しかしながら、曲げ加工後に設計段階で定めた理想完成形状を精度良く得ることができるように板金部材の展開形状を定める必要があるが、曲げ加工における金型、曲げ順、曲げ工法、曲げ加工機の特性等の曲げ加工条件によって曲げ加工時における伸び量が異なるため、曲げ加工条件の変更によって板金部材の展開形状を修正する必要が生じる。また、逆に、板金部材の展開形状を形成する加工が抜き加工であるか切断加工であるか、さらに切断加工の切断手段等の加工条件によって加工硬化特性が変化し、曲げ加工時における伸び量が異なるため、曲げ加工後の完成形状モデルを修正する必要が生じる。また、近年曲げ加工後の板金部材の寸法や角度に高い精度が要求されることが多く、このような場合には、特に各種加工条件に関して試行錯誤を行いながら最終的な加工条件を定めており、加工条件を変更する毎に曲げ加工後の完成形状モデルを修正する必要が生じる。また、設計段階で定めた素材の板厚は、素材の実際の板厚とは厳密には異なっており、高い精度を得るためには、曲げ加工後の完成形状モデルを素材の実際の板厚に変更して修正する必要が生じる。このように、曲げ加工を含む加工設備により製造される板金部品は、一旦曲げ加工後の全体形状を一体に表現する3次元ソリッドモデルをした場合であっても、当該3次元ソリッドモデルを修正する必要が多々生じる。このようなとき、板金部品の形状モデルを一部変更する場合であっても、3次元ソリッドモデルを再度作成する必要があるので、全体の形状を一体に表現した従来の板金モデルを変更することは容易でないという問題があった。
さらに、例えば、複数の曲げ箇所があるとき、板金部品と曲げ加工機などと干渉が生じていないことを曲げ順に応じて確認するために、曲げ加工工程の途中状態における板金モデルを必要とする場合がある。しかしながら、従来の板金モデルは、特定の状態、通常は完成状態の形状モデルのみを表現するものであり、他の状態の形状モデルを必要とする場合には、3次元ソリッドモデルを再度作成する必要があるという問題があった。
さらに、板金部品が絞り等の成型加工による複雑な成形形状を有する場合、従来の板金モデルにおいて当該成形形状は3次元ソリッドモデルにて表現される。そのため、板金モデルは、そのデータ量が大きくなり、ロール、パン、ズームなどの視点変換や、形状モデル自体を回転等して表示するときなどに必要なデータ処理量が多くなり、再表示までに長時間を要するという問題があった。また、前記の場合、成形形状を省略することによって板金モデルのデータ量が大きくなることは回避されるが、形状モデルが形状を忠実に表現していないので、板金部品と他部品との干渉や組付け確認などに、板金モデルを利用することができなくなるという問題があった。
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、コンピュータを利用して板金モデルの再作成を容易に行うことができるデータ量が大きくない板金モデルを作成する板金モデル作成システム及び板金モデル作成方法、並びにコンピュータをこのような板金モデルを作成する板金モデル作成手段として機能させる板金モデル作成プログラムを提供することを目的とする。さらに、本発明は、コンピュータを利用して曲げ加工工程の途中状態の形状や複雑な成形形状を忠実に表現できる板金モデルを作成する板金モデル作成システム及び板金モデル作成方法、並びにコンピュータをこのような板金モデルを作成する板金モデル作成手段として機能させる板金モデル作成プログラムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の板金モデル作成システムは、曲げ加工を含む加工設備において製造される板金部品の形状モデルをコンピュータを利用して作成する板金モデル作成システムが、前記板金部品の設計形状データから、当該板金部品の非曲げ部位と曲げ部位とを認識し、前記非曲げ部位及び曲げ部位の完成状態である曲げ加工後の板厚方向中間面の形状をそれぞれ表現する2次元サーフェイスデータ構造の中間面モデルを作成する中間面モデル作成手段と、前記非曲げ部位と曲げ部位との接続部位と位相を表現する接続子データを作成する接続子データ作成手段と、前記板金部品の設計形状データから、当該板金部品の板厚を表現する板厚データを作成する板厚データ作成手段と、前記非曲げ及び曲げ部位の中間面モデルに前記板厚を付加して、当該非曲げ部位及び曲げ部位の完成状態の形状を表現する3次元ソリッドモデル構造の完成状態モデルを作成する完成状態モデル作成手段と、前記曲げ部位の展開状態である曲げ加工前の板厚方向中間面の形状を表現する2次元サーフェイスデータ構造の展開状態中間面モデルを作成する展開状態中間面モデル作成手段と、前記曲げ部位の展開状態中間面モデルに前記板厚を付加して、当該曲げ部位の展開状態の形状を表現する3次元ソリッドモデル構造の展開状態モデルを作成する展開状態モデル作成手段と、前記曲げ部位を完成状態又は展開状態の何れの状態にて表現するかの選択を受け付ける選択受付手段と、該選択受付手段にて選択された状態に基づき、前記曲げ部位の中間面モデル又は展開状態中間面モデルの何れかを、前記接続子データに基づいて、前記非曲げ部位の中間面モデルと接続し、選択された状態の中間面モデルを作成する選択状態中間面モデル作成手段と、前記選択受付手段にて選択された状態に基づき、前記曲げ部位の完成状態モデル又は展開状態モデルの何れかを、前記接続子データに基づいて、前記非曲げ部位の完成状態モデルと接続し、選択された状態のモデルを作成する選択状態モデル作成手段と、を備えることを特徴としている。
請求項2に記載の板金モデル作成システムは、請求項1に記載の板金モデル作成システムにおいて、前記曲げ部位の途中状態である曲げ加工途中の板厚方向中間面の形状を表現する2次元サーフェイスデータ構造の途中状態中間面モデルを作成する途中状態中間面モデル作成手段と、前記曲げ部位の途中状態中間面モデルに前記板厚を付加して、当該曲げ部位の途中状態の形状を表現する3次元ソリッドモデル構造の途中状態モデルを作成する途中状態モデル作成手段と、を備え、前記選択受付手段が、前記曲げ部位を完成状態、展開状態又は途中状態の何れの状態にて表現するかの選択を受け付け、前記選択状態中間面モデル作成手段が、前記選択受付手段にて選択された状態に基づき、前記曲げ部位の中間面モデル、展開状態又は途中状態中間面モデルの何れかを、前記接続データが示す接続状態に基づいて、前記非曲げ部位の中間面モデルと接続し、選択された状態の中間面モデルを作成し、前記選択状態モデル作成手段が、前記選択受付手段にて選択された状態に基づき、前記曲げ部位の完成状態モデル、展開状態モデル又は途中状態モデルの何れかを、前記接続データが示す接続状態に基づいて、前記非曲げ部位の完成状態モデルと接続し、選択された状態のモデルを作成することを特徴としている。
請求項3に記載の板金モデル作成システムは、請求項2に記載の板金モデル作成システムにおいて、前記板金部品の設計形状データから、曲げ加工以外にて成形加工される成形部位を認識し、当該成形部位の形状への変形を表現する3次元ソリッドモデル構造の成形モデルを作成する成形モデル作成手段と、前記成形部位の形状への変形を抽象表現する2次元データ構造の簡易成形モデルを作成する簡易成形モデル作成手段と、前記簡易成形モデルの前記非曲げ部位又は曲げ部位の中間面モデルへの付加基準を示す成形基準データを作成する成形基準データ作成手段と、前記成形基準データが示す付加基準にて、前記完成状態モデル、展開状態モデル及び途中状態モデルに対し前記成形モデルによる編集を行う成形モデル編集手段と、前記成形位置データが示す付加基準にて、前記中間面モデル、展開状態中間面モデル及び途中状態中間面モデルに対し前記簡易成形モデルによる編集を行う簡易成形モデル編集手段と、を備えることを特徴としている。
請求項4に記載の板金モデル作成システムは、請求項2又は3に記載の板金モデル作成システムにおいて、板金部品の素材の各種データを格納する素材データ格納手段と、曲げ加工を行う際に用いられる金型の各種データを格納する金型データ格納手段と、前記素材データ格納手段及び金型データ格納手段に格納された各種データに基づいて、曲げ加工を行ったと仮想した場合に推測される前記曲げ部位の仮想完成状態の形状を表現する3次元ソリッドデータ構造の仮想完成状態モデルを作成する仮想完成状態モデル作成手段と、を備え、前記選択受付手段が、前記曲げ部位を完成状態、展開状態、途中状態又は仮想完成状態の何れの状態にて表現するかの選択を受け付け、前記選択受付手段が仮想完成状態にて表現する選択を受け付けた場合に、前記仮想完成状態モデル作成手段が前記仮想完成状態モデルを作成することを特徴としている。
請求項5に記載の板金モデル作成システムは、請求項4に記載の板金モデル作成システムにおいて、曲げ加工を行う加工機の特性に関する各種データを格納する加工機データ格納手段を備え、前記仮想完成状態モデル作成手段が、前記加工機データ格納手段に格納された各種データを考慮して、前記仮想完成状態モデルを作成することを特徴としている。
請求項6に記載の板金モデル作成システムは、請求項4又は5に記載の板金モデル作成システムにおいて、曲げ加工を行う際の曲げ補正値に関する各種データを格納する曲げ補正値データ格納手段を備え、前記仮想完成状態モデル作成手段が、前記曲げ補正値データ格納手段に格納された各種データを考慮して、前記仮想完成状態モデルを作成することを特徴としている。
請求項7に記載の板金モデル作成システムは、請求項4から6の何れか1項に記載の板金モデル作成システムにおいて、前記素材データ格納手段が、前記板金部品の素材の実際の板厚を示す実板厚データを格納し、前記完成状態モデル作成手段、展開状態モデル作成手段及び途中状態モデル作成手段が、前記中間面モデル、展開状態中間面モデル及び途中状態中間面モデルに、前記素材データ格納手段に格納された前記実板厚データが示す板厚を付加して、前記仮想完成状態モデル、展開状態モデル及び途中状態モデルをそれぞれ作成することを特徴としている。
請求項8に記載の板金モデル作成方法は、曲げ加工を含む加工設備において製造される板金部品の形状モデルを、コンピュータを利用して作成する板金モデル作成方法であって、前記コンピュータが、前記板金部品の設計形状データから、当該板金部品の非曲げ部位と曲げ部位とを認識し、前記非曲げ部位及び曲げ部位の完成状態である曲げ加工後の板厚方向中間面の形状をそれぞれ表現する2次元サーフェイスデータ構造の中間面モデルを作成する中間面モデル作成ステップと、前記コンピュータが、前記非曲げ部位と曲げ部位との接続部位と位相を表現する接続子データを作成する接続子データ作成ステップと、前記コンピュータが、前記板金部品の設計形状データから、当該板金部品の板厚を表現する板厚データを作成する板厚データ作成ステップと、前記コンピュータが、前記非曲げ及び曲げ部位の中間面モデルに前記板厚を付加して、当該非曲げ部位及び曲げ部位の完成状態の形状を表現する3次元ソリッドモデル構造の完成状態モデルを作成する完成状態モデル作成ステップと、前記コンピュータが、前記曲げ部位の展開状態である曲げ加工前の板厚方向中間面の形状を表現する2次元サーフェイスデータ構造の展開状態中間面モデルを作成する展開状態中間面モデル作成ステップと、前記コンピュータが、前記曲げ部位の展開状態中間面モデルに前記板厚を付加して、当該曲げ部位の展開状態の形状を表現する3次元ソリッドモデル構造の展開状態モデルを作成する展開状態モデル作成ステップと、前記コンピュータが、前記曲げ部位を完成状態又は展開状態の何れの状態にて表現するかの選択の入力を受け付ける選択受付ステップと、前記コンピュータが、前記選択受付ステップにて選択された状態に基づき、前記曲げ部位の中間面モデル又は展開状態中間面モデルの何れかを、前記接続子データに基づいて、前記非曲げ部位の中間面モデルと接続し、選択された状態の中間面モデルを作成する選択状態中間面モデル作成ステップと、前記コンピュータが、前記選択受付ステップにて選択された状態に基づき、前記曲げ部位の完成状態モデル又は展開状態モデルの何れかを、前記接続子データに基づいて、前記非曲げ部位の完成状態モデルと接続し、選択された状態のモデルを作成する選択状態モデル作成ステップと、を含むことを特徴としている。
