<第1の実施の形態>
以下、本発明に係る第1の実施の形態を図1及び図2に沿って説明する。図1は第1の実施の形態に係る無段変速機を示すスケルトン図、図2は第1の実施の形態に係る無段変速機の速度線図である。なお、本第1の実施の形態は、詳しくは後述する実施例1〜6の無段変速機における反転ギヤ機構30の部分を共通化して模式的に示したものであり、反転ギヤ機構30の詳しい構成や作用効果は、後述の実施例1〜6において説明する。
まず、第1の実施の形態に係る無段変速機11を図1及び図2に沿って説明する。無段変速機(IVT;infinitely variable transmission)11は、図1に示すように、大まかに、ミッションケース5内における一軸上にあって、入力側から出力側へ順に、入力軸2と、トロイダル式無段変速機構(以下、「バリエータ」という)10と、動力循環機構(以下、「動力循環プラネタリギヤ」という)20と、オーバードライブクラッチC−OCと、反転ギヤ機構30と、ロー・ハイ切換え機構40としてのロークラッチ(ロー係合要素)C−L及びハイクラッチ(ハイ係合要素)C−Hと、出力軸9とを備えて構成されている。
バリエータ10は、フルトロイダル式からなり、入力軸2上に連結された2個の入力ディスク11A,11Bと、外周側において無段回転伝達部材16に連結された出力ディスク12と、2個の入力ディスク11A,11B及び1個の出力ディスク12の間に挟持されるパワーローラ14A,14Bと、を有して構成されている。入力ディスク11A,11B及び出力ディスク12は、それぞれ対向するように円形の一部を形成する円弧状の凹溝11a,12aを有しており、2列のパワーローラ14A,14Bを挟んでダブルキャビティ13A,13Bを構成して、入力ディスク同士のスラスト力を打消す構成からなる。
パワーローラ14A,14Bは、環状のダブルキャビティ13A,13Bにおける周方向の略々均等な位置に複数個(例えば1つのキャビティに3個)配置されており、不図示の球面軸受、レバー等からなるリンク機構を油圧制御により押圧駆動される。また、入力ディスク11A,11Bは、例えばL字状のブロックと該ブロック上に設置された油圧ピストンとにより閉ループ的に押圧され、パワーローラ14A,14Bを挟持すると共に、その挟持圧が油圧により制御される。そして、上記リンク機構の押圧制御と入力ディスク11A,11Bの挟持圧とにより、パワーローラ14A,14Bが自律的に傾斜することで、入力ディスク11A,11Bと出力ディスク12との接触半径が変更されて無段に連続して変速する。なお、本バリエータ10にあっては、入力ディスク11A,11Bに対して出力ディスク12が反転するので、速度比は−(マイナス)になる。
動力循環プラネタリギヤ20は、互いに噛合する2個のピニオンP1,P2を回転自在に支持するキャリヤCR1と、ピニオンP1に噛合するリングギヤR1と、ピニオンP2に噛合するサンギヤS1とを有する、いわゆるダブルピニオンプラネタリギヤによって構成されている。これらピニオンP1,P2を回転自在に支持するキャリヤCR1は、上記入力軸2に連結されており、つまり入力ディスク11A,11B、キャリヤCR1には、エンジン等の駆動源(不図示)の回転がそのまま伝達される。また、該キャリヤCR1は、入力回転伝達部材21を介してオーバードライブクラッチC−ODに接続されており、該オーバードライブクラッチC−ODが係合することにより詳しくは後述する反転ギヤ機構30の入力回転要素OD−Inに入力軸2の回転(即ち駆動源の回転)を入力し得るように構成されている。なお、本無段変速機1は、詳しくは後述するようにギヤニュートラル状態を得ることができるので、トルクコンバータ等を設ける必要はなく、入力軸2に直接エンジンを接続することができる。
上記動力循環プラネタリギヤ20のサンギヤS1は、上記出力ディスク12の回転を伝達する無段回転伝達部材16に接続されており、また、上記リングギヤR1は、詳しくは後述するローモード時の回転伝達を行うことになるロー回転伝達部材Lを介してロー・ハイ切換え機構40のロークラッチC−Lに接続されて、該ロークラッチC−Lが係合することにより出力軸9に接続される。
本発明の要部となる反転ギヤ機構30は、無段変速回転要素Var、回転固定要素G、出力回転要素H、入力回転要素OD−Inからなる4つの回転要素を有する歯車機構(プラネタリギヤセット及びそれらの回転を伝達する伝達部材)によって構成されている。該無段変速回転要素Varは、上記無段回転伝達部材16を介して出力ディスク12に接続されており、つまりバリエータ10からの無段変速回転が入力される。また、該回転固定要素Gは、ミッションケース5に接続されており、常時回転が固定されている。
該入力回転要素OD−Inは、上記オーバードライブクラッチC−OD、入力回転伝達部材21、及び動力循環プラネタリギヤ20のキャリヤCR1を介して入力軸2に接続されており、該オーバードライブクラッチC−ODが係合することにより、入力軸2の回転が入力される。また、該入力回転要素OD−Inと上記入力回転伝達部材21との間にはワンウェイクラッチF−2が配設されており、該ワンウェイクラッチF−2により該入力回転要素OD−Inの回転が入力軸2の回転より高くならないように規制されている。
該出力回転要素Hは、ハイクラッチC−Hに接続されており、該ハイクラッチC−Hが係合することにより出力軸9に接続される。また、該出力回転要素Hと上記ロー回転伝達部材Lとの間にはワンウェイクラッチF−1が配設されており、該ワンウェイクラッチF−1により該ロー回転伝達部材Lの回転が該出力回転要素Hの回転より高くならないように規制され、言い換えると、該出力回転要素Hの回転が該ロー回転伝達部材Lの回転より低くならないように規制されている。
次に、上記無段変速機11の作用について図1及び図2に沿って説明する。
例えば無段変速機11を搭載した車輌の発進時又は後進時においては、不図示のシフトレバーや油圧制御装置による油圧制御に基づき該無段変速機11がローモードに制御され、ロークラッチC−Lが係合制御されると共に、ハイクラッチC−H及びオーバードライブクラッチC−ODが解放制御される。すると、図1及び図2に示すように、エンジン出力軸に連結している入力軸2の回転が、バリエータ10の入力ディスク11A,11B、及び動力循環プラネタリギヤ20のキャリヤCR1に伝達される。このうち入力ディスク11A,11Bに入力された入力軸2の回転はバリエータ10で変速され、出力ディスク12より無段変速回転としてのバリエータ出力回転Voutが出力されて、無段回転伝達部材16を介してサンギヤS1に入力される。
