JP4836017B2 - 糸状菌由来グルコースデヒドロゲナーゼを組換え体で高発現するための方法 - Google Patents
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Description
また、非特許文献1〜4には、遺伝子組み換えによりアスペルギルス・オリゼ由来のグルコースデヒドロゲナーゼを製造することについての記載はない。
シグナルペプチドは、ペリプラズム空間への移行シグナルとなり、該空間のスペース上、発現量に制限が生じる可能性が危惧されたので、該シグナルペプチドの機能を欠失させる検討を行ったところ、GDHの生産性が約10倍向上して、生産コストを1/10に抑えることが可能となった。
(1)糸状菌由来のグルコースデヒドロゲナーゼ(以下GDHとも記載)を組換え生産する方法において、そのN末端領域に存在するシグナルペプチド配列に変異を導入することにより、該目的酵素の発現量を変異導入前と比べて高めることを特徴とするGDHの生産方法。
(2)糸状菌由来のGDHを組換え生産する方法において、そのN末端領域に存在するシグナルペプチドのアミノ酸配列の一部を欠損、あるいは置換することにより、該目的酵素の発現量を変異導入前と比べて高めることを特徴とする(1)記載のGDHの生産方法。
(3)配列番号2、4のいずれかに記載されたアミノ酸配列のうち、そのN末端に存在するMLFSLAFLSALSLATASPAGRAのアミノ酸配列の一部、あるいは全てを削除して発現させることによりこれらのアミノ酸配列が存在する場合と比べて発現量を高めることを特徴とする(1)記載のGDHの生産方法。
(4)配列番号2、4のいずれかに記載されたアミノ酸配列のうち、そのN末端に存在するMLFSLAFLSALSLATASPAGRAのアミノ酸配列に、1〜22個のアミノ酸置換または/及びアミノ酸挿入を行うことにより、元のアミノ酸配列が存在する場合と比べて発現活性を高めることを特徴とする(1)記載のGDHの生産方法。
(5)糸状菌由来のグルコースデヒドロゲナーゼのN末端に存在するMLGKLSFLSALSLAVAATLSNSTSAのアミノ酸配列の一部、あるいは全てを削除して発現させることによりこれらのアミノ酸配列が存在する場合と比べて発現量を高めるか、もしくは、1〜25個のアミノ酸置換または/及びアミノ酸挿入を行うことにより、元のアミノ酸配列が存在する場合と比べて発現活性を高めることを特徴とする(1)記載のGDHの生産方法。
(6)糸状菌由来グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)において、そのN末端に存在するシグナルペプチドをコードするDNA配列の一部、あるいは全てを置換または/及び欠損させたGDH遺伝子をコードする(1)〜(5)のいずれかの生産方法に使用されるDNA配列。
(7)(6)のDNA配列を含んでなる組換えベクター。
(8)(7)に記載の組換えベクターを宿主に導入してなる形質転換体。
(9)(8)に記載の形質転換体を用いて生産したGDHタンパク質。
(10)(9)に記載のGDHタンパク質を含む組成物。
(11)(10)に記載の組成物を用いるグルコース濃度の測定方法。
(12)(11)に記載の組成物を含むグルコースセンサ。
本発明によれば、アスペルギルス属、またはペニシリウム属より単離したグルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子からアミノ酸配列を推定し、シグナルペプチド領域を予測して、シグナルペプチドの一部または全部をコードするDNA配列を欠失させたり、シグナルペプチドをコードされたアミノ酸配列にアミノ酸置換やアミノ酸挿入を施すことにより、組換え体にてグルコースデヒドロゲナーゼを効率的に生産させることができ、かつ、産業利用の観点からより実用的なグルコースデヒドロゲナーゼを取得することが可能になった。
例えば、配列番号4に記載されたアミノ酸配列を有するGDHでは、そのN末端に存在するMLFSLAFLSALSLATASPAGRAのアミノ酸配列の一部、あるいは全てを削除することによりシグナルペプチドの機能を低下することができる。あるいは、1〜22個のアミノ酸置換または/及びアミノ酸挿入を行うことによっても可能である。
具体的な置換位置は例えばシグナルペプチド切断部が例示できる。好ましくはシグナルペプチドのC末端に相当するアラニンを他のアミノ酸に置換することにより、機能を低下させることができる。
(a)タンパク質実験プロトコール第1巻 機能解析編,第2巻 構造解析編(秀潤社)西村善文,大野茂男 監修
