しかしながら、従来のドアトリム1においては、樹脂芯材2の投影面積が大きいため、材料コストが高く、かつ製品が重量化するという問題点が指摘されている。また、樹脂芯材2の投影面積が大きいことから、成形時における射出圧を高く設定せざるを得ず、高い射出圧に耐え得る金型構造が必要となり、金型の作製費用も嵩み、しかも、大量の溶融樹脂を冷却固化させるため、成形サイクルが長期化し、生産性を低下させる大きな要因となっている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、軽量化を促進でき、高剛性でコストダウンを図れる自動車用内装部品を提供でき、かつ成形金型費用を低減できるとともに、成形サイクルも短縮化できる自動車用内装部品の製造方法並びに成形金型を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するために、鋭意研究の結果、従来から表皮として使用していた発泡樹脂シートに圧縮加工を施し、保形性を付与することで、芯材としての機能をもたせ、より以上に剛性が必要な箇所、すなわち製品の周縁部分やパネル、あるいは部品取付箇所並びに荷重がかかる部位には、剛性に優れた樹脂リブを配置することで、従来の投影面積の広い樹脂芯材に比べ軽量で、かつコストが廉価な内装トリム部品を提供するとともに、樹脂リブの成形時、樹脂バリが発生することがなく、かつ冷却性能を高めることで、成形サイクルを短縮化できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、所要形状に成形され、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材と、この発泡樹脂基材の裏面に一体化される所定パターン形状の樹脂リブとからなる積層構造体を全体、あるいは一部に採用してなる自動車用内装部品の製造方法において、前記積層構造体の成形工程は、発泡樹脂基材の素材である発泡樹脂シートを加熱軟化処理した後、成形金型内に投入し、成形金型同士の型締めにより、発泡樹脂シートを成形金型のキャビティ形状に沿わせ、発泡樹脂基材を所要形状に賦形した後、成形上型に真空吸引力を作用させて発泡樹脂基材を吸着保持し、成形上型を微小ストローク上昇させた状態で成形下型のエアブロー・バキューム機構から冷却用エアを吹き付けて冷却する発泡樹脂基材の成形工程と、成形下型のエアブロー・バキューム機構をエアブローからバキュームに切り替えて発泡樹脂基材の裏面と成形下型の型面との間に滞留するエアを型外に抜気した後、成形上型を下降操作し、発泡樹脂基材を成形上下型間で圧縮保持しながら成形下型の溝部内に溶融樹脂を射出充填して、樹脂リブを発泡樹脂基材の裏面側に一体化する樹脂リブの成形工程とからなることを特徴とする。
更に、本発明方法に使用する成形金型は、軽量で、かつ保形性を有する発泡樹脂基材と、この発泡樹脂基材の裏面に一体化される樹脂リブとからなる積層構造体を成形する成形金型であって、この成形金型は、相互に型締め、型開き可能な成形上型、並びに成形下型と、成形下型に連設され、樹脂リブの素材である溶融樹脂を供給する射出機とから構成され、成形上型には、発泡樹脂基材の成形時、この発泡樹脂基材を保持するための真空吸引力を作用させる真空吸引機構が付設されているとともに、成形下型には、発泡樹脂基材を冷却するための冷却用エアを吹き込むエアブロー機構と、樹脂リブの射出充填時、発泡樹脂基材と成形下型の型面との間のエアを型外に抜気するためのバキューム機構をそれぞれ選択的に作用させるエアブロー・バキューム機構が付設されていることを特徴とする。
ここで、自動車用内装部品としては、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、ラゲージトリム、トランクトリム、リヤサイドトリム等に適用できる。
