない。粗粉末スラリーは、前記範囲の圧力および温度で耐圧ノズルの入口から耐圧ノズル内に導入される。
耐圧ノズルとしては、液体流過が可能な一般的な耐圧ノズルを使用できるけれども、たとえば、液体流過路を複数有する多重ノズルを好ましく使用できる。多重ノズルの液体流過路は多重ノズルの軸心を中心とする同心円状に形成してもよく、または複数の液体流過路が多重ノズルの長手方向にほぼ平行に形成されたものでもよい。多重ノズルの一例としては、入口径および出口径0.05〜0.35mm程度、並びに長さ0.5〜5cmの液体流過路が1または複数、好ましくは1〜2程度形成されたものが挙げられる。また耐圧ノズルとして、図2に示すものが挙げられる。
図2は、耐圧ノズル1の構成を模式的に示す断面図である。耐圧ノズル1はその内部に液体流過路2を有し、液体流過路2は鉤状に屈曲している。耐圧ノズルの構成は、これに限定されることなく、液体流過路が直線状に形成されてもよい。粗粉末スラリーは、矢符4の方向から流過路内に進入し、背圧によって粗粉末が粉砕され、より小径化された樹脂微粒子となって耐圧ノズル1から排出される。この耐圧ノズル1においては、入口径と出口径とを同寸法に形成されるけれども、それに限定されず、出口径を入口径よりも小さく形成してもよい。耐圧ノズルは1つ設けてもよく、または複数設けてもよい。耐圧ノズルの出口から排出されるスラリーは、たとえば、粒径30nm〜10μm程度の小径化された樹脂微粒子を含み、60〜Tm+60℃(Tmは前記に同じ、℃)に加熱され、かつ50〜200MPa程度に加圧されている。
〔冷却工程S4〕
冷却工程S4では、粉砕工程S3で得られる小径化された樹脂微粒子を含み加熱加圧状態にあるスラリーを冷却する。冷却工程S4では、前工程において耐圧ノズルから排出されるスラリーを冷却する。冷却には、耐圧構造を有する一般的な液体冷却機をいずれも使用でき、その中でも蛇管式冷却機のように冷却面積の大きい冷却機が好ましい。また冷却機入口から冷却機出口に向けて、冷却勾配が小さくなるように(または冷却能力が低くなるように)構成するのが好ましい。これによって、樹脂微粒子の小径化が一層効率的に達成される。また樹脂微粒子同士の再付着による粗大化を防止し、小径化樹脂微粒子の収率を向上させることができる。前工程において耐圧ノズルから排出される小径化樹脂微粒子含有スラリーは、たとえば、冷却機入口から冷却機内部に導入され、冷却勾配を有する冷却機内部での冷却を受け、冷却機出口から排出される。冷却機は1つ設けてもよくまたは複数設けてもよい。
〔減圧工程S5〕
減圧工程S5では、冷却工程S4で得られる樹脂微粒子を含む加圧されたスラリーの圧力を、バブリング(泡の発生)が起こらない程度の圧力まで減圧する。冷却工程S4から減圧工程S5に供給されるスラリーは、5〜80MPa程度に加圧された状態である。減圧は、段階的に徐々に行うのが好ましい。この減圧操作には、国際公開第03/059497号パンフレットに記載の多段減圧装置を用いるのが好ましい。
冷却工程S4で得られる樹脂微粒子を含む加圧されたスラリーは、たとえば、冷却工程S4と減圧工程S5との間に耐圧性配管を設け、該耐圧性配管上に供給ポンプおよび供給バルブを設けることによって、冷却工程S4から減圧工程S5に供給され、該多段減圧装置に導入される。多段減圧装置は、樹脂微粒子を含み加圧状態にあるスラリーを該多段減圧装置内に導入する入口通路と、入口通路に連通するように形成されて、樹脂微粒子を含む減圧されたスラリーを該多段減圧装置の外部に排出する出口通路と、入口通路と出口通路との間に設けられて、連結部材を介して2以上の減圧部材が連結されてなる多段減圧手段とを含んで構成される。
多段減圧装置において、多段減圧手段に用いられる減圧部材としては、たとえば、パイプ状部材が挙げられる。連結部材としては、たとえば、リング状シールが挙げられる。内径の異なる複数のパイプ状部材をリング状シールにて連結することによって多段減圧手段が構成される。たとえば、入口通路から出口通路に向けて、同じ内径を有するパイプ状部材を2〜4個連結し、次にこれらよりも内径の大きなパイプ状部材を1個連結し、さらに、大きなパイプ状部材よりも5〜20%程度内径の小さなパイプ状部材を1〜3個程度連結することによって、パイプ状部材内を流過する樹脂微粒子を含むスラリーが徐々に減圧され、最終的にはバブリングが起こらない大気圧まで減圧される。多段減圧手段の周囲に冷媒または熱媒を用いる熱交換手段を設け、樹脂粒子を含むスラリーに付加されている圧力(以下「背圧」という)の値に応じて、冷却または加熱を行ってもよい。多段減圧装置は1つ設けてもよくまたは複数設けてもよい。多段減圧装置内で減圧された樹脂微粒子を含むスラリーは、出口通路から該多段減圧装置の外部に排出される。
このようにして、粒径30nm〜10μm程度の小径化された樹脂微粒子を含むスラリーが得られる。このスラリーは、そのまま後述のカプセルトナーの製造に使用できる。また該スラリーから単離される小径化された樹脂微粒子を新たにスラリー化してもよい。該スラリーから樹脂微粒子を単離するには、濾過、遠心分離などの一般的な分離手段が用いられる。上記の粒状化方法では、S1〜S5までの工程を1度だけ実施してもよく、S1〜S5までの工程を1度実施した後、S3〜S5までの工程を繰返し実施してもよい。前記S3〜S5の工程を実施するための装置は市販されており、たとえば、NANO3000(商品名、株式会社美粒製)が挙げられる。
[コア粒子]