請求項9に記載の板金モデル作成方法は、請求項8に記載の板金モデル作成方法において、前記コンピュータが、前記曲げ部位の途中状態である曲げ加工途中の板厚方向中間面の形状を表現する2次元サーフェイスデータ構造の途中状態中間面モデルを作成する途中状態中間面モデル作成ステップと、前記コンピュータが、前記曲げ部位の途中状態中間面モデルに前記板厚を付加して、当該曲げ部位の途中状態の形状を表現する3次元ソリッドモデル構造の途中状態モデルを作成する途中状態モデル作成ステップと、を含み、前記コンピュータが、前記選択受付ステップにおいて、前記曲げ部位を完成状態又は展開状態の何れの状態にて表現するかの選択の入力を受け付け、前記コンピュータが、前記選択状態中間面モデル作成ステップにおいて、前記選択受付ステップにて選択された状態に基づき、前記曲げ部位の中間面モデル、展開状態又は途中状態中間面モデルの何れかを、前記接続データが示す接続状態に基づいて、前記非曲げ部位の中間面モデルと接続し、選択された状態の中間面モデルを作成し、前記コンピュータが、前記選択状態モデル作成ステップにおいて、前記選択受付ステップにて選択された状態に基づき、前記曲げ部位の完成状態モデル、展開状態モデル又は途中状態モデルの何れかを、前記接続データが示す接続状態に基づいて、前記非曲げ部位の完成状態モデルと接続し、選択された状態のモデルを作成することを特徴としている。
請求項10に記載の板金モデル作成方法は、請求項9に記載の板金モデル作成方法において、前記コンピュータが、前記板金部品の設計形状データから、曲げ加工以外にて成形加工される成形部位を認識し、当該成形部位の形状への変形を表現する3次元ソリッドモデル構造の成形モデルを作成する成形モデル作成ステップと、前記コンピュータが、前記成形部位の形状への変形を抽象表現する2次元データ構造の簡易成形モデルを作成する簡易成形モデル作成ステップと、前記コンピュータが、前記簡易成形モデルの前記非曲げ部位又は曲げ部位の中間面モデルへの付加基準を示す成形基準データを作成する成形基準データ作成ステップと、前記コンピュータが、前記成形基準データが示す付加基準にて、前記完成状態モデル、展開状態モデル及び途中状態モデルに対し前記成形モデルによる編集を行う成形モデル編集ステップと、前記コンピュータが、前記成形位置データが示す付加基準にて、前記中間面モデル、展開状態中間面モデル及び途中状態中間面モデルに対し前記簡易成形モデルによる編集を行う簡易成形モデル編集ステップと、を更に含むことを特徴としている。
請求項11に記載の板金モデル作成方法は、請求項9又は10に記載の板金モデル作成方法において、前記コンピュータが、板金部品の素材の各種データを格納する素材データ格納手段、及び曲げ加工を行う際に用いられる金型の各種データを格納する金型データ格納手段に格納された各種データに基づいて、曲げ加工を行ったと仮想した場合に推測される前記曲げ部位の仮想完成状態の形状を表現する3次元ソリッドデータ構造の仮想完成状態モデルを作成する仮想完成状態モデル作成ステップを更に含み、前記コンピュータが、前記選択受付ステップにおいて、前記曲げ部位を完成状態、展開状態、途中状態又は仮想完成状態の何れの状態にて表現するかの選択を受け付け、前記コンピュータが、前記選択受付ステップにおいて仮想完成状態にて表現する選択を受け付けた場合に、前記仮想完成状態モデル作成ステップにおいて前記仮想完成状態モデルを作成することを特徴としている。
請求項12に記載の板金モデル作成方法は、請求項11に記載の板金モデル作成方法において、前記コンピュータが、前記仮想完成状態モデル作成ステップにおいて、曲げ加工を行う加工機の特性に関する各種データを格納する加工機データ格納手段に格納された各種データを考慮して、前記仮想完成状態モデルを作成することを特徴としている。
請求項13に記載の板金モデル作成方法は、請求項11又は12に記載の板金モデル作成方法において、前記コンピュータが、前記仮想完成状態モデル作成ステップにおいて、曲げ加工を行う際の曲げ補正値に関する各種データを格納する曲げ補正値データ格納手段に格納された各種データを考慮して、前記仮想完成状態モデルを作成することを特徴としている。
請求項14に記載の板金モデル作成方法は、請求項11から13の何れか1項に記載の板金モデル作成方法において、前記素材データ格納手段が格納する前記板金部品の素材の各種データには、前記板金部品の素材の実際の板厚を示す実板厚データが含まれ、前記コンピュータが、前記完成状態モデル作成ステップ、展開状態モデル作成ステップ及び途中状態モデル作成ステップにおいて、前記中間面モデル、展開状態中間面モデル及び途中状態中間面モデルに、前記素材データ格納手段に格納された前記実板厚データが示す板厚を付加して、前記仮想完成状態モデル、展開状態モデル及び途中状態モデルをそれぞれ作成することを特徴としている。
請求項15に記載の板金モデル作成プログラムは、曲げ加工を含む加工設備において製造される板金部品の形状モデルを作成するための板金モデル作成プログラムであって、コンピュータを、前記板金部品の設計形状データから、当該板金部品の非曲げ部位と曲げ部位とを認識し、前記非曲げ部位及び曲げ部位の完成状態である曲げ加工後の板厚方向中間面の形状をそれぞれ表現する2次元サーフェイスデータ構造の中間面モデルを作成する中間面モデル作成手段と、前記非曲げ部位と曲げ部位との接続部位と位相を表現する接続子データを作成する接続子データ作成手段と、前記板金部品の設計形状データから、当該板金部品の板厚を表現する板厚データを作成する板厚データ作成手段と、前記非曲げ及び曲げ部位の中間面モデルに前記板厚を付加して、当該非曲げ部位及び曲げ部位の完成状態の形状を表現する3次元ソリッドモデル構造の完成状態モデルを作成する完成状態モデル作成手段と、前記曲げ部位の展開状態である曲げ加工前の板厚方向中間面の形状を表現する2次元サーフェイスデータ構造の展開状態中間面モデルを作成する展開状態中間面モデル作成手段と、前記曲げ部位の展開状態中間面モデルに前記板厚を付加して、当該曲げ部位の展開状態の形状を表現する3次元ソリッドモデル構造の展開状態モデルを作成する展開状態モデル作成手段と、前記曲げ部位を完成状態又は展開状態の何れの状態にて表現するかの選択を受け付ける選択受付手段と、該選択受付手段にて選択された状態に基づき、前記曲げ部位の中間面モデル又は展開状態中間面モデルの何れかを、前記接続子データに基づいて、前記非曲げ部位の中間面モデルと接続し、選択された状態の中間面モデルを作成する選択状態中間面モデル作成手段と、前記選択受付手段にて選択された状態に基づき、前記曲げ部位の完成状態モデル又は展開状態モデルの何れかを、前記接続子データに基づいて、前記非曲げ部位の完成状態モデルと接続し、選択された状態のモデルを作成する選択状態モデル作成手段として機能させるためのものである。
請求項16に記載の板金モデル作成プログラムは、請求項15に記載の板金モデル作成プログラムにおいて、前記コンピュータを、前記曲げ部位の途中状態である曲げ加工途中の板厚方向中間面の形状を表現する2次元サーフェイスデータ構造の途中状態中間面モデルを作成する途中状態中間面モデル作成手段と、前記曲げ部位の途中状態中間面モデルに前記板厚を付加して、当該曲げ部位の途中状態の形状を表現する3次元ソリッドモデル構造の途中状態モデルを作成する途中状態モデル作成手段として機能させるためのプログラムを含み、前記選択受付手段が、前記曲げ部位を完成状態、展開状態又は途中状態の何れの状態にて表現するかの選択を受け付け、前記選択状態中間面モデル作成手段が、前記選択受付手段にて選択された状態に基づき、前記曲げ部位の中間面モデル、展開状態又は途中状態中間面モデルの何れかを、前記接続データが示す接続状態に基づいて、前記非曲げ部位の中間面モデルと接続し、選択された状態の中間面モデルを作成し、前記選択状態モデル作成手段が、前記選択受付手段にて選択された状態に基づき、前記曲げ部位の完成状態モデル、展開状態モデル又は途中状態モデルの何れかを、前記接続データが示す接続状態に基づいて、前記非曲げ部位の完成状態モデルと接続し、選択された状態のモデルを作成するように機能させることを特徴としている。
請求項17に記載の板金モデル作成プログラムは、請求項16に記載の板金モデル作成プログラムにおいて、前記コンピュータを、前記板金部品の設計形状データから、曲げ加工以外にて成形加工される成形部位を認識し、当該成形部位の形状への変形を表現する3次元ソリッドモデル構造の成形モデルを作成する成形モデル作成手段と、前記成形部位の形状への変形を抽象表現する2次元データ構造の簡易成形モデルを作成する簡易成形モデル作成手段と、前記簡易成形モデルの前記非曲げ部位又は曲げ部位の中間面モデルへの付加基準を示す成形基準データを作成する成形基準データ作成手段と、前記成形基準データが示す付加基準にて、前記完成状態モデル、展開状態モデル及び途中状態モデルに対し前記成形モデルによる編集を行う成形モデル編集手段と、前記成形位置データが示す付加基準にて、前記中間面モデル、展開状態中間面モデル及び途中状態中間面モデルに対し前記簡易成形モデルによる編集を行う簡易成形モデル編集手段として機能させるためのプログラムを更に含むことを特徴としている。
請求項18に記載の板金モデル作成プログラムは、請求項16又は17に記載の板金モデル作成プログラムにおいて、板金部品の素材の各種データを格納する素材データ格納手段、及び曲げ加工を行う際に用いられる金型の各種データを格納する金型データ格納手段に格納された各種データに基づいて、曲げ加工を行ったと仮想した場合に推測される前記曲げ部位の仮想完成状態の形状を表現する3次元ソリッドデータ構造の仮想完成状態モデルを作成する仮想完成状態モデル作成手段として機能させるためのプログラムを更に含み、前記選択受付手段が、前記曲げ部位を完成状態、展開状態、途中状態又は仮想完成状態の何れの状態にて表現するかの選択を受け付け、前記選択受付手段が仮想完成状態にて表現する選択を受け付けた場合に、前記仮想完成状態モデル作成手段が前記仮想完成状態モデルを作成するように機能させることを特徴としている。
請求項19に記載の板金モデル作成プログラムは、請求項18に記載の板金モデル作成プログラムにおいて、前記仮想完成状態モデル作成手段が、曲げ加工を行う加工機の特性に関する各種データを格納する加工機データ格納手段に格納された各種データを考慮して、前記仮想完成状態モデルを作成するように機能させることを特徴としている。
