すなわち、本発明の請求項1に記載の発明は、内部に放電空間を形成するように隔壁を挟んで対向配置した前面板と背面板とを備え、前記前面板は、基板上に、放電ギャップを挟んで対峙する走査電極と維持電極とにより構成される表示電極と、この表示電極を覆う誘電体層と、この誘電体層を覆う保護層とを有し、前記背面板は、基板上に、前記表示電極と交差するアドレス電極を有し、前記放電空間に露出した非発光領域に対する領域に、前記保護層の一部として、Be、Mgを除くII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの粒子状材料を配したことを特徴とするプラズマディスプレイパネルである。
また、本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記粒子状材料が、単結晶粒子であることを特徴とするものである。
以下、本発明の一実施の形態によるPDPについて、図面を用いて説明する。なお、以下の説明において用いる図面においては、同じ構成部品には同じ符号を付している。
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態によるPDPの概略構成を示す断面斜視図である。図1に示すように、PDPは、前面板1と背面板2とから構成されている。
前面板1は、例えばフロート法による硼珪素ナトリウム系ガラスによるガラス基板など、透明な基板3上に、放電ギャップ4を挟んで対峙する走査電極5と維持電極6とにより構成される表示電極7と、この表示電極7を覆う誘電体層8と、この誘電体層8上の保護層9を有する。なお、走査電極5および維持電極6それぞれは、透明電極5a、6a、およびこの透明電極5a、6aに電気的に接続されたCr/Cu/CrまたはAg等、金属電極であるバス電極5b、6bとから構成されている。また保護層9については後述する。
背面板2は、基板3に対向配置される基板10上に、表示電極7と交差するアドレス電極11と、このアドレス電極11を覆う誘電体層12と、この誘電体層12上の、例えばストライプ状の隔壁13と、この隔壁13間の側面および誘電体層12の表面に形成した蛍光体層14とを有する。蛍光体層14は、カラー表示のために通常、赤、緑、青の3色が順に配置されている。
そして、以上の構成の前面板1と背面板2とを、表示電極7とアドレス電極11とが交差し、内部に放電空間15を形成するように隔壁13を挟んで対向配置するとともに、周囲を封着部材により封止し、そして前記放電空間15にネオン及びキセノンなどを混合してなる放電ガスを66500Pa(500Torr)程度の圧力で封入することによりPDPを構成している。ここで、隔壁13によって区画された放電空間15の、表示電極7とアドレス電極11とが交差する部分が、単位発光領域である放電セルとして機能する。なお、図1では内部の構成が判り易いように、前面板1と背面板2とを離間させて描いているが、実際には、前面板1と背面板2とは、隔壁13を挟んだ状態で対向配置している。
そして、表示電極7、アドレス電極11に印加する周期的な電圧によって放電を発生させ、この放電による紫外線を蛍光体層14に照射して可視光に変換させることにより、画像表示を行う。
図2は、本発明の一実施の形態によるPDPの放電セル16の概略構成を示す平面図である。走査電極5と維持電極6は、図2に示すように、マトリクス表示の各ラインにおいて放電ギャップ4を挟んで隣接するように列方向に交互に配列されている。ここで、隔壁13によって区画された放電空間15の、表示電極7とアドレス電極11(図1)とが交差する部分が、単位発光領域である放電セル16として機能する。
また、隣接する放電セルの、バス電極5bとバス電極6bとの間には、コントラストを向上させる目的のブラックストライプ(不図示)が形成され、このことから、バス電極5b、6bの形成領域を含めた、隣接する放電セル間の領域は、非発光領域17となる。
ここで、PDPを駆動すると放電セル16内で放電が発生するが、この放電により保護層9がスパッタされ、このスパッタにより保護層9は削られ厚みが薄くなってしまう。このような保護層9の膜厚の変化は、放電の安定発生に支障を与え、例えば保護層9がなくなってしまうほどの膜厚の変化は、PDPとして機能させることを非常に困難なものとしてしまう場合がある。
しかしながら本発明者は検討により、上述した保護層9に対するスパッタは、図2におけるWの領域、すなわち、放電ギャップ4と非発光領域17を除いた領域に対する保護層9の部分にのみ発生し、その他の保護層9の領域、すなわち、放電ギャップ4や非発光領域17に対する保護層9の領域にはスパッタによるダメージ(厚みが薄くなる等)は非常に小さいという、位置依存性があることを確認している。