コア粒子は、ポリエーテルポリオール樹脂とは異なる種類の合成樹脂を含有する。本発明のカプセルトナーに用いられるコア粒子は、結着樹脂および着色剤を含有し、さらに離型剤、帯電制御剤などを含有してもよい。結着樹脂としては、ポリエーテルポリオール樹脂とは異なる種類の合成樹脂であって、ポリエーテルポリオール樹脂との相溶性が比較的良好で、かつ低温での記録媒体への定着が可能なものであれば、従来からトナー用結着樹脂として用いられるものがいずれも使用できる。その具体例としては、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルサルホン、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸樹脂、スチレン−メタクリル酸樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンなどの熱硬化性樹脂などが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
上記例示した中でも、ポリエステルを用いることが特に好ましい。結着樹脂としてポリエステルを用いることによって、カプセルトナー中におけるシェル層の重量の割合である被覆率を向上することができる。これによって、本発明のカプセルトナーからなる画像の記録媒体に対する定着強度が一層向上するとともに、本発明のカプセルトナーの小径化にも有利となる。カプセルトナーを一層小径化することができれば、さらにトナー消費量を低減化できる。さらにポリエステルは透明性に優れ、得られる凝集粒子に良好な粉体流動性、低温定着性、二次色再現性などを付与できるので、たとえばカプセルトナーをカラートナーとして用いる場合、特に好適である。
さらにポリエーテルポリオール樹脂とは異なる種類の合成樹脂は、酸価が5KOHmg/g以上200KOHmg/g以下であることが好ましい。酸価が5KOHmg/g未満であると、シェル強度が弱くなり、酸価が200KOHmg/gを超えると、耐環境性が低下する。
またポリエーテルポリオール樹脂とは異なる種類の合成樹脂は、圧縮強度がポリエーテルポリオール樹脂よりも高いことが好ましい。ポリエーテルポリオール樹脂とは異なる種類の合成樹脂の圧縮強度がポリエーテルポリオール樹脂の圧縮強度よりも大きいと、シェル層の圧縮強度をコア粒子の圧縮強度よりも小さくすることができる。これによって、加熱および加圧によってカプセルトナーを定着させる定着手段によって加圧されるときに、シェル層が破壊され易くなり、記録媒体に対するカプセルトナーの低温定着性を向上させることができる。
さらにポリエーテルポリオール樹脂とは異なる種類の合成樹脂は、圧縮強度が0.5kgf/mm2以上30kgf/mm2以下であることが好ましい。圧縮強度が0.5kgf/mm2未満であると、シェル強度が不足し、圧縮強度が30kgf/mm2を超えると、感光体フィルミングなどの不具合を生じ好ましくない。
着色剤としては、電子写真分野で常用される有機系染料、有機系顔料、無機系染料、無機系顔料などを使用できる。
黒色の着色剤としては、たとえば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライトおよびマグネタイトなどが挙げられる。
黄色の着色剤としては、たとえば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138などが挙げられる。
橙色の着色剤としては、たとえば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43などが挙げられる。
赤色の着色剤としては、たとえば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。
紫色の着色剤としては、たとえば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが挙げられる。
青色の着色剤としては、たとえば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。
緑色の着色剤としては、たとえば、クロムグリーン、酸化クロム、ピクメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG、C.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
白色の着色剤としては、たとえば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などの化合物が挙げられる。
着色剤は1種を単独で使用でき、または2種以上の異なる色のものを併用できる。また同色であっても、2種以上を併用できる。着色剤の使用量は特に制限されないけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.2〜10重量部である。
離型剤としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、パラフィンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど)およびその誘導体、低分子量ポリプロピリンワックスおよびその誘導体、ポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックスなど)およびその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、ライスワックスおよびその誘導体、キャンデリラワックスおよびその誘導体、木蝋などの植物系ワックス、蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス、脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス、長鎖カルボン酸およびその誘導体、長鎖アルコールおよびその誘導体、シリコーン系重合体、高級脂肪酸などが挙げられる。なお、誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物などが含まれる。ワックスの使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.2〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部、特に好ましくは1.0〜8.0重量部である。
