JP4798350B2 - 磁気共鳴法を用いて試料中のプロトン性溶媒の挙動の分布を測定する測定装置、測定方法およびプログラム - Google Patents

磁気共鳴法を用いて試料中のプロトン性溶媒の挙動の分布を測定する測定装置、測定方法およびプログラム Download PDF

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Description

本発明は、磁気共鳴法を用いて試料中のプロトン性溶媒の挙動の分布を測定する技術に関する。
ある種の機能材料においては、材料中の溶媒分子の移動がその材料の性能を支配することがある。このような材料の設計開発時に、または、その材料を使用した装置が稼動している時に、溶媒分子の移動のしやすさや、溶媒量を局所的に計測することが重要な技術的課題となる。
こうした機能材料の例として、燃料電池に用いられる固体高分子電解質膜が挙げられる。
固体高分子電解質膜を用いた燃料電池では、発電特性や効率が固体高分子電解質膜のイオン伝導性に強く依存する。発電特性を高く維持するためには、固体高分子電解質膜のイオン導電性を高く維持する必要がある。膜のイオン導電性は、膜内で水素イオンが移動することで引き起こされる。水素イオンは単独で膜内を移動するのではなく、その周囲に数個の水分子を配置し、極性を持つ水分子によって電荷を相殺させて、安定に水素イオンが膜内で存在できるように保護させながら、膜内を水分子と共に移動する。水素イオンとともに移動する水分子は「随伴水」と呼ばれ、固体高分子電解質膜のイオン導電性を高く保つために重要な役割を担っている。これら固体高分子電解質膜内の輸送機構より、固体高分子電解質膜内のイオン伝導性は、膜が含有する水分子(プロトン性溶媒)の量(膜の湿潤量)と、膜内での水分子の移動のしやすさ(易動性)によって決定されることが知られている。
従来、水分量、水分子の易動性を測定する方法としては、磁気共鳴(NMR)法を用い、試料全体を計測して平均した「水分子の量」および「水分子の自己拡散係数」を測定する方法が採用されていた(非特許文献1参照)。
しかしながら、この方法では、試料全体での水分量、水分子の易動性しか把握することができず、局所的な測定ができなかった。
そこで、水分子の量を局所的に測定する技術及び、水分子の易動性を局所的に測定する技術が提案されている(特願2005-118138、特願2005−113977)。
この技術では、試料よりも、小さい小型RFコイル使用し、水分量、水分子の易動性の局所的な測定が可能となっている。また、小型RFコイルを複数使用することで、水分量や、水分子の易動性の分布も把握することができるとされている。
燃料電池などでは、燃料や空気が供給される上流側と、これらが排出される下流側とで、発電状況が異なるため、固体高分子電解質膜の上流側から下流側に向かって、水分量、水分子の易動性の分布が生じることとなる。
このような分布を把握し、固体高分子電解質膜の状態を正確に把握することができれば、燃料や、水蒸気の供給量等を最適に制御することができ、燃料電池の性能を向上させることができると期待されている。
E.O. Stejskal and J.E. Tanner、「Spin diffusion measurements: Spin Echoes in the Presence of a Time−Dependent Field Gradient」、Journal of chemical physics、vol.42、No.1、1965、pp.288−292
このように、水分量の分布、水分子の易動性の分布等のプロトン性溶媒の挙動の分布(例えば、水分量、水分子の易動性の空間的な分布や、前記空間的な分布の時間変化)をより正確に把握することが望まれているが、前述した技術では、こうした要求に応えることが困難である。
磁気共鳴法を用いて試料中のプロトン性溶媒の挙動を正確に把握するには、計測対象となる核種や、電子スピンの共鳴周波数(磁気共鳴周波数)に合わせて、磁気共鳴信号を取得することが重要である。すなわち、計測対象となる核種や、電子スピンの共鳴周波数に合わせて、磁気共鳴信号を取得することで、正確な計測が行なえると考えられる。
ここで、計測対象となる核種や、電子スピンの共鳴周波数は、静磁場強度に依存して変化する。静磁場強度は完全に均一ではなく、小型RFコイルの設置位置に依存して変化する。すなわち、複数の小型RFコイルが異なる位置に設置されれば、各小型RFコイルの設置位置毎に、核磁化や、電子スピンの共鳴周波数が異なる。
また、永久磁石等の温度変化が生じやすい磁石によって静磁場が試料に印加されているのであれば、磁石の温度変化によって静磁場強度が増減し、それに伴って、共鳴周波数も増減する。磁石の温度上昇は静磁場強度を低下させ、これにより共鳴周波数も低下する。温度調整機能を持たない永久磁石では、磁石の置かれた環境温度に依存して磁石温度が変化し、磁場強度で1ppm/min程度の変動が生ずると考えられる。なかでも、200kg以下の小型の永久磁石では、磁石温度の変動に伴い、静磁場強度が大幅に変動することがある。
さらに、電磁石等の磁石を使用した場合には、コイルの発熱等の抵抗値の変化によって、電流量が変化し、静磁場強度が変動することがある。
前述した従来の技術では、こうした静磁場強度の分布や、静磁場強度の変動が考慮されていなかったため、プロトン性溶媒の挙動の分布をより正確に把握することが困難であったと推測される。
プロトン性溶媒の挙動の分布をより正確に把握するためには、各小型RFコイルが配置された位置における核磁化、電子スピンの共鳴周波数に応じた周波数のRFパルスを照射し、核磁化、電子スピンの共鳴周波数に応じた磁気共鳴信号を取得しなければならないと考えられる。
本発明の目的は、プロトン性溶媒の挙動の分布を正確に測定することができる測定装置、測定方法およびプログラムを提供することである。
本発明によれば、磁気共鳴法を用いて試料中のプロトン性溶媒の挙動の分布を測定する装置であって、
前記試料に対して静磁場を印加する静磁場印加部と、
前記試料に対して励起用振動磁場を印加するとともに、前記試料中の特定箇所で発生した磁気共鳴信号を取得する、前記試料よりも小さい複数の小型RFコイルと、
前記各小型RFコイルで取得した前記磁気共鳴信号に基づいて、プロトン性溶媒の挙動の分布を算出する演算部と、
前記演算部で算出したプロトン性溶媒の挙動の分布を出力する出力部と、
前記各小型RFコイルに前記励起用振動磁場を発生させるRFパルスを生成するRFパルス生成部と、を有し、
前記RFパルス生成部は、
所定の周波数の信号を発振する発振機と、
前記発振機の周波数を設定する設定部と、
前記発振機が発振した信号を変調し、RFパルスを生成する変調器と、を備え、
前記設定部は、前記試料に対し、前記静磁場を印加した際の、一の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数と、他の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数との相関関係を記憶する相関関係記憶部と、
前記試料に対し、前記静磁場を印加した際の、前記一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を算出する周波数算出部と、
前記周波数算出部で算出した前記一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数と、前記相関関係記憶部に記憶された前記相関関係とに基づいて、他の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を予測する予測部と、を備え、
前記設定部は、前記試料に対し前記静磁場印加部により前記静磁場を印加した際の各小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数に、前記発振機の周波数を、同調させて、前記発振機の周波数を設定し、
前記変調器は、前記設定部によって周波数が設定された前記発振機から発振された信号を変調し、前記設定部により設定された前記周波数のRFパルスを生成することを特徴とする測定装置が提供される。
このような本発明によれば、試料に静磁場を印加した状態において、各小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数に同調させて、発振機の周波数を設定する設定部を備えている。そのため、各小型RFコイルから、各小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数に応じた周波数のRFパルスを照射することができる。
これにより、各小型RFコイルを介して、各小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数に応じた磁気共鳴信号を取得することができ、プロトン性溶媒の挙動の分布を正確に把握することができる。
また、静磁場が印加された試料の各小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数に基づいて、手動で、発振機の周波数を設定することもできるが、各小型RFコイルに対し、手動で発振機の周波数を調整し、設定していたのでは、手間を要する。
これに対し、本発明の測定装置は、静磁場を印加した際の各小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数に同調させて、発振機の周波数を設定する設定部を備えているため、周波数の設定に手間を要しない。
ここで、本発明により測定される「プロトン性溶媒の挙動」としては、例えば、プロトン性溶媒量、プロトン性溶媒の易動性、プロトン性溶媒の移動量が挙げられる。
また、「易動性」とは、試料中におけるプロトン性溶媒の移動のしやすさを表す物性値をいう。こうした物性値としては、自己拡散係数、および移動度(移動速度)等のパラメータが挙げられる。
また、本明細書において、プロトン性溶媒とは、自分自身で解離してプロトンを生じる溶媒をいう。プロトン性溶媒としては、たとえば、水;
メタノールおよびエタノール等のアルコール;
酢酸等のカルボン酸;
フェノール;
液体アンモニア;
が挙げられる。このうち、プロトン性溶媒を水やアルコールとした場合には、プロトン性溶媒量、プロトン性溶媒の易動性等のプロトン性溶媒の挙動をより、安定的に測定することができる。
また、本発明では、各小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数に同調させて、発振機の周波数を設定するが、発振機の周波数は、磁気共鳴周波数と完全に一致していなくてもよく、例えば、測定値の信頼性に影響を及ぼさない程度のずれ、例えば、10Hz程度のずれは許容される。
本発明における「磁気共鳴法」とは、核磁気共鳴法(NMR)および電子スピン共鳴法(ESR)の両方を含むものである。このうち、核磁気共鳴を利用する測定を用いれば、実施形態の項で後述するように試料中の特定箇所のプロトン性溶媒の挙動を安定的に測定することができる。
また、本発明における「磁気共鳴周波数」とは、核磁化の共鳴周波数、あるいは、電子スピンの共鳴周波数のことをいう。
さらに、本発明における「プロトン性溶媒の挙動の分布」とは、例えば、ある時刻の各小型RFコイルの設置位置におけるプロトン性溶媒の挙動を示す空間的な分布であってもよく、さらには、各小型RFコイルの設置位置におけるプロトン性溶媒の挙動の時間変化を示す分布であってもよい。
この際、前記設定部は、前記試料に対し、前記静磁場を印加した状態における、少なくとも一の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数の経時変化を記憶する第一の記憶部と、
前記試料に対し前記静磁場を印加した際の、少なくとも前記一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を算出する周波数算出部と、
前記第一の記憶部に記憶された磁気共鳴周波数の経時変化と、前記周波数算出部で算出した所定の時刻における少なくとも前記一の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数とから、プロトン性溶媒の挙動の測定時刻における少なくとも前記一の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数を推測する推測部と、
を備えること
が好ましい。
前述したように、永久磁石等の温度変化が生じやすい磁石により、静磁場を印加するような場合には、時間の経過に伴う磁石の温度変化により、静磁場強度が増減し、磁気共鳴周波数が変動する。
また、電磁石等の磁石を使用した場合には、コイルの発熱等の抵抗値の変化によって、電流量が変化し、静磁場強度が変動することがある。
静磁場強度の変動が大きいような場合には、すべての小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を把握した後、プロトン性溶媒の挙動の測定を行おうとすると、小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数を把握した時点における磁気共鳴周波数と、測定時における磁気共鳴周波数とが大きく異なってしまう。そのため、正確な測定を行なうことができない。
これに対し、本発明では、推測部を設けているため、第一の記憶部に記憶された磁気共鳴周波数の経時変化と、周波数算出部で算出した所定の時刻における一の小型RFコイルの位置の磁気共鳴周波数とから、プロトン性溶媒の挙動の測定時刻における一の小型RFコイルの位置の磁気共鳴周波数を推測することができる。そのため、プロトン性溶媒の挙動の測定時刻における磁気共鳴周波数を正確に把握することができる。これにより、測定時刻における一の小型RFコイルの位置の磁気共鳴周波数に応じた周波数のRFパルスを照射することができるので、より正確に、プロトン性溶媒の挙動を把握することができる。
この際、前記設定部は、前記試料に対し、前記静磁場を印加した際の、一の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数と、他の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数との相関関係を記憶する相関関係記憶部と、
前記試料に対し、前記静磁場を印加した際の、前記一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を算出する周波数算出部と、
前記周波数算出部で算出した前記一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数と、前記相関関係記憶部に記憶された前記相関関係とに基づいて、他の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を予測する予測部と、を備えるものであ
ここで、一の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数と、他の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数との相関関係とは、一の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数と、他の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数との差や、その比率を示す関係のことである。この相関関係により、一の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数を把握すれば、他の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数を把握することができる。
例えば、前記相関関係は、一の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数と、他の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数との関係を示す関数であってもよい。
また、本発明の予測部では、一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数と、前記相関関係とを使用して、他の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を算出する。
このように、一の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数と、他の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数との相関関係を相関関係記憶部に記憶しておけば、周波数算出部において、一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を算出した後、一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数と、相関関係記憶部に記憶された前記相関関係とに基づいて、他の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を予測することができる。
これにより、他の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を迅速に把握することができ、発振機の周波数の設定に時間を要しない。
ここで、前記相関関係記憶部には、あらかじめ、前記試料に対して静磁場を印加した際の静磁場強度分布が記憶されており、
前記相関関係記憶部に記憶された前記静磁場強度分布に基づいて、前記試料の磁気共鳴周波数分布を算出する共鳴周波数分布算出部を有し、
前記共鳴周波数分布算出部で算出された前記試料の磁気共鳴周波数分布を、前記相関関係として、前記相関関係記憶部に記憶することが好ましい。
静磁場印加部の静磁場強度分布は、一般に、静磁場印加部を作製する際に予め把握されていることが多い。この静磁場強度分布から試料の磁気共鳴周波数分布を容易に算出することができるので、試料の磁気共鳴周波数分布を容易に把握することができる。
