JP4779190B2 - 炎症性疾患治療用カラム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炎症性疾患を治療するためのカラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
臓器の疎血再環流障害、血管狭窄、潰瘍性大腸炎、クローン病、リウマチ、糖尿病性腎症、SIRS(全身性炎症応答症候群;以下単にSIRSという)、感染症などの炎症性疾患では血液中にCRP(C反応性蛋白;以下単にCRPという)等の炎症応答蛋白質や顆粒球などの炎症性白血球が増えてくることは以前から知られている。近年、CRPは、好中球に特異的に結合する(J. Immunol., vol 136, 2202-2207(1986))ので、好中球の活性化を抑えるとされてきが、CRPは免疫グロブリンGで刺激を受けた好中球や単球の活性酸素産生を特異的に増大させる(J. Leukocyte Biol., vol 52, 449-455 (1992))とも言われ、悪玉なのか善玉なのか、その意義は確定していなかった。
【0003】
しかし、CRPは補体と協奏して損傷を受けた細胞や組織に結合し、好中球や単球を活性化して損傷を広げることが、最近、確認されている(J. Exp. Med, vol 190, 1733-1739 (1999))。感染症や心筋梗塞の時、血中濃度が急上昇するとか、透析患者で動脈硬化が起きていると高いとか、関節リウマチ患者の悪化時に高い等の事実、また、SAA(血清アミロイド蛋白A;以下単にSAAという)はクローン病の悪化と相関がある(Hepato-Gastroenterology, vol 44, 90-107 (1997))等の事実と合わせ、炎症性蛋白と炎症性白血球は互いに強め合う性質があるので、同時に除いた方が良いと考えられる。
【0004】
CRPを吸着する性質のある吸着材としては、低比重リポ蛋白質の吸着材であるデキストラン硫酸固定セルロースゲルに固定化した(特開平1−280469号公報)カラムが知られているが、血漿の処理を目的とするものであり、炎症性白血球を吸着するものではない。また、この種の官能基の吸着材は体外循環すると、ブラジキニンを活性化して、低血圧ショックを引き起こす欠点がある。
【0005】
このように炎症性蛋白と炎症性白血球を同時に除去できて、体外循環治療に用いることのできるものは知られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、血液中から、直接、CRPやSAAなどの炎症性蛋白質と炎症性白血球を高い効率で選択的に吸着して、効率よく治療し、かつ、血圧降下ショックを起こさない安全な炎症性疾患治療用カラムを提供せんとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の炎症性疾患治療用カラムは、血液中の炎症応答蛋白質と炎症性白血球の双方を除去できる炎症性物質吸着材を充填してなるものであり、特に、かかる炎症性物質吸着材として、側鎖にN−置換ポリ(アルキレンイミン)残基を結合した水不溶性重合体を使用することを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、前記課題、つまり血液中から、直接、CRPやSAAなどの炎症性蛋白質と炎症性白血球を高い効率で選択的に吸着して、効率よく治療し、かつ、血圧降下ショックを起こさない安全な炎症性疾患治療用カラムについて、鋭意検討し、炎症性物質吸着材として、特定な窒素置換残基を結合した水不溶性重合体を使用してみたところ、血液中の炎症応答蛋白質と炎症性白血球の双方を除去できることを究明したものである。
【0009】
本発明で言う炎症応答蛋白質とは、C−反応性蛋白または血清アミロイド蛋白Aを意味する。
【0010】
本発明で言う炎症性白血球とは、顆粒球または単球、活性化リンパ球を意味する。
【0011】
本発明の炎症応答蛋白質と炎症性白血球の双方を除去できる炎症性物質吸着材は、水不溶性重合体にN−置換ポリ(アルキルイミン)残基を、グラフトなどの手段で結合させることにより提供することができる。
【0012】
ここで水不溶性重合体は、水に不溶で、かつ、N−置換ポリ(アルキレンイミン)を共有結合で固定化できるものであれば良く、例えば、芳香族ポリビニル化合物、ポリスルホン系重合体、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテル、ポリフェニレンサルファイドなどで、かつ、N−アルキル化ポリアルキレンイミンを共有結合で固定化できる反応性官能基を持つ水不溶性重合体を使用することができる。
