JP4835231B2 - 耐二次加工脆性に優れた冷延鋼板の製造方法 - Google Patents

耐二次加工脆性に優れた冷延鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、自動車や各種容器等の深絞り加工が施される用途に用いて好適な、耐二次加工脆性に優れた冷延鋼板を、連続焼鈍法により製造する方法に関する。
冷延鋼板の製造工程においては、冷間圧延後の焼鈍が連続焼鈍法に代表される短時間での加熱・冷却からなる焼鈍プロセスでは、製品の材質は素材の化学成分組成によって大きな影響を受ける。そこで深絞り性、成形性などに優れる薄鋼板には、極低炭素鋼にTi、Nbなどの炭窒化物形成元素を添加した材料が広く用いられている。
そしてこれらの材料を用いた鋼板は、Tiが鋼中のC、N、Sなどと析出形成傾向が極めて強いため、粒界が清浄化し粒界強度が非常に弱くなり、厳しい深絞り加工後に脆性破壊(二次加工脆性による破壊)する傾向を有している。さらに、Si、MnおよびPなどを添加して高強度鋼板を得る場合には、Si、Pは鋼板を脆化させる性質が強いため、耐二次加工脆性を大きく劣化させる。そこで、この欠点を改善するために、鋼中の固溶BがCと同様の粒界強化作用を有することを利用して、Bを添加する手段が用いられている。しかしながら、B添加による加工性の劣化はよく知られているところであり、このため、B含有量は極微量に抑制されていて十分な耐二次加工脆性を得るには至っていなかった。
一方、これらの鋼板の製造工程においては、熱間圧延、冷間圧延および焼鈍条件などを特定の範囲に制御する方法が種々開示されているが、一般に、熱延仕上温度は、深絞り性向上の観点からAr3変態点以上が、巻取り温度は、成形性、深絞り性向上の観点から650〜800℃の温度範囲が、また焼鈍温度は、再結晶温度以上でエネルギー的に有利な比較的低い温度が用いられていた。
これまで、この種の薄鋼板の製造方法として、たとえば特許文献1:特開昭62−278232号公報に直送圧延法による非時効性深絞り用冷延鋼板の製造方法、特許文献2:特開平1−177321号公報に深絞り性に優れた冷延鋼板の製造方法、特許文献3:特開平2−200730号公報にプレス成形性に優れる冷延鋼板の製造方法などがそれぞれ開示されているが、これらはいずれも、耐二次加工脆性の向上のためにBを添加しているものの、耐二次加工脆性に関する具体的開示はなく、巻取り温度が640℃以上の高温巻取りであり、これらの方法では十分な耐二次加工脆性の向上は望めない。
また、特許文献4:特開昭63−241122号公報に超深絞り用溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法が開示されているが、B量が0.0010%以下と微量であり、耐二次加工脆性の向上はあるものの未だ不十分である。さらに、特許文献5:特開昭62−40318号公報に深絞り性の優れた冷延鋼板の製造方法、特許文献6:特開平1−188630号公報にプレス成形性に優れた冷延鋼板の製造方法が開示されているが、耐二次加工脆性に関する具体的な開示例はなく、これらは共に焼鈍温度を常法の再結晶温度以上、800℃以下の範囲で行っていることから、耐二次加工脆性の十分な向上は期待できない。
なお、特許文献7:特開昭61−133323号公報に成形性の優れた薄鋼板の製造方法、特許文献8:特開昭62−205231号公報に高強度鋼板の製造方法が開示されているが、これらは、通常の厚さより薄い鋳片を製造し、これを用いて圧延工程の軽減または簡略化をはかることを主目的とするものであり、前者においては冷間圧延後の焼鈍条件などを具体的に示されておらず、耐二次加工脆性に関する具体例が示されているものの、その効果は不十分であり、後者においては焼鈍温度775℃以下の具体例が示されているが、これらの条件では十分な耐二次加工脆性の向上は期待できない。
ところで、二次加工脆性は、鋼板を円筒形状に深絞り加工を行う等、材料に大きな縮み変形を与えた際に、材料が脆化し、加工品に低温で衝撃を加えた時に、粒界強度が弱い材料において粒界に沿う形で縦割れが発生する現象である。耐二次加工脆性は、粒界強度に及ぼす化学成分の影響からPの添加量が多い方が劣り、固溶C、固溶Bが多いほど優れることが知られている。