保形性を有する発泡樹脂基材は、発泡樹脂シートを加熱軟化処理した後、成形金型内で所望の曲面形状に成形することで、リブ等の補強材がなくても、成形後、型から脱型しても形状を保持する程度の剛性(保形性)を有している。また、製品形状が高展開率部分を含む場合には、発泡樹脂シートを加熱軟化処理した後、成形金型に真空吸引機構を配設して成形金型の内面に沿って発泡樹脂シートに真空吸引力を作用させるようにしても良い。
上記発泡樹脂シートとしては、熱可塑性樹脂に発泡剤を添加した素材を使用する。尚、熱可塑性樹脂は、1種類の熱可塑性樹脂でも2種類以上の熱可塑性樹脂からなっても良い。好ましくは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂などが使用できる。また、発泡剤としては、アゾ化合物、スルホヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、アジド化合物等の有機発泡剤、あるいは重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤の使用が可能である。上記発泡樹脂シートを加熱軟化処理後、所要形状に成形して得た発泡樹脂基材は、製品の重量と強度とのバランスを考慮した場合、2〜10倍の発泡倍率が好ましい。その時の発泡樹脂基材のセル径は、0.1μm〜2.0mmの範囲であることが好ましく、厚みは0.5〜30mm、好ましくは1〜10mmのものが良い。
また、外観意匠性を高めるために、発泡樹脂基材の表面に加飾材を積層しても良い。加飾材としては、織布、不織布、編布、シート、フィルム、発泡体、網状物などが使用できる。これら加飾材を構成する材料は特に限定されないが、織布、不織布、編布等、通気性を有する素材を使用したほうが、発泡樹脂基材の吸音性能を生かす上で好ましい。
一方、樹脂リブとして使用する熱可塑性樹脂材料は、広範な熱可塑性樹脂から適宜選択することができる。通常好ましく使用できるものとして、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等がある。また、これら熱可塑性樹脂中に各種充填剤を混入しても良い。使用できる充填剤としては、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維、タルク、クレイ、シリカ、炭酸カルシウム等の無機粒子などがある。また、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、低収縮剤等の各種の添加剤が配合されても良い。
次いで、上記積層構造体を成形する際に使用する成形金型は、上下動可能な成形上型と、成形上型の下方側に位置する固定側である成形下型と、成形下型に連設される射出機とから構成されている。そして、射出機から供給される溶融樹脂は、成形下型に設けられたマニホールド、ゲート等の樹脂通路を通じて成形下型の型面上に形成されている溝部に供給される。
更に、成形上型には、真空吸引機構が付設されており、成形上型に真空吸引作用を付与することで、成形時に型クリアランスを可変する際に発泡樹脂基材を吸着保持するとともに、真空吸引機構により製品の賦形性をアップさせ、シャープな形状出しを可能にし、更に絞転写性を高めることができる。
一方、成形下型には、エアブロー・バキューム機構が付設されている。すなわち、成形下型にエアブロー機構とバキューム機構とが切り替え可能に設けられている。エアブロー機構を作用させるタイミングは、発泡樹脂シートを成形上下型の型締めにより所要形状に賦形した後、真空吸引作用により発泡樹脂基材を成形上型に保持した状態で成形上型を微小ストローク上昇させた時である。この時、発泡樹脂基材と成形下型との間にクリアランスを設定し、発泡樹脂基材の裏面側に成形下型から冷却用エアを吹き付けて強制冷却させる。また、樹脂リブの成形時には、エアブロー機構からバキューム機構に切り替え、発泡樹脂基材と成形下型との間に冷却用エアが滞留するのを回避し、滞留エアを速やかに型外に排気することで樹脂リブの成形性を高めることができる。