そこで、参考例のPDPにおいては、図3に、そのPDPの前面板1の一部分の概略構成を、模式的に断面図で示すように、誘電体層8上の、スパッタによるダメージの影響が非常に小さい領域である、放電ギャップ4に対する領域に、Be、Mgを除くII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成される材料層18を保護層9の一部として配した構成としている。また、保護層9の、材料層18以外の領域はMgO層19である。
すなわち、保護層9を構成する材料としては、耐スパッタ性のみを考慮するとMgOが最も好ましいのであるが、放電電圧を低下させるという目的には、その電子殻の構造からMgOよりも二次電子放出性能の高いと考えられる、Ca、Ba、Sr、Raなど、Be、Mg以外のII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料層18を用いることが好ましいことを本発明者が確認している。
ここで、従来、Be、Mg以外のII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成される材料層18は、放電時のスパッタに対しての耐久性に問題があったのであるが、しかしながら上述したように、スパッタの発生には位置依存性があり、参考例のPDPの場合、スパッタによるダメージが非常に小さい、誘電体層8上の、放電ギャップ4に対する領域に、Be、Mg以外のII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成される材料層18を配しており、このことによりスパッタによる劣化という問題の発生を抑制しつつ、二次電子放出を高めることができ、もって耐久性が高く、かつ低駆動電圧のPDPを実現することが可能となる。
ここで、放電開始電圧を決定する保護層からの二次電子放出については、イオンが保護層(従来の構成ではMgO層)に対してスパッタを発生させるほどのエネルギーで衝突するという過程はほとんど影響を及ぼしておらず、それよりも、エクソエミッションやオージェ過程で説明されるメカニズムが影響を与えており、これにより放電開始電圧が支配されているという考えがある。この考えに基づくと、放電開始電圧を低下させるには、エクソエミッションやオージェ過程で二次電子を如何に効果的に得ることができるかということが重要となる。
そこで、上述した参考例のPDPにおいては、MgOよりは耐スパッタ性能は劣るが二次電子放出性能の高い、Be、Mgを除くII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成される材料層18を、スパッタの影響が非常に小さい領域に配しており、このことにより、従来のMgO層構造に対し、耐スパッタ性能を確保しつつ、エクソエミッションやオージェ過程での二次電子を効果的に得ることができることとなり、もって放電開始電圧の低下を実現することが可能となる。
なお、上述した参考例のPDPにおいては、放電空間15に露出した放電ギャップ4に対する領域に、Be、Mgを除くII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成される材料層18が形成されていれば同様の効果を得ることができるので、例えば、図4に示すような、材料層18は、誘電体層8上の、放電ギャップ4に対する領域以上に配されており、この材料層18を覆うように、MgO層19が、放電ギャップ4に対する領域を除いて配された構成や、図5に示すような、誘電体層8を覆うMgO層19上の、放電ギャップ4に対する領域に、Be、Mgを除くII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成される材料層18を配するという構成でもかまわない。なお、このような構成であると、材料層18とMgO層19とのパターニング形成が容易となり好ましい。
また、同じく、スパッタによるダメージが非常に小さい領域として、バス電極5b、6bを含む、隣接する放電セルとの間の部分である、非発光領域17を挙げることができることを本発明者は確認している。そこで、図6に示すように、この非発光領域17に、Be、Mgを除くII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成される材料層18を配することで、スパッタによる劣化という問題の発生を抑制しつつ、二次電子放出を高めることができ、もって耐久性の高い、低駆動電圧のPDPを実現することが可能となる。
