JP4821148B2 - 金属ストリップ表面への薄膜被覆方法およびセラミックス被膜付き方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

金属ストリップ表面への薄膜被覆方法およびセラミックス被膜付き方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属ストリップ表面への薄膜被覆方法およびセラミックス被膜付き方向性電磁鋼板の製造方法に関し、特に反応炉内に原料ガス吹付ノズルを設置した連続CVD処理炉を用いて金属ストリップの表面に連続して薄膜を被覆するのに際し、反応炉内壁などに付着する反応生成物を効果的に低減して、金属ストリップ表面に長時間安定して均一な薄膜を被覆しようとするものである。
化学気相析出法(CVD法)は、材料の耐熱性、耐食性、耐摩耗性および電気・磁気的特性等の機能を高めるために、様々な分野で利用されている乾式の表面被覆技術である。同じく乾式の表面被覆法である物理蒸着法(PVD法)も、多方面で利用されている。
CVD法、PVD法のどちらを利用するかは、薄膜の種類、基板となる材料からの制約、要求される製品特性および工業化した場合のコストメリット等、様々な要因によって決定される。例えば、工具鋼では、その寿命改善や耐食性改善を目的としてTiN被覆が行われているが、上記したような状況に応じてCVD法またはPVD法のいずれかが選択利用されている。PVD法は、低温で比較的広範囲の組成の薄膜を合成することが可能な反面、真空を必要とするため大面積試料への被覆は困難である。一方、CVD法は、一般に高温を必要とする反面、目的とする薄膜の種類によっては大気圧での合成が可能であるため、大面積試料への被覆に適している。また、一般的にCVD法によって被覆した膜は、PVD法によって被覆したそれに比較して密着性に優れるという特徴もある。
近年、変圧器の電力損失を大幅に低減するための手段として、方向性電磁鋼板の表面にTiN膜を被覆する試みがなされている。かようなTiN膜を被覆した極めて低い鉄損特性を有する方向性電磁鋼板を工業的に生産するためには、数千mに及ぶ長さの金属ストリップを成膜装置に通板させながら連続的に安定して高速成膜を実施する必要がある。このような長尺物への薄膜被覆に対しては、真空を必要とするPVD法を利用することは極めて難しい。また、上述した方向性電磁鋼板は、TiN膜被覆後、打ち抜き等により部品に加工され、最終的に800℃程度の高温で歪取り焼鈍が施される場合も多く、被膜密着性の観点からもPVD法よりCVD法の方が適していると考えられる。
これまで、金属ストリップを連続CVD処理炉に通板させながら、その表面に連続的に薄膜を被覆した例はほとんど報告されていない。
類似技術としては、1000℃を超える高温炉に通板させた電磁鋼板に、四塩化珪素ガスを吹き付けて鋼板内に珪素を浸透させる連続浸珪プロセスが、例えば特許文献1,2および3に開示されている。
特開昭63−26327号公報 特開平5−44042号公報 特開平7−310165号公報
しかしながら、本発明で対象とするような、気相反応でTiN等を成膜するプロセスは、上記の文献に記載されたような浸珪プロセスとは大きく異なるものである。具体的には、浸珪反応においては、鋼板の鉄原子が四塩化珪素の還元剤として機能するため、反応は鋼板表面に限定されるのに対し、一般の成膜プロセス例えばTiN成膜プロセスにおいては、原料の四塩化チタンは水素によって気相中で還元され、800℃以上で窒素と反応してTiNを生成するものである。従って、このTiNは、鋼板表面以外の場所、例えば反応炉内壁や加熱ヒータ保護管などにも容易に付着し、鋼板表面に傷を付けたり、膜厚分布の均一性を低下させる要因となる。