サンギヤS1にバリエータ出力回転Voutが入力されると、動力循環プラネタリギヤ20において、キャリヤCR1に入力される入力軸2の回転とサンギヤS1に入力されるバリエータ出力回転Voutとがトルク循環により合成され、リングギヤR1より出力される。このリングギヤR1の回転は、バリエータ10の変速比の幅に応じて、減速の逆転回転からニュートラル位置(GNポイント)を介して減速の正転回転までの幅に変速されたローモード時の出力回転OutLとなる(即ち、後述のハイモードの変速比の範囲に比して低い範囲の低変速比範囲となる)。そして、このリングギヤR1の出力回転は、ロークラッチC−Lを介して出力軸9に出力される。
以上のような伝達経路を形成するローモード時においては、バリエータ出力回転Vout(バリエータ10の変速比)が、図2中の一点鎖線で示すギヤニュートラル状態GNである際に、リングギヤR1の回転がニュートラル状態となり、つまりローモード時の出力回転OutLがニュートラル状態となる。上述したように、この状態においては、エンジン回転数(入力軸2の回転)と出力軸9の回転とが無関係となるので、例えば走行レンジに切換える際にバリエータ10の変速比をギヤニュートラル状態GNに合せた後にロークラッチC−Lを係合することで、回転数差を吸収することが不要であり、トルクコンバータ等の回転数差を吸収する装置を設ける必要がない。
ここで、例えば不図示のシフトレバーがリバース(R)レンジであって、このギヤニュートラル状態GNより例えば車速やアクセル開度に応じてバリエータ10の変速比を大きくしていくと(図2中のバリエータ出力回転Voutを下方側にシフトしていくと)、出力軸9の出力回転OutLは、逆転回転側に増速していき、つまり後進側に増速されていく。
また反対に、例えば不図示のシフトレバーがドライブ(D)レンジであって、ギヤニュートラル状態GNより例えば車速やアクセル開度に応じてバリエータ10の変速比を小さくしていくと(図2中のバリエータ出力回転Voutを上方側にシフトしていくと)、出力軸9の出力回転OutLは、正転回転側に増速していき、つまり前進側に増速されていく。
つづいて、上述のローモード状態で出力軸9の出力回転OutLが増速されていき(バリエータ10の変速比が小さくされていき)、図2中の破線で示すシンクチェンジSCの変速比に達して例えば車速やアクセル開度に応じて変速判断がなされると、不図示の油圧制御装置による油圧制御に基づきロークラッチC−Lが解放されると共にハイクラッチC−Hが係合され、無段変速機11はハイモード状態にされる。
すると、図1及び図2に示すように、このハイモード状態においても同様に、入力軸2の回転がバリエータ10の入力ディスク11A,11B、及び動力循環プラネタリギヤ20のキャリヤCR1に伝達され、出力ディスク12よりバリエータ出力回転Voutが出力される。このバリエータ出力回転Voutは、無段回転伝達部材16を介して反転ギヤ機構30の無段変速回転要素Varに入力される。無段変速回転要素Varにバリエータ出力回転Voutが入力されると、反転ギヤ機構30において、ミッションケース5に回転が固定された回転固定要素Gを介してバリエータ出力回転Voutが反転され、出力回転要素Hが反転無段回転となり、ハイクラッチC−Hを介して該反転無段回転がハイモード時の出力回転OutHとして出力軸9に出力される。
なお、このハイモード状態において動力循環プラネタリギヤ20には、上述のローモード時と同様にキャリヤCR1に入力軸2の回転が入力され、かつ無段回転伝達部材16を介してサンギヤS1にバリエータ出力回転Voutが入力されるため、リングギヤR1及びロー回転伝達部材Lがローモード時の出力回転OutLとなるが、ロークラッチC−Lが解放されているので、出力軸9に伝達されず、つまりリングギヤR1及びロー回転伝達部材Lはトルク伝達を行わない空転状態となる。
上記シンクチェンジSC時におけるローモード状態とハイモード状態との切換えにおいては、バリエータ10の変速比(バリエータ出力回転Vout)が最も小さくなる同じ変速比で切換えが行われるように各ギヤのギヤ比が設定されている。つまりローモード状態においては、バリエータ10の変速比が小さく変速されていくと出力回転OutLが増速され、シンクチェンジSCを境に、ハイモード状態においては、反対にバリエータ10の変速比が大きく変速されていくと出力回転OutHが増速されていく(即ち、上記ローモードの低変速比範囲に比して高い範囲の高変速比範囲となる)。
ところで、このシンクチェンジSCの変速比に達する状態は、バリエータ10の変速比が最も小さくなる状態であって、つまりパワーローラ14A,14Bが最も傾斜した状態である。例えばローモード時におけるシンクチェンジSCの変速比の状態から、車輌が降坂路を走行する等して、駆動車輪を介して出力軸9に加速方向のトルクが加わると、ロークラッチC−Lを介してリングギヤR1が増速され、キャリヤCR1を介してサンギヤS1が減速されて、つまりバリエータ10の出力ディスク12が更に変速比が小さくなる方向に減速される虞がある。
また反対に、例えばハイモード時におけるシンクチェンジSCの変速比の状態から、車輌が登坂路を走行する等して、駆動車輪を介して出力軸9に減速方向のトルクが加わると、ハイクラッチC−Hを介して出力回転要素Hが減速され、回転固定要素Gを介して無段変速回転要素Varが減速されて、つまりバリエータ10の出力ディスク12が更に変速比が小さくなる方向に減速される虞がある。このようにバリエータ10の変速比が最も小さい状態から出力ディスク12に減速方向に力が加わると、パワーローラ14A,14Bの過傾斜や脱落等を生じてしまう虞がある。
しかしながら、上述のように出力回転要素Hとロー回転伝達部材Lとの間にはワンウェイクラッチF−1が配設されており、動力循環プラネタリギヤ20のリングギヤR1の回転が、反転ギヤ機構30の出力回転要素Hの回転よりも上回らないように規制されている。従って、ローモード時にあってシンクチェンジSCの変速比に到達した状態では、リングギヤR1の回転が、ハイモードの出力回転OutHの最も低い回転状態となった出力回転要素Hの回転より高くになることが規制され、反対に、ハイモード時にあってシンクチェンジSCの変速比に到達した状態では、出力回転要素Hの回転が、ローモードの出力回転OutLの最も高い回転状態となったリングギヤR1の回転よりも低くなることが規制される。つまり、出力ディスク12の入力ディスク11A,11Bに対する変速比がシンクチェンジSC時の変速比よりも小さくなることが防止され(バリエータ10において設定された最低変速比よりも小さくなることが防止され)、これによって、パワーローラ14A,14Bの過傾斜や脱落等が防止される。