また、加工後の残留応力の大きさの観点から、同じ加工形状においては、板厚が厚い材料の方が劣ることが、さらには、粒界強度に及ぼす雰囲気温度の影響から、雰囲気温度が低い程二次加工脆性が起こり易いことが知られている。
このため、B添加量として10ppmを越える量が必要な場合が考えられるが、従来の発明では、上記の事象が総合的には考慮されていなかった結果、9ppmを越えるBを必要としない、あるいは、特許文献9:特開平05−117758では、二次加工脆性には直接関係しない面内異方性低減等の面からAlを0.05wt%以上、0.1wt%以下を含有させるといった、一般材では通常添加しない範囲でAlの含有量を規定している等の問題があった。
特開昭62−278232号公報、特許請求の範囲など 特開平1−177321号公報、特許請求の範囲など 特開平2−200730号公報、特許請求の範囲など 特開昭63−241122号公報、特許請求の範囲など 特開昭62−40318号公報、特許請求の範囲など 特開平1−188630号公報、特許請求の範囲など 特開昭61−133323号公報、特許請求の範囲など 特開昭62−205231号公報、特許請求の範囲など 特開平05−117758号公報、特許請求の範囲など
本発明は、前記した問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、製造条件の微妙な制御を必要とすることなく、連続焼鈍法を用いてもP成分、B成分の調整により優れた深絞り性を維持したまま、耐二次加工脆性に優れた深絞り用冷延鋼板を容易に製造できる製造方法を提供するものである。
粒界破壊型の二次加工脆性では、化学成分的には、鋼の中に固溶状態で存在するCやBが粒界強度を強める方向に作用し、Pが粒界強度を低下させる方向に作用することが知られている。
しかし、極低炭成分系の冷延、表面処理鋼板においては、BH鋼板を除くと、一般に良好な材質を得るため、CはTiやNbの析出物として析出させ、固溶Cは極力低減する成分設計がなされるため、極低炭IF鋼に含まれるCは、粒界強度を高めることにはほとんど寄与していないと考えられる。
また、Bと析出物を形成し易いNは、Cと同様Tiで固定されると考えると、二次加工脆性への影響度の大きい化学成分としては、BとPの影響が大きいことが推測される。
化学成分の影響を考察する前に、先ず、二次加工脆性特性に及ぼす衝撃試験条件、材料の加工度、板厚の影響について調査した。その方法としては、
(1)供試材:製造方法上、Cが結晶粒界に析出し易く、このため二次加工脆性が良好とされる低炭素箱焼鈍軟鋼材と、本発明で対象としている極低炭成分系連続焼鈍材を用いた。また、連続焼鈍材では、Ti−Nb複合添加軟鋼の他に340MPa、370MPa級のP添加鋼を、さらに、P添加鋼では、Ti−Nb−B鋼、Nb−B鋼等種々の鋼を用いた。また、供試材の板厚も0.7〜1.6mmの範囲で変化させた。
(2)試験片:直径32mmφのポンチでカップ成形後、フランジをカットした試験片を使用した。カップの絞り比も、1.6〜2.3の範囲で変化させた。
(3)衝撃試験:質量5kgfの鉄球を、横に寝かせた試験片に落とす方法で二次加工評価した。落重高さは30〜150cmの範囲で変化させ、試験片を+50〜−150℃の間で約10℃おきに保持しておき、衝撃試験で試験片に縦割れが入った最も高い温度を二次加工脆性温度(Tcr)とした。
その結果、二次加工脆性温度(Tcr)は、いずれの供試材でも絞り比(DR)、板厚(t)、落重高さ(h)に対し直線的に変化し、その直線の傾きは供試材の種類によらずほぼ一定であることが判明した。そこで、これらの実験結果を用い、二次加工脆性温度(Tcr)を従属変数、板厚(t)、絞り比(DR)、落重高さ(h)を独立変数として回帰を行った結果、次の回帰式を得た。
Tcr(℃)=39×t(mm)+71×DR+0.17×h(cm)+K(℃)
ここで、定数項Kは供試材の種類毎に決まる特性値で、定数Kが低いほどその供試材は耐二次加工脆性に対しては脆性が優れると考えることが出来る。得られた回帰式による計算Tcrと実験で得たTcrの対応を供試材毎の定数Kとともに図1に示す。
なお、同じ鋼種の材料において、熱延の巻取り温度、焼鈍温度等の温度条件が二次加工脆性(Tcr)に及ぼす影響も確認したが、いずれもその影響は小さいものであった。
