以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々に変更して実施することができる。
本発明の照明装置は、光源と、光源から発する光を透光又は導光し得る光学部材(適宜「外部光学部材」という場合がある。)とを少なくとも有するものであって、光源が、凹部を有するパッケージと、パッケージの凹部内に配置される半導体発光素子と、半導体発光素子を封止する封止部材とを備えて構成されるとともに、以下の(i)〜(iii)の特徴を備えてなるものである。
(i)封止部材が弾性体からなる。
(ii)光学部材と封止部材とが実質的に空気層を介することなく接合されている。
(iii)光学部材と封止部材との屈折率の差が0.17以内である。
即ち、本発明の照明装置は、光源に用いられている封止部材を、半導体発光素子を保護するだけではなく接合部材としても機能させて、光源と外部光学部材との接合を密着性の高いものとするとともに、外部光学部材の屈折率(これを以下、記号「ne」で表わす場合がある。)と封止部材の屈折率(これを以下、記号「no」で表わす場合がある。)との差(絶対値で表わす。これを以下、適宜「屈折率段差」と言うとともに、記号「|ne−no|」で表わす場合がある。)を特定の範囲内に調整することで、光源から外部光学部材への入光効率を向上させ、高い輝度を実現するものである。
本発明の照明装置の態様としては、主に以下の二つの態様が挙げられる。
(1)光学部材が、互いに対向する出射面と反射面とを有する導光板として形成され、光源が導光板の一端面又は対向する二端面に接合され、光源からの光を導光板の端面から入射させて出射面から出射させるように構成された態様(面発光装置)。
(2)光学部材が、入射面と出射面を有するアウターレンズとして形成され、光源がアウターレンズの入射面に接合され、光源からの光をアウターレンズの入射面から入射させて出射面から出射させるように構成された態様(半導体照明装置)。
以下の記載では、まず、本発明の照明装置の一実施形態として、上記(1)面発光装置について詳細に説明し、続いて、本発明の照明装置の別の実施形態として、上記(2)半導体照明装置について、主に面発光装置の場合との違いを中心に簡単に説明する。
なお、光源が有する半導体発光素子としては、発光ダイオード(Light Emitting Diodes:以下適宜「LED」という。)素子や、レーザーダイオード(Laser Diode: 以下適宜「LD」という。)素子などが挙げられる。以下の記載では主に半導体発光素子としてLED素子を使用する場合を例に説明する。また、半導体発光素子としてLED素子を用いた光源を「LED光源」という場合がある。但し、半導体発光素子はLED素子に限られるものではなく、LD素子等の任意の半導体発光素子を用いることが可能である。
[I.面発光装置]
本発明の第1実施形態に係る照明装置である面発光装置は、光学部材が、互いに対向する出射面と反射面とを有する導光板として形成され、光源が導光板の一端面又は対向する二端面に接合され、光源からの光を導光板の端面から入射させて出射面から出射させるように構成されたものである。そして、光源が、凹部を有するパッケージと、パッケージの凹部内に配置される半導体発光素子と、半導体発光素子を封止する封止部材とを備えて構成されるとともに、上述の(i)〜(iii)の特徴を備えてなるものである。
図1(a),(b)は何れも、本発明の第1実施形態に係る照明装置(面発光装置)の構成を模式的に示す図であり、図1(a)は側面図、図1(b)は上面図である。図1(a),(b)に示す面発光装置100は、外枠103内に、一方の主面である出射面(発光面)と、出射面に対向する他方の主面である反射面とを有する導光板101と、その導光板101の端面に配置されたLED光源102と、LED光源102を固定している基板105と、導光板101の第1の主面側に設けられた拡散シート107と、導光板101の第2の主面側に設けられた反射シート106とを有してなり、LED光源102からの光を導光板101の一方の主面全体から光を出射させるように構成されている。
図2は、本発明の第1実施形態に係る照明装置(面発光装置)が備える光源102の構成の例を模式的に示す断面図である。図2において、図1と同一の構成要素については、同一の符号を用いて表わしている。図2に示すLED光源200(102)は、凹部を有するパッケージ201と、その凹部内に実装されたLED素子202と、このLED素子202を封止する封止部材203とからなる。パッケージ201の凹部内にはリード電極204が設けられ、LED光源102はこのリード電極204に接続されて、パッケージ201の外部からLED光源102に電圧を印加することができるように構成されている。
そして、図2に示すLED光源200(102)は、封止部材203がパッケージ201上面より突出するように設けられると共に、少なくとも突出した部分が弾性体からなり、且つ、封止部材と導光板との屈折率段差が所定の範囲を満たすことを特徴とするものである。これにより、導光板101の端面にLED光源102を実装させるときに、接合部104にかかる外力によって弾性体の形状を変化させて、導光板101端面とLED光源102とを密着性よく接合することができ、光を効率よく導光板101内に導入することができる。
本実施形態では、面発光装置100のLED光源102を導光板101の端面に接合させて用いる場合は、指向性については、LED光源102ではなく導光板101の端面や反射面或いは出射面の加工で制御することができる。すなわち、LED光源102は指向性を気にすることなく、その形状を任意のものとすることができる。本実施形態では、封止部材203として弾性体を用い、その部分を単なる封止部材ではなく導光板101端面との接合部104として密着させることを前提として用いることを特徴としている。これにより、接着剤を用いずに密着性の高い接合部とすることができる。しかも、LED光源102の一部である封止部材を接合部として用いるので、別に接着剤を用いる時には導光板101とLED光源102とが接合しない部分にも接着剤が付着する恐れがあり、不要な接着剤が露出された状態となる。これにより、ゴミの付着等の課題が生じるが、本実施形態においては導光板101とLED光源102とが接合される部分のみで効率よく接合されているので、このような課題が生じることもなく、LED光源102からの光は効率よく導光板101に入射される。
〔光源〕
(パッケージ)
本実施形態において、パッケージ201は凹部を有し、その内部に後述のLED素子(半導体発光素子)202が配置される。パッケージ201の形状や寸法、並びにその凹部の形状や寸法は特に制限されず、その用途や併用するLED素子(半導体発光素子)202の形状等に応じて適宜選択されるが、例えばカップ状等の形状が好ましい。パッケージ201の材料も特に制限されないが、通常は酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等のセラミックス;鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、金、銀、白金等の金属或いはこれらの合金;ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ナイロン樹脂、ポリフタルアミド等の樹脂などの材料が用いられる。また、パッケージ201の凹部内にはリード電極204が設けられ、LED光源102はこのリード電極204に接続されて、パッケージ201の外部からLED光源102に電圧を印加することができるように構成されている。
(LED素子)
本実施形態において、LED素子202は、同一面側に正負一対の電極を有し、且つ、側方端面から発光の一部を発光することが可能であれば、その種類は特に限定されない。また、蛍光物質を用いる場合は、用いる蛍光物質を励起可能な波長を発光できる発光層を有する半導体発光素子を用いることが好ましい。このような半導体発光素子として、ZnSeやGaNなど種々の半導体を挙げることができるが、蛍光物質を効率良く励起できる短波長を発光することが可能な窒化物半導体(InXAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好適に挙げられる。半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造或いはダブルへテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって、発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。
窒化物半導体を使用した場合、半導体用基板にはサファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO等の材料が好適に用いられる。結晶性の良い窒化物半導体を量産性よく形成させるためにはサファイア基板を用いることが好ましい。このサファイア基板上にMOCVD法などを用いて窒化物半導体を形成させることができる。サファイア基板上にGaN、AlN、GaAIN等のバッファ層を形成しその上にpn接合を有する窒化物半導体を形成させる。
窒化物半導体を使用したpn接合を有する発光素子の例として、バッファ層上に、n型窒化ガリウムで形成した第1のコンタクト層、n型窒化アルミニウム・ガリウムで形成させた第1のクラッド層、窒化インジウム・ガリウムで形成した活性層、p型窒化アルミニウム・ガリウムで形成した第2のクラッド層、p型窒化ガリウムで形成した第2のコンタクト層を順に積層させたダブルへテロ構成などが挙げられる。窒化物半導体は、不純物をドープしない状態でn型導電性を示す。発光効率を向上させるなど所望のn型窒化物半導体を形成させる場合は、n型ドーパントとしてSi、Ge、Se、Te、C等を適宜導入することが好ましい。一方、p型窒化物半導体を形成させる場合は、p型ドーパントであるZn、Mg、Be、Ca、Sr、Ba等をドープさせる。窒化物半導体は、p型ドーパントをドープしただけではp型化し難いため、p型ドーパント導入後に、炉による加熱やプラズマ照射等により低抵抗化させることが好ましい。電極形成後、半導体ウエハーからチップ状にカットさせることで、窒化物半導体からなる発光素子を形成させることができる。
本発明において、LED光源として混色光、特に白色系を発光させる場合は、蛍光物質からの発光波長との補色関係や透光性樹脂の劣化等を考慮して、LED素子の発光波長は通常350nm以上、中でも360nm以上、更には370nm以上、また、通常530nm以下、中でも490nm以下、更には475nm以下の範囲とすることが好ましい。発光波長を上記範囲内とすることによって、LED素子と蛍光物質との励起効率及び発光効率を、何れも向上させることが可能となる。また、パッケージ上面よりも下になる封止部材として、紫外線により劣化し難い樹脂や無機物であるガラス等を用いた場合、350nmより短い紫外線領域或いは可視光の短波長領域を主発光波長とするLED素子を用いることもできる。紫外領域の波長を有するLED素子を利用する場合は、蛍光物質により変換された発光色のみにより色度が決定されるため、可視光を発光する半導体発光素子を用いた場合に比較して半導体発光素子の波長などのバラツキを吸収することができ、量産性を向上させることができる。
LED素子として、400nm付近の短波長域を主発光ピークとする紫外線が発光可能なLED素子を用いてもよい。この場合、LED素子に近接する封止部材は、比較的紫外線に強い樹脂やガラス等と、紫外線を吸収して可視光を発光することが可能な蛍光物質とから構成することが好ましい。
(封止部材)
本発明において、LED素子202を覆う封止部材203は、パッケージ201の上面より突出するように設けられており、その突出する部分が弾性体からなることを特徴としている。封止部材は、その全てが弾性体である必要はなく、少なくともパッケージ上面よりも突出する部分が弾性体であればよい。
例えば、図2においては、二層構造の封止部材を示しており、上部層203(a)と下部層203(b)とから構成されているが、このように、パッケージ上面より突出する部分を含む上部層203(a)が弾性体からなり、下部層203(b)が弾性を有しない非弾性体、或いは弾性率の低い弾性体からなるようにすることで、接合時にパッケージ上面から突出する部分の弾性体が変形されるときに、突出部だけでなくその内部にまで歪みが生じ、その歪み応力によって素子電極とリード電極とを接合しているワイヤが破損したり、素子と基体とを接合しているマウント樹脂部が破損して位置ズレが生じるなどの課題を起こし難くすることができる。このように二層構造或いは二層以上の多層構造とすることで、封止部材の部位によって異なる機能をもたせることができる。二層構造とする場合、その境界の位置は特に問わないが、パッケージ上面に突出する部分は少なくとも上部層として弾性体を用い、好ましくはパッケージ上面よりやや下までを弾性体とすることで、外力によって上部層である弾性体だけが剥離することのないようにすることができる。
また、封止部材には、LED素子から発光波長を吸収して異なる波長に変換する蛍光物質を含有させることもできる。封止部材にこのような蛍光物質を含有させない場合はLED素子からの単色光を発光させることができるが、蛍光物質を用いることでLED素子からの光と蛍光物質からの光との混色光を有するLED光源とすることができる。混色光とすることで、任意の発光波長を有するLED光源とすることができ、特に、バックライトなどに用いられる白色系発光が得られ易くなる。また、蛍光物質に加えてフィラーや拡散剤等を併用することで、均一性に優れた混色光とすることができる。
また、封止部材を二層或いは二層以上の多層構造とする場合は、蛍光物質及び拡散剤等は、その両方に含有させることもできるし、どちらか一方にのみ含有させることもできる。どちらか一方に蛍光物質を含有させる場合は、弾性体からなる上部層よりも、弾性体又は非弾性体からなる下部層の方に含有させるのが好ましい。このようにすることで、LED素子と蛍光物質とを近傍に配置することができるので、より効率良くLED素子からの光を吸収し変換することができる。また、蛍光物質を弾性体からなる上部層にも含有させる場合は、下部層に含有させた蛍光物質と同じ蛍光物質でもよいし、異なる発光波長の蛍光物質、或いは異なる組成の蛍光物質でもよい。また、異なる蛍光物質を用いる場合は、一方の蛍光物質は、LED素子からの光ではなく、他方の蛍光物質からの発光波長を吸収して異なる波長に変換する蛍光物質を用いてもよい。これにより、LED素子からの光では励起されないような蛍光物質でも用いることができるので、より広い範囲の発光波長の混色光を得ることができる。
封止部材がパッケージ上面から突出する部分の高さは、2mm以下が好ましく、より好ましくは1mm以下である。2mmより多く突出すると、作業時に欠損するなどの問題があるので好ましくない。