(b)改訂 タンパク質実験ノート 上 抽出と分離精製(洋土社)岡田雅人,宮崎香 編集
(c)タンパク質実験の進めかた(洋土社)岡田雅人,宮崎香 編集
あるいは以下に例示する方法によって進めることもできる。
したがって本発明においては、糸状菌由来のグルコース脱水素酵素(GDH)を組換え生産において、培養時のpHを7.3以下に制御することが好ましい。
本発明において、グルコースデヒドロゲナーゼ活性の測定は以下の条件で行う。
<試薬>
50mM PIPES緩衝液pH6.5(0.1%TritonX−100を含む)
14mM 2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)溶液
1M D−グルコース溶液
上記PIPES緩衝液15.8ml、DCPIP溶液0.2ml、D−グルコース溶液4mlを混合して反応試薬とする。
反応試薬2.9mlを37℃で5分間予備加温する。GDH溶液0.1mlを添加しゆるやかに混和後、水を対照に37℃に制御された分光光度計で、600nmの吸光度変化を5分記録し、直線部分から1分間あたりの吸光度変化(ΔODTEST)を測定する。盲検はGDH溶液の代わりにGDHを溶解する溶媒を試薬混液に加えて同様に1分間あたりの吸光度変化(ΔODBLANK)を測定する。これらの値から次の式に従ってGDH活性を求める。ここでGDH活性における1単位(U)とは、濃度200mMのD−グルコース存在下で1分間に1マイクロモルのDCPIPを還元する酵素量として定義している。
よって、遺伝子取得の常法の1つである部分アミノ酸配列を利用したクローニングは断念せざるを得なくなった。
次いで、該酵素を用いて部分アミノ酸配列を決定することに成功し、決定したアミノ酸配列を元に、PCR法により、Penicillium lilacinoechinulatum NBRC6231由来GDH遺伝子を一部取得し、塩基配列を決定した(1356bp)。(実験例1[3][4])
最終的に、この塩基配列を元に、公開されているアスペルギルス・オリゼのゲノムデータベースより、アスペルギルス・オリゼGDH遺伝子を推定(実験例1[5])、取得した。
アスペルギルス・オリゼ由来グルコースデヒドロゲナーゼ(以下AOGDHとも記載)遺伝子の推定
[1]アスペルギルス・オリゼ由来GDHの取得
アスペルギルス・オリゼは、土壌より入手し定法に従ってL乾燥菌株とし保管していたものを使用した。以下、これをアスペルギルス・オリゼTI株と呼ぶ。アスペルギルス・オリゼTI株のL乾燥菌株をポテトデキストロース寒天培地(Difco製)に植菌し、25℃でインキュベートすることにより復元した。復元させたプレート上の菌糸を寒天ごと回収して、フィルター滅菌水に懸濁した。2基の10L容ジャーファーメンター中に生産培地(1%麦芽エキス、1.5%大豆ペプチド、0.1%MgSO4・7水和物、2%グルコース、pH6.5)6Lを調製し、120℃15分オートクレーブ滅菌して放冷した後、上記の菌糸懸濁液を接種し、30℃、通気攪拌培養を行った。培養開始から64時間後に培養を停止し、菌糸体を濾過により除去してGDH活性を含む濾過液を回収した。回収した上清を限外ろ過膜(分子量10,000カット)により低分子物質を除去した。次いで、硫酸アンモニウムを60%飽和度となるように添加、溶解し、硫安分画を行い、遠心機によりGDHを含む上清画分を回収した後、Octyl−Sepharoseカラムに吸着させ、硫酸アンモニウム飽和度60%〜0%でグラジエント溶出してGDH活性のある画分を回収した。得られたGDH溶液を、G−25−Sepharoseカラムを用いて脱塩を行った後、60%飽和度の硫酸アンモニウムを添加、溶解し、これをPhenyl−Sepharoseカラムに吸着させ、硫酸アンモニウム飽和度60%〜0%でグラジエント溶出してGDH活性のある画分を回収した。更にこれを50℃で45分加温した後、遠心分離を行って上清を得た。以上の工程を経て得られた溶液を精製GDH標品(AOGDH)とした。尚、上記精製過程においては、緩衝液として20mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.5)を使用した。さらに、AOGDHの部分アミノ酸配列を決定するため、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどの各種手段により精製を試みたものの、部分アミノ酸配列決定に供することのできる精製標品を得ることはできなかった。また、我々はアスペルギルス・テレウスに属する微生物を独自に探索入手し、上記と同様にその培養上清より、塩析、Octyl−sepharose等による精製を試みたが、アスペルギルス・オリゼ同様部分アミノ酸配列決定に供することのできる精製標品を得ることはできなかった。通常、一般的に行われる精製法を用いて、高純度で、SDS−PAGE上ではっきりと確認できるGDH標品を得ることができなかったのは、酵素タンパク質に結合しているであろう糖鎖が原因の一つとなっているのではないかと推察した。したがって、遺伝子取得の常法の1つである該タンパク質の部分アミノ酸配列を利用したクローニングを断念せざるを得なくなった。