次に、供試材をTiとNbを複合添加した極低炭成分系の連続焼鈍材に絞って、K値に及ぼす化学成分の影響を調査した。ここで、対象とする材料の化学成分と製造方法は、以下の通りである。
C:0.0015%、Si:0.01%、Mn:0.10%、S:0.006%、Al:0.025%、N:0.0030%、Ti:0.030%、Nb:0.004%をベースの化学成分とし、PとBの含有量をP:0.01〜0.16%、B:0〜0.0040%の範囲で変化させた鋼を実験室的に作成し、これを、実験室的に仕上げ温度:870℃、巻取り温度:550℃相当の熱間圧延を行った後、冷間圧下率:75%、焼鈍温度:800℃相当の連続焼鈍を行って板厚:0.8mmの供試材を作成した。この供試材を用いて、上述した方法で脆化温度を求め、その結果からK値を求めた、その結果を図2に示す。
この結果について、K値を従属変数、P含有量(%)、B含有量の自然対数(ppm)を独立変数として回帰を行った結果、次の回帰式を得た。なお、B量は自然対数を独立変数とした関係で、便宜的に「0ppm」は「1ppm」として算出した。
K(℃)=838×P(wt%)−29.6×ln{B(ppm)}−243
以上の結果より、Pを0.10%添加した成分系において、例えば、絞り比:2.0フランジカット有り、落重試験条件:5kgf×80cmの条件で、板厚:1.2mmの材料が−40℃の環境でも二次加工脆性が発生しない様にするためには、Bを13(ppm)以上添加すれば良いことがわかる。
以上の結果、実験室で、P、Bの添加量と板厚が異なる極低炭材−Ti−Nb成分系材を種々の絞り比でカップ成形し、種々の衝撃力の落重試験でカップに縦割れが入る脆化温度を調査したところ、脆化温度は、板厚、BとPの添加量、カップ絞り比、衝撃力の一次式でほぼ近似出来ることがわかった。さらに、上記の実験式を用いて、用途等に応じて適切な絞り比と限界脆化温度を設定し、板厚、P添加量を設定すると、良好な耐二次加工脆性を確保するために必要なB量を求めることが出来る。したがって、例えば、自動車向等一般的な用途で想定される絞り比と、最終製品の使用環境から想定される限界脆化温度を与えることにより、一般的な用途において良好な耐二次加工脆性が確保出来る化学成分範囲をより合理的に決定出来るようになった。
本発明はこのような知見にもとづいてなされたもので、第1の発明は、
質量%で
C:0.0005〜0.0030%、
Si:0.5%以下、
Mn:0.01〜0.50%、
P:0.005〜0.12%、
S:0.0005〜0.015%、
Al:0.005〜0.100%、
N:0.0005〜0.0040%、
Nb:0.2×93(C/12)〜93(C/12)、
B:0.0010〜0.0050%、
Ti:48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}〜5×48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物元素よりなる耐二次加工脆性に優れた冷延鋼板の製造方法であって、
該鋼板の目標板厚(t)と、該鋼板の用途で想定される絞り比(DR)と、最終製品の使用環境から想定される衝撃力(h)とその用途に要求される限界脆化温度Tcr′(℃)とを定め、
次いで、PとBの含有量が式(1)、(2)、(3)を満足するように添加し、該PとBが添加された素材を仕上温度:700〜950℃、巻取り温度:500〜800℃で熱間圧延し、酸洗後、圧下率40%以上で冷間圧延した後に、700℃〜Ac3変態点の温度域で連続焼鈍を行うことを特徴とする、耐二次加工脆性に優れた冷延鋼板の製造方法である。
Tcr(℃)=39×t(mm)+71×DR+0.17×h(cm)+K(℃)…(1)
K(℃)=838×P(%)−29.6×ln{B(ppm)}−243 …(2)
Tcr(℃)≦Tcr′(℃) …(3)
Tcr(℃):二次加工脆性温度
DR:脆性試験材の加工度(絞り比)
h(cm):脆性試験時に5kgfの錘を落とす高さ
t(mm):板厚
K(℃):材料毎の定数
Tcr′(℃):限界脆化温度
第2の発明は、質量%で
C:0.0005〜0.0030%、
Si:0.5%以下、
Mn:0.01〜0.50%、
P:0.005〜0.12%、
S:0.0005〜0.015%、
Al:0.005〜0.100%、
N:0.0005〜0.0040%、
Nb:0.2×93(C/12)〜93(C/12)、