請求項20に記載の板金モデル作成プログラムは、請求項18又は19に記載の板金モデル作成プログラムにおいて、前記仮想完成状態モデル作成手段が、曲げ加工を行う際の曲げ補正値に関する各種データを格納する曲げ補正値データ格納手段に格納された各種データを考慮して、前記仮想完成状態モデルを作成するように機能させることを特徴としている。
請求項21に記載の板金モデル作成プログラムは、請求項18から20の何れか1項に記載の板金作成プログラムにおいて、前記素材データ格納手段が格納する前記板金部品の素材の各種データには、前記板金部品の素材の実際の板厚を示す実板厚データが含まれ、前記完成状態モデル作成手段、展開状態モデル作成手段及び途中状態モデル作成手段が、前記中間面モデル、展開状態中間面モデル及び途中状態中間面モデルに、前記素材データ格納手段に格納された前記実板厚データが示す板厚を付加して、前記仮想完成状態モデル、展開状態モデル及び途中状態モデルをそれぞれ作成するように機能させることを特徴としている。
請求項1に記載の板金モデル作成システム、請求項8に記載の板金モデル作成方法、あるいは請求項15に記載の板金モデル作成プログラムによれば、非曲げ部位及び曲げ部位の中間面モデルに板厚を付加して3次元の完成状態モデルを作成する完成状態モデル作成手段と、曲げ部位の展開状態中間面モデルに板厚を付加して3次元の展開状態モデルを作成する展開状態モデル作成手段を備えるので、3次元モデルを各状態毎に独立して作成する前記従来の板金モデルに比べて、データ量を削減することができる。また、ロール、パン、ズームなどの視点変換や、板金モデル自体を回転等の変換を伴って3次元の板金モデルを作成する場合には、中間面モデルや展開状態中間モデルに対して前記変換を行った後に板厚を付加して3次元モデルを作成することが可能であるので、変換に必要なデータ処理量を削減することができる。また、選択受付手段にて曲げ部位を表現する状態の選択を受け付けるので、曲げ加工の曲げ順などに対応させて曲げ加工の途中の板金モデルを作成することが可能である。また、非曲げ部位と曲げ部位と互いに独立したモデルを有し、接続子データがこれらモデルの接続部位と位相を表現するので、板金部品の形状モデルの一部を変更して板金モデルを作成する場合、当該変更に係る非曲げ部位や曲げ部位の形状モデルを置換することにより、板金モデルを作成することができる。そのため、板金部品全体の形状を一体的に表現する前記従来の板金モデルを再作成する場合に比べて、容易に板金モデルを作成することができる。また、非曲げ部位の形状を表現する形状モデルは完成状態のもののみであり、当該非曲げ部位に接続する曲げ部位が完成状態であるか展開状態であるかによって異ならないので、板金モデルの作成に必要なデータ量を削減することができる。
請求項2に記載の板金モデル作成システム、請求項9に記載の板金モデル作成方法、あるいは請求項16に記載の板金モデル作成プログラムによれば、曲げ部位の途中状態の形状を表現する途中状態中間面モデルと途中状態モデルをそれぞれ作成する途中状態中間面モデル作成手段と途中状態モデル作成手段を備え、これら曲げ部位を表現する状態の選択を選択受付手段にて受け付けることができるので、曲げ部位を複数の曲げにて加工する場合など、その途中状態の板金モデルを作成することが可能となる。
請求項3に記載の板金モデル作成システム、請求項10に記載の板金モデル作成方法、あるいは請求項17に記載の板金モデル作成プログラムによれば、成形部位の3次元モデルを備えた板金モデルが必要な場合には、当該成形部位を3次元にて表現した板金モデルを作成することができる。一方、このような板金モデルを作成する必要がない場合には、当該成形部位を2次元にて抽象表現することにより、3次元にて表現する場合に比べて、板金モデルの作成に必要なデータ量を削減することができる。また、ロール、パン、ズームなどの視点変換や、板金モデル自体を回転等の変換を伴った3次元の板金モデルを作成する場合には、中間面モデルや展開状態中間モデル等に対して前記変換を行った後に成形部位の3次元モデルを付加することが可能であるので、変換に必要なデータ処理量を削減することができる。
請求項4に記載の板金モデル作成システム、請求項11に記載の板金モデル作成方法、あるいは請求項18に記載の板金モデル作成プログラムによれば、曲げ加工を行ったと仮想した場合に推測される曲げ部位の仮想完成状態モデルを作成する仮想完成状態モデル作成手段を備えるので、実際に曲げ加工を行って得られる板金部品の形状をより高い精度にて表現する板金モデルを作成することができる。また、仮想完成状態モデル作成手段が、素材データ格納手段や金型データ格納手段に格納された各種データに基づいて仮想完成状態モデルを作成するので、素材と金型の組み合わせによる加工シュミレーションや実加工データから仮想完成状態モデルを作成するなど、実際の素材と金型による曲げ加工特性を考慮することが可能になるため、実際に曲げ加工を行って得られる板金部品の形状をさらに高い精度に表現する板金モデルを作成することができる。
請求項5に記載の板金モデル作成システム、請求項12に記載の板金モデル作成方法、あるいは請求項19に記載の板金モデル作成プログラムによれば、仮想完成状態モデル作成手段が、実際の曲げ加工に用いられる加工機の特性に関する各種データを考慮して仮想完成状態モデルを作成するため、実際に曲げ加工を行って得られる板金部品の形状をさらに高い精度にて表現する板金モデルを作成することができる。
請求項6に記載の板金モデル作成システム、請求項13に記載の板金モデル作成方法、あるいは請求項20に記載の板金モデル作成プログラムによれば、仮想完成状態モデル作成手段が、実験や理論等により得られた補正式や補正係数など曲げ補正値に関する各種データを考慮して仮想完成状態モデルを作成するため、実際に曲げ加工を行って得られる板金部品の形状をさらに高い精度にて表現する板金モデルを作成することができる。
請求項7に記載の板金モデル作成システム、請求項14に記載の板金モデル作成方法、あるいは請求項21に記載の板金モデル作成プログラムによれば、実板厚データが表現する板厚を付加して、完成状態モデル、展開状態モデル及び途中状態モデルを作成するので、板金部品の素材の実際の板厚を板厚とする板金モデルを作成することができ、板金部品の形状をさらに高い精度にて表現する板金モデルを作成することができる。
本発明の実施形態に係る板金モデル作成システム、あるいは本発明の実施形態に係る板金モデル作成方法や板金モデル作成プログラムを適用した板金モデル作成システムについて図面に基づいて説明する。この板金モデル作成システム1を実行するためのハードウェア構成環境は、図1にブロック図を示すように、1又は2以上の端末装置2と、該端末装置2とLAN(Local Area Network)3を介して通信可能なサーバ装置4と、から構成されている。このサーバ装置4は、板金モデルに関する各種処理を提供するアプリケーションサーバ5と、板金モデルを表現するデータ(以下、「板金モデルデータ」という。)や板金モデルに関連するデータの集合をデータベースとして格納し管理するデータベースサーバ6とから構成されている。端末装置2、アプリケーションサーバ5及びデータベースサーバ6はそれぞれコンピュータからなっている。板金モデル作成システム1は、板金モデル作成プログラムP1,P2(図2及び図3参照。)を実行することにより、LAN3を介して接続された複数のコンピュータを形状モデル作成手段として機能させて板金モデルの作成を行う。なお、LAN3に限定されることなく、携帯端末網,公衆回線網,専用回線網,インターネット回線網やイントラネット網等により構成される無線あるいは有線で接続可能な通信回線網を用いることもできる。さらに、端末装置2、アプリケーションサーバ5及びデータベースサーバ6を1台のコンピュータから構成してもよい。
前記端末装置2は、設計部門、生産工程作成部門、抜き加工部門、切断加工部門、曲げ加工部門、その他溶接やタッピング加工を含む板金部品に対する加工一般部門、検査部門などに設置された情報端末装置としてのコンピュータである。端末装置2は、図2に示すように、この端末装置2に対する入出力処理やプログラムの実行などのすべての処理を行なうCPU(Central Processing Unit)11と、端末装置2全体を制御するためのシステムプログラム等が格納されたROM(Read Only Memory)12と、CPU11による演算処理結果、装置の各種動作の設定情報等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)13と、本発明に係る板金モデル作成プログラムの一部を構成する板金モデル作成プログラムP1を含む各種アプリケーションプログラムが格納されたプログラムメモリ14と、前記LAN3に接続するためのLANI/F(Local Area Network Interface)15と、を備え、これら各部11乃至15がバス16を介して接続されている。また、端末装置2は、CRT(Cathode-Ray Tube)や液晶ディスプレイ等の表示手段、キーボードやマウス等の入力手段、プリンタやプロッタ等の出力手段、磁気テープ、光ディスク、フレキシブルディスク等の記憶媒体にデータを記憶させる又は記憶媒体からデータを読み取る記憶媒体接続手段などを各部門の必要に応じて備えている。端末装置2におけるサーバ装置4との通信処理は、プログラムメモリ14に格納された周知のクライアント用のアプリケーションプログラムをCPU11が実行することにより行われる。端末装置2は、パーソナルコンピュータやワークステーション等の独立した情報端末装置であっても、加工機類のインターフェイスシステムや制御システムの一部を構成する情報端末装置であってもよい。
プログラムメモリ14に格納されたプログラムは、高級手続型プログラミング言語、オブジェクト指向プログラミング言語、アセンブリ言語、機械語の他、HTML等のマークアップランゲージで記述される。このような実現方法において、ハードディスク、光磁気ディスク、光ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等により構成されるプログラムメモリ14は、コンピュータ読取可能な記憶媒体として機能する。
前記アプリケーションサーバ5は、端末装置2に板金モデルを表示、入力するための画面を表示するプレゼンテーションロジック部(以下、PL部という。)5aと、板金モデル作成システム1の板金モデル作成等の処理機能を搭載した板金モデルロジック部(ML部という。)5bと、PL部5a及びML部5bの呼び出し制御を行うフロー制御部(以下、FC部という。)5cと、データベースサーバ6へアクセスするデータアクセス部(以下、DA部という。)5dと、を有する。
PL部5aは、メニュー画面、入力画面、処理結果表示画面等を表示する際に用いる表示属性情報を有して構成される表示属性ファイルを保持しており、端末装置2からの指示に基づき、表示属性情報を端末装置2に返す処理を行う。ML部5bは、端末装置2からの指示に基づき、板金モデルデータを作成する等の板金モデルに関する各種処理を行う他、DA部5dに対して、データベースサーバ6への板金モデルデータ等の入力、更新、検索、抽出を命じたり、データベースサーバ6へのアクセス結果を端末装置2に返す処理を行う。FC部5cは、端末装置2からの指示に応じて、PL部5aやML部5bを呼び出す処理を行う。DA部5dは、データベースサーバ6との接続や切断、クエリの作成・実行、データベースサーバ6への板金モデルデータ等の入力や変更などデータベースサーバ6へのアクセスに関する処理を行う。