この際、前記設定部は、前記試料に対し、前記静磁場を印加した際の少なくとも前記一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を算出する周波数算出部を有し、
前記発振機から所定の周波数の信号を発振し、前記一の小型RFコイルから前記試料に対して励起用振動磁場を印加した際に、
前記周波数算出部は、前記一の小型RFコイルを介して磁気共鳴信号を取得し、
取得した前記磁気共鳴信号の虚部あるいは実部の周波数を算出し、
虚部あるいは実部の周波数と、前記発振機から発振された前記信号の周波数とに基づいて、少なくとも前記一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を算出することが好ましい。
ここでは、周波数算出部は、発振機から発振されたある周波数の基本波(発振機から発振される所定の周波数の信号)によって検波された後の磁気共鳴信号を取得している。発振機の周波数と、一の小型RFコイルの設置位置での静磁場強度で決まる磁気共鳴周波数(一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数)とに差がある場合には、取得される磁気共鳴信号に、その周波数差が見られる。この周波数差は、虚部と実部の成分を表す波形が時間軸である横軸と交差して、回転または振動しているような様子として見られる。
従って、周波数算出部で取得した磁気共鳴信号の虚部と実部を表す波形が時間軸と交差する様子(磁気共鳴信号の虚部あるいは実部の周波数)から、発振機が発振している周波数と、静磁場強度で決まる磁気共鳴周波数との差を算出することができる。
これにより、一の小型RFコイルの設置位置での静磁場強度で決まる磁気共鳴周波数(一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数)を算出することができる。
なお、発振機の周波数と、一の小型RFコイルの設置位置での静磁場強度で決まる磁気共鳴周波数とに差がない場合には、磁気共鳴信号は回転または振動していないように見える。
さらに、前記プロトン性溶媒の挙動は、プロトン性溶媒量、プロトン性溶媒の易動性、プロトン性溶媒の移動量のうちの少なくともいずれか一つであることが好ましい。
ここで、プロトン性溶媒の移動量は、プロトン性溶媒量と、プロトン性溶媒の易動性とに基づいて算出される。
この構成によれば、少なくともプロトン性溶媒量、プロトン性溶媒の易動性、プロトン性溶媒の移動量の分布を把握することができる。
さらに、この際、前記プロトン性溶媒の挙動は、プロトン性溶媒量およびプロトン性溶媒の易動性のうち、少なくともいずれか一方であり、
前記試料に対して、勾配磁場を印加する勾配磁場印加部と、
前記試料中のプロトン性溶媒量を測定する第一の測定モードと、前記試料中のプロトン性溶媒の易動性を測定する第二の測定モードとを含む複数の測定モードのうちいずれかを選択するモード選択部と、
前記モード選択部により選択された測定モードに応じて前記小型RFコイルおよび前記勾配磁場印加部の動作を制御する制御部と、を有し、
前記演算部は、前記第一の測定モードにおいて取得された磁気共鳴信号に基づいて前記試料中のプロトン性溶媒量を算出する第一の算出部と、
前記第二の測定モードにおいて取得された磁気共鳴信号に基づいて前記試料中のプロトン性溶媒の易動性を算出する第二の算出部と、を有し、
前記制御部は、
前記第一の測定モードにあるとき、前記試料に対し、前記小型RFコイルにより励起用振動磁場を印加するとともに、前記励起用振動磁場に対応して前記特定箇所に発生する磁気共鳴信号を前記小型RFコイルにより取得し、
前記第二の測定モードにあるとき、前記試料に対し、前記小型RFコイルにより励起用振動磁場を印加するとともに前記勾配磁場印加部により勾配磁場を印加し、これらの磁場に対応して発生する磁気共鳴信号を前記小型RFコイルにより取得するように構成されたことが好ましい。
この構成によれば、プロトン性溶媒量を測定する測定モードでは、試料よりも小さい複数の小型RFコイルを用いて、プロトン性溶媒量の分布を測定することができる。また、易動性を測定する測定モードにおいても、勾配磁場印加部及び小型RFコイルを使用して、易動性の分布を測定することができる。
これに加え、同じ小型RFコイルを使用して、プロトン性溶媒量と、プロトン性溶媒の易動性の測定を行なっており、プロトン性溶媒量と、プロトン性溶媒の易動性とを試料の同じ位置で計測することができる。これによりプロトン性溶媒量と、プロトン性溶媒の易動性とに基づいて、試料のプロトン性溶媒の挙動の分布を正確に把握することができる。
本発明は、測定装置としてのみでなく、測定方法、プログラムとしても成立しうるものである。
すなわち、本発明によれば、試料に対して静磁場を印加する静磁場印加部と、前記試料に対して励起用振動磁場を印加するとともに、前記試料中の特定箇所で発生した磁気共鳴信号を取得する、前記試料よりも小さい複数の小型RFコイルと、前記小型RFコイルで取得した前記磁気共鳴信号に基づいて、プロトン性溶媒の挙動を算出する演算部と、所定の周波数の信号を発振する発振機、前記発振機の周波数を設定する設定部および前記発振機からの信号を変調してRFパルスを生成する変調器を有し、前記各小型RFコイルに前記励起用振動磁場を発生させるためのRFパルスを生成するRFパルス生成部と、を有し、前記RFパルス生成部の設定部は、前記試料に対し、前記静磁場を印加した際の、一の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数と、他の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数との相関関係を記憶する相関関係記憶部と、前記試料に対し、前記静磁場を印加した際の、前記一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を算出する周波数算出部と、前記周波数算出部で算出した前記一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数と、前記相関関係記憶部に記憶された前記相関関係とに基づいて、他の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を予測する予測部と、を備えた測定装置を使用して、試料中のプロトン性溶媒の挙動の分布を測定する測定方法であって、
前記試料に対し、前記静磁場印加部から静磁場を印加する工程と、
前記RFパルス生成部の設定部により、前記発振機の周波数を、前記静磁場が印加された前記試料の各小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数に同調させて、前記発振機の周波数を設定する工程と、
発振機の周波数を設定する前記工程において設定された周波数の信号を前記発振機から発振し、前記発振機からの信号を前記変調器により変調してRFパルスを生成し、前記各小型RFコイルに対し、各小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数に対応した周波数のRFパルスを送出する工程と、
前記各小型RFコイルから、前記試料に対して、励起用振動磁場を印加する工程と、
前記各小型RFコイルを介して、試料中の特定箇所で発生した磁気共鳴信号を取得する工程と、
取得した前記磁気共鳴信号に基づいて、演算部により、前記試料中のプロトン性溶媒の挙動の分布を算出する工程とを含むことを特徴とする測定方法が提供される。
また、本発明によれば、試料に対して静磁場を印加する静磁場印加部と、前記試料に対して励起用振動磁場を印加するとともに、前記試料中の特定箇所で発生した磁気共鳴信号を取得する、前記試料よりも小さい複数の小型RFコイルと、前記小型RFコイルで取得した前記磁気共鳴信号に基づいて、プロトン性溶媒の挙動を算出する演算部と、所定の周波数の信号を発振する発振機、前記発振機の周波数を設定する設定部および前記発振機からの信号を変調してRFパルスを生成する変調器を有し、前記各小型RFコイルに前記励起用振動磁場を発生させるためのRFパルスを生成するRFパルス生成部と、を有し、前記RFパルス生成部の設定部は、前記試料に対し、前記静磁場を印加した際の、一の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数と、他の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数との相関関係を記憶する相関関係記憶部と、前記試料に対し、前記静磁場を印加した際の、前記一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を算出する周波数算出部と、前記周波数算出部で算出した前記一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数と、前記相関関係記憶部に記憶された前記相関関係とに基づいて、他の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を予測する予測部と、を備えた測定装置を制御して、試料中のプロトン性溶媒の挙動の分布を測定するプログラムであって、
前記試料に対し、前記静磁場印加部から静磁場を印加する工程と、
前記RFパルス生成部の設定部により、前記発振機の周波数を、前記静磁場が印加された前記試料の各小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数に同調させて、前記発振機の周波数を設定する工程と、
発振機の周波数を設定する前記工程において設定された周波数の信号を前記発振機から発振し、前記発振機からの信号を前記変調器により変調してRFパルスを生成し、前記各小型RFコイルに対し、各小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数に対応した周波数のRFパルスを送出する工程と、
前記各小型RFコイルから、前記試料に対して、励起用振動磁場を印加する工程と、
前記各小型RFコイルを介して、試料中の特定箇所で発生した磁気共鳴信号を取得する工程と、
取得した前記磁気共鳴信号に基づいて、演算部により、前記試料中のプロトン性溶媒の挙動の分布を算出する工程とを実行させることを特徴とするプログラムも提供される。
本発明によれば、プロトン性溶媒の挙動の分布を正確に測定することができる測定装置、測定方法およびプログラムが提供される。
(測定原理)
はじめに、後述する各実施形態における水分量(プロトン性溶媒量)及び水分子の移動のしやすさ(易動性)の分布の測定原理について、例を挙げて説明する。
なお、ここでは、核磁気共鳴法を用いた水分量、易動性分布の測定原理を例にあげて説明する。
以下の(A)の第一のモードと、(B)の第二のモードとを切り替えて計測することで、試料の水分量及び水分子の移動のしやすさ(易動性)の分布を得ることができる。また、以下の(C)を実施することで、試料における水分子の移動量の分布を得ることができる。
(A)CPMG(Carr-Purcell-Meiboom-Gill)法により、T緩和時定数を算出し、その後、「Tと水分量」の換算表を用いて試料の局所的な水分量を算出し、水分量の分布を把握する。
(B)勾配磁場を印加してPGSE(Pulsed-Gradient Spin-Echo)法による水分子の自己拡散係数を計測することにより、試料の局所的な水分子の易動性を算出し、水分子の易動性の分布を把握する。
(C)さらに、必要に応じて、前記(A)と、前記(B)とから算出された水分量及び易動性に基づいて、水分子の移動量の分布を算出することができる。
まず、水分量の算出について説明する。
(A)水分量の算出
図1は、水分量の算出の概要を示すフローチャートである。
まず、はじめに、試料を磁石が配置された空間に置き、試料に静磁場を印加する(S102)。
この状態で、試料に対して、小型RFコイルを介して、励起用振動磁場を印加し、これに対応するNMR信号(エコー信号)を取得する(S104)。励起用振動磁場は、試料内の計測対象核に照射する高周波パルスであり、NMR信号は、上記励起用振動磁場による核磁気共鳴現象によって試料内の計測対象核から放出された核磁気共鳴信号である。
次いで、このエコー信号からT緩和時定数を算定する(S106)。
このT緩和時定数から、試料中の局所的水分量を測定する(S108)。具体的には、試料中の水分量とT緩和時定数との相関関係を示すデータを取得し、このデータと上記T緩和時定数とから、試料中の特定箇所における局所的な水分量を求める。その後、結果を出力する(S110)。
このような操作(ステップ104〜ステップ110)を各小型RFコイルを介して行なうことで、水分量の分布を把握することができる。
以下にステップ104〜ステップ108について詳細に説明する。
(i)ステップ104(励起用高周波パルスの印加およびNMR信号の取得)
ステップ104について、以下、詳細に説明する。ステップ104では、試料に対し励起用高周波パルスを印加するが、この励起用高周波パルスは、複数のパルスからなるパルスシーケンスとし、これに対応するエコー信号群を取得するようにすることが好ましい。こうすることにより、T緩和時定数を正確に求めることができる。パルスシーケンスは、以下の(a)、(b)からなるものとすることが好ましい。
(a)90°パルス、および、
(b)(a)のパルスの時間τ経過後からはじまり、時間2τの間隔で印加されるn個の180°パルス
本実施形態では、CPMG法を用いて、T(横)緩和時定数を算出する。
静磁場中に置かれた水素原子核は静磁場に沿った方向(便宜上、Z方向とする)に正味の磁化ベクトルを持っている。特定の周波数(これを共鳴周波数と呼ぶ)のRF波を、外部からZ軸に垂直なX軸方向に沿って、照射することで磁化ベクトルはY軸の正方向に傾斜し、核磁気共鳴信号(NMR信号と呼ぶ)を観測することができる。
まず、磁化ベクトルを90°パルスによってY軸の正方向に傾斜させた後、τ時間後に「Y軸方向」に外部から180°励起パルスを照射して、磁化ベクトルを「Y軸を対称軸として」反転させる。この結果、2τ時間後には磁化ベクトルがY軸の「正の方向」上で収束し、大きな振幅を持つエコー信号が観測される。さらに、3τ時間後に磁化ベクトルに「Y軸方向」に外部から180°励起パルスを照射して、再度、Y軸の「正の方向」上で収束させて、4τ時間後に大きな振幅を持つエコー信号を観測する。さらに、同様の2τ間隔で、180°パルスを照射し続ける。この間、2τ,4τ,6τ,・・・の偶数番目のエコー信号のピーク強度を抽出し、指数関数でフィッティングすることで、CPMG法によるT(横)緩和時定数を算出することができる。
このように、本実施形態では、磁化ベクトルを「Y軸を対称軸として」反転させるため、以下の補償機能が発現する。図2は、本実施形態のパルスエコー法の補償機能を説明する図である。なお、図で示される座標は、回転座標系である。試料の中に、静磁場の不均一性が無視できるような小さな領域の核磁化として、PとQを考える。Pにおける磁場がQにおける磁場より強いものとする。このとき、図2(a)に示すように、90°パルスをx'軸方向へ印加すると、P、Qの核磁化は、回転座標系で同じ場所(y'軸)から歳差運動を始め、時間の経過とともに、Pの位相がQの位相より進んだものとなる(図2(b))。そこで、90°パルスから時間τ経過した時点でy'軸方向に180°パルスを印加すると、P、Qの核磁化はy'軸の周りに180°回転し、パルスを印加する前とy'軸に関して対称な配置になる(図2(c))。この配置では、より進んだ位相をもっていた核磁化Pが、逆にQより遅れた位相をもつため、これからさらに時間τ経過した時刻では、どちらの核磁化も同時にy′軸に達することになる(図2(d))。このような関係は、試料の中のあらゆる領域の核磁化について成り立つため、すべての核磁化は、この時刻にy'軸に集まり、その結果、大きなNMR信号が得られる。
以上のように、本実施形態では、はじめにx'軸方向へ90°パルスを印加し、次いでy'軸方向に180°パルスを印加しているため、図2(c)で示したように、P、Qの核磁化はx'y'平面内で反転する。この核磁化の反転により、補償機能が良好に発現する。たとえば、磁場の不均一性、RFコイルが照射する励起パルス強度の不均一性等の原因により、P、Qの位置がx'y'平面上方または下方の位置にずれた場合でも、x'y'平面内で核磁化が反転することにより、ずれが補償される。
(ii)ステップ106(T緩和時定数の測定)
緩和時定数は、スピンエコー法を利用することにより的確に測定することができる(図3)。
共鳴励起された磁化ベクトルM−yは時間と共に緩和していく。この際に実際に観測される磁気共鳴信号の時間変化は、スピン−格子緩和時定数T、スピン−スピン緩和T緩和時定数のみでは表すことができない別の時定数のT により緩和していく。この様子が図3の最下段に信号強度の時間変化として90°励起パルスの直後から示されている。T緩和による減衰曲線よりも実際に観測される減衰信号が速く減衰してしまう原因は静磁場マグネットの作る外部静磁場の不均一性、試料の磁気的性質や形状による試料内磁場の不均一性などにより試料の全体に渡って均一な磁場が確保されていないことによる。
この試料や装置特性としての磁場の不均一性による位相のずれを補正する方法として「スピンエコー」がある。これは90°励起パルスのτ時間後に、その2倍の励起パルス強度を持つ180°励起パルスを印加して、磁化ベクトルMの位相がxy平面上で乱れていく途中でその位相の乱れを反転させ、2τ時間後には位相を収束させてT減衰曲線上にのるエコー信号を得るという手法である。
スピンエコーを使用した際のエコー信号の強度SSEは、TR>>TEの場合には以下の式(A)で表される。
ここで、ρは位置(x,y,z)の関数としての対象核種の密度分布、TRは90°励起パルスの繰り返し時間(100msから10s程度)、TEはエコー時間(2t、1msから100ms程度)、AはRFコイル検出感度やアンプ等の装置特性を表す定数である。
減衰曲線上にのるエコー信号群と、上記式(A)からT緩和時定数を求めることができる。
(iii)ステップ108(水分量の測定)
