本発明の多層ポリイミドフィルムは耐熱性芳香族ポリイミド層の片面または両面に少なくとも熱可塑性ポリイミドからなる耐熱性樹脂層(熱可塑性ポリイミド層)を積層したものであり、好ましくは耐熱性芳香族ポリイミド層の両面に熱可塑性ポリイミド層を積層したものである。両面に熱可塑性ポリイミド層を積層した方がフィルムに反りが発生しにくく好ましい。
本発明の多層ポリイミドフィルムは、主に銅箔などの金属層を積層したフレキシブル回路(FPC)用基板として用いられる。FPC用基板として用いられる場合、熱可塑性ポリイミド層は耐熱性芳香族ポリイミド層と金属層を接着する接着剤層として機能し、熱可塑性ポリイミド層のガラス転移温度は200℃以上、好ましくは220℃以上、さらに好ましくは240℃以上である。また350℃以下、好ましくは320℃以下、さらに好ましくは300℃以下である。ガラス転移温度が200℃未満だと、COF用のFPC用基板として用いた場合のICのボンディング、あるいは、多層FPC用基板として用いた場合の高温でのプレスにおいて、配線が熱可塑性ポリイミド層に沈み込むなど機械的耐熱性に問題が起こる。また、ガラス転移温度が350℃を超えると、金属層および/または耐熱性芳香族ポリイミド層との接着性が悪くなる。
本発明における熱可塑性ポリイミド層のガラス転移温度の測定は種々の測定方法を用いることができる。例えば、示差走査熱量分析装置を用いた測定法(DSC法)、熱機械的分析装置を用いた測定法(TMA法)、動的熱機械測定装置を用いた動的粘弾性測定法(DMA法)が挙げられる。DMA法では、tanδの極大値がガラス転移温度として表される。
熱可塑性ポリイミド層の線膨張係数は、25ppm/℃以上、好ましくは30ppm/℃以上、さらに好ましくは35ppm/℃以上である。また150ppm/℃以下、好ましくは100ppm/℃以下、さらに好ましくは80ppm/℃以下である。線膨張係数が25ppm/℃未満だと金属層および/または耐熱性芳香族ポリイミド層との接着性が悪くなり、150ppm/℃を超えると、多層ポリイミドフィルム全体の線膨張係数が大きくなるため、例えばFPC用基板として用いた場合の寸法安定性が悪くなる。
線膨張係数には熱膨張係数、湿度膨張係数などがあるが、本発明における線膨張係数は熱膨張係数である。線膨張係数は熱機械分析装置を用いた測定法(TMA法)で測定することができ、30℃から300℃、50℃から200℃、100℃から300℃など、あらゆる温度範囲での線膨張係数を測定することができる。
本発明における線膨張係数は基準温度から測定温度までの平均線膨張係数であり、計算式(1)から算出されるものである。
平均線膨張係数=(1/L)×[(Lt−L0)/(Tt−T0)] (1)
ここで、T0:基準温度、Tt:設定温度、L:サンプル長、L0:基準温度でのサンプル長、Lt:設定温度でのサンプル長である。
本発明において上記基準温度は25〜35℃の室温であり、室温から100℃、または200℃、300℃などのそれぞれの温度範囲で熱可塑性ポリイミド層の線膨張係数が上記範囲になることが好ましい。本発明の多層ポリイミドフィルムをFPC用基材に用いる場合、使用条件で300℃前後の温度がかかることがあるので、室温から300℃の温度範囲での線膨張係数が上記範囲にあることが特に好ましい。
本発明の熱可塑性ポリイミド層は、少なくとも酸二無水物成分とジアミン成分を有するものであり、酸二無水物成分が一般式(1)で示されるテトラカルボン酸成分を60モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上含む。一般式(1)で示されるテトラカルボン酸成分が60モル%未満だと、ハンダ耐熱性が悪くなる。
R1〜R6は同じでも異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、ハロゲン、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれる。
一般式(1)で示されるテトラカルボン酸成分の具体例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’ジメチル−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’ジメチル−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
本発明の多層ポリイミドフィルムをFPC用基板として用いた場合、ICなどの部品をFPCに実装する時にハンダを用いて200〜300℃の温度をかけて接続することがある。FPCに使われるポリイミドは吸湿しやすく、吸湿した状態でハンダ接続を行うと、急激な加熱により吸湿した水分が急激に気化し、FPCの発泡や剥離などの問題が起こる。
本発明においてのハンダ耐熱性とは、多層ポリイミドフィルムに銅箔などの金属層を積層した金属層付き積層フィルムを、例えば40℃、90%RH、85℃、85%RHの条件で10〜48時間放置して吸湿させた状態で、所定の温度に設定したハンダ浴に10秒〜1時間浮かべて発泡や剥離などの外観変化が無い温度のことである。本発明のハンダ耐熱性は260℃以上、好ましくは280℃以上、さらに好ましくは300℃以上である。
本発明の熱可塑性ポリイミド層のジアミン成分は、少なくとも一般式(2)で示されるシロキサン系ジアミンと、一般式(3)〜(5)で示される芳香族ジアミンから選ばれる少なくとも1種の芳香族ジアミンを有し、全ジアミン成分中に一般式(2)で示されるシロキサン系ジアミンを2〜15モル%含む。好ましくは3モル%以上、さらに好ましくは4モル%以上である。また13モル%以下、さらに好ましくは11モル%以下含む。