データベースサーバ6は、板金モデルデータを格納する板金モデルデータベース6a、板金素材の板厚、長さ、幅、引張強さ等の板金素材に関する素材データを格納する素材データベース(素材データ格納手段)6b、金型の各種寸法、許容荷重や適用可能工法等の金型に関する金型データを格納する金型データベース(金型データ格納手段)6c、曲げ加工機,抜き加工機,切断加工機を含む加工機の特性データに関する加工機データを格納する加工機データベース(加工機データ格納手段)6d、実験等で得られた曲げ補正値データや曲げ補正値を算出するための補正式や補正係数等のデータを格納する曲げ補正値(伸び値)データベース(曲げ補正値データ格納手段)6eを備えている。
前記データベースサーバ6は、DA部5dからの処理要求に応答してデータベース6a乃至6eに対して板金モデルデータ等の記憶や検索等の処理を行う。
アプリケーションサーバ5及びデータベースサーバ6のハードウェア構成の一例を図3に示す。アプリケーションサーバ5及びデータベースサーバ6は、それぞれ装置全体の制御を行うCPU21と、装置全体を制御するためのシステムプログラム等が格納されたROM22と、CPU21による演算処理結果、装置の各種動作の設定情報等を一時的に記憶するRAM23と、本発明に係る板金モデル作成プログラムの一部を構成する板金モデル作成プログラムP2を含む各種アプリケーションプログラムが格納されたプログラムメモリ24と、前記LAN3に接続するためのLANI/F25と、を備えている。さらに、データベースサーバ6は、板金モデルデータ、素材データ、金型データ及び加工機データを含む板金モデルに関連するデータを記憶する大容量のハードディスク等により構成されるデータメモリ26を備えている。これら各部21乃至26はバス27を介して接続されている。アプリケーションサーバ5やデータベースサーバ6として、具体的にはパーソナルコンピュータやワークステーション等の汎用コンピュータを好適に用いることができるが、それ以外にも、板金モデル作成システム1専用に設計された専用コンピュータ等を用いることもできる。なお、アプリケーションサーバ5及びデータベースサーバ6を、1台のサーバ装置として構成してもよい。さらに、アプリケーションサーバ5を、複数のサーバ装置によって構成してもよい。
さらに、データベースサーバ6におけるデータベース6a乃至6eの管理処理、アプリケーションサーバ5によるデータベースサーバ6のアクセス処理や端末装置2との通信処理は、プログラムメモリ24に格納された周知のデータベースサーバ用及びアプリケーションサーバ用のアプリケーションプログラムをCPU21が実行することにより行われる。
プログラムメモリ24に格納されたプログラムは、高級手続型プログラミング言語、オブジェクト指向プログラミング言語、アセンブリ言語、機械語の他、HTML等のマークアップランゲージで記述される。このような実現方法において、ハードディスク、光磁気ディスク、光ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等により構成されるプログラムメモリ24は、コンピュータ読取可能な記憶媒体として機能する。
また、板金モデル作成システム1は、図1に示すように、板金部品に関する三面図、展開図、3次元ソリッドデータ等からなる設計段階における設計データの集合をデータベースとして格納し管理する設計データベースサーバ7とLAN3を介して接続可能とされていてもよい。
板金モデル作成システム1は、端末装置2において板金モデル作成プログラムP1のプログラムコードを記憶したプログラムメモリ14からCPU11がそのプログラムコードを読み出して実行するもの(図2参照。)と、サーバ装置4において板金モデル作成プログラムP2のプログラムコードを記憶したプログラムメモリ24からCPU21がそのプログラムコードを読み出して実行するもの(図3参照。)とが互いに連関し、板金モデルの作成等の処理を行うものである。具体的には、例えば、板金モデル作成システム1は、サーバ装置4が、端末装置2から入力された指示に従って、当該端末装置2から入力された設計データあるいは設計データベースサーバ7に格納されている設計データから板金モデルデータを作成して板金モデルデータベース6aに格納する処理、板金モデルデータベース6aから板金モデルデータを取得し、該取得した板金モデルデータに対して修正、置換、削除などの変更を行い板金モデルデータベース6aに格納する処理、板金モデルデータベース6aから板金モデルデータを取得し、該取得した板金モデルデータを当該端末装置2に送り出し、表示属性情報に従って板金モデルを当該端末装置2に表示させる処理を行う。本発明に係る板金モデル作成プログラムは、設計データから板金モデルデータを作成するプログラムなど板金モデルデータの作成に関する各種処理を行うプログラムであって、板金モデル作成システム1を端末装置2やサーバ装置4に実行させるための板金モデル作成プログラムP1,P2(図2及び図3参照。)を有して構成されている。
次に、本発明の実施形態に係る板金モデル作成システム、あるいは本発明の実施形態に係る板金モデル作成方法や板金モデル作成プログラムを適用した板金モデル作成システムが処理を行うオブジェクト指向板金モデルについて図面に基づき説明する。このオブジェクト指向板金モデル(以下、単に「板金モデル」という。)30は、板金部品をオブジェクト指向に基づき抽象化したモデルであり、図4にクラス図(UML図)を、図5にオブジェクト図を示すように、板金部品の形状を分解して表現するものである。
板金モデル30において、独立した板金部品は部品クラス31に属する部品オブジェクト101にて表現され、この部品オブジェクト101は、板金部品の位相や幾何などの形状をモデリングした形状モデルを定義する部分と、抜き加工、切断加工や曲げ加工(以下、これらの加工を総称して「板金加工」という。)の加工情報や板金部品の素材データ等、形状以外のデータを定義する部分と、から構成される。部品オブジェクト101が表現する形状モデルは連結部位クラス32に属する連結部位オブジェクト102にて表現される。連結部位オブジェクト102は、面を表現する部位オブジェクトと、これらの接続を表現する接続子オブジェクト104とを集約している。部位クラスは、図6(a)及び図6(b)にも示すように、曲げ加工の前後にて形状が変形しない面部分(非曲げ部位)を表現する面部位オブジェクト105が属する面部位クラス35、または形状が変形する曲げ部分(曲げ部位)を表現する曲げ部位オブジェクト106が属する曲げ部位36のいずれかに派生される。すなわち、部位オブジェクトは、面部位オブジェクト105か曲げ部位オブジェクト106かのいずれかである。
板金モデル30は、図7(a)から図7(c)に示すように、曲げ部位の形状の状態に応じた展開状態30a、完成状態30b、途中状態30cの3種類の状態を表現する形状モデルを備えている。板金モデルには「現在の状態」という概念はなく、前記端末装置2からはいつでも任意の状態の板金モデル30a乃至30cを取得することができ、異なる状態の板金モデル30a乃至30cを同時に表示することが可能である。展開状態30aは、図7(a)に示すように、板金モデル30を構成する曲げ部位36が全て展開された状態であり、曲げ加工前の平板形状を表現する。完成状態30bは、図7(b)に示すように、板金モデル30を構成する曲げ面106(曲げ部位オブジェクト106が表現する曲がっている面)が、全て曲がっている状態であり、全ての曲げ加工が完了した後の形状を表現する。途中状態30cは、図7(c)に一例を示すように、曲げ加工の過程で成り得る状態であり、展開された形状、曲がっている形状、曲がっている途中の形状の曲げ部位106が混在する状態を表現する。板金モデルの途中状態30cは、様々な形状を表現することが可能であり、板金モデル30において少なくとも1つの途中状態が表現される。
部品クラス31は、図4に示すように、板金部品の板金モデル30を表現する最上位クラスであり、板金部品の形状モデルだけではなく、板金部品以外の部品であるが板金部品と関連する部品を表現する参照図形や、加工品質、部品属性、加工情報なども集約している。部品クラス31は、実際の板金部品の形状を表現する連結部位クラス32、参照図形を表現する参照図形クラス37、加工品質を表現する加工品質クラス38、板金部品の部品属性を表現する部品属性クラス39、板金加工の加工情報を表現する加工情報クラス40を集約する。部品クラス31は、材質、板厚を取得するメソッドを有する。部品クラス31は、連結部位オブジェクト102間の干渉チェックを行うメソッド、参照図形クラス37にて表現される他の部品との干渉チェックを行うメソッド、部品を移動・回転するメソッドなどのメソッドを有する。また、部品クラス31は、曲げ加工前及び曲げ加工後を含む曲げ加工の状態を与えると、曲げ部位オブジェクト106のデータを曲げ加工の状態に応じて選択して曲げ加工の状態に応じた形状モデルを返すメソッドを有する。これにより、同時に異なった曲げ加工の状態における複数の板金モデル30を取得することもできる。
部品オブジェクト101を構成する連結部位オブジェクト102は、最終的に1枚の展開形状に展開可能な板金部品を表現する。ただし、部品クラス31は連結部位オブジェクト102を結合するメソッド、連結部位オブジェクト102を切り離すメソッドを有しており、連結部位オブジェクト102が複数枚の展開形状に展開される複数の板金部品の板金モデルを表現することが一時的に許可される。これにより、曲げ部位106を曲げ加工で形成するか突き合わせで形成するか等の試行検討をオペレータが行うことができる。
連結部位クラス32は、接続子オブジェクト104により物理的に連続して接続されている部位オブジェクトの集合からなるクラスであり、板金展開を行ったときに1枚の平面展開形状に展開される単位の板金部品の形状モデルを表現する。連結部位オブジェクト32が複数存在する部品オブジェクト101は、展開形状が複数存在し、複数の板金部品を表現することになる。連結部位クラス32は、連結部位の形状を構築するための起点となる部位である基準部位などの接続データを取得するメソッドを有する。連結部位クラス32は、任意の部位間をつなぐ複数のパスが存在するかを調べるメソッド、任意の部位間をつなぐパスが存在するかを調べるメソッド、自己干渉チェックを行うメソッドなどのメソッドを有する。任意の部位間をつなぐ複数のパスが存在するかを調べるメソッドにより、このようなパスが存在する場合には表現する板金部品を平面状に展開することができず、板金部品として成立していないことを判別することができる。任意の部位間をつなぐパスが存在するかを調べるメソッドにより、このようなパスが存在しない場合には表現する板金部品が複数の展開形状からなるので、板金部品として成立していないことを判別することができる。
部位クラス34は、板金モデル30の形状モデルを表現するための抽象クラスであり、実際の形状モデルは派生クラス(下位クラス)である面部位クラス35か曲げ部位クラス36にて定義される。部位クラス34は、面部位クラス35や曲げ部位クラス36における個々の座標系にて表現された形状モデルをどのように座標変換して表示空間に配置するかを表現する配置行列を取得するメソッドなどを有する。配置行列は、平行移動、回転移動、及びこれらの合成移動からなる合同変換の何れかを表現する行列である。
