以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の偽造防止媒体の第1の実施の形態となる偽造防止シートを示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した偽造防止構造210の詳細な構成を示す図、(c)は(b)に示したA−A’断面図、(d)は(b)に示したB−B’断面図、(e)は凸部213の構成を示す図、(f)は凸部214の構成を示す図である。
本形態の偽造防止シート201は図1に示すように、紙からなるシート基材202の一部の領域に偽造防止構造210が設けられて構成されている。シート基材202は、基材表面となる平面部203を有し、この平面部203の一部の領域に情報印刷領域204が設けられるとともに、他の領域に偽造防止構造210が設けられている。このように構成された偽造防止シート201は、例えば、コンサート等の入場チケットとして用いることが考えられる。その場合、コンサートの内容や会場名、座席番号等が情報印刷領域204に印刷されることになる。また、シート基材202の情報印刷領域204に情報が印刷される前に、シート基材202に対してプレ印刷として地紋を印刷したり所定の色に着色したりすることも考えられるが、その場合、偽造防止構造210による潜像が見にくくならないようにする必要がある。
図1(b)に示すように、シート基材202に設けられた偽造防止構造210には、シート基材202の平面部203のベース色と同一の白色からなる背景色領域212上に、背景色領域212とは異なる黒色からなるマーク配色領域である複数のマーク部211が設けられている。この複数のマーク部211は、背景色領域212上に行及び列を構成して設けられることによりマトリックス状となっている。
複数のマーク部211がマトリックス状に設けられた領域には、第1の凸部となる複数の凸部213と、第2の凸部となる複数の凸部214とが形成されている。これら凸部213,214は図1(c)〜(f)に示すように、シート基材202をエンボス版等で平面部203側から0.05〜0.1mm程度窪ませることにより形成されたドーム型であって、その高さは互いに同一であるものの、ドームの径は凸部213の径が凸部214の径よりも大きくなっている。
凸部213は、複数の凸部213の配列形状によって潜像となる「T」の字を表現するように複数のマーク部211の配列方向と並行して行や列を構成して背景色領域212の所定領域に形成されており、そのそれぞれは、マトリックス状に設けられた複数のマーク部211のうち、所定領域以外の領域に設けられたマーク部211上に形成されている。そして、その径がマーク部211の径よりも小さいことから、図1(e)に示すように、マーク部211のみを含むものとなっている。凸部214は、背景色領域212にて複数の凸部213が形成された領域を取り囲むように、複数のマーク部211の配列方向と並行して行や列を構成して形成されており、そのそれぞれは、マトリックス状に設けられた4つのマーク部211間に形成されている。そして、その径が4つのマーク部211によって形成される隙間の大きさよりも小さいことから、図1(f)に示すように、背景色領域212のみを含むものとなっている。なお、本形態にて図示する偽造防止構造210は、説明を簡単にするために100個のマーク部211が10×10のマトリックス状に形成されたものであるが、その数を多くすればするほど、この偽造防止構造210によって浮き上がらせることができる潜像となる文字を精細なものとすることができ、曲線等を表現しやすくなる。
以下に、上記のように構成された偽造防止シート1の製造方法について説明する。
まず、シート基材202の偽造防止構造210が設けられる領域、すなわち、白色の背景色領域212となる領域に、100個のマーク部211を10×10のマトリックス状に黒色で印刷する。なお、このマーク部211の印刷は、上述したようなプレ印刷と同時に行ってもよいし、上述したプレ印刷を行った後に行ってもよい。
次に、マーク部211が印刷された領域に、シート基材202の平面部203側からエンボス版を押し付けることによって、大きさが互いに異なる凸部213,214を形成する。このエンボス版によって、凸部213は、マーク部211が印刷された領域のうち、潜像となる「T」を形成する所定領域にてマトリックス状に設けられた複数のマーク部211上に形成され、また、凸部214は、マトリックス状に設けられた複数のマーク部211のうち、所定領域以外の領域に設けられたマーク部211間に形成される。
