以下、本発明の最良の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1から図10に、本発明の一実施形態を示している。
本発明の特徴を適用する部分の説明に先立ち、図1から図3を参照して、本発明の制御装置の使用対象となる車両の内燃機関およびパワートレーンの概略構成について説明する。
図1は、自動車等の車両に装備されるパワートレーンの概略構成を示している。図1において、1は内燃機関、2は手動変速機、3はクラッチ、4は制御装置である。
図1に示すパワートレーンは、フロントエンジン・リアドライブ(FR)形式の車両に搭載されるタイプとされている。このパワートレーンでは、内燃機関1で発生する回転動力がクラッチ3を介して手動変速機2に入力され、この手動変速機2で適宜の変速比に変速されて、プロペラシャフト5およびデファレンシャル6を介して左右の後輪7,7に伝達されるようになっている。
図2は、内燃機関1の吸気系や燃料供給系の概略構成を示している。図2に示すように、内燃機関1の燃焼室10には、吸気ポートおよび排気ポート(共に符号省略)が接続されている。吸気ポートは吸気バルブ11で、また、排気ポートは排気バルブ12でそれぞれ開閉される。吸気バルブ11および排気バルブ12は、クランクシャフト13の回転動力によって回転駆動される吸気カムシャフトおよび排気カムシャフト(共に図示省略)の各回転によって駆動される。
吸気ポートに連結される吸気通路14には、電子制御式のスロットルバルブ15が設けられている。このスロットルバルブ15は、基本的にアクセルペダル8の操作に応答して駆動されるスロットルモータ16でもって開閉され、スロットルバルブ15の開度に応じて吸気通路14へ導入される吸入空気量が調整される。
また、吸気ポートの近傍には、燃焼室10へ燃料を供給するための燃料噴射弁17が取り付けられている。この燃料噴射弁17には、図示していないが、デリバリパイプから燃料が所定の圧力をもって供給される。
このデリバリパイプには、図示していないが、燃料タンクから燃料ポンプで吸い上げられる燃料が供給される。
内燃機関1の燃焼室10には、点火プラグ18が配置されている。この点火プラグ18は、燃焼室10に導入される混合気(燃料+空気)を燃焼、爆発させるもので、その点火タイミングは、イグナイタ19によって調整される。イグナイタ19は、制御装置4によって制御される。
内燃機関1の運転動作を簡単に説明すると、内燃機関1の吸入行程において、吸気通路14に導入される空気が吸気ポートを通じて燃焼室10に取り込まれるとともに、燃料噴射弁17から噴射される燃料が燃焼室10に供給されるので、燃焼室10内で混合された混合気が、圧縮行程において圧縮された後、点火プラグ18によって着火されて燃焼、爆発される。
これにより、ピストン21が往復運動されるとともに、コネクティングロッド22を経てクランクシャフト13が回転駆動される。燃焼室10内の排気ガスは、排気行程において排気バルブ12を開弁させることによって排気ポートから排気通路を経て大気放出される。
このような内燃機関1の運転動作は、制御装置4により制御される。この制御装置4の概略構成について、図3を参照して説明する。
制御装置4は、内燃機関1における種々の制御(例えば空燃比制御、燃料噴射制御、点火制御、スロットル制御、フューエルカット制御等)を統括して実行するもので、CPU(中央処理装置)、ROM(プログラムメモリ)、RAM(データメモリ)、ならびにバックアップRAM(不揮発性メモリ)等を含んだ一般的に公知のECU(Electronic Control Unit)とされる。CPU、ROM、RAM、バックアップRAMには符号を付していない。
ROMは、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPUは、ROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAMは、CPUでの演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAMは、内燃機関1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