B:0.0010〜0.0050%、
Ti:48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}〜5×48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物元素よりなる耐二次加工脆性に優れた冷延鋼板の製造方法であって、
該鋼板の目標板厚(t)と、該鋼板の用途で想定される絞り比(DR)と、最終製品の使用環境から想定される衝撃力(h)とその用途に要求される限界脆化温度Tcr′(℃)とを定め、
次いで、PとBの含有量が式(1)、(2)、(3)を満足するように添加し、該PとBが添加された素材を仕上温度:700〜950℃、巻取り温度:500〜800℃で熱間圧延し、酸洗後、圧下率40%以上で冷間圧延した後に、700℃〜Ac3変態点の温度域で連続焼鈍を行うことを特徴とする、耐二次加工脆性に優れた冷延鋼板の製造方法である。
Tcr(℃)=39×t(mm)+71×DR+0.17×h(cm)+K(℃)…(1)
K(℃)=838×P(%)−29.6×ln{B(ppm)}−243 …(2)
Tcr(℃)≦Tcr′(℃) …(3)
Tcr(℃):二次加工脆性温度
DR=2.0:脆性試験材の加工度(絞り比)
h(cm)=80:脆性試験時に5kgfの錘を落とす高さ
t(mm):板厚
K(℃):材料毎の定数
Tcr′(℃)=−40℃:限界脆化温度
なお、本発明方法で得られる冷延鋼板は、自動車や各種容器等の深絞り加工が施される用途に好適に用いられる。ただし、用途毎に、要求されるDR、h(cm)、t(mm)、及びTcr′(℃)が異なる。本発明では、用途毎に、要求されるDR、h(cm)、t(mm)、及びTcr′(℃)の値を適切に選択する。第2の発明は、深絞り加工が施される自動車用の冷延鋼板に適用される値を示している。
本発明によれば、深絞り加工が施される用途に適用される鋼材を製造するに際し、製造条件の微妙な制御をおこなわずとも、P成分とB成分の配合量のみを適切に調節することにより所望する二次加工脆性特性を得ることができる。
まず、本発明冷延鋼板の組成限定理由について説明する。なお、質量%は単に%と記す。
(1)C:0.0005〜0.0030%
Cは、含有量が少ないほど材質に有利であり、含有量が多いと必然的にCを析出固定するために必要なTiが増加し、複合析出物の生成量が増えるため材質の劣化を招く。その含有量が0.0005%より低くしても、それ以上の材質の向上は望めず、逆に溶製コストが上昇する。一方、0.0030%を越えると材質が大幅に劣化しはじめるため、C含有量を0.0005〜0.0030%と限定した。
(2)Si:0.5%以下
Siは、適正な強度を得るために有効な成分であるが、脆性を助長し、化成処理性を阻害する成分でもある。したがって、その含有量の上限を0.5%とする。
(3)Mn:0.01〜0.50%
Mnは、Siと同様に適正な強度を得るために有効な成分であるが、固溶強化による深絞り性を劣化させる作用があることおよびコスト面から、その含有量の上限を0.50%とする。
(4)P:0.005〜0.12%
Pは、多量に含まれると粒界偏析量が増加して粒界脆化を起こし、とくに耐二次加工脆性の劣化をもたらすため極力低減することが望ましいが、0.005%より低くしても、それ以上の材質向上は望めず、逆に溶製コストが上昇する。一方、0.12%以下であれば許容できるため、P含有量を0.005〜0.12%とする。
(5)S:0.0005〜0.015%
Sは、有害な元素であり、多量に含まれると粒界脆化が発生しやすく耐二次加工脆性の劣化をもたらす。そのため極力低減することが望ましいが、0.0005%より低くしても、それ以上の材質向上は望めず、逆に溶製コストが上昇する。一方、0.015%以下であれば許容できるため、S含有量を0.0005〜0.015%とする。
(6)Al:0.005〜0.100%