上記したような反応生成物の炉内付着を抑制し、金属ストリップ表面にのみ選択的に反応生成物を被覆するには、ノズルを用いて原料ガスを炉内に導入し、被覆対象物の表面近傍で吹き付ける方法が効果的である。しかしながら、長時間連続して成膜を続けていると、炉内の一部に滞留していた原料ガスに起因して、そこで多量の反応生成物が炉内付着する。このようにして炉内に付着物が堆積していくと、連続運転中に付着物が剥落して鋼板表面に傷をつけるおそれがある。また、生成物の堆積によりガスの通路が閉塞し、炉内圧力異常を引き起こすおそれもある。さらに、炉内のガス流れが不安定になると、鋼板表面に被覆されたTiN膜厚分布も不均一になる。
小型バッチCVD装置の場合は、試料交換サイクルが短く、また炉内清掃が容易に行えるため、このような現象は問題とならなかったが、大型の連続CVD装置を用いて長時間の成膜を実施する場合は、重大な問題となる。例えば、炉内圧力異常が生じた場合、金属ストリップの導入口または排出口から反応ガスが流出したり、あるいは炉内へ大気が混入して爆発するおそれが生じるため、成膜運転を中断せざるを得ず、長時間の運転は困難となる。
また、とくに板厚の薄い金属ストリップの表面に成膜する場合、面内での膜厚差が大きくなると、ストリップの形状が変化してしまう。このような場合、製品品質を劣化させるだけでなく、連続ラインでは通板中に金属ストリップが蛇行して炉内で破断を起こすおそれが生じ、やはり長時間の連続運転はできなくなる。
このように、連続CVD処理炉で金属ストリップ表面に長時間安定して成膜を継続するためには、炉内における雰囲気ガスの流れを制御することが、極めて重要なポイントとなる。
本発明は、ノズルから供給する原料ガスの平均密度と炉内雰囲気ガスの平均密度の比、さらには雰囲気ガスの流速を規定することにより、金属ストリップの連続焼鈍ラインにおいて、炉内での原料ガスの滞留を抑制し、金属ストリップの表面に効率的に均一な薄膜を被覆することができる金属ストリップ表面への薄膜被覆方法を、かかる被覆方法を利用したセラミックス被膜付き方向性電磁鋼板の製造方法と共に提案することを目的とする。
すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)反応炉内に原料ガス吹付ノズルを設置した連続CVD処理炉を用い、該反応炉内に金属ストリップを連続的に通板して、その表面に薄膜を被覆するに際し、該原料ガス吹付ノズルに供給するガスの平均密度をρ(N)[g/m3]、炉内に供給する雰囲気ガスの平均密度をρ(A)[g/m3]および雰囲気ガスの流速をv(A)[m/s]とした時、これらについて次式(1)
|Log[ρ(N)/ρ(A)]|≦(0.25×v(A)−0.01)1/2 ・・・ (1)
の関係式を満足させ、かつ炉内ガス流れを金属ストリップの通板方向と一致させることを特徴とする、金属ストリップ表面への薄膜被覆方法。
(2)上記(1)において、金属ストリップ表面に被覆する薄膜がTiN膜である場合に、原料ガス吹付ノズルに供給する原料ガスのキャリアガスとしてH2またはN2を用いることを特徴とする、金属ストリップ表面への薄膜被覆方法。
(3)フォルステライト被膜を有しない方向性電磁鋼板を、反応炉内に原料ガス吹付ノズルを設置した連続CVD処理炉に通板して、その表面に連続的にセラミックス被膜を被覆するに際し、該CVD処理を次式(1)
|Log[ρ(N)/ρ(A)]|≦(0.25×v(A)−0.01)1/2 ・・・ (1)
ここで、ρ(N):原料ガス吹付ノズルに供給するガスの平均密度[g/m3
ρ(A):炉内に供給する雰囲気ガスの平均密度[g/m3
v(A):雰囲気ガスの流速[m/s](但しv(A)≧0.04m/s)
の関係式を満足し、かつ炉内ガス流れが方向性電磁鋼板の通板方向と一致する条件下で行うことを特徴とするセラミックス被膜付き方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、連続CVD処理炉を用いて、金属ストリップの表面に、長時間安定して均一な薄膜を被覆することが可能となる。