また、封止部材を二層又は二層以上の多層構造とする場合は、パッケージ上面より突出する部分は少なくとも弾性体であるが、それより下部の封止部材においては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーンなどの耐候性に優れた透明樹脂やガラスなどが好適に用いられる。
封止部材の形成は通常、封止部材の材料を主成分とする液(これを以下適宜「封止部材形成液」という。)を用いて行なう。具体的には、例えば熱や光(紫外線等)等により硬化する樹脂等を封止部材の材料として用いる場合、硬化前の液体状態の樹脂に、必要に応じて後述の蛍光体、拡散剤、フィラー等の成分を混合したものを封止部材形成液として用い、パッケージの凹部に充填して硬化させることにより封止部材を形成する。また、溶剤に溶解又は分散させることが可能な樹脂等を封止部材の材料として用いる場合、この樹脂を溶剤に溶解又は分散させた溶液又は分散液に、必要に応じて後述の蛍光体、拡散剤、フィラー等の成分を混合したものを封止部材形成液として用い、パッケージの凹部に充填して溶剤を除去することにより封止部材を形成する。
(弾性体)
パッケージ上面より突出する封止部材に用いられる弾性体としては、所望の位置に設ける前は流動性を有するとともに、それを熱や光(紫外線等)により硬化させた後、常温において導光板端面に接合する際に変形が可能な堅さ(弾性率)となるものが好ましい。
弾性体の硬化時における体積変化が少ない場合は、一層でLED素子を覆うようにすることができる。これにより、作業工程が少なく、従って異物の混入を防ぐことができる。また、硬化時に体積変化し易いものは、二層或いは二層以上の多層構造の上部層として用いることで、体積変化に伴う各部品の損傷を防ぐことができる。
弾性体の具体的な材料としては、シロキサン骨格を主骨格とする樹脂(例えばシリコーン樹脂等)が挙げられる。シリカを主成分とする樹脂は、紫外〜可視光の長波長域に渡る広い波長範囲の光に対して劣化し難く、安定である。また、それらの光を吸収し難いので、LED光源からの光の損失を極力低減して、導光板内に効率よく入射させることができる。特に、後述する範囲の屈折率段差を達成する観点からは、弾性体の材料として、後述の特定の封止部材(本発明の封止部材)を用いることが好ましい。この封止部材については、後に欄を改めて説明する。
(屈折率段差)
本発明は、外部光学部材(本実施形態では導光板)の屈折率neと封止部材の屈折率noとの差である屈折率段差|ne−no|が、0.17以内であることを特徴としている。中でも、屈折率段差|ne−no|が0.16以下であることが好ましく、0.15以下であることがより好ましく、0.14以下であることがより好ましい。屈折率段差|ne−no|の値が上記範囲より大きいと、たとえ外部光学部材(導光板)と封止部材との密着性が良好であった場合でも、光源から封止部材を介して外部光学部材(導光板)へと入光する光の入光効率が低くなってしまい、得られる照明装置(本実施形態では面発光装置)の輝度が低くなってしまうので、好ましくない。なお、屈折率段差|ne−no|の下限値は特に制限されず、低ければ低いほど好ましい。理論上、屈折率段差|ne−no|の下限値は0である。
また、封止部材の屈折率も特に規定されないが、上記規定の範囲の屈折率段差を達成する観点から、併用する導光板の屈折率に応じて適宜調整することが好ましい。
具体的に、封止部材の屈折率の値は、封止部材を多層構造とする場合には、外部光学部材と直接接する最外層の弾性封止部材(例えば図2の場合、封止部材203(a))において、通常1.40以上、好ましくは1.45以上、また、通常1.80以下、好ましくは1.75以下の範囲である。弾性封止部材の屈折率がこの範囲より低いと、外部光学部材との屈折率段差が大きくなり、効率良く外部光学部材に光を入射させることが出来なくなる傾向があるので好ましくない。逆に弾性封止部材の屈折率がこの範囲より高いと、封止部材中の高屈折率成分の含有量が高くなり、弾性を保つのが困難となったり、透明度が低下したりする傾向があるので好ましくない。多層構造とする場合には、外部光学部材と直接接する最外層の弾性封止部材の屈折率を、下層の封止部材(例えば図2の場合、封止部材203(b))の屈折率と外部光学部材の屈折率との中間の値とすると、LED素子からの光をより効率良く取り出すことができ、輝度の高い照明装置を得ることが可能となる。
また、封止部材を多層構造とせず一層とする場合にも、上記の屈折率の範囲が好ましいが、中でも、封止部材の屈折率が、LED素子表面の屈折率(一般に2.2以上の高屈折率)と外部光学部材の屈折率との中間に位置すると、LED素子から封止部材への光取り出し効率と封止部材から外部光学部材への光取り出し効率との双方が改善され、相乗効果により、外部光学部材から出光する光の輝度が高くなるので特に好ましい。
なお、封止部材の屈折率は、特に限定されるものではないが、例えば、分光エリプソメーター、反射率測定、プリズムカップラーなどの光学的手法で測定される。
ここで、プリズムカップラーとは、以下の原理により測定を行なうものである。即ち、封止部材からなる膜を測定サンプルとして用意し、これをプリズム底部に接触させると、測定サンプル膜とプリズム底部の間には小さなエアーギャップができる。レーザー光はプリズム底部に当たった後、通常はプリズム底部から検出器へ全反射する。しかし、レーザー光の入射角を垂直から徐々に小さくすると、モードアングルと呼ばれる離散的な入射角θにおいて、レーザー光がエアーギャップを通過することができる。このモードアングルにおいては、レーザー光が測定サンプル膜内に進入して、光導波伝搬モードとなる。大まかな近似では、最初のモードアングルから膜の屈折率が、また、最初のモードアングルと二番目のモードアングルとの間の差から膜厚が得られる。
(蛍光物質)
本発明で使用可能な蛍光体の組成には特に制限はないが、結晶母体であるY2O3、Zn2SiO4等に代表される金属酸化物、Ca5(PO4)3Cl等に代表されるリン酸塩及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物に、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Cu、Au、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを付活剤または共付活剤として組み合わせたものが好ましい。
結晶母体の好ましい例としては、例えば、(Zn,Cd)S、SrGa2S4、SrS、ZnS等の硫化物、Y2O2S等の酸硫化物、(Y,Gd)3Al5O12、YAlO3、BaMgAl10O17、(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al10O17、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al10O17、BaAl12O19、CeMgAl11O19、(Ba,Sr,Mg)O・Al2O3、BaAl2Si2O8、SrAl2O4、Sr4Al14O25、Y3Al5O12等のアルミン酸塩、Y2SiO5、Zn2SiO4等の珪酸塩、SnO2、Y2O3等の酸化物、GdMgB5O10、(Y,Gd)BO3等の硼酸円、Ca10(PO4)6(F,Cl)2、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2等のハロリン酸塩、Sr2P2O7、(La,Ce)PO4等のリン酸塩等を挙げることができる。
ただし、上記の結晶母体及び付活剤または共付活剤は、元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた蛍光体は近紫外から可視領域の光を吸収して可視光を発するものであれば用いることが可能である。
具体的には、蛍光体として以下に挙げるものを用いることが可能であるが、これらはあくまでも例示であり、本発明で使用できる蛍光体はこれらに限られるものではない。なお、以下の例示では、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。例えば、「Y2SiO5:Ce3+」、「Y2SiO5:Tb3+」及び「Y2SiO5:Ce3+,Tb3+」を「Y2SiO5:Ce3+,Tb3+」と、「La2O2S:Eu」、「Y2O2S:Eu」及び「(La,Y)2O2S:Eu」を「(La,Y)2O2S:Eu」とまとめて示している。省略箇所はカンマ(,)で区切って示す。
・赤色蛍光体:
赤色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「赤色蛍光体」という)が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、ピーク波長が、通常570nm以上、好ましくは580nm以上、また、通常700nm以下、好ましくは680nm以下が望ましい。
このような赤色蛍光体としては、例えば、赤色破断面を有する破断粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンナイトライド系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Y,La,Gd,Lu)2O2S:Euで表わされるユウロピウム付活希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体等が挙げられる。
更に、特開2004−300247号公報に記載された、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、及びMoよりなる群から選ばれる少なくも1種の元素を含有する酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体であって、Al元素の一部又は全てがGa元素で置換されたアルファサイアロン構造をもつ酸窒化物を含有する蛍光体も、本実施形態において用いることができる。なお、これらは酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体である。
また、そのほか、赤色蛍光体としては、(La,Y)2O2S:Eu等のEu付活酸硫化物蛍光体、Y(V,P)O4:Eu、Y2O3:Eu等のEu付活酸化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu,Mn、(Ba,Mg)2SiO4:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、(Ca,Sr)S:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、YAlO3:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、LiY9(SiO4)6O2:Eu、Ca2Y8(SiO4)6O2:Eu、(Sr,Ba,Ca)3SiO5:Eu、Sr2BaSiO5:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、(Y,Gd)3Al5O12:Ce、(Tb,Gd)3Al5O12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、(Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)SiN2:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN3:Eu等のEu付活窒化物蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN3:Ce等のCe付活窒化物蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、(Ba3Mg)Si2O8:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)3(Zn,Mg)Si2O8:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn等のMn付活ゲルマン酸塩蛍光体、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)2O3:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)2O2S:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸硫化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)VO4:Eu,Bi等のEu,Bi付活バナジン酸塩蛍光体、SrY2S4:Eu,Ce等のEu,Ce付活硫化物蛍光体、CaLa2S4:Ce等のCe付活硫化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgP2O7:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn)2P2O7:Eu,Mn等のEu,Mn付活リン酸塩蛍光体、(Y,Lu)2WO6:Eu,Mo等のEu,Mo付活タングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)xSiyNz:Eu,Ce(但し、x、y、zは、1以上の整数)等のEu,Ce付活窒化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba,Mg)10(PO4)6(F,Cl,Br,OH):Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、((Y,Lu,Gd,Tb)1-xScxCey)2(Ca,Mg)1-r(Mg,Zn)2+rSiz-qGeqO12+δ等のCe付活珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
赤色蛍光体としては、β−ジケトネート、β−ジケトン、芳香族カルボン酸、又は、ブレンステッド酸等のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体からなる赤色有機蛍光体、ペリレン系顔料(例えば、ジベンゾ{[f,f’]−4,4’,7,7’−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1’,2’,3’−lm]ペリレン)、アントラキノン系顔料、レーキ系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料を用いることも可能である。
また、赤色蛍光体のうち、ピーク波長が580nm以上、好ましくは590nm以上、また、620nm以下、好ましくは610nm以下の範囲内にあるものは、橙色蛍光体として好適に用いることができる。このような橙色蛍光体の例としては、(Sr,Ba)3SiO5:Eu、(Sr,Mg)3(PO4)2:Sn2+、SrCaAlSiN3:Eu等が挙げられる。
・緑色蛍光体:
緑色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「緑色蛍光体」という)が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、ピーク波長が、通常490nm以上、好ましくは500nm以上、また、通常570nm以下、好ましくは550nm以下が望ましい。
このような緑色蛍光体として、例えば、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si2O2N2:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Ba,Ca,Sr,Mg)2SiO4:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリケート系蛍光体等が挙げられる。
また、そのほか、緑色蛍光体としては、Sr4Al14O25:Eu、(Ba,Sr,Ca)Al2O4:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ba)Al2Si2O8:Eu、(Ba,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca)2(Mg,Zn)Si2O7:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Y2SiO5:Ce,Tb等のCe,Tb付活珪酸塩蛍光体、Sr2P2O7−Sr2B2O5:Eu等のEu付活硼酸リン酸塩蛍光体、Sr2Si3O8−2SrCl2:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、Zn2SiO4:Mn等のMn付活珪酸塩蛍光体、CeMgAl11O19:Tb、Y3Al5O12:Tb等のTb付活アルミン酸塩蛍光体、Ca2Y8(SiO4)6O2:Tb、La3Ga5SiO14:Tb等のTb付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Ga2S4:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活チオガレート蛍光体、Y3(Al,Ga)5O12:Ce、(Y,Ga,Tb,La,Sm,Pr,Lu)3(Al,Ga)5O12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、Ca3Sc2Si3O12:Ce、Ca3(Sc,Mg,Na,Li)2Si3O12:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaSc2O4:Ce等のCe付活酸化物蛍光体、SrSi2O2N2:Eu、(Sr,Ba,Ca)Si2O2N2:Eu、Eu付活βサイアロン、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、BaMgAl10O17:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、SrAl2O4:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(La,Gd,Y)2O2S:Tb等のTb付活酸硫化物蛍光体、LaPO4:Ce,Tb等のCe,Tb付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al等の硫化物蛍光体、(Y,Ga,Lu,Sc,La)BO3:Ce,Tb、Na2Gd2B2O7:Ce,Tb、(Ba,Sr)2(Ca,Mg,Zn)B2O6:K,Ce,Tb等のCe,Tb付活硼酸塩蛍光体、Ca8Mg(SiO4)4Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In)2S4:Eu等のEu付活チオアルミネート蛍光体やチオガレート蛍光体、(Ca,Sr)8(Mg,Zn)(SiO4)4Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
また、緑色蛍光体としては、ピリジン−フタルイミド縮合誘導体、ベンゾオキサジノン系、キナゾリノン系、クマリン系、キノフタロン系、ナルタル酸イミド系等の蛍光色素、ヘキシルサリチレートを配位子として有するテルビウム錯体等の有機蛍光体を用いることも可能である。
・青色蛍光体:
青色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「青色蛍光体」という)が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、ピーク波長が、通常420nm以上、好ましくは440nm以上、また、通常480nm以下、好ましくは470nm以下が望ましい。
このような青色蛍光体としては、規則的な結晶成長形状としてほぼ六角形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なうBaMgAl10O17:Euで表わされるユウロピウム付活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)5(PO4)3Cl:Euで表わされるユウロピウム付活ハロリン酸カルシウム系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ立方体形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)2B5O9Cl:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、青緑色領域の発光を行なう(Sr,Ca,Ba)Al2O4:Euまたは(Sr,Ca,Ba)4Al14O25:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類アルミネート系蛍光体等が挙げられる。
また、そのほか、青色蛍光体としては、Sr2P2O7:Sn等のSn付活リン酸塩蛍光体、Sr4Al14O25:Eu、BaMgAl10O17:Eu、BaAl8O13:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa2S4:Ce、CaGa2S4:Ce等のCe付活チオガレート蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl10O17:Eu、BaMgAl10O17:Eu,Tb,Sm等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl10O17:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu、(Ba,Sr,Ca)5(PO4)3(Cl,F,Br,OH):Eu,Mn,Sb等のEu付活ハロリン酸塩蛍光体、BaAl2Si2O8:Eu、(Sr,Ba)3MgSi2O8:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Sr2P2O7:Eu等のEu付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al等の硫化物蛍光体、Y2SiO5:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaWO4等のタングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)BPO5:Eu,Mn、(Sr,Ca)10(PO4)6・nB2O3:Eu、2SrO・0.84P2O5・0.16B2O3:Eu等のEu,Mn付活硼酸リン酸塩蛍光体、Sr2Si3O8・2SrCl2:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
また、青色蛍光体としては、例えば、ナフタル酸イミド系、ベンゾオキサゾール系、スチリル系、クマリン系、ピラリゾン系、トリアゾール系化合物の蛍光色素、ツリウム錯体等の有機蛍光体等を用いることも可能である。
なお、蛍光体は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
これらの蛍光体粒子の中央粒径は特に限定されないが、通常100nm以上、好ましくは2μm以上、特に好ましくは5μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、特に好ましくは20μm以下である。また、蛍光体粒子の形状も、封止部材の形成に影響を与えない限り、例えば、蛍光体部形成液(上述の封止部材形成液に蛍光体を加えて得られる液)の流動性等に影響を与えない限り、特に限定されない。
本発明において、蛍光体粒子を加える方法は特に制限されない。蛍光体粒子の分散状態が良好な場合であれば、封止部材の形成液に後混合するだけでよい。
特に、封止部材として後述する特定の封止部材(本発明の封止部材)を形成する際に、蛍光体粒子の凝集が起こりやすい場合には、加水分解前の原料化合物を含む反応用溶液(以下適宜「加水分解前溶液」という。)に蛍光体粒子を前もって混合し、蛍光体粒子の存在下で加水分解・重縮合を行なうと、粒子の表面が一部シランカップリング処理され、蛍光体粒子の分散状態が改善される。
なお、蛍光体の中には加水分解性のものもあるが、本発明の封止部材は、塗布前の液状態(封止部材形成液)において、水分はシラノール体として潜在的に存在し、遊離の水分はほとんど存在しないので、そのような蛍光体でも加水分解してしまうことなく使用することが可能である。また、加水分解・重縮合後の封止部材形成液を脱水・脱アルコール処理を行なってから使用すれば、そのような蛍光体との併用が容易となる利点もある。
更に、本発明の封止部材は、イオン状の蛍光物質や有機・無機の蛍光成分を均一・透明に溶解・分散させた蛍光ガラスとすることも出来る。
(拡散剤)
本発明で使用可能な拡散剤の種類は特に限定されず、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム等の金属酸化物や金属酸化物塩に代表される、種々の公知の拡散剤を用いることができる。これらの拡散剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組成及び組み合わせで併用してもよい。拡散剤の粒径値は、その中心粒径が通常1.0μm以上、中でも1.5μm以上、また、通常5μm以下、中でも3μm以下の範囲とすることが好ましい。前記範囲の粒径値を有する拡散剤を用いると、LED素子及び蛍光物質からの光を良好に乱反射させ、色ムラを抑制することができるので好ましい。また、拡散剤が破砕形の場合、透過型電子顕微鏡法により測定される長辺長は、通常1.0μm以上、3.0μm以下の範囲とすることが好ましい。拡散剤の含有量は、封止部材100重量部に対して通常0.5重量部以上、5重量部以下の範囲とするが好ましい。これにより、LED素子及び蛍光物質からの光の取り出し効率を低下させることなくLED光源の光度及び信頼性を向上させることができる。また、発光スペクトルの半値幅を狭めることができ、色純度の高い発光装置が得られる。
中でも、本発明では、封止部材の屈折率を調整し、上記規定の屈折率段差を得る観点から、高い屈折率を有する金属酸化物を与える金属元素を封止部材中に存在させることが好ましい。高い屈折率を有する金属酸化物を与える金属元素の例としては、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)、Zr(ジルコニウム)、Ti(チタン)、Y(イットリウム)、Nb(ニオブ)、B(ホウ素)等が挙げられる。これらの金属元素は単独で使用されてもよく、二種以上が任意の組み合わせ及び比率で併用されてもよい。
以上の観点から、本発明では、封止部材が、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)、Zr(ジルコニウム)、Ti(チタン)、Y(イットリウム)、Nb(ニオブ)、及びB(ホウ素)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の元素を構成成分とするメタロキサン結合を主体とするものであることが好ましい。具体的には、これらSi、Al、Zr、Ti、Y、Nb及びB(以下、これらを「特定金属元素」という場合がある。)の合計含有率が、通常20重量%以上、中でも25重量%以上、更には30重量%以上であることがより好ましい。一方、上限としては、封止部材の可撓性を確保し、クラックや密着性不良を抑制する観点から、通常70重量%以下である。
また、特に後述する特定の封止部材(本発明の封止部材)を使用する場合には、固体Si−NMRスペクトルに関し後述の(1)の特徴を有することからも明らかなように、上述の特定金属元素のうち、少なくともSiを含有している必要がある。その他のAl、Zr、Ti、Y、Nb及びBについては何れも必須ではないが、耐熱性向上の観点からはAl又はB、また、高屈折率化の観点からはZr、Ti、Y又はNbを含有していることが好ましく、その中でも、青色から紫外領域の発光波長を有する封止部材として用いるためには、紫外線吸収の少ないAl、Zr、Y又はBを含有していることが特に好ましい。
特定金属元素(Si、Al、Zr、Ti、Y、Nb、B)の存在形態は、封止部材中において半導体発光デバイスの発光波長に対し透明となるならば、メタロキサン結合として均一なガラス層を形成していても、封止部材中に粒子状で存在していてもよい。特定金属元素が粒子状で存在している場合、その粒子内部の構造はアモルファス状であっても結晶構造であってもよいが、高屈折率を与えるためには結晶構造であることが好ましい。その粒子径は、封止部材の透明度を損なわないために、通常は半導体発光素子の発光波長以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、特に好ましくは30nm以下である。最も好ましい構成の一例は、有機基と結合したSiを主成分とし、屈折率向上剤或いは架橋度調整剤としてAl、Zr、Ti、Y、Nb、Bがメタロキサン結合により連結している、可撓性の有るアモルファス状のバインダの中に、屈折率向上剤として結晶化度の高いAl、Zr、Ti、Y、Nbの酸化物粒子がナノ粒子として分散されている状態である。
なお、封止部材における特定金属元素の合計含有率は、例えば実施例の説明において後述する方法を用いて誘導結合高周波プラズマ分光(inductively coupled plasma spectrometry:以下適宜「ICP」と略する。)分析を行ない、その結果に基づいて算出することができる。