上述したようにして偽造防止シート201が製造され、その後、用途に応じた情報がシート基材202の情報印刷領域204に印刷されて使用されることになる。
以下に、上述した偽造防止シート201の作用について説明する。
まず、図1に示した偽造防止シート201を正面、すなわち、シート基材202の平面部203の法線方向から観察した場合の作用について説明する。
図2は、図1に示した偽造防止シート201を正面から観察した場合の作用を説明するための図であり、偽造防止構造210の見え方を示す。
図1に示した偽造防止シート201を、正面、すなわち平面部203の法線方向から観察した場合、図2に示すように、偽造防止構造210においては、背景色領域212が白色であるのに対してこの背景色領域212にマトリックス状に設けられた複数のマーク部211が黒色であることから、マトリックス状の複数のマーク部211が認識される。この際、シート基材202には、複数の凸部213,214が形成されているが、偽造防止シート201を正面から観察した場合は、この凸部213,214の頂部側から底部側に向かって観察することになるため、凸部213,214が認識されにくく、複数のマーク部211がマトリックス状に認識されるだけとなり、潜像「T」は浮かび上がって見えてこない。
次に、図1に示した偽造防止シート201に対する観察方向を正面、すなわち、シート基材202の平面部203の法線方向から変化させていった場合の作用について説明する。
図3は、図1に示した偽造防止シート201に対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、(a)は偽造防止シート201に対する観察方向を図1中下側に変化させていった場合の偽造防止構造210の見え方を示す図、(b)は偽造防止シート201に対する観察方向を図1中上側に変化させていった場合の偽造防止構造210の見え方を示す図、(c)は偽造防止シート201に対する観察方向を図1中右側に変化させていった場合の偽造防止構造210の見え方を示す図、(d)は偽造防止シート201に対する観察方向を図1中左側に変化させていった場合の偽造防止構造210の見え方を示す図である。
図1に示した偽造防止シート201に対する観察方向を正面から変化させていくと、シート基材202の平面部203に対する観察方向のなす角度が鋭角になっていく。すると、基材202に形成された凸部213,214を斜め上方から視認することになり、凸部213,214がそれぞれ認識可能となってくる。凸部213は、マーク部211のみを含むことから黒色であり、また、凸部214は、背景色領域212のみを含むことから白色であるため、この色の違いによって凸部213と凸部214とが識別可能となる。そして、凸部213は、その配列形状によって潜像「T」の字を表現するように形成されているため、例えば、偽造防止シート201に対する観察方向を、例えば図1中下側に変化させていくと、図3(a)に示すように、凸部213と凸部214との色の違いによって、複数の凸部214によって構成される白色の背景の中に、複数の凸部213によって構成される潜像「T」が黒色で浮かび上がって見えるようになる。この際、凸部213がマーク部211のみを含むことから黒色であり、また、凸部214が背景色領域212のみを含むことから白色であるため、凸部213と凸部214との色の違いが明確になり、潜像「T」の字が認識しやすくなる。
また、凸部213がマーク部211のみを含むことから黒色であり、また、凸部214が背景色領域212のみを含むことから白色であることから、平面部203に対して鋭角をなすどの方向から観察した場合であっても、複数の凸部214によって構成される白色の背景の中に、複数の凸部213によって構成される潜像「T」が黒色で浮かび上がって見えるようになる。例えば、偽造防止シート201に対する観察方向を図1中上側に変化させていくと、複数の凸部213によって構成される潜像「T」が図3(b)に示すように浮かび上がって見えるようになり、また、偽造防止シート201に対する観察方向を図1中右側に変化させていくと、複数の凸部213によって構成される潜像「T」が図3(c)に示すように浮かび上がって見えるようになり、また、偽造防止シート201に対する観察方向を図1中左側に変化させていくと、複数の凸部213によって構成される潜像「T」が図3(d)に示すように浮かび上がって見えるようになる。