また、本発明によれば、方向性電磁鋼板の表面に、長時間安定して均一なセラミックス被膜を被覆することができ、その結果、磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を安定して得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の実施に用いて好適な連続CVD処理炉の反応炉(焼鈍炉)の基本構造を図1に示す。反応炉は、図示するように、原料ガス吹付ノズル1、加熱用ヒータ2、炉内壁3、雰囲気ガス導入口4および排出口5で構成され、その中を金属ストリップsが通板する。かような反応炉は縦型炉であっても横型炉であっても良い。また、同図には、番号6で金属ストリップsの進行方向を、7で雰囲気ガスの流れ方向を、8で原料ガスの流れ方向を示す。
縦型反応炉においては、金属ストリップsを下から上に通す場合、炉の下側に雰囲気ガス導入口を、炉の上側に排出口を設ける。逆に、金属ストリップsを上から下に通す場合には、炉の上側に雰囲気ガス導入口を、炉の下側に排出口を設ける。一方、横型反応炉においては、金属ストリップsが入ってくる側に雰囲気ガスの導入を、出側に排出を設ける。
また、炉内ガス流れを金属ストリップの通板方向と一致させる理由は、これが逆の場合には、反応が進行した下流側のガスが炉内に入ってきた金属ストリップ表面に直接接触し、被膜形成前に下地がエッチングされたり、副生成物が被覆されるおそれが生じるので、これを回避するためである。
このような連続CVD処理炉を用いて、種々のガス供給条件で金属ストリップ表面に薄膜を被覆する実験を重ねたところ、長期間安定して均一な薄膜を被覆する上で、極めて重要な事実が判明した。
すなわち、反応炉内で原料ガス吹付ノズルから供給される原料ガスの平均密度ρ(N)と、炉内を流れる雰囲気ガスの平均密度ρ(A)の比を、ある範囲内に制限することにより、原料ガスの炉内滞留が抑えられ、反応生成物の炉内付着が効果的に抑制されることである。
そして、このような条件で成膜した場合、金属ストリップ表面の膜厚分布は極めて均一になることも判明した。
ここで、ガスの平均密度とは、例えば密度aであるガス種1をA(mol)と、密度bであるガス種2をB(mol)混合した時の算術平均:(aA+bB)/(A+B)で表される密度のことである。
上記したように、原料ガスの平均密度ρ(N)と雰囲気ガスの平均密度ρ(A)の比を、ある範囲内に制限することにより、反応生成物の炉内付着が効果的に抑制される理由については、次のように考えられる。
原料ガスの平均密度と雰囲気ガスの平均密度の差が大きく異なると、ノズルからの原料ガス(以下、単にノズルガスという)が雰囲気ガスの流れに沿って円滑に流れなくなり、炉内での滞留またはガス流れの偏りが生じて、炉の内壁等に反応生成物が付着し易くなる。例えば、図1で雰囲気ガスが縦型炉内の下から上に向かって流れ、ノズルガスも流れに沿って下から上に移動する場合を考える。ノズルガスの平均密度が雰囲気ガスの平均密度に対して大きすぎると、ノズルガスは重力の影響で下方に垂れ、雰囲気ガス流れと逆方向の流れを作ってしまう。その際、ノズルより下側の部分に原料ガスが滞留し、ここで炉壁や加熱用ヒータの周囲に多量の反応生成物が付着する。また、下方に垂れたガスは、金属ストリップ表面に被覆される薄膜の膜厚分布にも悪影響を及ぼす。
一方、ノズルガスの平均密度が雰囲気ガスの平均密度に対して小さすぎると、ノズルガスが炉の上方へ移動する際、流れが乱れて左右前後方向に偏る傾向があり、その結果、偏った側の炉壁に多量の反応生成物が付着する。また金属ストリップ表面に形成される薄膜の膜厚分布も不均一となる。
以上の機構は、縦型炉で金属ストリップとガスが上から下に流れる場合、および横型炉の場合も同様である。