また、封止部材における特定金属元素の合計含有率を上記規定範囲内となるように調整するためには、上述の特定金属元素のうち一種又は二種以上の元素を少なくとも含有する高屈折率の粒子(以下適宜「高屈折率特定金属粒子」という。)を、封止部材中に分散させればよい。高屈折率特定金属粒子の種類は特に制限されないが、通常は、上述の特定金属元素のうち一種又は二種以上を含有する金属酸化物からなる粒子であることが好ましい。特に、後述する特定の封止部材(本発明の封止部材)を使用する場合には、後述の一般式(1)や一般式(2)で表わされる化合物を加水分解・重縮合し、重縮合物を乾燥するとともに、加水分解・重縮合の前又は後に、上述の高屈折率特定金属粒子を反応系に加えることにより、封止部材における特定金属元素の合計含有率を上記規定範囲内に調整し、結果として高い屈折率を有する封止部材が得られることになる。その手順の詳細については、欄を改めて説明する。
(フィラー)
更に、本実施形態において、封止部材中に蛍光物質に加えてフィラーを含有させても良い。具体的な材料は拡散剤と同様であるが、拡散剤とはその中心粒径が異なる。具体的に、本明細書において「フィラー」とは、その中心粒径が5μm以上、100μm以下であるものをいう。このような粒径のフィラーを透光性樹脂中に含有させると、光散乱作用により発光装置の色度バラツキが改善される他、透光性樹脂の耐熱衝撃性を高めることができる。また、フィラーは蛍光物質と類似の粒径及び/又は形状を有することが好ましい。なお、本明細書において「類似の粒径」とは、各粒子のそれぞれの中心粒径の差が20%未満の場合をいい、「類似の形状」とは、各粒径の真円との近似程度を表す円形度の値の差が20%未満の場合をいう。このようなフィラーを用いることにより、蛍光物質とフィラーが互いに作用し合い、樹脂中にて蛍光物質を良好に分散させることができ色ムラが抑制される。なお、本明細書において「円形度」とは、下記式で求められる値をいう。
更に、蛍光物質及びフィラーは、何れもその中心粒径が通常15μm以上、中でも20μm以上、また、通常50μm以下、中でも40μm以下の範囲であることが好ましい。このように粒径を調整することにより、各粒子間に好ましい間隔を設けて配置させることができる。これにより光の取り出し経路が確保され、フィラー混入による光度低下を抑制しつつ指向特性を改善させることができる。また、このような粒径範囲の蛍光物質及びフィラーを透光性樹脂に含有させ、孔版印刷法にて封止部材を形成すると、封止部材硬化後のダイシング工程においてダイシングブレードの目詰まりが回復され、ドレッサー効果をもたらすことができ、量産性が向上される。
〔導光板〕
本実施形態の面発光装置の導光板は、互いに対向する出射面(発光面)と反射面とを有するものであり、一端面又は対向する二端面にLED光源が配置されている。LED光源からの光は導光板の端面から入射されて出射面から出射される。
本発明においては、封止部材の屈折率を適宜調整することができるため、導光板の材料は特に制限されないが、通常は、光透過性、成形性に優れたものを用いるのが好ましい。その具体例としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマー、ノルボルネン系樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。中でも、アクリル樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート樹脂は、光透過性、成形性、寸法安定性に優れるため好ましい。導光板の材料としては、これらの材料のうち何れか一種単独を用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。これらの材料は射出成形などの方法によって所望の形状に成形される。
また、導光板の屈折率も特に規定されないが、後述する範囲の屈折率段差を達成する観点から、併用する封止部材の屈折率に応じて適宜調整することが好ましい。具体的に、導光板の屈折率の値は、通常1.4以上、好ましくは1.5以上、また、通常1.9以下、好ましくは1.7以下の範囲である。導光板の屈折率が低過ぎると、導光板内での全反射が不十分となり、均一な発光を得ることが難しくなる傾向があり、逆に導光板の屈折率が高過ぎると、導光板から発光面側への光取り出しが困難となり、輝度が低下する傾向があるので、何れも好ましくない。
導光板の大きさや形状、厚さ等は任意であり、その用途に応じて適宜選択すればよい。また、LED光源が配置される端面は単一な平面でもよく、また、凹凸を有していてもよい。本実施形態のように、LED光源の封止部材として弾性体を用いてそれを接合部として用いる場合、形を変化させることを前提として弾性体を用いているので、接合後においてレンズ機能を有しているものではない。そのため、導光板内に入射させる光を均一に面状に発光させるには、導光板自体に発光面へ均一に出光するための機能を付与することが必要である。そのため、反射面や発光面に反射加工やシボ加工を施すことで、面発光特性を向上させることができる。シボ加工は、光の強度に応じてその大きさや形状を選択することができ、均一配列或いはランダム配列などの配列又はそれらを組み合わせた配列で用いることができる。
また、光を拡散するために、導光板の端面でLED光源と対向する部分、すなわちLED光源が接合される部分の入射端面を、単一な平面でなく凹凸を設けてもよい。このようにすることで、入射方向をあらかじめ設定することができので、任意の方向に光を屈折させて入射することができる。しかも、端面に凹凸が設けられている場合であっても、本実施形態のようにLED光源の封止部材が弾性体であれば、その凹凸にも対応して形状を変化させることができるので、LED光源と導光板端面との間の空気層を少なくすることができ、光の入射効率が低下し難くなる。導光板の端面の凹凸は、凸部、或いは凹部のみでもよく、その形状は三角錐や円錐、或いは三角柱や円柱、若しくは粗面にするなど、任意に選択することができる。
〔その他〕
本発明の照明装置を、外部光学部材として導光板を備えた面発光装置として実施する場合、その実施の形態は上述の第1実施形態に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意に変更を加えて実施することが可能である。
例えば、図3に示すLED光源300(102)のように、封止部材を単一の封止部材203(c)として構成することも可能である。この場合、この封止部材203(c)が弾性体から形成されると共に、この封止部材203(c)中に上述の蛍光物質が含有される。また、必要に応じて、上述の拡散剤やフィラー等の成分も含有されることになる。なお、図3は、本発明の第1実施形態に係る照明装置(面発光装置)が備える光源102の構成の別の例を模式的に示す断面図である。図3において、図1,2と同一の構成要素については、同一の符号を用いて表わしている。
[II.半導体照明装置]
本発明の第2実施形態に係る照明装置である半導体照明装置は、光学部材が、入射面と出射面を有するアウターレンズとして形成され、光源がアウターレンズの入射面に接合され、光源からの光をアウターレンズの入射面から入射させて出射面から出射させるように構成されたものである。そして、光源が、凹部を有するパッケージと、パッケージの凹部内に配置される半導体発光素子と、半導体発光素子を封止する封止部材とを備えて構成されるとともに、上述の(i)〜(iii)の特徴を備えてなるものである。
図4は、本発明の第2実施形態に係る半導体照明装置の構成を模式的に示す断面図である。図4において、図1〜3と同一の構成要素については、同一の符号を用いて表わしている。図4に示す半導体照明装置400は、本発明の第1実施形態に係る面発光装置に用いられたLED光源102と同様、パッケージ201と、LED素子202と、封止部材203とからなるLED光源102を備えると共に、LED光源102のパッケージ201の上方に外部光学部材としてアウターレンズ401が設けられる。アウターレンズ401の下面には、LED光源102の封止部材203の突出形状に相当する形状で、当該突出形状と同等若しくは若干小さめの寸法に設計された凹部が設けられ、当該凹部にLED光源102の封止部材203の突出部分が嵌合するようになっている。これにより、LED光源102の上面にアウターレンズ401を実装するときに、接合部分にかかる外力によって弾性体である封止部材203の形状を変化させて、アウターレンズ401の凹部内面とLED光源102の上面(特に封止部材203の上面)とを密着性よく接合することができ、光を効率よくアウターレンズ401内に入光させることができる。
本実施形態の半導体照明装置400において、LED光源102を構成するパッケージ201、LED素子202及び封止部材203の詳細は、上述の第1実施形態におけるLED光源102の場合と同様であるので、その説明は省略する。なお、図4ではLED光源102として図2のLED光源200を使用した場合を示しているが、勿論、図3のLED光源300を使用してもよく、更には本発明の規定を満たす限りにおいて、その他の構成のLED光源を使用することも可能である。
アウターレンズ401は、用途等に応じてその大きさ、形状、厚さ等を適宜選択することができるが、光透過性、成形性、指向性、耐衝撃性等に優れたものを用いるのが好ましい。具体例としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマー、ノルボルネン系樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。これらは射出成形等の公知の方法によって、所望の形状に成形される。
また、本実施形態においても、外部光学部材であるアウターレンズ401の屈折率neと封止部材の屈折率noとの差である屈折率段差|ne−no|が、通常0.17以内、好ましくは0.14以内、更に好ましくは0.10以内となるように構成される。
[III.封止部材]
本発明の照明装置の光源は、弾性体からなる封止部材として、以下に説明する特定の封止部材(これを適宜「本発明の封止部材」という。)を用いることが好ましい。本発明の封止部材を使用することによって、光学部材と封止部材とを実質的に空気層を介することなく接合することが可能になるとともに、光学部材と封止部材との屈折率の差(屈折率段差)を上記所定の範囲内に調整することができ、その結果、光源から外部光学部材への入光効率が高く、輝度に優れた照明装置が実現される。また、透明性、耐光性、耐熱性等にも優れ、長期間使用してもクラックや剥離を生じることがないという利点もある。
〔III−1.本発明の封止部材の構成〕
本発明の封止部材は、以下の特徴(1)〜(3)を有するものである。
(1)固体Si−NMRスペクトルにおいて、
(i)ピークトップの位置がケミカルシフト−40ppm以上0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク、及び、
(ii)ピークトップの位置がケミカルシフト−80ppm以上−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク
からなる群より選ばれるピークを、少なくとも1つ有する。
(2)ケイ素含有率が20重量%以上である。
(3)シラノール含有率が、0.1重量%以上10重量%以下である。
以下、まずこれらの特徴(1)〜(3)から説明する。
〔III−1−1.固体Si−NMRスペクトル〕
ケイ素を主成分とする化合物は、SiO2・nH2Oの示性式で表されるが、構造的には、ケイ素原子Siの四面体の各頂点に酸素原子Oが結合され、これらの酸素原子Oに更にケイ素原子Siが結合してネット状に広がった構造を有する。そして、以下に示す模式図は、上記の四面体構造を無視し、Si−Oのネット構造を表わしたものであるが、Si−O−Si−O−の繰り返し単位において、酸素原子Oの一部が他の成員(例えば−H、−CH3など)で置換されているものもあり、一つのケイ素原子Siに注目した場合、模式図の(A)に示す様に4個の−OSiを有するケイ素原子Si(Q4)、模式図の(B)に示す様に3個の−OSiを有するケイ素原子Si(Q3)等が存在する。そして、固体Si−NMR測定において、上記の各ケイ素原子Siに基づくピークは、順次に、Q4ピーク、Q3ピーク、・・・と呼ばれる。
これら酸素原子が4つ結合したケイ素原子は、一般にQサイトと総称される。本発明においてはQサイトに由来するQ0〜Q4の各ピークをQnピーク群と呼ぶこととする。有機置換基を含まないシリカ膜のQnピーク群は、通常ケミカルシフト−80〜−130ppmの領域に連続した多峰性のピークとして観測される。
これに対し、酸素原子が3つ結合し、それ以外の原子(通常は炭素である。)が1つ結合しているケイ素原子は、一般にTサイトと総称される。Tサイトに由来するピークはQサイトの場合と同様に、T0〜T3の各ピークとして観測される。本発明においてはTサイトに由来する各ピークをTnピーク群と呼ぶこととする。Tnピーク群は一般にQnピーク群より高磁場側(通常ケミカルシフト−80〜−40ppm)の領域に連続した多峰性のピークとして観測される。
更に、酸素原子が2つ結合するとともに、それ以外の原子(通常は炭素である)が2つ結合しているケイ素原子は、一般にDサイトと総称される。Dサイトに由来するピークも、QサイトやTサイトに由来するピーク群と同様に、D0〜Dnの各ピーク(Dnピーク群)として観測され、QnやTnのピーク群より更に、高磁場側の領域(通常ケミカルシフト0〜−40ppmの領域)に、多峰性のピークとして観測される。これらのDn、Tn、Qnの各ピーク群の面積の比は、各ピーク群に対応する環境におかれたケイ素原子のモル比と夫々等しいので、全ピークの面積を全ケイ素原子のモル量とすれば、Dnピーク群及びTnピーク群の合計面積は通常これに対する炭素原子と直接結合した全ケイ素のモル量と対応することになる。
本発明の封止部材の固体Si−NMRスペクトルを測定すると、有機基の炭素原子が直接結合したケイ素原子に由来するDnピーク群及びTnピーク群と、有機基の炭素原子と結合していないケイ素原子に由来するQnピーク群とが、各々異なる領域に出現する。これらのピークのうち−80ppm未満のピークは前述の通りQnピークに該当し、−80ppm以上のピークはDn、Tnピークに該当する。本発明の封止部材においてはQnピークは必須ではないが、Dn、Tnピーク領域に少なくとも1本、好ましくは複数本のピークが観測される。
なお、封止部材のケミカルシフトの値は、例えば以下の方法を用いて固体Si−NMR測定を行ない、その結果に基づいて算出することができる。また、測定データの解析(半値幅やシラノール量解析)は、例えばガウス関数やローレンツ関数を使用した波形分離解析等により、各ピークを分割して抽出する方法で行なう。
〔固体Si−NMRスペクトル測定及びシラノール含有率の算出〕
封止部材について固体Si−NMRスペクトルを行なう場合、以下の条件で固体Si−NMRスペクトル測定及び波形分離解析を行なう。また、得られた波形データより、封止部材について、各々のピークの半値幅を求める。また、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することによりシラノール含有率を求める。
<装置条件>
装置:Chemagnetics社 Infinity CMX-400 核磁気共鳴分光装置