電荷制御剤としてはこの分野で常用される正電荷制御用および負電荷制御用のものを使用できる。正電荷制御用の電荷制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。負電荷制御用の電荷制御剤としては、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。電荷制御剤は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。電荷制御剤の使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは、結着樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部である。
コア粒子は、一般的なトナーの製造方法に従って製造できる。一般的なトナーの製造方法としては、たとえば、粉砕法などの乾式法、懸濁重合法、乳化凝集法、分散重合法、溶解懸濁法、溶融乳化法などの湿式法である。
粉砕法によれば、結着樹脂および着色剤ならびに離型剤、電荷制御剤その他の添加剤を、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ、メカノミル、Q型ミキサなどの混合機により混合し、得られる原料混合物を2軸混練機、1軸混練機、連続式2本ロール型混練機などの混練機により溶融混練し、得られる混練物を冷却固化し、固化物をジェットミルなどのエア式粉砕機により粉砕し、必要に応じて分級などの粒度調整を行うことによって、コア粒子が得られる。
また乳化凝集法によれば、結着樹脂粒子を水中に乳化分散させ、さらにこの結着樹脂粒子の水分散液に着色剤および必要に応じて離型剤の微粒子、電荷制御剤などを分散させ、この水分散液に凝集剤に添加して結着樹脂粒子、着色剤などが凝集した凝集粒子を生成させ、得られる凝集粒子を加熱することによってコア粒子が得られる。
また溶融乳化法によれば、結着樹脂および着色剤ならびに離型剤、電荷制御剤その他の添加剤を含むトナー原料の混練物を、水中にて加圧加熱下および分散剤の存在下に、剪断力と衝突力とを付与して造粒を行うことによって、粒度分布が狭い範囲に収まり、粒径および形状が均一なトナーが得られる。この溶融乳化法において剪断力と衝突力とを付与するための装置としては、回転ロータと、複数の追従スクリーンと、固定スクリーンとを含む高速回転分散型造粒機を用いることができる。
図3は、高速回転分散型造粒機11の構成を模式的に示す上面図である。図4は、高速回転分散型造粒機11の構成部材である追従スクリーン14の構成を模式的に示す斜視図である。高速回転分散型造粒機11は、円筒状耐圧容器12(以下単に「耐圧容器12」という場合がある)と、回転ロータ13と、追従スクリーン14,15と、固定スクリーン16とを含む。
円筒状耐圧容器12は、外壁12bと、図示しない厚み方向の両面とで構成される内部空間12aを有する密閉可能な容器状部材である。耐圧容器12の近傍には、図示しない加熱手段が配置される。また耐圧容器12には、図示しない加圧手段、トナー原料の混練物を含む分散剤の水分散液の供給管、造粒後のトナー粒子を含む水分散液の排出管などが接続される。さらに耐圧容器12は、図示しない圧力調整弁を備える。
回転ロータ13は、耐圧容器12の内部空間12aにおいて、耐圧容器12の厚み方向における一方の面または両方の面に支持され、耐圧容器12と同一の軸心を有して図示しない駆動手段によって矢符18の方向に回転駆動可能に設けられる回転軸13aと、回転軸13aの周面から該耐圧容器12の半径方向に延びる一体の撹拌羽根13bとを含む撹拌部材である。回転ロータ13の周速度は特に制限されないけれども、好ましくは30〜60m/sである。これを回転ロータ13の毎分の回転数に換算すると、9600〜19000rpm程度である。
追従スクリーン14は、回転ロータ13の周囲に耐圧容器12と同一の軸心を有し、回転ロータ13の回転駆動に追従可能に設けられ、その周壁14aに液体流過が可能なスリット17が複数形成された筒状または桶状部材である。もう1つの追従スクリーン15は、追従スクリーン14の周囲に設けられる以外は、追従スクリーン14と同様の構成を有する。
固定スクリーン16は、追従スクリーン15の周囲に円筒状耐圧容器12と同一の軸心を有するように設けられ、その周壁には追従スクリーン14,15と同様に液体流過が可能なスリットが複数形成される筒状または桶状部材である。固定スクリーン16は、耐圧容器12の厚み方向における一方の面または両方の面に支持されるので、回転ロータ13の回転駆動に伴って追従回転することがない。
高速回転分散型造粒機11によれば、耐圧容器12の内部空間12aにトナー原料の混練物を含む分散剤の水分散液を充填した状態で、所定の温度および圧力に加熱加圧しながら、回転ロータ13を回転駆動させ、追従スクリーン14,15を追従回転させる。トナー原料の混練物は、回転ロータ13および追従スクリーン14,15の回転によって遠心力を付与され、耐圧容器12の軸心近傍から容器外壁12bに向かう方向に流過する。そして追従スクリーン14,15の液体流過用スリット17を通過するときに剪断力を付与され、固定スクリーン16に衝突するか、または固定スクリーン16の図示しない液体流過用スリットを通過して容器外壁12bに衝突して、衝突力を付与される。