この制御装置4の入力インタフェースには、図3に示すように、アクセル開度センサ31、アイドルスイッチ32、エアフローメータ33、スロットルポジションセンサ34、クランクポジションセンサ35、シフト位置センサ36、クラッチアッパスイッチ37、クラッチロアスイッチ38、車速センサ39等が接続されている。
また、制御装置4の出力インタフェースには、図3に示すように、燃料噴射弁17、スロットルバルブ15のスロットルモータ16、点火プラグ18のイグナイタ19等が接続されている。
これら各インタフェースに接続する要素は、本発明の特徴に関連するもののみとし、本発明の特徴に直接的に関連しない要素についての記載や説明は割愛している。
参考までに、アクセル開度センサ31は、運転者により操作されるアクセルペダル8の開度に対応する信号を出力する。アイドルスイッチ32は、アクセルペダル8が完全に離された位置、つまり踏み込み量がゼロになったときにオンとなるものである。つまりアクセルオフ操作時にオンとなり、アクセルオン操作時にオフとなる。このアイドルスイッチ32のオン時には、通常、スロットルバルブ15の開度を全閉とせずに、アイドル開度とするようになっている。
エアフローメータ33は、吸入空気量を検出し、その吸入空気量信号を出力する。スロットルポジションセンサ34は、スロットルバルブ15の開度に対応する信号を出力する。
クランクポジションセンサ35は、例えば電磁ピックアップとされ、クランクシャフト13に一体回転可能に付設されるシグナルロータ23の外周の多数の突起24の対向通過に対応する信号(出力パルス)を出力する。この出力に基づいてクランクシャフト13の回転角(クランク角)や機関回転速度が検出される。シフト位置センサ36は、手動変速機2において選択されたシフト位置を検出するものである。
クラッチアッパスイッチ37は、ノーマリーオフスイッチであって、クラッチペダル9の踏み込み量がシフト操作を許容する程度にクラッチ3を切断する量以上になったときにオンとなるものであり、そのために、例えば運転者がシフト操作を意図しない場合でもクラッチペダル9に偶発的に足を載せただけでもオンになることがある。このクラッチアッパスイッチ37は、通常、例えばオートクルーズ制御を実行している期間においてオンになるとオートクルーズ制御をキャンセルするために利用される。
クラッチロアスイッチ38は、ノーマリーオフスイッチであって、クラッチペダル9の踏み込み量がクラッチ3を完全に切断する量以上になったときにオンとなるものである。このクラッチロアスイッチ38は、例えばインヒビタスイッチと呼ばれるものとされ、通常、エンジン始動時においてオフであるときにエンジン始動を禁止するために利用される。
車速センサ39は、車輪速度を検出するものであり、この検出出力に基づいて制御装置4が車速、つまり車両走行速度を算出する。
ここで、制御装置4により行う各制御を簡単に説明する。
空燃比制御は、例えば内燃機関1の排気ポートに接続される排気通路(図示省略)に設置される空燃比センサ(図示省略)および酸素センサ(図示省略)の各出力に基づいて排気ガス中の酸素濃度を算出し、その算出した酸素濃度から得られる実際の空燃比を目標空燃比(例えば理論空燃比)に一致させるように、燃料噴射弁17による燃料噴射量を制御する。
燃料噴射制御としては、内燃機関負荷や機関回転速度等に基づいて目標空燃比を算出し、エアフローメータ33によって検出された吸入空気量に基づき、目標空燃比が得られるように燃料噴射量の制御(燃料噴射弁17の開弁時間の制御)が行われる。
点火制御としては、クランクポジションセンサ35からの出力に基づいて点火プラグ18の点火タイミングを制御する。
スロットル制御としては、運転者により操作されるアクセルペダル8の開度等に基づき、要求された内燃機関出力を得るための吸入空気量となるスロットルバルブ15の開度が得られるようにスロットルモータ16の駆動量が制御される。