nは1または2を示す。また、R7およびR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、低級アルキレン基またはフェニレン基を示す。R9〜R12は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、低級アルキル基、フェニル基またはフェノキシ基を示す。
X、Y、Zは同じでも異なっていても良く、O、S、SO、SO2、CO、CH2、C(CH3)2、C(CF3)2から選ばれる。R13〜R48は同じでも異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、ハロゲン、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれる。
一般式(2)で示されるシロキサン系ジアミンが2モル%未満だと接着力が低くなり、熱可塑性ポリイミドの吸水率が高くなる。熱可塑性ポリイミドの吸水率は1.5重量%以下、好ましくは1.4重量%以下、さらに好ましくは1.2重量%以下である。シロキサン系ジアミンが15モル%を超えると、本発明の多層ポリイミドフィルムをFPC用基板として用いた場合にハンダ耐熱性が悪くなる。
一般式(2)で示されるシロキサン系ジアミンは、長鎖のものを用いると反応性が悪くなるため、ポリマーの重合度が低くなり、耐熱性などが悪くなり好ましくない。
一般式(2)で示されるシロキサン系ジアミンの具体例としては、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサンなどが挙げられる。上記シロキサン系ジアミンは単独でも良く、2種以上を混合して使用しても良い。
一般式(3)〜(5)に示される芳香族ジアミンの具体例としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルサルファイド、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。上記芳香族ジアミンは単独でも良く、2種以上を混合して使用しても良い。
本発明の熱可塑性ポリイミドには、上記一般式(1)に示されるテトラカルボン酸二無水物の他に、接着力、ハンダ耐熱性などの特性を損なわない程度にその他のテトラカルボン酸二無水物を含有させることができる。その具体例は、ピロメリット酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3”,4,4”−パラターフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3”,4,4”−メタターフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,5−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホキシドテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエメチレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−イソプロピリデンジフタル酸無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物などが挙げられる。上記テトラカルボン酸二無水物は単独でも良く、2種以上を混合して使用しても良い。
本発明の熱可塑性ポリイミドのジアミン成分には、下記一般式(6)〜(8)に示される芳香族ジアミンの少なくとも1種をさらに含有してもよい。このとき、全ジアミン成分中に当該芳香族ジアミンは0.1〜25モル%の範囲で含まれることが良く、好ましくは0.4〜20モル%、さらに好ましくは0.8〜15モル%である。一般式(6)〜(8)に示される芳香族ジアミンを上記範囲で含有させることにより、熱可塑性ポリイミド層のハンダ耐熱性が向上する。含有量が0.1モル%未満だとハンダ耐熱性の向上効果が小さく、25モル%を超えると接着力が低下する。
R49〜R76は同じでも異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、ハロゲン、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ニトロ基、シアノ基から選ばれる。
一般式(6)〜(8)に示される芳香族ジアミンの具体例としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノトルエン、3,5−ジアミノ安息香酸、2,6−ジアミノ安息香酸、2−メトキシ−1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノベンズアニリド、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メトキシ−4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン−4−カルボン酸、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン−4−メチル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン−4−メトキシ、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン−4−エチル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン−4−スルホン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン−3−カルボン酸、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン−3−メチルなどが挙げられる。上記芳香族ジアミンは単独でも良く、2種以上を混合して使用しても良い。
