JP4778320B2 - 過塩素酸化合物の電解合成方法 - Google Patents
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Description
ダイアモンドは熱伝導性、光学的透過性、高温かつ酸化に対しての耐久性に優れており、特にドーピングにより電気導電性の制御も可能であることから、次世代及び特殊な半導体デバイス、エネルギー変換素子として有望とされている。優れた機械的、化学的安定性に加えて、ドーピングにより良好な電気伝導性を付与された導電性ダイアモンド電極は、電気化学分野への応用研究が最近になって活発に検討されている。
米国特許明細書第5399247号:ダイアモンドを陽極材料に用いて有機廃水が分解できることが開示されている。
特開平9−268395号公報:ダイアモンドが機能水(オゾン含む)用電極として有用であることが開示されている。
特開2001−192874号公報:導電性ダイアモンドが過硫酸合成用電極として有用であることを開示している。
特開2004−202283号公報:導電性ダイアモンド電極を使用して、有機塩素化合物を含む排水を電解的に処理する際に、イオン交換膜を使用すると、陰イオンの両室間での移動が阻止され、これにより陰極で遊離した塩素イオン(陰イオン)が陽極側に移動するのを阻止でき、該塩素イオンが陽極側で次亜塩素酸イオンから過塩素酸イオンにまでに酸化されて有機化合物の分解効率を低下させるのを防止することが開示されている(段落0023)。
しかしながら、これらの特許文献では、工業電解合成を目的として、過塩素酸化合物の電流効率や純度の改善を目的とした検討はなされていない。
本発明の目的生成物である過塩素酸化合物は、塩素酸化合物を導電性ダイアモンド電極を使用して電解することにより高効率で合成できる。なお本発明における過塩素酸化合物には、過塩素酸塩、過塩素酸及び過塩素酸イオンが含まれ、塩素酸化合物には、塩素酸塩、塩素酸及び塩素酸イオンが含まれる。過塩素酸塩、過塩素酸、過塩素酸イオン、塩素酸塩、塩素酸及び塩素酸イオンを特定する際にはそれぞれの用語が使用される。
陰極として酸素ガスの還元に適するガス電極を用いると、セル電圧として0.5V以上の電力原単位を低減できる。
又陰極として酸素ガスの還元に適するガス電極を用いると、セル電圧を低減して低コストで目的化合物を得ることができる。
他の公知の化学的合成方法では、硫酸などの薬剤の分離が必須であるのに対して、本発明は高純度の過塩素酸が簡便に合成できる点が有利であり、産業上の安全面、環境面の貢献がある。
本発明の電解セルでの陽極反応は、塩酸を原料とする場合(酸性域)は、式(1)で表され、これにより過塩素酸イオンが生成する。
Cl− + H2O = ClO4 − + 8H+ + 8e (1)
更に式(1)の直接の電解酸化プロセス以外に、副反応として式(2)の反応が進行し、生成する塩素が水と反応し、式(3)に従って過塩素酸イオンが生成する。
2Cl− = Cl2 + 2e (2)
Cl2 + 8H2O = 2ClO4 − + 16H+ + 14e (3)
Cl− + 3H2O = ClO3 − + 6H+ + 6e (4)
ClO3 − + H2O = ClO4 − + 2H+ + 2e (5)
他の副反応としては式(6)に示す水電解がある。
2H2O = O2 + 4H+ + 4e (6)
この反応の素過程として、OHラジカルの生成が考えられ、このラジカルと塩素イオンが反応し、目的生成物である過塩素酸化合物が生成する経路もある。
陰極反応は酸素供給の有無により反応が異なってくる。
酸素を供給しない場合は式(7)に従って水素が発生する。
2H+ + 2e = H2 (7)
酸素を供給する場合は式(8)に従って水が合成されるか、式(9)に従って過酸化水素が合成される。
O2 + 4H+ + 4e = 2H2O (8)
O2 + 2H+ + 2e = H2O2 (9)
電極基材は、熱膨張率の整合性、水素雰囲気などの合成条件下での安定性(例えば水素吸蔵による脆性)などの化学的安定性の観点から、Siを基材として用いることが一般的である。但し半導性の材料であるためにホウ素などをドープし、良電導性とする必要がある。表面は機械的強度を高めるために凹凸を有することが好ましい。ダイアモンドの析出を促進させるために、ダイアモンド粒子による研磨及び核付けを行うことが望ましい。基材としてはSiのみならず、Nb、Ta、Zr、Ti(弁金属)や、Mo、W、黒鉛、各種カーバイドも使用可能である。