【0013】
かかる水不溶性重合体としては、特に、ポリスルホン系重合体を好ましく使用することができ、たとえば、−{(p−C6 H4 )−SO2 −(p−C6 H4 )−O−で表されるポリ(p−フェニレンエーテルスルホン)単位や、−{(p−C6 H4 )−SO2 −(p−C6 H4 )−O−(p−C6 H4 )−C(CH3 )2 −(p−C6 H4 )−O}−、−{(p−C6 H4 )−SO2 −(p−C6 H4 )−O−(p−C6 H4 )−O}−、−{(p−C6 H4 )−SO2 −(p−C6 H4 )−O−(p−C6 H4 )−C(CF3 )2 −(p−C6 H4 )−O}−で表されるユーデル・ポリスルホン単位などからなる重合体で代表されるものを使用することができる。
【0014】
反応性官能基としては、ハロメチル基、ハロアセチル基、ハロアセトアミドメチル基、ハロゲン化アルキル基などの活性ハロゲン基、エポキサイド基、カルボキシル基、イソシアン酸基、チオイソシアン酸基、酸無水物基などを使用することができるが、とりわけ、活性ハロゲン基は、製造が容易な上に、反応性が高く、N−置換ポリ(アルキルイミン)残基の固定化反応を温和な条件で遂行できると共に、この際生じる共有結合が化学的に安定なので好ましく使用される。
【0015】
かかる反応性官能基を有する水不溶性重合体の具体的な例としては、クロルアセトアミドメチルポリスチレン、クロルアセトアミドメチル化したユーデル・ポリスルホン、クロルアセトアミドメチル化したポリエーテルイミドなどが好ましく使用される。さらに、これらの水不溶性重合体の中でも、有機溶媒に対し可溶であるものが、成型しやすいことから、特に好ましく使用される。
【0016】
本発明で言う、Nー置換ポリ(アルキレンイミン)とは、ポリ(アルキレンイミン)の窒素原子の水素を、アルキル基およびアシル基から選ばれた少なくとも1種で置換したものを意味する。
【0017】
かかるポリ(アルキレンイミン)としては、たとえばポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン、ポリヘキサメチレンイミン、ポリ(エチレンイミン・デカメチレンイミン)共重合体などを用いることができる。また、Nー置換基としてのアルキル基としては、nーブチル基、n−ヘキシル基、n−デカニル基、ラウリル基、ミリスチル基、nーヘキサデシル基、n−ステアリル基、ベンジル基などを用いることができ、また、Nー置換基としてのアシル基としては、ブチロイル基、n−ヘキノイル基、n−デカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、nーヘキサデシロイル基、n−ステアリロイル基、ベンゾイル基、および、これらのハロゲン置換体などを用いることができる。
【0018】
また、該Nー置換ポリ(アルキレンイミン)の吸着性能や加工し易さは、主鎖のアルキレン基の長さと、Nー置換基、たとえばN−アルキル基のアルキル炭素数、および、N−アルキル化率に依存して変化する。そのパラメターとして、その分子全体としての窒素原子数に対する炭素数の比(以下C/N比と略称)と、N−置換率を用いて判定することができる。すなわち、該C/N比が小さすぎる時は、親水性が高くなりすぎ、加工がしにくく、逆に、大きすぎると、吸着能が下がるので、好ましくは2.3〜26、さらに好ましくは2.5〜14の範囲であるのがよい。また、N−置換率は、小さすぎても大きすぎても吸着能が下がるので、好ましくは30%以上、60%以下、さらに好ましくは40%以上60%以下であるのが、血液中の炎症応答蛋白質と炎症性白血球の双方を除去する機能の上からよい。また、ポリ(アルキレンイミン)の重合度(n)は、大きい方が高分子量物質に対する吸着性能が大きくなるが、重合度が大きすぎると、グラフト鎖を延ばした形での固定化が難しくなってしまうので、好ましくは4〜100000、さらに好ましくは20〜300であるのがよい。さらに、N−アルキル化ポリアルキレンイミンの主鎖部分のアルキレン基の一部が、シクロヘキサン環やベンゼン環などに置換されていても、また、アミド基、エーテル基などで置換されていても良い。
【0019】