また同様に、放電空間15に露出した非発光領域17に対する領域に、Be、Mgを除くII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成される材料層18が形成されていれば同様の効果を得ることができるので、例えば、図7に示すような、材料層18は、誘電体層8上の、非発光領域17に対する領域以上に配されており、この材料層18を覆うように、MgO層19が、非発光領域17に対する領域を除いて配された構成や、図8に示すような、誘電体層8を覆うMgO層19上の、非発光領域17に対する領域に材料層18を配するという構成でもかまわない。このような構成であると、保護層9としての、材料層18とMgO層19とのパターニング形成が容易となり好ましい。
また以上の説明から明らかなように、図9、図10および図11に示すような、放電空間15に露出した、放電ギャップ4に対する領域と非発光領域17に対する領域との両方に、Be、Mgを除くII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成される材料層18を形成した構成としてもかまわない。
また以上説明した構成において、非発光領域17に材料層18を形成した場合、走査電極5側のバス電極5bに対する領域に、二次電子放出性能の高い材料層18が配されることとなるので、このことからPDPの駆動時において、走査電極5とアドレス電極11との対向放電を発生させる書き込み期間において、その際の放電開始電圧を低下させることができるという効果も得ることが可能となる。
(実施の形態2)
図12に参考例のPDPの前面板1の一部分の概略構成を、模式的に断面図で示す。
図12に示すPDPは、スパッタによるダメージの影響が非常に小さい、誘電体層8上の、前記放電ギャップ4に対する領域に、Be、Mg以外のII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成される粒子状材料20を、保護層9の一部として配した構成としている。また、保護層9の、粒子状材料20を配した領域以外の領域は、MgO層など、II族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成される材料層21である。
すなわち、上述した参考例のPDPにおいては、MgOよりは耐スパッタ性能は劣るが二次電子放出性能の高い、Be、Mgを除くII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成される粒子状材料20をスパッタの影響が非常に小さい領域である放電ギャップ4に対する領域に配しており、このことにより、従来のMgO層構造に対し、耐スパッタ性能を確保しつつ、エクソエミッションやオージェ過程での二次電子を効果的に得ることができることとなり、もって放電開始電圧の低下を実現することが可能となる。
さらに、本実施の形態においては、粒子状材料20を配したことにより、以下に述べる効果を得ることが可能となる。
すなわち、例えば、従来の構成において、MgO層の膜厚の値は0.1μmがほぼ上限であるが、粒子状材料20を配した構成によれば、例えば平均粒子径が0.2μmの粒子を用いることで、従来に比して2倍の厚みを容易に実現することができ、これにより、単純には耐スパッタ寿命を2倍とすることを容易に実現でき、耐スパッタ性をさらに確保できる。
また、粒子状材料20は、従来のような、蒸着によって形成される層(膜)構造に比べ、結晶構造として強固なものとすることが可能となる。このことによっても、耐スパッタ性をさらに確保することが可能となる。
また、粒子状材料20を配した構成とすることにより、その領域での表面積が増大し、その結果、イオンが接近できる領域が増加するので、オージェ過程やエクソエミッションなどによる二次電子をさらに効率よく得ることができるようになる。
さらに、II族金属においては、(111)面が他の結晶方位面より二次電子放出係数が高く、粒子状材料20を配する構成とすることで、従来の層(膜)構造に比べ、その領域において(111)面が含まれる確率が高まり、その結果、二次電子がさらに得られやすくなる。
以上により、PDPとしての寿命を確保しつつ、駆動電圧の低電圧化が可能な、高効率なPDPを実現することが可能となる。