29Si共鳴周波数:79.436MHz
プローブ:7.5mmφCP/MAS用プローブ
測定温度:室温
試料回転数:4kHz
測定法:シングルパルス法
1Hデカップリング周波数:50kHz
29Siフリップ角:90゜
29Si90゜パルス幅:5.0μs
くり返し時間:600s
積算回数:128回
観測幅:30kHz
ブロードニングファクター:20Hz
<データ処理法>
封止部材については、512ポイントを測定データとして取り込み、8192ポイントにゼロフィリングしてフーリエ変換する。
<波形分離解析法>
フーリエ変換後のスペクトルの各ピークについてローレンツ波形及びガウス波形或いは両者の混合により作成したピーク形状の中心位置、高さ、半値幅を可変パラメータとして、非線形最小二乗法により最適化計算を行なう。
なお、ピークの同定はAIChE Journal, 44(5), p.1141, 1998年等を参考にする。
〔III−1−2.ケイ素含有率〕
本発明の封止部材は、ケイ素含有率が20重量%以上でなければならない(特徴(2))。従来の封止部材の基本骨格は炭素−炭素及び炭素−酸素結合を基本骨格としたエポキシ樹脂等の有機樹脂である。これに対し本発明の封止部材の基本骨格はガラス(ケイ酸塩ガラス)などと同じ無機質のシロキサン結合である。このシロキサン結合は、下記表1の化学結合の比較表からも明らかなように、封止部材として優れた以下の特徴がある。
(I)結合エネルギーが大きく、熱分解・光分解しにくいため、耐光性が良好である。
(II)電気的に若干分極している。
(III)鎖状構造の自由度は大きく、フレキシブル性に富む構造が可能であり、シロキサン鎖中心に自由回転可能である。
(IV)酸化度が大きく、これ以上酸化されない。
(V)電気絶縁性に富む。
これらの特徴から、シロキサン結合が3次元的に、しかも高架橋度で結合した骨格で形成されるシリコーン系の封止部材は、エポキシ樹脂などの従来の樹脂系封止部材と異なりガラス或いは岩石などの無機質に近く、耐熱性・耐光性に富む保護皮膜となることが理解できる。特にメチル基を置換基とするシリコーン系封止部材は、紫外領域に吸収を持たないため光分解が起こりにくく、耐光性に優れる。
本発明の封止部材のケイ素含有率は、上述の様に20重量%以上であるが、中でも25重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。一方、上限としては、SiO2のみからなるガラスのケイ素含有率が47重量%であるという理由から、通常47重量%以下の範囲である。
なお、封止部材のケイ素含有率は、例えば以下の方法を用いて誘導結合高周波プラズマ分光(inductively coupled plasma spectrometry:以下適宜「ICP」と略する。)分析を行ない、その結果に基づいて算出することができる。
〔ケイ素含有率の測定〕
封止部材の単独硬化物を100μm程度に粉砕し、白金るつぼ中にて大気中、450℃で1時間、ついで750℃で1時間、950℃で1.5時間保持して焼成し、炭素成分を除去した後、得られた残渣少量に10倍量以上の炭酸ナトリウムを加えてバーナー加熱し溶融させ、これを冷却して脱塩水を加え、更に塩酸にてpHを中性程度に調整しつつケイ素として数ppm程度になるよう定容し、ICP分析を行なう。
〔III−1−3.シラノール含有率〕
本発明の封止部材は、シラノール含有率が、通常0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、また、通常10重量%以下、好ましくは8重量%以下、更に好ましくは5重量%以下の範囲である(特徴(3))。
通常、アルコキシシランを原料としてゾルゲル法により得られるガラス体は、150℃、3時間程度の温和な硬化条件では完全に重合して酸化物になることは無く、一定量のシラノールが残存する。テトラアルコキシシランのみより得られるガラス体は高硬度・高耐光性であるが、架橋度が高いため分子鎖の自由度が小さく、完全な縮合が起こらないため残存シラノールの量が多い。また、加水分解・縮合液を乾燥硬化する際には、架橋点が多いため増粘が早く、乾燥と硬化が同時に進むため大きな歪みを持ったバルク体となる。このような部材を封止部材として用いると、長期使用時には残存シラノールの縮合による新たな内部応力が発生し、クラックや剥離、断線などの不具合を生じやすい。また、部材の破断面にはシラノールがより多く、透湿性は少ないものの表面吸湿性が高く水分の浸入を招きやすい。400℃以上の高温焼成によりシラノール含有率を減少させることが可能であるが、半導体発光デバイスの耐熱性は260℃以下のものがほとんどであり、現実的ではない。
一方、本発明の封止部材は、シラノール含有率が低いため経時変化が少なく、長期の性能安定性に優れ、吸湿・透湿性何れも低い優れた性能を有する。但し、シラノールが全く含まれない部材は半導体発光デバイスとの密着性に劣るため、本発明の封止部材においてはシラノール含有率に上記のごとく最適な範囲が存在する。
なお、封止部材のシラノール含有率は、例えば〔III−1−1.固体Si−NMRスペクトル〕の〔固体Si−NMRスペクトル測定及びシラノール含有率の算出〕において説明した方法を用いて固体Si−NMRスペクトル測定を行ない、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することにより算出することができる。
〔III−1−4.上記特徴(1)〜(3)により本発明の効果が得られる理由〕
本発明の封止部材は、上述の(1)〜(3)の特徴を備えることにより、厚膜部分でもクラックを生じず緻密に硬化し、ケースとの密着性・チップの封止特性に優れ、硬化後の光・熱に対する耐久性に優れる硬化物を得ることができる。この理由は定かではないが、次のように推測される。
無機ガラスからなる封止部材を得る方法としては、低融点ガラスを溶融して封止する溶融法と、比較的低温にてアルコキシシランなどを加水分解・重縮合した液を塗布し、乾燥硬化させるゾルゲル法がある。このうち溶融法から得られる部材は主としてQnピークのみが観測されるが、溶融に少なくとも350℃以上の高温を要し、半導体発光デバイスを熱劣化させるため現実的な方法ではない。
一方、ゾルゲル法において4官能のシラン化合物から得られる加水分解・重縮合生成物は、完全無機のガラスとなり耐熱・耐候性に極めて優れたものであるが、硬化反応はシラノールの縮合(脱水・脱アルコール)反応により架橋が進行するので、脱水が起こる分重量減少、体積収縮を伴う。そのため、Qnピークを持つ4官能のシランのみで原料を構成すると、硬化収縮の程度が大きくなりすぎ、被膜にクラックが発生しやすくなり、厚膜化することができなくなる。このような系では、骨材として無機粒子を添加したり、重ね塗りにより膜厚増が試みられているが、一般に10μm程度が限界膜厚となる。封止部材としてゾルゲルガラスを用いる場合、複雑な形状の配線部分上にモールドする必要があるため、500〜1000μmの膜厚を確保しなければならないという課題があった。また、前記したように、残留シラノールを十分に減少させ、完全無機のガラスを得るためには400℃以上の高温での加熱を要し、半導体デバイスを熱劣化させるため現実的でなかった。
これに対し、本発明の封止部材では、架橋密度を調整し、膜に可撓性を持たせるために、Tnピークを持つ3官能シラン及び/又はDnピークを持つ2官能シランを導入し、同時に加水分解・重縮合を行なうことにより、脱水縮合による体積減少量、及び架橋密度を機能に支障無い範囲で適度に減じ、かつ加水分解・縮合工程並びに乾燥工程を制御することにより、膜厚1000μmにも達する透明ガラス膜状又は透明エラストマー状の部材を得ることが可能となる。従って、本発明の封止部材においては−80ppm以上に観測されるTnピーク及び/又はDnピークの存在が必須となる。
このように2官能、或いは3官能の原料を主成分として厚膜化する方法としては、例えばメガネ等のハードコート膜の技術が知られているが、その膜厚は数μm以下である。これらハードコート膜では膜厚が薄いために溶媒の揮発が容易で均一な硬化が可能であり、基材との密着性及び線膨張係数の違いがクラックの主原因とされていた。これに対して本発明の封止部材では、膜厚が塗料並みに大きいために、膜自身にある程度の強度があり、多少の線膨張係数の違いは吸収可能となるが、溶媒乾燥による体積減のために薄膜の場合とは異なる内部応力発生が新たな課題となる。すなわち、LEDのカップ等の開口面積の狭い深型容器にモールドを行なう場合、膜深部での乾燥が不十分な状態で加熱硬化を行なうと、架橋後に溶媒揮発が起こり体積減となるため大きなクラックや発泡を生じる。このような膜には大きな内部応力がかかっており、この膜の固体Si−NMRを測定すると、検出されるDn、Tn、Qnピーク群は内部応力が小さい場合よりもシロキサン結合角に分布を生じ、各々、よりブロードなピークとなる。この事実は、Siに対して2個の−OSiで表される結合角にひずみが大きいことを意味する。すなわち同じ原料からなる膜でも、これらのピークの半値幅が狭いほどクラックが起きにくく高品質の膜となる。
なお、ひずみに応じて半値幅が大きくなる現象は、Si原子の分子運動の拘束の度合いが大きいほどより鋭敏に観測され、その現れやすさはDn<Tn<Qnとなる。
本発明の封止部材において、−80ppm以上の領域に観測されるピークの半値幅は、これまでにゾルゲル法にて知られている封止部材の半値幅範囲より小さい(狭い)ことを特徴とする。
ケミカルシフトごとに整理すると、本発明の封止部材において、ピークトップの位置が−80ppm以上−40ppm未満に観測されるTnピーク群の半値幅は、通常5.0ppm以下、好ましくは4.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上、好ましくは0.4ppm以上の範囲である。
同様に、ピークトップの位置が−40ppm以上0ppm以下に観測されるDnピーク群の半値幅は、分子運動の拘束が小さいために全般にTnピーク群の場合より小さく、通常3.0ppm以下、好ましくは2.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上の範囲である。
上記のケミカルシフト領域において観測されるピークの半値幅が上記の範囲より大きいと、分子運動の拘束が大きくひずみの大きな状態となり、クラックが発生しやすく、耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる虞がある。例えば、四官能シランを多用した場合や、乾燥工程において急速な乾燥を行ない大きな内部応力を蓄えた状態などにおいて、半値幅範囲が上記の範囲より大きくなる。
また、ピークの半値幅が上記の範囲より小さい場合、その環境にあるSi原子はシロキサン架橋に関わらないことになり、三官能シランが未架橋状態で残留する例など、シロキサン結合主体で形成される物質より耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる虞がある。
更に、上述したように、本発明の封止部材の固体Si−核磁気共鳴スペクトルにおいては、Dn、Tnピーク領域に少なくとも1本、好ましくは複数本のピークが観測される。したがって、本発明の封止部材の固体Si−核磁気共鳴スペクトルは、上述した範囲の半値幅を有するDnピーク群及びTnピーク群からなる群より選ばれるピークを、少なくとも1本、好ましくは2本以上有することが望ましい。
なお、本発明の封止部材の組成は、系内の架橋が主としてシリカを始めとする無機成分により形成される場合に限定される。すなわち、大量の有機成分中に少量のSi成分が含まれる封止部材において−80ppm以上に上述の半値幅範囲のピークが認められても、本発明の封止部材の説明に規定する良好な耐熱・耐光性及び塗布性能は得ることができない。なお、本発明の封止部材の説明の規定によるケイ素含有率20重量%以上の封止部材は、シリカ(SiO2)換算で43重量%以上のSiO2を含有する。
また、本発明の封止部材は、適当量のシラノールを含有しているため、デバイス表面に存在する極性部分にシラノールが水素結合し、密着性が発現する。極性部分としては、例えば、水酸基やメタロキサン結合の酸素等が挙げられる。
また、本発明の封止部材は、適当な触媒の存在下で加熱することにより、デバイス表面の水酸基との間に脱水縮合による共有結合を形成し、更に強固な密着性を発現することができる。
一方、シラノールが多すぎると、系内が増粘して塗布が困難になったり、活性が高くなり加熱により軽沸分が揮発する前に固化したりすることによって、発泡や内部応力の増大が生じ、クラックなどを誘起する虞がある。
〔III−1−5.硬度測定値〕
本発明の封止部材は、好ましくは、エラストマー状を呈する部材である。具体的には、デュロメータタイプAによる硬度測定値(ショアA)が、通常5以上、好ましくは7以上、より好ましくは10以上、また、通常90以下、好ましくは80以下、より好ましくは70以下である(特徴(4))。上記範囲の硬度測定値を有することにより、本発明の封止部材は、クラックが発生しにくく、耐リフロー性及び耐温度サイクル性に優れるという利点を得ることができる。
なお、上記の硬度測定値(ショアA)は、JIS K6253に記載の方法により測定することができる。具体的には、古里精機製作所製のA型ゴム硬度計を用いて測定を行なうことができる。
前記のように、本発明の封止部材は、好ましくは、所定の硬度測定値(ショアA)を有している。即ち、本発明の封止部材は、好ましくは、架橋密度が調整されたエラストマー状を呈している。半導体発光デバイスには熱膨張係数の異なる部材を複数使用することになるが、上記のようにエラストマー状を呈することにより、本発明の封止部材が上記の各部剤の伸縮による応力を緩和することができる。即ち、本発明の封止部材は内部応力が少ない。したがって、使用中に剥離、クラック、断線などを起こしにくく、耐リフロー性及び耐温度サイクル性に優れる半導体発光デバイスを提供することができる。
なお、ここでリフローとは、はんだペーストを基板に印刷し、その上に部品を搭載して加熱、接合するはんだ付け工法のことをいう。そして、耐リフロー性とは、最高温度260℃、10秒間の熱衝撃に耐え得る性質のことを指す。
従来の無機系封止剤は非常に硬く脆いため、半導体発光デバイスに用いられる熱膨張係数の異なる各部材の熱膨張・熱収縮に追随できず、使用中に剥離やクラック、断線を多発する課題があり、耐リフロー性や耐温度サイクル性に優れるものも未だ得られていなかった。しかし、本発明の封止部材によれば、前記のように優れた耐リフロー性及び耐温度サイクル性に優れる半導体発光デバイスを提供することができるのである。
〔III−1−6.ピーク面積比〕
本発明の封止部材は、次の条件(4’)を満たすことが好ましい。即ち、本発明の封止部材は、(4’)固体Si−核磁気共鳴スペクトルにおいて、(ケミカルシフト−40ppm以上0ppm以下のピークの総面積)/(ケミカルシフト−40ppm未満のピークの総面積)の比(以下適宜、本発明の封止部材の説明において「本発明にかかるピーク面積比」という)が、通常3以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、また、通常200以下、好ましくは100以下、より好ましくは50以下であることが好ましい。