ついで、例えば上述のハイモード状態で不図示の制御部により略々一定速度の高速走行が所定時間継続する等の条件が判断されると、オーバードライブ段への変速が判断され、バリエータ10がオーバードライブ段の変速比に、特に本実施の形態においてはバリエータ10の最高変速比に変速制御されると共に(或いは既にバリエータ10が最高変速比になっている状態で)、オーバードライブクラッチC−ODが係合制御され、無段変速機11はオーバードライブモード状態にされる。
すると、図1及び図2に示すように、入力軸2の回転が、動力循環プラネタリギヤ20のキャリヤCR1、入力回転伝達部材21、オーバードライブクラッチC−ODを介して反転ギヤ機構30の入力回転要素OD−Inに入力される。該入力回転要素OD−Inに入力された入力軸2の回転は、回転が固定されている回転固定要素Gを介して出力回転要素Hよりバリエータ10の最高変速比と同じ変速比の増速回転(オーバードライブ段の出力回転)OutODとして出力され、ハイクラッチC−Hを介して出力軸9より出力される。即ち、ハイモード時に用いていた反転ギヤ機構30の回転固定要素G及び出力回転要素Hを利用する形で、該反転ギヤ機構30によって、ハイモード時の高変速比範囲内における最高変速比と同じ変速比のオーバードライブ段が形成される。
このようにオーバードライブ段が形成された状態にあっては、ハイクラッチC−Hの係合状態が維持されるが、入力軸2から、動力循環プラネタリギヤ20のキャリヤCR1、入力回転伝達部材21、オーバードライブクラッチC−OD、反転ギヤ機構30の入力回転要素OD−In、回転固定要素G、出力回転要素H、ハイクラッチC−H、出力軸9までの伝達経路が形成され、つまりバリエータ10を迂回した伝達経路が形成されるため、バリエータ10によって動力伝達を行うことが不要となる。これにより、バリエータ10の挟持圧を緩めることが可能となり、バリエータ10がトルク伝達を行うことによる各種の損失が低減され、変速が不要となる走行状態における車輌の燃費向上が図られる。
その後、不図示の制御部により例えば変速が必要となる条件等が判断されると、ハイモードへの移行が判断され、オーバードライブクラッチC−ODが解放制御されて、上述したハイモードの状態に復帰される。なお、オーバードライブモード状態にあっても、反転ギヤ機構30の無段変速回転要素Varは、回転固定要素Gを介して入力回転要素OD−Inの入力軸2の回転に基づきバリエータ10の出力回転Voutにおける最高変速比によって空転されており、つまりバリエータ10が最高変速比の状態に維持されている。そのため、バリエータ10の挟持圧を強めて動力伝達を行い得るように制御するだけで、ハイモードへの移行が完了する。
ところで、上記ハイモード状態にあって最も変速比が大きくなる状態にあっては、バリエータ10の変速比が最も大きくなる状態であって、同様にパワーローラ14A,14Bが最も傾斜した状態である。例えばハイモード時において最も大きくなった変速比の状態から、車輌が降坂路を走行する等して、駆動車輪を介して出力軸9に加速方向のトルクが加わると、ハイクラッチC−Hを介して出力回転要素Hが加速され、回転固定要素Gを介して無段変速回転要素Varが加速されて、つまりバリエータ10の出力ディスク12が更に変速比が大きくなる方向に加速される虞がある。このようにバリエータ10の変速比が最も大きい状態から出力ディスク12に加速方向に力が加わった場合にあっても、パワーローラ14A,14Bの過傾斜や脱落等を生じてしまう虞がある。
しかしながら、上述のように入力回転要素OD−Inと入力回転伝達部材21との間にワンウェイクラッチF−2が配設されており、入力回転要素OD−Inの回転が入力軸2の回転よりも高くならないように規制されている。即ち、入力回転要素OD−Inの回転が入力軸2の回転よりも高くならないので、回転固定要素Gを介して出力回転要素Hがオーバードライブ段の変速比よりも高くならないように規制される。従って、ハイモード時にあって最も大きい変速比に到達した状態から、出力軸9の回転が、オーバードライブ段の変速比(即ちハイモードの出力回転OutHの最も高い回転状態)の回転よりも高くなることが規制され、つまり無段変速回転要素Var及び出力ディスク12の無段変速回転Voutが、バリエータ10において設定された最高変速比よりも大きくなることが防止され、これによって、パワーローラ14A,14Bの過傾斜や脱落等が防止される。
従って、本無段変速機11にあっては、上記2つのワンウェイクラッチF−1,F−2を備えていることによって、バリエータ10において最低変速比から最高変速比の変速範囲を越えることが規制され(つまり上限と下限との双方が規制され)、バリエータ10におけるパワーローラ14A,14Bの過傾斜や脱落等の防止が確実に図れる。
以上のように第1の実施の形態に係る無段変速機11によると、反転ギヤ機構30を、無段変速回転要素Varと回転固定要素Gと入力回転要素OD−Inと出力回転要素Hとによって構成し、つまり該反転ギヤ機構30によってバリエータ10の無段変速回転Voutの反転と、増速回転OutDを形成するオーバードライブ段の達成とを可能にしたので、出力回転要素Hに対する入力回転要素OD−Inのギヤ比を比較的自由に設定することによって、回転固定要素Gを介した入力回転要素OD−Inに対する出力回転要素Hの変速比、即ちオーバードライブ段の変速比の設定自由度を上げることができ、オーバードライブ段としての変速比を大きく設定することができて、例えば高速走行等において必要とされるオーバードライブ段として適切な変速比を得ることができる。また、オーバードライブ段として適切な変速比を得ることができるものでありながら、例えばバリエータ10の無段変速回転Voutを増速変速して、その分バリエータ10の出力トルクが増大すること、を不要にできるので、バリエータの耐久性に悪影響を与えることを防止することができる。
更に、例えば入力軸2と出力軸9との間にオーバードライブ段専用のギヤ機構を別途設ける場合は、該専用のギヤ機構のみならず、バリエータ10、動力循環プラネタリギヤ20、反転ギヤ機構30等を迂回して入力軸2から出力軸9まで繋ぐための長い伝達部材が必要となるが、入力軸2の回転を入力する伝達経路21と入力回転要素OD−Inを設けるだけ(もちろんオーバードライブクラッチ又はブレーキは何れにあっても必要である)で、反転ギヤ機構30の回転固定要素G及び出力回転要素Hを利用してオーバードライブ段を達成することができるので、部品点数を少なくでき、かつコンパクト化を図ることができる。また、バリエータ10、動力循環プラネタリギヤ20、反転ギヤ機構30等を迂回するために長くなる伝達部材が不要な分、イナーシャ(慣性力)の低減も図ることができて、制御性の向上を図ることができる。