ここで、上述した参考例のPDPにおいては、放電空間15に露出した放電ギャップ4に対する領域に、Be、Mgを除くII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成される粒子状材料20が形成されていれば同様の効果を得ることができるので、例えば、図13に示すような、粒子状材料20は、誘電体層8上の、放電ギャップ4に対する領域以上に配されており、この粒子状材料20を覆うように、MgO層など、II族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成される材料層21が、放電ギャップ4に対する領域を除いて配された構成や、図14に示すような、誘電体層8を覆う材料層21上の、放電ギャップ4に対する領域に粒子状材料20を配するという構成でもかまわない。なお、このような構成であると、粒子状材料20の配設領域と材料層21とのパターニング形成が容易となり好ましい。
また、同じく、スパッタによるダメージが非常に小さい領域として、バス電極5b、6bを含む、隣接する放電セルとの間の部分である、非発光領域17を挙げることができることを本発明者は確認している。そこで、図15に示すように、本発明の一実施の形態によるPDPにおいては、この非発光領域17に、Be、Mgを除くII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成される粒子状材料20を配することで、スパッタによる劣化という問題の発生を抑制しつつ、二次電子放出を高めることができ、もって耐久性の高い、低駆動電圧のPDPを実現することが可能となる。
また同様に、放電空間15に露出した非発光領域17に対する領域に、Be、Mgを除くII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成される粒子状材料20が形成されていれば同様の効果を得ることができるので、例えば、図16に示すような、粒子状材料20は、誘電体層8上の、非発光領域17に対する領域以上に配されており、この粒子状材料20を覆うように、材料層21が、非発光領域17に対する領域を除いて配された構成や、図17に示すような、誘電体層8を覆う材料層21上の、非発光領域17に対する領域に粒子状材料20を配するという構成でもかまわない。このような構成であると、粒子状材料20の配設領域と材料層21とのパターニング形成が容易となり好ましい。
また、以上の説明から明らかなように、図18、図19および図20に示すような、放電空間15に露出した、放電ギャップ4に対する領域と非発光領域17に対する領域との両方に、Be、Mgを除くII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成される粒子状材料20を形成し、その他の領域には、MgO層など、II族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成される材料層21が形成された構成としてもかまわない。
また、図13に示す構成においては、粒子状材料20の上から材料層21で覆う構成をしており、このような構成とすることにより、粒子状材料20の上に材料層21をスパッタや蒸着などで形成する際に、粒子状材料20の間の部分に材料層21を構成する、MgOなど、II族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成される材料が入り込み、その結果、材料層21と粒子状材料20との積層部分が、光学的に、あたかも単層膜のようになる。
この結果、粒子状材料であることによる、屈折率などへの影響を無視できる程度のものとすることができ、放電セル16全体の透過率として、材料層21を配せずに粒子状材料20のみを配した構成に比べ、大幅に改善することができる。
同じ理由により、図16に示す構成や図19に示す構成も、同様に透過率を大幅に改善できる。
また以上説明した構成において、非発光領域17に粒子状材料20を形成した場合、走査電極5側のバス電極5bに対する領域に、二次電子放出性能の高い粒子状材料20が配されることとなるので、このことからPDPの駆動時において、走査電極5とアドレス電極11との対向放電を発生させる書き込み期間において、その際の放電開始電圧を低下させることができるという効果も得ることが可能となる。
(実施の形態3)
図21に、参考例のPDPの前面板1の部分概略構成を、模式的に断面図で示す。
これは、放電時に発生する保護層9に対するスパッタによるダメージが無視できない領域、すなわち放電ギャップ4と非発光領域17とを除いた領域に、MgOの粒子状材料22を保護層9の一部として配した構成としている。また、保護層9の、粒子状材料22を配した領域以外の領域、すなわち放電ギャップ4と非発光領域17には、MgO層19を配した構成である。