上述した偽造防止シート201は、複写した場合、シート基材202の情報印刷領域204に印刷された情報や、シート基材202に印刷によりマトリックス状に設けられたマーク部211は複写されるものの、凸部213,214までは再現できない。そのため、複写物の観察方向を変えていった場合であっても、複数の凸部213による潜像は浮かび上がらず、それにより、真偽判別を行うことが可能となる。このように真偽判別を行う際、本形態の偽造防止シート201においては、偽造防止シート201に対する観察方向をシート基材202の平面部203の法線方向からどの方向に変化させていった場合であっても、複数の凸部213による潜像が浮かび上がって見えるため、観察方向に制限されることなく潜像による真偽判別を容易に行うことができる。また、凸部213,214が、シート基材202の平面部203を窪ませることによって形成されているため、シート基材202を表裏から見た場合や、直接触れた場合において、凸部213,214が認識されにくく、凸部213,214が再現しにくいものとなり、偽造防止機能を向上させることができる。
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の偽造防止媒体の第2の実施の形態となる偽造防止シートを示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した偽造防止構造10の詳細な構成を示す図、(c)は(b)に示したA−A’断面図、(d)は(b)に示したB−B’断面図、(e)は凸部13の構成を示す図、(f)は凸部14の構成を示す図である。
本形態の偽造防止シート1は図4に示すように、紙からなるシート基材2の一部の領域に偽造防止構造10が設けられて構成されている。シート基材2は、基材表面となる平面部3を有し、この平面部3の一部の領域に情報印刷領域4が設けられるとともに、他の領域に偽造防止構造10が設けられている。
図4(b)に示すように、シート基材2に設けられた偽造防止構造10には、シート基材2の平面部3のベース色と同一の白色からなる背景色領域12上に、背景色領域12とは異なる黒色からなるマーク配色領域である複数のマーク部11が設けられている。この複数のマーク部11は、背景色領域12上に行及び列を構成して設けられることによりマトリックス状となっている。
複数のマーク部11がマトリックス状に設けられた領域には、第1の凸部となる複数の凸部13と、第2の凸部となる複数の凸部14とが形成されている。これら凸部13,14は図4(c)〜(f)に示すように、シート基材2をエンボス版等で平面部3側から0.05〜0.1mm程度窪ませることにより形成されたドーム型であって、その高さは互いに同一であるものの、ドームの径は凸部13の径が凸部14の径よりも小さくなっている。
凸部13は、複数の凸部13の配列形状によって潜像となる「T」の字を表現するように複数のマーク部11の配列方向と並行して行や列を構成して背景色領域12の所定領域に形成されており、そのそれぞれは、マトリックス状に設けられた4つのマーク部11間に形成されている。そして、その径が4つのマーク部11によって形成される隙間の大きさよりも小さいことから、図4(e)に示すように、背景色領域12のみを含むものとなっている。凸部14は、背景色領域12にて複数の凸部13が形成された領域を取り囲むように、複数のマーク部11の配列方向と並行して行や列を構成して形成されており、そのそれぞれは、マトリックス状に設けられた複数のマーク部11のうち、所定領域以外の領域に設けられたマーク部11上に形成されている。そして、その径がマーク部11の径よりも小さいことから、図4(f)に示すように、マーク部11のみを含むものとなっている。
上記のように構成された偽造防止シート1は、第1の実施の形態に示したものと同様に製造され、その後、用途に応じた情報がシート基材2の情報印刷領域4に印刷されて使用されることになる。
以下に、上述した偽造防止シート1の作用について説明する。
まず、図4に示した偽造防止シート1を正面、すなわち、シート基材2の平面部3の法線方向から観察した場合の作用について説明する。
図5は、図4に示した偽造防止シート1を正面から観察した場合の作用を説明するための図であり、偽造防止構造10の見え方を示す。
