JP4777495B2 - アルコール障害予防剤およびそれを含有する食品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、摂取されたアルコールの体内への吸収を抑制することにより、アルコールそのものまたはその代謝物によって惹起される種々の疾病を予防しかつそれらの症状を緩和し得る、副作用の発現頻度が少ないアルコール障害予防剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルコール飲料やアルコール含有食品として経口的に摂取されたアルコールは、胃、十二指腸、小腸を主体とする消化管を通じて吸収された後、血液を通じて全身へ運搬される。体内に吸収されたアルコールの大半(通常、全体の約90%)は、肝臓において代謝される;先ず、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)が補酵素のニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチドリン酸還元物(NADPH)やニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド(NAD)と共に作用し、その結果、酸化体である有害なアセトアルデヒドを産生する。次いで、産生されたアセトアルデヒドは、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)とNADの作用により酢酸に酸化され、最終的に、水と二酸化炭素に変換され、呼気と共に体外へ排出される。
【0003】
アルコールの体内への吸収速度は、デンプン、タンパク質および脂質などの栄養素に比べて非常に速く、血液を介して全身の組織へと拡散していくと同時に毛細血管の拡張作用も及ぼし、さらには顔面や上腕部の紅潮が惹起される。
血液を介して全身の組織へと拡散したアルコールは、血液脳関門を速やかに通過して大脳皮質へと到達し、その結果、感情や情動の変化、すなわち銘酊状態を引き起こす。酩酊状態の発現には、アルコールの直接作用のほか、その代謝物であるアセトアルデヒドや電解質とのバランス、生体アミン等が複雑に関係しているものと考えられている。中でも、人体に対し毒性および薬理作用が強いアセトアルデヒドは、二日酔いの気分不快感、頭痛の原因物質でもある。
【0004】
アルコールの過剰摂取は、例えば、以下のような多くの臓器障害をもたらし得る。
(1)上部消化管(例えば、胃や十二指腸)において認められる消化器潰瘍:
これはアルコールの過剰摂取による臓器障害の最も典型的な例であり、粘膜侵害、防御因子である粘液分泌能の低下および胃粘膜血流量の低下が原因とされている。
(2)肝障害および肝障害の悪化促進:
アルコールの代謝によって産生されるアセトアルデヒドにより肝細胞内のミトコンドリアや微小管に障害が生じ、さらにはクッパー細胞や単球に作用したアセトアルデヒドによって炎症因子である活性酸素や一酸化窒素の産生が促進される。
(3)肝硬変:
クッパー細胞や単球から産生されるサイトカインが伊東細胞や類洞内皮細胞からのIV型コラーゲンの産生を促進することに起因する。
(4)高脂血症や脂肪肝:
アルコールデヒドロゲナーゼが作用するのと同時に産生されるNADHの蓄積によって、キサンチンオキシダーゼによる脂質の代謝経路が阻害されることに起因する。
【0005】
前記のような臓器障害に対する治療薬の例として、消化器潰瘍(1)の治療には、シメチジン(「Cimetidine」)をはじめとするH2ブロッカー、プロトンポンプ阻害剤のオメプラゾール、粘膜保護剤のセトラキセートやスクラルファート、さらには抗コリン剤が適用されるが、これらは、血液中の顆粒球や血小板数の減少、GOTおよび/またはGPT検査値の上昇等の副作用を誘発し得る。
前記合成医薬品に比べて副作用が少ない天然物を使用した抗潰瘍剤としては、生薬のモッコウ(木香)由来のデヒドロコスツスラクトンおよびポリエチレングリコールを含有する製剤(特開平7−138157号公報)が研究されている。
【0006】
また、肝障害(2)〜(4)に対する治療薬としては、アセトアルデヒドのトラップ剤や毒性軽減剤あるいは代謝促進剤などが種々報告されている。それらの例としては、D-penicillamineやL-methionine、さらにはclofibrate、γ-linolenic acid等が挙げられるが、いずれも合成製剤であり、また多種の副作用も誘発され得る。
【0007】
他方、アルコールの過剰摂取は、前記のような臓器障害のみならず、前述のような酩酊状態から進行してアルコール依存症や中毒、強いてはアルコール精神病のような神経障害を引き起こすこともある。
アルコール依存患者に処方される飲酒防止剤としては、例えばジスルフィラムが挙げられる。このような飲酒防止剤は、アルコール摂取前に投与されると、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼを阻害してアセトアルデヒドを蓄積させて、頭痛や気分不快感を誘発させることにより、アルコールの過剰摂取を予防できるが、体内へのアルコール吸収抑制作用は持たない。
【0008】