また特に、本無段変速機11にあっては、反転ギヤ機構30における入力回転要素OD−Inに対する出力回転要素Hの変速比、即ちオーバードライブ段の変速比が、ハイモードの高変速比範囲内に設定されているため、バリエータ10の無段変速制御によってハイモードにおける変速比をオーバードライブ段の変速比に合せた後、オーバードライブクラッチC−ODを係合させることで、変速ショックを生じることなく、オーバードライブ段に変速することができる。
また、動力循環プラネタリギヤ20は、軸方向におけるバリエータ10と反転ギヤ機構30との間に配置され、反転ギヤ機構30の無段変速回転要素Varは、無段回転伝達部材16を介してバリエータ10の出力ディスク12の外周側に動力循環プラネタリギヤ20の外周側を通って連結され、オーバードライブクラッチC−ODは、軸方向における動力循環プラネタリギヤ20と反転ギヤ機構30との間に配置されて、動力循環プラネタリギヤ20の入力軸2の回転を入力する回転要素であるキャリヤCR1、及び入力回転伝達部材21を介して入力軸2の回転に接続されるので、各部材を錯綜することなく、オーバードライブ段を達成するための伝達経路を形成することができる。
更に、反転ギヤ機構30における入力回転要素OD−Inに対する出力回転要素Hの変速比が、ハイモードの高変速比範囲における最高変速比(即ちOutOD)に設定され、入力軸2の回転より反転ギヤ機構30の入力回転要素OD−Inの回転が高くなることを規制するワンウェイクラッチF−2を備えたので、入力回転要素OD−Inの回転が入力軸2の回転以上になること、即ち出力軸9の回転がハイモードの最高変速比の回転以上になることが規制されるため、例えばハイモード時にあって出力軸9に外部からの駆動力(例えば降坂路による車輌加速力等)が加わり、出力軸9の回転が最高変速比を上回ろうとしても、ワンウェイクラッチF−2が係合して、出力軸9の回転が最高変速比を上回ることを防止することができる。それにより、バリエータ10の変速比が設定された変速比幅を超えてしまうこと防止することができ、例えばバリエータ10においてパワーローラ14A,14Bの過傾斜や飛び出し等が生じることを防止することができる。
[実施例1]
ついで、上記第1の実施の形態における反転ギヤ機構30の具体的な実施例としての無段変速機111を図3及び図4に沿って説明する。図3は実施例1に係る無段変速機を示すスケルトン図、図4は実施例1に係る無段変速機の速度線図である。なお、本実施例1の説明においては、上記第1の実施の形態に係る無段変速機11において説明した部分と同じ部分に同符号を付し、その説明を省略する。
実施例1に係る無段変速機111は、図3に示すように、反転ギヤ機構30を、シングルピニオンプラネタリギヤSP1とシングルピニオンプラネタリギヤSP2とを組合せて構成したものである。
シングルピニオンプラネタリギヤSP1は、1つのピニオンP3を回転自在に支持するキャリヤCR2と、該ピニオンP3に噛合するサンギヤS2と、該ピニオンP3に噛合するリングギヤR2とを有して構成されており、また同様に、シングルピニオンプラネタリギヤSP2は、1つのピニオンP4を回転自在に支持するキャリヤCR3と、該ピニオンP4に噛合するサンギヤS3と、該ピニオンP4に噛合するリングギヤR3とを有して構成されている。
そして、シングルピニオンプラネタリギヤSP1,SP2においては、該キャリヤCR2と該リングギヤR3とが連結されると共に、該リングギヤR2と該キャリヤCR3とが連結されており、出力ディスク12に無段回転伝達部材16を介して接続されたサンギヤS2により無段変速回転要素Varを、ミッションケース5に接続されたキャリヤCR2及びリングギヤR3により回転固定要素Gを、オーバードライブクラッチC−ODに接続されたリングギヤR2及びキャリヤCR3により入力回転要素OD−Inを、ハイクラッチC−Hに接続されたサンギヤS3により出力回転要素Hを、それぞれ構成している。
このように構成された反転ギヤ機構30にあっては、図4に示すように、ハイモード時において、サンギヤS2に入力されたバリエータ出力回転Voutを、回転が固定されたキャリヤCR2及びリングギヤR3を介して反転し、サンギヤS3よりハイモードの出力回転OutHとして出力し、また、オーバードライブモード時において、リングギヤR2及びキャリヤCR3に入力された入力軸2の回転を、回転が固定されたキャリヤCR2及びリングギヤR3を介して増速し、サンギヤS3よりオーバードライブ段の出力回転OutODとして出力する。
以上のような実施例1の無段変速機111にあっては、例えば共通ピニオンを有するプラネタリギヤセット等を用いる場合に比して、各シングルピニオンプラネタリギヤSP1,SP2におけるギヤ比の設定自由度が幅広く、ハイモード時の変速比幅やオーバードライブ段の変速比の設定自由度を大きくすることができ、例えば搭載される車輌に合せて(エンジン性能等に合せて)良好な変速比を設定することが可能となる。
また、反転ギヤ機構30をシングルピニオンプラネタリギヤだけで構成することができるので、安価で、かつ径方向にコンパクト化を図ることができると共に、例えばダブルピニオンプラネタリギヤを用いる場合に比して、噛合箇所を減らすことができ、伝達効率の向上を図ることができる。特にオーバードライブ段にあっては、反力を生じさせるためのリングギヤR3とキャリヤCR3のピニオンP4との噛合部分と、回転伝達を行うためのキャリヤCR3のピニオンP4とサンギヤS3との噛合部分と、の2箇所の噛合部分だけで伝達経路を形成することができ、伝達効率を良好にすることができて、特に搭載された車輌の高速走行において燃費の向上を図ることができる。
また、キャリヤCR2をミッションケース5に直接固定することが可能であるので、オーバードライブクラッチC−ODの作動油を供給する油路を、該キャリヤCR2のピニオンシャフト等を通して入力回転要素OD−Inに直接導くことができ、例えばミッションケース5からロー回転伝達部材Lを介して入力回転要素OD−Inに作動油を導く場合に比して、相対回転する箇所を2箇所から1箇所に減らすことができて、つまりシールリングの数を減らすことができる。これにより、シールリングの摺動抵抗を減少させることができ、無段変速機111における伝達効率を向上させることができる。