本発明の吸着材におけるN−置換ポリ(アルキレンイミン)基の固定化の密度は、N−置換ポリ(アルキレンイミン)のC/N比およびnの大きさや幹となる水不溶性重合体の化学構造および用途により異なるが、少なすぎるとその機能が発現せず、一方、多すぎると、固定化後の重合体の成型性が悪くなり、吸着材としての機能も下がってしまうので、該密度は、水不溶性重合体の繰り返し単位あたり、好ましくは0.0001〜0.5モル、より好ましくは0.001〜0.1モルがよい。
【0020】
N−置換ポリ(アルキレンイミン)の調製方法は、ポリアルキレンイミンの溶液に、室温ないし100℃以下の温度で、必要量の臭化アルキルまたはカルボン酸の酸塩化物または酸無水物を混合することにより容易に調整することができる。この反応は、エチルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドのような極性溶媒中では、室温でも定量的に進む。ポリ(アルキレンイミン)の分子量が高く、かつ、N−アルキル化が高くなると、N−アルキル化ポリアルキレンイミンは溶媒に溶けにくくなるので、低アルキル化率のものを水不溶性重合体と反応させた後、さらに、この反応系に臭化アルキルまたはカルボン酸の酸塩化物または酸無水物を所定量添加して、目標のアルキル化率のものを得る方法が便利である。とくに、置換基がアシル基の場合は溶媒に溶け難いので、後者の方が好ましく使用される。
【0021】
本発明の吸着材の製造方法としては、水不溶性重合体とN−置換化ポリ(アルキレンイミン)を溶液にして反応させる均一系反応の方法と、水不溶性重合体の成型品にN−置換ポリ(アルキレンイミン)溶液を接触させる不均一系反応の方法とのいずれの方法でも採用することができる。
【0022】
均一系反応による吸着材の製造方法の一例を述べると、クロルアセトアミドメチル化ポリスルホンの溶液中に対応したポリアミンを加えて、0〜100℃の温度で反応させることにより、容易に製造される。その量には特に制限はないが、可溶性のポリマーを得るためには、ハロアセトアミドメチル基に対し1倍モル以上用いるのが望ましい。とりわけ、分岐のあるポリアミンの場合は、可溶性の重合体を得るためには、ポリアミンを大過剰に用いるのが好ましい。
【0023】
また、反応溶媒としては、均一系で反応させる場合には、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどが好ましく用いられる。また、膜や繊維などの成型品を表面処理する方法も採用することが可能で、そのためには、水、メタノール、エタノールなどのポリスルホンを溶かさず、ポリアミンを溶かす溶媒が好ましく用いられる。
【0024】
不均一系反応による吸着材の製造方法の一例としては、クロルアセトアミドメチル化ポリスルホンの繊維または中空糸などの成型品を、N−アルキル化ポリアルキレンイミンのイソプロパノール溶液中に浸し、0〜100℃の温度で反応させることにより、容易に製造される。
【0025】
かかる吸着材を、ナイロン繊維などの成型品の表面にコーティングすると、簡単に表面積の大きな高次の成型品が得られるので、実用上好ましい。コーティング方法としては、該吸着材を塩化メチレンやテトラヒドロフランなどの低沸点溶媒に溶かしたものに、ナイロンの編み地や織物を浸したのち、溶媒を蒸発することにより容易にコーティングすることができる。また、N,N−ジメチルホルムアミドなどの溶媒に溶かしたものを、水などに入れる湿式コーティング法も利用することができる。被コーティング成型品のポリマーとしては、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、ポリエステルなど、本発明の吸着材との接着性の良いものであれば何でも良く、その種類には特に制限はないが、ナイロン、ポリエーテルイミドなどのアミド系のポリマーが接着性が特に良いので、好ましく用いられる。
【0026】
本発明の吸着材を体外循環に用いる場合、抗凝固剤のヘパリンで処理して用いると、血液適合性が向上すると共に、LDLに対する吸着能が向上するので、好ましい。特に、C/N比が高い場合、吸着剤が疎水性になるが、ヘパリン処理すると、親水化し、吸着能が上がるので好ましい。
【0027】
本発明は、かくして得られる特定な吸着材をカラムに充填して使用するものである。すなわち、かかるカラムは、血液を吸着材を充填した吸着部に流入させるための血液流入部と、吸着部に流入された血液を流出させるための血液流出部を有し、かつ、血液の滞留や偏流が起こらない構造であれば、特に制限されることなく使用される。
【0028】
【実施例】
