JP4835231B2 - 耐二次加工脆性に優れた冷延鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
(1)供試材:製造方法上、Cが結晶粒界に析出し易く、このため二次加工脆性が良好とされる低炭素箱焼鈍軟鋼材と、本発明で対象としている極低炭成分系連続焼鈍材を用いた。また、連続焼鈍材では、Ti−Nb複合添加軟鋼の他に340MPa、370MPa級のP添加鋼を、さらに、P添加鋼では、Ti−Nb−B鋼、Nb−B鋼等種々の鋼を用いた。また、供試材の板厚も0.7〜1.6mmの範囲で変化させた。
ここで、定数項Kは供試材の種類毎に決まる特性値で、定数Kが低いほどその供試材は耐二次加工脆性に対しては脆性が優れると考えることが出来る。得られた回帰式による計算Tcrと実験で得たTcrの対応を供試材毎の定数Kとともに図1に示す。
以上の結果より、Pを0.10%添加した成分系において、例えば、絞り比:2.0フランジカット有り、落重試験条件:5kgf×80cmの条件で、板厚:1.2mmの材料が−40℃の環境でも二次加工脆性が発生しない様にするためには、Bを13(ppm)以上添加すれば良いことがわかる。
質量%で
C:0.0005〜0.0030%、
Si:0.5%以下、
Mn:0.01〜0.50%、
P:0.005〜0.12%、
S:0.0005〜0.015%、
Al:0.005〜0.100%、
N:0.0005〜0.0040%、
Nb:0.2×93(C/12)〜93(C/12)、
B:0.0010〜0.0050%、
Ti:48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}〜5×48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物元素よりなる耐二次加工脆性に優れた冷延鋼板の製造方法であって、
該鋼板の目標板厚(t)と、該鋼板の用途で想定される絞り比(DR)と、最終製品の使用環境から想定される衝撃力(h)とその用途に要求される限界脆化温度Tcr′(℃)とを定め、
次いで、PとBの含有量が式(1)、(2)、(3)を満足するように添加し、該PとBが添加された素材を仕上温度:700〜950℃、巻取り温度:500〜800℃で熱間圧延し、酸洗後、圧下率40%以上で冷間圧延した後に、700℃〜Ac3変態点の温度域で連続焼鈍を行うことを特徴とする、耐二次加工脆性に優れた冷延鋼板の製造方法である。
K(℃)=838×P(%)−29.6×ln{B(ppm)}−243 …(2)
Tcr(℃)≦Tcr′(℃) …(3)
Tcr(℃):二次加工脆性温度
DR:脆性試験材の加工度(絞り比)
h(cm):脆性試験時に5kgfの錘を落とす高さ
t(mm):板厚
K(℃):材料毎の定数
Tcr′(℃):限界脆化温度
第2の発明は、質量%で
C:0.0005〜0.0030%、
Si:0.5%以下、
Mn:0.01〜0.50%、
P:0.005〜0.12%、
S:0.0005〜0.015%、
Al:0.005〜0.100%、
N:0.0005〜0.0040%、
Nb:0.2×93(C/12)〜93(C/12)、
B:0.0010〜0.0050%、
Ti:48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}〜5×48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物元素よりなる耐二次加工脆性に優れた冷延鋼板の製造方法であって、
該鋼板の目標板厚(t)と、該鋼板の用途で想定される絞り比(DR)と、最終製品の使用環境から想定される衝撃力(h)とその用途に要求される限界脆化温度Tcr′(℃)とを定め、
次いで、PとBの含有量が式(1)、(2)、(3)を満足するように添加し、該PとBが添加された素材を仕上温度:700〜950℃、巻取り温度:500〜800℃で熱間圧延し、酸洗後、圧下率40%以上で冷間圧延した後に、700℃〜Ac3変態点の温度域で連続焼鈍を行うことを特徴とする、耐二次加工脆性に優れた冷延鋼板の製造方法である。
K(℃)=838×P(%)−29.6×ln{B(ppm)}−243 …(2)
Tcr(℃)≦Tcr′(℃) …(3)
Tcr(℃):二次加工脆性温度
DR=2.0:脆性試験材の加工度(絞り比)
h(cm)=80:脆性試験時に5kgfの錘を落とす高さ
t(mm):板厚
K(℃):材料毎の定数
Tcr′(℃)=−40℃:限界脆化温度
なお、本発明方法で得られる冷延鋼板は、自動車や各種容器等の深絞り加工が施される用途に好適に用いられる。ただし、用途毎に、要求されるDR、h(cm)、t(mm)、及びTcr′(℃)が異なる。本発明では、用途毎に、要求されるDR、h(cm)、t(mm)、及びTcr′(℃)の値を適切に選択する。第2の発明は、深絞り加工が施される自動車用の冷延鋼板に適用される値を示している。