従って、炉内で均一なガス流れを形成し、長時間安定して成膜を続けるためには、ノズルガスと雰囲気ガスの密度比を、ある範囲内に収まるように組み合わせることが重要である。
ところで、ノズルガスの流れは、雰囲気ガスの流速によっても大きな影響を受けると考えられる。
図1に示した連続CVD炉において、雰囲気ガスの流速が極めて低い場合、殆どの条件で原料ガスの炉内滞留または膜厚不均一が認められたのに対し、雰囲気ガス流速が高い場合には、ノズルガスと雰囲気ガスの密度に比較的大きな差があっても、炉内付着が抑制される傾向が認められた。
そこで、炉内ガス流れに影響を及ぼすガス密度比と雰囲気ガスの流速との関係について調査を行った。得られた結果を、ガス密度比と雰囲気ガスの流速との関係で図2に示す。同図中、○印は、反応生成物の炉内付着がほとんど無く、鋼板表面の膜厚分布も±15%以内であった場合を、また×印は、炉内付着が顕著で、しかも膜厚分布が±15%以内に収まらなかった場合を示す。
同図に示したとおり、雰囲気ガスの流速が0.04m/s未満と低速の場合には、ノズルガスと雰囲気ガスの密度比が如何ようであっても、炉内においてガスの滞留が生じ、炉内付着、膜厚不均一が避けられなかった。
これに対し、ガス密度比と雰囲気ガスの流速が所定の関係を満足する場合には、反応生成物の炉内付着がほとんど無く、鋼板表面の膜厚分布も±15%以内におさまった。
この関係を関係式で表すと次式(1)のようになる。
|Log[ρ(N)/ρ(A)]|≦(0.25×v(A)−0.01)1/2 ・・・ (1)
ここでρ(N)はノズルガスの平均密度
ρ(A)は雰囲気ガスの平均密度
v(A)は炉内の雰囲気ガスの流速(但し0.04m/s以上)
上掲式は、縦型炉で雰囲気ガスを下から上に流す場合に対しても、逆に上から下に流す場合に対しても同様に適用できる。
また、水平炉の場合に対しても有効であるが、水平炉の場合は、特にガス密度の違いが金属ストリップの表裏面の膜厚差に大きく影響することから、上掲式に加えて、ρ(N)とρ(A)の比を極力1に近づけることが好ましい。
次に、上記した金属ストリップ表面への薄膜被覆方法を方向性電磁鋼板に適用して、セラミックス被膜付き方向性電磁鋼板を製造する場合について説明する。
本発明で対象とする方向性電磁鋼板としては従来公知のものいずれもが適合するが、特に好適な成分組成を掲げると次のとおりである。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
本発明では、Siを1.5〜7.0%の範囲で含有することが望ましい。すなわち、Siは、製品の電気抵抗を高め鉄損を低減するのに有効な成分であるが、含有量が7.0%を超えると硬度が高くなって製造や加工が困難となる。一方、1.5%に満たないと、最終仕上焼鈍中に変態を生じて安定した2次再結晶組織が得られない。
また、鋼中には、上記の元素の他に、公知の方向性電磁鋼板の製造に適するインヒビター成分として、B,Bi,Sb,Mo,Te,Sn,P,Ge,As,Nb,Cr,Ti,Cu,Pb,ZnおよびIn等を単独または複合して含有させることができる。さらに、かようなインヒビターを使用しない方法によって製造される方向性電磁鋼板に対しても、本発明の適用は可能である。
一方、C,S,Se,N等は不純物として磁気特性上有害な元素であり、特に鉄損を劣化させるため、最終製品とする際には、それぞれC:0.003%以下、SおよびSe:0.002%以下、N:0.002%以下とすることか好ましい。
また、上記の成分組成に調整した方向性電磁鋼板は、仕上焼鈍後、表面にフォルステライト被膜がない状態としておく必要がある。
そのための方法としては、従来法により形成されたフォルステライト被膜を酸洗や研磨等により除去する方法、または焼鈍分離剤の組成を調整して、鋼板表面上のフォルステライト被膜の生成を抑制し、実質的に金属外観を有する状態とする方法を適用することができる。