体内へのアルコール吸収抑制作用を発現し得る製剤としては、アルコール自体とアセトアルデヒドの両者の毒性による生体への不都合な作用を低下させるために使用されるものである。このような製剤の例としては、体内へのアルコール吸収を抑制して、血中アルコール濃度を低下させることを目的とした茶サポニンおよび/またはキラヤサポニン含有アルコール吸収抑制剤(特開平4−145028号公報);およびタラノキ、チクセツニンジン、セネガ、ムクロジ、セイヨウトチノキから抽出されたオレアノール酸(oleanolic acid)、プレセネゲニン(presenegenin)、ヘデラゲニン(hederagenin)および/またはプロトエシゲニン(protoaescigenin)をサポゲニンとする配糖体を含有するアルコール吸収抑制剤(特開平7−53385号公報)等が挙げられる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、摂取されたアルコールそのものまたはその代謝物が体内に吸収されるのを抑制して臓器障害および/または神経障害を予防するかまたはそれらの諸症状を緩和するためのアルコール障害予防剤であって、副作用の発現頻度がより少なく、かつより少ない投与量で効果を発揮し得るアルコール障害予防剤を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
クスノキ科Lauraceaeの月桂樹(学名Laurus nobilis)は、特に小アジアから地中海諸国の日当たりの良い肥沃な土壌において広く栽培されている植物である。月桂樹の葉は、通常、ローレル、ローリエまたはベイリーフ等の名前で知られており、料理用のハーブや香辛料、特にブーケガルニとして使用されている。西洋諸国では、防腐、興奮、消化機能促進および芳香性健胃を目的とした民間治療薬として用いられるほか、入浴剤、発毛剤、さらにはリュウマチの痛みを軽減するための外用剤としても使用されている。
月桂樹の葉には、ピネン(pinene)、ボルネオール(borneol)をはじめとするモノテルペノイド;コスツノライド(costunolide)、デヒドロコスツスラクトン(dehydrocostuslactone)、β−オイデスモール(β-eudesmol)等のセスキテルペノイド;およびリグナン、フラボノイド、フェニルプロパノイドが含有されていることが種々の先行技術文献より既知である。
また、薬理学的見地において、天然物である月桂樹の種子からの抽出物が、ラットのエタノール誘発潰瘍を抑制し[Afifi F. V.ら著、J.Ethnopharmacol.、58、第9〜14頁(1997年)]、また月桂樹の葉からの抽出物は、ウサギにおける糖吸収を抑制し得ること[Gurman E.G.ら著、Fiziol Zh SSSR Im I M Sechenova、78、第109〜116頁]が報告されている。
【0011】
本発明者らは、クスノキ科の植物である月桂樹の葉の粉砕物を用い、齧歯類に対するアルコール吸収抑制作用を研究したところ、前記粉砕物からの脂溶性溶媒抽出物(特にメタノールまたはエタノール抽出物)および前記抽出物からの更なる脂溶性フラクションがいずれもγ−ラクトン環を有するセスキテルペン類を含有すること、およびそれらセスキテルペン類がアルコール吸収抑制活性を発現し得ることを見出した。
【0012】
本発明者らは、他のクスノキ科の植物であるシンナモマム・カシア、デンダイウヤクおよびクロモジの一部位の粉砕物およびその脂溶性溶媒抽出物についても同様の評価を行なったところ、いずれもアルコール吸収抑制作用を発現し得ることも見出した。
従来から、アルコール吸収抑制作用を発現する天然物としてはサポニン含有植物が既知であるが、月桂樹をはじめとする前記クスノキ科植物からサポニン類を単離したという報告が未だなされていないことや、サポニン類は通常、高い水溶性を示すため、脂溶性溶媒には不溶であることなどから、サポニン類以外のアルコール吸収抑制作用に有効な成分の存在を前記クスノキ科植物の一部位中に確認した。
【0013】
本発明者らは、更に研究を重ねた結果、前記セスキテルペン類が、α−置換されたγ−ブチロラクトン基を有するセスキテルペン類およびその誘導体の形態である場合に、より高いアルコール吸収抑制作用を表すという新たな知見を見出し、本発明を達成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の第1態様は、クスノキ科の植物の一部位(特に好ましくは月桂樹の葉)の粉砕物またはその脂溶性溶媒抽出エキスを含有するアルコール障害予防剤である。特に好ましくは、前記脂溶性溶媒抽出エキスが、アルコール吸収抑制作用を発現し得る、α−置換されたγ−ブチロラクトン基を有するセスキテルペン類およびその誘導体を含有するものである。
本発明の第2態様のアルコール障害予防剤は、月桂樹以外の他のクスノキ科の植物の一部位として、例えば、シンナモマム・カシア(Cinnamomum cassia)およびその同属植物の樹皮(すなわちケイヒ)、テンダイウヤクの根またはクロモジの幹から選ばれるものを使用し、それらを、粉砕物またはその脂溶性溶媒抽出エキス、あるいは、それらに含まれるα−置換されたγ−ブチロラクトン基を有するセスキテルペン類またはその誘導体のいずれかの形態で含有することを特徴とする。
本発明は、第3態様として、上記クスノキ科の植物の一部位の粉砕物またはその脂溶性溶媒抽出エキスと共に、サポニン含有植物の一部位またはそれから得られる脂溶性溶媒抽出エキス、その脂溶性溶媒抽出エキスの粗サポニンフラクションあるいはそれらからの単離精製物も含有するアルコール障害予防剤も提供する。
さらに、本発明は、更なる態様として、前記アルコール障害予防剤を含有する食品も提供する。
【0015】
【発明の効果】
本発明のアルコール障害予防剤は、飲酒やアルコール含有食品の摂取前に服用することにより、消化管からのアルコール吸収が抑制されて、血中アルコール濃度の上昇抑制、強いてはそれにより惹起される潰瘍やガンなどの胃腸管障害、肝疾患(例えば、アルコール性肝炎、脂肪肝、肝ガン)、糖尿病、高脂血症の発症、さらにはアルコール依存症または中毒症の発症も予防できる。