Cは、含有量が少ないほど材質に有利であり、含有量が多いと必然的にCを析出固定するために必要なTiが増加し、複合析出物の生成量が増えるため材質の劣化を招く。その含有量が0.0005%より低くしても、それ以上の材質の向上は望めず、逆に溶製コストが上昇する。一方、0.0030%を越えると材質が大幅に劣化しはじめるため、C含有量を0.0005〜0.0030%と限定した。
Siは、適正な強度を得るために有効な成分であるが、脆性を助長し、化成処理性を阻害する成分でもある。したがって、その含有量の上限を0.5%とする。
Mnは、Siと同様に適正な強度を得るために有効な成分であるが、固溶強化による深絞り性を劣化させる作用があることおよびコスト面から、その含有量の上限を0.50%とする。
Pは、多量に含まれると粒界偏析量が増加して粒界脆化を起こし、とくに耐二次加工脆性の劣化をもたらすため極力低減することが望ましいが、0.005%より低くしても、それ以上の材質向上は望めず、逆に溶製コストが上昇する。一方、0.12%以下であれば許容できるため、P含有量を0.005〜0.12%とする。
Sは、有害な元素であり、多量に含まれると粒界脆化が発生しやすく耐二次加工脆性の劣化をもたらす。そのため極力低減することが望ましいが、0.0005%より低くしても、それ以上の材質向上は望めず、逆に溶製コストが上昇する。一方、0.015%以下であれば許容できるため、S含有量を0.0005〜0.015%とする。
Alは、窒化物形成元素として有用である。すなわち、Ti、Nbとの共存による(Ti、Nb)Cおよび(Ti、Al)Nと推定される複合析出物を形成することにより、C、Nを析出固定し、深絞り性を向上させる。これらの効果を得るためには、含有量は0.005%以上が必要である。一方、0.100%より多いとそれらの効果は飽和し、コストアップにもつながる。したがって、その含有量は0.005%以上、0.100%以下とする。なお、従来技術では、面内異方性低減等の観点より、Al含有量を0.05%以上と規定されていたが、本発明のような深絞り成形性と耐二次加工脆性の両立を図る時には、そのような規定は必要なく、むしろAl含有量は0.05%以下とする方が、材質とコストの面より有利であるため、Al含有量は0.005〜0.05%とするのが好ましい範囲である。
Nは、Cと同様に深絞り性の改善のため極力低減することが望ましいが、その含有量が0.0005%より低くしても、それ以上の材質の向上は望めず、逆に溶製コストが上昇する。一方、0.0040%を越えると材質が大幅に劣化しはじめるため、N含有量を0.0005〜0.0040%と限定した。
Nbは、炭化物形成元素として深絞り性を向上させるために有効であり、さらにTiとの複合添加により平均r値、伸びを向上させる効果がある。その含有量がC量に対して、0.2×93(C/12)未満では添加の効果がなく、一方、93(C/12)を越えると伸びなどが低下する。したがって、その含有量は0.2×93(C/12)〜93(C/12)とする。
Bは、前記したようにCと同様に、結晶粒界を強化する働きがあるとされていて、耐二次加工脆性の向上に有効であるが、過剰に含有させると平均r値および伸びを劣化させる。その含有量が0.0010%未満では添加効果がなく、一方、0.0050%を超えると深絞り性が劣化するので、その含有量を0.0010〜0.0050%とする。
Tiは、炭窒化物形成元素としてC、Nを析出固定させ、深絞り性を向上させる有効な成分である。すなわち、連続焼鈍材ではCおよびNの低減のみでは箱焼鈍材なみあるいはそれ以上の深絞り性を得ることができないが、CおよびNを完全に析出固定させることにより、深絞り性が良好となる。またNを析出固定することにより、添加したBを、耐二次加工脆性を改善する効果を有する固溶Bの状態で存在させることができる。このような作用を有するTiは、C、NおよびSを析出固定するために、48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}以上含有させる必要がある。一方、5×48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}を越えるTiを含有させても、それ以上の効果は得られず、逆に深絞り性を劣化させる。したがって、Ti含有量は、48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}〜5×48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}とした。