本発明の熱可塑性ポリイミドには、上記ジアミンの他に、接着力、ハンダ耐熱性などの特性を損なわない程度その他の脂肪族ジアミン、環状炭化水素を含む脂環式ジアミン、芳香族ジアミンを含有させることができる。その具体例としては、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、3,3’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシル、ベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメメトキシベンジジン、2,4−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、1,5−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノフルオレン、p−アミノベンジルアミン、m−アミノベンジルアミン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルなどが挙げられる。
本発明の熱可塑性ポリイミドの分子量の調節は、テトラカルボン酸成分またはジアミン成分を当モルにする、または、いずれかを過剰にすることにより行うことができる。テトラカルボン酸成分またはジアミン成分のどちらかを過剰とし、ポリマー鎖末端を酸成分またはアミン成分などの末端封止剤で封止することもできる。酸成分の末端封止剤としてはジカルボン酸またはその無水物が好ましく用いられ、アミン成分の末端封止剤としてはモノアミンが好ましく用いられる。このとき、酸成分またはアミン成分の末端封止剤を含めたテトラカルボン酸成分の酸当量とジアミン成分のアミン当量を等モルにすることが好ましい。
テトラカルボン酸成分が過剰、あるいはジアミン成分が過剰になるようにモル比を調整した場合は、安息香酸、無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、アニリンなどのジカルボン酸またはその無水物、モノアミンを末端封止剤として添加しても良い。
本発明において、熱可塑性ポリイミドのテトラカルボン酸成分/ジアミン成分のモル比は、通常100/100とするが、樹脂溶液の粘度が高くなりすぎる場合は100/100〜95、あるいは100〜95/100の範囲でテトラカルボン酸成分/ジアミン成分のモルバランスを崩して調整し、樹脂溶液の粘度が塗工性などに問題のない範囲に入るようにするのが好ましい。ただし、モルバランスを崩していくと、樹脂の分子量が低下して形成した膜の機械的強度が低くなり、金属層あるいは耐熱性絶縁フィルムとの接着力も弱くなる傾向にあるので、接着力が弱くならない範囲でモル比を調整するのが好ましい。
本発明の多層ポリイミドフィルムは、耐熱性芳香族ポリイミド層に熱可塑性ポリイミドの前駆体の1つであるポリアミド酸を有する樹脂溶液を積層後、熱処理して脱水閉環させてポリイミドに変換し、熱可塑性ポリイミド層を形成する。また、あらかじめ閉環イミド化した可溶性ポリイミドを耐熱性芳香族ポリイミド層に積層して熱可塑性ポリイミド層を形成しても良い。ここで可溶性とは有機溶剤に可溶であることを指す。本発明において有機溶剤に可溶であるということは、5重量%以上、好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上の固形分濃度でポリイミド樹脂が有機溶剤に溶解するということである。
本発明において、ポリアミド酸は例えば次のような方法によって合成される。テトラカルボン酸成分とジアミン成分を選択的に組み合わせ、上記所定のモル比で、溶媒中0〜80℃で反応させることにより合成することができる。このときポリマー鎖末端を封止するためのモノアミン、ジカルボン酸またはその無水物は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミンと同時に仕込んで反応させても良く、また、テトラカルボン酸二無水物、ジアミンを反応させ、重合した後に添加して反応させても良い。
ポリアミド酸合成の溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系極性溶媒、また、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトンなどのラクトン系極性溶媒、他には、メチルセロソルブ、メチルセルソルブアセテート、エチルセロソルブ、エチルセルソルブアセテート、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、乳酸エチルなどを挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。ポリアミド酸の濃度としては、通常5〜60重量%が好ましく、さらに好ましくは10〜40重量%である。