本発明にかかるピーク面積比が上記の範囲にあることは、本発明の封止部材が、2官能シラン(Dサイト)を、3官能シラン(Tサイト)や4官能シラン(Qサイト)などの2官能以上のシランよりも多く有することを表わす。このように、2官能シランを多く有することにより、本発明の封止部材は条件(4)を満たすこと(エラストマー状を呈すること)が可能となり、応力を緩和することが可能となる。
ただし、本発明の封止部材は、条件(4’)を満たさなくともエラストマー状を呈する場合がある。例えば、ケイ素以外の金属のアルコキシド等のカップリング剤を架橋剤として用いて本発明の封止部材を製造した場合などが、この場合に該当する。本発明の封止部材に条件(4)を満足させるための手法は任意であり、この条件(4’)に限定されるものではない。
〔III−1−7.UV透過率〕
本発明の封止部材は、膜厚0.5mmでの半導体発光デバイスの発光波長における光透過率が、通常80%以上、中でも85%以上、更には90%以上であることが好ましい。半導体発光デバイスは各種の技術によりその光取り出し効率が高められているが、チップを封止したり蛍光体を保持するための透光性部材の透明度が低いと、これを用いた半導体発光デバイスの輝度が低減するため、高輝度な半導体発光デバイス製品を得ることが困難になる。
ここで「半導体発光デバイスの発光波長」とは、半導体発光デバイスの種類に応じて異なる値であるが、一般的には、通常300nm以上、好ましくは350nm以上、また、通常900nm以下、好ましくは500nm以下の範囲の波長を指す。この範囲の波長における光透過率が低いと、封止部材が光を吸収してしまい、光取り出し効率が低下して、高輝度のデバイスを得ることができなくなる。更に、光取り出し効率が低下した分のエネルギーは熱に変わり、デバイスの熱劣化の原因となるため好ましくない。
なお、紫外〜青色領域(300nm〜500nm)においては封止部材が光劣化しやすいので、この領域に発光波長を有する半導体発光デバイスに、耐久性に優れた本発明の封止部材を使用すれば、その効果が大きくなるので好ましい。
なお、封止部材の光透過率は、例えば以下の手法により、膜厚0.5mmに成形した平滑な表面の単独硬化物膜のサンプルを用いて、紫外分光光度計により測定することができる。
〔透過度の測定〕
封止部材の、傷や凹凸による散乱の無い厚さ約0.5mmの平滑な表面の単独硬化物膜を用いて、紫外分光光度計(島津製作所製UV−3100)を使用し、波長200nm〜800nmにおいて透過度測定を行なう。
但し、半導体デバイスの形状は様々であり、大多数は0.1mmを超える厚膜状態での使用であるが、LEDチップ(発光素子)から離れた位置に薄膜状の蛍光体層(例えばナノ蛍光体粒子や蛍光イオンを含む厚さ数μmの層)を設ける場合や、LEDチップの直上に薄膜上に高屈折光取り出し膜を設ける場合等、薄膜使用の用途もある。この様な場合には、この膜厚において80%以上の透過率を示すことが好ましい。このような薄膜状の適用形態においても、本発明の封止部材は優れた耐光性、耐熱性を示し、封止性能に優れ、クラック等なく安定して成膜できる。
〔III−1−8.TG−DTA測定による重量源〕
本発明の封止部材は優れた耐久性を有するが、その耐久性は熱重量・示差熱(thermogravimetry - differential thermal analysis:以下適宜「TG−DTA」と略す。)測定により評価可能である。具体的には、本発明の封止部材についてTG−DTA測定を行なった場合に、空気流通下、35℃から380℃まで昇温した際の重量減が、通常10重量%以下、好ましくは9重量%以下、更に好ましくは8重量%以下の範囲となる。
〔III−1−9.その他〕
本発明の封止部材は厚膜状に塗布可能であり、透明性に優れるとともに、封止性、耐熱性、耐紫外線性などにも優れるため、様々な形状の封止部材として適用することができる。特に、発光波長が青〜紫外域にある半導体発光デバイスにおいて、劣化の少ない有用な部材として使用することができる。
〔III−2.封止部材の製造方法〕
本発明の封止部材を製造する方法は特に制限されないが、例えば、後述の一般式(1)や一般式(2)で表わされる化合物及び/又はそれらのオリゴマーを加水分解・重縮合し、重縮合物(加水分解・重縮合物)を乾燥させることにより得ることができる。ただし、本発明の封止部材において、高い耐久性のエラストマー状封止部材を得ようとする場合には、シロキサン結合を主体とし、且つ、架橋密度を低減することが好ましい。したがって、一般式(1)で表わされる化合物又はオリゴマーを原料の主体とし、且つ、2官能単位を主体とする組成のものを原料の主体とすることが望ましい。また、このように2官能単位を原料の主体とした場合には、系が安定となり、ゲル化が起こりにくくなる。したがって、この場合、加水分解・重縮合物が溶媒を含有している場合には、乾燥させる前に事前に溶媒を留去するようにしてもよい。
以下、この製造方法(これを適宜「本発明の封止部材の製造方法」という。)について詳しく説明する。
〔III−2−1.原料〕
原料としては、下記一般式(1)で表わされる化合物(以下適宜、本発明の封止部材の説明において「化合物(1)」という。)及び/又はそのオリゴマーを用いる。
一般式(1)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンからなる群より選択される少なくとも1種の元素である。中でも、ケイ素が好ましい。
一般式(1)中、mは、Mの価数を表わし、1以上、4以下の整数である。また、「m+」とは、それが正の価数であることを表わす。
nは、X基の数を表わし、1以上、4以下の整数である。但し、m≧nである。
一般式(1)中、Xは、溶液中の水や空気中の水分などにより加水分解されて、反応性に富む水酸基を生成する加水分解性基であり、従来より公知のものを任意に使用することができる。例えば、C1〜C5の低級アルコキシ基、アセトキシ基、ブタノキシム基、クロル基等が挙げられる。なお、ここでCi(iは自然数)という表記は、炭素数がi個であることを表わす。また、これらの加水分解性基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
中でも、反応後に遊離する成分が中性であることから、C1〜C5の低級アルコキシ基が好ましい。特に、反応性に富み、遊離する溶媒が軽沸であることから、メトキシ基又はエトキシ基が好ましい。
更に、一般式(1)中でXがアセトキシ基やクロル基である場合には、加水分解反応後に酢酸や塩酸を遊離するため、絶縁性が必要とされる封止部材として使用する場合には、酸成分を除去する工程を付加することが好ましい。
一般式(1)中、Y1は、いわゆるシランカップリング剤の1価の有機基として公知のものを、いずれも任意に選択して使用することができる。中でも、本発明の封止部材の製造方法において一般式(1)におけるY1として特に有用な有機基とは、以下のY0に表される群(有用有機基群)から選ばれるものである。更に、半導体発光デバイスを構成する他の材料との親和性向上、密着性向上、封止部材の屈折率調整などのために、適宜、他の有機基を選択するようにしてもよい。
<有用有機基群Y0>
Y0:脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物、脂肪芳香族化合物より誘導される1価以上の有機基である。
また、群Y0に属する有機基の炭素数は、通常1以上、また、通常1000以下、好ましくは500以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは50以下である。
更に、群Y0に属する有機基が有する水素原子のうち少なくとも一部は、下記に例示する原子及び/又は有機官能基等の置換基で置換されていても良い。この際、群Y0に属する有機基が有する水素原子のうちの複数が下記置換基で置換されていても良く、この場合、下記に示す置換基の中から選択した1種又は2種以上の組み合わせにより置換されていても良い。
群Y0に属する有機基の水素原子と置換可能な置換基の例としては、F、Cl、Br、I等の原子;ビニル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、スチリル基、メルカプト基、エポキシ基、エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホン酸基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アシル基、アルコキシ基、イミノ基、フェニル基等の有機官能基などが挙げられる。
なお、上記全ての場合において、群Y0に属する有機基の有する水素原子と置換可能な置換基のうち、有機官能基については、その有機官能基の有する水素原子のうち少なくとも一部がF、Cl、Br、I等のハロゲン原子などで置換されていても良い。
ただし、群Y0に属する有機基の水素と置換可能な置換基として例示したもののなかでも、有機官能基は、導入しやすいものの一例であり、使用目的に応じてこの他各種の物理化学的機能性を持つ有機官能基を導入しても良い。
また、群Y0に属する有機基は、その中に連結基としてO、N、又はS等の各種の原子又は原子団を有するものであっても良い。
一般式(1)中、Y1は、上記の有用有機基群Y0に属する有機基などから、その目的により様々な基を選択できるが、耐紫外線性、耐熱性に優れる点から、メチル基を主体とすることが好ましい。
上述の化合物(1)の具体例を挙げると、Mがケイ素である化合物としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルクロロシラン、メチルトリクロロシラン、γ−アシノプロピルトリエトキシシラン、4−アシノブチルトリエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノメチルフェネチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、(p−クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、4−クロロフェニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
また、化合物(1)のうち、Mがアルミニウムである化合物としては、例えば、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリn−ブトキシド、アルミニウムトリt−ブトシキド、アルミニウムトリエトキシドなどが挙げられる。
また、化合物(1)のうち、Mがジルコニウムである化合物としては、例えば、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラn−プロポキシド、ジルコニウムテトラi−プロポキシド、ジルコニウムテトラn−ブトキシド、ジルコニウムテトラi−ブトキシド、ジルコニウムテトラt−ブトキシド、ジルコニウムジメタクリレートジブトキシドなどが挙げられる。
また、化合物(1)のうち、Mがチタンである化合物としては、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn−ブトキシド、チタンテトラi−ブトキシド、チタンメタクリレートトリイソプロポキシド、チタンテトラメトキシプロポキシド、チタンテトラn−プロポキシド、チタンテトラエトキシドなどが挙げられる。
ただし、これらに具体的に例示した化合物は、入手容易な市販のカップリング剤の一部であり、更に詳しくは、例えば、科学技術総合研究所発行の「カップリング剤最適利用技術」9章のカップリング剤及び関連製品一覧表により示すことが出来る。また、当然のことながら、本発明の封止部材の製造方法に使用できるカップリング剤は、これらの例示により制限されるものではない。
また、下記一般式(2)で表される化合物(以下適宜、本発明の封止部材の説明において「化合物(2)」という。)及び/又はそのオリゴマーも、上記化合物(1)及び/又はそのオリゴマーと同様に使用することが出来る。
一般式(2)において、M、X及びY1は、それぞれ独立に、一般式(1)と同様のものを表わす。特にY1としては、一般式(1)の場合と同様、上記の有用有機基群Y0に属する有機基などから、その目的により様々な基を選択できるが、耐紫外線性、耐熱性に優れる点から、メチル基を主体とすることが好ましい。
また、一般式(2)において、sは、Mの価数を表わし、2以上、4以下の整数である。また、「s+」は、それが正の整数であることを表わす。
更に、一般式(2)において、Y2は、u価の有機基を表わす。ただし、uは2以上の整数を表わす。したがって、一般式(2)中、Y2は、いわゆるシランカップリング剤の有機基として公知のもののうち2価以上のものを、任意に選択して使用することができる。
また、一般式(2)において、tは、1以上、s−1以下の整数を表わす。但し、t≦sである。
上記化合物(2)の例としては、各種有機ポリマーやオリゴマーに側鎖として加水分解性シリル基が複数結合しているものや、分子の複数の末端に加水分解性シリル基が結合しているものなどが挙げられる。
上記化合物(2)の具体例及びその製品名を以下に挙げる。
・ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
(信越化学製、KBE−846)
・2−ジエトキシメチルエチルシリルジメチル−2−フラニルシラン
(信越化学製、LS−7740)
・N,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン
(チッソ製、サイラエースXS1003)
・N−グリシジル−N,N−ビス[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]アミン
(東芝シリコーン製、TSL8227)
・N−グリシジル−N,N−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン
(東芝シリコーン製、TSL8228)
・N,N−ビス[(メチルジメトキシシリル)プロピル]アミン
(東芝シリコーン製、TSL8206)
・N,N−ビス[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン
(東芝シリコーン製、TSL8212)
・N,N−ビス[(メチルジメトキシシリル)プロピル]メタクリルアミド
(東芝シリコーン製、TSL8213)
・N,N−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン
(東芝シリコーン製、TSL8208)
・N,N−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン
(東芝シリコーン製、TSL8214)