以上のような、保護層9として、MgOにより構成される粒子状材料22を配した構成とすることにより、従来の膜構造に比して、容易に厚みを厚くできること、および膜に比べ結晶構造として強固なものとすること、が可能となり、もって、スパッタが発生しその影響が無視できない領域における耐スパッタ性を向上させることができ、PDPの寿命を十分に確保することが可能となる。
また、粒子状材料22という形状から、それを配した領域での表面粗さを大きなものとすることができ、その結果、形状効果による、放電開始電圧のさらなる低電圧化が可能となる。
また、粒子状材料22を配した構成であることから、その領域での表面積が増大し、その結果、イオンが接近できる領域が増加するので、オージェ過程やエクソエミッションなどによる二次電子を効率よく得ることができるようになる。
さらに、II族金属においては、(111)面が他の結晶方位面より二次電子放出係数が高く、粒子状材料22を配する構成とすることで、従来のMgO層構造に比べ、その領域において(111)面が含まれる確率が高まり、その結果、二次電子が得られやすくなり、放電開始電圧の低電圧化が可能となる。
また、上述した効果は、放電空間15に露出した、放電ギャップ4と非発光領域17とを除いた領域に、MgOにより構成される粒子状材料22が配されていれば同様の効果を得ることができるので、例えば、図22に示すような、MgOにより構成される粒子状材料22は、誘電体層8上の、放電ギャップ4と非発光領域17とを除いた領域以上に配されており、この粒子状材料22を覆うように、MgO層19が、放電ギャップ4と非発光領域17とに対する領域に配された構成や、図23に示すような、誘電体層8を覆う、MgO層19上の、放電ギャップ4と非発光領域17とを除いた領域にMgOにより構成される粒子状材料22を配するという構成でもかまわない。このような構成であると、MgOにより構成される粒子状材料22の配設領域とMgO層19とのパターニング形成が容易となり好ましい。
なお、粒子状材料22の材料としては、耐スパッタ性のみを考慮するとMgOが最も好ましいのであるが、放電電圧を低下させるという目的には、その電子殻の構造からMgOよりも二次電子放出性能の高いと考えられる、Ca、Ba、Sr、Raなど、Be、Mg以外のII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成される粒子状材料20を用いることが好ましいことを本発明者が確認している。
ここで、従来、Be、Mg以外のII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料は、放電時のスパッタに対しての耐久性に問題があったのであるが、しかしながら、参考例のPDPの場合、粒子状材料とすることで耐スパッタ性を従来に比べ確保しているので、したがって例えば、図24〜図26に示すように、Ca、Sr、Ba、Raなど、Be、Mg以外のII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により粒子状材料20を構成することで、さらに耐スパッタ性の確保と放電電圧の低下を図ることが可能となる。
以上の、図21〜図26に示した構成に対して、スパッタによるダメージが非常に小さい領域である、放電ギャップ4と非発光領域17とに対する領域に形成されているMgO層19の代わりに、図27〜図32に示すように、MgOよりは耐スパッタ性能は劣るが二次電子放出性能の高い、Be、Mgを除くII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成される材料層18を形成することにより、耐スパッタ性能を確保しつつ、この領域でエクソエミッションやオージェ過程で説明されるメカニズムによる二次電子放出を効果的に得ることができるようになり、長寿命、低駆動電圧のPDPを実現することが可能となる。
また図33は、放電空間15に露出した、非発光領域17を除く領域に、MgOにより構成される粒子状材料22を保護層9の一部として配した構成としている。また、保護層9の、粒子状材料22を配した領域以外の領域、すなわち、非発光領域17には、MgO層19が形成された構成である。