換言すれば、積層構造体の成形工程は、発泡樹脂基材の成形工程と樹脂リブの成形工程が連続して行なわれる。すなわち、発泡樹脂基材の成形工程は、加熱軟化処理した発泡樹脂シートを型開き状態にある成形上下型内に投入した後、成形上下型を型締めすることで発泡樹脂シートは所要形状に賦形される。この時、成形上型には、バキューム機構による真空吸引力が作用しており、発泡樹脂基材を保持した状態で成形上型を微小ストローク上昇させ、成形下型と発泡樹脂基材との間にスペースが確保され、成形下型から冷却用エアを吹き付けることで冷却時間が短縮化できる。
次いで、発泡樹脂基材の成形工程が完了すれば、成形上型が発泡樹脂基材を保持した状態で下降して、成形上下型間で発泡樹脂基材が型締めされる。この型締め時の厚みは、溶融樹脂を射出充填する際のシール性を高めるために、発泡樹脂基材を賦形する際の厚みよりも薄肉に設定する。また、成形下型は、エアブロー機構からバキューム機構に切り替わっており、成形上型の下降動作と同時に発泡樹脂基材下方のスペースに滞留するエアはバキューム機構により型外に迅速に排除され、射出機からマニホールド、ゲートを通じて成形下型の溝部に供給される溶融樹脂は、エアのカウンタープレッシャー作用により邪魔されることなく迅速に隅々にまでいきわたることになり、発泡樹脂基材の裏面に所定パターン形状の樹脂リブを迅速に一体成形することができる。
そして、本発明方法によれば、保形性を有する発泡樹脂基材の裏面側に剛性を補強する意味で樹脂リブが積層一体化されるという構成であるため、従来の樹脂芯材を廃止することができる。従って、従来の投影面積の非常に広い樹脂芯材を廃止することで、製品の軽量化を図ることができ、しかも、樹脂材料を節約できることから、材料コストの低減化も同時に達成できる。また、発泡樹脂基材の多孔質吸音機能により、吸音性能に優れた内装部品が得られるとともに、発泡樹脂基材及び樹脂リブの素材として、ポリオレフィン系樹脂を使用した場合、オールオレフィン系樹脂に統一されるため、分離工程が廃止でき、リサイクル作業を簡素化できる。
更に、樹脂リブが積層一体化される発泡樹脂基材裏面の特に樹脂リブ対応箇所近傍部分は、エアブロー圧により平滑面に設定されているため、樹脂リブ成形時におけるシール性が良好に維持され、樹脂バリ等が生じることがなく、特に、この部位を強制的に冷却させれば、樹脂リブの素材である溶融樹脂が発泡樹脂基材内部に浸透することが抑えられ、樹脂リブの成形性を高めることができる。
加えて、樹脂リブ成形時には、発泡樹脂基材と成形下型との間に滞留するエアは、成形下型に付設したエアブロー・バキューム機構のバキューム力が作用しており、滞留エアを迅速に型外に排出できるため、溶融樹脂の射出充填時には、エアのカウンタープレッシャーがなく、迅速に溶融樹脂をキャビティの隅々にまでいきわたらせることができ、樹脂の流動長が延び、成形性が良好になるとともに、成形サイクルも短縮化することができる。更に、成形下型の型構造としては、溶融樹脂の流動長が延びるため、ゲート数を低減でき、型費を削減できるとともに、成形下型の設計自由度も向上させることができる。
以上説明した通り、本発明方法により得られる自動車用内装部品は、軽量で、かつ保形性を有する発泡樹脂基材と、この発泡樹脂基材の裏面で、かつ製品の外周縁など、剛性が要求される部位に積層一体化される樹脂リブとから構成されるため、従来の重量の嵩む樹脂芯材を廃止できることから、軽量な内装部品を低コストで製作できるとともに、多孔質素材であるため、吸音性能に優れるという効果を有する。
更に、本発明に係る自動車用内装部品の製造方法は、成形金型のキャビティ形状に沿って、発泡樹脂基材を所要形状に成形すると同時に発泡樹脂基材の裏面側に樹脂リブを成形するという工程を採用すれば、樹脂成形体である樹脂リブの投影面積が少ないため、従来の樹脂芯材に比べ、成形金型にかかる負荷も少なく、かつ冷却時間も短縮化でき、歩留まりを高めることができることから、作業能率を高めることができるとともに、大幅なコストダウンを招来できるという効果を有する。