Alは、窒化物形成元素として有用である。すなわち、Ti、Nbとの共存による(Ti、Nb)Cおよび(Ti、Al)Nと推定される複合析出物を形成することにより、C、Nを析出固定し、深絞り性を向上させる。これらの効果を得るためには、含有量は0.005%以上が必要である。一方、0.100%より多いとそれらの効果は飽和し、コストアップにもつながる。したがって、その含有量は0.005%以上、0.100%以下とする。なお、従来技術では、面内異方性低減等の観点より、Al含有量を0.05%以上と規定されていたが、本発明のような深絞り成形性と耐二次加工脆性の両立を図る時には、そのような規定は必要なく、むしろAl含有量は0.05%以下とする方が、材質とコストの面より有利であるため、Al含有量は0.005〜0.05%とするのが好ましい範囲である。
(7)N:0.0005〜0.0040%
Nは、Cと同様に深絞り性の改善のため極力低減することが望ましいが、その含有量が0.0005%より低くしても、それ以上の材質の向上は望めず、逆に溶製コストが上昇する。一方、0.0040%を越えると材質が大幅に劣化しはじめるため、N含有量を0.0005〜0.0040%と限定した。
(8)Nb:0.2×93(C/12)〜93(C/12)
Nbは、炭化物形成元素として深絞り性を向上させるために有効であり、さらにTiとの複合添加により平均r値、伸びを向上させる効果がある。その含有量がC量に対して、0.2×93(C/12)未満では添加の効果がなく、一方、93(C/12)を越えると伸びなどが低下する。したがって、その含有量は0.2×93(C/12)〜93(C/12)とする。
(9)B:0.0010〜0.0050%
Bは、前記したようにCと同様に、結晶粒界を強化する働きがあるとされていて、耐二次加工脆性の向上に有効であるが、過剰に含有させると平均r値および伸びを劣化させる。その含有量が0.0010%未満では添加効果がなく、一方、0.0050%を超えると深絞り性が劣化するので、その含有量を0.0010〜0.0050%とする。
(10)Ti:48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}〜5×48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}
Tiは、炭窒化物形成元素としてC、Nを析出固定させ、深絞り性を向上させる有効な成分である。すなわち、連続焼鈍材ではCおよびNの低減のみでは箱焼鈍材なみあるいはそれ以上の深絞り性を得ることができないが、CおよびNを完全に析出固定させることにより、深絞り性が良好となる。またNを析出固定することにより、添加したBを、耐二次加工脆性を改善する効果を有する固溶Bの状態で存在させることができる。このような作用を有するTiは、C、NおよびSを析出固定するために、48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}以上含有させる必要がある。一方、5×48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}を越えるTiを含有させても、それ以上の効果は得られず、逆に深絞り性を劣化させる。したがって、Ti含有量は、48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}〜5×48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}とした。
(11)Tcr(℃)=39×t(mm)+71×DR+0.17×h(cm)+K(℃)
K(℃)=838×P(%)−29.6×ln{B(ppm)}−243
Tcr(℃)≦Tcr′(℃)
二次加工脆性温度(Tcr)は、製品板厚(t)、BとPの添加量、カップ絞り比(DR)、衝撃力(h)の一次式でほぼ近似出来ることがわかった。さらに、上記の実験式を用いて、用途等に応じて適切な絞り比と限界脆化温度を設定し、板厚、P添加量を設定すると、良好な耐二次加工脆性を確保するために必要なB量を求めることが出来る。
本発明では、例えば、自動車向等一般的な用途で想定される絞り比(DR=2.0)と、最終製品の使用環境から想定される衝撃力(h=80)とP添加量、B添加量から得られるTcr(℃)がその用途に要求される限界脆化温度Tcr′(℃)以下(Tcr(℃)≦Tcr′(℃))とする。Tcr(℃)≦Tcr′(℃)を満足しなければ、十分な耐二次加工脆性を得ることができず、部品性能としての信頼性を十分に満たしているとは言いがたい。