このような構成とすることにより、スパッタが発生しその影響が無視できない領域である、放電ギャップ4と非発光領域17とを除いた領域に対する耐スパッタ性を向上させることができ、PDPに対する寿命を十分に確保することが可能となる効果、および、粒子状材料22を配した構成とすることでの、表面粗さが大きくなることによる駆動電圧を低下させることが可能となるという効果、同じく表面粗さが大きくなることによっての、その領域での表面積が増大し、その結果、イオンが接近できる領域が増加するので、オージェ過程やエクソエミッションなどによる二次電子を効率よく得ることができるようになるという効果、さらに、II族金属においては、(111)面が他の結晶方位面より二次電子放出係数が高く、粒子状材料22を配する構成とすることで、従来のMgO膜に比べ、その領域において(111)面が含まれる確率が高まり、その結果、二次電子が得られやすくなるので、放電開始電圧の低電圧化が可能となるという効果を得ることが可能となる。
そして以上により、耐久性の高い、低駆動電圧のPDPを実現することが可能となる。
また、上述した効果は、放電空間15に露出した、非発光領域17を除く領域にMgOにより構成される粒子状材料22が配され、それ以外の、すなわち非発光領域17には、MgO層19が形成されておれば同様の効果を得ることができるので、例えば、図34に示すような、MgOにより構成される粒子状材料22は、誘電体層8上の、非発光領域17を除いた領域以上に配されており、この粒子状材料22を覆うように、MgO層19が、非発光領域17に配された構成や、図35に示すような、誘電体層8を覆うMgO層19上の、非発光領域17を除く領域にMgOにより構成される粒子状材料22を配するという構成でもかまわない。このような構成であると、MgOにより構成される粒子状材料22の配設領域とMgO層19とのパターニング形成が容易となり好ましい。
なお粒子状材料22の材料としては、耐スパッタ性のみを考慮するとMgOが最も好ましいのであるが、放電電圧を低下させるという目的には、その電子殻の構造からMgよりも二次電子放出性能の高いと考えられる、Ca、Ba、Sr、Raなど、Be、Mg以外のII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料を用いることが好ましいことを本発明者が確認している。
ここで、従来、Be、Mg以外のII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料は、放電時のスパッタに対しての耐久性に問題があったのであるが、しかしながら、参考例のPDPの場合、粒子状材料とすることで耐スパッタ性を従来に比べ確保しているので、したがって例えば、図36〜図38に示すように、Baのみ、もしくはMgとBaとの混合物など、Be、Mg以外のII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により粒子状材料20を構成することで、さらに耐スパッタ性の確保と放電電圧の低下を図ることが可能となる。
以上の、図33〜図38に示した構成に対して、MgO層19を、図39〜図44に示すように、MgOよりは耐スパッタ性能は劣るが二次電子放出性能の高い、Be、Mgを除くII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成される材料層18とすることにより、この領域でエクソエミッションやオージェ過程で説明されるメカニズムによる二次電子放出を効果的に得ることができるようになるので、さらに駆動電圧を低電圧化することが可能となる。
また、図45は、放電空間15に露出した、放電ギャップ4を除く領域に、MgOの粒子状材料22を保護層9の一部として配した構成としている。また、保護層9の、粒子状材料22を配した領域以外の領域、すなわち放電ギャップ4に対する領域には、MgO層19が形成された構成である。
このような構成とすることにより、スパッタが発生しその影響が無視できない領域である、放電ギャップ4と非発光領域17とを除いた領域に対する耐スパッタ性を向上させることができ、PDPに対する寿命を十分に確保することが可能となる効果、および、粒子状材料22を配した構成とすることでの、表面粗さが大きくなることによる駆動電圧を低下させることが可能となるという効果、同じく表面粗さが大きくなることによっての、その領域での表面積が増大し、その結果、イオンが接近できる領域が増加するので、オージェ過程やエクソエミッションなどによる二次電子を効率よく得ることができるようになるという効果、さらに、II族金属においては、(111)面が他の結晶方位面より二次電子放出係数が高く、粒子状材料22を配する構成とすることで、従来のMgO膜に比べ、その領域において(111)面が含まれる確率が高まり、その結果、二次電子が得られやすくなるので、放電開始電圧の低電圧化が可能となるという効果を得ることが可能となる。