本発明のアルコール障害予防剤は、天然物由来であることから臨床で通常用いられている合成医薬品に比べて副作用の発現頻度が著しく低いため、より安全である。また薬効発現能力、すなわち体内へのアルコール吸収抑制作用が非常に高いことからより少量の投与量で効果を発揮するものである。
本発明のアルコール障害予防剤は、従来既知のサポニン含有植物の有効部分またはそれから得られる抽出エキス、該抽出エキスのフラクションあるいはそれらからの単離精製物をも含有することにより、体内へのアルコール吸収抑制作用をさらに増強できる。
本発明は、前記アルコール障害予防剤を含有する食品として提供され得ることから、患者が簡易に経口摂取できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のアルコール障害予防剤は、クスノキ科の植物の一部位の粉砕物またはそれから得られる脂溶性溶媒抽出エキスを含有するものである。特に好ましくは、本発明のアルコール障害予防剤は、前記脂溶性抽出エキスから単離・精製される、式:
【化3】
(式中、R1は、メチル基またはメチレン基を表す。)
で表されるα−置換されたγ−ブチロラクトン基を有するセスキテルペン類およびその誘導体を含有する。前記誘導体は、式:
【化4】
(式中、R1は、メチル基またはメチレン基を表す。)
で表されるα−置換されたγ−ブチロラクトン還元型基を有するものであってよい。
【0017】
本発明の第1の態様としては、クスノキ科の植物の一部位として、月桂樹の葉を使用する。
【0018】
前記α−置換されたγ−ブチロラクトン基を有するセスキテルペン類およびその誘導体は、例えば以下の手順で得ることができる。
先ず、月桂樹の乾燥葉の粉砕物を、有機脂溶性溶媒(特に、メタノールやエタノール)中で、好ましくは10〜30℃において24〜36時間冷浸抽出した後、溶媒を蒸発させて脂溶性溶媒抽出エキスを得る。溶媒蒸発は、特に好ましくは、45℃以下の温度において減圧下(特に、90〜180mmHg以下)で行なわれる。
次に、得られた脂溶性溶媒抽出エキスを、体積比1:1の酢酸エチル/水混合液を用いて酢酸エチル層および水層に分離し、その酢酸エチル層を、ヘキサン/酢酸エチル(=30/1〜0/100(v/v))混合溶媒をキャリアーとして使用する順相シリカゲルカラムクロマトグラフィー法に付する。有効成分を含むフラクションを、カラムクロマトグラフィー法に付し、その後、さらに高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法に付すことにより、所望のα−置換されたγ−ブチロラクトン基を有するセスキテルペン類が単離・精製できる。
【0019】
本発明において、カラムクロマトグラフィー法では、好ましくはChromatorexODSカラムを用い、またキャリアーとしてメタノール系溶媒、特に、メタノール/水=60/40〜100/0(v/v)混合溶媒系を好ましく使用する。さらに、後続するHPLC法では、好ましくはC18系カラムを用い、かつキャリアーとしてメタノール系溶媒、詳しくは、メタノール/水=50/50〜80/20(v/v)混合溶媒系を好ましく使用する。
【0020】
上記のような方法で単離・精製されるα−置換されたγ−ブチロラクトン基を有するセスキテルペン類の具体例としては、コスツノライド(1)、サンタマリン(2)、デヒドロコスツスラクトン(3)、エレマンチン(4)、ザルザニンC(5)、スピラフォライド(6)、マグノリアライド(7)、ザルザニンD(8)、レイノシン(9)、3-α-アセトキシオイデスマ-1,4(15),11(13)-トリエン-12,6-α-オライド(10)、3-オキシオイデスム-6βH-1,4,11-トリエン-6,13-オライド(11)等が挙げられる。以下にこれら化学種の化学式を表す。
【化5】
【0021】
本発明では、上記α−置換されたγ−ブチロラクトン基を有するセスキテルペン類を、更に転化することによって得られる誘導体の形態で使用してもよい。
本発明のアルコール障害予防剤には、より高いアルコール吸収抑制作用を発現することから、例えばデヒドロコスツスラクトン(3)の誘導体、特にγ-ラクトン環またはアセタール環を有する還元体(3b)または(3c)の形態が特に好ましく例示される。以下のスキームIに、デヒドロコスツスラクトン(3)からの誘導体の調製を示す。
【化6】
【0022】
上記スキームIにおいて、11α-メチル-6,12-ジオール誘導体(3a)は、デヒドロコスツスラクトン(3)を、テトラヒドロフラン溶媒中、0℃で水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)で処理することにより得られる。あるいは、デヒドロコスツスラクトン(3)をメタノール溶媒中、0℃において水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)で還元した後、クロマトグラフィーに付することにより、モッコラクトン(3b)、11α-メチル-ラクトール混合物(3c、α体とβ体とのモル比=1:1)および11α-メチル-12-メチレン誘導体(3d)をそれぞれ単離することができる。
ただし、上記スキームI中、11α-メチル-6,12-ジオール誘導体(3a)(未環化ラクトン体)および11α-メチル-12-メチレン誘導体(3d)(脱ケトン還元体)はいずれも、本発明における特徴的な官能基(γ−ラクトン環基またはアセタール環基)を有しないことから、本発明の好ましい誘導体には包含されない。
【0023】