なお、脆性試験材の加工度:DR、脆性試験時に錘を落とす高さ:h、限界脆化温度:Tcr′(℃)は、用途毎に要求される値が異なる。一般的には脆性試験材の加工度:DRは1.6〜2.5の範囲にあり、脆性試験時に錘を落とす高さ:hは30〜150cmの範囲にあり、限界脆化温度Tcr′(℃)は−10℃〜−100℃の範囲にある。自動車向等では、上記のように、絞り比(DR=2.0)、最終製品の使用環境から想定される衝撃力(h=80)、限界脆化温度(−40℃)である。
次に、本発明に従う製造条件の限定理由などについて述べる。
(1)製鋼工程
製鋼法については、転炉などで常法にしたがって行えばよく、それらの条件の限定は必要としない。なお、鋼片の製造方法は、常法の連続鋳造法または造塊法でよい。
(2)熱間圧延工程
・仕上温度:700〜950℃
仕上温度は、700℃未満ではひずみの残留による平均r値および伸びの劣化を招き、一方、950℃を越えると結晶粒の粗大化によって平均r値の劣化を招く。したがって、仕上温度は700℃以上950℃以下の温度範囲とする。
・巻取り温度:500〜800℃
巻取り温度は、500℃未満ではTiC等の析出物の粗大化が抑制され、サイズが微細になるため、r値や伸びが劣化する。一方、800℃を越えると結晶粒の粗大化によって平均r値の劣化を招く。したがって、巻取り温度は500℃以上800℃以下の温度範囲とする。なお、B添加による加工性劣化を防ぐため、巻取り温度は高いほうがよく、600〜800℃が好ましい。
(3)冷間圧延工程
冷間圧延は、圧下率40%以上とする必要がある。圧下率が40%未満では、高い平均r値を得ることができない。なお、冷間圧延の圧下率の上限はとくに規定しないが、90%を超える圧下率では、圧延荷重の増大に伴う圧延トラブルを招くため、90%以下の圧下率が好ましい。なお、B添加による加工性劣化を防ぐため、冷延圧下率は高いほうがよく、50%以上が好ましく、より好ましくは60%以上である。
(4)連続焼鈍工程
連続焼鈍は700℃〜Ac3変態点の温度域で行う必要がある。700℃未満の温度域では、十分な再結晶およびその後の粒成長が進まず、高い平均r値が得られない。一方、Ac3変態点を超える温度域では、α→γ変態のため集合組織がランダム化し、平均r値が劣化する。したがって、焼鈍温度を700℃〜Ac3変態点とする。なお、B添加による加工性劣化を防ぐため、焼鈍温度は高いほうがよく、750℃以上が好ましく、より好ましくは800℃以上である。
(5)その他
本発明においては、連続焼鈍後にスキンパス圧延を施すことができる。スキンパス伸び率はとくに限定するものではないが、0.5〜2.0%が好適である。
実施例1
通常の工程に従って溶製し、連続鋳造によってスラブとした。化学成分、K値及び計算Tcr値を表1に示す(A、C、E、Gは発明例、B、D、F、Hは比較例)。これを、スラブ加熱温度:1200℃で加熱後、熱間圧延を行った。熱間圧延条件は、仕上げ温度:890℃、巻取り温度:700℃で、板厚:4.0mmに仕上げた。これを酸洗後、板厚:1.0mmに冷間圧延を行った。その後、連続焼鈍ラインにて均熱温度:830℃で焼鈍後、伸び率:0.8%でスキンパス圧延を行った。得られた冷延鋼板の機械的特性及び実験Tcr値を表2に示す。
この実験結果から、本発明鋼は、比較例に比べて優れた深絞り性とともに、耐二次加工脆性特性を示すことが分かる。
実施例2
通常の工程に従って溶製し、連続鋳造によってスラブとした。化学成分、K値及び計算Tcr値を表1に示す(A、C、E、Gは実施例、B、D、F、Hは比較例)。実施例1と異なる点は、P、B以外の成分は実質的に変動させず、P、B成分のみ変えて各試料を作成したことである。これを、スラブ加熱温度:1200℃で加熱後、熱間圧延を行った。熱間圧延条件は、仕上げ温度:890℃、巻取り温度:650℃で、板厚:5.0mmに仕上げた。これを酸洗後、板厚:1.4mmに冷間圧延を行った。その後、連続焼鈍ラインにて均熱温度:850℃で焼鈍後、伸び率:0.8%でスキンパス圧延を行った。得られた冷延鋼板の機械的特性及び実験Tcr値を表2に示す。
この実験結果から、P、B成分のみ変えることにより用途に応じた脆性試験条件を想定し、所望の二次加工脆性温度とすることができることがわかる。
また、この実施例などからB成分のみを変えた場合でも、所望の二次加工脆性温度とすることができることが容易に理解できる。
Figure 0004835231