ステップ108では、緩和時定数から水分量を算出する。試料中の水分量とT緩和時定数とは、正の相関を持つ。水分量の増加につれてT緩和時定数が増大する。この相関関係は、試料の種類や形態等により異なるので、あらかじめ、水分濃度がわかっている測定対象試料と同種の試料について検量線を作成しておくことが望ましい。すなわち、水分量が既知の複数の標準試料に対して水分量とT緩和時定数との関係を測定し、この関係を表す検量線をあらかじめ求めておくことが望ましい。このようにして作成した検量線を参照することで、T緩和時定数測定値から試料中の水分量を算出することができる。
次に、易動性の算出について説明する。
(B)易動性の算出
試料の特定箇所の易動性を局所的に測定するためには、PGSE(Pulsed−Gradient Spin−Echo)法を使用する。
液体分子内の特定の核スピンを磁気共鳴により励起させた後、数10msの間隔をおいて、一対の勾配磁場パルス(パルス状の勾配磁場)を印加すると、その間に個々の原子核がブラウン運動や、拡散により、移動して、核スピンの位相が収束しなくなるため、NMR信号の強度が低下する。段階的に変化させた勾配磁場パルスとNMR信号の強度の低下とを関連させることで、特定分子種の自己拡散係数を測定することができる。
図4は、自己拡散係数を計測するために用いるPGSEシーケンスの例を示す図である。図4におけるシーケンスでは、通常のスピンエコーシーケンスに、180°励起パルスを対称軸として、印加時間と強度が等しい一対の勾配磁場パルスGzをz方向に加えて、NMR信号として、たとえばスピンエコー信号を取得する。NMR信号のピーク強度Sは、印加するパルス勾配磁場強度Gz[gauss/m]、印加時間d、パルス間隔Δに依存し、以下のような関係式でz方向の自己拡散係数Dz[m2/s]と関係付けられる。
ln(S/S0)=−γ2DzΔ2dGz2 (II)
上記式(II)において、Sは、Gz=0とした時の通常のNMR信号強度を示す。また、d、ΔおよびGzは、それぞれ、勾配磁場パルスのパルス幅、一対の勾配磁場パルスの時間間隔、および勾配磁場パルスの磁場勾配(z方向)を示す。また、γは、磁気回転比を示し、核に固有の値である。Sは勾配磁場を印加しないGz=0の時のNMR信号のピーク強度、γは計測対象とする水素原子核Hの磁気回転比42.577×10[1/gauss・s]である。
なお、図4には、d=1.5ms、Δ=34.5msの場合のシーケンスが例示されている。たとえばこのようなパルスシーケンスで試料に磁場を印加することにより、NMR信号としてNMR信号のピーク強度Sを用いて、自己拡散係数Dzを安定的に算出することができる。
図5は、以上のようなPGSE法を用いて試料の特定箇所の易動性を局所的に測定するフローチャートであり、以下のステップを含む。
はじめに、試料を磁石などによって作られた静磁場中に置き、試料に静磁場を印加する。この状態で、小型RFコイルを介して、試料に対して励起用振動磁場を印加し、これに対応するNMR信号を取得する(S202)。勾配磁場は無印加とする。ステップ202は、以下のステップを含む。
・試料に対する励起用振動磁場の印加を所定のパルスシーケンスにしたがって実行する第1ステップ、および、
・第1ステップのパルスシーケンスに対応するNMR信号を取得する第2ステップ。
次に、試料中の同じ領域について、勾配磁場を印加して、ステップ204を実行し、NMR信号を取得する。ステップ204では、以下の第3ステップおよび第4ステップを一回または複数回実行する。
・励起用振動磁場および勾配磁場の印加を所定のパルスシーケンスにしたがって実行する第3ステップ、および、
・第3ステップのパルスシーケンスに対応するNMR信号を取得する第4ステップ
第1ステップおよび第3ステップにおいては、試料より小さい小型RFコイルを用い、試料の特定箇所に局所的な磁場を印加する。また、第2ステップおよび第4ステップにおいては、試料より小さい小型RFコイルを用い、試料の特定箇所からNMR信号を取得する。
また、第1ステップにおいて、試料に対する勾配磁場の印加を所定のパルスシーケンスにしたがって実行するとともに、第3ステップにおいて、第1ステップと異なる大きさの勾配磁場の印加を所定のパルスシーケンスにしたがって実行することもできる。
なお、図5においては、第1ステップにおいては、勾配磁場を印加しない例を示したが、第1ステップにおいて、第3ステップと異なる大きさの所定の勾配磁場を印加してもよい。このとき、たとえば、第1ステップにおける勾配磁場の大きさをゼロに近い値とすることが好ましい。
つづいて、パルス勾配磁場の勾配を段階的に変えて得られた複数のNMR信号から自己拡散係数Dを算定する(S206)。ステップ206では、第2ステップで得られたNMR信号の情報と、前記第4ステップで得られたNMR信号の情報とに基づいて、試料の特定箇所の自己拡散係数Dを算出する。
なお、ステップ206の手順の後、ステップ206で算出された自己拡散係数Dに基づいて、試料中におけるプロトン性溶媒の他の易動性を示すパラメータ算出してもよい。その後、結果を出力する(S208)。
このような操作(ステップ202〜ステップ208)を各小型RFコイルを介して行なうことで、自己拡散係数の分布を把握することができる。
以下、各ステップの詳細について説明する。
(i)ステップ202およびステップ204(励起用振動磁場の印加、勾配磁場の印加およびNMR信号の取得)
ステップ202およびステップ204では、試料に対し励起用振動磁場および勾配磁場を所定のシーケンスにしたがって印加する。具体的には、前述したように、ステップ202では勾配磁場をゼロまたはゼロに近い値とし、ステップ204では所定の勾配磁場を印加する。
励起用振動磁場は、複数のパルスからなるパルスシーケンスであり、勾配磁場は、励起用振動磁場に対応する一対のパルスシーケンスである。パルスシーケンスは、以下の(a)〜(d)からなるものとすることが好ましい。
(a)励起用振動磁場の90°パルス、
(b)(a)のパルス時間の経過後からはじまり、一定時間d印加される、勾配磁場パルス、
(c)(a)のパルスの時間τ経過後に印加される励起用振動磁場の180°パルス、および、
(d)(c)のパルス時間の経過後からはじまり、一定時間d印加される、勾配磁場パルス。
図4を参照してより詳細に説明すると、(b)の勾配磁場パルスを印加し終える時間と、(d)の勾配磁場パルスを印加し始める時間とが、(c)の180°パルス(パルスといっても、120マイクロ秒の幅がある。その中心の60マイクロ秒を対称軸と考える)から、等しい時間((34.5ms−1.5ms)/2=16.5ms)だけ離れた距離となるようにし、さらに、(b)の勾配磁場パルスの印加時間dと、(d)の勾配磁場パルスの印加時間dとを共に等しくする(d=1.5ms)。
そして、パルスシーケンスに対応するNMR信号を測定する。NMR信号のピーク強度Sは、スピンエコー法により測定される。
具体的には、図4に示すように、2τ時間に現れるエコー信号のピーク強度Sを計測する。ピーク強度Sは、2τ時間のNMR信号強度のみではなく、その周辺の時間で計測されたNMR信号強度の平均値としてもよい。この方法により、NMR信号に含まれるノイズを原因とした測定値のばらつきを低減することができる。
本実施形態では、勾配磁場を段階的に印加して、磁場勾配を大きくした場合に対応したNMR信号の低下の程度を検出することにより、試料中のプロトンの自己拡散係数Dを算出する。
(ii)ステップ206(自己拡散係数Dの測定)
ステップ206では、NMR信号のピーク強度から自己拡散係数Dを求める。プロトンの自己拡散係数Dは、PGSE法で取得されたNMR信号のピーク強度Sを用いて、前述した式(II)で表される。
勾配磁場Gを印加しなかった時のNMR信号のピーク強度S0と勾配磁場Gを印加した場合のNMR信号のピーク強度Sとから、上記式(II)を用いて、試料中のプロトンの自己拡散係数Dを求めることができる。たとえば、試料中の同じ勾配磁場Gの大きさを変えて測定を行い、ln(S/S0)と−γ2DΔ2dG2との関係をプロットすることにより、プロットの勾配から自己拡散係数Dを求めることができる。
図6は、自己拡散係数Dの測定例を示す図である。ここでは、勾配磁場の大きさを変化させ蒸留水のNMR信号のピーク強度を測定した際のNMR信号強度の低下量を計測した。測定温度は25℃とした。式(II)より、ln(S/S0)−γ2DΔ2dG2の直線の勾配から自己拡散係数Dを求めることができる。
以上のような原理により、水分量分布、易動性(本実施形態では易動性として自己拡散係数を測定する)分布を正確に測定するためには、計測対象となる核種(本実施形態では、水素原子核1H)の共鳴周波数に合わせて、核磁気共鳴信号を取得することが重要である。計測対象となる核種の共鳴周波数は、静磁場強度に依存して変化する。静磁場強度は完全に均一ではなく、分布を有しており、図31,33に示すように、静磁場強度は小型RFコイルの設置位置によって異なっている。
これに加えて、静磁場が永久磁石等の温度変化が生じやすい磁石によって試料に印加されているのであれば、磁石の温度変化によって静磁場強度が増減し、それに伴って、共鳴周波数も増減する(図35,37参照)。
すなわち、静磁場強度の分布に応じて、小型RFコイルの設置位置ごとに異なる周波数のRFパルスを生成する必要があると同時に、磁石の温度変化に伴う静磁場強度の増減にも合わせて、RFパルスの周波数を設定する必要がある。
本実施形態では、静磁場が印加された試料の各小型RFコイルの設置位置における核磁化の共鳴周波数に応じた周波数のRFパルスを各小型RFコイルから試料に対し印加する構成となっている。これにより、正確な水分量分布、易動性分布を把握することができる測定装置を実現している。
(第一実施形態)
図7は、本実施形態に係る測定装置1の概略構成を示す図である。測定装置1の各構成要素は、CPU、メモリ、メモリにロードされた本図の構成要素を実現するプログラム等を中心に、ハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置にはいろいろな変形例があることは、当業者には理解されるところである。
図7の一部、さらには、図9〜図11、図14、17、18、22〜27では、ハードウエア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
なお、すべての図面において、同様な構成要素には、同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
図7に示す測定装置1の概要について説明する。
測定装置1は、核磁気共鳴法を用いて試料115中のプロトン性溶媒(水分子)の挙動の分布(ここでは、プロトン性溶媒の挙動(水分量、易動性、さらには、移動量)の空間的な分布)を測定する装置である。
測定装置1は、主として、以下の構成を具備する。
・試料115に対して静磁場を印加する静磁場印加部(磁石113)
・試料115に対して励起用振動磁場を印加するとともに、試料115中で発生した核磁気共鳴信号を取得する、試料115よりも小さい複数の小型RFコイル114
・小型RFコイル114で取得した核磁気共鳴信号に基づいて、プロトン性溶媒の挙動を算出する演算部130
・演算部130で算出したプロトン性溶媒(水分子)の挙動を出力する出力部135
・各小型RFコイル114に励起用振動磁場を発生させるRFパルスを生成するRFパルス生成部
ここで、RFパルス生成部は、
・所定の周波数の信号を発振する発振機102
・発振機102の周波数を設定する設定部200
・発振機102が発振した信号を変調し、RFパルスを生成する変調器104(図9参照)を有する。
設定部200は、発振機102の周波数が、試料115に対し静磁場印加部113により静磁場を印加した際の各小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数(磁気共鳴周波数)に同調するように、発振機102の周波数を設定する。
変調器104は、設定部200によって周波数が設定された発振機102から発振された信号を変調し、設定部200により設定された周波数のRFパルスを生成する。
以下に、測定装置1の構成について詳細に説明する。
まず、はじめに、試料115及び試料115周辺の装置構成について説明する。
測定装置1は、前述した小型RFコイル114、磁石113、発振機102、設定部200に加えて、Gコイル(勾配磁場印加部)151、センサ制御部103、A/D変換器118、モード切替制御部169、電流駆動用電源159等を有する。
試料115は、測定対象となる試料中にプロトン性溶媒(本実施形態では水)が保持された構成を有する。試料115を構成する試料は、膜、塊状物質等の固体、液体、寒天ゲル等のゼリー状物質等のゲル等、種々の形態のものとすることができる。膜状物質の場合、局所的なプロトン性溶媒の易動性の測定結果、プロトン性溶媒量の測定結果が安定的に得られる。特に、固体電解質膜等のように、膜中に水分を保持する性質の膜を試料とした場合、測定結果が一層、安定的に得られる。
磁石113は、試料115全体に対して静磁場を印加する永久磁石である。この静磁場が印加された状態で励起用振動磁場が試料115に印加され、水分量の測定がなされる。
また、試料115に対し、静磁場が印加された状態で励起用振動磁場および勾配磁場パルスが試料115に印加され、自己拡散係数の測定がなされる。
小型RFコイル114は、試料115の特定箇所に対し、励起用振動磁場を印加する。
また、励起用振動磁場に対応するNMR信号、勾配磁場に対応するNMR信号を取得する。
本実施形態では、小型RFコイル114は、複数設けられており、図8に示すように、試料115の表面に沿って、所定の間隔をあけて配置されている。
小型RFコイル114は、試料全体の大きさの1/2以下とすることが好ましく、1/10以下とすることがより好ましい。このようなサイズとすることにより、試料115中の水分子の局所的易動性、水分量を短時間で正確に測定することが可能となる。なお、試料の大きさとは、たとえば、試料を載置したときの投影面積とすることができ、小型RFコイル114の専有面積を、上記投影面積の好ましくは1/2以下、より好ましくは、1/10以下とすることで、短時間で正確な測定が可能となる。小型RFコイル114の大きさは、たとえば、直径10mm以下とすることが好ましい。
小型RFコイル114としては、たとえば、平面型の渦巻きコイルを用いることができ、このような平面型コイルを使用することで、計測領域を限定することができる。渦巻き型のコイル(小型RFコイル)の計測領域は幅がコイルの直径程度、深さがコイル半径程度である。
小型RFコイル114により印加される振動磁場(励起用振動磁場)は、設定部200、発振機102、パルス制御部108(図18参照)、センサ制御部103、小型RFコイル114の連携により生成される。
このような連携により生成され、小型RFコイル114により印加された励起用振動磁場に対して、NMR信号が放出され、この放出されたNMR信号を小型RFコイル114が検出する。このNMR信号は、センサ制御部103を介して、A/D変換器118へ送出される。A/D変換器118はNMR信号をA/D変換した後、演算部130へ送出する。
センサ制御部103は、各小型RFコイル114に対応して複数設けられており、図9に示すように、各センサ制御部103は、変調器104、RF増幅器106、スイッチ部161、プリアンプ112、位相検波器110を有する。
本実施形態において、小型RFコイル114に励起用振動磁場を発生させるRFパルスを生成するRFパルス生成部は、設定部200、発振機102、変調器104、RF増幅器106を含んで構成される。
一方、小型RFコイル114で取得したNMR信号を検出し、このNMR信号を演算部130に送出するNMR信号検出部は、プリアンプ112、位相検波器110およびA/D変換器118、発振機102を含んで構成される。
位相検波器110は、発振機102の周波数をもとに、核磁気共鳴信号を検波する。
RF励起パルス生成部は、前述したように、所定の周波数の信号を発振する発振機102と、発振機102の周波数を設定する設定部200と、発振機102からの信号を変調してRFパルスを生成する変調器104と、RF増幅器106とを有し、小型RFコイル114に励起用振動磁場を発生させるRF励起パルスを生成する。
発振機102からは、設定部200により設定された周波数の信号が発振される。そして、この信号は、変調器104にて変調され、パルス形状となる。生成されたRFパルスはRF増幅器106により増幅された後、小型RFコイル114へ送出される。小型RFコイル114は、このRFパルスを試料載置台116上に載置される試料115の特定箇所に印加する。
ここで、設定部200の構成について説明する。
設定部200は、図10に示すように、記憶部(第一の記憶部)201と、演算部202とを有する。
記憶部201は、経時変化算出部204で算出された経時変化等を記憶するものである。
演算部202は、図11に示すように、周波数算出部203と、経時変化算出部204と、推測部205と、仮周波数設定部209とを備える。
周波数算出部203は、静磁場が印加された試料115の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数を算出する。
発振機102から所定の周波数(仮の周波数)の信号を発振し、小型RFコイル114から、試料115に対して励起用振動磁場を印加すると、小型RFコイル114は、核磁気共鳴信号を取得する。
周波数算出部203は、小型RFコイル114で取得された核磁気共鳴信号を、位相検波器110を介して取得する。
発振機102の周波数と、一の小型RFコイル114の設置位置での静磁場強度で決まる磁気共鳴周波数(一の小型RFコイル114の設置位置での核磁化の共鳴周波数)とに差がある場合には、取得される磁気共鳴信号にその周波数差が見られる。この周波数差は虚部と実部の成分を表す波形が時間軸である横軸と交差して、回転または振動しているような様子として見られる。
従って、検波後に観測される磁気共鳴信号の虚部と実部を表す波形が時間軸と交差する様子(磁気共鳴信号の虚部あるいは実部の周波数)から、発振機102が発振している周波数と、一の小型RFコイル114の設置位置での核磁化の共鳴周波数との差を算出することができる。