板金モデル30には、図7(a)から図7(c)に示すように、展開状態30a、完成状態30b、途中状態30cの3つの状態があり、それぞれの状態に応じて曲げ部位オブジェクト106が表現する形状が変形する。面部位オブジェクト105が表現する形状は、各状態間において変化しないが、曲げ部位オブジェクト106が表現する形状は、展開状態30aでは曲がっていない形状、完成状態30bでは曲がっている形状、途中状態30cでは曲げ加工の途中の任意形状と変化する。途中状態とは、各曲げ部位が曲がっていない状態であったり、曲がっている状態であったり、曲がっていく過程の状態であったりと、任意の形状を指定でき、任意に指定できる具体的な形状は変形情報で実装される。図7(c)に示した途中状態30cにおいては、一方の曲げ面106は曲がっていない状態であり、他方の曲げ面106は曲がっている状態であり、曲がっている状態の曲げ面106に対する曲げ加工のみが完了した途中状態を表現している。このように、複数の曲げ面106が存在する場合、各曲げ面106の曲げ加工順序に応じた途中状態をそれぞれ表現することができるので、曲げ加工順序の検討や曲げ加工時における干渉の検討等が容易となる。
同じ1つの曲げ面に対して複数の曲げ加工を行うことがある。また、同じ1つの曲げ面に対する曲げ加工工程途中の曲げ状態を干渉の検討等のため必要となることがある。例えば、ヘミング加工(縁取り加工)の場合、曲げ面106を1度の曲げ加工にて最終目標角度まで曲げることができないため、曲げ面106は、図8(a)に示す展開状態から2度の曲げ加工を経て、図8(d)に示す曲げ加工完了後の最終目標角度だけ曲がっている状態に至る。2度の曲げ加工の過程において、図8(b)に示す第1曲げ加工工程途中の所定角度だけ曲がっている状態や、図8(c)に示す第1曲げ加工工程後の第1曲げ加工における目標角度だけ曲がっている状態を経ている。そして、図8(a)から図8(d)に示す曲げ面106の各状態を、それぞれ途中状態1から途中状態4として表現している。
(段落0057の分割により段落追加)
また、アマ曲げ加工(二度曲げ加工)の場合、図9(a)に示す展開状態から図9(e)に示す曲げ加工完了状態へ板金部品を成型するとき、図9(b)に示すように、曲げ面106bを最終目標角度まで曲げ加工してから曲げ面106aを曲げ加工すると、図中2点鎖線にて示す金型と板金部品とが干渉する。そのため、図9(c)に示すように、第1曲げ工程において曲げ面106bを金型と板金部品とが干渉しないよう一旦所定の角度まで曲げる。その後、図9(d)に示すように、第2曲げ工程において曲げ面106aを最終目標角度まで曲げてから、図9(e)に示すように、第3曲げ工程において曲げ面106bを最終目標角度まで曲げる。このように、板金部品の曲げ面106a,106bは、図9(a)に示す展開状態から3度の曲げ加工を経て、図9(e)に示す曲げ加工完了後状態に至る。そこで、図9(a)及び図9(c)から図9(e)に示す曲げ面106a,106bの各状態を、それぞれ途中状態1から途中状態4として表現している。
(段落0057の分割により段落追加)
また、曲げ戻し加工の場合、図10(a)に示す展開状態から図10(f)に示す曲げ加工完了状態へ板金部品を成型するとき、図10(b)に示すように、曲げ面106cを最終目標角度まで曲げ加工してから曲げ面106eを曲げ加工すると、図中2点鎖線にて示す金型と板金部品とが干渉する。そのため、図10(c)に示すように、曲げ加工完了状態においては曲っていない面を曲げ面106dとし、第1曲げ工程において一旦所定の角度まで曲げる。その後、図10(d)及び図10(e)に示すように、第2曲げ工程において曲げ面106eを、第3曲げ工程において曲げ面106cをそれぞれ最終目標角度まで曲げてから、図10(f)に示すように、第4曲げ工程において曲げ面106dを曲げ戻す。このように、板金部品の曲げ面106c,106d,106eは、図10(a)に示す展開状態から4度の曲げ加工を経て、図10(f)に示す曲げ加工完了後状態に至る。そこで、図10(a)及び図10(c)から図10(f)に示す曲げ面106c,106d,106eの各状態を、それぞれ途中状態1から途中状態5として表現している。なお、図10(f)に示すように、曲げ面106eは曲げ加工完了状態においては曲っていない面を表現するが、図10(f)に示す途中状態5の曲げ面106eは、2度の曲げ加工による曲げ及び曲げ戻しによって伸びが生じるため、図10(a)に示す途中状態1の曲げ面106eとは異なったものとなる。
部位クラス34は、形状モデルの幾何形状を表現する中間面シートボディ(中間面オブジェクト、中間面モデル)107乃至109を取得するメソッド(中間面モデル作成手段、展開状態中間面モデル作成手段、途中状態中間面モデル作成手段)を有する。中間面シートボディ107乃至109は、図11に示すように、板金モデルの板厚方向の中間面を表現する厚みを持たない2次元サーフェイスモデルである。曲げ部位クラス36が集約する変形幾何クラス41(図4参照。)が取得する変形情報により、展開状態の中間面の形状を表現する展開状態中間面シートボディ(展開状態中間面モデル)107から、完成状態及び途中状態の中間面の形状をそれぞれ表現する完成状態中間面シートボディ(完成状態中間面モデル)108、途中状態中間面シートボディ(途中状態中間面モデル)109が作成される。
部位クラス34は、自己の部位に接続している接続子オブジェクト104を取得するメソッド、自己の部位に接続している他の部位オブジェクトを取得するメソッド、自己の部位に接続している指定した部位の向こう側の部位を取得するメソッド、指定された部位に到達するパスを検索するメソッドなどのメソッドも有する。
接続子クラス33は、部位同士の接続を表現するクラスであり、接続している部位とその接続している辺(以下、「接続エッジ」という。)を表現する接続子オブジェクト114が属する。図12(a)を参照にして示されるように、接続子クラス33は、接続子データ作成手段として、接続している一方の部位オブジェクト110、接続している他方の部位オブジェクト111、前記部位オブジェクト110の接続エッジ112の配列、前記部位オブジェクト111の接続エッジ113の配列を取得するメソッドを有する。接続エッジ112,113は、接続子オブジェクト114が接続を表現する部位オブジェクト110及び部位オブジェクト111相互に対する稜線であり、少なくも1つ存在することが必要であるが複数であってもよいので、接続子オブジェクト114は接続エッジ112,113を配列にて備えている。また、接続子オブジェクト114が保持する接続エッジ112,113は一直線上になければならない。接続している部位オブジェクト110,111及びそれらの接続エッジ112,113が定義された場合であっても、部位の接続が一意的に定まらないことがある。そのため、図12(b)に示すように、各部位オブジェクト115乃至117が表現する面には表方向が定義されており、接続子オブジェクト114により表現される部位の接続を、部位オブジェクト115と部位オブジェクト116とが表現する面のように接続される面の表方向が一致する順接続と、部位オブジェクト116と部位オブジェクト117とが表現する面のように反対方向となる逆接続とに区別している。そこで、部位と部位との接続が一意的に定まるように、接続子クラス33は、部位と部位との接続方向、すなわち順接続であるか逆接続であるかを示す値を取得するメソッドを有する。
面部位クラス35(図4参照。)は、曲げ加工によって変形しない部位の形状モデルを表現するクラスであり、面部位オブジェクト105(図5参照。)が属する。面部位クラス35に属する面オブジェクト105の主データは、図11を参照にして示されるように、板厚方向の中間平面の幾何形状を表現する中間面シートボディ107である。面部位クラス35は、当該面部位の板厚方向の中間平面の幾何形状を表現する中間面シートボディ107を取得するメソッドを有する。また、面部位クラス35は、中間面シートボディ107から板厚の半分づつ押出すことにより3次元ソリッドボディ(3次元形状オブジェクト)を作成するメソッドなどのメソッドを有する。面部位クラス35にて表現される部位は展開状態、完成状態及び途中状態の各状態にて形状が同じであるので、前記中間面シートボディ107や3次元ソリッドボディは各状態にて共通する。
曲げ部位クラス36は、曲げ加工によって変形する部位の形状モデルを表現するクラスであり、曲げ部位オブジェクト105(図5参照。)が属する。曲げ部位クラス36は、図4に示すように、変形の具体的な形状を表現する変形幾何クラス41を集約している。変形幾何には、表現する変形の類に応じて、円筒変形、円錐変形、これらの変形が複合した複合変形などがある。曲げ部位クラス36は、図13(a)及び図13(b)を参照して示すように、中間面シートボディ120の固定線120F、中間面シートボディ120の一方の端線120A、中間面シートボディ120の他方の端線120B、端線120A及び端線120Bが完成状態のときにどこに移動するかをそれぞれ表現する移動行列、端線120A及び端線120Bが途中状態のときにどこに移動するかをそれぞれ表現する移動行列などを取得するメソッドを有する。ここで、固定線120Fは、伸び方向に垂直で、曲げ変形前後において位置が変化しない直線であり、端線120A,120Bは、伸び方向に垂直な境界線(直線)である。
曲げ部位クラス36に属する曲げ部位オブジェクト105の主データは展開状態中間面シートボディであり、図11に示すように、完全状態や途中状態の中間面シートボディ108,109の形状を得るためには、展開状態の中間面シートボディ107から逆展開計算を行う必要がある。逆展開計算は、中間面シートボディが表現される座標系内で行われ、逆展開により固定線は変化せず、端線は座標変換を受けて移動する。端線が受ける座標変換は、隣接する部位(曲げ部位または面部位)の当該端線と一致する端線に作用する座標変換と等しい。曲げ部位クラス36は、この座標変換を表現する座標変換行列を取得するメソッドを有する。
変形幾何クラス41は、曲げ部位がどのような形状(幾何形状)に変形するかを定義する抽象クラスであり、曲げ部位の完成状態や途中状態の形状図形を作成する。展開状態、完成状態、途中状態の具体的な形状は、図4に示すように、円筒形状への変形を表現する円筒変形クラス42、円錐形状への変形を表現する円錐変形クラス43、組み合わされた複数の変形を表現する複合変形クラス44からなる派生クラス(下位クラス)にて定義される。変形幾何クラス41は、曲げ部位の状態を示す値を取得するメソッド、すなわち、展開状態と一致する、完成状態と一致する、あるいは展開状態の形状とも完成状態の形状とも一致しないの何れかの状態をとることを示す値を取得するメソッドを有する。また、変形幾何クラス41は、図11を参照して示すように、完成状態の中間面シートボディ108から板厚の半分づつ押出すことにより完成状態の3次元ソリッドボディ108aを作成するメソッド、途中状態の中間面シートボディから板厚の半分づつ押出すことにより途中状態の3次元ソリッドボディ109bを作成するメソッド、端線が完成状態及び途中状態のときにどこに移動するかを表現する移動行列をそれぞれ算出するメソッドなどのメソッドを有する。