このように、トナー原料の混練物には繰返し剪断力と衝突力とが付与され、混練物が微細粒子に造粒される。高速回転分散型造粒機は、たとえば、特開2004−8898号公報などに記載される。また高速回転分散型造粒機としては、たとえば、泡レスミキサー(商品名、株式会社美粒製)を用いることができる。
以上のような粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、分散重合法、溶解懸濁法、溶融乳化法などの各種の製造方法の中でも、コア粒子の小径化が容易であり、コア粒子の粒度分布幅を狭くすることができるとともに、樹脂の選択幅が広いことから、溶融乳化法、乳化凝集法、溶解懸濁法が好ましく、溶融乳化法が特に好ましい。コア粒子の粒径は特に制限されないけれども、シェル層を被覆することなどを考慮すると、体積平均粒子径で好ましくは3〜8μm、さらに好ましくは3〜6μmである。ここで、体積平均粒子径はコールターカウンターTA−III(商品名、コールター社製)を用い、アパーチャ径:100μm、測定対象粒径:個数基準で2〜40μm、測定粒子数:50000カウントの条件下に測定したものである。
コア粒子のガラス転移点は、好ましくは40〜70℃、さらに好ましくは50〜60℃である。コア粒子の軟化点は、好ましくは80〜140℃、さらに好ましくは85〜130℃である。
またコア粒子のガラス転移点がシェル層のガラス転移点よりも5〜30℃低くなるように設定するのが好ましい。5℃未満では、コア粒子の溶融特性とシェル層の溶融特性との間に明瞭な差がなくなり、本発明のカプセルトナーにおける低温定着性と保存安定性との両立が不充分になるおそれがある。また両者の差が30℃を超えると、コア粒子とシェル層との界面において、両者が溶融することによって両者の付着性が強化されることが起こり難くなり、シェル層がコア粒子から剥がれ易くなってカプセルトナーの耐久性が低下する。コア粒子のガラス転移点は、結着樹脂の種類、離型剤を含む場合にはさらに離型剤の種類およびその使用量などを適宜選択することによって、所望の値に調整できる。
[カプセルトナー]
本発明のカプセルトナーは、コア粒子にポリエーテルポリオール樹脂を被覆してシェル層を形成することによって製造できる。ポリエーテルポリオール樹脂のコア粒子への被覆は、メカノフュージョン法、流動床型コーティング法、湿式コーティング法などの公知の方法に従って実施できる。
メカノフュージョン法によれば、たとえば、コア粒子表面にポリエーテルポリオール樹脂の微粒子を静電吸着させた後、機械的衝撃にてコア粒子表面を加熱・加圧し、ポリエーテルポリオール樹脂の微粒子の一部または全量を溶融させてフィルム化してシェル層を形成することによって、本発明のカプセルトナーが製造される。メカノフュージョン法を実施するには、市販の各種メカノフュージョン装置を利用できる。
また流動床コーティング法によれば、コア粒子の流動床を形成し、この流動床中にポリエーテルポリオール樹脂の溶液またはポリエーテルポリオール樹脂微粒子の分散液をスプレーすることによって、本発明のカプセルトナーが製造される。流動床コーティング法を実施するには、たとえば、流動床式コーティング装置などを利用できる。
また湿式コーティング法には、たとえば、スプレードライ法、浸漬法、流動化ベッド法などがある。スプレードライ法によれば、コア粒子表面にポリエーテルポリオール樹脂の溶液を噴霧塗布し、溶液に含まれる溶媒を乾燥させてシェル層を形成することによって、本発明のカプセルトナーが製造される。流動化ベッド法によれば、上昇する加圧ガス流によってコア粒子を平衡の高さにまで上昇させ、つぎにコア粒子が落下までにポリエーテルポリオール樹脂溶液を噴霧塗布する操作を繰り返すことによって、シェル層が形成され、本発明のカプセルトナーが製造される。湿式コーティング法を実施するには、たとえばコートマイザージェットコーチングシステム(商品名、フロイント産業株式会社製)などのスプレーコーティング装置、グラニュレックス(商品名、フロイント産業株式会社製)などのスプレードライ装置、ディスパコート(商品名、日清エンジニアリング株式会社製)などのスプレーコーティング装置、スプレードライヤーなどを利用できる。
またコア粒子、ポリエーテルポリオール樹脂粒子、前記したのと同様の分散安定剤および適度の界面活性剤(好ましくはアニオン系界面活性剤)の水分散液に、攪拌下に、硫酸マグネシウム水溶液などを添加(好ましくは滴下)することによっても、コア粒子表面がポリエーテルポリオール樹脂粒子によって被覆された本発明のカプセルトナーが得られる。このカプセルトナーは、濾過、純水による洗浄、真空乾燥などの一般的な単離精製方法によって反応系から容易に単離できる。またカプセルトナーは、上記以外の方法、たとえばin−situ重合法、コアセルベーション法などによって製造されてもよい。
本発明のカプセルトナーにおけるシェル層の含有割合は特に制限されないけれども、得られるカプセルトナーにおける低温定着性と保存安定性との両立、記録媒体に対する定着強度などを考慮すると、コア粒子100重量部に対して、シェル層1重量部以上30重量部以下を含むことが好ましく、1重量部以上10重量部以下を含むことがさらに好ましい。シェル層が1重量部未満では、コア粒子がシェル層によって充分に被覆されない部分が生じ、カプセルトナーの帯電安定性および保存安定性に支障を来たすおそれがある。シェル層が30重量部を超えると、シェル層の主要成分であるポリエーテルポリオール樹脂の量が多くなり過ぎ、低温定着性が損なわれるとともに、カプセルトナーによって構成されるトナー像の記録媒体に対する定着強度が不充分になるおそれがある。