ペニシリウム属糸状菌由来のGDH生産菌としてPenicillium lilacinoechinulatum NBRC6231(独立行政法人製品評価技術基盤機構より購入)を用い、上記アスペルギルス・オリゼTI株と同用の手順に従って、培養および精製を行い、SDS電気泳動でほぼ均一な精製標品を取得した。
Penicillium lilacinoechinulatum NBRC6231について上記方法に従い(ただしジャーファーメンターでの培養時間は24時間)培養を実施し、濾紙濾過により菌糸体を回収した。得られた菌糸は直ちに液体窒素中に入れて凍結させ、クールミル(東洋紡社製)を用いて菌糸を粉砕した。粉砕菌体より直ちにセパゾールRNA I(ナカライテスク社製)を用いて本キットのプロトコールに従ってトータルRNAを抽出した。得られたトータルRNAからはOrigotex−dt30(第一化学薬品社製)をもちいてmRNAを精製し、これをテンプレートにReverTra−Plus−TM(東洋紡社製)を用いてRT−PCRを行った。得られた産物はアガロース電気泳動を行い、鎖長0.5〜4.0kbに相当する部分を切り出した。切り出したゲル断片からMagExtractor−PCR&Gel Clean Up−(東洋紡社製)を用いてcDNAを抽出・精製してcDNAサンプルとした。
上記で精製したPenicillium lilacinoechinulatum NBRC6231由来GDHを0.1%SDS、10%グリセロールを含有するTris−HClバッファー(pH6.8)に溶解し、ここにGlu特異的V8エンドプロテアーゼを終濃度10μg/mlとなるように添加し、37℃16時間インキュベートすることで部分分解を行った。このサンプルをアクリルアミド濃度16%のゲルを用いて電気泳動してペプチドを分離した。このゲル中に存在するペプチド分子を、ブロット用バッファー(1.4%グリシン、0.3%トリス、20%エタノール)を用いてセミドライ法によりPVDF膜に転写した。PVDF膜上に転写したペプチドはCBB染色キット(PIERCE社製GelCode Blue Stain Reagent)を用いて染色し、可視化されたペプチド断片のバンド部分2箇所を切り取ってペプチドシーケンサーにより内部アミノ酸配列の解析を行った。得られたアミノ酸配列はIGGVVDTSLKVYGT(配列番号15)およびWGGGTKQTVRAGKALGGTST(配列番号16)であった。この配列を元にミックス塩基を含有するディジェネレートプライマーを作製し、Penicillium lilacinoechinulatum NBRC6231由来cDNAをテンプレートにPCRを実施したところ、増幅産物が得られ、アガロースゲル電気泳動により確認したところ、1.4kb程度のシングルバンドであった。このバンドを切り出して東洋紡製MagExtractor−PCR&Gel Clean Up−を用いて抽出・精製した。精製DNA断片はTArget Clone−Plus−(東洋紡社製)によりTAクローニングし、得られたベクターで大腸菌JM109コンピテントセル(東洋紡社製)をヒートショックにより形質転換した。形質転換クローンのうち青白判定でインサート挿入が確認されたコロニーについてMagExtractor−Plasmid−(東洋紡社製)を用いてプラスミドをミニプレップ抽出・精製し、プラスミド配列特異的プライマーを用いてインサートの塩基配列を決定した(1356bp)。
決定した塩基配列を元に「NCBI BLAST」のホームページ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)からホモロジー検索を実施し、AOGDH遺伝子を推定した。検索により推定したAOGDHとP.lilacinoechinulatum NBRC6231由来GDH部分配列とのアミノ酸レベルでの相同性は49%であった。
アスペルギルス・オリゼ由来グルコースデヒドロゲナーゼ(以下AOGDHと示す)遺伝子の大腸菌への導入