以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0029】
なお、本実施例中の評価方法は、以下に従った。
1.血液中の成分の分析
中性脂肪(TG)は酵素法(遊離グリセロール消去法)で求めた。β−リポ蛋白(LDL)はセルロースアセテート膜電気泳動法で求めた。総蛋白はBCG法で求めた。HDL−CはヘパリンCa2+、Ni2+沈殿法で求めた。CRPおよびSAAはラテックス凝集免疫法で求めた。
【0030】
血球数は日本光電社の全自動血球計算器MEK−6208を用いて求めた。
【0031】
[実施例1、2]
ニトロベンゼン16mLと硫酸32mLの混合溶液を0℃に冷却後、4.2gのN−メチロール−α−クロルアセトアミドを加えて、溶解し、これを、10℃のユーデルポリスルホンP3500の3Lのニトロベンゼン溶液(300g/3L)に、良く撹拌しながら加え、さらに、室温で3時間撹拌した。その後、反応混合物を大過剰の冷メタノール中に入れ、ポリマーを沈殿させた。沈殿をメタノールで良く洗った後、乾燥して、300gのα−クロルアセトアミドメチル化ポリスルホン(置換率:0.05;重合体−A)を得た。
【0032】
ポリエチレンイミン(平均分子量10000:和光純薬)20gを50mLのDMFに溶かした溶液に臭化ラウリル11.4gを加え、50℃で5時間撹拌した後、これに、重合体A10gを100mlのDMFに溶かした溶液を加え、50℃で5時間加熱した。この反応混合物中22.8gの臭化ラウリルを加え、さらに、50℃で8時間攪拌した後、イソプロパノール中に加え、沈殿したポリマーを濾取した。ポリマーを真空乾燥して、DMFに溶かし、イソプロパノールで再沈澱し、真空乾燥して、アルキル化率30%のN−アルキル化ポリアルキレンイミン結合ポリスルホン(実施例1の吸着材:以下Lー30と略称)を調製した。
【0033】
また、ポリエチレンイミン(平均分子量10000:和光純薬)20gを50mLのDMFに溶かした溶液に臭化ラウリル11.4gを加え、50℃で5時間撹拌した後、これに、重合体A10gを100mlのDMFに溶かした溶液を加え、50℃で5時間加熱した。
【0034】
この反応混合物に57gの臭化ラウリルを加え、さらに、50℃で8時間攪拌した後、イソプロパノール中に投じ、沈殿したポリマーを濾取した。このポリマーを真空乾燥して、DMFに溶かし、イソプロパノールで再沈澱し、真空乾燥して、アルキル化率60%のN−アルキル化ポリアルキレンイミン結合ポリスルホン(実施例2の吸着材:以下Lー60と略称)を調製した。
【0035】
これらのポリマーの20%ジメチルアセトアミド溶液をガラス板上に塗布し、水の中に入れて100μmの厚みに成膜した。これを直径4.2cmの円盤状にくりぬき、0.5 mg/mLヘパリン・PBS溶液中、60℃で20時間処理した後、生理食塩水で洗浄して以下の評価に用いた。
【0036】
ヒト高中性脂肪血清6mLに上記の膜3枚をいれ、37℃で4時間加熱した後、血清を分析して、表1の結果を得た。
【0037】
ただし、表中の比較例1は、ポリスルホン膜(20%ポリスルホンと2%K30−ポリビニルピロリドンを含むジメチルアセトアミド溶液をガラス板上に塗り、水中に入れて成膜したもの)である。
【0038】
【表1】
【0039】
表1から、実施例1、2の吸着材からなるカラム(L−30、L−60)がCRPをよく吸着することが分かる。
【0040】
[実施例3,4]
別のヒト高中性脂肪血清6mLに、上記実施例1,2の膜2枚をいれ、37℃で4時間加熱した後、血清を分析して、表2の結果を得た。
【0041】
【表2】
【0042】
表から、実施例1,2の吸着材からなるカラムがCRPおよびSAAを良く吸着することが分かる。
【0043】
ただし、比較例2は、重合体−Aにラウリル化率100%のラウリル化テトラエチレンペンタミンを固定化したポリスルホン(C/N比13.6)の膜、比較例3は、重合体−Aにエチル化率100%のエチル化ポリエチレンイミン(ポリエチレンイミンの分子量7万)を固定化したポリスルホン(C/N比4.0)の膜である。
【0044】
[実施例5,6]
実施例1〜2で得たそれぞれの吸着材、L30、L60を、テトラヒドロフランに5%濃度で溶かした溶液250mlに、単糸繊度0.7デニールのナイロン6の筒編み20gを浸し、20時間後、該筒編みを取り出し、液を切って、風乾し、23gのコーティング編み地(それぞれL−30繊維、L−60繊維)2種を得た。
【0045】