円筒変形クラス42は、曲げ部位が持つ変形幾何の具体的な変形を定義するクラスの1つであり、円筒変形を表現する。一般的なプレスブレーキ加工機での曲げ加工は、円筒変形として表現される。円筒変形は、曲げ角度と中間面での曲げ半径を指定することにより形状が確定する。円筒変形途中の途中状態の形状は、曲げ角度を指定することによって定まる。
円筒変形前の展開状態と円筒変形後の完成状態とでは、中間面の長さは一般的に異なり、円筒変形途中の途中状態の場合も同様に、中間面の長さは展開状態や完成状態での中間面の長さと異なる。完成状態や途中状態での中間面の長さ(円弧長)は、曲げ角度と曲げ半径とから求められる。完成状態や途中状態での中間面の長さから展開状態での中間面の長さを引いた差により、完成状態や途中状態での中間面の伸び値が算出される。実際の曲げ加工においては、素材の材質や板厚、金型、加工機、加工方法などによって伸び値が異なる。そこで、円筒変形クラス42は、これらによって伸び値を補正する補正値を取得するメソッドを備えていてもよい。例えば、材質や金型等と関連付けて曲げ補正値データベース6e(図1参照。)に格納されている補正値や、材質や金型等を組み合わせ関連付けたテーブル(不図示)に格納されている補正値を取得するメソッドを円筒変形クラス42が有していてもよい。そして、曲げ補正値データベース6eに格納されている補正値を取得する場合、円筒変形クラス42が曲げ補正値データベース6eに問い合わせる機能を備えていてもよいし、外側に曲げ補正値データベース6eに問い合わせる機能があり、円筒変形クラス42が当該機能を設定できるメソッドを備えていてもよい。なお、途中状態の形状は、曲げ角度の代わりに伸び値を指定することによって、定めてもよい。
途中状態の曲げ部位の形状は、展開状態の形状と完成状態の形状との間の形状とは限らない。例えば、図14(a)から図14(c)に示すように、スプリングバックを伴う曲げ加工の曲げ部位121の形状モデルを表現する場合、途中状態として表現するスプリングバック状態は、完成状態よりも曲げ角度を大きくした状態として表現する必要がある。この場合も、曲げ角度や中間面の長さを指定することにより途中状態の形状を確定することができる。
円筒変形クラス42から、図4に示すように、円筒分割変形クラス45が派生している。この円筒分割変形クラス45は、円筒形状を複数回に分割して曲げる変形を表現する。円筒分割変形による分割曲げは、曲げ部位の端線間を複数に等分割した各領域毎に曲げ半径を指定した円筒変形として表現される。曲げ部位122を3分割して曲げる3分割曲げの場合、図15(a)に示すように、曲げ部位122の端線122A,122B間を3等分に分割した領域R0乃至R2の3つの領域に分割される。図16(b)に示すように、円筒変形の曲げ角度が90度であるとき、各領域R0乃至R2の曲げ角度は90/3=30度となる。このように、分割曲げの途中工程が終了した段階の形状は、曲げ部位をN分割した各領域を曲げ加工する順序によって、2N種類だけ存在する。この形状は、3分割曲げの場合を図16(a)から図16(d)に示すように、各領域R0乃至R2の状態(0:曲がっていない、1:曲がっている)の組み合わせからなる状態列(領域R0の状態、領域R1の状態、領域R2の状態)によって特定することができる。円筒分割変形クラス45では、途中状態を特定する方法として、前記の方法に加えて、円筒変形クラス42で表現される方法の2種類があり、これらは同時に指定することができる。例えば、曲げ部位123を3分割曲げで90度の曲げ角度に曲げる場合を図17に示すように、分割曲げ数、分割曲げの状態列、注目領域、及び注目領域の曲げ角度を指定すれば、途中状態の形状が定まる。
複合変形クラス44は、円筒変形や円錐変形などを組み合わせた複数の変形を表現するクラスであり、図4に示すように、段曲げ変形クラス46が派生している。この段曲げ変形クラス46は、図18(a)に示すように、2つの円筒変形130,131や、図18(b)に示すように、2つの円筒変形132,133と1つの固定変形134を組み合わせた段曲げ変形を表現するクラスである。なお、固定変形クラス47は、図4に示すように、変形幾何クラス41から派生し、変形しない変形幾何を表現する。固定変形クラス47は、複合変形を構成する変形幾何の一部として、段曲げ変形において変形しない細かな隙間を表現する。
部位クラス34からは、図4に示すように、穴形状や成形形状などを表現するために、添付スケッチ図形クラス48を集約している。添付スケッチ図形クラス48は、部位に含まれる添付スケッチ図形を集約する。この添付スケッチ図形は、部位の中間面と同じ座標系を持つスケッチ平面にて穴形状や成形形状などを表現する添付図形を表現するものである。通常、3次元ソリッドモデルにおいては、穴形状や成形形状は境界表現(Boundary Representation:B−Rep)などの方法で忠実に表現される。一方、本板金モデルにおいて、穴形状や成形形状を、境界表現では表現せず、図19に示すように、部位オブジェクトに含まれる添付スケッチ図形オブジェクト144によって表現する。添付スケッチ図形クラス48は、スケッチ平面の座標系を取得するメソッドを有しており、この座標系は、集約先部位オブジェクト(面部位オブジェクト145)の中間面シートボディの形状が表現されている座標系と一致する。
添付スケッチ図形クラス48は、点図形を表現するポイントボディ、線図形を表現するワイヤボディ、絞り等の成形形状などを平面図形として表現するシートボディ、成形形状などを3次元図形として表現する3次元ソリッドボディなどの図形要素からなる添付スケッチ図形を取得するメソッドを有する。例えば、板金モデルの穴形状は、閉じていて且つ自己交差しないワイヤボディとして添付スケッチ図形によって表現される。添付スケッチ図形クラス48は、完成状態、展開状態、途中状態の各状態において簡易表示、詳細表示の両表示用に最大6種類の添付スケッチ図形を必要に応じて生成するメソッドを備えている。
添付スケッチ図形クラス48は、図4に示すように、添付図形クラス49を集約している。この添付図形クラス49は、添付スケッチ平面に集約される添付図形を表現するクラスである。添付図形クラス49は、主に成形形状や穴形状などパンチプレスの穴加工に関連する形状を表現し、添付成形図形クラス50、添付ワイヤ図形クラス52、添付格子状パターン図形クラス53、添付円弧状パターン図形クラス54などの基底クラスとなる。絞り形状などの成形形状は、添付図形クラス49から派生した添付成形図形クラス50において具体的に表現される。添付図形クラス49は、部位に間接的に集約される添付図形に必要なメソッドを定義しているだけであるので、クラスというよりもインターフェイスである。添付成形図形などの実際の添付図形は、添付図形クラス49から派生しており、添付図形クラス49は添付図形インターフェイスを実現している。
添付図形の集約先部位オブジェクトが中間面シートボディにて表現されている場合、図20に示すように、集約先部位のシートボディ150上に簡易表現(2次元形状モデル)にて表現された添付図形オブジェクト151,152が表現される。また、添付図形の集約先部位オブジェクト153がワイヤフレーム表示にて表現されている場合、図21(a)に示すように、集約先部位のワイヤフレーム153の表面及び裏面上に簡易表現にて表現され添付図形オブジェクト151,152が表現される。添付図形の簡易表現(簡易表現オブジェクト)154は、図21(b)に示すように、成形形状を模式的に表現するワイヤボディ154aと基準点を表現するポイントボディ154bとから構成されおり、添付図形の形状を簡易的に表現している。添付図形の集約先部位である面部位が3次元ソリッドボディで表現されている場合、中間面シートボディからオフセットして添付図形を表面及び裏面上に簡易表現にて表現する。ただし、添付図形を簡易表現にて表現すると、部位の形状を正確に表現することができない。実際の部位の形状は、添付図形が穴を表現している場合には部位を貫通する穴が開いており、成形形状を表現している場合には絞り等の成形形状を部位が備えている。これらの形状を表現するために、図21(c)に示すように、添付図形は、実際の形状を忠実に3次元ソリッドボディ(3次元形状モデル)にて表現する詳細表現(詳細表現オブジェクト)155を簡易表現154と共に有している。成形形状や穴形状などを編集した3次元ソリッドボディ160を表現するためには、図22に示すように、添付図形の集約先部位の編集前の3次元ソリッドボディ161から形状162,163の減算を行う操作と、形状164の加算を行う必要がある。ただし、穴形状を表現する場合、形状の加算を行う必要はない。これらのため、添付図形クラスは、簡易表現時の形状を取得するメソッド、詳細表現時に部位から減算する形状を取得するメソッド、詳細表現時に部位に加算する形状を取得するメソッドなどのメソッドを有する。
添付成形図形クラス50は、図4に示すように、添付図形クラス49から派生するクラスであり、絞り形状のような成型加工による成形形状を表現する成形形状データと、当該データを集約先部位に配置する行列を表現する配置行列を取得するメソッドを有する。成形形状データは外部の成形形状ライブラリ(不図示)で定義されているが、成形形状ライブラリの当該成形形状データが変更や削除された場合であっても、板金モデルに不整合を起こさせないように、添付成形図形クラス50が成形形状データを記憶、保存する機能を有する。添付成形図形クラス50は、成形形状ライブラリにおける識別番号、簡易表現用の2次元ワイヤボディ、詳細表現時に加算する3次元ソリッドボディ、詳細表現時に減算する3次元ソリッドボディなどの成形形状データを取得するメソッドを有する。このように、添付成形図形クラス50は、添付図形クラス49から派生しているため、簡易表現用と詳細表現用の2種類の形状を取得するメソッドを有する。また、各状態において簡易表現または詳細表現に合わせて添付図形の形状を加算する等のメソッドは、面部位クラス35や曲げ部位クラス36が備えており、添付スケッチ図形クラス48が備える穴形状や成形形状などの形状データを取得するメソッドにて取得した形状を考慮した形状モデルが作成される。
添付ワイヤ図形クラス51は、図4に示すように、添付図形クラス49から派生するクラスであり、穴形状やけがき線等を2次元ワイヤボディにて表現するワイヤデータや、ポンチのセンタ等の点図形を表現するポイントデータと、これらのデータをそれぞれ集約先部位に配置する行列を表現する配置行列を取得するメソッドを有する。添付ワイヤ図形クラス51は、簡易表現時と詳細表現時において同じデータで形状を表現しており、2次元シートボディや3次元ソリッドボディにおいて加算、減算する形状を表現するデータは、添付図形クラス49が有するメソッドにより取得される。
添付格子状パターン図形クラス52及び添付円弧状パターン図形クラス53は、添付図形クラス49から派生するクラスであり、添付成形図形クラス50や添付ワイヤ図形クラス51にて表現される形状等を、それぞれ格子状パターンや円弧状パターンによって繰り返すメソッドを有する。