この実施形態では、アクセルペダル8が完全オフ操作されたときに、スロットルバルブ15の開度が全閉状態とされずに、機関回転速度をアイドリング回転速度にするためのアイドル開度とされる。また、スロットルバルブ15の開度は、車両運転状況に応じてアクセルペダル8の開度と無関係に調整される場合もある。
フューエルカット制御は、燃料噴射弁17の燃料噴射動作を停止するフューエルカット処理と、点火プラグ18の点火動作を停止する点火カット処理とを行う。
このフューエルカットの実行中において機関回転速度が、フューエルカット終了判定値Y以下になる等、復帰条件が成立すると、点火カット処理を解除して点火プラグ18の点火動作を再開させるとともに、フューエルカット処理を終了して燃料噴射弁17による燃料噴射制御を再開、または復帰させる。また、フューエルカットの実行中にアクセルペダル8が踏み込まれた場合(加速要求行為)にも、フューエルカットを中止して燃料噴射弁17による燃料噴射制御を再開する。
次に、図4から図10を参照して、本発明の特徴を適用した部分について詳細に説明する。
本発明の実施形態では、要するに、シフト操作によってクラッチ3が切断される状況でフューエルカットを実行する形態(例えばシフト時フューエルカットという)と、シフト操作が無くてクラッチ3が継合している状況でのアクセルオフに伴うフューエルカットを実行する形態(例えば通常フューエルカットという)とを可能とした構成を前提としている。
前記のシフト時フューエルカットを実行する場合には、速やかに実行開始させるので、機関回転速度が吹け上がるといった現象が発生せずに済むようになり、変速操作性が向上する。
一方、通常フューエルカットを実行する場合には、所定時間遅延して実行開始させるので、アクセルオフの経過に伴い機関トルクや機関回転速度が低下することになって、フューエルカットショックを抑制または防止することが可能になり、ドライバビリティが向上する。
本発明は、前記のように車両の運転状況に応じて最適な形態でフューエルカットを行う構成において、フューエルカットの終了判定値Yを、シフト操作の有無に応じて異ならせるようにしている。特に、この実施形態では、シフト時フューエルカットの終了判定値Y1を通常フューエルカットの終了判定値Y2よりも小さく設定している。
以下、具体的に、制御装置4による各フューエルカットの制御動作について、順を追って説明する。
まず、図4に示すフローチャートを参照して、フューエルカットの実施に関する処理を詳しく説明する。図4に示すフローチャートは、周期的に実行される。
この図4にエントリーされると、ステップS1において、現在の機関回転速度が、所定のフューエルカット許可判定値(フューエルカット実施回転速度ともいう)X以上であるか否かを判定する。この機関回転速度は、クランクポジションセンサ35から入力される信号に基づき認識される。なお、フューエルカット許可判定値Xの設定方法は、後で図8を参照して説明する。
前記ステップS1で否定判定した場合、つまり機関回転速度がフューエルカット許可判定値X未満である場合には、フューエルカットを実行せずに、このフローチャートの処理を終了する。
しかし、前記ステップS1で肯定判定した場合、つまり機関回転速度がフューエルカット許可判定値X以上である場合には、続くステップS2において、シフト操作が有ったか否かを判定する。このステップS2では、シフト操作フラグが「1」であるか否かを判定する。このシフト操作フラグは、後で説明する図5のシフト操作判定ルーチンに基づき設定される。
前記ステップS2で肯定判定した場合、つまりシフト操作が有った場合には、ステップS3においてフューエルカットを実行開始してから、このフローチャートの処理を終了する。
しかし、前記ステップS2で否定判定した場合、つまりシフト操作が無い場合には、ステップS4において、アクセルオフの継続時間が規定値G以上であるか否かを判定する。なお、アクセルオフの有無は、アイドルスイッチ32の出力に基づいて行われ、このアイドルスイッチ32がオフのときはアクセルオフ操作無しと判定され、アイドルスイッチ32がオンのときはアクセルオフ操作有りと判定される。