AOGDH遺伝子を、アスペルギルス・オリゼの菌体よりmRNAを調製し、cDNAを合成した。配列番号5,6に示す2種類のオリゴDNAを合成し、調製したcDNAをテンプレートとしてKOD−Plus(東洋紡績製)を用いてAOGDH遺伝子(野生型)増幅した。DNA断片を制限酵素NdeI、BamHIで処理し、pBluescript(LacZの翻訳開始コドンatgに合わせNdeI認識配列のatgを合わせる形でNdeIサイトを導入したもの)NdeI−BamHIサイトに挿入し、組換えプラスミドを構築した。この組換えプラスミドを、コンピテントハイ DH5α(東洋紡績製)を用いて導入した。常法に従いプラスミドを抽出し、AOGDH遺伝子の塩基配列の決定を行った(配列番号3)。cDNA配列から推定されるアミノ酸残基は593アミノ酸(配列番号4)であった。
シグナルペプチド切断後のFAD−GDHをmFAD−GDHとした場合、mFAD−GDHのN末端にMのみ付加してmFAD−GDHのN末端が1アミノ酸分のびた形態となっているものをS2と表現した。また、mFAD−GDHのN末端のKをMにアミノ酸置換して、mFAD−GDHとアミノ酸総数を同じにしたものをS3と表現した。S2では、配列番号7のオリゴヌクレオチドをN末端側プライマーとして、配列番号6のプライマーとの組合せでPCRを行い、同様の手順で、S2をコードするDNA配列をもつ組換えプラスミドを構築し、同様に形質転換体を取得した。S3では、配列番号8のオリゴヌクレオチドをN末端側プライマーとして、配列番号6のプライマーとの組合せでPCRを行い、S3をコードするDNA配列をもつ組換えプラスミドを構築し、同様に形質転換体を取得した。なお、それぞれの改変FAD−GDHのDNA配列を持つプラスミドは、DNAシーケンシングにて配列上誤りがないことを確かめた。
配列番号9は、上記で決定したシグナルペプチド欠質変異体S2のDNA配列を示す。配列番号10はその対応するアミノ酸配列を示す。
これら形質転換体をTB培地にて10L−ジャーファーメンターを用いて1〜2日間液体培養した。各培養フェーズの菌体を集菌した後、超音波破砕してGDH活性を確認した。各種形質転換体の培養フェーズとOD,pH,GDH活性の関係を表1,2,3および図2,3,4に示す。なお、アスペルギルス・オリゼ野生株を液体培地(1%麦芽エキス、1.5%大豆ペプチド、0.1%MgSO4 ・7水和物、2%グルコース、0.05mM p−ベンゾキノン、0.1mM EDTA、pH6.5)にて、10L−ジャーファーメンターを用いて30℃、1日間培養し、菌体内あるいは菌体外の活性を確認したところ、いずれも約0.2U/ml培養液程度のGDH活性であった。
野生型FAD−GDH(WT)では、培養16〜18時間でピーク(6.6U/ml−b)が見られ、以後活性の低下が見られた。一方、改変型FAD−GDHのS2では22〜25時間目(72〜73U/ml−b)、S3では20〜23時間目(74〜75U/ml−b)でピークが見られ、WTと同様にその後は、GDH活性の低下が見られた。
それぞれのピークにおける培養力価を比較したところ、シグナルペプチドと思われるアミノ酸配列を削除することにより、そのGDH生産性が10倍以上増大することが明らかにされた。
また、シグナルペプチドの削除前後でFADGDH精製標品の比活性(U/mg)を比較したところ、野生型FADGDH(WT)270U/mgのところ、削除後の改変型FADGDHのS2では670U/mgであり、比活性が2.5倍増大していた。シグナルペプチドを削除することにより比活性も増大することが示唆されている。
比活性の増大を考慮しても、少なくとも4.4倍は活性量が増大しているものと思われる。
また、糸状菌由来のグルコースデヒドロゲナーゼ(以下GDHとも記載)を組換え生産する方法において、そのN末端領域に存在するシグナルペプチド配列に変異を導入したものでは、培養制御pHを7.3まで上げることができる。
アスペルギルス・テレウス由来グルコースデヒドロゲナーゼ(以下ATGDHと示す)遺伝子の大腸菌への導入
ATGDH遺伝子を、アスペルギルス・テレウスの菌体(寄託番号NBRC 33026として製品評価技術基盤機構・生物資源部門に登録されている。)よりmRNAを調製し、cDNAを合成した。配列番号13,14に示す2種類のオリゴDNAを合成し、調製したcDNAをテンプレートとしてKOD−Plus(東洋紡績製)を用いてATGDH遺伝子(予想シグナルペプチド配列を除去した遺伝子配列)を増幅した。DNA断片を制限酵素NdeI、BamHIで処理し、pBluescript(LacZの翻訳開始コドンatgに合わせNdeI認識配列のatgを合わせる形でNdeIサイトを導入したもの)NdeI−BamHIサイトに挿入し、組換えプラスミドを構築した。この組換えプラスミドを、コンピテントハイ DH5α(東洋紡績製)を用いて導入した。常法に従いプラスミドを抽出し、ATGDH遺伝子の塩基配列の決定を行った(配列番号11)。cDNA配列から推定されるアミノ酸残基は568アミノ酸(配列番号12)であった。