本発明のカプセルトナーは、その体積平均粒径が好ましくは4〜10μm、さらに好ましくは5〜7μmになるように調整される。カプセルトナーの粒径は、コア粒子の粒径、シェル層の被覆量などを適宜選択することによって、調整可能である。本発明のカプセルトナーは、たとえば、非オフセット温度域130〜190℃、定着温度150〜160℃にすることができる。従来の一般的なトナーは、非オフセット温度域150〜210℃、定着温度が170℃程度であるので、本発明のカプセルトナーは一般的なトナーよりも定着温度を10〜20℃程度低温化したものとなる。
本発明のカプセルトナーは、少なくともシェル層を構成する材料としてポリエーテルポリオール樹脂を用い、コア粒子を構成する材料としてポリエーテルポリオール樹脂とは異なる種類の合成樹脂が用いられる。これによって、低温定着性と良好な保存安定性とを併せ持ち、さらに帯電安定性、紙に対する密着性などに優れ、単位量当たりの画像形成可能枚数が従来のトナーよりも増加し、紙などの記録媒体に対して高強度で定着し得る高品位カラー画像を形成できるカプセルトナーが得られる。
またポリエーテルポリオール樹脂が本発明のカプセルトナーの表層のみにしか存在しないことによって、カプセルトナーの軟化点をポリエーテルポリオール樹脂の軟化点よりも高くするような設計が可能であるので、高温オフセットの発生を防止することができ、画像の記録媒体に対する定着強度を増大させることができる。さらに本発明によれば、カプセルトナーの定着温度を低くすることも可能であるので、画像形成装置内部の温度上昇が少なく、現像槽内でカプセルトナーに負荷される熱量が減少する。したがって、カプセルトナーの劣化による帯電不良、トナー同士の融着による粗大化、フィルミング、ブロッキングなどが一層少なくなり、画像濃度および解像度の良好な高画質画像を安定的に形成できる。
本発明のカプセルトナーは、外添剤を用いて表面改質を施してもよい。外添剤としては公知のものを使用でき、たとえば、シリカ、酸化チタン、シリコーン樹脂、シランカップリング剤などによって表面処理したシリカ、酸化チタンなどが挙げられる。さらに、外添剤の使用量は好ましくはトナー100重量部に対して1〜10重量部である。
本発明のトナーは、一成分系現像剤としても二成分系現像剤としても使用することができる。一成分現像剤として使用する場合、キャリアを用いず、トナーのみで使用し、ブレードおよびファーブラシを用い、現像スリーブで摩擦帯電させてスリーブ上にトナーを付着させることで搬送して画像形成を行う。二成分系現像剤として使用する場合、キャリアとともに本発明のカプセルトナーを用いる。キャリアとしては、公知のものを使用でき、たとえば、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガンおよびクロムなどからなる単独または複合フェライトおよびキャリアコア粒子を被覆物質で表面被覆したものなどが挙げられる。被覆物質としては公知のものを使用でき、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ジターシャーリーブチルサリチル酸の金属化合物、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアシド、ポリビニルラール、ニグロシン、アミノアクリレート樹脂、塩基性染料、塩基性染料のレーキ物、シリカ微粉末、アルミナ微粉末などが挙げられ、トナー成分に応じて選択するのが好ましい。また被覆物質は、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。キャリアの平均粒径は、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは20〜50μmである。
(実施例)
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。以下において、「部」および「%」は特に断らない限りそれぞれ「重量部」および「重量%」を意味する。実施例および比較例における数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、ガラス転移点(Tg)、軟化点、酸価、水酸基価、体積平均粒径、および変動係数(CV値)は、以下のようにして測定した。
〔GPCによる数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)の測定〕
試料180mgをテトラヒドロフラン10mlに溶解して試料液を調製した。この試料液25μlをカラムに注入し、下記の条件で保持時間の測定を行った。また予め、平均分子量既知のポリスチレンを標準物質として用いて、保持時間を測定して作成しておいた検量線から樹脂試料の平均分子量(Mn、Mw)をポリスチレン換算で求めた。
カラム:ガードカラム+GLR400M+GLR400M+GLR400(いずれも日立製作所株式会社製)
カラム温度:40℃
移動相(流量):テトラヒドロフラン(1ml/min)
ピーク検出法:UV(254nm)
〔ガラス転移点(Tg)〕
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じて、試料(カルボキシル基含有樹脂または水溶性樹脂)1gを昇温速度毎分10℃で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移点(Tg)として求めた。
〔軟化点〕
軟化点は流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−100C、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。流動特性評価装置(フローテスターCFT−100C)において、荷重20kgf/cm2(9.8×105Pa)与えて試料1gがダイ(ノズル、口径1mm、長さ1mm)から押出されるように設定し、昇温速度毎分6℃で加熱し、ダイから試料の半分量が流出したときの温度を求め、軟化点とした。
