JP4807681B2 - 低温用の溶射発熱体及びその製造方法並びにそれを用いた加熱装置 - Google Patents

低温用の溶射発熱体及びその製造方法並びにそれを用いた加熱装置 Download PDF

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本発明は、鉄酸化物の導電性溶射皮膜を有する低温用の溶射発熱体及びその製造方法並びにそれを用いた加熱装置に関する。
従来、溶射発熱体を形成する導電性物質として、例えば、酸化ニッケル等の導電性酸化物が使用されている。そして、導電性酸化物を使用して形成される溶射皮膜の電気抵抗率は通常10-4Ω・cmのオーダーとなるので、所望の電気抵抗値を有する溶射発熱体を得るためには、溶射発熱体の長さを大きくしたり、溶射皮膜の厚みを薄くする必要があった。しかし、均質な溶射皮膜を形成するには膜厚が一定厚み(最低膜厚限界といい、例えば、0.03mm程度の値)を超える必要があり、溶射皮膜の厚みで調整できる電気抵抗値の範囲には限界がある。
そこで、導電性物質に絶縁物質を所定の割合で混合して調製した混合物(例えば、酸化ニッケルとヘマタイトとの混合物)を溶射して所望の電気抵抗値を有する溶射皮膜を形成すること、あるいは、酸化性の導電性物質(例えば、鉄鉱石)に炭素粒を混合して調製した混合物を溶射し溶射中の導電性物質の酸化量を制御することで所望の電気抵抗値を有する溶射皮膜を形成すること(例えば、特許文献1参照)が提案されている。更に、絶縁性物質(例えば、アルミナ)の表面に導電性物質(例えば、ニッケル)をコーティングした複合粒子を調製し、この複合粒子を溶射して所望の電気抵抗値を有する溶射皮膜を形成している(例えば、特許文献2参照)。
特開平6−236793号公報 特開平6−116701号公報
しかしながら、混合物を溶射する場合、導電性物質と絶縁性物質(炭素粒)の間には比重差及び融点差が存在するため、均質性に優れる溶射皮膜の形成が困難となる。このため、溶射発熱体としての品質が維持できないという問題が生じる。一方、複合粒子を溶射する場合は、複合粒子が高価となるため、溶射発熱体の製造コストが増大するという問題がある。このため、複合粒子の溶射は、溶射発熱体を形成する経済性のある実用的方法には到っていない。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、均質性に優れ製造コストが安価で溶射皮膜の長さと厚みの調整で所望の電気抵抗値を容易に得ることが可能な低温用の溶射発熱体及びその製造方法並びにそれを用いた加熱装置を提供することを目的とする。
前記目的に沿う第1の発明に係る低温用の溶射発熱体は、絶縁性の立体、パイプ、及び板材のいずれか1つを基材としその表面に溶射処理形成された鉄酸化物の導電性溶射皮膜と、
前記導電性溶射皮膜の表面上に塗布されたシリコーン樹脂からなって、該導電性溶射皮膜の酸化を防止すると共に絶縁を行う絶縁保護皮膜とを有する。
ここで、立体とは、球体、中空の球体、錐体、中空の錐体、多面体、及び中空の多面体のいずれか1を指し、低温用とは、溶射発熱体で被加熱物を加熱してその温度を、例えば、−20〜300℃の範囲に保持できる機能を指す(以下の発明においても同様)。
前記目的に沿う第2の発明に係る低温用の溶射発熱体は、導電性の立体、パイプ、及び板材のいずれか1つを基材としその表面に溶射処理形成された絶縁溶射皮膜と、
前記絶縁溶射皮膜の表面上に溶射処理形成された鉄酸化物の導電性溶射皮膜と、
前記導電性溶射皮膜の表面上に塗布されたシリコーン樹脂からなって、該導電性溶射皮膜の酸化を防止すると共に絶縁を行う絶縁保護皮膜とを有する。