これらの編み地のそれぞれについて、0.2gをヘパリン溶液で37℃で4時間処理した後、4mlのヒト血清で吸着能の評価(37℃4時間)をしたところ、表3の結果が得られた。
【0046】
【表3】
【0047】
但し、比較例4は、未コートのナイロン6編み地である。
【0048】
さらに、これらの繊維について顆粒球の吸着性を調べ、表4の結果を得た。
【0049】
ニュージランド・ホワイト種ウサギ(体重3.5kg)にLPS(E.coliO111:B4を10ng/mL濃度に溶かしたもの)を体重1kgあたり5μgを耳静脈から投与し、さらに14日後に同量のLPSを投与した後、2日後に耳動脈から採血して、以下の評価に用いた。
【0050】
吸着材100mgを2mlの上記血液に入れ、37℃で4時間振とうした後、血球の組成を自動血液分析器で調べ、また、フローサイトメーターで顆粒球とリンパ球の比率を求め、それぞれの血球の数を計算したところ、表4の結果が得られた。
【0051】
但し、顆粒球濃度は赤血球を550として補正した値であり、それから減少率を計算した。
【0052】
【表4】
【0053】
表3と表4から、実施例5,6本発明の試料L−30およびL−60が炎症性蛋白質と顆粒球の双方を良く吸着することが分かる。
【0054】
[実施例7]
実施例5の繊維1.0gを、10mlのポリプロピレン製円筒状カラムに充填し、生理食塩水500mlを流して洗浄した後、オートクレーブで120℃、25分間の滅菌をしてカラムを得た。
【0055】
このカラムとペリスタポンプをシリコンチューブで繋ぎ、カラムに生理食塩水200mlを流した。次に、ヘパリンナトリウム0.5mg/mlPBS(−)溶液100mlを0.5ml/分で流し、さらに生理食塩水50mlを同速度で流した後、カラムおよび回路の水分を傾斜で除いた。
【0056】
中性脂肪が高いボランティアからヘパリン採血した血液40mlを二つに分け、20mlを50ml容のポリプロピレン製滅菌チューブに入れ、37℃の水浴に浸し、先の回路で1ml/分の測度で1時間還流した。
【0057】
還流前後の血球数および血漿中のLDL、CRP、SAAを測定した。
【0058】
比較例5として、1.0gの比較例4を詰めたカラムを、残りの20mlの血液で同様に評価して、表5と表6の結果が得られた。
【0059】
【表5】
【0060】
【表6】
【0061】
表5と表6から、実施例7のカラムが炎症性蛋白質と顆粒球の双方を良く吸着するのに対し、比較例5のカラムは顆粒球を吸着するものの炎症性蛋白を吸着しないことが分かる。
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、CRPやSAAなどの炎症性蛋白質と炎症性白血球を高い効率で選択的に吸着して効率よく治療することができるので、血圧降下ショックを起こさないで安全な形で炎症性疾患を治療することができる。
Claims (6)
- 側鎖にN−置換ポリ(アルキレンイミン)残基を結合した水不溶性重合体を充填してなり、
前記N−置換ポリ(アルキレンイミン)残基のN−置換基は、炭素数4〜18のアルキル基又はアシル基であり、
前記水不溶性重合体は、ハロアセトアミドメチル化されたポリスルホン系重合体、ハロアセトアミドメチル化されたポリ(ビニル芳香族化合物)及びハロアセトアミドメチル化されたポリイミド系重合体からなる群から選択される、炎症性疾患治療用カラム。 - 前記N−置換ポリ(アルキレンイミン)残基は、塩基性窒素原子を有し、かつ、炭素数と塩基性窒素数の比が2.3〜26である、請求項1記載の炎症性疾患治療用カラム。
- 前記N−置換ポリ(アルキレンイミン)残基のN−置換基の数は、窒素原子の数の30〜60%である、請求項1又は2記載の炎症性疾患治療用カラム。
- 前記N−置換ポリ(アルキレンイミン)残基のポリ(アルキレンイミン)部分の重合度は、4〜10000である、請求項1〜3のいずれか一項記載の炎症性疾患治療用カラム。
- 前記ポリスルホン系重合体は、ポリ(p−フェニレンエーテルスルホン)である、請求項1〜4のいずれか一項記載の炎症性疾患治療用カラム。
- 前記ポリスルホン系重合体は、−{(p−C6H4)−SO2−(p−C6H4)−O−(p−C6H4)−C(CH3)2−(p−C6H4)−O}−で表される単位で構成されている、請求項1〜4のいずれか一項記載の炎症性疾患治療用カラム。
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