[実施例2]
ついで、上記第1の実施の形態における反転ギヤ機構30の具体的な実施例としての無段変速機112を図5及び図6に沿って説明する。図5は実施例2に係る無段変速機を示すスケルトン図、図6は実施例2に係る無段変速機の速度線図である。なお、本実施例2の説明においても、上記第1の実施の形態に係る無段変速機11において説明した部分と同じ部分に同符号を付し、その説明を省略する。
実施例2に係る無段変速機112は、図5に示すように、反転ギヤ機構30を、ダブルピニオンプラネタリギヤにおける一方のピニオンにステップピニオンを用いた形のプラネタリギヤセットPSにより構成したものである。
プラネタリギヤセットPSは、小径のピニオンP4と大径のピニオンP5とが連結されたステップピニオン、及び該ピニオンP4に噛合するピニオンP3を回転自在に支持するキャリヤCR2と、該ピニオンP3に噛合するリングギヤR2と、該ピニオンP5に噛合するリングギヤR3と、該ピニオンP4に噛合するサンギヤS2とを有して構成されている。
そして、プラネタリギヤセットPSにおいては、出力ディスク12に無段回転伝達部材16を介して接続されたリングギヤR3により無段変速回転要素Varを、ミッションケース5に接続されたキャリヤCR2により回転固定要素Gを、オーバードライブクラッチC−ODに接続されたリングギヤR2により入力回転要素OD−Inを、ハイクラッチC−Hに接続されたサンギヤS2により出力回転要素Hを、それぞれ構成している。
このように構成された反転ギヤ機構30にあっては、図6に示すように、ハイモード時において、リングギヤR3に入力されたバリエータ出力回転Voutを、回転が固定されたキャリヤCR2を介して反転し、サンギヤS2よりハイモードの出力回転OutHとして出力し、また、オーバードライブモード時において、リングギヤR2に入力された入力軸2の回転を、回転が固定されたキャリヤCR2を介して増速し、サンギヤS2よりオーバードライブ段の出力回転OutODとして出力する。
以上のような実施例2の無段変速機112にあっては、特にハイモード状態において、リングギヤR3とキャリヤCR2のピニオンP5との噛合部分と、キャリヤCR3のピニオンP4とサンギヤS2との噛合部分と、の2箇所の噛合部分だけで伝達経路を形成することができ、ローモードに比して圧倒的に使用量が多いハイモードにおける伝達効率を良好にすることができて、搭載された車輌の燃費の向上を図ることができる。
また、キャリヤCR2をミッションケース5に直接固定することが可能であるので、オーバードライブクラッチC−ODの作動油を供給する油路を、該キャリヤCR2のピニオンシャフト等を通して入力回転要素OD−Inに直接導くことができ、例えばミッションケース5からロー回転伝達部材Lを介して入力回転要素OD−Inに作動油を導く場合に比して、相対回転する箇所を2箇所から1箇所に減らすことができて、つまりシールリングの数を減らすことができる。これにより、シールリングの摺動抵抗を減少させることができ、無段変速機112における伝達効率を向上させることができる。
[実施例3]
ついで、上記第1の実施の形態における反転ギヤ機構30の具体的な実施例としての無段変速機113を図7及び図8に沿って説明する。図7は実施例3に係る無段変速機を示すスケルトン図、図8は実施例3に係る無段変速機の速度線図である。なお、本実施例3の説明においても、上記第1の実施の形態に係る無段変速機11において説明した部分と同じ部分に同符号を付し、その説明を省略する。
実施例3に係る無段変速機113は、図7に示すように、反転ギヤ機構30を、シングルピニオンプラネタリギヤSP1とシングルピニオンプラネタリギヤSP2とを組合せ、いわゆるシンプソン型によって構成したものである。
シングルピニオンプラネタリギヤSP1は、1つのピニオンP3を回転自在に支持するキャリヤCR2と、該ピニオンP3に噛合するサンギヤS2と、該ピニオンP3に噛合するリングギヤR2とを有して構成されており、また同様に、シングルピニオンプラネタリギヤSP2は、1つのピニオンP4を回転自在に支持するキャリヤCR3と、該ピニオンP4に噛合するサンギヤS3と、該ピニオンP4に噛合するリングギヤR3とを有して構成されている。
そして、シングルピニオンプラネタリギヤSP1,SP2においては、該サンギヤS2と該サンギヤS3とが連結されると共に、該リングギヤR2と該キャリヤCR3とが連結されており、出力ディスク12に無段回転伝達部材16を介して接続されたサンギヤS2及びサンギヤS3により無段変速回転要素Varを、ミッションケース5に接続されたキャリヤCR2により回転固定要素Gを、オーバードライブクラッチC−ODに接続されたリングギヤR2及びキャリヤCR3により入力回転要素OD−Inを、ハイクラッチC−Hに接続されたリングギヤR3により出力回転要素Hを、それぞれ構成している。
このように構成された反転ギヤ機構30にあっては、図8に示すように、ハイモード時において、サンギヤS2及びサンギヤS3に入力されたバリエータ出力回転Voutを、回転が固定されたキャリヤCR2を介して反転し、リングギヤR3よりハイモードの出力回転OutHとして出力し、また、オーバードライブモード時において、リングギヤR2及びキャリヤCR3に入力された入力軸2の回転を、回転が固定されたキャリヤCR2を介して増速し、リングギヤR3よりオーバードライブ段の出力回転OutODとして出力する。
以上のような実施例3の無段変速機113にあっては、例えば共通ピニオンを有するプラネタリギヤセット等を用いる場合に比して、各シングルピニオンプラネタリギヤSP1,SP2におけるギヤ比の設定自由度が幅広く、ハイモード時の変速比幅やオーバードライブ段の変速比の設定自由度を大きくすることができ、例えば搭載される車輌に合せて(エンジン性能等に合せて)良好な変速比を設定することが可能となる。
また、反転ギヤ機構30をシングルピニオンプラネタリギヤだけで構成することができるので、安価で、かつ径方向にコンパクト化を図ることができると共に、例えばダブルピニオンプラネタリギヤを用いる場合に比して、噛合箇所を減らすことができ、伝達効率の向上を図ることができる。特にハイモード及びオーバードライブモードにあって、シングルピニオンプラネタリギヤSP1によって反力回転を生成し、シングルピニオンプラネタリギヤSP2によって動力伝達を行うので、ハイモードとオーバードライブモードとにおける伝達効率のバランスが良く、両モードにおける車輌の燃費の向上をバランス良く図ることができる。
[実施例4]