第1及び第2の発明に係る低温用の溶射発熱体において、前記鉄酸化物はマグネタイトを主体とすることができ、前記導電性溶射皮膜は鋼材の圧延工程で排出されるミルスケールの溶射により形成され、抵抗率を0.01〜0.1Ω・cmの範囲にすることができる。そして、前記ミルスケールは、マグネタイトを主体としウスタイト及びヘマタイトを含有することが好ましい。
更に、第1及び第2の発明に係る低温用の溶射発熱体において、前記導電性溶射皮膜は、マグネタイトの溶射により形成することもできる。
前記目的に沿う第3の発明に係る低温用の溶射発熱体の製造方法は、絶縁性の立体、パイプ、及び板材のいずれか1つを基材としその表面に溶射処理により鉄酸化物の導電性溶射皮膜を形成する第1工程と、
前記導電性溶射皮膜を乾燥した後その表面上にシリコーン樹脂を塗布して、該導電性溶射皮膜の酸化を防止すると共に絶縁を行う絶縁保護皮膜を形成する第2工程とを有する。
前記目的に沿う第4の発明に係る低温用の溶射発熱体の製造方法は、導電性の立体、パイプ、及び板材のいずれか1つを基材としその表面に溶射処理により絶縁溶射皮膜を形成する第1工程と、
前記絶縁溶射皮膜の表面上に溶射処理により鉄酸化物の導電性溶射皮膜を形成する第2工程と、
前記導電性溶射皮膜を乾燥した後その表面上にシリコーン樹脂を塗布して、該導電性溶射皮膜の酸化を防止すると共に絶縁を行う絶縁保護皮膜を形成する第3工程とを有する。
前記目的に沿う第5の発明に係る加熱装置は、第1及び第2の発明に係る低温用の溶射発熱体を加熱源として使用する。
請求項1〜記載の低温用の溶射発熱体においては、導電性溶射皮膜が鉄酸化物の均一組織となって電流が導電性溶射皮膜中を一様に流れることができ、均一に発熱することが可能になる。
請求項記載の低温用の溶射発熱体においては、産業廃棄物であるミルスケールを溶射材料として使用するので、ミルスケールの有効利用を図ると共に、溶射発熱体を安価に製造することが可能になる。
請求項4及び5記載の低温用の溶射発熱体の製造方法においては、導電性溶射皮膜は鉄酸化物の均一組織となるので導電性溶射皮膜中を電流が一様に流れ、均一に発熱する溶射発熱体を製造することが可能になる。
請求項記載の加熱装置においては、均一に発熱する溶射発熱体が容易に得られるので、利用範囲の広い、例えば、暖房用ヒータや暖房用便座等の加熱装置を作製することが可能になる。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1(A)は本発明の一実施の形態に係る加熱装置の低温用の溶射発熱体の断面図、(B)は(A)の領域Pの拡大図である。
図1(A)、(B)に示すように、本発明の一実施の形態に係る加熱装置10は、例えば、暖房用に循環する温水を加熱するもので、低温用の溶射発熱体11と、低温用の溶射発熱体11の表面温度が所定の値になるように電力を供給する図示しない温度制御手段と、低温用の溶射発熱体11の表面温度を測定する温度計測手段の一例である熱電対12とを有している。以下、これらについて詳細に説明する。
低温用の溶射発熱体11は、低温用の溶射発熱体11の基材となる導電性のパイプの一例である銅管13と、銅管13の両端部を除いた外側表面上に形成される下地溶射皮膜14と、下地溶射皮膜14を介して銅管13の表面上に形成される絶縁溶射皮膜15と、両端部を除いた絶縁性溶射皮膜15の表面上に形成され、例えば、マグネタイトを主体としウスタイト及びヘマタイトを含有する鉄酸化物の導電性溶射皮膜16と、導電性溶射皮膜16の両端部に形成される電極溶射皮膜17とを有している。