これにより、試料115の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数(真の共鳴周波数)を算出することができる。
以下に、より詳細に説明する。まず図12に示すように、取得した核磁気共鳴信号を虚部、実部の本来の位相に揃える。つまり、実部は原点に対して偶関数、虚部は原点に対して奇関数になるように、位相角度を修正する。位相角度はあらかじめ受信ハードウェアによってほぼ正確に調整されているが、より正確性をあげるためにソフトウェアによって微調整する。図12には、ソフトウェアによって位相角度が対称に調整された3つの波形が図示されている。図12の一番上の波形は核磁気共鳴信号の実部の波形であり、図12の中央の波形は核磁気共鳴信号の虚部の波形であり、図12の一番下の波形は核磁気共鳴信号の絶対値の信号波形である。
図12において、横軸は時間であり、縦軸は核磁気共鳴信号の強度である。核磁気共
鳴信号の波形のピーク位置での虚部の波形の傾きθを算出する。
具体的には、実部のVreつまりVabsと、虚部のΔtと、ΔVから、tanθを算出し、
その逆関数を用いて角度θを求める。
tanθ=虚部/実部=sinθ/cosθ= (ΔV/Δt)/ΔVbas
逆関数;θ=tanー1((ΔV/Δt)/ΔVbas)
θ=ω×t=2πf×t (tは時間、ω=2πf)
であるので、
f=θ/(2π×t)
とすれば、角度θの値から、sin波(核磁気共鳴信号の虚部)が一定時間(1秒間)に時間軸と交差する回数f(すなわち、虚部の周波数f)を検出することができる。虚部の周波数は、発振機102で設定された周波数(仮の周波数)と、核磁化の共鳴周波数(真の共鳴周波数)との差に該当する。この差に基づいて、核磁化の共鳴周波数(真の共周波数)を算出することができる。
図13に示すように、周波数算出部203で算出された核磁化の共鳴周波数(真の
共鳴周波数)は、小型RFコイル114の番号と関連付けられ、核磁化の共鳴周波
数を算出した時刻とともに、記憶部201に記憶される。
経時変化算出部204は、図14に示すように、周波数変化速度算出部207と、温度差算出部208とを備える。
周波数変化速度算出部207は、周波数算出部203により算出された、異なる時刻における核磁化の共鳴周波数を取得し、一定時間(t2‐t1)の間に、たとえば、1秒間に、核磁化の共鳴周波数がどのくらい変化するか(経時変化)を算出する。
算出された周波数変化速度は、記憶部201に記憶される(図13参照)。
ここで、複数ある小型RFコイル114の各設置位置における核磁化の共鳴周波数の変化の速度が略同じであるとみなせるような場合には、周波数変化速度算出部207は、一の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数の変化のみを算出すればよい。
また、各小型RFコイル114の各設置位置において、核磁化の共鳴周波数の変化の速度が大きく異なる場合には、各小型RFコイル114の各設置位置において、核磁化の共鳴周波数の経時変化を算出すればよい。
本実施形態では、複数ある小型RFコイル114の各設置位置における核磁化の共鳴周波数の変化の速度は、略同じであるとみなせるため、周波数変化速度算出部207は、一の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数の変化のみを算出する。
温度差算出部208は、温度センサに接続されており、磁石113の表面温度と、測定装置1が設置された部屋の室温との差を検出し、記憶部201に記憶する。
推測部205は、記憶部201に記憶された周波数変化速度と、磁石113の温度および室温の温度差と、周波数算出部203で算出された所定の時刻における各小型RFコイル114の位置の核磁化の共鳴周波数とから、水分量等の測定時刻における各小型RFコイル114の設置位置の核磁化の共鳴周波数を推測する。そして、発振機102の周波数を、推測部205で推測した共鳴周波数とし、測定時刻における各小型RFコイル114の設置位置の核磁化の共鳴周波数と、発振機102の周波数とを同調させる。
例えば、磁石113温度が高く、室温が低く、さらにその温度差が大きい場合には、共鳴周波数の変動速度は大きく、その変動の方向は共鳴周波数が「上がる」(高周波側)方向となる。
また、磁石113温度が低く、室温が高く、さらにその温度差が大きい場合には、共鳴周波数の変動速度は大きく、その変動の方向は共鳴周波数が「下がる」(低周波)方向に動いていく。
このように、共鳴周波数の変化速度は、磁石113と、室温との温度差に大きく依存する。そのため、推測部205では、記憶部201に記憶された周波数変化速度、磁石113温度と室温との関係を考慮し、測定時刻における小型RFコイル114の設置位置の核磁化の共鳴周波数を推測するのである。
なお、推測部205において、周波数変化速度、磁石113温度と室温との関係に加えて、磁石113周囲の気流の状態や、熱伝達率等を考慮して、測定時刻における小型RFコイル114の位置の核磁化の共鳴周波数を推測してもよい。
以上において、励起用振動磁場の印加およびNMR信号の取得を説明したが、このような励起用振動磁場の印加およびNMR信号の取得は、小型RFコイルを含むLC回路により実現することができる。図15は、このようなLC回路の一例を示す図である。共振回路のコイル部(インダクタンス部)は、直径2.0mmの小型RFコイルとしている。核磁気共鳴(NMR)法においては、磁場中に置かれた原子核のスピン共鳴現象により核磁化の運動をNMR信号として検出することで原子数密度とスピン緩和時定数を計測することができる。1Teslaの磁場中でのスピン共鳴周波数は約43MHzであり、その周波数帯を高感度に選択的に検出するために、図15に示すようなLC共振回路が用いられる。
ここで、小型RFコイル114が試料115に印加する励起用振動磁場は、たとえば、
(a)90°パルス、および、
(b)(a)のパルスの時間τ経過後に印加される180°パルス
からなるパルスシーケンスとすることができる。
ここで、90°パルスが第1位相にあり、180°パルスが、第1位相と90°ずれた第2位相にあるパルスシーケンスとしても、スピン−スピンに基づくNMR信号のピーク強度と試料115中の水の自己拡散係数との相関関係、T緩和時定数と試料115中の水分量との相関関係を取得することもできる。
なお、小型RFコイル114を用いる場合、上記(a)および(b)の励起パルス強度の調整が困難となる場合がある。たとえば、測定対象の領域、つまり小型RFコイル114で囲まれた領域のうち、中央部と周縁部とで励起のされかたに差異が生じてしまい、全体を均一の励起角度となるように、つまり(a)および(b)における励起用振動磁場の強度比が一定となるように励起することが困難となる場合がある。(a)および(b)における励起角度比がばらつくと、正確な水分量、自己拡散係数の計測が困難となる。
そこで、このような場合には、パルス制御部108が、上記パルスシーケンスにくわえ、90°パルス(a)より時間τだけ前の時刻に、180°パルスを印加するステップを加えた別のシーケンスを実行するようにする。そして、これら2つのシーケンスで得られるNMR信号(エコー信号)の挙動(位相検波器で得られる位相波形の位相の反転、信号強度が同程度であるか等)を比較することで、90°パルス(a)および180°パルス(b)の励起パルス強度が正確であるか否かを判別できる。この結果、装置の異常等により励起パルス強度がずれた場合でも、測定を行う前の段階で異常を検知でき、測定値をより正確なものとすることができる。
次に、スイッチ部161の構成について説明する。
前述したように、スイッチ部161は、小型RFコイル114、RF励起パルス生成部およびNMR信号検出部を接続する分岐部に設けられている。
スイッチ部161は、
小型RFコイル114とRF励起パルス生成部(RF増幅器106)とが接続された第1状態、および、
小型RFコイル114とNMR信号検出部(位相検波器110)とが接続された第2状態
を切り替える機能を有する。
スイッチ部161は、このような「送受信切り替えスイッチ」の役目を果たす。この役目は、RF power−ampで増幅された励起パルスを小型RFコイル114に伝送する際には、受信系のプリアンプ112を切り離して大電圧から保護し、励起後にNMR信号を受信する際には、RF増幅器106から漏れてくる増幅用大型トランジスタが発するノイズを受信系のプリアンプ112に伝送しないように遮断することである。小型RFコイル114を用いて計測する場合には、微弱な信号を取り扱うため、以下の理由でスイッチ部161が必要となる。一方、小型RFコイル114を用いない大型計測システムでは、「クロスダイオード」を用いれば充分に対処ができる。なお、クロスダイオードは、所定値以上の電圧が印加された際にオン状態となり、所定値未満の場合にはオフ状態となるダイオードである。
スイッチ部161は、種々の構成を採用することができる。図16はスイッチ部161の構成の一例を示す回路図である。
Gコイル151は、図8に示すように、試料115に勾配磁場を印加できるように配置される。Gコイル151は、一つの小型RFコイル114に対して、2つ配置され、小型RFコイル114を挟んで対向配置している。
Gコイル151の形状は、種々のものを採用し得るが、本実施形態では平板状コイルを用いる。Gコイル151は、本実施形態では、半月状である。
Gコイル151は、試料115の表面に対し平行に配置される。
また、Gコイル151は、小型RFコイル114よりも上方に配置されている。これにより、小型RFコイル114の中心軸上に、y軸方向に磁場の勾配を持つ勾配磁場を形成することができる。
小型RFコイル114と一方のGコイル151との間、小型RFコイル114と他方のGコイル151との間には、図示しない遮蔽シールドが設けられている。この遮蔽シールドにより、Gコイル151からのノイズが、小型RFコイル114に影響するのを防止している。遮蔽シールドは、ノイズの通過を防止し、かつ、磁場が通過できるような厚さとなっている。
なお、水分量、自己拡散係数を計測する際には、小型RFコイル114のみを試料115に接触させる。
設定部200による発振機102の周波数の設定、小型RFコイル114への高周波パルスの印加ならびに電流駆動用電源159を介したGコイル151へのパルス電流の供給は、図7に示すモード切替制御部169により制御される。モード切替制御部169は、図17に示すように、モード選択部169Aと、制御部169Bとを含む。
モード選択部169Aは、作業者が入力した要求を受信し、複数あるモードのなかから、受信した要求に応じたモードを選択する。
本実施形態では、各小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数を取得する共鳴周波数取得モード、NMR信号を受信せずに、励起用振動磁場の印加のみを行なうダミーモード、試料115中の特定箇所の水分量を測定する第一の測定モード、試料115中の特定箇所の水分子の易動性(自己拡散係数)を測定する第二の測定モードのうちから、いずれかを選択する。
図18は、制御部169Bの構成例を示す図である。制御部169Bは、小型RFコイル114、後述するGコイル151の動作を制御するものであり、水分量を測定するモードにあるときには、試料115に対し、小型RFコイル114により励起用振動磁場を印加するとともに、励起用振動磁場に対応した核磁気共鳴信号を小型RFコイル114により取得するように制御を行なう。
また、自己拡散係数を測定するモードにあるときには、試料115に対し、小型RFコイルにより励起用振動磁場を印加するとともに、Gコイル151により勾配磁場を印加し、これらの磁場に対応して発生する核磁気共鳴信号を小型RFコイル114により取得するように制御を行なう。
制御部169Bは、具体的には、変調器104の動作を制御するパルス制御部108および電流駆動用電源159の動作を制御する勾配磁場制御部171を備えている。
制御部169Bには、シーケンステーブル127が接続されており、このシーケンステーブル127には、水分量を測定する際の高周波パルスのシーケンスデータと、自己拡散係数を測定する際の高周波パルスおよび勾配磁場を発生させるパルス電流のシーケンスを決定するシーケンスデータと、後述するダミー励起を行なう際の高周波パルスのシーケンスデータとが記憶されている。すなわち、水分量を測定する場合における高周波パルスを発生させる時刻と、その間隔とが設定された第一タイミングダイアグラム、及び、自己拡散係数を測定する場合における、高周波パルス及び勾配磁場用のパルス電流を発生させる時刻と、その間隔とが設定された第二タイミングダイアグラム、ダミー励起を行なう際の高周波パルスを発生させる時刻と、その間隔とが設定された第三タイミングダイアグラム
が記憶されている。
なお、シーケンステーブル127には、第一タイミングダイアグラムに基づいて印加する高周波パルスの強度が記憶されている。また、第二タイミングダイアグラムに基づいて印加する高周波パルス及び勾配磁場用のパルス電流の強度もシーケンステーブル127に記憶されている。さらに、第三タイミングダイアグラムに基づいて印加する高周波パルスの強度もシーケンステーブル127に記憶されている。
また、制御部169Bには、計時部128が接続されている。
このような制御部169Bは、シーケンステーブル127から取得した上記シーケンスデータと、計時部128での計測時間とに基づいて、高周波パルス及び勾配磁場用のパルス電流を発生させる。
ここで、モード切替制御部169による測定モードの切替作業について説明する。
本実施形態では、各小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数を取得した後、NMR信号を受信せずに、励起用振動磁場の印加のみを行なうダミー励起を行なう。その後、設定部200により、発振機102の周波数を、各小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数に同調させて設定し、水分量、自己拡散係数の測定を行なう。
すなわち、図19に示すように、本実施形態の測定方法は、
・試料115に対し、静磁場印加部(磁石113)から静磁場を印加する工程(ステップ30)
・設定部200により、発振機102の周波数を、静磁場が印加された試料115の各小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数に同調させて、発振機102の周波数を設定する工程(ステップ31)
・ステップ30において設定された周波数の信号を発振機102から発振し、発振機102からの信号を変調器104により変調してRFパルスを生成し、各小型RFコイル114に対し、各小型RFコイル114の設置位置の核磁化の共鳴周波数に対応した周波数のRFパルスを送出する工程(ステップ32)
・各小型RFコイル114から、試料115に対して、励起用振動磁場を印加する工程(ステップ33)
・各小型RFコイル114を介して、試料115中で発生した核磁気共鳴信号を取得する工程(ステップ34)
・取得した前記核磁気共鳴信号に基づいて、演算部130により、試料115中のプロトン性溶媒の挙動(水分量、自己拡散係数)を算出する工程(ステップ35)
・各小型RFコイル114において、水分量、自己拡散係数の双方を算出したか否かを判定する工程(ステップ36)
・すべての小型RFコイルにおける計測が終了しているか否かを判断する工程(ステップ37)
を含む。
そして、各小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数に同調させて、発振機102の周波数を設定する工程(ステップ31)は、図20に示すように、
・静磁場が印加された試料115の一の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数の経時変化を取得する工程(ステップ311)
・所定の時刻において、静磁場が印加された試料115の各小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数を算出する工程(ステップ312)
・NMR信号を受信せずに、励起用振動磁場の印加のみを行なうダミー励起を行なう工程(ステップ313)
・核磁化の共鳴周波数の経時変化と、所定の時刻における各小型RFコイル114の設置位置の核磁化の共鳴周波数とから、プロトン性溶媒の挙動(水分量、自己拡散係数)の測定時刻における各小型RFコイル114の設置位置の核磁化の共鳴周波数を推測する工程(ステップ314)
を含んで構成される。
まず、作業者が、核磁化の共鳴周波数を取得する共鳴周波数取得モードを選択するという要求を測定装置1に入力する。操作信号受付部129は、この要求を受け付ける。
操作信号受付部129が要求を受け付けると、磁石113による試料115に対する静磁場の印加が開始される(ステップ30)。
操作信号受付部129は、受け付けた要求をモード切替制御部169に送出する。
この要求は、モード切替制御部169のモード選択部169Aに送出される。モード選択部169Aでは、複数あるモードのなかから、前記要求の内容に応じたモードを選択する。
ここでは、前記要求は、共鳴周波数取得モードを選択するという要求であるため、モード選択部169Aでは、共鳴周波数取得モードを選択して、この共鳴周波数取得モードを特定する特定情報を生成する。そして、この特定情報を設定部200に送出する。
設定部200は、受け付けた前記特定情報の内容を判断する。そして、設定部200で、前記特定情報が共鳴周波数取得モードを特定するものであると判別した場合には、仮周波数設定部209により、発振機102の周波数を適当に設定し、発振機102から仮の周波数の信号を発振させる。
なお、仮周波数設定部209により設定された仮の周波数は、この仮の周波数の励起用振動磁場を印加する一の小型RFコイル114の番号(小型RFコイル114の設置位置)に関連付けられ、仮の周波数を設定した時刻とともに、記憶部201に記憶される(図13参照)。
発振機102から仮の周波数の信号を発振することにより、複数ある小型RFコイル114のうち、一の小型RFコイル114(例えば、複数ある小型RFコイル114のうち中央に配置されたコイル)から、試料115に対して励起用振動磁場を印加する。そして、一の小型RFコイル114により、核磁気共鳴信号を取得する。一の小型RFコイル114により取得された核磁気共鳴信号は、位相検波器110に送出され、その後、周波数算出部203が、位相検波器110を介して、仮の周波数を基にして検波された核磁気共鳴信号を取得する。