ついで、上記第1の実施の形態における反転ギヤ機構30の具体的な実施例としての無段変速機114を図9及び図10に沿って説明する。図9は実施例4に係る無段変速機を示すスケルトン図、図10は実施例4に係る無段変速機の速度線図である。なお、本実施例4の説明においても、上記第1の実施の形態に係る無段変速機11において説明した部分と同じ部分に同符号を付し、その説明を省略する。
実施例4に係る無段変速機114は、図9に示すように、反転ギヤ機構30を、ラビニヨ型のプラネタリギヤセットPSにより構成したものである。
プラネタリギヤセットPSは、ロングピニオンP4とショートピニオンP3とを回転自在に支持するキャリヤCR2と、該ピニオンP3に噛合するサンギヤS2と、該ピニオンP4に噛合するリングギヤR2と、該ピニオンP4に噛合するサンギヤS3とを有して構成されている。
そして、プラネタリギヤセットPSにおいては、出力ディスク12に無段回転伝達部材16を介して接続されたサンギヤS3により無段変速回転要素Varを、ミッションケース5に接続されたキャリヤCR2により回転固定要素Gを、オーバードライブクラッチC−ODに接続されたリングギヤR2により入力回転要素OD−Inを、ハイクラッチC−Hに接続されたサンギヤS2により出力回転要素Hを、それぞれ構成している。
このように構成された反転ギヤ機構30にあっては、図10に示すように、ハイモード時において、サンギヤS3に入力されたバリエータ出力回転Voutを、回転が固定されたキャリヤCR2を介して反転し、サンギヤS2よりハイモードの出力回転OutHとして出力し、また、オーバードライブモード時において、リングギヤR2に入力された入力軸2の回転を、回転が固定されたキャリヤCR2を介して増速し、サンギヤS2よりオーバードライブ段の出力回転OutODとして出力する。
以上のような実施例4の無段変速機114にあっては、反転ギヤ機構30をラビニヨ型のプラネタリギヤセットPSによって構成したので、例えば2つのプラネタリギヤを組合せて構成した場合に比してコンパクト化を図ることができる。
また、キャリヤCR2をミッションケース5に直接固定することが可能であるので、オーバードライブクラッチC−ODの作動油を供給する油路を、該キャリヤCR2のピニオンシャフト等を通して入力回転要素OD−Inに直接導くことができ、例えばミッションケース5からロー回転伝達部材Lを介して入力回転要素OD−Inに作動油を導く場合に比して、相対回転する箇所を2箇所から1箇所に減らすことができて、つまりシールリングの数を減らすことができる。これにより、シールリングの摺動抵抗を減少させることができ、無段変速機114における伝達効率を向上させることができる。
[実施例5]
ついで、上記第1の実施の形態における反転ギヤ機構30の具体的な実施例としての無段変速機115を図11及び図12に沿って説明する。図11は実施例5に係る無段変速機を示すスケルトン図、図12は実施例5に係る無段変速機の速度線図である。なお、本実施例5の説明においても、上記第1の実施の形態に係る無段変速機11において説明した部分と同じ部分に同符号を付し、その説明を省略する。
実施例5に係る無段変速機115は、図11に示すように、反転ギヤ機構30を、ラビニヨ型のプラネタリギヤセットPSにより構成したものである。
プラネタリギヤセットPSは、ロングピニオンP4とショートピニオンP3とを回転自在に支持するキャリヤCR2と、該ピニオンP3に噛合するサンギヤS2と、該ピニオンP4に噛合するリングギヤR2と、該ピニオンP4に噛合するサンギヤS3とを有して構成されている。
そして、プラネタリギヤセットPSにおいては、出力ディスク12に無段回転伝達部材16を介して接続されたサンギヤS2により無段変速回転要素Varを、ミッションケース5に接続されたリングギヤR2により回転固定要素Gを、オーバードライブクラッチC−ODに接続されたキャリヤCR2により入力回転要素OD−Inを、ハイクラッチC−Hに接続されたサンギヤS3により出力回転要素Hを、それぞれ構成している。
このように構成された反転ギヤ機構30にあっては、図12に示すように、ハイモード時において、サンギヤS2に入力されたバリエータ出力回転Voutを、回転が固定されたリングギヤR2を介して反転し、サンギヤS3よりハイモードの出力回転OutHとして出力し、また、オーバードライブモード時において、キャリヤCR2に入力された入力軸2の回転を、回転が固定されたリングギヤR2を介して増速し、サンギヤS3よりオーバードライブ段の出力回転OutODとして出力する。
以上のような実施例5の無段変速機115にあっては、反転ギヤ機構30をラビニヨ型のプラネタリギヤセットPSによって構成したので、例えば2つのプラネタリギヤを組合せて構成した場合に比してコンパクト化を図ることができる。
また、特にオーバードライブ段において、反力を生じさせるためのリングギヤR2とキャリヤCR2のピニオンP4との噛合部分と、キャリヤCR2のピニオンP4とサンギヤS3との噛合部分と、の2箇所の噛合部分だけで伝達経路を形成することができ、オーバードライブモードにおける伝達効率を良好にすることができて、特に搭載された車輌の高速走行において燃費の向上を図ることができる。
[実施例6]
ついで、上記第1の実施の形態における反転ギヤ機構30の具体的な実施例としての無段変速機116を図13及び図14に沿って説明する。図13は実施例6に係る無段変速機を示すスケルトン図、図14は実施例6に係る無段変速機の速度線図である。なお、本実施例6の説明においても、上記第1の実施の形態に係る無段変速機11において説明した部分と同じ部分に同符号を付し、その説明を省略する。
実施例6に係る無段変速機116は、図13に示すように、反転ギヤ機構30を、ダブルピニオンプラネタリギヤにおける一方のピニオンに共通ロングピニオンを用いた形のプラネタリギヤセットPSにより構成したものである。
プラネタリギヤセットPSは、ロングピニオンP3とショートピニオンP4とを回転自在に支持するキャリヤCR2と、該ピニオンP3に噛合するサンギヤS2と、該ピニオンP4に噛合するリングギヤR2と、該ピニオンP3に噛合するリングギヤR3とを有して構成されている。
そして、プラネタリギヤセットPSにおいては、出力ディスク12に無段回転伝達部材16を介して接続されたサンギヤS2により無段変速回転要素Varを、ミッションケース5に接続されたリングギヤR2により回転固定要素Gを、オーバードライブクラッチC−ODに接続されたキャリヤCR2により入力回転要素OD−Inを、ハイクラッチC−Hに接続されたリングギヤR3により出力回転要素Hを、それぞれ構成している。