図4に示した偽造防止シート1を、正面、すなわち平面部3の法線方向から観察した場合、図5に示すように、偽造防止構造10においては、背景色領域12が白色であるのに対してこの背景色領域12にマトリックス状に設けられた複数のマーク部11が黒色であることから、マトリックス状の複数のマーク部11が認識される。この際、シート基材2には、複数の凸部13,14が形成されているが、偽造防止シート1を正面から観察した場合は、この凸部13,14の頂部側から底部側に向かって観察することになるため、凸部13,14が認識されにくく、複数のマーク部11がマトリックス状に認識されるだけとなり、潜像「T」は浮かび上がって見えてこない。
次に、図4に示した偽造防止シート1に対する観察方向を正面、すなわち、シート基材2の平面部3の法線方向から変化させていった場合の作用について説明する。
図6は、図4に示した偽造防止シート1に対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、(a)は偽造防止シート1に対する観察方向を図4中下側に変化させていった場合の偽造防止構造10の見え方を示す図、(b)は偽造防止シート1に対する観察方向を図4中上側に変化させていった場合の偽造防止構造10の見え方を示す図、(c)は偽造防止シート1に対する観察方向を図4中右側に変化させていった場合の偽造防止構造10の見え方を示す図、(d)は偽造防止シート1に対する観察方向を図4中左側に変化させていった場合の偽造防止構造10の見え方を示す図である。
図4に示した偽造防止シート1に対する観察方向を正面から変化させていくと、シート基材2の平面部3に対する観察方向のなす角度が鋭角になっていく。すると、基材2に形成された凸部13,14を斜め上方から視認することになり、凸部13,14がそれぞれ認識可能となってくる。凸部13は、背景色領域12のみを含むことから白色であり、また、凸部14は、マーク部11のみを含むことから黒色であるため、この色の違いによって凸部13と凸部14とが識別可能となる。そして、凸部13は、その配列形状によって潜像「T」の字を表現するように形成されているため、例えば、偽造防止シート1に対する観察方向を、例えば図4中下側に変化させていくと、図6(a)に示すように、凸部13と凸部14との色の違いによって、複数の凸部14によって構成される黒色の背景の中に、複数の凸部13によって構成される潜像「T」が白色で浮かび上がって見えるようになる。この際、凸部13が背景色領域12のみを含むことから白色であり、また、凸部14がマーク部11のみを含むことから黒色であるため、凸部13と凸部14との色の違いが明確になり、潜像「T」の字が認識しやすくなる。
また、凸部13が背景色領域12のみを含むことから白色であり、また、凸部14がマーク部11のみを含むことから黒色であることから、平面部3に対して鋭角をなすどの方向から観察した場合であっても、複数の凸部14によって構成される黒色の背景の中に、複数の凸部13によって構成される潜像「T」が白色で浮かび上がって見えるようになる。例えば、偽造防止シート1に対する観察方向を図4中上側に変化させていくと、複数の凸部13によって構成される潜像「T」が図6(b)に示すように浮かび上がって見えるようになり、また、偽造防止シート1に対する観察方向を図4中右側に変化させていくと、複数の凸部13によって構成される潜像「T」が図6(c)に示すように浮かび上がって見えるようになり、また、偽造防止シート1に対する観察方向を図4中左側に変化させていくと、複数の凸部13によって構成される潜像「T」が図6(d)に示すように浮かび上がって見えるようになる。
上述した偽造防止シート1は、複写した場合、シート基材2の情報印刷領域4に印刷された情報や、シート基材2に印刷によりマトリックス状に設けられたマーク部11は複写されるものの、凸部13,14までは再現できない。そのため、複写物の観察方向を変えていった場合であっても、複数の凸部13による潜像は浮かび上がらず、それにより、真偽判別を行うことが可能となる。このように真偽判別を行う際、本形態の偽造防止シート1においては、偽造防止シート1に対する観察方向をシート基材2の平面部3の法線方向からどの方向に変化させていった場合であっても、複数の凸部13による潜像が浮かび上がって見えるため、観察方向に制限されることなく潜像による真偽判別を容易に行うことができる。
(第3の実施の形態)
図7は、本発明の偽造防止媒体の第3の実施の形態となる偽造防止シートを示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した偽造防止構造110の詳細な構成を示す図、(c)は(b)に示したA−A’断面図、(d)は(b)に示したB−B’断面図、(e)は凸部113の構成を示す図、(f)は凸部114の構成を示す図である。