要するに、アクセルオフの継続時間が長い場合には、フューエルカットを行って無駄な燃料消費を無くすことが得策であると考えられるが、アクセルオフの継続時間が短い場合には、仮にフューエルカットを実行したとしても短時間となるために、一時的なフューエルカットショックが発生することになる等、むしろフューエルカットを行わないほうが得策であると考えられる。これらのことを考慮し、前記規定値Gは、実験によって経験的に把握した値に設定することが好ましい。
前記ステップS4で否定判定した場合、つまりアクセルオフの継続時間が規定値G未満である場合には、フューエルカットを実行せずに、このフローチャートの処理を終了する。
しかし、前記ステップS4で肯定判定した場合、つまりアクセルオフの継続時間が規定値G以上である場合には、ステップS5において、アクセルオフの経過に伴い機関トルクが十分に低下したか否かを判定する。
前記ステップS5で否定判定した場合、つまり機関トルクの低下が不十分である場合には、フューエルカットを実行せずに、このフローチャートの処理を終了する。
しかし、前記ステップS5で肯定判定した場合、つまり機関トルクが十分に低下した場合には、前記ステップS3においてフューエルカットを実行開始してから、このフローチャートの処理を終了する。
以上説明したように、要するに、ステップS2で肯定判定してステップS3に移行した場合には、フューエルカットの許可条件が成立してから速やかにフューエルカットを実行開始する形態、つまりシフト時フューエルカットとなる。
一方、ステップS2で否定判定してステップS4、S5を経てステップS3に移行した場合には、フューエルカットの許可条件が成立してから所定時間遅延されてフューエルカットを実行開始する形態、つまり通常フューエルカットとなる。この通常フューエルカットを実行開始するまでの遅延時間は、ステップS4、S5で共に肯定判定するまでに要する時間となる。
次に、図5を参照して、シフト操作の有無判定に関する処理について詳しく説明する。図5に示すフローチャートは、図4に示すフローチャートとは無関係に周期的に実行される。
この実施形態では、シフト操作の有無判定について、次の(1)〜(3)の条件すべてが成立しているか否かを調べ、すべて成立している場合にシフト操作有りと判定するようにしている。
(1)アクセルオフの継続時間(アイドルスイッチ32のオン時間)が規定値A以上であること。
(2)クラッチ3の操作の継続時間が規定値B以上であること。
(3)前記(1)の成立時における機関回転速度の上昇率が、規定の判定値C以上であること。
前記条件(2)では、クラッチ3の操作の継続時間として、クラッチアッパスイッチ37のオン時間を調べるようにしている。そもそも、クラッチアッパスイッチ37は、クラッチペダル9の踏み込みが浅い段階からオンとなるために、運転者がシフト操作を意図せずに、偶発的にクラッチペダル9に足が載っただけでもオンとなる。この点を考慮し、前記規定値Bについて、偶発的な足載せではないと判断するのに十分な時間、つまりシフト操作のためのクラッチペダル9の有効操作時間とするようにしている。
また、前記条件(3)では、前記(1)のアクセルオフの継続時間が規定値A以上になったときの機関回転速度の上昇率で、クラッチ3の切断操作による機関回転速度の吹き上がりの前兆が発生しているか否かを調べるようにしている。そもそも、アクセルペダル8の開度に対するスロットルバルブ15の開度動作は、応答遅れがあるために、アクセルオフ後も暫くは機関回転速度の上昇が続くことがある。そのため、アクセルオフ直後の機関回転速度の上昇率を見ても、前記応答遅れによる機関回転速度の上昇と、クラッチ3の切断操作による機関回転速度の吹き上がりとを峻別することは難しい。この点考慮して、前記のような条件とすれば、正確な判断が可能になる。
なお、前記条件(1)〜(3)のすべてが成立する前に、(4)アクセルオフの継続時間が前記規定値Aよりも大きい規定値D以上になったときや、(5)クラッチ3の操作の継続時間が前記規定値Bよりも大きい規定値E以上になったときには、その後に、前記条件(1)〜(3)のすべてが成立しても、シフト時フューエルカットの実施を取りやめるようにしている。