・N,N−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]メタクリルアミド
(東芝シリコーン製、TSL8215)
・N,N’,N”−トリス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート
(ヒドラス化学製、12267−1)
・1,4−ビスヒドロキシジメチルシリルベンゼン
(信越化学製、LS−7325)
原料としては化合物(1)、化合物(2)、及び/又はそれらのオリゴマーを使用することができる。即ち、本発明の封止部材の製造方法では、原料として、化合物(1)、化合物(1)のオリゴマー、化合物(2)、化合物(2)のオリゴマー、及び化合物(1)と化合物(2)とのオリゴマーのいずれを用いてもよい。なお、原料として化合物(1)のオリゴマー又は化合物(2)のオリゴマーを用いる場合、そのオリゴマーの分子量は、本発明の封止部材を得ることができる限り任意であるが、通常400以上である。
ここで化合物(2)及び/又はそのオリゴマーを主原料として用いると系内の主鎖構造が有機結合主体となり耐久性に劣るものとなる虞がある。このため、化合物(2)は主として密着性付与や屈折率調整、反応性制御、無機粒子分散性付与などの機能性付与のため最小限の使用量用いることが望ましい。化合物(1)及び/又はそのオリゴマー(化合物(1)由来成分)と、化合物(2)及び/又はそのオリゴマー(化合物(2)由来成分)を同時に使用する場合には原料の総重量における化合物(2)由来成分の使用量割合が通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下であることが望ましい。
また、本発明の封止部材の製造方法において、原料として化合物(1)又は化合物(2)のオリゴマーを用いる場合には、オリゴマーを予め用意するようにしてもよいが、製造工程の中でオリゴマーを調製するようにしてもよい。即ち、化合物(1)又は化合物(2)のようなモノマーを原料とし、これを製造工程中で一旦オリゴマーとして、このオリゴマーから後の反応を進行させるようにしてもよい。
更に、原料としては、これらの化合物(1)、化合物(2)、及びそのオリゴマーのうち1種類だけを用いてよいが、二種類以上を任意の組み合わせ及び組成で混合してもかまわない。更に、予め加水分解された(即ち、一般式(1),(2)において−XがOH基である)化合物(1)、化合物(2)及びそのオリゴマーを用いるようにしてもよい。
但し、本発明の封止部材の製造方法においては、原料として、Mとしてケイ素を含有し、且つ、有機基Y1又は有機基Y2を少なくとも1つ有する化合物(1)、化合物(2)及びそのオリゴマー(加水分解されたものを含む)を、少なくとも1種以上用いる必要がある。また、系内の架橋が主としてシロキサン結合を始めとする無機成分により形成されることが好ましいことから、化合物(1)及び化合物(2)をともに使用する場合には、化合物(1)が主体となることが好ましい。
また、シロキサン結合を主体とする封止部材を得るためには、化合物(1)及び/又はそのオリゴマーを原料の主体として用いることが好ましい。更に、これらの化合物(1)のオリゴマー及び/又は化合物(2)のオリゴマーは、2官能を主体とした組成で構成されていることが、より好ましい。特に、この化合物(1)のオリゴマー及び/又は化合物(2)のオリゴマーの2官能単位は、2官能オリゴマーとして用いられることが好ましい。
更に、化合物(1)のオリゴマー及び/又は化合物(2)のオリゴマーのうち、2官能のもの(以下適宜、本発明の封止部材の説明において「2官能成分オリゴマー」という)を主体として用いる場合、これら2官能成分オリゴマーの使用量は、原料の総重量(即ち、化合物(1)、化合物(2)、及びそのオリゴマーの重量の和)に対して、通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。なお、上記割合の上限は通常97重量%以下である。2官能成分オリゴマーを原料の主体として使用することが、本発明の封止部材の製造方法によって、本発明の封止部材を容易に製造することができる要因のうちのひとつとなっているためである。
以下、2官能成分オリゴマーを原料の主体として用いたことによる利点について詳しく説明する。
例えば従来のゾルゲル法により製造されていた封止部材では、その原料を加水分解及び重縮合させた加水分解・重縮合物(塗布液(加水分解液)に含有されたもの等を含む)は、高い反応活性を有していた。したがって、その加水分解・重縮合物をアルコール等の溶媒で希釈しないと系内の重合が進み、すぐに硬化するため、成形や取り扱いが困難であった。例えば、従来は溶媒で希釈しない場合には、温度が40℃〜50℃程度であっても硬化することがあった。したがって、加水分解後に得られた加水分解・重縮合物の取り扱い性を確保するためには、加水分解・重縮合物に溶媒を共存させることが必須であった。
また、加水分解・重縮合物に溶媒を共存させたまま加水分解・重縮合物の乾燥・硬化を行なわせると、硬化時に脱水縮合による収縮に加え、脱溶媒による収縮(脱溶媒収縮)が加味される。これにより、従来の半導体発光デバイスでは、硬化物の内部応力が大きくなりがちであり、この内部応力に起因するクラック、剥離、断線などが生じやすかった。
更に、上記の内部応力を緩和するために封止部材を柔軟化する目的で原料として2官能成分モノマーを多用すると、重縮合体中の低沸環状体が多くなる虞があった。低沸環状体は硬化時に揮発してしまうため、低沸環状体が多くなると重量歩留まりが低下することになる。また、低沸環状体は硬化物からも揮発し、応力発生の原因となることがある。更に、低沸環状体を多く含む封止部材は耐熱性が低くなることがある。これらの理由により、従来は、封止部材を、性能の良いエラストマー状硬化体として得ることは困難であった。
これに対して、本発明の封止部材の製造方法では、原料として、別系で(即ち、加水分解・重縮合工程に関与しない系で)2官能成分をあらかじめオリゴマー化し、反応性末端を持たない低沸不純物を留去したものを原料として使用するようにしている。したがって、2官能成分(即ち、上記の2官能成分オリゴマー)を多用しても、それらの低沸不純物が揮発することはなく、硬化物重量歩留まりの向上を実現することができるとともに、性能の良いエラストマー状硬化物を得ることができる。
更に、2官能成分オリゴマーを主原料とすることにより、加水分解・重縮合物の反応活性を抑制することができる。これは、加水分解・重縮合物の立体障害及び電子効果、並びに、2官能成分オリゴマーを使用したことに伴いシラノール末端量が低減したことによるものと推察される。反応活性を抑制したことにより、溶媒を共存させなくても加水分解・重縮合物は硬化することはなく、したがって、加水分解・重縮合物を一液型、かつ、無溶媒系とすることができる。
また、加水分解・重縮合物の反応活性が低下したことにより、硬化開始温度を従来よりも高くすることが可能となった。したがって、加水分解・重縮合物の硬化開始温度以下の溶媒を加水分解・重縮合物に共存させた場合には、加水分解・重縮合物の乾燥時に、加水分解・重縮合物の硬化が開始されるよりも以前に溶媒が揮発することになる。これにより、溶媒を使用した場合であっても脱溶媒収縮に起因する内部応力の発生を抑制することが可能となる。
〔III−2−2.加水分解・重縮合工程〕
本発明の封止部材の製造方法ではまず、上述の化合物(1)、化合物(2)、及び/又はそれらのオリゴマーを加水分解・重縮合反応させる(加水分解・重縮合工程)。この加水分解・重縮合反応は、公知の方法によって行なうことができる。なお、以下適宜、本発明の封止部材の説明において化合物(1)、化合物(2)、及びそのオリゴマーを区別せずに指す場合、「原料化合物」という。
原料化合物の加水分解・重縮合反応を行なうために使用する水の理論量は、下記式(3)に示す反応式に基づき、系内の加水分解性基の総量の1/2モル比である。
なお、上記式(3)は、一般式(1),(2)のMがケイ素である場合を例として表わしている。また、「≡Si」及び「Si≡」は、ケイ素原子の有する4つの結合手のうち3つを省略して表わしたものである。
本発明の封止部材の製造方法の説明では、この加水分解時に必要な水の理論量、即ち、加水分解性基の総量の1/2モル比に相当する水の量を基準(加水分解率100%)とし、加水分解時に使用する水の量をこの基準量に対する百分率、即ち「加水分解率」で表わす。
本発明の封止部材の製造方法において、加水分解・重縮合反応を行なうために使用する水の量は、上述の加水分解率で表わした場合に、通常80%以上、中でも100%以上の範囲が好ましい。加水分解率がこの範囲より少ない場合、加水分解・重合が不十分なため、硬化時に原料が揮発したり、硬化物の強度が不十分となったりするおそれがある。一方、加水分解率が200%を超える場合、硬化途中の系内には常に遊離の水が残存し、チップや蛍光体に水分による劣化をもたらしたり、カップ部が吸水し、硬化時の発泡、クラック、剥離の原因となったりする場合がある。但し、加水分解反応において重要なのは100%近傍以上(例えば80%以上)の水で加水分解・重縮合を行なうということであり、塗布前に遊離の水を除く工程を付加すれば、200%を超える加水分解率を適用することは可能である。この場合、あまり大量の水を使用すると、除去すべき水の量や相溶剤として使用する溶媒の量が増え、濃縮工程が煩雑になったり、重縮合が進みすぎて部材の塗布性能が低下したりすることがあるので、加水分解率の上限は通常500%以下、中でも300%以下、好ましくは200%以下の範囲とすることが好ましい。
原料化合物を加水分解・縮重合する際には、既知の触媒などを共存させて、加水分解・縮重合を促進しても良い。この場合、使用する触媒としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの有機酸や、硝酸、塩酸、リン酸、硫酸などの無機酸、有機金属化合物触媒を用いることができる。このうち、半導体発光デバイスと直接接する部分に使用する部材とする場合には、絶縁特性に影響の少ない有機金属化合物触媒が好ましい。
上記の原料化合物の加水分解・重縮合物(重縮合物)は、好ましくは液状である。しかし、固体状の加水分解・重縮合物でも、溶媒を用いることにより液状となるものであれば、使用することができる。
加水分解・重縮合反応時に系内が分液し不均一となる場合には、溶媒を使用しても良い。溶媒としては、例えば、C1〜C3の低級アルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルエチルケトン、その他の水と均一に混合できる溶媒を任意に用いることができるが、中でも強い酸性や塩基性を示さないものが加水分解・重縮合に悪影響を与えない理由から好ましい。溶媒は1種を単独で使用しても良いが、複数種を併用することもできる。溶媒使用量は自由に選択できるが、半導体発光デバイスに塗布する際には溶媒を除去することが多いため、必要最低限の量とすることが好ましい。また、溶媒除去を容易にするため、沸点が100℃以下、より好ましくは80℃以下の溶媒を選択することが好ましい。なお、外部より溶媒を添加しなくても加水分解反応によりアルコール等の溶媒が生成するため、反応当初は不均一でも反応中に均一になる場合もある。
上記原料化合物の加水分解・重縮合反応は、常圧で実施する場合、通常15℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上、また、通常140℃以下、好ましくは135℃以下、より好ましくは130℃以下の範囲で行なう。加圧下で液相を維持することでより高い温度で行なうことも可能であるが、150℃を越えないことが好ましい。
加水分解・重縮合反応時間は反応温度により異なるが、通常0.1時間以上、好ましくは1時間以上、更に好ましくは3時間以上、また、通常100時間以下、好ましくは20時間以下、更に好ましくは15時間以下の範囲で実施される。
以上の加水分解・重縮合条件において、時間が短くなったり温度が低すぎたりすると、加水分解・重合が不十分なため硬化時に原料が揮発したり、硬化物の強度が不十分となるおそれがある。また、時間が長くなったり温度が高すぎたりすると、重合物の分子量が高くなり、系内のシラノール量が減少し、塗布時に密着性不良が生じたり硬化が早すぎて硬化物の構造が不均一となり、クラックを生じやすくなる。以上の傾向を踏まえて、所望の物性値に応じて条件を適宜選択することが望ましい。
上記加水分解・重縮合反応が終了した後、得られた加水分解・重縮合物はその使用時まで室温以下で保管されるが、この期間にもゆっくりと重縮合が進行するため、特に厚膜状の部材として使用する場合には前記加温による加水分解・重縮合反応が終了した時点より室温保管にて通常60日以内、好ましくは30日以内、更に好ましくは15日以内に使用に供することが好ましい。必要に応じ凍らない範囲にて低温保管することにより、この期間を延長することができる。
〔III−2−3.溶媒留去〕
上記の加水分解・重縮合工程において溶媒を用いた場合には、通常、乾燥の前に加水分解・重縮合物から溶媒を留去することが好ましい(溶媒留去工程)。これにより、溶媒を含まない液状の加水分解・重縮合物を得ることができる。上述したように、従来は溶媒を留去すると加水分解・重縮合物が硬化してしまうために加水分解・重縮合物の取り扱いが困難となっていた。しかし、本発明の封止部材の製造方法では、2官能成分オリゴマーを使用すると加水分解・重縮合物の反応性が抑制されるため、乾燥の前に溶媒を留去しても加水分解・重縮合物は硬化しなくなり、溶媒の留去が可能である。溶媒を乾燥前に留去しておくことにより、脱溶媒収縮によるクラック、剥離、断線などを防止することができる。
なお、通常は、溶媒の留去の際に、加水分解に用いた水の留去も行なわれる。また、留去される溶媒には、上記の一般式(1)(2)で表わされる原料化合物の加水分解・重縮合反応により生成される、XH等で表わされる溶媒も含まれる。
溶媒を留去する方法は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、加水分解・重縮合物の硬化開始温度以上の温度で溶媒の留去を行なうことは避けるようにする。
溶媒の留去を行なう際の温度条件の具体的な範囲を挙げると、通常60℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、また、通常150℃以下、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下である。この範囲の下限を下回ると溶媒の留去が不十分となる虞があり、上限を上回ると加水分解・重縮合物がゲル化する虞がある。
また、溶媒の留去を行なう際の圧力条件は、通常は常圧である。更に、必要に応じて溶媒留去時の反応液沸点が硬化開始温度(通常は120℃以上)に達しないように減圧する。また、圧力の下限は、加水分解・重縮合物の主成分が留出しない程度である。