また、本発明に係る自動車用内装部品の製造方法は、冷却用エアのエアブロー作用により発泡樹脂基材の樹脂リブ対応面は平滑面に規制され、かつ発泡樹脂基材が十分冷却されているため、樹脂リブ成形時、樹脂バリが形成されたり、また、発泡樹脂基材内部に樹脂が浸透することがなく、樹脂リブの成形性を高め、かつ冷却時間をより短縮化することにより、製品コストを低減することができるという効果を有する。
加えて、本発明に係る自動車用内装部品の製造方法は、発泡樹脂基材の成形工程後、成形下型からのエアブロー作用により、発泡樹脂基材の裏面側に吹き付けたエアを成形下型のバキューム機構により型外に迅速に除去した状態で溶融樹脂を成形下型の溝部内に射出充填することにより樹脂リブを成形するというものであるから、溶融樹脂の射出充填工程を迅速に実施でき、樹脂リブの成形性を高めることができるとともに、成形サイクルを短縮化することができ、生産性を向上させることができるという効果を有する。
更に、樹脂流動部のエアをバキューム機構により排除することで、溶融樹脂の流動長が延びるため、ゲート数を低減でき、成形下型の型費削減並びに成形下型の金型設計自由度を向上させることができるという効果を有する。
図1乃至図13は本発明をツートンタイプの自動車用ドアトリムの製造方法に適用した実施例を示すもので、図1はツートンタイプの自動車用ドアトリムを示す正面図、図2は同自動車用ドアトリムの構成を示す断面図、図3は同自動車用ドアトリムにおけるドアトリムアッパーの樹脂リブ形状とドアトリムロアを示す正面図、図4,図5は同ドアトリムの製造方法に使用する成形金型の全体構成を示す各概要図、図6は同成形金型における成形下型の要部を示す説明図、図7乃至図13は同ドアトリムの製造方法における各工程を示す説明図である。
まず、図1,図2において、ツートンタイプの自動車用ドアトリム10は、積層構造体からなるドアトリムアッパー20と樹脂単体品からなるドアトリムロア30との上下二分割体から構成されている。ドアトリム10に装着される機能部品としては、ドアトリムアッパー20にインサイドハンドルエスカッション11、パワーウインドウスイッチフィニッシャー12が取り付けられている。ドアトリムロア30には、ドアポケット用開口13が開設され、その背面側には、図2に示すように、ポケットバックカバー(樹脂成形体からなる)14が取り付けられており、ドアトリムロア30のフロント側にスピーカグリル15がドアトリムロア30と一体、あるいは別体に成形されている。
ところで、本発明に係る自動車用ドアトリム10は、積層構造体であるドアトリムアッパー20の構造に本発明を適用し、製品の軽量化を図るとともに、成形性を高め、かつ成形サイクルを短縮化できることが特徴である。すなわち、ドアトリムアッパー20は、所望の曲面形状に成形され、保形性を有する発泡樹脂基材21と、この発泡樹脂基材21の裏面側に積層一体化される樹脂リブ22と、発泡樹脂基材21の表面側に積層一体化される加飾機能をもつ加飾材23とから大略構成されている。
上記発泡樹脂基材21は、保形性を備えるように発泡樹脂シートを加熱軟化処理後、所要形状に熱成形、例えば、所望の型面を有する成形金型でコールドプレス成形されるが、更に高展開率部分については、真空成形により発泡樹脂基材21を賦形しても良い。上記発泡樹脂シートは、汎用の熱可塑性樹脂に発泡剤を添加した構成であり、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等が使用でき、発泡剤としては、アゾジカルボンアミド等の有機発泡剤や重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤が使用できる。この実施形態では、ポリプロピレン系樹脂に発泡剤として重炭酸ナトリウムを適宜添加した発泡樹脂シートを使用している。また、この発泡樹脂基材21の発泡倍率は2〜10倍に設定され、厚みは0.5〜30mm、特に好ましくは1〜10mmの範囲に設定されている。