本形態の偽造防止シート101は図7に示すように、紙からなるシート基材102の一部の領域に偽造防止構造110が設けられて構成されている。シート基材102は、基材表面となる平面部103を有し、この平面部103の一部の領域に情報印刷領域104が設けられるとともに、他の領域に偽造防止構造110が設けられている。
図7(b)に示すように、シート基材102に設けられた偽造防止構造110には、シート基材102の平面部103のベース色と同一の白色からなる背景色領域112上に、背景色領域112とは異なる黒色からなるマーク配色領域である複数のマーク部111が設けられている。この複数のマーク部111は、背景色領域112上に行及び列を構成して設けられることによりマトリックス状となっている。
複数のマーク部111がマトリックス状に設けられた領域には、第1の凸部となる複数の凸部113と、第2の凸部となる複数の凸部114とが形成されている。これら凸部113,114は図7(c)〜(f)に示すように、円錐から頂点の部分が取り除かれた同一形状であって、シート基材102をエンボス版等で平面部103側から0.05〜0.1mm程度窪ませることにより側面113a,114aが形成され、平面部103との同一面が頂部113b,114bとなっている。そして、この頂部113b,114bからシート基材102の窪み方向に向かうに従ってその断面積が徐々に広くなり、凸部113,114の底部においては、直径が0.5mm以下の円形状となっている。
凸部113は、複数の凸部113の配列形状によって潜像となる「T」の字を表現するように複数のマーク部111の配列方向と並行して行や列を構成して背景色領域112の所定領域に形成されており、そのそれぞれは、マトリックス状に設けられた4つのマーク部111間に形成されている。そして、その頂部113b及び底部の径が4つのマーク部111によって形成される隙間の大きさよりも大きいことから、図7(e)に示すように、4つのマーク部111の一部がそれぞれ側面113a及び頂部113bにかかるとともに、その4つのマーク部111に囲まれた部分の背景色領域112の白色が頂部113bにて表出している。凸部114は、背景色領域112にて複数の凸部113が形成された領域を取り囲むように、複数のマーク部111の配列方向と並行して行や列を構成して形成されており、そのそれぞれは、マトリックス状に設けられた複数のマーク部111のうち、所定領域以外の領域に設けられたマーク部111上に形成されている。そして、その頂部114b及び底部の径がマーク部111の径よりも小さいことから、図7(f)に示すように、頂部114b及び側面114aがマーク部111を含むようなものとなっている。
上記のように構成された偽造防止シート101は、第1の実施の形態に示したものと同様に製造され、その後、用途に応じた情報がシート基材102の情報印刷領域104に印刷されて使用されることになる。
以下に、上述した偽造防止シート101の作用について説明する。
まず、図7に示した偽造防止シート101を正面、すなわち、シート基材102の平面部103の法線方向から観察した場合の作用について説明する。
図8は、図7に示した偽造防止シート101を正面から観察した場合の作用を説明するための図であり、偽造防止構造110の見え方を示す。
図7に示した偽造防止シート101を、正面、すなわち平面部103の法線方向から観察した場合、図8に示すように、偽造防止構造110においては、背景色領域112が白色であるのに対してこの背景色領域112にマトリックス状に設けられた複数のマーク部111が黒色であることから、マトリックス状の複数のマーク部111が認識される。この際、シート基材102には、複数の凸部113,114が形成されているが、偽造防止シート101を正面から観察した場合は、この凸部113,114の頂部側から底部側に向かって観察することになるため、凸部113,114が認識されにくく、複数のマーク部111がマトリックス状に認識されるだけとなり、潜像「T」は浮かび上がって見えてこない。
次に、図7に示した偽造防止シート101に対する観察方向を正面、すなわち、シート基材102の平面部103の法線方向から変化させていった場合の作用について説明する。