周波数算出部203は、仮周波数設定部209により設定した仮の周波数を記憶部201から読み出す。そして、周波数算出部203は、仮の周波数を基にして検波された核磁気共鳴信号と、仮周波数設定部209により設定した仮の周波数と、に基づいて、試料115の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数(真の共鳴周波数)を算出する。
周波数算出部203により算出された真の共鳴周波数は、一の小型RFコイル114の番号(小型RFコイル114の設置位置)に関連付けられ、真の共鳴周波数を算出した時刻とともに、記憶部201に記憶される(図13参照)。
次に、所定時間経過した後、再度、仮周波数設定部209により、発振機102の周波数を適当に設定し、発振機102から仮の周波数の信号を発振させる。そして、前述した方法と同様の方法で、周波数算出部203により、所定時間経過した後の、真の共鳴周波数を算出する。算出された真の共鳴周波数は、小型RFコイル114の番号に関連付けられ、真の共鳴周波数を算出した時刻とともに、記憶部201に記憶される(図13参照)。
ここで、周波数算出部203により真の共鳴周波数の算出を行なっている間に、温度差算出部208により、磁石113の表面温度と、測定装置1が設置された部屋の室温との差を検出する。検出された温度は、記憶部201に記憶される。
記憶部201に異なる時刻(t1、t2)における真の共鳴周波数の値が記憶されると、周波数変化速度算出部207は、異なる時刻における、一の小型RFコイル114の設置位置の核磁化の真の共鳴周波数を記憶部201から読み出し、一定時間(t2‐t1)の間に、たとえば、1秒間に、核磁化の共鳴周波数がどのくらい変化するか(経時変化)を算出する(ステップ311)。
算出された周波数変化速度は、記憶部201に記憶される(図13参照)。
記憶部201に周波数変化速度が記憶されると、設定部200の仮周波数設定部209が発振機102の周波数を仮の周波数に設定し、発振機102から仮の周波数の信号を発振させる。なお、仮周波数設定部209により設定された仮の周波数は、この仮の周波数の励起用振動磁場を印加する他の小型RFコイル114の番号(小型RFコイル114の設置位置)に関連付けられ、仮の周波数を設定した時刻とともに、記憶部201に記憶される。
そして、一の小型RFコイル114とは異なる他の小型RFコイル114から、試料115に対して励起用振動磁場を印加し、他の小型RFコイル114により、核磁気共鳴信号を取得する。その後、周波数算出部203が、位相検波器110により仮の周波数を基にして検波された前記核磁気共鳴信号を取得する。
周波数算出部203は、取得した核磁気共鳴信号と、記憶部201に記憶された仮の周波数とに基づいて、試料115の他の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数(真の共鳴周波数)を算出する。周波数算出部203により算出された真の共鳴周波数は、他の小型RFコイル114の番号(小型RFコイル114の位置)に関連付けられ、真の共鳴周波数を算出した時刻とともに、記憶部201に記憶される(図21参照)。
このような操作を繰り返し、すべての小型RFコイル114の設置位置における核磁化の真の共鳴周波数および真の共鳴周波数を算出した時刻を記憶部201に記憶する(図21参照)(ステップ312)。
次に、作業者が、NMR信号を受信せずに、励起用振動磁場の印加のみを行なうダミーモードを選択するという要求を測定装置1に入力する。操作信号受付部129は、この要求を受け付ける。
操作信号受付部129で受け付けた要求をモード切替制御部169に送出する。
この要求は、モード切替制御部169のモード選択部169Aに送出される。モード選択部169Aでは、複数あるモードのなかから、前記要求の内容に応じたモード(ダミーモード)を選択する。そして、モード選択部169Aは、ダミーモードを特定する情報を設定部200、制御部169Bに送出する。
設定部200は、受け付けた前記特定情報の内容を判断し、前記特定情報がダミーモードを特定するものであると判断した場合には、発振機102の周波数を適当に設定する。そして、発振機102から信号を発振させる。
一方、制御部169Bは、シーケンステーブル127からシーケンスデータを読みだす。そして、制御部169Bのパルス制御部108が、変調器104の動作を制御し、試料115に対して所定のパルスシーケンスで励起用振動磁場を印加する(ステップ313)。
このようなダミー励起を行なうことで、計測の再現性と、信頼性とを向上させることができる。
熱平衡状態にある核磁化を90°励起パルスによって励起すると、その核磁化は励起さ
れ、T1緩和時定数と呼ばれる時定数T1(s)を持って時間t(s)と共に熱平衡状態に
戻っていく。核磁化の静磁場方向成分をMzで表し、熱平衡状態にある核磁化の大きさ
をM0で表せば、核磁化の緩和の様子は以下の式となる。
Mz/M0=1-exp(-t/T1)…式(B)
ここで、T1緩和時定数のT1の値は試料によって異なるが、純水で2〜3秒、固体高
分子電解質膜では100ms〜1秒程度である。
この式(B)では、90°励起された後に核磁化の静磁場方向成分MzがほぼM0に回復するためには、励起後からT1の5倍の時間が必要となる。5×T1よりも短い時間tsで90°励起パルスを照射すると、核磁化の静磁場方向成分はM0よりも小さいMz(ts)となり、熱平衡状態のM0で励起される場合よりも核磁化は励起されず、これによって放出される核磁気共鳴信号も小さくなる。この後、再度短い時間tsで励起すれば、さらに放出される核磁気共鳴信号は小さくなる。
複数回励起すると核磁気共鳴信号がゼロになってしまうように思えるが、実際には、回復しきらない核磁化(熱平衡に戻る途中の核磁化)は90°励起パルスでは励起されないために、回復は進み、複数回の励起の後には核磁化の静磁場方向成分は一定になる。これを飽和と呼ぶ。このような状態に達すれば、磁気共鳴信号の強度はほぼ一定となり、再現性の高い、信頼性のある計測が可能となる。
このように、T1緩和時定数の5倍よりも短い時間間隔で90°励起パルスを照射する場合には、磁気共鳴信号を一定にするために、水分量等の計測を行う前に複数回の励起パルス(これをダミーパルスと呼ぶ)を照射している。照射回数は試料によって変えることが多く、通常の計測では2回から8回程度である。
次に、作業者が、水分量の測定及び自己拡散係数の測定の双方を行うという要求を入力すると、モード切替制御部169に接続された操作信号受付部129が、前記要求を受け付ける。そして、操作信号受付部129がこの要求をモード切替制御部169に送出する。
モード選択部169Aは、複数あるモードのなかから、水分量を測定する測定モードを選択し、選択した測定モードを特定する情報を制御部169B、データ受付部131、設定部200に送出する。
データ受付部131は、測定モードを特定する特定情報を演算部130に送出する。演算部130は、この測定モード特定情報に基づいて、対応する演算処理を行う。測定モード特定情報が水分量を測定する第一の測定モードを示していれば測定データは水分量算出部132に送出され、測定モード特定情報が自己拡散係数を測定する第二の測定モードを示していれば測定データは易動性算出部133に送出され、各算出部において所定の処理が実行される。
一方、測定モード特定情報を受信した設定部200では、受け付けた前記特定情報の内容を判断する。そして、設定部200で、前記特定情報が水分量を測定する測定モードを特定するものであると判別した場合には、最初に励起用振動磁場を印加する小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数の推測を行なう(ステップ314)。
具体的には、推測部205により、記憶部201に記憶された周波数変化速度、磁石113の表面温度と測定装置1が設置された部屋の室温との差、所定の時刻における一の小型RFコイル114の設置位置の共鳴周波数(真の共鳴周波数)、を読み出し、一の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数の推測を行なう。
推測部205で推測した共鳴周波数は、一の小型RFコイル114の番号と関連づけられて記憶部201に記憶される。
その後、推測部205で推測した共鳴周波数を発振機102に送出し、発振機102の周波数を、推測された共鳴周波数の値に設定する。
発振機102からは、推測された共鳴周波数の信号が発振され、変調器104に送出される。
一方、制御部169Bは、シーケンステーブル127から水分量測定用のシーケンスデータを読みだす。そして、制御部169Bのパルス制御部108が、変調器104の動作を制御し、一の小型RFコイル114から、試料115に対して所定のパルスシーケンスで励起用振動磁場を印加する(ステップ32,33)。
励起用振動磁場に対応した核磁気共鳴信号は、一の小型RFコイル114を介して取得され、水分量算出部132にて水分量が算出される(ステップ34,35)。
この水分量の値は、一の小型RFコイル114の設置位置に関連付けられて、測定結果を記憶する記憶部(図示略)に記憶されるとともに、出力部135に出力される。
水分量の測定が終了すると、モード選択部169Aは、測定結果を記憶する記憶部(図示略)を参照し、一の小型RFコイル114について水分量、自己拡散係数の双方の計測が行なわれたか否かについて判断する。(ステップ36)。
自己拡散係数の計測が行われていないと判定した場合には、モード選択部169Aは複数あるモードのなかから、自己拡散係数を測定する測定モードを選択し、選択した測定モードを特定する情報を制御部169B、データ受付部131、設定部200に送出する。データ受付部131は、モード選択部169Aで選択した測定モードを示す特定情報を演算部130に送出する。
測定モード特定情報を受信した設定部200では、受け付けた前記特定情報の内容を判断する。そして、設定部200で、前記特定情報が自己拡散係数を測定する測定モードを特定するものであると判別した場合には、設定部200の推測部205における共鳴周波数の推測は行なわない。
すなわち、設定部200の推測部205では、既に、水分量の測定の際に、共鳴周波数の推測を行っているため、自己拡散係数を測定する際には、推測を行わないのである。
なお、静磁場強度の変動が非常に大きいような場合には、推測部205により、再度、共鳴周波数の推測を行なってもよい。
推測部205は、水分量の測定の際に推測した一の小型RFコイル114に対応する共鳴周波数を記憶部201から読み出し、発振機102に送出する。そして、発振機102の周波数を、推測された共鳴周波数の値に設定する。発振機102からは、水分量の測定の際に推測部205で推測した共鳴周波数の信号が再度、発振され、変調器104に送出される。
制御部169Bは、シーケンステーブル127から自己拡散係数測定用のシーケンスデータを読みだす。制御部169Bのパルス制御部108が、変調器104の動作を制御するとともに、勾配磁場制御部171が、電流駆動用電源159の動作を制御する。
試料115に対する励起用振動磁場の印加を所定のパルスシーケンスにしたがって実行し、さらに、励起用振動磁場および勾配磁場の印加を所定のパルスシーケンスにしたがって実行する(ステップ32,33)。
励起用振動磁場に対応した核磁気共鳴信号は、一の小型RFコイル114を介して取得され、易動性算出部133にて自己拡散係数が算出される(ステップ34,35)。
この自己拡散係数の値は、一の小型RFコイル114の設置位置に関連付けられて、測定結果を記憶する記憶部(図示略)に記憶されるとともに、出力部135に出力される。
自己拡散係数の測定が終了すると、モード選択部169Aは、測定結果を記憶する記憶部(図示略)を参照し、一の小型RFコイル114について、水分量、自己拡散係数の双方の計測が行なわれたかどうかを判定する。一の小型RFコイル114について、水分量、自己拡散係数の双方の計測が行なわれたと判断した場合には、他の小型RFコイル114について、水分量、自己拡散係数の双方の計測が行なわれたかどうかを判定する(ステップ37)。
計測を行なっていない小型RFコイル114があると判断した場合には、前述した方法と、同様の方法で、モード選択部169Aにより、水分量を測定する測定モードを選択し、推測部205により、小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数の推測を行ない(ステップ314)、水分量の測定を行なう(ステップ32〜ステップ37)。
その後、前述した方法と同様の方法で自己拡散係数の計測を行なう。
このような作業をすべての小型RFコイル114での計測が終了するまで繰り返す。
そして、水分量、自己拡散係数、さらには、水分量、自己拡散係数に基づいて算出される移動量の分布が出力部135に出力される。
なお、水分量の測定、自己拡散係数の測定の順番は特に限定されるものではなく、自己拡散係数の測定を水分量の測定の前段で行ってもよい。
また、作業者が水分量の測定のみ、或いは、自己拡散係数の測定のみを行うという要求を入力した場合には、この要求に基づいて、モード切替制御部169のモード選択部169Aは、水分量を測定する第一の測定モード或いは自己拡散係数の測定をする第二の測定モードを選択することができる。
図7に示す電流駆動用電源159は、Gコイル151への電流の供給に使用するものであり、電流駆動用電源159としては、スイッチング電源を使用せず、トランス等を使用している。
また、電流駆動用電源159が駆動していない状態では、ノイズによりトランジスタが微少発振しないように制御されている。
さらに、電流駆動用電源159が駆動していない状態において、Gコイル151に接続された導線を遮断する構造を採用することもできる。
このような構成の電流駆動用電源159を使用することにより、NMR信号への電流駆動用電源159からのノイズの影響を防止することができる。
以上、試料115周辺の装置構成について説明した。つづいて、NMR信号の処理ブロックについて説明する。
図7に示すように、演算部130は、第一の算出部である水分量算出部132と、第二の算出部である易動性算出部133と、第三の算出部である移動量算出部134とを備える。
まず、図22を参照して、水分量算出部132について説明する。
水分量算出部132は、試料115に対し、励起振動磁場を印加することにより得られるNMR信号の強度から、試料115の特定箇所における水分量を算出する。
水分量算出部132は、データ選別部132Aと、水分量計算部132Bと、データ選別用のパラメータテーブル132Cとを備える。
データ選別部132Aでは、データ選別用のパラメータテーブル132Cを参照しながら、T緩和時定数の算出に使用するNMR信号を選別する。
まず、データ受付部131で受け付けたNMR信号を、所定の強度以上のNMR信号と、所定の強度未満のNMR信号とに選別する。そして、所定の強度以上のNMR信号のみを選択し、このNMR信号の強度の対数を取り、最小二乗法で直線近似する。その後、近似直線と、所定の強度以上のNMR信号の強度の対数との差が所定値以下であるかどうか判別する。
近似直線と、所定の強度以上のNMR信号の強度の対数との差が所定値以下である場合には、この所定の強度以上のNMR信号を水分量計算部132Bに送信し、T緩和時定数及び水分量を算出する。
なお、NMR信号の強度の対数は指数関数的に減少するため、一定の時間が経過したあとに取得されたNMR信号の強度の対数は、略一定となる。データ選別部132Aでは、対数が一定となったNMR信号を選択せずに、対数が一定となる前のNMR信号のみを選択し、水分量計算部132Bに送信し、T緩和時定数及び水分量を算出する。
図23に示すように、水分量計算部132Bは、T緩和時定数を算出する緩和時定数計算部132Dと、T緩和時定数から、水分量を算出する水分量見積部132Eと、補正部132Fと、検量線テーブル132G、補正パラメータ記憶部132Hとを備える。
緩和時定数計算部132DでT緩和時定数が算出されると、そのデータは、水分量見積部132Eに送出される。水分量見積部132Eは、検量線テーブル132Gにアクセスし、試料115に対応する検量線データを取得する。検量線テーブル132Gには、試料115の種類毎に、試料中の水分量とT緩和時定数との相関関係を示す検量線データが格納されている。
水分量見積部132Eは、取得された検量線データと、上記のようにして算出されたT緩和時定数とを用い、試料115中の水分量の見積値を算出する。
水分量見積部132Eで計算された水分量の見積値は、補正部132Fに送出される。補正部132Fでは、小型RFコイル114の大きさに応じて水分量の見積値を補正し、水分量を算出する。
緩和時定数計算部132Dにおいては、小型RFコイル114で検出されたNMR信号からT緩和時定数が算出されるが、本実施形態においては、励起用振動磁場を印加する小型RFコイル114が小型であるため、大型のソレノイドコイル等を用いた測定の場合と測定値がずれる場合がある。
このような場合には、補正部132Fにおいて、必要に応じて水分量の値を補正することができる。補正パラメータ記憶部132Hには、小型RFコイル114の大きさに応じた補正パラメータおよび補正方法が記憶されており、補正部132Fは、補正パラメータ記憶部132Hからこれらの情報を取得して補正を行う。
小型RFコイル114を用いた場合、基本的には、試料よりも大きいRFコイルを用いたときと同等の測定値が得られるが、RFコイルを小型化した場合、試料の励起のされ方に差異が生じやすいため、一般的に、磁場の不均一性やSN比の低下等、測定値の誤差をもたらす要因が発生する。これに対し、小型RFコイル114の配置やスイッチ部を設ける構成の採用等により、上記要因を排除し、RFコイル114のサイズが測定値に与える影響を低減することが可能である。