次いで、樹脂リブ22は、発泡樹脂基材21の裏面側に配設され、特に、図3に示すように、縦横方向、あるいは斜め方向等に延びる格子状パターンに設定されている。この樹脂リブ22は、汎用の合成樹脂成形体からなり、通常好ましく使用できる合成樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等から適宜選択されて良く、本実施形態では、環境面、リサイクル面を考慮してポリプロピレン系樹脂が使用されている。また、この樹脂リブ22には、上記熱可塑性樹脂中に適宜フィラー、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維や、タルク、クレイ、シリカ、炭酸カルシウム等の無機粒子等の充填剤が混入されていても良い。
このように、図1乃至図3に示すドアトリム10は、積層構造体からなるドアトリムアッパー20と、合成樹脂単体品であるドアトリムロア30とから構成され、外観上のアクセント効果により、優れた外観意匠性を備えている。更にドアトリムアッパー20は、保形性を有する発泡樹脂基材21と、発泡樹脂基材21の裏面に積層一体化される樹脂リブ22と、加飾性を有する加飾材23とから構成されているため、従来のように製品の全面に亘り占有していた樹脂芯材を廃止でき、かつ軽量な発泡樹脂基材21を使用する一方、樹脂リブ22は骨状であり、荷重が加わる部位、例えば、クリップ座、ウエスト部上面、アームレスト部上面等を除いた部位は、肉抜き構造となっている関係で、製品の重量について、従来例に比し40%以上の軽量化を図ることができるとともに、樹脂材料も大幅に節約でき、コストダウンにも貢献できる。
更に、発泡樹脂基材21は、多孔質構造であるため、ドアトリムアッパー20は、吸音性能に優れ、車室内外の騒音を低減することができる。また、発泡樹脂基材21における車室内騒音を対象とした吸音性能を高めるために、発泡樹脂基材21の表面に積層一体化される加飾材23は、織布、不織布、編布等の通気性を備えたシート材料が好ましい。尚、加飾材23は、織布、不織布、編布等の通気性シート以外にも塩ビシートやTPO(サーモプラスチックオレフィン)シート等の合成樹脂シート(TPOシートを使用すればリサイクルが可能)、合成樹脂フィルム、発泡体、網状体等を使用することができる。尚、廉価構成として、加飾材23を省略し、発泡樹脂基材21の表面に塗装や印刷処理を施すようにしても良い。
次に、図1乃至図3に示すドアトリム10の製造方法について以下に説明する。まず、図4,図5に基づいて、成形金型40の構成について説明する。図4において、ドアトリム10の成形に使用する成形金型40は、所定ストローク上下動可能な成形上型41と、成形上型41と対をなす固定側の成形下型42と、成形下型42に接続される2基の射出機43a,43bとから大略構成されている。
更に詳しくは、成形上型41は、製品形状に合致したキャビティ部411が形成されており、成形上型41の上面に連結された昇降シリンダ412により所定ストローク上下駆動される。また、成形上型41の4隅部には、ガイド機構となるガイドブッシュ413が設けられている。
一方、成形下型42には、成形上型41のキャビティ部411に対応するコア部421が設けられている。また、このコア部421の型面に溶融樹脂を供給するために、マニホールド422a,422b、ゲート423a,423bが設けられており、このマニホールド422a,422b、ゲート423a,423bの樹脂通路を経て射出機43a,43bから供給される溶融樹脂M1,M2がコア部421の上面に供給される。尚、樹脂リブ22を形成するために、コア部421上面に溶融樹脂M1が供給される溝部424が穿設される一方、ドアトリムロア30を形成するために、成形上下型41,42間に所定クリアランスのキャビティ425が設定されている。また、成形下型42の4隅部には、ガイド機構となるガイドポスト426が突設され、このガイドポスト426は、成形上下型41,42が型締めされる際、ガイドブッシュ413内に案内されることで成形上型41のプレス姿勢を適正に維持できる。