本発明のアルコール障害予防剤は、前記クスノキ科の植物の一部位(例えば、月桂樹の葉の粉砕物)を、成人の場合、1回の服用量につき少なくとも250mg、好ましくは500〜2,500mgの量で含有し、より好ましくは、上述の手順により得られる脂溶性溶媒抽出エキスを、成人の場合、1回の服用量につき少なくとも50mg、好ましくは100〜500mgの量で含有する。
本発明のアルコール障害予防剤において、前記α−置換されたγ−ブチロラクトン基を有するセスキテルペン類およびその誘導体を特徴的な成分とする場合、成人の場合、1回の服用量につき、少なくとも5mg、好ましくは25〜50mgの量で使用する。
【0024】
本発明の第2の態様において、使用するクスノキ科の植物の一部位は、前述の月桂樹の葉に限定されるものではなく、例えば、シンナモマム・カシアおよびその同属植物の樹皮(すなわちケイヒ)、テンダイウヤクの根、クロモジの幹等であってもよい。本発明では、いずれの植物の一部位を用いる場合においても、より好ましくは、その粉砕物またはその脂溶性溶媒抽出エキスおよびそのフラクションあるいはそれらからの単離精製物の形態で使用する。
【0025】
ここで、ケイヒ(Cinnamomi cortex)は、Cinnamomum cassiaの樹皮であり、中国、ベトナムなどで栽培されている。ケイヒは、ケイアルデヒドを含有し、特有の香味を持つことから、スパイスや菓子の原料として使用されている。また、ケイヒは、日本薬局方にも収載されており、芳香性健胃薬や漢方方剤の処方に広く用いられている。
【0026】
テンダイウヤク(Lindera strychnifolia)は、中国の浙江省天台を主な産地とする植物であり、通常、その根部分を乾燥して使用する。テンダイウヤクは、精油類を含むことから、漢方では、芳香性健胃薬、鎮痛、鎮座薬として用いられている。本発明においても、根部分を使用する。
【0027】
クロモジ(Lindera umbellata)は、漢名を烏樟または釣樟と呼ばれ、漢方では、その根皮や樹皮を胃腸カタル、胃潰瘍、脚気、浮腫の治療薬として用いている。また、枝を折ると特有の芳香を発することから、枝葉は石鹸などの香料に使用されている。本発明では、幹部位を使用する。
【0028】
前記クスノキ科植物は、生薬市場において一般に流通しているものを表記したものであり、また、前記植物の一部位も同様に、例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明では、上記植物の該当部分を、当該分野において通常使用される粉砕手段によって微粉砕した形態で使用される。あるいは、前記月桂樹の葉について記載したのと同様の抽出溶媒・方法を用いて、抽出エキスを作製し、使用することもできる。
【0029】
本発明のアルコール障害予防剤は、製剤全重量に対し、クスノキ科植物の一部位から得られる有効な脂溶性溶媒抽出エキスを、成人の場合、1回の服用量につき少なくとも50mg、好ましくは100〜500mgの量で含有し得る。
【0030】
本発明のアルコール障害予防剤は、そのアルコール吸収抑制作用を高めるために、さらにトンブリ、タラノキの芽および樹皮、チクセツニンジンの根、セネガの根、ムクロジの果皮、セイヨウトチノキの種子から選ばれるサポニン含有植物の一部位またはそれから得られる脂溶性溶媒抽出エキスまたはその粗サポニンフラクションあるいはそれらからの単離精製物を含有していてもよい。
【0031】
トンブリは、ヨーロッパ原産のアカザ科ホウキギ(Kochia scoparia)の果実であり、主に中国および日本国内では秋田県で栽培されており、国内では、「畑のキャビア」という触込みで食品として市販されている。トンブリ(ホウキギの種子)は、momordin Icを初めとするトリテルペン配糖体のサポニンを含有し、乾燥品は、中国で地膚子(ジフシ:Kochiae fructus)という生薬として用いられている。
【0032】
タラノキ(Arallia elta SEEM)は、ウコギ科の植物で、国内では主に芽の部分が食用に利用されている。これは、elatoside I等のサポニンを含有する。本発明では、芽部分を使用するが、所望により樹皮および根皮も包含してよい。
【0033】
チクセツニンジン(Panax phizome)は、ウコギ科の植物トチバニンジン(Panax japonicus)の根茎を加工した生薬で、chikusetsu saponin類を含有する。福井県、長野県、山形県等で栽培されており、日本薬局方においては、健胃薬として用いられている。本発明では、その根部分を使用する。
【0034】
セネガは、ヒメハギ科の植物で、一般にセネガ(Polygala senega Linne)またはヒロハセネガ(Polygala senega Linne var. latifoloa Torrery et Glay)の根のことを指す。去痰薬の原料として北アメリカで、また国内では北海道や兵庫県で栽培されており、日本薬局方のセネガシロップにも配剤されている。presenigeninをゲニンとするトリテルペンサポニンであるsenegin-等を含有する。本発明では、根部分を使用する。
【0035】
ムクロジ(Sapindus mukurossi)は、ムクロジ科の植物で、別名Japanese Soapnut Treeとも呼ばれる。これは、hederageninをアグリコンとするサポニンのsapindoside類を含み、去痰薬として用いられる。本発明では、その果皮を使用する。
【0036】
セイヨウトチノキ(Aesculus hippocastanum)は、escin-Iaをはじめとするサポニンを含有し、ヨーロッパでは、抗炎症剤の原料として使用されている。本発明では、その種子を使用する。