本発明において、可溶性ポリイミドは例えば次のような方法によって合成される。テトラカルボン酸二無水物とジアミンを有機溶剤中で重合し、加熱脱水、イミド化する熱イミド化法、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを縮合触媒存在下の有機溶媒中で化学閉環、イミド化する化学イミド化法、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミンの代わりにジイソシアナートを有機溶媒中で反応させ、一段階でイミド環を形成させるジイソシアナート法などを用いることができる。ポリイミドの濃度は、5〜60重量%、好ましくは10〜40重量%である。
本発明の可溶性ポリイミド樹脂を合成する際に用いられる溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタムなどのアミド系極性溶媒、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトンなどのラクトン系極性溶媒、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシド、乳酸エチル、乳酸ブチル、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独あるいは2種以上を混合して用いても良い。
熱イミド化法では、まず室温〜100℃で1〜100時間撹拌してポリアミド酸を形成する。その後、温度を120〜300℃に上げて1〜100時間撹拌し、ポリイミドに変換する。この時、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレンなどを反応溶液中に添加し、イミド化反応で出る水をこれら溶媒と共沸させて除去しても良い。化学イミド化法では、室温〜200℃で、無水酢酸、トリフルオロ酢酸無水物、p−ヒドロキシフェニル酢酸などのイミド化触媒とピリジン、ピコリン、イミダゾール、キノリン、トリエチルアミンを添加して反応させる。イミド化触媒を単独で使用しても良い。イソシアナート法では、80〜300℃で加熱し、反応させると二酸化炭素の脱離れを伴ってポリイミドが形成される。
上記方法で得られたポリイミド溶液はそのまま使用しても良く、あるいは水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、トルエン、キシレンなどの貧溶媒中に注入してポリイミドを析出させる。これら貧溶媒の使用量に制限は無いが、合成に使用した溶媒の5〜100倍、好ましくは10〜50倍を使用する。析出したポリイミド粉末は、濾過、洗浄し、乾燥する。
本発明においては、得られたポリイミド粉末を再度有機溶媒に溶解させて使用することができる。この時用いる有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタムなどのアミド系極性溶媒、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトンなどのラクトン系極性溶媒、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシド、乳酸エチル、乳酸ブチル、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテートなどが挙げられ、これらの溶媒は単独あるいは2種以上を混合して用いても良い。ポリイミドの濃度は、5〜60重量%、好ましくは10〜40重量%である。
本発明の熱可塑性ポリイミド層を形成する組成物には、ポリイミド樹脂の他にも、本発明の効果を損なわない範囲でその他の樹脂や充填材を添加することができる。その他の樹脂としては、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ブタジエン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂などの耐熱性高分子樹脂が挙げられる。充填材は、有機あるいは無機からなる微粒子、フィラーなどが挙げられる。微粒子、フィラーの具体例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、石英粉、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、硫酸バリウム、マイカ、タルクなどが挙げられる。
本発明の耐熱性芳香族ポリイミド層は、少なくともテトラカルボン酸成分とジアミン成分を有し、テトラカルボン酸成分が少なくとも3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および/またはピロメリット酸二無水物であり、ジアミン成分が少なくともp−フェニレンジアミンおよび/または4,4’−ジアミノジフェニルエーテルである。
耐熱性芳香族ポリイミド層は多層ポリイミドフィルムにおいてコア材として機能する部分であるので、高い機械的耐熱性と低い線膨張性が求められる。耐熱性芳香族ポリイミド層のガラス転移温度は300℃以上、好ましくは350℃以上であるが、さらに好ましくは300℃以上からポリイミドの分解温度の範囲に明解なガラス転移温度と持たないものである。耐熱性芳香族ポリイミド層の熱線膨張係数は30ppm/℃以下、好ましくは25ppm/℃以下、さらに好ましくは20ppm/℃以下である。熱線膨張係数が30ppm/℃以上だと、FPC用基板として用いた場合に寸法安定性が悪くなる。
ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを有する耐熱性芳香族ポリイミド層は熱線膨張係数が20〜30ppm/℃と比較的高く、フィルムにした時の柔軟性に優れる。また、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンを有する耐熱性芳香族ポリイミド層は熱線膨張係数が10〜20ppm/℃と比較的低いが、剛直な構造であるためフィルムにした時の柔軟性が小さくなる。
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびピロメリット酸二無水物とp−フェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを有する耐熱性芳香族ポリイミド層は、熱線膨張係数が10〜20ppm/℃と比較的低く、さらにフィルムにした時の柔軟性にも優れるので好ましい。この時のテトラカルボン酸成分中の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は2〜90モル%、好ましくは5〜80モル%。さらに好ましくは10〜60モル%であり、ジアミン成分中のp−フェニレンジアミンは10〜90モル%、好ましくは20〜80モル%、さらに好ましくは30〜75モル%である。
本発明の耐熱性芳香族ポリイミド層には、市販されているポリイミドフィルムを用いることができる。具体的な製品は、東レ・デュポン(株)製“カプトン”、宇部興産(株)製“ユーピレックス”、鐘淵化学工業(株)製“アピカル”などが挙げられる。ポリイミドフィルムの厚みは特に限定されないが、3〜150μm、好ましくは5〜75μm、より好ましくは10〜50μmである。3μmを下回ると支持体としての強度が不足し、150μmを上回ると柔軟性が低下し、折り曲げが困難となる場合がある。
本発明に使用するポリイミドフィルムの片面あるいは両面は、目的に応じて接着性改良処理が施されていることが好ましい。接着性改良処理としては、サンドブラストや水などにガラズビーズなどの微粒子を分散させた液を高速でフィルムに噴射するウエットブラストなどで物理的にフィルムの表面に凹凸を形成する処理、過マンガン酸溶液またはアルカリ溶液などで化学的にフィルム表面に凹凸を形成する処理、常圧プラズマ処理、コロナ放電処理、低温プラズマ処理などの放電処理がある。本発明においては、常圧プラズマ処理、コロナ放電処理、低温プラズマ処理などの放電処理を施すことで接着性改良処理を行うことが好ましい。
常圧プラズマ処理とは、Ar、N2 、He、CO2 、CO、O2、空気、水蒸気などの雰囲気中で放電処理する方法をいう。処理の条件は、処理装置、処理ガスの種類、流量、電源の周波数などによって異なるが、適宜最適条件を選択することができる。
低温プラズマ処理は、減圧下で行うことができ、その方法としては、特に限定されないが、例えば、ドラム状電極と複数の棒状電極からなる対極電極を有する内部電極型の放電処理装置内に被処理基材をセットし、処理ガスを1〜1000Pa、好ましくは5〜100Paに調整した状態で電極間に直流あるいは交流の高電圧を印加して放電を行い、前記処理ガスのプラズマを発生させ、該プラズマに基材表面をさらして処理する方法などが好ましく使用される。低温プラズマ処理の条件としては、処理装置、処理ガスの種類、圧力、電源の周波数などによって異なるが、適宜最適条件を選択することができる。処理ガスの種類としては、例えば、Ar、N2、He、CO2 、CO、空気、水蒸気、O2、CF4 などを単独であるいは混合して用いることができる。
コロナ放電処理も使用できるが、コロナ放電処理を使用する場合は、低温プラズマ処理と比較して接着性向上の効果が小さいことがあるので、積層する耐熱性樹脂層が接着しやすいものを選択することが好ましい。
本発明の多層ポリイミドフィルムは、耐熱性芳香族ポリイミド層の片面または両面に熱可塑性ポリイミド層を積層することにより、2層構造または3層構造の多層ポリイミドフィルムとなる。3層構造の多層ポリイミドフィルムでは、耐熱性芳香族ポリイミド層の両面にある熱可塑性ポリイミド層の膜厚をほぼ同じ厚さにすることが好ましい。膜厚差が大きいと多層ポリイミドフィルムに反りが発生する。
多層ポリイミドフィルム全体の膜厚は5〜200μm、好ましくは7〜150μm、さらに好ましくは10〜100μmである。熱可塑性ポリイミド層の膜厚は0.1〜15μm、好ましくは0.3〜10μm、さらに好ましくは0.5〜7μmであり、多層ポリイミドフィルム全体の膜厚に対する熱可塑性ポリイミド層の膜厚の割合は2〜50%、好ましくは3〜45%、さらに好ましくは4〜40%である。熱可塑性ポリイミド層の膜厚が0.1μm未満だと金属層との接着力が低くなり、多層ポリイミドフィルム全体に対する熱可塑性ポリイミド層の膜厚の割合が50%より大きいと、多層ポリイミドフィルムの線膨張係数が大きくなり、FPC用基板として用いた時の寸法安定性が悪くなる。
本発明の多層ポリイミドフィルムの線膨張係数は35ppm/℃以下、好ましくは30ppm/℃以下、さらに好ましくは25ppm/℃以下である。熱線膨張係数が35ppm/℃より大きいと、FPC用基板として用いた場合に寸法安定性が悪くなる。
本発明の多層ポリイミドフィルムは種々の方法を用いて製造することができる。製造方法について下記に例を挙げて説明する。