しかしながら、小型RFコイル114を極小化した場合には、RFコイルのサイズが測定値に与える影響が現れる場合がある。この影響について本発明者らが検討した結果、小型RFコイル114で得られた測定値に所定の定数を用いて換算することで、正確な値が得られることが明らかになった。換算は、所定の定数を乗算する、あるいは所定の定数を加算するという態様があり、試料115の性質等に応じて選択される。測定対象となる試料を用いた予備実験により、上記定数をあらかじめ求めておくことで、サイズの影響のない正確な測定値を得ることができる。
次に、図24及び図25を参照して、易動性算出部133について説明する。
易動性とは、前述したように、試料中におけるプロトン性溶媒の移動のしやすさを表す物性値であり、例えば、自己拡散係数、移動度等があるが、本実施形態では、易動性として自己拡散係数を算出する。
易動性算出部133は、試料115に対し、励起用振動磁場の印加を行うことにより得られたNMR信号及び異なる勾配磁場の印加を行うことにより得られたNMR信号に基づいて、試料115の特定箇所における水分子の自己拡散係数を算出する。
易動性算出部133は、データ選別部133Aと、自己拡散係数計算部133Bと、データ選別用のパラメータテーブル133Cとを備える。
データ選別部133Aでは、データ選別用のパラメータテーブル133Cを参照しながら、NMR信号を選別する。ここでの、NMR信号の選別方法は、水分量算出部132のデータ選別部132Aでの選別方法と同じである。
自己拡散係数計算部133Bは、図25に示すように、自己拡散係数を算出する自己拡散係数見積部133Dと、補正部133Fと、補正パラメータ記憶部133Hとを備える。
自己拡散係数見積部133Dは、取得したNMR信号から、上述した式(II)を用いて、自己拡散係数の見積値を算出する。
補正部133Fでは、自己拡散係数見積部133Dで算出した自己拡散係数の見積値を、小型RFコイル114の大きさに応じて補正する。補正パラメータ記憶部133Hには、補正部133Fにおける補正に関する補正パラメータまたは補正式が記憶されている。
自己拡散係数見積部133Dにおいては、小型RFコイル114で検出されたNMR信号から水の自己拡散係数の見積値が算出されるが、励起用振動磁場を印加する小型RFコイル114が小型であるため、自己拡散係数の算出においても、大型のソレノイドコイル等を用いた測定の場合と測定値がずれる場合がある。
このような場合には、補正部133Fにおいて、必要に応じて自己拡散係数の値を補正することができる。補正パラメータ記憶部133Hには、小型RFコイル114の大きさに応じた補正パラメータおよび補正方法が記憶されており、補正部133Fは、補正パラメータ記憶部133Hからこれらの情報を取得して補正を行う。
次に、図26を参照して移動量算出部134について説明する。移動量算出部134は、水分量算出部132にて算出した水分量、易動性算出部133にて算出した自己拡散係数に基づいて、水分子の移動量を算出する。
移動量算出部134は、水分子の移動量を算出するためのパラメータが記憶されたパラメータ記憶部134Bと、このパラメータ記憶部134Bに記憶された算出式を読み出して、水分子の移動量を算出する移動量計算部134Aとを備える。
パラメータ記憶部134Bには、各試料115の種類ごとに、自己拡散係数と、水分量とから水分子の移動量を算出するための算出式が記憶されている。
この算出式に基づいて、移動量計算部134Aにて、移動量を算出することができる。
以上のようにして、算出された水分量、自己拡散係数、移動量は、出力部135によりユーザに提示される。
出力部135は、図27に示すように、水分量算出部132で算出した、複数の小型RFコイル114の測定領域毎の水分量、易動性算出部133にて算出した複数の小型RFコイル114の測定領域毎の自己拡散係数、あるいは、移動量算出部134で算出した複数の小型RFコイル114の測定領域毎の移動量を取得する測定データ取得部135Aと、取得した測定値を同一画面の区画された領域に表示する表示部135Bとを有する。
表示部135Bでは、図28に示すように、小型RFコイル114の配置位置に応じて、画面が複数の領域に区画されている。各領域は、各小型RFコイル114の測定領域の水分量、自己拡散係数の値、移動量に応じて、所定の色が表示される。
このように、表示部135Bの各領域に各小型RFコイル114の測定領域の水分量、自己拡散係数の値、移動量に応じた色を表示することで、各小型RFコイル114での計測位置と、水分量等との関係を直感的に把握することができる。
これにより、使用者にとって使い勝手のよい測定装置とすることができる。
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
測定装置1は、試料115に静磁場を印加した際の各小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数に基づいて、発振機102の周波数を設定する設定部200を備えているため、各小型RFコイル114から、各小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数に応じた周波数のRFパルスを照射することができる。
これにより、各小型RFコイル114を介して、各小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数に応じた核磁気共鳴信号を取得することができ、水分量、自己拡散係数の分布を正確に把握することができる。
また、静磁場が印加された試料115の各小型RFコイル114の位置における核磁化の共鳴周波数に基づいて、手動で、発振機102の周波数を設定することもできるが、各小型RFコイル114に対し、手動で発振機102の周波数を調整し、設定していたのでは、手間を要する。
これに対し、本実施形態では、静磁場が印加された試料115の各小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数に基づいて、発振機102の周波数を設定する設定部200を備えているため、周波数の設定に手間を要しない。
永久磁石113により、静磁場を印加するような場合には、時間の経過に伴う永久磁石113の温度変化により、静磁場強度が増減し、核磁化の共鳴周波数が変動する。
静磁場強度の変動が大きいような場合には、すべての小型RFコイルの設置位置における核磁化の共鳴周波数を把握した後、水分量等の測定を行おうとすると、小型RFコイルの設置位置の核磁化の共鳴周波数を把握した時点における核磁化の共鳴周波数と、測定時における核磁化の共鳴周波数とが大きく異なってしまう。そのため、正確な測定を行なうことができない。
これに加えて、本実施形態のように、各小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数を把握した後、ダミー励起を行い、その後、水分量、自己拡散係数の測定を行なう場合には、小型RFコイル114の設置位置の核磁化の共鳴周波数を把握した時点における核磁化の共鳴周波数と、測定時における核磁化の共鳴周波数とが大きく異なってしまう。
これに対し、本実施形態の測定装置1は、記憶部201に記憶された核磁化の共鳴周波数の経時変化と、周波数算出部203で算出した所定の時刻における小型RFコイル114の位置の核磁化の共鳴周波数とから、水分量等の測定時刻における小型RFコイル114の位置の核磁化の共鳴周波数を推測する推測部205を備えているので、水分量等の測定時刻における核磁化の共鳴周波数を正確に把握することができる。これにより、測定時刻における小型RFコイル114の設置位置の核磁化の共鳴周波数に応じた周波数のRFパルスを、試料115に対し、照射することができるので、より正確な水分量等の分布の測定を行なうことができる。
さらに、本実施形態では、周波数算出部203で各小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数を算出し、各小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数を取得することができる。そして、推測部205により、水分量、自己拡散係数の測定時刻における核磁化の共鳴周波数を推測することができる。
従って、例えば、静磁場強度が不均一で、静磁場強度に大きなむらがあるような磁石を使用した場合であっても、発振機102の周波数を、水分量、自己拡散係数の測定時刻における各小型RFコイル114の設置位置の核磁化の共鳴周波数に同調させることができるので、信頼性の高い水分量、自己拡散係数の分布を算出することができる。
さらに、本実施形態では、水分量を測定する測定モードでは、試料115よりも小さい小型RFコイル114を用いて、水分量の分布を測定している。また、自己拡散係数を測定する測定モードにおいても、Gコイル151及び小型RFコイル114を使用して、自己拡散係数の分布を測定している。
このように、試料115の特定箇所における水分量と、自己拡散係数とを把握することで、試料115におけるイオン伝導性の変動の要因が水分量に起因するものであるか、自己拡散係数に起因するものであるか、自己拡散係数、水分量の双方に起因するものであるかを正確に把握することができる。
そのため、試料115の水分量及び自己拡散係数を監視して、試料115のイオン伝導性を常に高い状態に保つことが可能となる。
また、同じ小型RFコイル114を使用して、水分量と、自己拡散係数の測定を行なっており、水分量と、自己拡散係数とを試料115の同じ位置で計測することができるので、水分量と自己拡散係数とに基づいて、試料115の水分子の移動量の分布を正確に把握することができる。
また、本実施形態では、複数の小型RFコイル114にRFパルスを送出するための発振機102を一つとしているため、各小型RFコイル114に応じた数の発振機102を設置する場合に比べ、測定装置1の小型化を図ることができる。
さらに、水分量等の測定時において、一の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数を推測し、発振機102の周波数を設定した後、励起用振動磁場を試料115に印加し、その後、次の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数を推測し、発振機102の周波数を設定した後、励起用振動磁場を試料115に印加している。
このように、励起用振動磁場を試料115に印加する直前に、各小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数を推測し、発振機102の周波数を設定することで、発振機102がひとつしかなく、一度に励起用振動磁場を試料115に印加できないような場合であっても、正確な水分量、自己拡散係数の分布を得ることができる。
(第二実施形態)
図29〜31を参照して、本実施形態の測定装置3について説明する。
前記実施形態では、周波数算出部203ですべての小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数を算出した。その後、水分量等の測定を行なう直前において、周波数算出部203で算出された核磁化の共鳴周波数、共鳴周波数の経時変化を考慮して、測定時刻における各小型RFコイル114の設置位置の核磁化の共鳴周波数を推測した。
これに対し、本実施形態では、周波数算出部203で一の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数のみ算出する。そして、前記実施形態と同様の方法で、水分量等の測定を行なう直前において、一の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数を推測するとともに、他の小型RFコイルの設置位置における核磁化の共鳴周波数を、前記一の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数の推測値および、共鳴周波数分布に基づいて予測する。
本実施形態の測定装置3の設定部300は、記憶部301と、演算部302とを有する。
測定装置3において、設定部300以外の構成は、前記実施形態の測定装置1と同じである。
記憶部301は、前記実施形態の記憶部201と同じく、経時変化算出部204で算出された経時変化等を記憶するのに加え、図31(C)に示すような磁石113の静磁場強度分布や、図31(B)に示すような共鳴周波数分布を記憶する。なお、図31(A)は、試料115に対する小型RFコイル114、Gコイル151の配置を示す図である。
記憶部301は、本発明にかかる第一の記憶部および相関関係記憶部の双方に該当するものである。すなわち、記憶部301は、経時変化算出部204で算出された経時変化等を記憶する第一の記憶部301Bと、静磁場強度分布や、共鳴周波数分布(換言すると、一の小型RFコイル114の設置位置の核磁化の共鳴周波数と、他の小型RFコイル114の設置位置の核磁化の共鳴周波数との相関関係)を記憶する相関関係記憶部301Aとを有するものである。
演算部302は、図30に示すように、前記実施形態と同様の周波数算出部203と、経時変化算出部204と、推測部205と、予測部303と、共鳴周波数分布算出部304とを備える。
共鳴周波数分布算出部304は、記憶部301に記憶された磁石113の静磁場強度分布に基づいて、核磁化の共鳴周波数分布を算出し、核磁化の共鳴周波数分布を記憶部301の相関関係記憶部301Aに記憶させる。
ここで、磁場強度H0 [Tesla]は水素原子核1Hの磁気共鳴周波数ωf [Hz]と以下の関係にある。
ωf=γH…式(C)
ここで、γは核磁気回転比であり、水素原子核1HのNMRの場合には42.6 MHz/Teslaである。従って、静磁場強度分布がわかれば、核磁化の共鳴周波数分布を算出することができる。
この核磁化の共鳴周波数分布は、静磁場を印加した際の、一の小型RFコイル114の設置位置の核磁化の共鳴周波数と、他の小型RFコイル114の設置位置の核磁化の共鳴周波数との相関関係(ここでは、一の小型RFコイル114の設置位置の核磁化の共鳴周波数と、他の小型RFコイル114の設置位置の核磁化の共鳴周波数との差Δω)を示すものである。
予測部303は、記憶部301に記憶された核磁化の共鳴周波数分布と、周波数算出部203で算出した一の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数(本実施形態では、周波数算出部203で算出され、さらに、推測部205で推測された核磁化の共鳴周波数)とに基づいて、他の小型RFコイル114の設置位置における共鳴周波数を予測するものである。
各小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数は、磁石113の温度変化に伴ってばらばらに変化するのではなく、互いの周波数差Δωを略一定に保ったまま、磁石113の温度変化に伴って変動する。
すなわち、磁石113の温度変化に伴って、図31(B)に示す共鳴周波数分布のグラフの切片のみが変動することとなる。
従って、水分量、自己拡散係数の測定時における一の小型RFコイル114の設置位置の核磁化の共鳴周波数がわかれば、核磁化の共鳴周波数分布から算出される一の小型RFコイル114の設置位置の核磁化の共鳴周波数と、他の小型RFコイル114の設置位置の核磁化の共鳴周波数との差Δωから、他の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数を算出することができる。
以下に、本実施形態における水分量、自己拡散係数の測定方法について説明する。
まず、作業者が、核磁化の共鳴周波数を取得する共鳴周波数取得モードを選択するという要求を測定装置3に入力すると、この要求を操作信号受付部129で受け付ける。そして、前記実施形態と同様、周波数算出部203、周波数変化速度算出部207、温度差算出部208により、一の小型RFコイル114の設置位置における、異なる時刻の真の共鳴周波数、周波数変化速度、磁石113の表面温度と測定装置3が設置された部屋の室温との差を取得し、記憶部301の第一の記憶部301Bに記憶する。
次に、作業者が、NMR信号を受信せずに、励起用振動磁場の印加のみを行なうダミーモードを選択するという要求を測定装置1に入力すると、この要求を操作信号受付部129で受け付け、ダミー励起を行なう。
その後、作業者が、水分量の測定及び自己拡散係数の測定の双方を行うという要求を入力すると、前記実施形態と同様、設定部300の推測部205では、一の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数の推測を行なう。推測部205で推測した共鳴周波数は、一の小型RFコイル114の番号と関連づけられて記憶部301に記憶される。
次に、推測部205で推測した共鳴周波数を発振機102に送出し、発振機102の周波数を、推測された共鳴周波数の値に設定する。発振機102からは、推測された共鳴周波数の値の信号が発振され、変調器104に送出される。そして、一の小型RFコイル114からは、試料115に対し、所定の周波数のRFパルスが印加される。これにより、一の小型RFコイル114の設置位置における水分量の測定が行なわれる。
次に、前記実施形態と同様にして自己拡散係数の測定を行なう。
水分量、自己拡散係数は、一の小型RFコイル114の設置位置に関連付けられて、測定結果を記憶する記憶部(図示略)に記憶されるとともに、出力部135に出力される。
一の小型RFコイル114を用いた水分量、自己拡散係数の測定が終了すると、前記実施形態と同様、モード選択部169Aは、他の小型RFコイル114について、水分量、自己拡散係数の双方の計測が行なわれたかどうかを判定する。
そして、計測を行なっていない小型RFコイル114があると判断した場合には、モード選択部169Aで水分量を測定する測定モードを選択し、選択した測定モードを特定する特定情報を設定部300に送る。設定部300で、前記特定情報が水分量を測定する測定モードを特定するものであると判別した場合には、予測部303において、他の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数の予測を行なう。
具体的には、記憶部301の相関関係記憶部201Aに記憶された共鳴周波数分布、推測部205で推測した一の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数に基づいて、他の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数を予測する。予測部303で予測した共鳴周波数は、他の小型RFコイル114の番号(他の小型RFコイル114の設置位置)に関連付けられて記憶部301に記憶される。