具体的に、判定動作を説明する。まず、ステップS11において、アクセルオフの継続時間が、予め規定される下限値A以上、かつ上限値D未満であるか否かを判定する。
なお、アクセルオフの有無は、アイドルスイッチ32の出力に基づいて行われ、このアイドルスイッチ32がオフのときはアクセルオフ操作無しと判定され、アイドルスイッチ32がオンのときはアクセルオフ操作有りと判定される。
前記の下限値Aは、アクセルオフの操作からその操作に応じたシリンダ流入空気量の変化が実際に生じるまでの時間とされる。前記の上限値Dは、クラッチ3の切断操作に伴う機関回転速度の吹き上がりが生じない程度までシリンダ流入空気量が低下されるのに必要なアクセルオフの継続時間とされる。
ここで、前記ステップS11で否定判定した場合、つまりアクセルオフの継続時間が下限値A未満、あるいは上限値D以上である場合には、ステップS18でシフト操作無しと決定するとともに、シフト操作フラグを「0」にセットしてから、このフローチャートの処理を終了する。
しかし、前記ステップS11で肯定判定した場合、つまりアクセルオフの継続時間が下限値A以上、かつ上限値D未満である場合には、ステップS12において、クラッチ3の切断操作の継続時間が下限値B以上、かつ上限値E未満であるか否かを判定する。
なお、クラッチ3の切断操作の有無は、クラッチアッパスイッチ37の出力に基づいて行われ、このクラッチアッパスイッチ37がオフのときはクラッチ3の切断操作無し、オンのときにクラッチ3の切断操作有りと判定される。このようなクラッチ3の切断操作の継続時間を調べているのは、クラッチ3の切断操作を一定時間以上行うことによってシフト操作が行われる可能性を高いかどうかを調べているのである。
前記の下限値Bは、クラッチペダル9の有効操作時間、すなわちクラッチペダル9への偶発的な足載せではないと判断するのに十分な時間とされる。前記の上限値Eは、シフト操作のためのクラッチ3の切断操作としては長すぎると判断される時間とされる。
ここで、前記ステップS12で肯定判定した場合、つまりクラッチ3の切断操作の継続時間が下限値B以上、かつ上限値E未満である場合には、ステップS13において、第1マップを用いてそのときの手動変速機2のシフト位置に基づき判定値Cを算出し、続くステップS14において、そのときの機関回転速度の上昇率が前記算出した判定値C以上であるか否かを判定する。
前記の判定値Cは、制御装置4のROMに予め記憶されている第1マップを用いて求められる。第1マップは、手動変速機2のシフト位置と判定値Cの値との対応関係を示す演算用データである。
このステップS14で肯定判定した場合、つまり機関回転速度の上昇率が判定値C以上である場合には、ステップS15でシフト操作有りと決定してから、このフローチャートの処理を終了する一方で、前記ステップS14で否定判定した場合、つまり機関回転速度の上昇率が判定値C未満である場合には、前記ステップS18でシフト操作無しと決定してから、このフローチャートの処理を終了する。
しかし、前記ステップS12で否定判定した場合、つまりクラッチ3の切断操作の継続時間が下限値B未満、あるいは上限値E以上である場合には、ステップS16において、第2マップを用いてそのときの手動変速機2のシフト位置に基づき判定値Fを算出し、続くステップS17において、そのときの機関回転速度の上昇率が前記算出した判定値F以上であるか否かを判定する。
前記の判定値Fは、制御装置4のROMに予め記憶されている第2マップを用いて求められる。第2マップは、手動変速機2のシフト位置と判定値Fの値との対応関係を示す演算用データである。第2マップの判定値Fと、前記の第1マップの判定値Cとの大小関係は、同じシフト位置においても第2マップの判定値Fのほうが第1マップの判定値C大きい値に設定される。
このステップS17で肯定判定した場合、つまり機関回転速度の上昇率が判定値F以上である場合には、ステップS15でシフト操作有りと決定するとともに、シフト操作フラグを「1」にセットしてから、このフローチャートの処理を終了する一方、前記ステップS17で否定判定した場合、つまり機関回転速度の上昇率が判定値C未満である場合には、前記ステップS18でシフト操作無しと決定するとともに、シフト操作フラグを「0」にセットしてから、このフローチャートの処理を終了する。