ただし、溶媒の留去を行なうことは、必須の操作ではない。特に、加水分解・重縮合物の硬化温度以下の沸点を有する溶媒を用いている場合には、加水分解・重縮合物の乾燥時に、加水分解・重縮合物の硬化が開始される前に溶媒が揮発してしまうため、特に溶媒留去工程を行なわなくても脱溶媒収縮によるクラック等の生成は防止することができる。しかし、溶媒の揮発により加水分解・重縮合物の体積が変化することもありえるため、封止部材の寸法や形状を精密に制御する観点からは、溶媒留去を行なうことが好ましい。
〔III−2−4.乾燥〕
上述の加水分解・重縮合反応により得られた加水分解・重縮合物を乾燥させる(乾燥工程。又は、硬化工程)ことにより、本発明の封止部材を得ることができる。この加水分解・重縮合物は上述のように通常は液状であるが、これを目的とする形状の型に入れた状態で乾燥を行なうことにより、目的とする形状を有する本発明の封止部材を形成することが可能となる。また、この加水分解・重縮合物を目的とする部位に塗布した状態で乾燥を行なうことにより、目的とする部位に直接、本発明の封止部材を形成することが可能となる。なお、この液状の加水分解・重縮合物を、本発明の封止部材の製造方法の説明では適宜「加水分解・重縮合液」又は「封止部材形成液」というものとする。また、乾燥工程では必ずしも溶媒が気化するわけではないが、ここでは、流動性を有する加水分解・重縮合物が流動性を失って硬化する現象を含めて、乾燥工程と呼ぶものとする。したがって、溶媒の気化を伴わない場合には、上記「乾燥」は「硬化」と読み替えて認識してもよい。
乾燥工程では、加水分解・重縮合物を更に重合させることにより、メタロキサン結合を形成させて、重合物を乾燥・硬化させ、本発明の封止部材を得る。
乾燥の際には、加水分解・重縮合物を所定の硬化温度まで加熱して硬化させるようにする。具体的な温度範囲は加水分解・重縮合物の乾燥が可能である限り任意であるが、メタロキサン結合は通常100℃以上で効率良く形成されるため、好ましくは120℃以上、更に好ましくは150℃以上で実施される。但し、半導体発光デバイスと共に加熱される場合は、通常はデバイス構成要素の耐熱温度以下の温度、好ましくは200℃以下で乾燥を実施することが好ましい。
また、加水分解・重縮合物を乾燥させるために硬化温度に保持する時間(硬化時間)は触媒濃度や部材の厚みなどにより一概には決まらないが、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは1時間以上、また、通常10時間以下、好ましくは5時間以下、更に好ましくは3時間以下の範囲で実施される。
なお、乾燥工程における昇温条件は特に制限されない。即ち、乾燥工程の間、一定の温度で保持しても良く、連続的又は断続的に温度を変化させても良い。また、乾燥工程を更に複数回に分けて行なってもよい。更に、乾燥工程において、温度を段階的に変化させるようにしてもよい。温度を段階的に変化させることにより、残留溶媒や溶存水蒸気による発泡を防ぐことができるという利点を得ることができる。
ただし、上述の加水分解・重縮合反応を溶媒の存在下にて行なったときに、溶媒留去工程を行なわなかった場合や、溶媒留去工程を行なっても加水分解・重縮合物中に溶媒が残留している場合には、この乾燥工程を、溶媒の沸点以下の温度にて溶媒を実質的に除去する第1の乾燥工程と、該溶媒の沸点以上の温度にて乾燥する第2の乾燥工程とに分けて行なうことが好ましい。なお、ここで言う「溶媒」には、上述の原料化合物の加水分解・重縮合反応により生成される、XH等で表わされる溶媒も含まれる。また、本発明の封止部材の製造方法の説明における「乾燥」とは、上述の原料化合物の加水分解・重縮合物が溶媒を失い、更に重合・硬化してメタロキサン結合を形成する工程を指す。
第1の乾燥工程は、原料化合物の加水分解・重縮合物の更なる重合を積極的に進めることなく、含有される溶媒を該溶媒の沸点以下の温度にて実質的に除去するものである。即ち、この工程にて得られる生成物は、乾燥前の加水分解・重縮合物が濃縮され、水素結合により粘稠な液或いは柔らかい膜状になったものか、溶媒が除去されて加水分解・重縮合物が液状で存在しているものである。
ただし、通常は、溶媒の沸点未満の温度で第1の乾燥工程を行なうことが好ましい。該溶媒の沸点以上の温度で第1の乾燥を行なうと、得られる膜に溶媒の蒸気による発泡が生じ、欠陥の無い均質な膜が得にくくなる。この第1の乾燥工程は、薄膜状の部材とした場合など溶媒の蒸発の効率がよい場合は単独のステップで行なっても良いが、カップ上にモールドした場合など蒸発効率の悪い場合においては複数のステップに分けて昇温しても良い。また、極端に蒸発効率が悪い形状の場合は、予め別の効率良い容器にて乾燥濃縮を行なった上で、流動性が残る状態で塗布し、更に乾燥を実施してもよい。蒸発効率の悪い場合には、大風量の通風乾燥など部材の表面のみ濃縮が進む手段をとらず、部材全体が均一に乾燥するよう工夫することが好ましい。
第2の乾燥工程は、上述の加水分解・重縮合物の溶媒が第1の乾燥工程により実質的に無くなった状態において、この加水分解・重縮合物を溶媒の沸点以上の温度で加熱し、メタロキサン結合を形成することにより、安定な硬化物とするものである。この工程において溶媒が多く残留していると、架橋反応が進行しつつ溶媒蒸発による体積減が生じるため、大きな内部応力が生じ、収縮による剥離やクラックの原因となる。メタロキサン結合は通常100℃以上で効率良く形成されるため、第2の乾燥工程は好ましくは100℃以上、更に好ましくは120℃以上で実施される。但し、半導体発光デバイスと共に加熱される場合は、通常はデバイス構成要素の耐熱温度以下の温度、好ましくは200℃以下で乾燥を実施することが好ましい。第2の乾燥工程における硬化時間は触媒濃度や部材の厚みなどにより一概には決まらないが、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは1時間以上、また、通常10時間以下、好ましくは5時間以下、更に好ましくは3時間以下の範囲で実施される。
このように溶媒除去の工程(第1の乾燥工程)と硬化の工程(第2の乾燥工程)とを明確に分けることにより、溶媒留去工程を行なわない場合であっても、本発明の封止部材の物性を持つ耐光性、耐熱性に優れる封止部材をクラック・剥離することなく得ることが可能となる。
ただし、第1の乾燥工程中でも硬化が進行するはありえるし、第2の乾燥工程中にも溶媒除去が進行する場合はありえる。しかし、第1の乾燥工程中の硬化や第2の乾燥工程中の溶媒除去は、通常は本発明の効果に影響を及ぼさない程度に小さいものである。
なお、実質的に上述の第1の乾燥工程及び第2の乾燥工程が実現される限り、各工程における昇温条件は特に制限されない。即ち、各乾燥工程の間、一定の温度で保持しても良く、連続的又は断続的に温度を変化させても良い。また、各乾燥工程を更に複数回に分けて行なってもよい。更には、第1の乾燥工程の間に一時的に溶媒の沸点以上の温度となったり、第2の乾燥工程の間に溶媒の沸点未満の温度となる期間が介在したりする場合でも、実質的に上述したような溶媒除去の工程(第1の乾燥工程)と硬化の工程(第2の乾燥工程)とが独立して達成される限り、本発明の範囲に含まれるものとする。
更に、溶媒として加水分解・重縮合物の硬化温度以下、好ましくは硬化温度未満の沸点を有するものを用いている場合には、加水分解・重縮合物に共存している溶媒は、特に温度を調整せずに加水分解・重縮合物を硬化温度まで加熱した場合であっても、乾燥工程の途中において、温度が沸点に到達した時点で加水分解・重縮合物から留去されることになる。つまり、この場合、乾燥工程において加水分解・重縮合物を硬化温度まで昇温する過程において、加水分解・重縮合物が硬化する前に、溶媒の沸点以下の温度にて溶媒を実質的に除去する工程(第1の乾燥工程)が実施される。これにより、加水分解・重縮合物は、溶媒を含有しない液状の加水分解・重縮合物となる。そして、その後、溶媒の沸点以上の温度(即ち、硬化温度)にて乾燥し、加水分解・重縮合物を硬化させる工程(第2の乾燥工程)が進行することになる。したがって、溶媒として上記の硬化温度以下の沸点を有するものを用いると、上記の第1の乾燥工程と第2の乾燥工程とは、たとえその実施を意図しなくても行なわれることになる。このため、溶媒として加水分解・重縮合物の硬化温度以下、好ましくは上記硬化温度未満の沸点を有するものを用いることは、乾燥工程を実施する際には加水分解・重縮合物が溶媒を含んでいたとしても封止部材の品質に大きな影響を与えることがないため、好ましいといえる。
〔III−2−5.硬い封止部材を製造する場合〕
ところで、本発明の照明装置において、封止部材を多層構造とする場合(例えば、図2に示すLED光源200の場合、封止部材203(a)、203(b))、外部光学部材と接しない側の封止部材(例えば、図2に示すLED光源200の場合、封止部材203(b))としては、弾性率の低い封止部材、或いは弾性を有しない封止部材を用いることが可能である。この用途に使用する目的で、本発明の封止部材をエラストマー状にしない場合、即ち、いわば硬い封止部材を製造する場合には、一般式(1)や一般式(2)で表わされる化合物及び/又はそれらのオリゴマーを加水分解・重縮合し、重縮合物(加水分解・重縮合物)を乾燥させるという点では上述した方法と同様であるが、適宜、原料や操作などについて上述した方法とは異なる部分がある。以下、このような、いわば硬い封止部材を製造する場合について説明する。
〔III−2−5−1.原料〕
硬い封止部材を製造する場合も、エラストマー状の封止部材を製造する場合と同様の原料を使用することができる。ただし、原料として化合物(1)を用いる場合、製造される封止部材の硬度を硬くしようとするのであれば、原料として2官能の化合物(1)に対する3官能以上の化合物(1)(即ち、3官能又は4官能の化合物(1))の比率を大きくすることが好ましい。3官能以上の化合物は架橋成分となりうることから、3官能以上の化合物の比率を大きくすることにより、封止部材の架橋を促進することが出来るためである。
ここで、架橋剤として4官能以上の化合物を用いる場合は、3官能の化合物を用いる場合に比較して2官能の使用比率を高くして系内全体の架橋度を調整することが好ましい。化合物(1)のオリゴマーを使用する場合には、2官能のみのオリゴマー、3官能のみのオリゴマー、4官能のみのオリゴマー、或いは、これら複数の単位を有するオリゴマー等がある。この際、最終的な封止部材全体において、2官能モノマー単位に対する3官能以上のモノマー単位の比率が大きくなると、上記と同様に硬い封止部材を得ることが出来る。
また、化合物(2)を用いる場合にも基本的な考え方は上記の化合物(1)を用いる場合と同じである。ただし、化合物(2)の有機基部分の分子量が大きい場合には、分子量が小さい場合と比較して、実質的に架橋点間距離が大きくなるので、柔軟性が増す傾向にある。
このように、固体Si−NMRのピーク半値幅が本発明の範囲である封止部材は、2官能のモノマー単位と3官能以上のモノマー単位との比率を制御することにより架橋度が調整され、応力歪が少なく、封止部材として有用な適度の可とう性を得ることができるようになっている。
〔III−2−5−2.操作〕
硬い封止部材を製造する場合も、エラストマー状の封止部材を製造する場合と同様に、加水分解・重縮合工程を行なう。ただし、硬い封止部材を製造する場合は、加水分解・重縮合反応は、溶媒の存在下にて行なうことが好ましい。
また、硬い封止部材を製造する場合にも、乾燥工程を行なう。ただし、硬い封止部材を製造する場合は、乾燥工程を、溶媒の沸点以下の温度にて溶媒を実質的に除去する第1の乾燥工程と、溶媒の沸点以上の温度にて乾燥する第2の乾燥工程とに分けて行なうことが好ましい。第1の乾燥工程の詳細は、第1の乾燥工程にて得られる生成物が、通常は水素結合により粘稠な液或いは柔らかい膜状になったものであり、溶媒が除去されて加水分解・重縮合物が液状で存在しているものとならない他は、エラストマー状の封止部材を製造する場合と同様である。また、第2の乾燥工程の詳細は、エラストマー状の封止部材を製造する場合と同様である。
なお、硬い封止部材を製造する場合は、エラストマー状の封止部材を製造する場合に行なっていた溶媒留去工程は、通常は行なわない。
このように溶媒除去の工程(第1の乾燥工程)と硬化の工程(第2の乾燥工程)とを明確に分けることにより、硬い封止部材を製造する場合であっても、本発明の封止部材の物性を持つ耐光性、耐熱性に優れる封止部材をクラック・剥離することなく得ることが可能となる。
〔III−2−6.高屈折率特定金属粒子の添加〕
上述の高屈折率特定金属粒子を添加する場合、その種類は、上述の特定金属元素のうち一種以上を少なくとも含有する粒子であれば、特に制限されないが、通常は、特定金属元素の酸化物からなる粒子(金属酸化物粒子)を用いる。
高屈折率特定金属粒子を添加する手法としては、加水分解・重縮合反応液に粉末状として単独で添加する方法や、水系或いは溶剤系のゾルとして溶剤とともに加水分解・重縮合液に添加する方法などが挙げられる。これらは何れを採用しても良いが、透明な封止部材を得るためには、粒子径が小さく高分散である溶剤系ゾルとして添加する方法が簡便である。
高屈折率特定金属粒子は、結晶の分散状態が安定である場合には、これをそのまま封止部材に導入することができ、高屈折率化の効果が顕著に得られるので望ましい。一方、分散状態が不安定である場合には、安定分散のための配位子を伴っていても良い。また、高屈折率特定金属粒子の表面が触媒活性を有し、封止部材の有機基部分の耐熱性・耐光性を損なうおそれがある場合や、マトリックス部分との親和性が低く凝集が起きやすい場合には、高屈折率特定金属粒子の表面に適宜、公知のコーティング層を設けることが出来る。これらの場合、配位子やコーティング層自身が耐熱性・耐光性に優れていることが好ましい。また、一般にこのような配位子やコーティング層は低屈折率であることが多いため、コーティング層の使用量は必要最低限にとどめることが好ましい。
高屈折率特定金属粒子を添加するタイミングは特に制限されず、上述の原料化合物を加水分解重縮合する前であってもよく(前添加法)、後であってもよい(後添加法)。後添加法の際に加水分解・重縮合後の反応液と高屈折率特定金属粒子との親和性が悪く、硬化時に高屈折率特定金属粒子の凝集が起きる場合には、前添加法を採用することが好ましい。高屈折率特定金属粒子の共存下で原料化合物の加水分解・重縮合を行なうと、粒子の表面に封止部材自身によるコーティング層が生成し、安定に塗布・硬化することが可能となる。
高屈折率特定金属粒子の屈折率は、少量で封止部材の屈折率を向上させる観点から、通常1.6以上、中でも1.8以上、更には1.9以上とすることが好ましい。
〔III−2−7.その他〕
なお、上述の乾燥工程の後、得られた封止部材に対し、必要に応じて各種の後処理を施しても良い。後処理の種類としては、モールド部との密着性の改善のための表面処理、反射防止膜の作製、光取り出し効率向上のための微細凹凸面の作製等が挙げられる。
[IV.その他]
以上、本発明について実施形態を用いて詳細に説明したが、本発明の照明装置は上述の実施形態のものに限られる訳ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜変形を加えて実施することが可能である。