次に、予測部303で予測した共鳴周波数を発振機102に送出し、発振機102の周波数を、予測した共鳴周波数の値に設定する。これにより、発振機102の周波数が、
水分量測定時における他の小型RFコイル114の設置位置における磁気共鳴周波数に同調されることとなる。
発振機102からは、予測した共鳴周波数の値の信号が発振され、変調器104に送出される。そして、他の小型RFコイル114からは、試料115に対し、所定の周波数のRFパルスが印加される。これにより、他の小型RFコイル114の設置位置における水分量の測定が行なわれる。水分量は、他の小型RFコイル114の設置位置に関連付けられて、測定結果を記憶する記憶部(図示略)に記憶される。
水分量の測定が終了すると、モード選択部169Aは、測定結果を記憶する記憶部(図示略)を参照し、他の小型RFコイル114について水分量、自己拡散係数の双方の計測が行なわれたか否かについて判断する。自己拡散係数の計測が行われていないと判定した場合には、前記実施形態と同様に、モード選択部169Aは複数あるモードのなかから、自己拡散係数を測定する測定モードを選択し、自己拡散係数を測定する。
このとき、設定部300の予測部303では、すでに、他の小型RFコイル114の設置位置における共鳴周波数を予測しているので、この予測した共鳴周波数に基づいて、発振機102の周波数を設定する。そして、自己拡散係数の測定が行なわれる。
以上のような予測部303での予測を各小型RFコイル114において行なうことで、水分量、自己拡散係数の分布を取得することができる。
水分量、自己拡散係数、さらには、水分量、自己拡散係数に基づいて算出される移動量の分布は、出力部135に出力される。
以下、第二実施形態の効果について説明する。第二実施形態では、第一実施形態と同様の効果を奏することができるうえ、以下の効果を奏する。
本実施形態では、記憶部301の相関関係記憶部301Aに、核磁化の共鳴周波数分布、すなわち、一の小型RFコイル114の設置位置の核磁化の共鳴周波数と、他の小型RFコイル114の設置位置の核磁化の共鳴周波数との相関関係が記憶されているため、推測部205で、水分量、自己拡散係数計測時の、一の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数を推測すれば、予測部303において他の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数を予測することができる。
これにより、水分量、自己拡散係数計測時に、他の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数を迅速に把握することができ、水分量、自己拡散係数分布を迅速に計測することができる。
本実施形態では、推測部205で、一の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数を推測し、水分量、自己拡散係数の計測を行なった後、推測した一の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数に基づいて、他の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数を予測している。
一つの小型RFコイル114において、水分量の測定に要する時間は、1秒程度であり、自己拡散係数の測定に要する時間は5秒程度である。すなわち、一つの小型RFコイル114による水分量、自己拡散係数の計測時間は、非常に短い時間であるといえる。
そのため、他の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数の予測の際に、一の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数が、推測値から、大幅に変動しているとは考えにくい。
従って、本実施形態では、他の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数の予測を正確に行なうことができる。
さらに、磁石113の静磁場強度分布は、一般に、磁石113を作製する際に予め把握されている。予めわかっている静磁場強度分布から試料115の核磁化の共鳴周波数分布を容易に算出することができるので、試料115の核磁化の共鳴周波数分布を容易に把握することができる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、試料115として、燃料電池に用いられる固体高分子電解質膜を例示したが、これに限らず、例えば、試料として、果物や、野菜等を使用してもよい。果物や、野菜の自己拡散係数、水分量から糖度を算出することも可能である。また、果物や、野菜の自己拡散係数、水分量に基づいて、果物や野菜等の成長過程を把握することも可能となる。
さらに、前記各実施形態では、設定部200,300は、経時変化算出部204と、推測部205とを備えるものとしたが、これに限らず、経時変化算出部204、推測部205はなくてもよい。
例えば、静磁場強度分布の経時変化が大きくないような磁石(例えば、超伝導磁石等)を使用する場合には、経時変化算出部204、推測部205はなくてもよい。この場合、測定装置1では、周波数算出部203において、各小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数を算出し、各小型RFコイル114に関連付けて、記憶部201に記憶させておく。そして、測定時に、設定部200の記憶部201に記憶された共鳴周波数を読み出し、発振機102の周波数を設定すればよい。
また、測定装置3では、周波数算出部203において、一の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数を算出し、記憶部201に記憶させておく。測定時に、設定部200の記憶部201に記憶された一の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数と、共鳴周波数分布とに基づいて、予測部303で他の小型RFコイルの設置位置における核磁化の共鳴周波数を予測すればよい。
また、前記各実施形態の測定装置1,3は、CPMG法を用いて、水分量の算出を行なうとともに、PGSE法を用いて、水分子の自己拡散係数の算出を行なったが、本発明は、これに限られるものではない。
例えば、試料に対し、小型RFコイルにより、励起用振動磁場を印加するとともに、試料中で発生した核磁気共鳴信号を取得する。そして、取得した核磁気共鳴信号を、フーリエ解析し、プロトン性溶媒を示す化学シフト値のスペクトルを取得し、スペクトルの強度に基づいて、プロトン性溶媒量を算出してもよい。
例えば、試料中に、プロトン性溶媒として、水とメタノールとが含まれている場合、小型RFコイルにより得られた核磁気共鳴信号をフーリエ解析し、C原子に結合している水素原子核に対応するスペクトルと、O原子に結合している水素原子核に対応するスペクトルとに分離する。
水素原子核は、化学結合している核種、構造の相違により共鳴周波数が異なる。
メタノールの場合には、C原子に結合している水素原子核と、O原子に結合している水素原子核とで共鳴周波数が異なる。また、水の水素原子核の共鳴周波数と、メタノールのO原子に結合している水素原子核の共鳴周波数とは略同じである。
C原子に結合している水素原子核の化学シフト値を有するスペクトルは、メタノールのみを示すスペクトルであるといえるため、C原子に結合している水素原子核の化学シフト値を有するスペクトルから、メタノール量の比率や、メタノール量(絶対量)さらには、水分量(絶対量)を把握することができる。
また、前記各実施形態では、複数の小型RFコイル114を、試料115の表面側にのみ配置していたが、これに限らず、例えば、図32に示すように、試料115の裏面側にも小型RFコイル114を配置してもよい。
この場合、図32に示すように、小型RFコイル114の配置位置に応じて、表示部の画面を区画し、各小型RFコイル114の測定領域の水分量、自己拡散係数の値、移動量に応じて、所定の色を表示してもよい。
さらに、前記各実施形態では、測定装置1,3は、発振機102を一つしか有していなかったが、これに限らず、例えば、発振機102を複数有していてもよい。さらには、小型RFコイル114の数と同数の発振機102を有していてもよい。
このように、各小型RFコイル114に応じて発振機102を設けることで、各小型RFコイル114から略同時に試料に対し、励起用振動磁場を印加することが可能となる。
また、前記各実施形態の測定装置は、核磁気共鳴法(NMR)を用いた測定を行なうものであったが、これに限らず、電子スピン共鳴法(ESR)を用いた測定を行なうものとしてもよい。
さらに、前記各実施形態では、測定装置1,3の演算部130では、プロトン性溶媒の挙動の分布として、ある時刻におけるプロトン性溶媒の挙動の空間的な分布を算出したが、これに限らず、プロトン性溶媒の挙動の分布として、例えば、各小型RFコイル114の設置位置におけるプロトン性溶媒の挙動の時間変化を示す分布を算出してもよい。
すなわち、前記各実施形態で説明した方法を用い、異なる時刻におけるプロトン性溶媒の挙動の空間的な分布を算出する。そして、この異なる時刻におけるプロトン性溶媒の挙動の空間的な分布に基づいて、各小型RFコイルの設置位置におけるプロトン性溶媒の挙動の時間変化を示す分布を算出する。
さらに、第二実施形態では、記憶部301に磁石113の静磁場強度分布を記憶させ、この静磁場強度分布に基づいて、共鳴周波数分布を算出していたが、あらかじめ記憶部301に共鳴周波数分布が記憶されていてもよい。
また、第二実施形態の測定装置3の記憶部301は、ネットワークを介して、設定部300の演算部302と接続されていてもよい。
また、第二実施形態のように、小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数を予測する方法としては、以下のような方法も例示できる。
(i)共鳴周波数分布を示す関数(共鳴周波数と、小型RFコイルの設置位置との関係を示す関数、例えば、図31(B)に示すようなカーブを描く関数)を記憶部に記憶する。
この関数の形状は、磁石113の温度変化により変形しないが、共鳴周波数の軸に対する関数のカーブの高さ位置(すなわち、図31(B)のカーブと共鳴周波数の軸とが交差する点(切片)、あるいは、図31(B)の凸状のカーブの頂点)が上下に変動する。
周波数算出部により、プロトン性溶媒の挙動測定時における一の小型RFコイルの設置位置の核磁化の共鳴周波数を算出する。そして、周波数算出部により算出された一の小型RFコイルの設置位置の核磁化の共鳴周波数と、この一の小型RFコイルの設置位置と、を前記関数に代入することで、共鳴周波数の軸に対する関数のカーブの高さ位置を決定することができ、関数を一意に決定することができる。
次に、他の小型RFコイルの設置位置を、決定された前記関数に代入することで、他の小型RFコイルの設置位置における核磁化の共鳴周波数を算出することができる。
(ii)共鳴周波数分布を示す関数(共鳴周波数と、小型RFコイルの設置位置との関係を示す関数、例えば、図31(B)に示すようなカーブを描く関数)を記憶部に記憶する。
次に、周波数算出部により、プロトン性溶媒の挙動測定時において、一部の複数の小型RFコイルの設置位置の核磁化の共鳴周波数を算出する。
測定装置の設定部に補正部を設け、この補正部により、周波数算出部により算出された複数の共鳴周波数が、記憶部に記憶した関数に対応した数値であるか否かを判断する。周波数算出部により算出された複数の共鳴周波数の値が、記憶部に記憶した関数から大きくずれる場合には、記憶部に記憶された前記関数を補正する。
測定装置の設定部に予測部を設け、この予測部により、共鳴周波数の算出が行なわれていない残りの小型RFコイルの設置位置と、補正された前記関数とから、残りの小型RFコイルの設置位置における核磁化の共鳴周波数を算出し、予測する。
(iii)測定装置の周波数算出部により、少なくとも、2以上の小型RFコイルの設置位置における核磁化の共鳴周波数の算出を行なう。
測定装置の設定部に、周波数算出部で算出した少なくとも2以上の小型RFコイルの設置位置における核磁化の共鳴周波数の値から、他の小型RFコイルの設置位置における共鳴周波数を予測する予測部を設け、他の小型RFコイルの設置位置における共鳴周波数を予測する。
具体的には、例えば、設定部を、一対の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数の値に基づいて、一対の小型RFコイル114間の核磁化の共鳴周波数を補間する補間部(予測部)を有するものとする。
そして、一対の小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数の値に基づいて、前記補間部により、一対の小型RFコイル間の核磁化の共鳴周波数を補間する。
これにより、一対の小型RFコイル間に配置された他の小型RFコイルの設置位置における核磁化の共鳴周波数を予測することができる。
(参考例)
前記各実施形態において、「磁石により形成される静磁場強度は均一でなく、分布がある」と言及した。
また、第二実施形態においては、「各小型RFコイル114の設置位置における核磁化の共鳴周波数は、磁石113の温度変化に伴ってばらばらに変化するのではなく、互いの周波数差Δωを略一定に保ったまま、磁石113の温度変化に伴って変動する」と言及した。
そこで、この参考例では、磁石により形成される静磁場強度に分布があるかどうか、および、磁石内側の異なる位置に配置された2つの小型RFコイルにより、同一の試料を計測する場合、磁石の温度変化が、2つの小型RFコイルで受信される共鳴周波数にどのように影響するかを検討した。
(参考例1)
まず、磁石により形成される静磁場強度に分布があることを確認した。
第二実施形態でも言及したが、静磁場強度H0 (Tesla)は水素原子核1Hの磁気共鳴周波数ωf (Hz)とは、式(C)に示す関係にある。
磁気共鳴周波数ωf (Hz)を計測すれば、式(C)から静磁場強度を算出することができる。
[測定方法]
試料としては、純水を用い、試料容器内に封入した。直径2mmの小型RFコイル(小型表面コイル)を試料容器に貼り付けて、小型RFコイルが取得する核磁気共鳴信号を基に磁気共鳴周波数を計測した。
純水が封入された試料容器と小型RFコイルは電磁波シールド箱内に入れられている。磁石内側に挿入された電磁波シールド箱の位置を所定の間隔(2mm間隔)で動かし、各位置での磁気共鳴周波数を取得した。
磁石は1Tesla、45mm-AirGapの永久磁石を用いた。
[結果]
2mm間隔で計測した共鳴周波数分布を図33に示す。図33では磁石の中心位置(磁石の内側の空間の中心位置)を原点(ゼロ)として示した。また、磁石の中心位置(ゼロ)での共鳴周波数と、磁石の中心位置からずれた位置における共鳴周波数との差ω(Hz)をプロットした図を図34に示す。図34においては、磁石の中心位置(ゼロ)を基準(0Hz)としている。
図33、図34から磁石により形成される静磁場強度に分布があることがわかる。
(参考例2)
参考例2では、磁石内側の異なる位置に配置された2つの小型RFコイルにより、同一の試料を計測する場合、磁石の温度変化が、2つの小型RFコイルで受信される共鳴周波数にどのように影響するかを検討した。
[測定方法]
試料としては、純水を用い、試料容器内に封入した。二つの小型RFコイル(小型表面コイル)(直径2mm)を試料容器に貼り付けた。二つの小型RFコイル間の距離は、8mmである。
二つの小型RFコイルが取得する核磁気共鳴信号を基に共鳴周波数を計測した。純水が封入された試料容器と二つのコイルは電磁波シールド箱内に入れられている。
電磁波シールド箱は磁石の内側に挿入され、一方の小型RFコイル(Coil A)を磁石の中心位置に置いた。これにより、他方の小型RFコイル(Coil B)は約8mmだけ磁石の中心から端にずれた場所にある。一方の小型RFコイルで、核磁気共鳴信号を受信した1分後に、他方の小型RFコイルで核磁気共鳴信号を受信するようにし、共鳴周波数を計測した。
使用した磁石は、参考例1と同じである。
磁石温度は21.6℃、室内温度は23.5℃であり、磁石は暖められる環境にあった。
[結果]
1分間隔でCoil AとCoil Bを切り替えて計測した共鳴周波数の時間変化を図35に示す。Coil Aで計測された共鳴周波数とCoil Bで計測された共鳴周波数との差の時間変化を図36に示す。これらの図から、時間と共に磁石温度が上昇し、磁場強度が低下して、共鳴周波数が低下していく様子をみることができる。また、Coil Aで計測された共鳴周波数とCoil Bで計測された共鳴周波数との差は、略一定に保たれていることが分る。
(参考例3)
参考例2のCoil A、Coil Bを使用し、Coil A、Coil B間の中心位置が、磁石中心と一致するようにCoil AおよびCoil Bを配置し、二つの小型RFコイルで計測される共鳴周波数がほぼ等しい場合の共鳴周波数の時間変化を計測した。
その他の条件は、参考例2と同じである。
[結果]
図37には、二つの小型RFコイルの共鳴周波数の経時変化が示されており、図38には二つの小型RFコイルの共鳴周波数の差の経時変化を示した。
図37、図38から、磁石の温度変動に対して、二つの小型RFコイルで計測される共鳴周波数が一定の周波数差を保ちながら、周波数がシフトしていく様子を見ることができる。
参考例2,3から、永久磁石内側での二点の磁場強度は、温度変動に対して一定の関係を保ちながら変動しており、ある一つの位置で試料の共鳴周波数を計測すれば、他の位置での共鳴周波数も十分に高い精度で予測することが可能であると言える。