以上説明したように、要するに、ステップS11,S12,S14の3つの条件がすべて肯定判定されて成立したときに、「シフト操作有り」と決定し、ステップS11,S12,S17の3つの条件がすべて肯定判定されて成立したときに、「シフト操作無し」と決定するようになっている。
これにより、シフト操作の有無を正確かつ迅速に判定することが可能になり、この結果を、前述した図4に示すフューエルカットの実施判定制御に用いることによって、状況に応じて適正なフューエルカットを実行させることが可能になる。
そして、前述した図4のフューエルカットの実施判定制御において、通常フューエルカット、あるいはシフト時フューエルカットのいずれか一方を実行した後、制御装置4は、いずれかのフューエルカット実行期間中において、図6に示すフローチャートに周期的にエントリーし、フューエルカットの終了タイミングを監視する。
図6に示すフローチャートにエントリーされると、まず、ステップS21において、機関回転速度がフューエルカット終了判定値(復帰回転速度ともいう)Y未満になったか否かを判定する。このフューエルカット終了判定値Yの設定方法は、後で図7を参照して説明する。
前記ステップS21で肯定判定した場合、つまり機関回転速度がフューエルカット終了判定値Y未満に低下した場合には、ステップS22において、現在実行しているフューエルカットを終了して、燃料噴射制御に復帰させる。
一方、前記ステップS21で否定判定した場合、つまり機関回転速度がフューエルカット終了判定値Y未満にまで低下していない場合には、ステップS23において、アクセルペダル8が踏み込まれてアイドルスイッチ32がオフになったか否かを判定する。
前記ステップS23で肯定判定した場合、つまりアイドルスイッチ32がオフになった場合には、前記ステップS22において、現在実行しているフューエルカットを終了して、燃料噴射制御に復帰させる。
一方、前記ステップS23で否定判定した場合、つまりアイドルスイッチ32がオンのままである場合には、フューエルカットを終了せずに、このフローチャートの処理を終了する。
ここで、前記のステップS21において判定基準としているフューエルカット終了判定値Yの設定処理について、図7に示すフローチャートを参照して説明する。
この図7に示すフローチャートは、図4、図5ならびに図6に示すフローチャートとは無関係に周期的に実行される。
まず、ステップS31において、シフト操作中か否かを判定する。ここでは、シフト操作フラグが「1」であるか否かを判定する。このシフト操作フラグは、前記した図5のシフト操作判定ルーチンに基づき設定される。
前記ステップS31で肯定判定した場合、つまりシフト操作中である場合には、ステップS32において、シフト時フューエルカット用のフューエルカット終了判定値Y1を算出する。
一方、前記ステップS31で否定判定した場合、つまりシフト操作中でない場合には、ステップS33において、通常フューエルカット用のフューエルカット終了判定値Y2を算出するようにしている。
なお、前記のステップS32およびステップS33では、シフト時フューエルカット用のフューエルカット終了判定値Y1と、通常フューエルカット用のフューエルカット終了判定値Y2とに関する基準値(Y1<Y2)をベースとし、それぞれに対して、例えば内燃機関1の水温や、内燃機関1に付設されるエアーコンディショナ等の負荷の使用、不使用状態等といった不確定要素を加味して、演算することにより算出される。
以上説明したように、シフト操作の有無に応じて、シフト時フューエルカット用のフューエルカット終了判定値Y1と、通常フューエルカット用のフューエルカット終了判定値Y2とを、Y1<Y2となるように個別に設定するようにしている。
この場合、シフト時フューエルカット実行過程では、機関回転速度が、通常フューエルカット実行時に比べて、より低い速度域に下がるまでフューエルカットが終了されなくなる。