また、低温用の溶射発熱体11は、銅管13の両端部上、絶縁溶射皮膜15の両端部上、導電性溶射皮膜16の露出部上、及び電極溶射皮膜17の表面上に一体的に形成されて導電性溶射皮膜16の酸化を防止すると共に絶縁を行う絶縁保護皮膜18とを有している。更に、低温用の溶射発熱体11は、導電性溶射皮膜16に電流を流す対となる絶縁被覆された導線19と、導線19を電極溶射皮膜17の表面上の絶縁保護皮膜18の一部を除去して露出させた電極溶射皮膜17に固定したボンディング部材20(例えば、はんだ)を絶縁する封止部材21を有している。
温度制御手段には、例えば、溶射発熱体11の絶縁保護皮膜18の表面温度が設定温度を超えると導電性溶射皮膜16に流す電流を停止させ、表面温度が設定温度以下の場合は導電性溶射皮膜16に電流を流すような制御を行う温度調節器を使用することができる。ここで、表面温度と設定温度との差が大きな場合は導電性溶射皮膜16に流す電流値を大きく、差が小さくなると導電性溶射皮膜16に流す電流値を小さくするようにすると、制御精度を向上することができる。また、熱電対12としては、例えば、絶縁保護皮膜18の表面温度が−20〜300℃の範囲では、T型熱電対(熱電対素線が銅及びコンスタンタン)を使用する。
続いて、低温用の溶射発熱体11の製造方法について説明する。先ず、銅管13と導電性溶射皮膜16との間の絶縁を行う絶縁溶射皮膜15を、例えば、アルミナ粉末を溶射材料としてプラズマ溶射処理で形成する場合、絶縁溶射皮膜15を形成する前に、下地溶射皮膜14をプラズマ溶射処理で形成する。これによって、絶縁溶射皮膜15を銅管13の外表面上に強固に形成することができる。
ここで、絶縁溶射皮膜15がアルミナ質なので、下地溶射皮膜14は、例えば、ニッケルとアルミニウムの合金粉末を溶射材料に用いて形成する。なお、下地溶射皮膜14の膜厚は、例えば0.03〜0.08mmである。膜厚が0.03mm未満の場合、下地溶射皮膜14が連続した均質な皮膜とならず、絶縁溶射皮膜15を銅管13の外表面上に強固に形成することができない。そして、膜厚が0.08mmを超えると、銅管13と下地溶射皮膜14との間の熱膨張差により、下地溶射皮膜14が銅管13から剥離し易くなるので好ましくない。また、アルミナ質の絶縁溶射皮膜15の膜厚は、例えば0.2〜0.5mmである。絶縁溶射皮膜15が0.2mm未満では銅管13との間の絶縁抵抗を所定値(例えば、20〜50MΩ)以上にするのが困難になり、絶縁溶射皮膜15が0.5mmを超えると銅管13に伝わる熱量が少なくなって好ましくない(以上、第1工程)。
次いで、絶縁溶射皮膜15の表面上に溶射処理により鉄酸化物の導電性溶射皮膜16を形成する。ここで、鉄酸化物として、マグネタイト(Fe34)を40重量%以上で90重量%以下含有する導電性溶射皮膜16を形成する場合、例えば、マグネタイトを30〜90重量%含有し、残部にウスタイト(FeO)及びヘマタイト(Fe23)を有する鋼材の圧延工程で排出されるミルスケールを溶射材料として、絶縁溶射皮膜15上にアルゴンガスを使用したプラズマ溶射を空気中で行う。そして、導電性溶射皮膜16の両端部に、導電性溶射皮膜16に電流を流す導線19を接続する電極溶射皮膜17を形成する。
ここで、電極溶射皮膜17に導線19を固定するボンディング部材20として、例えば、はんだを使用する場合、電極溶射皮膜17は銅粉末を溶射材料に用いて作製することができ、その厚みは、例えば0.03〜0.08mmである。電極溶射皮膜17の厚みが0.03mm未満では電極溶射皮膜17が連続した均質な皮膜とならず、導線19を強固に固定することができず好ましくない。一方、電極溶射皮膜17の厚みが0.08mmを超えると、導電性溶射皮膜16と電極溶射皮膜17との間の熱膨張差により、電極溶射皮膜17が導電性溶射皮膜16から剥離し易くなるので好ましくない(以上、第2工程)。