そして以上により、耐久性の高い、低駆動電圧のPDPを実現することが可能となる。
また、上述した効果は、放電空間15に露出した、放電ギャップ4を除く領域にMgOにより構成される粒子状材料22が配され、それ以外の、すなわち放電ギャップ4に対する領域には、MgO層19が形成されておれば同様の効果を得ることができるので、図46に示すような、MgOにより構成される粒子状材料22は、誘電体層8上の、放電ギャップ4を除く領域以上に配されており、この粒子状材料22を覆うように、MgO層19が、放電ギャップ4に対する領域に配された構成や、図47に示すような、誘電体層8を覆うMgO層19上の、放電ギャップ4に対する領域を除いた領域に、MgOにより構成される粒子状材料22を配するという構成でもかまわない。このような構成であると、MgOにより構成される粒子状材料22の配設領域とMgO層19とのパターニング形成が容易となり好ましい。
なお粒子状材料22の材料としては、耐スパッタ性のみを考慮するとMgOが最も好ましいのであるが、放電電圧を低下させるという目的には、その電子殻の構造からMgよりも二次電子放出性能の高いと考えられる、Ca、Ba、Sr、Raなど、Be、Mg以外のII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料を用いることが好ましいことを本発明者が確認している。
ここで、従来、Be、Mg以外のII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料は、放電時のスパッタに対しての耐久性に問題があったのであるが、しかしながら、参考例のPDPの場合、粒子状材料とすることで耐スパッタ性を従来に比べ確保している。したがって例えば、図48〜図50に示すように、本発明の一実施の形態によるPDPにおいては、Baのみ、もしくはMgとBaとの混合物など、Be、Mg以外のII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により粒子状材料20を構成することで、さらに耐スパッタ性の確保と放電電圧の低下を図ることが可能となる。
また以上の、図45〜図50に示した構成に対して、MgO層19を、図51〜図56に示すように、MgOよりは耐スパッタ性能は劣るが二次電子放出性能の高い、Be、Mgを除くII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成される材料層18とすることにより、この領域でエクソエミッションやオージェ過程で説明されるメカニズムによる二次電子放出を効果的に得ることができるようになるので、さらに駆動電圧を低電圧化することが可能となる。
また以上説明した構成においては、非発光領域17に粒子状材料20もしくは粒子状材料22を形成しており、このことにより、走査電極5側のバス電極5bに対する領域に、二次電子放出性能の高い粒子状材料20が配されることとなるので、このことからPDPの駆動時において、走査電極5とアドレス電極11との対向放電を発生させる書き込み期間において、その際の放電開始電圧を低下させることができるという効果も得ることが可能となる。
なお、以上、図3から図56で示した構成においては、MgO層、材料層、および粒子状材料の形態などは、模式的に示したものである。MgO層、材料層は、実際には、柱状組織の集合体であったり、柱状組織間に空隙が存在していたりするものであるが、蒸着やスパッタなどの成膜プロセスによって形成されたものを指すものである。
また粒子状材料も、その配された領域においては、その厚み方向に粒子状材料が何個かが積層された状態であったり、粒子状材料の形状も、多角形や立方体、直方体などの形状など、図に示したような丸の単層とはならない場合が多い。
なお、粒子状材料が単結晶材料で、(111)面が露呈した状態であれば、二次電子の放出がなされやすく好ましい。
また、以上においては、その電子殻構造により、MgOより二次電子の放出性能が高いと考えられる、Be、Mgを除いたII族金属の、酸化物、フッ化物、単体化合物、混合化合物の中から選ばれる少なくとも一つの材料以外にも、BaO、Y2O3,ZrO2、Al2O3、SiO2、(MgO)0.7(SrO)0.2(CaO)0.1、LaB6などの材料を用いても同様の効果を得ることが可能である。
なお、上述での保護層9に対するダメージは、放電ガスのXeの分圧が高まるほど顕著となるため、本発明は、例えばXeの分圧が10%以上などの高Xe分圧の放電ガスを使用したPDPに対して、特に効果を奏することとなる。