第1の方法としては、耐熱性芳香族ポリイミドフィルムの片面または両面に熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸組成物をバーコーター、ロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター、リバースコーター、ドクターブレードフロートコーター、グラビアコーター、スリットダイコーターなどを用いて塗布した後、ポリアミド酸組成物に含まれる溶媒を60〜250℃程度の温度で連続的または断続的に30秒〜60分間で加熱除去する。続いて、200〜400℃、好ましくは220〜350℃、さらに好ましくは240〜300℃で30秒〜24時間連続的または断続的に熱処理を行い、ポリアミド酸をポリイミドに変換して図1または図2に示したような熱可塑性ポリイミド層を有する多層ポリイミドフィルムを得る。
耐熱性芳香族ポリイミドフィルムの両面に熱可塑性ポリイミド層を形成する場合、ポリアミド酸組成物を片面ずつ塗布・乾燥または、両面同時に塗布・乾燥して、一括して熱処理イミド化を行い多層ポリイミドフィルムを得ても良く、また、片面にポリアミド酸組成物を塗布・乾燥し、熱処理イミド化を行った後、もう一方の面にポリアミド酸組成物を塗布・乾燥し、熱処理イミド化を行って多層ポリイミドフィルムを得ても良い。
また、熱可塑性ポリイミド層の形成に可溶性ポリイミド組成物を用いた場合は、上記と同様の方法で塗布した後、可溶性ポリイミド組成物に含まれる溶媒を60〜250℃程度の温度で連続的または断続的に30秒〜60分間で加熱除去し、熱可塑性ポリイミド層を有する多層ポリイミドフィルムを得る。
熱可塑性ポリイミド層中に含まれる残溶媒の量は10重量%以下、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下である。残溶媒の量が多いと、耐熱性樹脂積層フィルムを巻き取った後に固着してしまい、次の巻き出しができなくなったり、金属層を積層する際に発泡の原因になる。
第2の方法としては、耐熱性芳香族ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸組成物と熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸組成物を、2層押出口金または3層押出口金から平滑な金属製支持体の表面に同時に押し出して流延し、ポリアミド酸組成物に含まれる溶媒を60〜250℃程度の温度で連続的または断続的に30秒〜60分間で加熱除去して自己支持性フィルムを形成し、金属製支持体から剥離する。続いて、200〜450℃、好ましくは220〜400℃、さらに好ましくは240〜370℃で30秒〜24時間連続的または断続的に熱処理を行い、ポリアミド酸をポリイミドに変換して図1または図2に示したような熱可塑性ポリイミド層を有する多層ポリイミドフィルムを得る。
また、熱可塑性ポリイミド層に可溶性ポリイミド組成物を用いた場合も、上記と同様の製造方法で、熱可塑性ポリイミド層を有する多層ポリイミドフィルムを得る。
第3の方法としては、耐熱性芳香族ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸組成物を単層押出口金から平滑な金属製支持体の表面に押し出して流延し、ポリアミド酸組成物に含まれる溶媒を60〜250℃程度の温度で連続的または断続的に30秒〜60分間で加熱除去して自己支持性フィルムを形成し、金属製支持体から剥離する。剥離した自己支持性フィルムに、熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸組成物をバーコーター、ロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター、リバースコーター、ドクターブレードフロートコーター、グラビアコーター、スリットダイコーターなどを用いて塗布した後、ポリアミド酸組成物に含まれる溶媒を60〜250℃程度の温度で連続的または断続的に30秒〜60分間で加熱除去する。続いて200〜450℃、好ましくは220〜400℃、さらに好ましくは240〜370℃で30秒〜24時間連続的または断続的に熱処理を行い、ポリアミド酸をポリイミドに変換して図1または図2に示したような熱可塑性ポリイミド層を有する多層ポリイミドフィルムを得る。
また、熱可塑性ポリイミド層に可溶性ポリイミド組成物を用いた場合も、上記と同様の製造方法で、熱可塑性ポリイミド層を有する多層ポリイミドフィルムを得る。
第2、第3の方法で製造した多層ポリイミドフィルムは、耐熱性芳香族ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層が積層界面で互いに拡散して接着しているため、耐熱性芳香族ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層の界面で剥離することはあまりない。したがって、第1の方法で製造した多層ポリイミドフィルムに比べ高い接着力を得ることができる。
本発明の多層ポリイミドフィルムに金属層を積層して金属層付き積層フィルムを形成する場合、金属層は、金属箔のラミネート、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、無電解メッキ、電解メッキなどの方法を単独あるいは2種以上を組み合わせて形成される。本発明においては、生産性、コスト面から、多層ポリイミドフィルムの熱可塑性ポリイミド層に金属箔を張り合わせて、加熱圧着することにより金属層を形成し、金属層付き積層フィルムを製造するラミネート法で金属層を形成することが好ましい。