【0037】
前記サポニン含有植物の一部位は、そのままの形態で使用される場合、好ましくは、十分に乾燥させた後、当該分野において通常使用される粉砕手段により微粉砕した形態で使用される。
【0038】
次に、上記サポニン含有植物の一部位からの抽出エキスまたはそのフラクションの抽出方法および単離・精製方法を以下に示す。
【0039】
サポニン含有植物の粉砕物を、有機溶媒、最も好ましくはメタノール中で、70〜90℃の温度において、3〜9時間還流抽出を行なった後、溶媒を減圧下(約180mmHg)で、留去することにより、脂溶性溶媒抽出エキスを得る。これを水に分散させて、酢酸エチルで洗浄した後、n-ブタノールで粗サポニン類を含むフラクションを得る。続いて、このフラクションを、逆相シリカゲカラムクロマトグラフィー(キャリアー;メタノール/水=30/70(v/v))によって分画することにより、所望のサポニンフラクションが単離精製され得る。
【0040】
本発明のアルコール障害予防剤は、前記サポニン含有植物の粉砕物を、1回の服用量につき少なくとも200mg、好ましくは500〜1,000mgの量で含有し得る。あるいは、前記粉砕物から得られる抽出エキスまたはその粗サポニンフラクションあるいはそれらからの単離精製物を、成人の場合、1回の服用量につき5〜200mg、好ましくは25〜100mgの量で含有し得る。
【0041】
本発明のアルコール障害予防剤は、錠剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤等の剤型で投与することができる。
【0042】
本発明のアルコール障害予防剤の投与量は、年齢、症状等によって変化し得るが、例えば、成人における有効量は、1回につき、50〜1,000mg、好ましくは50〜500mgであって、これを食前30分位に1日3回服用するのが好ましい。
【0043】
さらに、本発明は、第2の態様して、前記アルコール障害予防剤を含有する食品も提供する。添加し得る食品の種類には、特に限定はないが、該植物には特有の風味があるため、例えば、ドリンク剤等の飲料やキャンディ等の甘味の強い食品に添加することが好ましい。
このような飲食物におけるアルコール障害予防剤の添加量は、対象食品の種類に応じ、食品本来の味を損なわない範囲で添加すればよく、通常対象食品に対し、0.01〜1重量%の範囲で添加すればよい。
【0044】
【実施例】
以下の実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に不当に限定されるものではない。
【0045】
本明細書における調製例および実施例で単離・精製された化合物はいずれも、炭素13(13C)および水素(1H)核磁気共鳴、質量分析、赤外線および紫外線吸収スペクトルおよび施光度を測定し、それら測定値を文献値と比較することにより同定を行ない、各化学構造を確認した。
【0046】
調製例1
月桂樹の乾燥葉5kgを細かく刻み、そこへメタノール1.5〜5.0kg添加し、25℃において36時間、冷浸抽出した。次いで、それを濾過した。濾液を、45℃以下の温度で減圧下(180mmHg以下)、メタノールを完全に留去して、メタノール抽出エキス999gを得た。
【0047】
調製例2
月桂樹の乾燥葉1kgを用い、溶媒としてエタノールを用いたこと以外は、上記と同様にしてエタノール抽出エキス69gを得た。
【0048】
調製例3
調製例1で得たメタノール抽出エキス366gを、酢酸エチル/水(=1/1(v/v))混合液を用いて分配した後、得られた酢酸エチルフラクションを、ヘキサン/酢酸エチル(=30/1〜1/1(v/v))混合キャリアーを用いてシリカゲルカラムに通してカラムクロマトグラフィーを行ない、酢酸エチルフラクションをさらに分画して11のフラクションを得た。その中で、セスキテルペン類含有フラクションであるフラクション#4と#7をさらにHPLCにより精製した。
【0049】
前記フラクション#4(23.3g)を、Chromatorex ODSカラム[フジシリシア社製、キャリアー;メタノール/水(=70/30(v/v))]により、逆相カラムクロマトグラフィーを行なった。溶離した粗フラクションを、次いで、ナカライテスク社製HPLC[Cosmosil 5C18カラム、キャリアー;メタノール/水(=65/35(v/v))]を用いて精製することにより、γ-ラクトン環を有するセスキテルペン類として、コスツノライド(1)(収量:767mg)を単離・精製した。
【0050】
調製例4
調製例3で得たセスキテルペン類含有フラクション#4(23.3g)を、調製例3とは別に、Chromatorex ODSカラム[フジシリシア社製、キャリアー;メタノール/水(=80/20(v/v))]により、逆相カラムクロマトグラフィーを行なった。溶離した粗フラクションを、次いで、ナカライテスク社製HPLC[Cosmosil 5C18カラム、キャリアー;メタノール/水(=80/20(v/v))]を用いて精製することにより、γ-ラクトン環を有するセスキテルペン類として、コスツノライド(1)(収量:12mg)、デヒドロコスツスラクトン(3)(収量:34.1mg)、エレマンチン(4)(収量:17.4mg)、スピラフォライド(6)(収量:89.8mg)をそれぞれ単離・精製した。
【0051】
調製例5