更に、図5に示すように、ドアトリムアッパー20が対応する部位の成形上型41には、真空吸引機構44が配設されている。すなわち、真空吸引ポンプ441が真空吸引管442を介して成形上型41内部の空気室414に接続しており、開閉バルブ443の開閉操作により、成形上型41の空気室414内のエアが外部に抜気され、成形下型42の型面には、真空吸引孔415が適宜ピッチ間隔で多数開設されている。そして、この真空吸引機構44は、発泡樹脂シートSを成形する発泡樹脂基材21の賦形性に貢献するとともに、成形上型41の型面に発泡樹脂基材21を保持する機能をもつ。
一方、図5,図6に示すように、成形下型42には、エアブロー・バキューム機構45が付設されている。すなわち、このエアブロー・バキューム機構45は、成形下型42にエアブロー機構とバキューム機構とを交互に切り替え可能に装備されている。そのための構成として、成形下型42の型面に焼結金属体等のポーラス体451が埋設されており、このポーラス体451にエア配管452が接続され、切り替えバルブ453を介してエアブロー管454とバキューム管455とに分岐している。そして、エアブロー管454は、ブロワ456に接続しており、バキューム管455はバキュームポンプ457に接続している。
従って、切り替えバルブ453を切り替え操作することで、ブロワ456からエアブロー管454を通じて成形下型42の型面から上方に向けてエアを吹き付けることができるとともに、切り替えバルブ453を操作してエアブロー機構からバキューム機構に切り替えれば、キャビティ内のエアをポーラス体451を通じてエア配管452、バキューム管455を経由してバキュームポンプ457側に真空吸引することでキャビティ内のエアを型外に迅速に抜気することができる。尚、ポーラス体451は、ポーラスセラミックを使用することもできる他、エアの通過を許容し、樹脂の通過を遮断できる作用を備えていれば、材質を特に限定するものではない。
次に、上記ドアトリム10の製造方法について説明する。まず、図7に示すように、ヒーター装置50により発泡樹脂シートSの一方面に加飾材23をラミネートしたものを所定温度に加熱軟化させる。この実施例では、発泡樹脂シートSとして、ポリプロピレン製発泡シート(住化プラステック製、商品名:スミセラー発泡PPシート、発泡倍率=3倍、厚み3mm)が使用されている。次いで、図8に示すように、加熱軟化処理した発泡樹脂シートS(加飾材23をラミネートしている)をドアトリムアッパー20対応箇所における成形上型41のキャビティ部411と成形下型42のコア部421で画成されるキャビティの上半部分にセットする。
そして、発泡樹脂シートSをセットした後、図9に示すように、成形上型41の昇降シリンダ412が動作して、成形上型41が所定ストローク下降して、成形上下型41,42が型締めされ、発泡樹脂シートSがキャビティ形状に沿って賦形される。この時、成形上型41に真空吸引機構44から真空吸引力を作用させれば、加飾材23として樹脂シートを使用した際、型面から絞模様を転写することができる。
また、発泡樹脂シートSから発泡樹脂基材21を成形するには、所要形状に賦形された発泡樹脂基材21を冷却する工程が必要である。そのために、図10,図11に示すように、成形上型41に付設された真空吸引機構44の作用により発泡樹脂基材21を成形上型41の型面に真空吸引力で保持した状態で微小ストローク上昇させて発泡樹脂基材21と成形下型42との間にクリアランスを形成し、このクリアランスに冷却用エアを吹き付ける。すなわち、成形下型42に付設されているエアブロー・バキューム機構45は、エアブロー機構が切り替えバルブ453により選択されており、発泡樹脂基材21を保持した成形上型41が上方に微小ストローク上昇する際、ブロワ456、エアブロー管454、エア配管452、ポーラス体451を通じて冷却用エアが発泡樹脂基材21の裏面に吹き付けられる。このように、冷却用エアの圧空アシスト効果により、発泡樹脂基材21の冷却時間を短縮化することができるとともに、加飾材23の表面に絞転写を行なう場合も効果があり、発泡樹脂基材21の賦形性をより高めることができる。以上が発泡樹脂基材21の成形工程である。