K(℃)=838×P(%)−29.6×ln{B(ppm)}−243
Tcr(℃)≦Tcr′(℃)
二次加工脆性温度(Tcr)は、製品板厚(t)、BとPの添加量、カップ絞り比(DR)、衝撃力(h)の一次式でほぼ近似出来ることがわかった。さらに、上記の実験式を用いて、用途等に応じて適切な絞り比と限界脆化温度を設定し、板厚、P添加量を設定すると、良好な耐二次加工脆性を確保するために必要なB量を求めることが出来る。
製鋼法については、転炉などで常法にしたがって行えばよく、それらの条件の限定は必要としない。なお、鋼片の製造方法は、常法の連続鋳造法または造塊法でよい。
・仕上温度:700〜950℃
仕上温度は、700℃未満ではひずみの残留による平均r値および伸びの劣化を招き、一方、950℃を越えると結晶粒の粗大化によって平均r値の劣化を招く。したがって、仕上温度は700℃以上950℃以下の温度範囲とする。
巻取り温度は、500℃未満ではTiC等の析出物の粗大化が抑制され、サイズが微細になるため、r値や伸びが劣化する。一方、800℃を越えると結晶粒の粗大化によって平均r値の劣化を招く。したがって、巻取り温度は500℃以上800℃以下の温度範囲とする。なお、B添加による加工性劣化を防ぐため、巻取り温度は高いほうがよく、600〜800℃が好ましい。
冷間圧延は、圧下率40%以上とする必要がある。圧下率が40%未満では、高い平均r値を得ることができない。なお、冷間圧延の圧下率の上限はとくに規定しないが、90%を超える圧下率では、圧延荷重の増大に伴う圧延トラブルを招くため、90%以下の圧下率が好ましい。なお、B添加による加工性劣化を防ぐため、冷延圧下率は高いほうがよく、50%以上が好ましく、より好ましくは60%以上である。
連続焼鈍は700℃〜Ac3変態点の温度域で行う必要がある。700℃未満の温度域では、十分な再結晶およびその後の粒成長が進まず、高い平均r値が得られない。一方、Ac3変態点を超える温度域では、α→γ変態のため集合組織がランダム化し、平均r値が劣化する。したがって、焼鈍温度を700℃〜Ac3変態点とする。なお、B添加による加工性劣化を防ぐため、焼鈍温度は高いほうがよく、750℃以上が好ましく、より好ましくは800℃以上である。
本発明においては、連続焼鈍後にスキンパス圧延を施すことができる。スキンパス伸び率はとくに限定するものではないが、0.5〜2.0%が好適である。
通常の工程に従って溶製し、連続鋳造によってスラブとした。化学成分、K値及び計算Tcr値を表1に示す(A、C、E、Gは発明例、B、D、F、Hは比較例)。これを、スラブ加熱温度:1200℃で加熱後、熱間圧延を行った。熱間圧延条件は、仕上げ温度:890℃、巻取り温度:700℃で、板厚:4.0mmに仕上げた。これを酸洗後、板厚:1.0mmに冷間圧延を行った。その後、連続焼鈍ラインにて均熱温度:830℃で焼鈍後、伸び率:0.8%でスキンパス圧延を行った。得られた冷延鋼板の機械的特性及び実験Tcr値を表2に示す。
通常の工程に従って溶製し、連続鋳造によってスラブとした。化学成分、K値及び計算Tcr値を表1に示す(A、C、E、Gは実施例、B、D、F、Hは比較例)。実施例1と異なる点は、P、B以外の成分は実質的に変動させず、P、B成分のみ変えて各試料を作成したことである。これを、スラブ加熱温度:1200℃で加熱後、熱間圧延を行った。熱間圧延条件は、仕上げ温度:890℃、巻取り温度:650℃で、板厚:5.0mmに仕上げた。これを酸洗後、板厚:1.4mmに冷間圧延を行った。その後、連続焼鈍ラインにて均熱温度:850℃で焼鈍後、伸び率:0.8%でスキンパス圧延を行った。得られた冷延鋼板の機械的特性及び実験Tcr値を表2に示す。
Claims (2)
- 質量%で
C:0.0005〜0.0030%、
Si:0.5%以下、
Mn:0.01〜0.50%、
P:0.005〜0.12%、
S:0.0005〜0.015%、
Al:0.005〜0.100%、
N:0.0005〜0.0040%、
Nb:0.2×93(C/12)〜93(C/12)、
B:0.0010〜0.0050%、
Ti:48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}〜5×48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物元素よりなる耐二次加工脆性に優れた冷延鋼板の製造方法であって、
該鋼板の目標板厚(t)と、該鋼板の用途で想定される絞り比(DR)と、最終製品の使用環境から想定される衝撃力(h)とその用途に要求される限界脆化温度Tcr′(℃)とを定め、