導電性ダイアモンド電極は、通常、熱フィラメントCVD法或いはマイクロ波プラズマCVD法により、電極基材上に導電性ダイアモンド層を形成することにより製造される。1〜100kPaの圧力下で水素、炭素、ホウ素(或いは窒素)原料から成る適切な組成の混合ガスをホットフィラメント上(1800〜2600℃)で活性化し、炭素、水素ラジカル種を発生させる。水素と炭素ガス原料の体積比率は0.05〜0.1程度に制御される。メタン、ジボランなどのガス原料を通常使用するが、炭素、ホウ素原料としてはアルコール類、酸化ホウ素を用いることは製造現場での安全性の点から好ましい。基体温度を600〜900℃に保つことにより、その表面で炭素ラジカルの析出反応が開始される。このとき非ダイアモンド成分は水素ラジカルでエッチングされるため、ほぼダイアモンド層のみが成長する。析出速度0.1〜5μm/Hである。析出条件下で基材上に生成する安定なカーバイト層が接合強度の向上に寄与していると推定される。ドープ量は100ppmから10000ppmでありその抵抗率はドープ量にほぼ反比例して増減する(10〜0.01Ωcm)。電極耐性(基材の保護)、製造コストから、厚さは1〜10μmが最適である。
本発明に用いる電極としては、CVD法による電極には限定されず、粉末粒子を電極基材に固着したものでもよい。
式(7)の水素発生を伴う陰極反応で、塩素酸が原料の場合は、陰極は酸性雰囲気で使用されるため、化学的耐久性が要求される。黒鉛、ジルコニウムなどの基材が適している。電圧を低減するために表面に触媒活性の優れた成分(白金族金属、その酸化物)を被覆することが好ましい。
塩化物が原料の場合は、陰極はアルカリ雰囲気で使用されるため、黒鉛、ステンレス、ニッケルなどの基材が適している。電圧を低減するために表面に触媒活性の優れた成分(白金族金属、その酸化物)を被覆することが好ましい。
陰極にダイアモンド電極を用いる事は化学的安定を有するため好適といえる。
過酸化水素に適する酸素ガス陰極の触媒としては、白金族金属、貴金属或いはそれらの酸化物、硫化物又は黒鉛や導電性ダイアモンドなどのカーボンが好ましい。それらの触媒はそのまま板状として用いるか、ステンレス、カーボンなどの耐食性を有する板、金網、粉末焼結体、金属繊維焼結体上に、熱分解法、樹脂による固着法、複合めっきなどにより1〜1000g/m2となるように形成させる。
酸素の供給量は理論値の1.1〜10倍程度が良い。原料である酸素ガスとしては空気、これを分離濃縮した酸素を用いたり、市販のボンベを利用しても良い。酸素は電極裏面のガス室がある場合にはそこに供給するが、処理水に前もって吹き込み吸収させておいても良い。
本発明で使用される隔膜としてカチオン交換膜を用い、陽極室、陰極室の2室型セルとすると、塩化物イオン、塩素酸イオンの透過を防止でき、合成効率の向上に寄与する。また、電解液の濃度が小さくなる場合に、イオン伝導度を維持するために不可欠な材料である。
イオン交換膜はフッ素樹脂系、炭化水素樹脂系のいずれでも良いが、耐食性の面で前者が好ましい。化学的耐性の優れた樹脂として、イオン交換基としてスルホン基を有するフッ素化樹脂(デュポン社製市販品としてはNafion)を挙げることができる。Nafionはテトラフルオロエチレンとペルフルオロ[2−(フルオロスルホニルエトキシ)−プロピル]ビニルエーテルのコポリマーから製造される。
電解セルの材料としては安定性の観点から、ガラスライニング材料、カーボン、耐食性の優れたチタンやステンレス、PTFE樹脂などが好ましい。
上記各材料を用いて電解セルを構築する。後述する2枚の多孔性電極(陽極及び水素陰極)を有する無隔膜セル(図1)、図1のセルの陽極及び水素陰極間に隔膜を挟んだ2室セル、及び多孔性陽極と酸素ガス陰極、及びその間に隔膜を挟んだ2室セル(図2)などの使用が可能である。
2室セルでは、抵抗損失を低下させるために、電極間距離はなるべく小さくすべきであるが、水を供給する際のポンプの圧力損失を小さくしかつ圧力分布を均一に保つため、密着状態から2mmにするのが好ましい。
原料である塩酸、他の塩化物及び塩素酸又は塩素酸塩の初期濃度は、0.1M以上とする。塩酸や他の塩化物を原料とする場合、電解することで塩素酸イオンが一旦中間体として生成するが、その後塩素酸イオン濃度は減少し、過塩素酸イオン濃度が増加する。電解を継続することで、原料濃度を0.01M以下にする。極限としては、原料すべてを分解できるが、その場合、電流効率が低下し、過剰な電力を必要とするので、適切な濃度まで減少した後は、他の分離方法にて分離することが好ましい。
電解条件のうちの温度は高い方が反応速度は増加し短時間で平衡値に達するが、分解速度も増大するために適正な温度範囲として、大気圧下では、室温より高く、100℃より小さく制御することが好ましい。電流密度は1〜100A/dm2が好ましい。
塩酸を原料とする場合、塩素は(7)式のように過塩素酸合成の中間体でもあり、電流効率を高めるには、なるべく溶解度を高め目的の反応を進行させることが好ましい。従って圧力は大きい方が好ましく、0.1〜1MPaが好適である。