つまり、仮に、シフト時フューエルカットの終了判定値Y1を通常フューエルカットの終了判定値Y2と同じに設定していると、シフト時フューエルカットの終了時期が早くなり過ぎると言える。
したがって、前記のようにシフト時フューエルカットの終了判定値Y1を通常フューエルカットの終了判定値Y2よりも小さく設定すれば、前記両終了判定値を同じに設定している場合に比べると、シフト時フューエルカットの終了時期を引き延ばすことが可能になる。これにより、例えばシフト時フューエルカットを可及的に長く行うことが可能になるので、シフト操作時における燃料消費を低減することが可能になる。
このように、図7に示すフューエルカット終了判定値Yの設定処理が終了した後、図4に示すステップS1で用いるフューエルカット許可判定値Xを設定するようになっている。
このフューエルカット許可判定値Xの設定については、図8に示すフローチャートを参照して説明する。この図8に示すフローチャートは、図7に示すフューエルカット終了判定値Yの設定処理が終了することに応答して実行される。
まず、ステップS41において、シフト操作中か否かを判定する。ここでは、シフト操作フラグが「1」であるか否かを判定する。このシフト操作フラグは、前記した図5のシフト操作判定ルーチンに基づき設定される。
前記ステップS41で肯定判定した場合、つまりシフト操作中である場合には、ステップS42において、シフト時フューエルカット用のフューエルカット許可判定値X1を算出する。
一方、前記ステップS41で否定判定した場合、つまりシフト操作中でない場合には、ステップS43において、通常フューエルカット用のフューエルカット許可判定値X2を算出するようにしている。
なお、前記のステップS42およびステップS43では、シフト時フューエルカット用のフューエルカット許可判定値X1と、通常フューエルカット用のフューエルカット許可判定値X2とに関する個別の基準値(X1<X2)をベースとし、それぞれに対して、例えば内燃機関1の水温や、内燃機関1に付設されるエアーコンディショナ等の負荷の使用、不使用状態等といった不確定要素を加味して、演算することにより算出される。
以上説明したように、シフト操作の有無に応じて、シフト時フューエルカット用のフューエルカット許可判定値X1と、通常フューエルカット用のフューエルカット許可判定値X2とを、X1<X2となるように個別に設定するようにしている。
これにより、クラッチ3が切断されるシフト操作有り時には、機関回転速度が、クラッチ3が継合されているシフト操作無し時の場合に比べて低速であっても、シフト時フューエルカットを開始させることが可能になる。そのため、シフト時フューエルカットを可及的に広い機関回転速度域で実行させることが可能になる。
このように、フューエルカットの終了判定値Yを設定してから、許可判定値Xを設定することにより、結果的に、両者の差(X−Y)が一定値に固定されたものではなく、車両運転状況に応じて適宜に変更されるようになる。
上述した動作説明から明らかなように、請求項に記載の各手段は、制御装置4により制御される図4から図8に示すフローチャートの適宜のステップに対応している。
次に、図9を参照して、上述したシフト時フューエルカットに関する一実施態様を説明する。
例えば図9中の時刻t1において、クラッチアッパスイッチ37がオンになり、時刻t2において、アイドルスイッチ32がオン(アクセルオフ)になったとする。
この後、時刻t3において、クラッチアッパスイッチ37のオン継続時間P1が規定値B以上になるとともに、アイドルスイッチ32のオン継続時間P2が規定値A以上になり、さらに、機関回転速度の上昇率が判定値C以上になったとする。
その場合、制御装置4は、シフト操作フラグを「1」にセットして、機関回転速度がシフト時フューエルカットに関するフューエルカット許可判定値X1以上であるか否かを調べる。
ここで、機関回転速度がシフト時フューエルカットに関するフューエルカット許可判定値X1以上であれば、シフト操作フラグが「1」であることを確認してから、シフト時フューエルカットの実行指示をオンにする。