一般に、空気中でミルスケールをプラズマ溶射すると、ミルスケール中のウスタイト及びマグネタイトはそれぞれ酸化されるが、例えば、溶射距離(溶射ノズルの先端と絶縁溶射皮膜15表面との距離)を変えることで、溶射ノズルから噴出したミルスケールが絶縁溶射皮膜15に到達するまでの時間、すなわち、空気中を飛行して酸化を受ける時間を調整することができ、ウスタイトがマグネタイトに、マグネタイトがヘマタイトにそれぞれ酸化されて変化する割合を調整できる。従って、ミルスケール中でのウスタイト、マグネタイト、及びヘマタイトの各含有量(各鉄酸化物の組成比)、ミルスケールの粒度、及び溶射距離によるウスタイト及びマグネタイトの酸化割合の関係を予め求めておくと、導電性溶射皮膜16中の各鉄酸化物の組成比を所望の値にしようとする場合、溶射に使用するミルスケールの粒度と各鉄酸化物の組成比に対して、溶射距離をどの程度に設定すればよいかが判る。
例えば、ミルスケールの粒度が45〜100μmで、ミルスケール中のマグネタイトの含有量が30〜90重量%である場合、溶射距離を100〜250mmとすると、導電性溶射皮膜16中のマグネタイト含有量を40〜90重量%の範囲にすることができる。ここで、溶射距離を長くしてウスタイト及びマグネタイトの酸化を促進してヘマタイトの含有率を多くすると、導電性溶射皮膜16の電気抵抗率を大きくすることができ、ウスタイトの含有率の高いミルスケールを溶射材とし溶射距離を短くしてヘマタイトの生成を抑制するとマグネタイトの含有量を多くすることができ、導電性溶射皮膜16の電気抵抗率を小さくすることができる。これによって、導電性溶射皮膜16の電気抵抗率を、例えば、0.01〜0.1Ω・cmの範囲で任意に調整することができる。
そして、導電性溶射皮膜16の電気抵抗率が0.01〜0.1Ω・cmの範囲であると、使用する銅管13の外径に応じて導電性溶射皮膜16の長さ及び厚みを調整することにより、実用電圧電源(100V又は200V)で所望の電力密度を有する(所望の電気抵抗値を有する)溶射発熱体11を作成することができる。
導電性溶射皮膜16の両端部における電極溶射皮膜17の形成が終了すると、導電性溶射皮膜16の絶縁と加熱時の導電性溶射皮膜16の酸化を防止するため、銅管13の両端部上、絶縁溶射皮膜15の両端部上、導電性溶射皮膜16の露出部上、及び電極溶射皮膜17の表面上に一体的に絶縁保護皮膜18を形成する。なお、絶縁保護皮膜18は、例えば、シリコーン樹脂を塗布することにより形成する。
ここで、アルミナの溶射により形成した絶縁溶射皮膜15は一般に多孔質となるので、銅管13上に下地溶射皮膜14〜電極溶射皮膜17までを形成した状態の中間製品を空気中に放置しておくと、空気中の水分(水蒸気)が絶縁溶射皮膜15の孔内に侵入して、絶縁溶射皮膜15の絶縁抵抗が低下し絶縁性能が低下する。このため、中間製品を100〜150℃に加熱して、絶縁溶射皮膜15の孔内に侵入した水分を蒸発させてからシリコーン樹脂を塗布する。これによって、絶縁保護皮膜18が形成されると共に、絶縁溶射皮膜15中の孔がシリコーン樹脂で塞がれ、絶縁溶射皮膜15の絶縁抵抗を高い状態で維持できる。なお、絶縁溶射皮膜15中の孔をシリコーン樹脂で確実に塞ぐため、始めに低粘性のシリコーン樹脂を塗布し、順次粘性の高いシリコーン樹脂に変えながら複数回塗布するようにするのがよい(以上、第3工程)。
そして、電極溶射皮膜17の表面上の絶縁保護皮膜18の一部を除去して露出させ露出した電極溶射皮膜17に導線19をボンディング部材20を用いて固定し、ボンディング部材20を絶縁するためにボンディング部材20の上に封止部材21を塗布する。
[実施例1]
粒度が45〜100μmで、表1に示す鉄酸化物の組成割合を有するミルスケールを溶射材料とし、アルミナ板の基材に空気中でアルゴンガスを使用したプラズマ溶射により溶射距離を170mmに設定して厚み100μmの溶射皮膜を形成し、溶射皮膜の電気抵抗と鉄酸化物の組成をそれぞれ測定した。溶射皮膜中の鉄酸化物の組成割合を表1に併せて示す。また、溶射皮膜の電気抵抗から求めた電気抵抗率を表2に示す。