図9は、図7に示した偽造防止シート101に対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、(a)は偽造防止シート101に対する観察方向を図7中下側に変化させていった場合の偽造防止構造110の見え方を示す図、(b)は偽造防止シート101に対する観察方向を図7中上側に変化させていった場合の偽造防止構造110の見え方を示す図、(c)は偽造防止シート101に対する観察方向を図7中右側に変化させていった場合の偽造防止構造110の見え方を示す図、(d)は偽造防止シート101に対する観察方向を図7中左側に変化させていった場合の偽造防止構造110の見え方を示す図である。
図7に示した偽造防止シート101に対する観察方向を正面から変化させていくと、シート基材102の平面部103に対する観察方向のなす角度が鋭角になっていく。すると、基材102に形成された凸部113,114を斜め上方から視認することになり、凸部113,114がそれぞれ認識可能となってくる。凸部113は、背景色領域112とマーク部111とを含むことから灰色に見え、また、凸部114は、マーク部111のみを含むことから黒色であるため、この色の違いによって凸部113と凸部114とが識別可能となる。またこの際、複数の凸部113,114の側面113a,114aが、その凸部113,114の観察方向側に隣接する凸部113,114によって隠れて見えなくなっていき、頂部113b,114bのみが見えるような状態となるが、凸部113においては、図7(e)に示したように、背景色領域112の白色が頂部113bにて表出しているため、黒色の凸部114とは見える色が異なり、この色の違いによって凸部113と凸部114とが識別しやすくなる。そして、凸部113は、その配列形状によって潜像「T」の字を表現するように形成されているため、例えば、偽造防止シート101に対する観察方向を、例えば図7中下側に変化させていくと、図9(a)に示すように、凸部113と凸部114との色の違いによって、複数の凸部114によって構成される黒色の背景の中に、複数の凸部113によって構成される潜像「T」が灰色で浮かび上がって見えるようになる。この際、凸部114がマーク部111のみを含むことから黒色であるため、凸部113と凸部114との色の違いが明確になり、潜像「T」の字が認識しやすくなる。
また、凸部113が背景色領域112とマーク部111を含むことから灰色に見え、また、凸部114がマーク部111のみを含むことから黒色であることから、平面部103に対して鋭角をなすどの方向から観察した場合であっても、複数の凸部114によって構成される黒色の背景の中に、複数の凸部113によって構成される潜像「T」が灰色で浮かび上がって見えるようになる。例えば、偽造防止シート101に対する観察方向を図7中上側に変化させていくと、複数の凸部113によって構成される潜像「T」が図9(b)に示すように浮かび上がって見えるようになり、また、偽造防止シート101に対する観察方向を図7中右側に変化させていくと、複数の凸部113によって構成される潜像「T」が図9(c)に示すように浮かび上がって見えるようになり、また、偽造防止シート101に対する観察方向を図7中左側に変化させていくと、複数の凸部113によって構成される潜像「T」が図9(d)に示すように浮かび上がって見えるようになる。
上述した偽造防止シート101は、複写した場合、シート基材102の情報印刷領域104に印刷された情報や、シート基材102に印刷によりマトリックス状に設けられたマーク部111は複写されるものの、凸部113,114までは再現できない。そのため、複写物の観察方向を変えていった場合であっても、複数の凸部113による潜像は浮かび上がらず、それにより、真偽判別を行うことが可能となる。このように真偽判別を行う際、本形態の偽造防止シート101においては、偽造防止シート101に対する観察方向をシート基材102の平面部103の法線方向からどの方向に変化させていった場合であっても、複数の凸部113による潜像が浮かび上がって見えるため、観察方向に制限されることなく潜像による真偽判別を容易に行うことができる。
なお、上述した実施の形態における凸部13,14,113,114,213,214の高さや底部の寸法については、上述したものに限らず、適宜設定が可能である。