調製例3で得た活性物質を含むフラクション#7(3.76g)を、Chromatorex ODSカラム[フジシリシア社製、キャリアー;メタノール/水(=80/20(v/v))]により、逆相カラムクロマトグラフィーを行なった。次いで、得られた粗フラクションを、ナカライテスク社製HPLC[Cosmosil 75C18−OPNカラム、キャリアー;メタノール/水(=50/50〜65/35(v/v))]を用いて精製することにより、γ-ラクトン環を有するセスキテルペン類として、サンタマリン(2)(収量:521.8mg)、ザルザニン C(5)(収量:62.5mg)およびマグノリアライド(7)(収量:47.4mg)を単離・精製した。
【0052】
調製例6
ここでは、先に調製例4で得たデヒドロコスツスラクトン(3)を用い、その誘導体としての還元体4種を、先に説明したスキームIに従って調製した。
デヒドロコスツスラクトン(3)150mg(0.65ミリモル)のテトラヒドロフラン(5.0ml)溶液を水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)62mgで処理し、混合物を0℃30分間攪拌した。反応混合物を水性飽和エーテルおよび次いで4NのKOH水溶液を添加して停止し、全量を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル抽出液を塩水で洗浄した。その後、MgSO4粉末によって乾燥させて、濾過した。濾液から溶媒を減圧下で除去して、残渣を回収し、HPLC[YMCパックODS−A 内径4.6×250mm(メタノール−水体積比=70:30)]で精製することにより、11α-メチル-6,12-ジオール誘導体(3a)(化合物名の後に付した符号および化学構造は上述のスキームI参照;66mg、収率46%)を得た。
【0053】
さらに、デヒドロコスツスラクトン(3)600mg(2.6ミリモル)のメタノール(10.0mL)溶液を水素化ホウ酸ナトリウム(NaBH4)100mgで処理して、混合物を0℃で1時間攪拌した。反応混合物をアセトンで停止し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル抽出物を塩水で洗浄した後、MgSO4粉末により乾燥した。減圧下での濾液からの溶媒の除去により、残渣を得た。それをHPLC[YMCパックODS−A 内径4.6×250mm(メタノール−水体積比=75:25)]で精製して、モッコラクトン(3b)(106mg、収率18%)、11α-メチル-ラクトール混合物(3c)(489mg、収率70%)および11α-メチル-12-メチレン誘導体(3d)(53mg、収率9%)をそれぞれ単離した(化合物名の後に付した符号および化学構造はいずれも上述のスキームI参照)。
【0054】
単離・精製された化合物(3a)〜(3d)について、以下の装置及び条件で、炭素13(13C)および水素(1H)核磁気共鳴、質量分析、赤外線および紫外線吸収スペクトルおよび施光度をそれぞれ測定し、それら測定値を文献値と比較することにより同定を行ない、各化学構造を確認した:13C−NMRスペクトル=内部標準としてテトラメチルシランを用いたJNM−LA500(125MHz)分光計;1H−NMRスペクトル=JNM−LA500(500MHz)分光計;EI−MSおよび高解像度MS=JOEL JMS−GCMATE質量分析装置;FAB−MSおよび高解像度MS=JOEL JMS−SX 102A質量分析装置;IR分光器=島津FTIR−8100分光器;および比施光度=ホリバ製SEPA−300デジタル偏光計(L=5cm)。
単離・精製のための各種クロマトグラフィーでは、以下の実験条件を使用した。
(1)順相シリカゲルカラムクロマトグラフィー=シリカゲルBW−200(フジ・シリシア・ケミカル・リミテッド、150〜350メッシュ)。
(2)TLC=シリカゲル60F254(メルク、0.25mm)(順相)またはシリカゲルRP−18 60F254(メルク、0.25mm)(逆相)でプレコートしたTLDプレート。
(3)逆相HPTLC=シリカゲルRP−18 60WF254S(メルク、0.25mm)(順相)でプレコートしたTLDプレート。
TLCの検出は、1%Ce(SO4)2−10%硫酸を噴霧し、加熱することにより行なった。
【0055】
調製例7
ベトナム産ケイヒの粉砕物1kgにメタノール3Lを加え、15〜25℃において時々かき混ぜながら36時間抽出を行ない、濾過した。得られた濾液を、45℃以下の温度において減圧下(180mmHg以下)、完全に留去することにより、ケイヒのメタノール抽出エキス(収量:172g)を得た。
【0056】
調製例8
テンダイウヤクの根の乾燥粉砕物1kgを用いたこと以外は、上記調製例6と同様の手順により、テンダイウヤクのメタノール抽出エキス(収量:27g)を得た。
【0057】
調製例9
クロモジの幹の乾燥粉砕物1kgを用いたこと以外は、上記調製例6と同様の手順により、クロモジのメタノール抽出エキス(収量:38g)を得た。
【0058】
調製例10
地膚子(ジフシ)1kgの粉砕物1kgにメタノール1.5〜5.0kgを加えて、80〜90℃で3時間加熱抽出し、冷却した後、濾過した。得られた濾液を、45℃以下の温度において減圧下(180mmHg以下)、完全に留去することにより、トンブリのメタノール抽出エキス(収量:121.0g)を得た。このエキスを水に分散させ、酢酸エチルで洗浄した後、n-ブタノールで抽出し、サポニンフラクション(収量:20.1g)を得た。
【0059】
調製例11
タラノキの樹皮の乾燥粗切品1kgを用いたこと以外は、上記調製例9と同様の方法で、タラノキの樹皮のメタノール抽出エキス(収量:34.0g)を得た。このエキスを水に分散させ、酢酸エチルで洗浄した後、n-ブタノールで抽出し、サポニンフラクション(収量:0.7g)を得た。
【0060】
実施例1