但し、時刻t3において、機関回転速度がシフト時フューエルカットに関するフューエルカット許可判定値X1未満である場合には、シフト時フューエルカットの実行指示をオフに保持する。
前記時刻t3でシフト時フューエルカットを実行開始することに伴い、機関回転速度が低下し始めることになるが、例えば時刻t4において、機関回転速度がシフト時フューエルカットに関するフューエルカット終了判定値Y1未満になったとする。
その時点で、制御装置4は、シフト時フューエルカットの実行指示をオフにする。それによって、シフト時フューエルカットが終了されることになって、燃料噴射弁18による燃料噴射を復帰させるので、機関回転速度が上昇し始める。
ところで、時刻t3からt4までの期間、つまりシフト時フューエルカットの実行中において、例えばアクセルペダル8が踏み込まれてアイドルスイッチ32がオフになったとすると、制御装置4は、その時点でシフト時フューエルカットの実行指示をオフとし、燃料噴射弁18による燃料噴射を復帰させる。
次に、図10を参照して、上述した通常フューエルカットに関する一実施態様を説明する。
例えば図10中の時刻t11において、アイドルスイッチ32がオン(アクセルオフ)になり、その後、時刻t12において、クラッチアッパスイッチ37のオフのままで、アイドルスイッチ32のオン継続時間P2が判定値G以上になったとする。
その場合、制御装置4は、シフト操作フラグを「0」にセットして、機関回転速度が通常フューエルカットに関するフューエルカット許可判定値X2以上であるか否かを調べる。
ここで、機関回転速度が通常フューエルカットに関するフューエルカット許可判定値X2以上であれば、制御装置4は、機関トルクが十分に下がるのを待ってから時刻t13にて通常フューエルカットの実行指示をオンにする。一方、機関回転速度が通常フューエルカットに関するフューエルカット許可判定値X2未満である場合には、制御装置4は、通常フューエルカットの実行指示をオフに保持する。
前記時刻t13でシフト時フューエルカットを実行開始することに伴い、機関回転速度が低下し始めることになるが、例えば時刻t14において、機関回転速度が通常フューエルカットに関するフューエルカット終了判定値Y2未満になったとする。
その時点で、制御装置4は、通常フューエルカットの実行指示をオフにする。それによって、シフト時フューエルカットが終了されることになって、燃料噴射弁18による燃料噴射を復帰させるので、機関回転速度が上昇し始める。
ところで、時刻t13からt14までの期間、つまり通常フューエルカットの実行中において、例えばアクセルペダル8が踏み込まれてアイドルスイッチ32がオフになったとすると、制御装置4は、その時点で通常フューエルカットの実行指示をオフとし、燃料噴射弁18による燃料噴射を復帰させる。
以上説明したように本発明の特徴を適用した実施形態によれば、シフト時フューエルカットについては、機関吹き上がりを抑制または防止して変速操作性を向上することが可能になるとともに、フューエルカットを可及的に長引かせて燃料消費を可及的に低減することが可能になる。また、通常フューエルカットについては、フューエルカットショックを抑制または防止してドライバビリティを向上することが可能になる。
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲で包含されるすべての変形や応用が可能である。以下で例を挙げる。
(1)上記実施形態では、フロントエンジン・リアドライブ(FR)形式のパワートレーンを有する車両に本発明を適用した例を挙げているが、本発明はこれに限らず、例えばフロントエンジン・フロントドライブ(FF)形式や、その他の形式のパワートレーンを有する車両に適用できる。
(2)上記実施形態では、筒内直接噴射タイプの燃料噴射弁17を備える内燃機関1に本発明を適用した例を挙げているが、本発明は、例えばポート噴射タイプの燃料噴射弁を備える内燃機関や、前記両タイプの燃料噴射弁を備える内燃機関にも適用することが可能である。
(3)上記実施形態で説明した図5のシフト操作判定ルーチンについては、限定されるものではなく、適宜に変更することが可能である。