次いで、PとBの含有量が式(1)、(2)、(3)を満足するように添加し、該PとBが添加された素材を仕上温度:700〜950℃、巻取り温度:500〜800℃で熱間圧延し、酸洗後、圧下率40%以上で冷間圧延した後に、700℃〜Ac3変態点の温度域で連続焼鈍を行うことを特徴とする、耐二次加工脆性に優れた冷延鋼板の製造方法。
Tcr(℃)=39×t(mm)+71×DR+0.17×h(cm)+K(℃)…(1)
K(℃)=838×P(%)−29.6×ln{B(ppm)}−243 …(2)
Tcr(℃)≦Tcr′(℃) …(3)
Tcr(℃):二次加工脆性温度
DR:脆性試験材の加工度(絞り比)
h(cm):脆性試験時に5kgfの錘を落とす高さ
t(mm):板厚
K(℃):材料毎の定数
Tcr′(℃):限界脆化温度 - 質量%で
C:0.0005〜0.0030%、
Si:0.5%以下、
Mn:0.01〜0.50%、
P:0.005〜0.12%、
S:0.0005〜0.015%、
Al:0.005〜0.100%、
N:0.0005〜0.0040%、
Nb:0.2×93(C/12)〜93(C/12)、
B:0.0010〜0.0050%、
Ti:48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}〜5×48{(C/12)+(N/14)+(S/32)}
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物元素よりなる耐二次加工脆性に優れた冷延鋼板の製造方法であって、
該鋼板の目標板厚(t)と、該鋼板の用途で想定される絞り比(DR)と、最終製品の使用環境から想定される衝撃力(h)とその用途に要求される限界脆化温度Tcr′(℃)とを定め、
次いで、PとBの含有量が式(1)、(2)、(3)を満足するように添加し、該PとBが添加された素材を仕上温度:700〜950℃、巻取り温度:500〜800℃で熱間圧延し、酸洗後、圧下率40%以上で冷間圧延した後に、700℃〜Ac3変態点の温度域で連続焼鈍を行うことを特徴とする、耐二次加工脆性に優れた冷延鋼板の製造方法。
Tcr(℃)=39×t(mm)+71×DR+0.17×h(cm)+K(℃)…(1)
K(℃)=838×P(%)−29.6×ln{B(ppm)}−243 …(2)
Tcr(℃)≦Tcr′(℃) …(3)
Tcr(℃):二次加工脆性温度
DR=2.0:脆性試験材の加工度(絞り比)
h(cm)=80:脆性試験時に5kgfの錘を落とす高さ
t(mm):板厚
K(℃):材料毎の定数
Tcr′(℃)=−40℃:限界脆化温度
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JP2006095801A JP4835231B2 (ja) | 2006-03-30 | 2006-03-30 | 耐二次加工脆性に優れた冷延鋼板の製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2007270215A JP2007270215A (ja) | 2007-10-18 |
JP4835231B2 true JP4835231B2 (ja) | 2011-12-14 |
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JP2006095801A Expired - Fee Related JP4835231B2 (ja) | 2006-03-30 | 2006-03-30 | 耐二次加工脆性に優れた冷延鋼板の製造方法 |
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JP (1) | JP4835231B2 (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH0753889B2 (ja) * | 1986-10-15 | 1995-06-07 | 川崎製鉄株式会社 | 厚物超深絞り用冷延鋼板の製造方法 |
JPH02173247A (ja) * | 1988-12-26 | 1990-07-04 | Kawasaki Steel Corp | 耐溶融金属脆性に優れた良加工性冷延鋼板およびその製造方法ならびにそのろう付け方法 |
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2006
- 2006-03-30 JP JP2006095801A patent/JP4835231B2/ja not_active Expired - Fee Related
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