局所的水分量測定方法の概要を示すフローチャートである。 CPMG法の補償機能について説明するための図である。 スピンエコー法によりT緩和時定数を測定する原理を説明するための図である。 自己拡散係数計測のパルスシーケンスの例を示す図である。 局所的易動性測定方法の概要を示すフローチャートである。 自己拡散係数Dの測定例を示す図である。 本発明の第一実施形態の測定装置の構成を示すブロック図である。 測定装置の小型RFコイルおよびGコイルの配置を示す図である。 センサ制御部を示すブロック図である。 設定部を示すブロック図である。 設定部の演算部を示すブロック図である。 核磁気共鳴信号、核磁気共鳴信号の実部、虚部の波形を示す図である。 設定部の記憶部に記憶されるテーブルを示す図である。 設定部の経時変化算出部を示すブロック図である、 LC回路の一例を示す図である。 スイッチ部の構成の一例を示す回路図 モード切替制御部を示すブロック図である。 制御部の構成例を示すブロック図である。 第一実施形態にかかる測定方法のフローチャートである。 発振機の周波数を設定する工程を示すフローチャートである。 設定部の記憶部に記憶されるテーブルを示す図である。 水分量算出部を示すブロック図である。 水分量計算部を示すブロック図である。 易動性算出部を示すブロック図である。 自己拡散係数計算部を示すブロック図である。 移動量算出部を示すブロック図である。 出力部を示すブロック図である。 表示部の水分量等の表示状態を示す図である。 第二実施形態にかかる設定部を示すブロック図である。 設定部の演算部を示すブロック図である。 (A)は、小型RFコイル、Gコイルの配置を示す図である。 (B)は、共鳴周波数分布を示す図である。 (C)は、静磁場強度分布を示す図である。 小型RFコイル、Gコイルの配置および表示部を示す図である。 参考例1における共鳴周波数分布を示す図である。 磁石の中心位置(ゼロ)での共鳴周波数と、磁石の中心位置からずれた位置における共鳴周波数との差をプロットした図である。 参考例2において、Coil AとCoil Bを切り替えて計測した共鳴周波数の時間変化を示す図である。 Coil Aで計測された共鳴周波数とCoil Bで計測された共鳴周波数との差の時間変化を示す図である。 参考例3におけるCoil AとCoil Bの共鳴周波数の経時変化を示す図である。 Coil Aで計測された共鳴周波数とCoil Bで計測された共鳴周波数との差の時間変化を示す図である。
符号の説明
1 測定装置
3 測定装置
102 発振機
103 センサ制御部
104 変調器
106 RF増幅器
108 パルス制御部
110 位相検波器
112 プリアンプ
113 永久磁石(静磁場印加部)
114 小型RFコイル
115 試料
116 試料載置台
118 A/D変換器
127 シーケンステーブル
128 計時部
129 操作信号受付部
130 演算部
131 データ受付部
132 水分量算出部
132A データ選別部
132B 水分量計算部
132C パラメータテーブル
132D 緩和時定数計算部
132E 水分量見積部
132F 補正部
132G 検量線テーブル
132H 補正パラメータ記憶部
133 易動性算出部
133A データ選別部
133B 自己拡散係数計算部
133C パラメータテーブル
133D 自己拡散係数見積部
133H 補正パラメータ記憶部
133F 補正部
134 移動量算出部
134A 移動量計算部
134B パラメータ記憶部
135 出力部
135A 測定データ取得部
135B 表示部
151 Gコイル(勾配磁場印加部)
159 電流駆動用電源
161 スイッチ部
169 モード切替制御部
169A モード選択部
169B 制御部
171 勾配磁場制御部
200 設定部
201 記憶部
202 演算部
203 周波数算出部
204 経時変化算出部
205 推測部
207 周波数変化速度算出部
208 温度差算出部
209 仮周波数設定部
300 設定部
301 記憶部
301A 相関関係記憶部
301B 第一の記憶部
302 演算部
303 予測部
304 共鳴周波数分布算出部

Claims (10)

  1. 磁気共鳴法を用いて試料中のプロトン性溶媒の挙動の分布を測定する装置であって、
    前記試料に対して静磁場を印加する静磁場印加部と、
    前記試料に対して励起用振動磁場を印加するとともに、前記試料中の特定箇所で発生した磁気共鳴信号を取得する、前記試料よりも小さい複数の小型RFコイルと、
    前記各小型RFコイルで取得した前記磁気共鳴信号に基づいて、プロトン性溶媒の挙動の分布を算出する演算部と、
    前記演算部で算出したプロトン性溶媒の挙動の分布を出力する出力部と、
    前記各小型RFコイルに前記励起用振動磁場を発生させるRFパルスを生成するRFパルス生成部と、を有し、
    前記RFパルス生成部は、
    所定の周波数の信号を発振する発振機と、
    前記発振機の周波数を設定する設定部と、
    前記発振機が発振した信号を変調し、RFパルスを生成する変調器と、を備え、
    前記設定部は、前記試料に対し、前記静磁場を印加した際の、一の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数と、他の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数との相関関係を記憶する相関関係記憶部と、
    前記試料に対し、前記静磁場を印加した際の、前記一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を算出する周波数算出部と、
    前記周波数算出部で算出した前記一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数と、前記相関関係記憶部に記憶された前記相関関係とに基づいて、他の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を予測する予測部と、を備え、
    前記設定部は、前記試料に対し前記静磁場印加部により前記静磁場を印加した際の各小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数に、前記発振機の周波数を、同調させて、前記発振機の周波数を設定し、
    前記変調器は、前記設定部によって周波数が設定された前記発振機から発振された信号を変調し、前記設定部により設定された前記周波数のRFパルスを生成することを特徴とする測定装置。
  2. 請求項1に記載の測定装置において、
    前記設定部は、前記試料に対し、前記静磁場を印加した状態における、少なくとも一の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数の経時変化を記憶する第一の記憶部と、
    前記試料に対し前記静磁場を印加した際の、少なくとも前記一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を算出する周波数算出部と、
    前記第一の記憶部に記憶された磁気共鳴周波数の経時変化と、前記周波数算出部で算出した所定の時刻における少なくとも前記一の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数とから、プロトン性溶媒の挙動の測定時刻における少なくとも前記一の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数を推測する推測部と、
    を備えることを特徴とする測定装置。
  3. 請求項に記載の測定装置において、
    前記相関関係記憶部には、あらかじめ、前記試料に対して静磁場を印加した際の静磁場強度分布が記憶されており、
    前記相関関係記憶部に記憶された前記静磁場強度分布に基づいて、前記試料の磁気共鳴周波数分布を算出する共鳴周波数分布算出部を有し、
    前記共鳴周波数分布算出部で算出された前記試料の磁気共鳴周波数分布を、前記相関関係として、前記相関関係記憶部に記憶することを特徴とする測定装置。
  4. 請求項1乃至のいずれかに記載の測定装置において、
    前記設定部は、前記試料に対し、前記静磁場を印加した際の少なくとも前記一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を算出する周波数算出部を有し、
    前記発振機から所定の周波数の信号を発振し、前記一の小型RFコイルから前記試料に対して励起用振動磁場を印加した際に、
    前記周波数算出部は、前記一の小型RFコイルを介して磁気共鳴信号を取得し、
    取得した前記磁気共鳴信号の虚部あるいは実部の周波数を算出し、
    虚部あるいは実部の周波数と、前記発振機から発振された前記信号の周波数とに基づいて、少なくとも前記一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を算出することを特徴とする測定装置。
  5. 請求項1乃至のいずれかに記載の測定装置において、
    前記プロトン性溶媒の挙動は、プロトン性溶媒量、プロトン性溶媒の易動性、プロトン性溶媒の移動量のうちの少なくともいずれか一つであることを特徴とする測定装置。
  6. 請求項1乃至のいずれかに記載の測定装置において、
    前記プロトン性溶媒の挙動は、プロトン性溶媒量およびプロトン性溶媒の易動性のうち、少なくともいずれか一方であり、
    前記試料に対して、勾配磁場を印加する勾配磁場印加部と、
    前記試料中のプロトン性溶媒量を測定する第一の測定モードと、前記試料中のプロトン性溶媒の易動性を測定する第二の測定モードとを含む複数の測定モードのうちいずれかを選択するモード選択部と、
    前記モード選択部により選択された測定モードに応じて前記小型RFコイルおよび前記勾配磁場印加部の動作を制御する制御部と、を有し、
    前記演算部は、前記第一の測定モードにおいて取得された磁気共鳴信号に基づいて前記試料中のプロトン性溶媒量を算出する第一の算出部と、
    前記第二の測定モードにおいて取得された磁気共鳴信号に基づいて前記試料中のプロトン性溶媒の易動性を算出する第二の算出部と、を有し、
    前記制御部は、
    前記第一の測定モードにあるとき、前記試料に対し、前記小型RFコイルにより励起用振動磁場を印加するとともに、前記励起用振動磁場に対応して前記特定箇所に発生する磁気共鳴信号を前記小型RFコイルにより取得し、
    前記第二の測定モードにあるとき、前記試料に対し、前記小型RFコイルにより励起用振動磁場を印加するとともに前記勾配磁場印加部により勾配磁場を印加し、これらの磁場に対応して発生する磁気共鳴信号を前記小型RFコイルにより取得するように構成されたことを特徴とする測定装置。
  7. 試料に対して静磁場を印加する静磁場印加部と、前記試料に対して励起用振動磁場を印加するとともに、前記試料中の特定箇所で発生した磁気共鳴信号を取得する、前記試料よりも小さい複数の小型RFコイルと、前記小型RFコイルで取得した前記磁気共鳴信号に基づいて、プロトン性溶媒の挙動を算出する演算部と、所定の周波数の信号を発振する発振機、前記発振機の周波数を設定する設定部および前記発振機からの信号を変調してRFパルスを生成する変調器を有し、前記各小型RFコイルに前記励起用振動磁場を発生させるためのRFパルスを生成するRFパルス生成部と、を有し、前記RFパルス生成部の設定部は、前記試料に対し、前記静磁場を印加した際の、一の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数と、他の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数との相関関係を記憶する相関関係記憶部と、前記試料に対し、前記静磁場を印加した際の、前記一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を算出する周波数算出部と、前記周波数算出部で算出した前記一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数と、前記相関関係記憶部に記憶された前記相関関係とに基づいて、他の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を予測する予測部と、を備えた測定装置を使用して、試料中のプロトン性溶媒の挙動の分布を測定する測定方法であって、
    前記試料に対し、前記静磁場印加部から静磁場を印加する工程と、
    前記RFパルス生成部の設定部により、前記発振機の周波数を、前記静磁場が印加された前記試料の各小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数に同調させて、前記発振機の周波数を設定する工程と、
    発振機の周波数を設定する前記工程において設定された周波数の信号を前記発振機から発振し、前記発振機からの信号を前記変調器により変調してRFパルスを生成し、前記各小型RFコイルに対し、各小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数に対応した周波数のRFパルスを送出する工程と、
    前記各小型RFコイルから、前記試料に対して、励起用振動磁場を印加する工程と、
    前記各小型RFコイルを介して、試料中の特定箇所で発生した磁気共鳴信号を取得する工程と、
    取得した前記磁気共鳴信号に基づいて、演算部により、前記試料中のプロトン性溶媒の挙動の分布を算出する工程とを含むことを特徴とする測定方法。
  8. 試料に対して静磁場を印加する静磁場印加部と、前記試料に対して励起用振動磁場を印加するとともに、前記試料中の特定箇所で発生した磁気共鳴信号を取得する、前記試料よりも小さい複数の小型RFコイルと、前記小型RFコイルで取得した前記磁気共鳴信号に基づいて、プロトン性溶媒の挙動を算出する演算部と、所定の周波数の信号を発振する発振機、前記発振機の周波数を設定する設定部および前記発振機からの信号を変調してRFパルスを生成する変調器を有し、前記各小型RFコイルに前記励起用振動磁場を発生させるためのRFパルスを生成するRFパルス生成部と、を有し、前記RFパルス生成部の設定部は、前記試料に対し、前記静磁場を印加した際の、一の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数と、他の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数との相関関係を記憶する相関関係記憶部と、前記試料に対し、前記静磁場を印加した際の、前記一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を算出する周波数算出部と、前記周波数算出部で算出した前記一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数と、前記相関関係記憶部に記憶された前記相関関係とに基づいて、他の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を予測する予測部と、を備えた測定装置を制御して、試料中のプロトン性溶媒の挙動の分布を測定するプログラムであって、
    前記試料に対し、前記静磁場印加部から静磁場を印加する工程と、
    前記RFパルス生成部の設定部により、前記発振機の周波数を、前記静磁場が印加された前記試料の各小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数に同調させて、前記発振機の周波数を設定する工程と、
    発振機の周波数を設定する前記工程において設定された周波数の信号を前記発振機から発振し、前記発振機からの信号を前記変調器により変調してRFパルスを生成し、前記各小型RFコイルに対し、各小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数に対応した周波数のRFパルスを送出する工程と、
    前記各小型RFコイルから、前記試料に対して、励起用振動磁場を印加する工程と、
    前記各小型RFコイルを介して、試料中の特定箇所で発生した磁気共鳴信号を取得する工程と、
    取得した前記磁気共鳴信号に基づいて、演算部により、前記試料中のプロトン性溶媒の挙動の分布を算出する工程とを実行させることを特徴とするプログラム。
  9. 請求項に記載のプログラムにおいて、
    発振機の周波数を設定する前記工程は、
    前記静磁場が印加された前記試料の少なくとも一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数の経時変化を取得する工程と、
    所定の時刻において、前記静磁場が印加された前記試料の少なくとも前記一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を算出する工程と、
    磁気共鳴周波数の経時変化と、所定の時刻における少なくとも前記一の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数とから、プロトン性溶媒の挙動の測定時刻における少なくとも前記一の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数を推測する工程とを含むことを特徴とするプログラム。
  10. 請求項またはに記載のプログラムにおいて、
    前記測定装置の設定部は、前記静磁場を印加した際の、一の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数と、他の小型RFコイルの設置位置の磁気共鳴周波数との相関関係を記憶する記憶部を有し、
    発振機の周波数を設定する前記工程は、
    静磁場が印加された前記試料の前記一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を算出する工程と、
    前記一の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数と、前記記憶部に記憶された前記相関関係とに基づいて、他の小型RFコイルの設置位置における磁気共鳴周波数を予測する工程とを含むことを特徴とするプログラム。
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