本発明の金属層は銅箔、アルミ箔、SUS箔など金属箔から形成されるもので、通常銅箔が用いられる。銅箔には電解銅箔と圧延銅箔があり、どちらでも用いることができる。
銅箔などの金属箔は樹脂等との接着性を向上させるために、接着面側を粗化処理することがある。銅箔の両面は一般的にそれぞれS面(光沢面)、M面(粗化面)と言い分けられ、樹脂等を形成する場合、通常M面側に樹脂等を接着させる。したがって、粗化処理は通常M面側に施されることが多い。銅箔の両面に樹脂等を接着させる場合は、S面、M面両方とも粗化処理することもある。粗化処理とは、例えば銅箔の場合、電解メッキで製膜した原箔の片面または両面に1〜5μmの銅の微細粒子を電着等で析出させて表面に凹凸を形成する工程である。
FPCの配線パターンが微細化されていくに伴い、銅箔表面の凹凸はS面はもちろんのこと、M面もできるだけ小さい方が好ましく、銅箔表面を粗化処理していない両面平滑面の銅箔がより好ましい。銅箔表面の粗さは、S面でRa(中心線平均粗さ)が0.5μm以下、好ましくは0.4μm以下であり、Rz(十点平均粗さ)が2.0μm以下、好ましくは1.8μm以下である。また、M面でRaが0.7μm以下、好ましくは0.5μm以下、さらに好ましくは0.4μm以下であり、Rzが3.0μm以下、好ましくは2.0μm以下、さらに好ましくは1.8μm以下である。
銅箔の膜厚は1〜150μmの範囲のもので、用途にあわせて適宜用いることができるが、FPCの配線パターンが微細化されていくに伴い、銅箔の膜厚もより薄い方が好ましい。しかし、銅箔が薄くなると単体で取り扱うのが困難になり、3μmや5μm厚の銅箔は20〜50μm程度厚みの樹脂または金属箔などの支持体(キャリア)に付着したキャリア付き銅箔として取り扱われ、樹脂等に加熱圧着した後で支持体を剥離して用いられる。本発明での銅箔の厚みは、20μm以下、好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。また、1μm以上、好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。
銅箔は変色防止等のために表面が防錆処理されていても良い。防錆処理は一般的にニッケル、亜鉛、クロム化合物などの薄膜層を銅箔表面に積層することにより施される。また、樹脂等との接着性改良のために、さらに銅箔表面がシランカップリング処理してあっても良い。
加熱圧着は、熱プレス、加熱ロールラミネーター等を用いて行うことができる。加熱ロールラミネーターは長尺状のフィルム、金属箔を連続で加熱圧着できるので、生産性の点から好ましく用いることができる。加熱ロールラミネーターによる加熱圧着は、図3に示すように1対以上の加熱ロールに金属箔3、耐熱性樹脂層を積層したフィルム4を加熱ロール部分に通して加熱圧着する。ここで、図3(a)は片面金属層付き積層フィルム、図3(b)は両面金属層付き積層フィルムそれぞれの加熱ロールラミネーターを用いての加熱圧着方法である。
加熱ロールラミネーターのロールは金属ロール−金属ロール、金属ロール−ゴムロール、ゴムロール−ゴムロールなど種々の組み合わせで使用することができる。通常、片面銅層付き積層フィルムの場合は金属ロール−ゴムロールの組み合わせが用いられ、金属ロール側に銅箔、ゴムロール側に耐熱性絶縁フィルムが接するように加熱圧着される。ただし、ロール温度が200℃以上では金属ロール−金属ロールの組み合わせが好ましい。また、両面銅層付き積層フィルムの場合は金属ロール−金属ロールの組み合わせが用いられる。
加熱ロールラミネーターのロール温度、ロールニップ圧、搬送速度などの条件は、用いる耐熱性樹脂層の種類、組成、製造方法等により適宜選択されるものである。一般的にロール温度は50〜500℃、好ましくは100〜450℃、さらに好ましくは150〜400℃の範囲で設定される。ロールの加熱は片方のロールのみが加熱できるものでも良いが、両ロールとも加熱できるものが好ましい。より好ましくは両ロールとも加熱できるもので、それぞれ独立して温度制御できるものである。加熱ロールラミネーターのロールニップ圧は、線圧で一般的に0.5〜200N/mm、好ましくは2〜150N/mm、さらに好ましくは5〜100N/mmの範囲で設定される。搬送速度は一般的に0.1〜50m/分、好ましくは0.4〜30m/分、さらに好ましくは1〜10m/分の範囲で設定される。
ロール温度を300℃以上にしてラミネートする場合は、銅箔などの金属箔が酸化するのを防止するために、窒素雰囲気中または真空中で行っても良い。また、図4に示すように、ポリイミドフィルムなどの耐熱性樹脂フィルム、SUS、アルミなどの金属箔を保護フィルム16として加熱ロール表面と金属箔13または耐熱性樹脂層を積層したフィルム14の間に介在させて加熱圧着しても良い。ここで、図4(a)は片面金属層付き積層フィルム、図4(b)は両面金属層付き積層フィルムそれぞれの加熱ロールラミネーターを用いての加熱圧着方法である。
本発明においては、加熱圧着した後、さらに加熱処理をしても良く、このときの熱処理方法は、銅層付き積層フィルムをロール巻きにしてのバッチ方式処理、ロールtoロール方式での連続処理、カットシートでの枚葉処理のいずれを用いても良い。熱処理は200〜400℃、好ましくは240〜350℃、さらに好ましくは260〜320℃の温度範囲で、30秒〜24時間熱処理を行い、目標温度まで段階的に上げても良い。また、銅層の酸化を防止するために真空中または窒素雰囲気中で処理することが好ましい。