さらに、表面に平滑化処理を施すことが、鉄損値の低減により有効である。例えば、酸洗、サーマルエッチングや化学研磨等により表面粗さを極力小さくし、鏡面状態に仕上げた表面や、ハロゲン化物水溶液中での電解による結晶方位強調処理で得られるグレイニング様面等が挙げられる。
なお、フォルステライト被膜がない状態とは、フォルステライトが離散的な島状になる等、部分的に微量存在していても、実質的に被膜を形成していない場合も含まれる。
続いて、CVD法によって、TiやSi等の金属の窒化物、炭化物または炭窒化物からなる被膜を形成する。
CVD法としては、TiC14等の金属塩化物ガスと、もう一方の原料ガスとして、窒化物ならば N2,NH3,(CH3)3N,(CH3)2NHガスなど、また炭化物ならばCH4, CO, C2H4, C3H6, C3H8, C2H6, i-C5H12などを混合した雰囲気中にて、鋼板を加熱することにより、セラミックス被膜を得る。勿論、両者を混合して炭窒化物としても何ら問題はない。
例えば、方向性電磁鋼板の表面に、TiN膜を被覆する場合において、原料ガス吹出ノズルのキャリアガスとしてH2を用いる場合には(TiCl4+H2)が、一方N2を用いる場合には(TiCl4+N2)が想定される。キャリアガスとしてN2を用いる場合は、H2を用いる場合よりも、雰囲気ガス(H2+N2)との密度差が大きくなるため、反応生成物TiNが炉内付着し易い傾向にある。しかしながら、上掲した関係式(1)を満足する条件下では、炉内付着は十分に抑制され、均一な膜厚分布が得られることが確認された。また、成膜速度、密着性についても、両者で大きな違いは認められなかった。
本発明の方法により得られる被膜物質は、Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Co,Ni,Al,BおよびSiなどの窒化物、炭化物、炭窒化物であり、これら2種以上を積層しても構わない。また、酸化物が混入しても構わない。
かようなセラミックス被膜の厚みについては、0.01μm以上 5μm以下程度とするのが好適である。被膜厚が0.01μmに満たないと十分な張力付与効果および被膜密着性が得られず、一方5μmを超えるとかえって被膜密着性が劣化し、また電磁鋼板の占有率の面でも不利となる。
さらに、上記したセラミックス被膜の上に絶縁被膜を被成する場合、かような絶縁被膜としては、方向性電磁鋼板に使用される無機質コートが利用可能である。特に、張力付与効果を有するコーティングは、超低鉄損化を達成するために表面を平滑化した方向性電磁鋼板と組合せると、極めて有効である。
張力付与型コーティングとしては、熱膨張係数を低下させるシリカを含むコーティングが推奨される。例えば、従来からフォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板に用いられている、リン酸塩−コロイド状シリカークロム酸系のコーティング等が、その効果およびコスト、均一処理性などの点で好適である。
かような絶縁被膜の厚みは、張力付与効果、占積率、被膜密着性等を考慮すると、0.3μm以上 10μm以下程度とするのが好適である。
なお、張力コーティングとしては、上記のもの以外にも、特開平6−65754号公報や特開平6−65755号公報、特開平6−299366号公報などに提案されている、ホウ酸−アルミナ等の酸化物系被膜を適用することも可能である。
上記のようにして得られた鋼板に、更なる鉄損低減を目的として、レーザーあるいはプラズマ炎等を照射して磁区の細分化を行っても、絶縁コーティングの密着性にはなんら問題はない。また、本発明の方向性電磁鋼板の製造工程の任意の段階において、磁区細分化のために、鋼板表面にエッチングやプレス等で一定間隔の溝を形成することも、一層の鉄損低減を図る手段として有効である。