表2に示すように、溶射皮膜の電気抵抗率は0.057Ω・cmとなり、溶射皮膜の厚みを調整することで実用電圧電源(100V又は200V)で所望の電力密度を得ることができる。また、形成された溶射皮膜の組成は、表1に示すように、ウスタイトを22.7重量%、マグネタイトを74.7重量%、及びヘマタイトを2.6重量%含有する均質な組織となった。
Figure 0004807681
Figure 0004807681
比較例1として酸化ニッケル粉末を、比較例2として酸化ニッケル30重量%及びヘマタイト70重量%の混合粉末を、アルミナ板の基材に空気中でアルゴンガスを使用したプラズマ溶射して100μmの厚みの溶射皮膜をそれぞれ形成した。そして、各溶射皮膜の電気抵抗を測定して電気抵抗率を求めた。その結果を表2に示す。
表2に示すように、酸化ニッケルの溶射皮膜の電気抵抗率は0.006Ω・cmと小さく、低電圧を使用しないと所望の電力密度を得ることができず、実用電圧電源が使用できないことから実用的でない。また、実用電圧電源で所望の電力密度を得ようとすると、溶射皮膜の厚みを溶射では管理できない厚さにすることが要求され、製造の観点から実用的でない。また、酸化ニッケル30重量%ヘマタイト70重量%の混合粉末を使用した溶射皮膜では、絶縁物質であるヘマタイトが含まれるため、電気抵抗率を0.024Ω・cmとすることができるが、酸化ニッケルとヘマタイトは比重差及び融点差が大きいため、形成された溶射皮膜は不均質となって発熱体としての品質が維持できない。
[実施例2]
外径が19mm、長さが400mm、肉厚が0.9mmの銅管内に水を通過させながら加熱して出口で必要温度にする加熱装置に加熱源として使用する使用電圧が200Vで電力密度が10W/cm2の溶射発熱体(導電性溶射皮膜の目標電気抵抗値は18〜20Ω)を作製した。
先ず、銅管の長手方向の中心を挟んで両側に165mmの範囲にニッケルとアルミニウムの合金粉末を溶射材として厚さ0.05mmの下地溶射皮膜を形成した。次いで、ニッケルとアルミニウムの合金層の下地溶射皮膜の上にアルミナを溶射材として厚さ0.3mmの絶縁溶射皮膜を形成し、アルミナの絶縁溶射皮膜上で銅管の長手方向の中心を挟んで両側に150mmの範囲でミルスケールを溶射して導電性溶射皮膜を形成した。なお、溶射材として使用するミルスケールは粒度が10〜88μmで、ウスタイトを36.6重量%、マグネタイトを58.5重量%、及びヘマタイトを4.9重量%含有したものであり、アルゴンプラズマ溶射を行う際の溶射距離を170mmと設定した。このため、得られる導電性溶射皮膜の電気抵抗率は0.057Ω・cmと推定できるので、導電性溶射皮膜の厚みを0.13mmとした。
更に、導電性溶射皮膜上で両端から10mmの範囲に銅を溶射材として厚さ0.05mmの電極溶射皮膜をそれぞれ形成した。そして、電極溶射皮膜まで形成した溶射発熱体の中間製品を100〜150℃の温度で乾燥させてから外表面側にシリコーン樹脂を塗布することにより絶縁保護皮膜を形成した。ここで、シリコーン樹脂の塗布では、始めに低粘性のシリコーン樹脂を塗布して、順次粘度の高いシリコーン樹脂を塗布した。
続いて、各電極溶射皮膜上の絶縁保護皮膜の一部を除去してはんだにより導線を固定し、はんだ及び露出した電極溶射皮膜の上にシリコーン樹脂を塗布して絶縁を行った。完成した溶射発熱体の導電性溶射皮膜の実測電気抵抗は、目標電気抵抗値の±5%の管理範囲内の値を示した。また、導線と銅管の間の電気抵抗は20MΩを超え、実質的に絶縁状態となっている。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の低温用の溶射発熱体及びその製造方法並びにそれを用いた加熱装置を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