塩素ガスが残留する場合は、脱気操作により分離除去可能である。
4及び5は電解セルの底面に形成された原料水導入口、6及び7は電解セルの上面に形成された生成ガス取出し口である。
この電解セル1に塩酸や塩化ナトリウムなどの塩化物水溶液又は塩素酸ナトリウムなどの塩素酸化合物水溶液を供給しながら両極間に通電すると、前述の式(1)、(3)及び(5)などに従って過塩素酸イオンが電解合成される。
18は電解セルの陽極室底面に形成された陽極液導入口、19は電解セルの陰極ガス室底面に形成された陰極ガス導入口、20は電解セルの上面に形成された陽極ガス取出し口、21は電解セルの上面に形成された陰極ガス取出し口である。
この電解セル11の陽極室13に塩酸や塩化ナトリウムなどの塩化物水溶液又は塩素酸ナトリウムなどの塩素酸化合物水溶液を供給し、かつ陰極ガス室14に酸素含有ガスを供給しながら両極間に通電すると、図1の電解セルの場合と同様に過塩素酸イオンが電解合成される。
基材として1mm厚の導電性シリコン上に、5000ppmのホウ素をドープさせた導電性ダイアモンドを厚さが5μmとなるように形成させたものを陽極として用いた。陰極としては、厚さ1mmの白金めっきチタン板を用いた。電極面積はそれぞれ20cm2とした。
図1に示した無隔膜セル(容積1000ml)の中に、これらの電極を極間1cmになるように向かい合わせて配置した。セルに0.02M塩素酸ナトリウム水溶液を500ml満たし攪拌しながら水温は35℃とし、1Aの電流(電流密度:0.05A/cm2)で1時間電解した。
分析はイオンクロマト装置にて行い、濃度から過塩素酸イオン生成の電流効率を算出した。次亜塩素酸ナトリウムはKI滴定でも測定した。過塩素酸イオン生成の電流効率が20%であることを確認した。
更に電解を4時間継続したところ、原料である塩素酸ナトリウムは2mMまで低下し、副生した次亜塩素イオンは0.1mMまで低減した。
ダイアモンド電極の代わりに、白金チタン板を用いたこと以外は実施例1と同様に、計5時間電解を行ったところ、過塩素酸イオンの生成は認められなかった。従来と異なる結果が得られたが、これは原料濃度や電流密度が小さかったため、過塩素酸イオンの生成が検出限界未満であったと推測できる。
ダイアモンド電極の代わりに、酸化鉛を析出させたチタン板を用いたこと以外は実施例1と同様に、計5時間電解を行ったところ、過塩素酸イオン生成の電流効率は2%程度であった。
基材として元板厚さ2mmのニオブメッシュ上に、5000ppmのホウ素をドープさせた導電性ダイアモンドを形成させたものを陽極とし、陰極として元板厚さ1mmの白金めっきチタンメッシュを用いた。電極面積はそれぞれ20cm2とし、図1の無隔膜セルの陽極及び陰極間にイオン交換膜(117ナフィオン)を挟んだ2室セルを組み立てて(極間1mm)、陽、陰極室に0.5Mの塩酸溶液200mlを注入した。40℃、20A(電流密度:1A/cm2)で1時間電解したところ、過塩素酸イオンが電流効率12%で得られた。このときの塩酸濃度は0.05Mまで低減した。セル電圧は、5.5Vであった。残留している塩素ガスは脱気により除去できた。
陽極として元板厚さ1mmの白金めっきチタンメッシュを用いたこと以外は実施例2と同様に電解を行ったところ、過塩素酸イオン生成の電流効率は0.2%程度であった。
参考例1の陽極を用い、陰極としては、触媒である黒鉛粉末(東海カーボン製、TGP−2)をPTFE樹脂と混練し、芯材であるカーボンクロス(ゾルテック社製、PWB−3)上に塗布し330℃で焼成し2cm×2cm×0.5mm厚さのシートを作製して用いた。陰極給電支持体として白金めっきチタンメッシュを用い、図2のようなイオン交換膜(ナフィオン117)を挟んだ2室セルを組み、酸素を陰極室に供給しながら参考例1と同様に、60℃、20Aで1時間電解したところ、過塩素酸イオンが電流効率10%で得られた。このときの塩酸濃度は0.05Mまで低減した。セル電圧は4.7Vであった。
2、15 陽極
3、16 陰極
12 陽イオン交換膜
Claims (3)
- 0.1M以上の原料濃度の塩素酸化合物を含有する原料溶液を、導電性ダイアモンドを陽極物質として有する陽極、及び陰極を使用して,前記原料濃度が0.01M以下に低減するまで電解し、過塩素酸化合物を合成することを特徴とする過塩素酸化合物の電解合成方法。
- 陽極と陰極の間にイオン交換膜を設置して過塩素酸化合物を合成するようにした請求項1に記載の方法。
- ガス拡散陰極を使用して陰極で酸素を電解還元しながら過塩素酸化合物を合成するようにした請求項1又は2記載の方法。
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