部品クラス31は、加工品質クラス38、部品属性クラス39、加工情報クラス40や参照図形クラス37を集約する。加工品質クラス38は、板金部品の加工品質を表現するクラスであり、バリなし面や傷なし面の指定等の加工品質データを取得するメソッドを有する。部品属性クラス39は、板金部品の属性等を表現するクラスであり、当該板金部品の部品名、部品番号、素材、親部品など関連した部品のデータ、納期、数量等の部品属性データを取得するメソッドを有する。加工情報クラス40は、板金部品を板金加工する際の加工工程を表現するクラスであり、当該板金部品を板金加工する際に用いる加工機や金型、曲げ順等の加工データを取得するメソッドを有する。参照図形クラス37は、板金部品を構成部品とする部品を表現するクラスであり、当該部品及び他の構成部品の部品属性や部品形状等の図形データを取得するメソッドを有する。
次に、本発明の実施形態に係る板金モデル作成システム、あるいは本発明の実施形態に係る板金モデル作成方法や板金モデル作成プログラムを適用した板金モデル作成システムによってオブジェクト指向板金モデルを作成する方法について図面に基づき説明する。このオブジェクト指向板金モデルを作成する方法は、設計段階における理想完成形状等を示す様々な図面やモデルなどからなる形状データを含む板金部品の設計データから、当該板金部品の板金モデルデータを作成するものである。設計データは、図1を参照して示すように、設計部門の端末装置2にて直接作成して入力されるか、予め記憶させた磁気テープ、光学ディスクやフレキシブルディスク等の記憶媒体から端末装置2に読み込ませるか、設計データベースサーバ7から読み出されるかなどによって、LAN3を介してサーバ装置4に伝送される。端末装置2から板金モデルを作成する旨の指示により、サーバ装置4は板金モデル作成プログラムP2を実行して板金部品の設計データから板金モデルデータを作成する。板金モデル作成プログラムP2を実行させた場合のサーバ装置4の処理動作を、設計データの形状に関する設計形状データの種類に応じて図面に基づき説明する。なお、板金部品に関する部品名、部品番号、素材、加工品質要求等の形状以外の設計データは、部品オブジェクトに派生する加工品質オブジェクトや部品属性オブジェクトとして板金モデルデータベース6aに格納され、参照される。また、板金モデルプログラムP2の一部を構成する板金モデル作成プログラムのプログラムコードが、サーバ装置4に記憶されている代わりに、例えば、設計部門の端末装置2に記憶されており、当該端末装置2において板金モデル作成プログラムを実行させて板金モデルを作成し、LAN3を介してサーバ装置4の板金モデルデータベース6aに格納させてもよい。
設計形状データとして板金部品の3次元ソリッドモデル170が提供された場合、図23に示すように、3次元形状変換171により板金モデル172を作成する。3次元形状変換171は、まず、内外ループ検索部173において、当該3次元ソリッドモデル170に対して外側ループ解析及び内側ループ解析を行い、穴形状を認識する。次に、位相解析部174において、表面検索、裏面検索、板厚面検索を行い、3次元ソリッドモデル170の各面の分析を行い、分析した表面と裏面との板厚方向の中間面を認識する。そして、幾何解析部175において中間面の曲げ部位及び面部位を認識して、曲げ部位と認識した中間面から曲げ部位オブジェクトを、面部位と認識した中間面から面部位オブジェクトをそれぞれ作成し、これらの曲げ部位オブジェクトと面部位オブジェクトとの接続状態を表現する接続子オブジェクトを作成する。また、内外ループ検索を行って認識した穴部を表現する添付図形オブジェクトを、当該穴部の集約先の部位オブジェクトと座標系を一致させて作成する。さらに、穴形状や面として認識されなかった形状を成形認識部176において成形形状として認識し、この成形形状を表現する添付図形オブジェクトを、当該成形部の集約先の部位オブジェクトと座標系を一致させて作成する。最後に、前記各オブジェクトを部品オブジェクトに集約して板金モデル172を作成し、板金モデル出力部177から板金モデル172を出力して、板金モデルデータベース6a(図1参照。)に格納する。
設計形状データとして板金部品の曲げ線が付された展開図180が提供された場合、図24に示すように、展開図変換181により板金モデル182を作成する。展開図変換181は、まず、曲げ情報定義部183において、当該展開図180の曲げ線を抽出して、曲げ情報の定義付けを行う。次に、要素解析部184において、内外周解析を行って穴形状を認識し、成形解析を行って成形形状を認識する。そして、面分割部185において、曲げ線解析を行い曲げを解析し、曲げ部位及び面部位を認識して面切断を行い、曲げ部位と認識した中間面から曲げ部位オブジェクトを、面部位と認識した中間面から面部位オブジェクトをそれぞれ作成し、これらの曲げ部位オブジェクトと面部位オブジェクトとの接続状態を表現する接続子オブジェクトを作成する。そして、内図形分配を行い、認識した穴形状や成形形状を表現する添付図形オブジェクトを、当該穴形状や成形形状の集約先の部位オブジェクトと座標系を一致させて作成する。さらに、整合性確認部186において、サイクル解析、マルチベント解析を行って整合性を確認した後に、前記各オブジェクトを部品オブジェクトに集約して板金モデル182を作成し、板金モデル出力部187から板金モデル182を出力して、板金モデルデータベース6a(図1参照。)に格納する。
設計形状データとして板金部品の正面図、上、下、左、右側面図、背面図の各種側面図のうちからなる三面図190が提供された場合、図25に示すように、三面図変換191により板金モデル192を作成する。三面図変換191は、まず、側面図定義部193において、当該三面図190から、例えば、図面配置等に基づいて各側面図の種類を検出し、該側面図を構成する図形群や基準点を定義する。次に、形状抽出部194において、各側面図の外周及び内周を抽出して穴形状を認識し、成形位置を定義して成形形状を認識する。そして、形状投影部195において、各側面図の相対的な深さを検出して3次元空間に投影した形状を生成し、曲げ指定部196において、曲げを認識し、曲げ部位及び面部位を認識する。曲げ部位と認識した中間面から曲げ部位オブジェクトを、面部位と認識した中間面から面部位オブジェクトをそれぞれ作成し、これらの曲げ部位オブジェクトと面部位オブジェクトとの接続状態を表現する接続子オブジェクトを作成する。そして、認識した穴形状や成形形状を表現する添付図形オブジェクトを、当該穴部や成形部の集約先の部位オブジェクトと座標系を一致させて作成する。最後に、前記各オブジェクトを部品オブジェクトに集約して板金モデル192を作成し、板金モデル出力部197から板金モデル192を出力して、板金モデルデータベース6a(図1参照。)に格納する。なお、汎用の図面変換システムを用いて三面図190から3次元ソリッドモデルを作成し、この3次元ソリッドモデルから前記したように板金モデル192を作成してもよい。
次に、これらの方法により、板金部品の設計データから面部位、曲げ部位が認識された場合に、当該板金部品の板金モデルデータを作成する詳細な手順について図面に基づき説明する。ここでは、図26(a)に示すように、曲っていない面200A、曲げ面201A、曲っていない面202Aからなる3つの中間面が一列につながっている部品として表現される場合について説明する。また、曲げ面201Aの変形幾何は円筒変形であるとする。まず、図26(b)に示すように部品オブジェクト203を新たに作成し、この部品オブジェクト203に材質と板厚を設定する。そして、連結部位オブジェクト204を作成し、部品オブジェクト203に追加する。
次に、以下の手順により面200Aを表現する面部位オブジェクト200を作成し、連結部位オブジェクト204に追加する。まず、面200Aの中間面シートボディと位相関係を作成し、面部位オブジェクト200に設定する。面部位オブジェクト200は部位オブジェクトでもある。連結部位オブジェクト204に面部位オブジェクト200を追加し、面200Aを基準部位に指定する。さらに、基準部位の表示位置が連結部位オブジェクト204の表示位置となるため、面部位オブジェクト200の配置行列を設定する。
次に、以下の手順により曲げ面201Aを表現する曲げ部位オブジェクト201を作成する。まず、曲げ面201Aの中間面シートボディと位相関係を作成し、曲げ部位オブジェクト201に設定する。曲げ部位オブジェクト201は部位オブジェクトでもある。曲げ角度と曲げ半径を設定して円筒変形オブジェクト205を作成する。円筒変形オブジェクト205は変形幾何オブジェクトでもある。円筒変形オブジェクト205を曲げ部位オブジェクト201に設定する。さらに、曲げ面201Aの中間面の端線を設定し、円筒変形オブジェクト205にのび値を設定する。
次に、以下の手順により曲げ部位オブジェクト201を連結部位オブジェクト204に追加する。まず、面200Aと曲げ面201Aとの接続を表現するために接続子オブジェクト206を作成する。そして、面部位オブジェクト200の中間面シートボディから曲げ部位オブジェクト201に接続する接続エッジの配列を作成し、曲げ部位オブジェクト201の中間面シートボディから面部位オブジェクト200に接続する接続エッジの配列を作成する。面部位オブジェクト200と曲げ部位オブジェクト201とを接続させたい方向を調べ、接続子オブジェクト206に面部位オブジェクト200と曲げ部位オブジェクト201と接続エッジの配列と面の方向を設定する。曲げ部位オブジェクト201の端線と接続子オブジェクト206を関連付ける。そして、曲げ部位オブジェクト201と接続子オブジェクト206を連結部位オブジェクト204に追加する。
次に、以下の手順により面202Aを表現する面部位オブジェクト202を作成して、連結部位オブジェクト204に追加する。まず、面202Aの中間面シートボディと位相関係を作成し、面部位オブジェクト202に設定する。面部位オブジェクト202は部位オブジェクトでもある。曲げ面201Aと面202Aとの接続を表現するために接続子オブジェクト207を作成する。曲げ部位オブジェクト201の中間面シートボディから面部位オブジェクト202に接続する接続エッジの配列を作成し、面部位オブジェクト202の中間面シートボディから曲げ部位オブジェクト201に接続する接続エッジの配列を作成する。曲げ部位オブジェクト201と面部位オブジェクト202とを接続させたい方向を調べ、接続子オブジェクト207に曲げ部位オブジェクト201と面部位オブジェクト202と接続エッジの配列と面の方向を設定する。曲げ部位オブジェクト202の端線と接続子オブジェクト207を関連付ける。そして、接続子オブジェクト207を連結部位オブジェクト204に追加する。これにより、板金部品の板金モデルを表現する部品オブジェクト203が作成される。