また、凸部13,14,113,114,213,214の形状においては、第1及び第2の実施の形態にて示したドーム型のものや、第3の実施の形態にて示した円錐から頂点の部分が取り除かれた形状のものの他に、円柱形のものや円錐形のものとすることも考えられる。また、断面が矩形状となるものとすることも考えられる。ただし、図1、図4及び図7に示したものにおいては、凸部13,14,113,114,213,214のうち、少なくとも潜像を表現する凸部13,113,213を、平面部3,103,203と平行な断面が円形状のように中心からの距離が略一定となるものとした方が、どの方向から観察しても、凸部13,113,213によって浮かび上がる潜像の精細な形状を均一化することができる。
また、潜像となる情報は、上述した「T」のように複数の凸部13,113,213が行及び列を構成したものに限らず、複数の凸部13,113,213が行のみを構成しただけ、あるいは列のみを構成しただけのものであってもよい。また、一文字からなるものに限らず、複数の文字からなるものや模様等であってもよい。また、潜像を表現する複数の凸部13,113,213を複数の領域に分割し、その複数の領域毎に文字等が浮かび上がる構成とすることも考えられる。また、複数の凸部14,114,214が、背景色領域12,112,212にて複数の凸部13,113,213が形成された領域を完全に取り囲むのではなく、一部が開放されるようにして、複数の凸部14,114,214が、複数の凸部13,113,213が形成された領域を囲むような形状であってもよい。
また、背景色領域12,112,212の色とマーク部11,111,211の色は、上述した実施の形態においては、背景色領域12,112,212を白色とし、マーク部11,111,211を黒色としたが、背景色領域12,112,212を黒色とし、マーク部11,111,211を白色としてもよく、また、互いに異なる色であれば、白色や黒色に限らない。
また、上述した実施の形態においては、複数の凸部13,113,213によって潜像「T」を表現しているが、複数の凸部14,114,214の配列形状によって潜像「T」を表現してもよい。その場合は、偽造防止シート1,101,201に対する観察方向を正面から変化させていくと、複数の凸部14,114,214による色で潜像「T」が浮かび上がって見えるようになる。
また、上述した第1の実施の形態においては、凸部213がマーク部211のみを含み、凸部214が背景色領域212のみを含み、また、第2の実施の形態においては、凸部13が背景色領域12のみを含み、凸部14がマーク部11のみを含んでおり、また、第3の実施の形態においては、凸部113が背景色領域112とマーク部111とを含み、凸部114がマーク部111のみを含んだ構成としているが、第1の凸部と第2の凸部のうち少なくともいずれか一方の凸部が、背景色領域とマーク部のいずれか一方のみを含み、かつ、第1の凸部と第2の凸部のうち他方の凸部が、一方の凸部が含む領域とは異なる領域を含むような構成であればよい。
また、上述した実施の形態においては、偽造防止媒体として、紙からなるシート基材2,102,202に偽造防止構造10,110,210が設けられた偽造防止シート1,101,201を例に挙げて説明したが、本発明はこのような偽造防止シート1,101,201に限らず、フィルムからなるシート基材や複数の樹脂層が積層されてなるカード基材に上述したような偽造防止構造10,110,210を設けたものにも適用することが可能である。
また、本発明の偽造防止媒体は、その製造工程において、第1の凸部と第2の凸部のうち、背景色領域とマーク部のいずれか一方のみを含む凸部が、多少ずれて背景色領域とマーク部の他方の領域を含むようになる場合があるが、本発明の、基材表面に設けられた背景色領域と、背景色領域とは異なる色を具備し、背景色領域上に行及び/または列を構成して設けられた複数のマーク配色領域と、背景色領域の所定領域にて複数のマーク配色領域の配列方向と並行して行及び/または列を構成して形成された複数の第1の凸部と、背景色領域における所定領域以外の領域にて複数のマーク配色領域の配列方向と並行して行及び/または列を構成して形成された複数の第2の凸部とを有し、第1の凸部と第2の凸部のうち少なくともいずれか一方の凸部が、背景色領域とマーク配色領域のいずれか一方のみを含み、かつ、第1の凸部と第2の凸部のうち他方の凸部が、一方の凸部が含む領域とは異なる領域を含む偽造防止媒体とは、そのような偽造防止媒体も含むものであって、その場合であっても、第1の凸部と第2の凸部との識別が多少しにくくなるものの、偽造防止シートに対する観察方向を正面、すなわち、シート基材の平面部の法線方向から変化させていくと、第1の凸部と第2の凸部とが識別され、上述したものと同様に、第1の凸部や第2の凸部による潜像を浮かび上がらせることができる。