〔酸価〕
酸価(KOHmg/g)は、試料1gをテトラヒドロフラン50mlに溶解して、0.1N水酸化カリウム−エタノール溶液(キシダ化学株式会社製)を用いて滴定し、中和に要する0.1N水酸化カリウム−エタノール溶液の量から算出した。滴定には、自動電位差滴定装置(商品名:AT−510、京都電子工業株式会社製)を用い、電極には#100−C172(商品名:京都電子工業株式会社製)を用いた。
〔水酸基価〕
水酸基価(KOHmg/g)は、日本工業規格(JIS)K1557−1970に準じ、試料1gを無水フタル酸50mlに溶解して、0.5N水酸化ナトリウム溶液を用いて滴定し、中和に要する0.5N水酸化ナトリウム溶液の量から算出した。滴定には、自動電位差滴定装置(商品名:AT−510、京都電子工業株式会社製)を用い、電極には#100−C172(商品名:京都電子工業株式会社製)を用いた。
〔体積平均粒径および変動係数(CV値)〕
トナー粒子の体積平均粒径は、コールターマルチサイザーIII(商品名、コールター株式会社製)を用いて測定した結果から算出した。測定粒子数は50000カウントとし、アパーチャ径は100μmとした。変動係数(CV値)は、測定された粒子径から得られた体積平均粒子径およびその標準偏差に基づいて、下記式より算出した。
変動係数 = 標準偏差 / 体積平均粒子径
(合成例1)
[シェル用ポリエーテルポリオール微粒子の合成例]
攪拌装置、温度計、窒素導入口、および冷却管を備える500ml容セパラブルフラスコに、低分子ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(商品名:エポミックR140P、三井化学株式会社製、エポキシ当量188g/当量、粘度13500mPa・s)156.1g、高分子ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(商品名:エポミックR309R、三井化学株式会社製、エポキシ当量2630g/当量)15.0g、ビスフェノールA 60.3g、安息香酸23.6g、ビスフェノールA付加プロピレオキシド(商品名:KB−280、三井化学株式会社)の無水フタル酸付加物45.0gおよびキシレン33.3gを仕込み、窒素雰囲気下で昇温を開始し、内温80℃で50%テトラメチルアンモニウムクロリド水溶液(触媒)120μlを添加した。さらに昇温して内温が160℃に到達したところ、溶液中で反応が開始された。160℃の内温を保持しながら撹拌し、1時間反応を行い50%テトラメチルアンモニウムクロリド水溶液(触媒)120μlを添加し、キシレンの減圧濃縮を開始した。さらに温度を160℃に保持しながら約1時間かけて10mmHgまで減圧した。反応中、エポキシ基の残存量を、一定時間毎に測定したところ、約6時間でエポキシ当量が20000g/当量以上を示し、エポキシ基が実質的に消失したことを確認した。この時点で(反応開始後7時間)酸無水物のヘキサヒドロ無水フタル酸(商品名:リカシッドMH−700、新日本理化株式会社製)9.1gを添加し、1時間ごとに酸価の測定を行ったところ約4時間で酸価が8.5KOHmg/gで安定したので、生成した溶融状態の酸付加ポリエーテルポリオール樹脂をフラスコから取り出した。得られた酸付加ポリエーテルポリオール樹脂の軟化点:116℃、ガラス転移点:64℃、酸価:8.5KOHmg/g、水酸基価:65KOHmg/g、数平均分子量(Mn):3370、重量平均分子量(Mw):15260、Mw/Mn:4.5であった。
上記のポリエーテルポリオール樹脂100部をカッターミル(商品名:VM−16、オリエント株式会社製)で粗粉砕し、粒径500〜800μmの粗粉末を調製した。高分子系分散剤(商品名:ジョングリル51、ジョンソンポリマー株式会社製)1部と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部を脱イオン水490部中に溶解した水溶液中に粗粉末100部を混合し、粗粉末の水性スラリーを調製した。この水性スラリーを50MPaの圧力下に内径0.3mmのノズルに通過させて前処理を行い、該水性スラリー中の粗粉末の粒径を100μm以下に調整した。
上記で得られた粗粉末の水性スラリーを150MPaおよび130℃に加圧加熱し、耐圧性配管から該耐圧性配管の出口に取り付けられた耐圧ノズルに供給した。該耐圧ノズルは、孔径0.143mmの液体流過孔2本がノズルの長手方向においてほぼ平行になるように形成された長さ0.5cmの耐圧性多重ノズルである。ノズル入口における水性スラリーの温度は130℃、背圧は210MPaであり、ノズル出口における水性スラリーの温度は170℃、背圧は42MPaであった。耐圧ノズルから排出される水性スラリーを、耐圧ノズルの出口に接続される蛇管冷却機に導入して冷却した。冷却機出口での水性スラリーの温度は20℃、背圧は1MPaであった。冷却機出口から排出される水性スラリーを、冷却機出口に接続される多段減圧装置に導入し、減圧を行った。多段減圧装置は、内径の異なる5個の金属製パイプ状部材をリング状シールにて連結してなるものである。5個の金属製パイプ状部材の内径は0.5mmから1mmまで段階的に変更したものであった。多段減圧装置から排出された水性スラリーは、粒径45〜155nmのシェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子Aを得た。
(合成例2)
反応時間を50分とした以外は合成例1と同様の方法によって、酸付加ポリエーテルポリオール樹脂を得た。この酸付加ポリエーテルポリオール樹脂は、軟化点:115℃、ガラス転移点:62℃、酸価:15.0KOHmg/g、水酸基価:53KOHmg/g、数平均分子量(Mn):3065、重量平均分子量(Mw):4040、Mw/Mn:4.6であった。また合成例1と同様にして、粒径45〜121nmのシェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子Bを得た。