図1に示した連続CVD処理炉の反応炉内を1100℃まで加熱し、そこに板厚:0.23mmの仕上焼鈍済みで表面にフォルステライト被膜を有しない方向性電磁鋼板を通板し、炉内のガスノズルから原料ガスであるTiCl4を、H2やN2をキャリアガスとして供給しつつ、雰囲気ガス導入口から雰囲気ガスとして(H2+N2)を供給することにより、方向性電磁鋼板の表面にTiNを成膜する運転を50時間続けた。その時のガス供給条件を表1に示す。
また、表1には、連続運転の可否、膜厚分布および炉内におけるTiNの付着状況について調べた結果を併せて示す。
ここで、連続運転の可否については、炉内圧力異常等により途中で実験の中断を余儀なくされた場合を×、最後まで実験できた場合を○で表した。
また、膜厚分布については、鋼板の面内膜厚が±15%未満に収まったものを良、そうでないものを不良とした。
さらに、TiNの付着状況については、連続運転後の炉内点検で、加熱ヒータ保護管表面に付着したTiNの一部が剥落していた場合を×、目視確認でTiN付着が全く認められないか、付着していてもごくわずかで剥落するおそれのない場合を○とした。
Figure 0004821148
同表から明らかなように、本発明を満足する条件下で連続CVD処理を行った場合は、炉内壁へのTiNの付着はほとんどなく、CVD処理を中断させるほどの事態には至らず、さらに長時間の処理が可能であった。
本発明により、連続CVD処理炉を用いて、長時間安定した金属ストリップ表面への均一被膜の被覆が可能となる。従って、本発明により、例えば、方向性電磁鋼板の表面への安定したセラミックス被膜の被覆が可能となる。
本発明の実施に用いて好適な連続CVD処理炉の反応炉の基本構造を示した図である。 ガス密度比と雰囲気ガスの流速が反応生成物の炉内付着に及ぼす影響を示した図である。
符号の説明
1 原料ガス吹付ノズル
2 加熱用ヒータ
3 炉内壁
4 雰囲気ガス導入口
5 雰囲気ガス排出口
6 金属ストリップsの進行方向
7 雰囲気ガスの流れ方向
8 原料ガスの流れ方向

Claims (3)

  1. 反応炉内に原料ガス吹付ノズルを設置した連続CVD処理炉を用い、該反応炉内に金属ストリップを連続的に通板して、その表面に薄膜を被覆するに際し、該原料ガス吹付ノズルに供給するガスの平均密度をρ(N)[g/m3]、炉内に供給する雰囲気ガスの平均密度をρ(A)[g/m3]および雰囲気ガスの流速をv(A)[m/s]とした時、これらについて次式(1)
    |Log[ρ(N)/ρ(A)]|≦(0.25×v(A)−0.01)1/2 ・・・ (1)
    の関係式を満足させ、かつ炉内ガス流れを金属ストリップの通板方向と一致させることを特徴とする、金属ストリップ表面への薄膜被覆方法。
  2. 請求項1において、金属ストリップ表面に被覆する薄膜がTiN膜である場合に、原料ガス吹付ノズルに供給する原料ガスのキャリアガスとしてH2またはN2を用いることを特徴とする、金属ストリップ表面への薄膜被覆方法。
  3. フォルステライト被膜を有しない方向性電磁鋼板を、反応炉内に原料ガス吹付ノズルを設置した連続CVD処理炉に通板して、その表面に連続的にセラミックス被膜を被覆するに際し、該CVD処理を次式(1)
    |Log[ρ(N)/ρ(A)]|≦(0.25×v(A)−0.01)1/2 ・・・ (1)
    ここで、ρ(N):原料ガス吹付ノズルに供給するガスの平均密度[g/m3
    ρ(A):炉内に供給する雰囲気ガスの平均密度[g/m3
    v(A):雰囲気ガスの流速[m/s](但しv(A)≧0.04m/s)
    の関係式を満足し、かつ炉内ガス流れが方向性電磁鋼板の通板方向と一致する条件下で行うことを特徴とするセラミックス被膜付き方向性電磁鋼板の製造方法。
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