次いで、発泡樹脂基材21の成形が完了すれば、この発泡樹脂基材21を成形上型41により保持した状態で再度成形上下型41,42の型締めが行なわれるが、これと同時に発泡樹脂基材21と成形下型42との間のスペースに滞留した冷却用エアをキャビティ外部に排気することで樹脂の流動長を改善することができる。すなわち、成形下型42に設けられているエアブロー・バキューム機構45のうち、今まではエアブロー機構として使用していたが、発泡樹脂基材21の成形が完了すれば、切り替えバルブ453が切り替わり、成形下型42にバキューム力を作用させ、図12に示すように、発泡樹脂基材21と成形下型42との間のエアを真空吸引力により型外に迅速に排出する。すなわち、ポーラス体451、エア配管452、バキューム管455を通じて型外に抜気し、それと同時に成形上下型41,42を型締めする。その後、図13に示すように、第1の射出機43aからマニホールド422a、ゲート423aを通じてドアトリムアッパー20における樹脂リブ22を形成するために溶融樹脂M1が成形下型42の溝部424内に射出充填される。
同時に、ドアトリムロア30を成形するために、第2の射出機43bからマニホールド422b、ゲート423bを通じてキャビティ425に溶融樹脂M2が射出充填され、ドアトリムロア30が所要形状に成形される。尚、この溶融樹脂M1,M2としては、住友ノーブレンBUE81E6(住友化学工業製ポリプロピレン、メルトインデックス=80g/10分)が使用され、タルク等のフィラーが適宜割り合いで混入されている。
従って、第1の射出機43aから溶融樹脂M1を溝部424内に射出充填する一方、第2の射出機43bから溶融樹脂M2をキャビティ425内に射出充填することにより、ドアトリムアッパー20における樹脂リブ22を所要形状に成形するとともに、これと一体にドアトリムロア30が一体成形される。この時、図13に示すように、ドアトリムアッパー20における樹脂リブ22の射出充填時には、成形下型42の溝部424内に溶融樹脂M1が充填されるが、この時、上述したように成形下型42にバキューム機構が作用してリブ流動部のエアが型外に排除されているため、エアのカウンタープレッシャー作用が全く生じることがなく、溶融樹脂M1は迅速に溝部424の隅々まで短時間でいきわたることになる。従って、溶融樹脂M1の流動長を延ばすことができるため、成形下型42に設けるゲート423aの個数を低減することができるとともに、型加工も簡素化することができる。また、比較的流動性に劣る樹脂材料の使用も可能になる等、材料選択の幅も拡げることができる。
このように、本発明方法においては、発泡樹脂シートSを成形上下型41,42の型締め及び冷却用エアのエアブロー作用で所要形状に発泡樹脂基材21を成形した後、発泡樹脂基材21の裏面所定部分に樹脂リブ22を射出成形により一体成形するものであり、発泡樹脂基材21の裏面側が冷却用エアにより短時間に冷却され、樹脂リブ22の射出成形時、樹脂バリが生じて成形不良が生じることがない。また、溶融樹脂M1が発泡樹脂基材21の内部に浸み込むことがなく、樹脂リブ22の成形性を高めることができるとともに、特に、樹脂リブ22の溶融樹脂M1の射出充填時には、成形下型42と発泡樹脂基材21との間に滞留するエアを真空吸引作用により迅速に外部に排除したため、エアのカウンタープレッシャーがなく、樹脂リブ22の流動長を長くでき、成形下型42に設けるゲート423aの点数を少なくでき、型の自由度も高めることができるという種々の作用効果が期待できる。