このように構成された反転ギヤ機構30にあっては、図14に示すように、ハイモード時において、サンギヤS2に入力されたバリエータ出力回転Voutを、回転が固定されたリングギヤR2を介して反転し、リングギヤR3よりハイモードの出力回転OutHとして出力し、また、オーバードライブモード時において、キャリヤCR2に入力された入力軸2の回転を、回転が固定されたリングギヤR2を介して増速し、リングギヤR3よりオーバードライブ段の出力回転OutODとして出力する。
以上のような実施例6の無段変速機116にあっては、反転ギヤ機構30をロングピニオンP3を有するプラネタリギヤセットPS(即ちラビニヨ型プラネタリギヤのロングピニオンとショートピニオンとの内外周方向を反対にした形のプラネタリギヤセット)によって構成したので、例えば2つのプラネタリギヤを組合せて構成した場合に比してコンパクト化を図ることができる。
<第2の実施の形態>
ついで、上記第1の実施の形態を一部変更した、本発明に係る第2の実施の形態を図15及び図16に沿って説明する。図15は第2の実施の形態に係る無段変速機を示すスケルトン図、図16は第2の実施の形態に係る無段変速機の速度線図である。なお、本第2の実施の形態においては、一部変更部分を除き、第1の実施の形態と同様な部分に同符号を付して、その説明を省略する。
図15に示すように、第2の実施の形態に係る無段変速機12は、図1に示した第1の実施の形態に係る無段変速機11に比して、出力回転要素Hと出力軸9とを連結すると共に、ハイクラッチC−Hに代えて、ロー・ハイ切換え機構40のハイ係合要素として回転固定要素Gの回転を固定・空転自在にするハイブレーキB−Hを配設したものである。また、ミッションケース5と回転固定要素Gとの間には、該回転固定要素Gの正転回転を規制するワンウェイクラッチF−3が、該ハイブレーキB−Hと並列して配設されている。
このように構成された無段変速機12は、図15及び図16に示すように、ロークラッチC−Lが係合されたローモード時にあって、動力循環プラネタリギヤ20からのローモード時の出力回転OutLが出力軸9に伝達されると、出力回転要素Hもローモード時の出力回転OutLによって連れ回りされる。この際、ハイブレーキB−Hは解放されており、かつワンウェイクラッチF−3によって回転固定要素Gの逆転空転回転が許容されているので、図16に示すように、出力回転要素Hの連れ回りによって、回転固定要素G及び入力回転要素OD−Inが無段変速的に空転される。
また、ローモードにおいてバリエータ10の変速比が小さくされて上記シンクチェンジSCの変速比に達し、不図示の制御部によってハイモードへの移行が判断されると、ロークラッチC−Lが解放されると共にハイブレーキB−Hが係合(係止)される。これにより、回転固定要素Gの回転が固定され、無段変速回転要素Varに入力されるバリエータ10の出力回転Voutが反転され、出力回転要素H及び出力軸9がハイモード時の出力回転OutHによって回転される。
ところで、上記第1の実施の形態に係る無段変速機11にあっては、ロー回転伝達部材Lの回転が出力回転要素Hの回転より高くならないように規制され、それによってバリエータ10の変速比がシンクチェンジSC時の変速比よりも小さくなることが防止されていたが、ローモード時にあってロークラッチC−Lが係合され、ロー回転伝達部材21と出力回転要素Hと出力軸9が同回転となっている状態で、ハイブレーキB−Hが解放されて回転固定要素Gの正転回転が許容されると、出力軸9に加速方向のトルクが加わった際に、バリエータ10の変速比がシンクチェンジSC時の変速比よりも小さくされてしまう虞がある。
しかしながら、回転固定要素Gとミッションケース5との間にワンウェイクラッチF−3が配設されており、回転固定要素Gの正転回転が規制されるため、ローモード時にあってシンクチェンジSCの変速比に到達した状態では、出力回転要素Hが加速されることが防止され、つまり、出力ディスク12の入力ディスク11A,11Bに対する変速比がシンクチェンジSC時の変速比よりも小さくなることが防止されて、パワーローラ14A,14Bの過傾斜や脱落等が防止される。
そして、不図示の制御部によってオーバードライブモードが判断されると、オーバードライブクラッチC−ODが係合され、入力軸2の回転が入力回転要素OD−Inに入力され、ハイブレーキB−Hによって回転が固定されている回転固定要素Gを介して、出力回転要素H及び出力軸9にバリエータ10の最高変速比と同じ変速比の増速回転が出力され、上述と同様にオーバードライブ段が形成される。
なお、これ以外の構成・作用効果は、第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
[実施例7]
ついで、上記第2の実施の形態における反転ギヤ機構30の具体的な実施例としての無段変速機121を図17及び図18に沿って説明する。図17は実施例7に係る無段変速機を示すスケルトン図、図18は実施例7に係る無段変速機の速度線図である。なお、本実施例7の説明においては、上記第1及び第2の実施の形態に係る無段変速機11,12において説明した部分と同じ部分に同符号を付し、その説明を省略する。
実施例7に係る無段変速機121は、図17に示すように、反転ギヤ機構30を、上記実施例1と同様に(図3参照)、シングルピニオンプラネタリギヤSP1とシングルピニオンプラネタリギヤSP2とを組合せて構成したものである。
シングルピニオンプラネタリギヤSP1は、1つのピニオンP3を回転自在に支持するキャリヤCR2と、該ピニオンP3に噛合するサンギヤS2と、該ピニオンP3に噛合するリングギヤR2とを有して構成されており、また同様に、シングルピニオンプラネタリギヤSP2は、1つのピニオンP4を回転自在に支持するキャリヤCR3と、該ピニオンP4に噛合するサンギヤS3と、該ピニオンP4に噛合するリングギヤR3とを有して構成されている。
そして、シングルピニオンプラネタリギヤSP1,SP2においては、該キャリヤCR2と該リングギヤR3とが連結されると共に、該リングギヤR2と該キャリヤCR3とが連結されており、出力ディスク12に無段回転伝達部材16を介して接続されたサンギヤS2により無段変速回転要素Varを、ハイブレーキB−H及びワンウェイクラッチF−3に接続されたキャリヤCR2及びリングギヤR3により回転固定要素Gを、オーバードライブクラッチC−ODに接続されたリングギヤR2及びキャリヤCR3により入力回転要素OD−Inを、出力軸9に接続されたサンギヤS3により出力回転要素Hを、それぞれ構成している。