次に、本発明の実施形態に係る板金モデル作成システム、あるいは本発明の実施形態に係る板金モデル作成方法や板金モデル作成プログラムを適用した板金モデル作成システムによって作成されるオブジェクト指向板金モデルについて、また、本発明の実施形態に係る板金モデル作成システム、あるいは本発明の実施形態に係る板金モデル作成方法や板金モデル作成プログラムを適用した板金モデル作成システムによって作成されたオブジェクト指向板金モデルの処理について、図面に基づき説明する。部品設計部門、工程設計部門、抜き加工部門、切断加工部門、曲げ加工部門、その他溶接やタッピング加工を含む板金部品に対する加工一般部門、検査部門などの各部門には、図1に示すように、前記端末装置2が設置されており、各部門のオペレータは当該端末装置2の入力手段から各種指示を入力することにより、LAN3を介して板金モデルデータベース6aにアクセスすることができ、所望の板金モデルデータを当該端末装置2の表示手段に表示させたり、端末装置2の出力手段から出力させることができる。これにより、板金モデルデータベース6aに格納されている板金モデルデータは、図27に示すように、各部門において共有して利用することができる。なお、板金モデルデータは、磁気テープ、光ディスク、フレキシブルディスク等の記憶媒体に記憶させることにより、LAN3に接続されていないコンピュータ等の端末装置によっても読み取り可能である。
部品設計部門においては、顧客や客先の注文に応じて、板金部品が単独に、あるいは、板金部品を溶接や締結等により構成部品として含む親部品から部品展開されて板金部品単品が設計される。初期の設計段階において定められる板金部品の形状は、通常、理想完成形状であり、例えば、その曲げ部が一定の曲げ半径を有する形状であって、実際に板金加工して得られる板金部品の形状とは異なる。
近年、コンカレント・エンジニアリングが一般的となり、CAE(Computer Aided Manufacturing)や金型設計、試作、製品ドキュメントなど製品開発に関わる多くのプロセスで設計情報を利用できるため、設計部門において3次元CAD(Computer Aided Design)を用いて3次元モデルを作成することが主流となり、板金部品もその理想完成形状が3次元ソリッドモデルで設計されることも多い。前述したように、設計段階における3次元ソリッドモデルなどからなる理想完成形状等を示す設計形状データが端末装置2から入力されて、板金モデルデータが生成されて板金モデルデータベース6aに格納される。また、設計段階において、板金部品に関する部品名、部品番号、素材、加工品質要求等の設計形状データ以外の設計データも板金部品に関連して端末装置2から入力され、部品モデルの部品オブジェクトに派生する加工品質オブジェクトや部品属性オブジェクトとして板金モデルデータが生成され板金モデルデータベース6aに格納される。
ところで、設計段階において、板金部品を含む部品設計は試行錯誤の過程を含むことが一般的であり、理想完成形状は一意的に確定するものではなく、設計仕様の変更や、設計段階に想定した曲げ加工がNC加工機などに起因する要因にて困難である等の理由によって、板金部品の一部の形状を変更する場合がある。このような場合、特に複雑な板金部品の一部の形状を変更する場合、その変更が他の部位に影響を与えるものであっても、当該変更部位が曲げ部位や面部位である場合にはこれらの部位のみを、また、当該変更部位が穴部や成形部である場合にはこれらの添付図形等のみを置換して修正するだけで板金モデルを変更することができるので、再度3次元ソリッドモデルを生成する場合に比べて、板金部品の形状モデルの変更が容易となり、端末装置2の表示手段に再表示されるまでの時間を短縮することができる。さらに、前述した部位クラスが保持するメソッドにより、一時的に連結部位オブジェクトが複数の展開形状に展開される複数の部品からなることが許可されるので、曲げ加工よりも突き合わせや複数部品に分割して溶接等を行った方が好ましいか否かを、コストや製造要因等から検討する作業を容易に行うことができる。
また、3次元ソリッドモデルにおいて、例えば、ポンチのセンタなどを示す点図形、けがき線等の線図形、その他文字や模様が部品表面に現れる場合がある。このような図形は、添付図形として表現され、詳細表現である3次元ソリッドボディと、簡易表現であるワイヤボディの2種類の形状を有しているので、必要に応じて適切に表示させることが可能となる。
工程設計部門においては、理想完成形状を表現する板金モデルに従って、加工シュミレーションを行い、実際の加工機にて板金部品を加工するための加工情報や加工手順等を定める。通常、理想完成形状を表現する板金モデルの形状は、通常、板金加工後の完成状態の板金部品の形状や、展開状態の平板状の板金部品の形状とは異なる。
曲げ加工を行う前の段階で、曲げ加工前の展開形状の板金部材を抜き加工や切断加工により加工しておく必要がある。この展開形状は曲げ加工後の形状が設計段階にて要求された曲げ角度や曲げ寸法の許容誤差などの加工品質を満たすように定める必要がある。曲げ加工による加工後の形状やその寸法、角度誤差は、ダイとパンチとからなる金型の組み合わせ、V幅、板厚、材質、曲げ加工機の性能、特質などの様々な因子によって異なる。そのため、特に曲げ加工後に高精度の形状品質が要求されるときなどには、これらの因子を組み合わせて最適な曲げ加工の条件を定めるために、加工シュミレーションを行う。
工程設計部門のオペレータは、図1を参照して、当該部門の端末装置2から素材データベース6bにアクセスして板金素材の板厚や引張強さ等の素材データを、金型データベース6cにアクセスして、金型の各種寸法、許容荷重や適用可能工法等の金型データをそれぞれ参照することができる。部品設計段階において板金素材は、例えば、JISで規格されているSPHDの板厚1.5mmのように指定されるが、実際の板金素材の板厚や引張強さなどは特定の商品により異なり、素材データベース6bには板金素材の個々の商品毎に素材データが格納されている。工程設計部門のオペレータは、当該素材データ、金型データベース6cや加工機データベース6dから検索、参照される金型データや加工機データ等から、部品設計段階において指示され加工品質オブジェクトとして格納された加工品質を満たす組合わせを加工シュミレーションにより求める。
また、工程設計部門のオペレータは、板金部品が複数の曲げ部位を有する場合には、曲げ順を定める必要がある。曲げ順の相違によって、板金部品と金型等が干渉する場合や、加工後の形状や精度等に影響を及ぼす場合があるからである。このような場合、ヘミング加工のように同一の曲げ部位にて複数の曲げ加工を必要とする場合であっても、板金モデルの任意の途中状態の形状モデルを特定することができ、その特定した途中状態は3次元ソリッドモデルを有するので、干渉チェックや形状チェックを容易に行うことができる。
そして、オペレータは、加工シュミレーション等で得た、板金部品を加工する際における金型、加工機、曲げ順等の加工情報を、当該板金部品に係る部品オブジェクトに派生する加工情報オブジェクトとして板金モデルデータベース6aに格納する。
絞り等の成型加工が曲げ加工後に行われる場合、抜き加工工程や曲げ加工工程においては、通常、オペレータは絞り等の成形形状を認識する必要がないので、成形形状を添付図形オブジェクトの簡易表現により表現すれば、板金モデルを軽いデータ構造で表現することができる。ただし、位置合わせ、寸法合わせ、加工機での部品支持具配置等のために、抜き加工工程や曲げ加工工程において、成形形状の正確な形状を必要とする場合があるので、このような場合には、成形形状を添付図形オブジェクトの詳細表現により表現すれば、板金部品の形状モデルを3次元モデルで表現することができる。
完成状態の板金部品に変更がない場合であっても、曲げ加工の加工因子変更等により、展開状態の板金部品の形状に変更が生じる場合がある。このような場合であっても、板金モデルは、完成状態、展開状態及び途中状態の各状態の形状モデルを有しているので、各状態における形状を正確に表現することができる。さらに、前記各状態の形状モデルの他に、実際の加工形状を3次元ソリッドボディにて表現する実加工状態の形状モデルを板金モデルが有していてもよい。これにより、実際の加工形状を正確に表現することができるので、さらにモデリングの精度が高くなる。
抜き加工工程や曲げ加工工程においてNC加工機が用いられる場合、これらのNC加工機を制御して加工手順を実行させる制御コードは、板金モデルからAPT(Automatically Programmed Tool)やEXATP(Extended APT)などの自動プログラム言語を用いて工具経路が自動処理され、自動的に作成される。このようにして得た制御コードは、磁気テープやフレキシブルディスク等の記憶媒体によってNC加工機に入力する。CNC(Computer Numerical Control)加工機の場合には、制御コードをCNC加工機に付属するコンピュータ(図1における端末装置2に相当。)に送信してもよい。抜き加工を行うための制御コードは、通常、展開図の示す板金部品の展開形状のデータに基づいて生成されるものであり、このデータは板金モデルの展開状態における中間面シートボディのデータによって得ることができる。一方、曲げ加工を行うための制御コードは、通常、板金部品の3次元ソリッドボディのデータに基づいて生成されるものであり、このデータは板金モデルの完成状態や途中状態における3次元ソリッドボディによって得ることができる。
抜き加工部門、切断加工部門や曲げ加工部門のオペレータは、図1を参照して、当該部門の端末装置2からデータベースサーバ6にアクセスして、板金部品の展開図、理想完成形状、素材、加工情報等の板金モデル情報を、当該端末装置2の表示手段に表示させたり、端末装置2の出力手段から出力させることができる。このとき、板金部品の中間シートボディや3次元ソリッドボディなどの形状モデルを同時に表示等させることができ、例えば、加工前の形状と加工後の形状の双方を確認することが可能となる。
このように、本発明の実施の形態に係る板金モデル作成システム、あるいは本発明の実施形態に係る板金モデル作成方法や板金モデル作成プログラムを適用した板金モデル作成システムは、曲げ部位オブジェクトが曲げ加工前及び曲げ加工後における形状モデルをそれぞれ表現する中間面シートボディや3次元ソリッドボディを有し、接続子オブジェクトが面部位オブジェクトの接続エッジと曲げ部位オブジェクトの接続エッジとの関連を表現するので、板金部品の形状モデルの一部を変更する場合、当該変更に係るデータに面部位オブジェクトや曲げ部位オブジェクトの中間面シートボディを置換することにより、形状モデルを変更することができる。そのため、板金部品の形状全体を一体に表現する前記従来の板金モデルに比べて、容易に形状モデルを変更することができる。
さらに、面部位オブジェクトや曲げ部位オブジェクトが有する主データは展開状態の中間面シートボディであり、完成状態や途中状態の中間面シートボディ、及び展開状態、完成状態や途中状態の3次元ソリッドボディは、当該中間面シートボディから必要に応じて作成されるので、3次元ソリッドモデルを各状態毎に独立して備える必要がある前記従来の板金モデルに比べて、データ量を削減することができ、また、これにより、3次元ソリッドモデルをロール、パン、ズームなどの視点変換や、形状モデル自体を回転等して表示する場合などに必要なデータ処理量を削減することができる。
さらに、指定した途中状態における形状モデルを取得することができるので、例えば、分割曲げ加工や曲げ順の異なる曲げ加工等の曲げ加工途中の形状モデルを取得することが可能であるため、曲げ工程における干渉確認等を容易に行うことができる。
さらに、成形形状を3次元ソリッドボディにて詳細表現した形状モデルが必要な場合には、このような形状モデルを表示させることができる。一方、このような形状モデルを必要としない場合には、当該成形形状を簡易表現し、詳細表現した場合に比べて、板金モデルのデータ量を削減することができる。