合成例3〜9(シェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子C,D,E,F,G,H,Iに相当)についても同様の方法により製造した。また、その物性値を表1に示す。
(実施例1)
[コア粒子の製造例]
カーボンブラック粒子(着色剤、商品名;NIPX60、デグザ社製)8部、エステルワックス粒子(離型剤、商品名:WEP−5、日本油脂株式会社製、融点82℃)5部、ポリエステル(結着樹脂、軟化点(Tm)125℃、ガラス転移点(Tg)58℃、花王株式会社製)90部および帯電制御剤(商品名:TRH、保土谷化学工業株式会社製)2部を、混合機(商品名:ヘンシェルミキサ、三井鉱山株式会社製)にて混合し、原料混合物を得た。得られた原料混合物を、2軸押出混練機(商品名:PCM30、株式会社池貝製)にて、混練温度を結着樹脂の軟化点(Tm)よりも15℃高い温度(Tm+15℃)である140℃として混練し、混練物を得た。2軸押出混練機のスクリュには、外形寸法Dが30mmであり、回転軸線方向の長さ寸法Lが1mであり、外形寸法Dに対する長さ寸法Lの比(L/D)が33であるスクリュを用いた。
またイオン交換水(導電率8μS/cm)に、スチレン−アクリル酸共重合体アンモニウム塩(分散剤、商品名:ジョンクリル52、ジョンソンポリマー株式会社製)を固形分濃度が2重量%になるように混合して溶解させ、分散剤の2%水溶液を調製した。
上記で得られた混練物100部および分散剤の20%水溶液400部を、圧力調整弁、加熱手段およびローターステーター式撹拌手段を備える金属製の円筒状耐圧性容器(高速回転分散型造粒機、商品名;泡レスミキサー、株式会社美粒製)に投入し、回転ロータ(外径30mm)の回転速度:10000rpm、造粒温度:150℃、造粒圧力:0.17MPaの条件で10分間造粒を行い、トナー原料の混練物の微細粒子を調製した。
円筒状耐圧容器内にて、回転ロータの回転速度10000rpmを維持しながら加熱を停止し、微細粒子を含む分散剤の水分散液の液温が20℃になるまで冷却を行った。冷却後、微細粒子を含む分散剤の水分散液を円筒状耐圧容器から取出し、濾過を行って微細粒子を分取し、真空乾燥機にて温度50℃で8時間乾燥させ、体積平均粒径5.3μm、変動係数(CV値)が22であるコア粒子を得た。
[カプセルトナーの製造]
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部を脱イオン水500部中に溶解した水溶液中にコア粒子100部と、合成例1にて得られたポリエーテルポリオール樹脂微粒子A15部とを混合し、水性スラリーを調製した。ホモジナイザによる2000rpmの撹拌下、この水性スラリーに0.1重量%の硫酸マグネシウム水溶液を少量ずつ滴下し、その後、この混合液を1時間攪拌したところ、コア粒子の表面へのポリエーテルポリオール樹脂微粒子の凝集が観察された。この凝集粒子を含む水性スラリーを81℃の温度下に2時間攪拌し、該水性スラリー中に粒径および形状の整った凝集粒子であるトナー粒子を形成した。水性スラリーから濾過によって単離したトナー粒子を純水(導電率0.5μS/cm)で3回洗浄した後、真空乾燥機によって乾燥し、体積平均粒子径6.2μm、変動係数24のカプセルトナーを製造した。純水は、超純水製造装置(商品名:Ultra Pure Water System CPW−102、ADVANTEC社製)を用いて水道水から調製した。水の導電率はラコムテスター(商品名:EC−PHCON10、アズワン株式会社製)を用いて測定した。得られたトナー100部にシランカップリング剤で表面処理されたシリカ微粒子(商品名:RX−200、日本アエロジル株式会社製)1.5部をヘンシェルミキサにて処理することで、外添処理された実施例1のカプセルトナーを製造した。
(実施例2)
シェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子として、合成例2のシェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子Bを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のカプセルトナーを製造した。
(実施例3)
シェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子として、合成例3のシェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子Cを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3のカプセルトナーを製造した。
(実施例4)
シェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子として、合成例4のシェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子Dを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4のカプセルトナーを製造した。
(実施例5)
シェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子Aを5部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例5のカプセルトナーを製造した。
(実施例6)
シェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子Aを25部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例6のカプセルトナーを製造した。
(比較例1)
シェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子として、合成例5のシェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子Eを用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のカプセルトナーを製造した。
(比較例2)
シェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子として、合成例6のシェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子Fを用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2のカプセルトナーを製造した。
(比較例3)
シェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子として、合成例7のシェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子Gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例3のカプセルトナーを製造した。
(比較例4)
シェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子として、合成例8のシェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子Hを用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例4のカプセルトナーを製造した。
(比較例5)
シェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子として、合成例9のシェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子Iを用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例5のカプセルトナーを製造した。
(比較例6)
実施例1と同様にしてコア粒子を作製し、これを比較例6のトナーとした。
(比較例7)
シェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子Aを0.5部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例7のカプセルトナーを製造した。
(比較例8)
シェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子Aを45部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例8のカプセルトナーを製造した。
(比較例9)
シェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子Aの代わりにポリメタアクリル酸メチル樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例9のカプセルトナーを製造した。
実施例および比較例で得られたトナーについて、次のようにして定着性および保存安定性の評価を行った。
上記トナー及び現像剤を用いて、実機にて評価を行った。その評価条件並びに評価結果を下記に示す。評価用マシンとして、デジタルフルカラー複合機(シャープ社製:AR−C150)改造機を用いて、常温常湿(20℃、湿度60%)下、定着用紙上のべた画像部のトナー付着量が0.5mg/cm2となる現像条件で評価を行った。画像濃度は、分光測色濃度計(日本平版印刷機材社製:X−Rite938)を用いて評価画像の光学濃度を測定した。
〔定着性〕
定着ユニットのオイル塗布機構を外した評価機(AR−C150)を用い、ロール速度224mm/sでトナーの定着性を評価した。さらにホットオフセットの発生した温度からコールドオフセットの発生した温度を引いた定着レンジにより、以下の基準で判断した。
○:良好。定着レンジ幅が70℃より大きい。
△:実使用上問題なし。定着レンジ幅が50℃以上70℃以下。
×:不良。定着レンジ幅が50℃未満。
〔保存安定性〕
トナー100gをポリ容器に密閉し、50℃で48時間静置した後、トナーを取り出して#100メッシュのふるいに掛けた。ふるい上に残存するトナーの重量を測定し、この重量のトナー全重量に対する割合である残存量を求め、下記の基準で評価した。数値が低いほど、トナーがブロッキングを起こさず、保存安定性が良好であることを示す。
○:良好。残存量が10%未満。
△:実使用上問題なし。残存量が10%以上15%未満。
×:不良。残存量が15%以上。
以上の評価結果を表2に示す。表2において、シェルの欄には、シェル用ポリエーテルポリオール樹脂微粒子の後に付されるアルファベットを記載する。シェルとして、ポリエーテルポリオール樹脂が用いられなかったものについては「他」と記載する。またシェル比は、コア粒子100重量部に対するシェルの重量(%)である。
実施例1〜6のカプセルトナーは、低温定着性と良好な保存安定性とを併せ持ち、さらに帯電安定性、紙に対する密着性などに優れるものであった。また単位量当たりの画像形成可能枚数が従来のトナーよりも増加し、紙などの記録媒体に対してトナーが高強度で定着される高品位カラー画像を形成できた。