上記調製例1および2で得られた月桂樹の葉のメタノールおよびエタノール抽出エキス、およびメタノール抽出エキスの酢酸エチルフラクションまたは水フラクションおよび単離・精製されたγ-ラクトン環を有するセスキテルペン類(コスツノライド(1)およびデヒドロコスツスラクトン(3))を用い、以下の方法に従ってアルコール吸収抑制作用を試験した。
調製例1および2で得られたメタノールおよびエタノール抽出エキスの0.5%アラビアゴムの水性懸濁液サンプル(AおよびA’)、前記調製例3で得られた酢酸エチルフラクションまたは水フラクションの各0.5%アラビアゴムの水性懸濁液サンプル(B)および(B’)、並びに調製例3で単離されたコスツノライド(1)の0.5%アラビアゴムの水性懸濁液サンプル(C)および前記調製例4で得たデヒドロコスツスラクトン(3)の0.5%アラビアゴムの水性懸濁液サンプル(C’)をそれぞれ調製した。これらを、18〜20時間絶食したWistar系雄性ラット(体重110から150g;1群5匹)に対しそれぞれ、5mL/kg体重の量で経口投与した。各サンプルの投与量を以下にまとめる。
【0061】
サンプル(A) :125、250および500mg/kg体重
サンプル(A’):125および250mg/kg体重
サンプル(B) :125および250mg/kg体重
サンプル(B’):125および250mg/kg体重
サンプル(C) :25および50mg/kg体重
サンプル(C’):25および50mg/kg体重
【0062】
対照群として、同様の条件下のラット(体重110から150g;1群5匹)に前記サンプルをいずれも投与しなかったものを用意した。
【0063】
前記サンプルの投与から30分後に、20v/v%エタノール溶液を5mL/kg体重の割合で経口投与した。さらに、その0.5時間後、1時間後および2時間後、サンプルを投与したラットおよび対照群のラットにエーテル軽麻酔した後、眼底静脈より採血を行なった。
採取した血液は、直ちに氷冷し、0.33N過塩素酸を加えてタンパク質を除去した。次いで、それを遠心分離に付した後、上清中のエタノール濃度を、ベーリンガー・マンハイム社製Fキット(エタノール)を用いて測定した。
実験結果は、平均値と標準誤差で表し、対照群との有意差検定には、Dunnettの多重比較検定を用いた。結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
表中、試験サンプル欄において
(A)は、調製例1で得られたメタノール抽出エキスの0.5%アラビアゴムの水性懸濁液サンプルを、
(A’)は、調製例2で得られたエタノール抽出エキスの0.5%アラビアゴムの水性懸濁液サンプルを、
(B)は、前記調製例3で得られた酢酸エチルフラクションの0.5%アラビアゴムの水性懸濁液サンプルを、
(B’)は、前記調製例3で得られた水フラクションの0.5%アラビアゴムの水性懸濁液サンプルを、
(C)は、調製例3で単離されたコスツノライド(1)の0.5%アラビアゴムの水性懸濁液サンプルを、および
(C’)は、調製例4で単離されたデヒドロコスツスラクトン(3)の0.5%アラビアゴムの水性懸濁液サンプル
をそれぞれ表し、また血中アルコール濃度結果の末尾の符号「*」および「**」は、Dunnettの多重比較検定で検定した対照との有意差:pが、0.05または0.01未満であったことを表す。
【0065】
上記表1の結果より、本発明のγ-ラクトン環を有するセスキテルペン類として単離されたコスツノライドやデヒドロコスツスラクトンおよびこれらを含有する抽出エキスやフラクションが、高いアルコール吸収抑制作用を発現することが分かる。
【0066】
実施例2
本実施例では、前記調製例4および6で得られたデヒドロコスツスラクトンおよびその誘導体(還元体 4種)による、エタノール添加ラットにおける血中エタノール上昇抑制効果を調べた。
・動物および材料:
4〜6週のWistar系雄性ラット(体重80〜130g)を、紀和実験動物株式会社(和歌山、日本)から入手し、23±2℃に空調した室内で飼育した。標準実験用飼料(MF、オリエンタル酵母、東京、日本)と水道水は自由に与えた。
実験前20〜22時間、絶食させたが、水は無制限に与えた。
・試験試料の調製:
前記調製例4および6で得られたデヒドロコスツスラクトンおよびその誘導体(還元体 4種)を5%アラビアゴム溶液に懸濁させて試験サンプルとした。
前記試験サンプルを、20〜22時間絶食した前記Wistar系雄性ラットに対し、それぞれ5mL/kg体重の量で経口投与した。各サンプルの投与量を以下にまとめる。
デヒドロコスツスラクトン(3):25、50mg/kg体重。
11α-メチル-6,12-ジオール誘導体 (3a):50mg/kg体重。
モッコラクトン(3b):25、50mg/kg体重。
11α-メチル-ラクトール混合物(3c):25、50mg/kg体重。
11α-メチル-12-メチレン誘導体(3d):50mg/kg体重。
【0067】
対照群として、同様の条件下のラット(体重80〜130g;1群5匹、但し、11α-メチル-12-メチレン誘導体(3d)についての試験では1群4匹)に前記サンプルをいずれも投与しなかったものを用意した。
【0068】
上記試験試料を、ラットに経口投与してから30分経過後に、エタノール(20v/v%、5mL/kg体重)を経口投与した。
エタノール投与から0.5時間、1時間および2時間後に、ラットの眼窩の静脈叢から血液試料を採取した。血液を即座に10倍体積の氷冷した0.33N過塩素酸と混合した後、遠心分離した(4℃、3000rpm、10分)。遠心分離された上清中の血中エタノール濃度を酵素法で測定した(F−キット(登録商標)エタノール、ベーリンガー・マンハイム製)。結果を表2にまとめる。