このように構成された反転ギヤ機構30にあっては、図18に示すように、ハイモード時において、サンギヤS2に入力されたバリエータ出力回転Voutを、回転が固定されたキャリヤCR2及びリングギヤR3を介して反転し、サンギヤS3よりハイモードの出力回転OutHとして出力し、また、オーバードライブモード時において、リングギヤR2及びキャリヤCR3に入力された入力軸2の回転を、回転が固定されたキャリヤCR2及びリングギヤR3を介して増速し、サンギヤS3よりオーバードライブ段の出力回転OutODとして出力する。
また、ローモード時にあっては、サンギヤS3及び出力回転要素HがロークラッチC−Lの係合によってリングギヤR1と同回転となるが、ハイブレーキB−Hの解放によって回転固定要素Gの空転が許容され、該回転固定要素G及び入力回転要素OD−Inは無段変速的に逆転空転される。
なお、上記以外の構成・作用効果は、上述の実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
<第3の実施の形態>
ついで、上記第1の実施の形態を一部変更した、本発明に係る第3の実施の形態を図19及び図20に沿って説明する。図19は第3の実施の形態に係る無段変速機を示すスケルトン図、図20は第3の実施の形態に係る無段変速機の速度線図である。なお、本第3の実施の形態においては、一部変更部分を除き、第1の実施の形態と同様な部分に同符号を付して、その説明を省略する。
図19に示すように、第3の実施の形態に係る無段変速機13は、図1に示した第1の実施の形態に係る無段変速機11に比して、動力循環プラネタリギヤ20を、ダブルピニオンプラネタリギヤに代えて、ステップピニオンを有するものに変更したものである。
詳細には、動力循環プラネタリギヤ20は、大径のピニオンP1と小径のピニオンP2とが連結されたステップピニオンを回転自在に支持するキャリヤCR1と、該ピニオンP1に噛合するサンギヤS1と、該ピニオンP2に噛合するサンギヤS2とを有して構成されている。該キャリヤCR1は、入力軸2に接続されていると共に、入力回転伝達部材21に接続されてオーバードライブクラッチC−OD及びワンウェイクラッチF−2に接続されている。また、サンギヤS1は、無段回転伝達部材16を介して出力ディスク12に接続されており、サンギヤS2は、ロー回転伝達部材Lを介してロークラッチC−Lに接続されている。
このように構成された動力循環プラネタリギヤ20は、図20に示すように、キャリヤCR1に入力される入力軸2の回転とサンギヤS1に入力されるバリエータ10の出力回転Voutとを合成して動力循環し、正逆回転の変速比幅を有するローモードの出力回転OutLをサンギヤS2より出力する。
このステップピニオンを用いた動力循環プラネタリギヤ20においては、バリエータ10からロークラッチC−Lを介して出力軸までのローモード時の伝達経路を、サンギヤS1とピニオンP1との噛合部分と、サンギヤS2とピニオンP2との噛合部分と、の2箇所の噛合部分だけによって形成するため、上記ダブルピニオンプラネタリギヤ(例えば図1参照)に比して、特にローモード時の伝達効率を向上することができ、搭載される車輌の燃費向上を図ることができる。また、このステップピニオンを用いた動力循環プラネタリギヤ20は、上記ダブルピニオンプラネタリギヤ(例えば図1参照)に比して径方向にコンパクト化を図ることもできる。
なお、これ以外の構成・作用効果は、第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
[実施例8]
ついで、上記第3の実施の形態における反転ギヤ機構30の具体的な実施例としての無段変速機131を図21及び図22に沿って説明する。図21は実施例8に係る無段変速機を示すスケルトン図、図22は実施例8に係る無段変速機の速度線図である。なお、本実施例8の説明においては、上記第1及び第3の実施の形態に係る無段変速機11,13において説明した部分と同じ部分に同符号を付し、その説明を省略する。
実施例8に係る無段変速機131は、図21に示すように、反転ギヤ機構30を、上記実施例1と同様に(図3参照)、シングルピニオンプラネタリギヤSP1とシングルピニオンプラネタリギヤSP2とを組合せて構成したものである。
シングルピニオンプラネタリギヤSP1は、1つのピニオンP3を回転自在に支持するキャリヤCR3と、該ピニオンP3に噛合するサンギヤS3と、該ピニオンP3に噛合するリングギヤR3とを有して構成されており、また同様に、シングルピニオンプラネタリギヤSP2は、1つのピニオンP4を回転自在に支持するキャリヤCR4と、該ピニオンP4に噛合するサンギヤS4と、該ピニオンP4に噛合するリングギヤR4とを有して構成されている。
そして、シングルピニオンプラネタリギヤSP1,SP2においては、該キャリヤCR3と該リングギヤR4とが連結されると共に、該リングギヤR3と該キャリヤCR4とが連結されており、出力ディスク12に無段回転伝達部材16を介して接続されたサンギヤS3により無段変速回転要素Varを、ミッションケース5に接続されたキャリヤCR3及びリングギヤR4により回転固定要素Gを、オーバードライブクラッチC−ODに接続されたリングギヤR3及びキャリヤCR4により入力回転要素OD−Inを、ハイクラッチC−Hに接続されたサンギヤS4により出力回転要素Hを、それぞれ構成している。
このように構成された反転ギヤ機構30にあっては、図22に示すように、ハイモード時において、サンギヤS3に入力されたバリエータ出力回転Voutを、回転が固定されたキャリヤCR3及びリングギヤR4を介して反転し、サンギヤS4よりハイモードの出力回転OutHとして出力し、また、オーバードライブモード時において、リングギヤR3及びキャリヤCR4に入力された入力軸2の回転を、回転が固定されたキャリヤCR3及びリングギヤR4を介して増速し、サンギヤS4よりオーバードライブ段の出力回転OutODとして出力する。
なお、上記以外の構成・作用効果は、上述の実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
なお、以上説明した第1乃至第3の実施の形態並びに実施例1乃至8においては、無段変速装置としてフルトロイダル式無段変速装置を用いたものを一例に説明したが、勿論、ハーフトロイダル式無段変速装置を用いてもよい。
また、第1の実施の形態において説明したオーバードライブ係合要素を係合する条件、即ちハイモードからオーバードライブモードに切換える条件は、どのような条件であってもよいことはいうまでもない。