これら形質転換体を100μg/mlのアンピシリンを含む50mlのLB培地にて30℃,1晩培養した後、再度、100μg/mlのアンピシリンを含む50mlのLB培地にて30℃,8時間培養して種菌を調製した。
調製した種菌を、100μg/mlのアンピシリンを含むTB培地にて、Kd・P 0.5〜1.5の範囲で10L−ジャーファーメンターにて6日間液体培養した。各培養フェーズの菌体を集菌した後、超音波破砕してGDH活性を確認した。培養フェーズとOD,pH,GDH活性の関係を表4,5,6,7および図4,5,6,7に示す。なお、アスペルギルス・テレウス野生株を液体培地(1%麦芽エキス、1.5%大豆ペプチド、0.1%MgSO4 ・7水和物、2%グルコース、0.05mM p−ベンゾキノン、0.1mM EDTA、pH6.5)にて、10L−ジャーファーメンターを用いて30℃、1日間培養し、菌体内のGDH活性を確認したところ、約0.1U/ml培養液がピークであった。
一方、FAD−GDH組換え体では、ピークで約9〜21U/ml−bの活性が見られ、100〜200倍程度の培養力価の増大が認められた。また、培養条件を検討したところ、Kd・Pを0.5と低く設定することにより、Kd・P 0.75の時の約1.5倍、Kd・P 1〜1.5の時の約2倍の培養力価が認められた。なお、Kd・Pを2以上に設定した場合には、培養力価が約5U/ml−b以下となることを確認している。
培養温度に関しては、培養フェーズとOD,pH,GDH活性の関係を表8,9,10,11および図8,9,10,11に示す。培養温度は26〜28℃が最適であり、少なくとも23〜28℃で培養する必要があり、29℃よりも高い温度にて培養した場合、培養力価が半減する傾向が認められた。
ATGDH遺伝子組換え体の培養においても、培養液のpHを7.3以下に保つことが酵素活性を安定に保つために非常に重要であり、ATGDHにおいては、AOGDHよりも、むしろ低いpHで培養を終了することが必要になるようであった。
なお、ATGDH遺伝子は、アスペルギルス・テレウス由来FAD−GDHをコードするDNA配列から予想されるシグナルペプチド(MLGKLSFLSALSLAVAATLSNSTSA)(配列番号17)配列部分のDNAを切除したものである。シグナルペプチド配列を含むものは、A.オリゼ由来FAD−GDHと同様、FAD−GDHの発現量が乏しかったため、当初からシグナルペプチドを含まないものを用いて培養の検討を行なっている。
Claims (2)
- アスペルギルス・テレウス由来のFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼを大腸菌で組換え生産する方法であって、アスペルギルス・テレウス由来の野生型FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼから、寄託番号NBRC 33026として登録されているアスペルギルス・テレウス由来のFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列のN末端領域に存在するMLGKLSFLSALSLAVAAのアミノ酸残基及びそのC末端側に続く8つのアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を削除した変異型FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を大腸菌で発現させることを特徴とする方法。
- アスペルギルス・テレウス由来の野生型FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼから、寄託番号NBRC 33026として登録されているアスペルギルス・テレウス由来のFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列のN末端領域に存在するMLGKLSFLSALSLAVAAのアミノ酸残基及びそのC末端側に続く8つのアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を削除した変異型FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼをコードすることを特徴とするDNA。
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