【表2】
上記表2の試験サンプル欄において、
(3)はデヒドロコスツスラクトンの5%アラビアゴム溶液への懸濁サンプルを、
(3a)は11α-メチル-6,12-ジオール誘導体の5%アラビアゴム溶液への懸濁サンプルを、
(3b)はモッコラクトンの5%アラビアゴム溶液への懸濁サンプルを、
(3c)は11α-メチル-ラクトール混合物の5%アラビアゴム溶液への懸濁サンプルを、および
(3d)は11α-メチル-12-メチレン誘導体(3d) の5%アラビアゴム溶液への懸濁サンプルを
それぞれ表し、また、血中アルコール濃度結果の末尾の符号「**」は、Dunnettの多重比較検定で検定した対照との有意差:pが、0.01未満であったことを表す。
【0069】
上記表2の結果より、デヒドロコスツスラクトン(3)およびその誘導体はいずれも高い血中アルコール濃度上昇抑制活性を発現することが分かる。特に、モッコラクトン(3b)(すなわち、エキソメチレン還元体)と11α-メチル-ラクトール混合物(3c)(すなわち、ケトン基還元体)が好ましい結果を示している。表2の結果において、未環化ラクトンである11α-メチル-6,12-ジオール誘導体(3a)は明らかに血中アルコール濃度上昇抑制活性が消失しており、また、11α-メチル-12-メチレン誘導体(3d)(すなわち、脱ケトン還元体)は前記活性を有するが、統計学的には有意でないことを示している。すなわち、血中アルコール濃度上昇抑制活性を発現するためには、構造中にγ-ラクトン環またはアセタール環の存在が必須であること、および前記環内にメチル基またはメチレン基の存在が好ましいことが分かる。
【0070】
実施例3
調製例7〜9において得たケイヒ、テンダイウヤクおよびクロモジのメタノール抽出エキスの0.5%アラビアゴムの水性懸濁液サンプルをそれぞれ調製した。これらのサンプルを用い、前記サンプルの投与から0.5時間後の血中アルコール濃度を測定したこと以外は、実施例1と同様の方法でアルコール吸収抑制作用を試験した。結果を表3に示す。
【0071】
【表3】
上記表3の結果より、クスノキ科の植物より得たメタノール抽出エキスが、アルコール吸収抑制作用を発現することが分かる。
【0072】
以下の実施例4および5では、前記調製例1で得られたメタノール抽出エキスに、前記調製例10および11で得られた各サポニン含有植物からのサポニンフラクションを添加することによって、アルコール吸収抑制作用の増強効果を調べた。
【0073】
実施例4
調製例1で得られた月桂樹の葉からのメタノール抽出エキスの0.5%アラビアゴムの水性懸濁液サンプル(A)、調製例10で得たトンブリのサポニンフラクションの0.5%アラビアゴムの水性懸濁液サンプル(a−1)および月桂樹の葉からのメタノール抽出エキスとトンブリのサポニンフラクションの各0.5%アラビアゴムの水性懸濁液サンプル(a−2)をそれぞれ試験サンプルとして用いたこと以外は、実施例1と同様にしてアルコール吸収抑制作用を試験した。
結果を表4に示す。
【0074】
実施例5
調製例10で得たトンブリのサポニンフラクションの代わりに、調製例11で得たタラノキの樹皮のサポニンフラクションを用いたこと以外は、実施例4と同様にして、各アルコール障害予防剤としての試験サンプル(A)、(b−1)および(b−2)を調製し、それらのアルコール吸収抑制作用を試験した。結果を表4に示す。
【0075】
【表4】
【0076】
上記表4の結果において、月桂樹の葉からのメタノール抽出エキスのみを含有するサンプル(A)またはサポニン含有植物のサポニンフラクションのみを含有するサンプル(a−1)および(b−1)に比べて、両者を共に含むサンプル(a−2)および(b−2)は、より強いアルコール吸収抑制作用を示している。すなわち、月桂樹の葉からのメタノール抽出エキスにサポニン含有植物のサポニンフラクションを添加することで、優れた相乗作用を発現することが分かる。
【0077】
以下の実施例6〜9には、上記調製例1〜9で得られたアルコール吸収抑制剤、および必要に応じて、前記アルコール吸収抑制剤と調製例10および11で得られたサポニン含有植物からの各サポニンフラクションと共に配合した食品の例を示す。
【0078】
実施例6:錠剤
調製例2の抽出物100重量部および乳糖148重量部に水を加え、混合し、押し出し造粒機で顆粒とし、乾燥した後、ステアリン酸マグネシウム2重量部を混合し、打錠機で1錠300mgの錠剤とした。1錠中、調製例2の抽出物の含有量は40mgであった。
【0079】
実施例7:顆粒剤
調製例7の抽出物100重量部、乳糖296重量部およびデキストリン4重量部に水を加え、混合し、押し出し造粒機で顆粒とし、乾燥した後、2gをスティック包装に付した。1包中、調製例7の抽出物の含有量は500mgであった。
【0080】
【0081】
上記処方の割合に従って、各成分を精製水に溶解し、全量を100mLとした後、100mL褐色瓶に充填し、98℃で30分間加熱殺菌して、1本当たりの調製例2の抽出物および調製例10の抽出物のサポニンフラクションの含有量がそれぞれ25mgのドリンク剤を得た。
【0082】
【0083】
常法に従って、グラニュー糖および水飴を加熱溶解し、120℃まで煮詰め、95℃まで冷却した後、残りの成分を全て加え、均一に混和して、1粒2gのキャンディを製造した。キャンディ1粒中には、調製例2の抽出物および調製例11の抽出物のサポニンフラクションをそれぞれ10mg含まれていた。
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