例えば、導電性溶射皮膜をミルスケールの溶射により形成したが、マグネタイトの溶射により形成することもできる。
溶射発熱体の基材として銅パイプを使用したが、銅以外の金属パイプを基材として使用することも、金属板材を使用することもできる。また、セラミックスや耐熱性プラスチックで作製された絶縁性のパイプや板材を基材として使用することもできる。なお、絶縁性のセラミックや耐熱性プラスチックを基材として使用した場合、基材に下地溶射皮膜を介して導電性溶射皮膜を、あるいは導電性溶射皮膜を基材の上に直接形成することができる。更に、球体、中空の球体、錐体、中空の錐体、多面体、及び中空の多面体のいずれか1からなる立体を基材としてその外側表面に導電性溶射皮膜を形成することも、パイプ、球体、中空の球体、錐体、中空の錐体、多面体、及び中空の多面体を基材としてその内側表面に導電性溶射皮膜を形成することもできる。
(A)は本発明の一実施の形態に係る加熱装置の低温用の溶射発熱体の断面図、(B)は(A)の領域Pの拡大図である。
10:加熱装置、11:低温用の溶射発熱体、12:熱電対、13:銅管、14:下地溶射皮膜、15:絶縁溶射皮膜、16:導電性溶射皮膜、17:電極溶射皮膜、18:絶縁保護皮膜、19:導線、20:ボンディング部材、21:封止部材

Claims (6)

  1. 絶縁性の立体、パイプ、及び板材のいずれか1つを基材としその表面に溶射処理形成された鉄酸化物の導電性溶射皮膜と、
    前記導電性溶射皮膜の表面上に塗布されたシリコーン樹脂からなって、該導電性溶射皮膜の酸化を防止すると共に絶縁を行う絶縁保護皮膜とを有することを特徴とする低温用の溶射発熱体。
  2. 導電性の立体、パイプ、及び板材のいずれか1つを基材としその表面に溶射処理形成された絶縁溶射皮膜と、
    前記絶縁溶射皮膜の表面上に溶射処理形成された鉄酸化物の導電性溶射皮膜と、
    前記導電性溶射皮膜の表面上に塗布されたシリコーン樹脂からなって、該導電性溶射皮膜の酸化を防止すると共に絶縁を行う絶縁保護皮膜とを有することを特徴とする低温用の溶射発熱体。
  3. 請求項1又は2記載の低温用の溶射発熱体において、前記導電性溶射皮膜は、鋼材の圧延工程で排出されるミルスケールの溶射により形成され、抵抗率が0.01〜0.1Ω・cmの範囲にあることを特徴とする低温用の溶射発熱体。
  4. 絶縁性の立体、パイプ、及び板材のいずれか1つを基材としその表面に溶射処理により鉄酸化物の導電性溶射皮膜を形成する第1工程と、
    前記導電性溶射皮膜を乾燥した後その表面上にシリコーン樹脂を塗布して、該導電性溶射皮膜の酸化を防止すると共に絶縁を行う絶縁保護皮膜を形成する第2工程とを有することを特徴とする低温用の溶射発熱体の製造方法。
  5. 導電性の立体、パイプ、及び板材のいずれか1つを基材としその表面に溶射処理により絶縁溶射皮膜を形成する第1工程と、
    前記絶縁溶射皮膜の表面上に溶射処理により鉄酸化物の導電性溶射皮膜を形成する第2工程と、
    前記導電性溶射皮膜を乾燥した後その表面上にシリコーン樹脂を塗布して、該導電性溶射皮膜の酸化を防止すると共に絶縁を行う絶縁保護皮膜を形成する第3工程とを有することを特徴とする低温用の溶射発熱体の製造方法。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の低温用の溶射発熱体を加熱源として使用することを特徴とする加熱装置。
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