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二次加工脆性温度(Tcr)の回帰結果と実験によるTcrと計算によるTcrとの関係を示す図。 K値とB、P含有量の関係を示す図。

Claims (2)

  1. 質量%で
    C:0.0005〜0.0030%、
    Si:0.5%以下、
    Mn:0.01〜0.50%、
    P:0.005〜0.12%、
    S:0.0005〜0.015%、
    Al:0.005〜0.100%、
    N:0.0005〜0.0040%、
    Nb:0.2×93(C/12)〜93(C/12)、
    B:0.0010〜0.0050%、
    Ti:48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}〜5×48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}
    を含有し、残部Feおよび不可避的不純物元素よりなる耐二次加工脆性に優れた冷延鋼板の製造方法であって、
    該鋼板の目標板厚(t)と、該鋼板の用途で想定される絞り比(DR)と、最終製品の使用環境から想定される衝撃力(h)とその用途に要求される限界脆化温度Tcr′(℃)とを定め、
    次いで、PとBの含有量が式(1)、(2)、(3)を満足するように添加し、該PとBが添加された素材を仕上温度:700〜950℃、巻取り温度:500〜800℃で熱間圧延し、酸洗後、圧下率40%以上で冷間圧延した後に、700℃〜Ac3変態点の温度域で連続焼鈍を行うことを特徴とする、耐二次加工脆性に優れた冷延鋼板の製造方法。
    Tcr(℃)=39×t(mm)+71×DR+0.17×h(cm)+K(℃)…(1)
    K(℃)=838×P(%)−29.6×ln{B(ppm)}−243 …(2)
    Tcr(℃)≦Tcr′(℃) …(3)
    Tcr(℃):二次加工脆性温度
    DR:脆性試験材の加工度(絞り比)
    h(cm):脆性試験時に5kgfの錘を落とす高さ
    t(mm):板厚
    K(℃):材料毎の定数
    Tcr′(℃):限界脆化温度
  2. 質量%で
    C:0.0005〜0.0030%、
    Si:0.5%以下、
    Mn:0.01〜0.50%、
    P:0.005〜0.12%、
    S:0.0005〜0.015%、
    Al:0.005〜0.100%、
    N:0.0005〜0.0040%、
    Nb:0.2×93(C/12)〜93(C/12)、
    B:0.0010〜0.0050%、
    Ti:48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}〜5×48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}
    を含有し、残部Feおよび不可避的不純物元素よりなる耐二次加工脆性に優れた冷延鋼板の製造方法であって、
    該鋼板の目標板厚(t)と、該鋼板の用途で想定される絞り比(DR)と、最終製品の使用環境から想定される衝撃力(h)とその用途に要求される限界脆化温度Tcr′(℃)とを定め、
    次いで、PとBの含有量が式(1)、(2)、(3)を満足するように添加し、該PとBが添加された素材を仕上温度:700〜950℃、巻取り温度:500〜800℃で熱間圧延し、酸洗後、圧下率40%以上で冷間圧延した後に、700℃〜Ac3変態点の温度域で連続焼鈍を行うことを特徴とする、耐二次加工脆性に優れた冷延鋼板の製造方法。
    Tcr(℃)=39×t(mm)+71×DR+0.17×h(cm)+K(℃)…(1)
    K(℃)=838×P(%)−29.6×ln{B(ppm)}−243 …(2)
    Tcr(℃)≦Tcr′(℃) …(3)
    Tcr(℃):二次加工脆性温度
    DR=2.0:脆性試験材の加工度(絞り比)
    h(cm)=80:脆性試験時に5kgfの錘を落とす高さ
    t(mm):板厚
    K(℃):材料毎の定数
    Tcr′(℃)=−40℃:限界脆化温度
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