本発明においての接着力とは、多層ポリイミドフィルムに金属層を積層した金属層付き積層フィルムにおいて、金属層に2mm幅のラインパターンを形成し、該ラインパターンを90度方向に50mm/分の速度で引き剥がした時の値である。接着力は8N/cm以上、好ましくは10N/cm以上、さらに好ましくは12N/cm以上である。
本発明の金属層付き積層フィルムを用いて、金属層に配線パターンを形成することによりフレキシブルプリント回路基板(FPC)を製造することができる。配線パターンのピッチは特に限定されないが、好ましくは10〜150μm、より好ましくは15〜100μm、さらに好ましくは20〜80μmの範囲である。
半導体チップ(IC)を実装して半導体装置を作製する方法の一例として、フリップチップ技術を用いたCOF方式による作製例を説明する。
本発明の金属層付き積層フィルムを目的の幅にスリットする。次に金属層上にフォトレジスト膜を塗布し、マスク露光で配線パターンを形成した後、金属層をウエットエッチング処理し、残ったフォトレジスト膜を除去して金属配線パターンを形成した。形成した金属配線パターン上に錫または金を0.2〜0.8μmメッキした後、配線パターン上にソルダーレジストを塗布してCOFテープが得られる。
上記方法で得られたCOFテープのインナーリードに金バンプを形成したICをフリップチップ実装で接合し、樹脂で封止することにより本発明の半導体装置を得ることができる。
ICの実装方法は、配線とICのバンプをギャングボンディングする金属接合方式、ワイヤーボンドでICの接合部とCOFテープのインナーリードを接合するワイヤーボンディング方式、接着剤層中に導電性フィラーを含有させた接着フィルムを介在させて接合するACF方式、非導電性接着剤を用いて接合するNCP方式がある。ACF、NCP方式は比較的低温で接合することができるが、接続信頼性等の点から金属接合方式、特に金−錫共晶による接合方式が一般的に広く用いられている。
金−錫共晶による接合は、IC側のバンプと配線側の配線の高さばらつきを吸収するために、1バンプあたり20〜30gの荷重をかける。また、金と錫が共晶を形成し、信頼性高く接合するためには280℃以上の温度が必要であるので、一般的に接合面の温度が300〜400℃になるように設定される。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。ガラス転移温度、接着力、ハンダ耐熱性の測定方法について述べる。
(1)ガラス転移温度の測定
ポリアミド酸溶液を厚さ18μmの電解銅箔の光沢面に所定の厚さになるようにバーコーターで塗布後、80℃で10分、150℃で10分乾燥し、さらに窒素雰囲気下280℃で1時間加熱処理を行い、ポリイミドに変換した。次に銅層付き積層フィルムの電解銅箔を塩化第2鉄溶液で全面エッチングし、ポリイミドの単膜を得た。
得られたポリイミドの単膜約10mgをアルミ製標準容器に詰め、示差走査熱量計DSC-50(島津製作所(株)製)を用いて測定し(DSC法)、得られたDSC曲線の変曲点からガラス転移温度を計算した。80℃で1時間予備乾燥した後、昇温速度20℃/分で室温から450℃まで昇温し、測定を行った。
(2)吸水率の測定
上記(1)と同様の方法で得られたポリイミドの単膜約200mgを30℃で水に24時間浸漬し、その後80℃で3時間乾燥した。水浸漬後の重量と乾燥後の重量をそれぞれ測定し、その差を乾燥後の重量で割り、吸水率を算出した。
(3)接着力(常態)の測定
各実施例で得られた銅層付き積層フィルムを塩化第2鉄溶液で2mm幅にエッチングし、2mm幅の銅層を TOYO BOLDWIN社製”テンシロン”UTM−4−100にて引っ張り速度50mm/分、90゜剥離で測定した。
(4)ハンダ耐熱性の測定
各実施例で得られた両面銅層付き積層フィルムの片面の銅層を塩化第2鉄溶液で全面エッチングし、20×40mmに切り出したサンプルを高温高湿オーブン中40℃、90%RHの条件で24時間放置後、サンプルをハンダ浴槽に1分間浮かべ、銅層の膨れなどの外観変化があるかどうかを目視観察し、外観変化の無いハンダ浴槽の最高温度をそのサンプルのハンダ耐熱性の温度とした。
以下の製造例に示してある酸二無水物、ジアミンの略記号の名称は下記の通りである。
s−BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
a−BPDA:2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
OPDA :3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物
PMDA :ピロメリット酸二無水物
SiDA :1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン
44DAE :4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
34DAE :3,4’−ジアミノジフェニルエーテル
BAPB :1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン
BAPS :ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン
PDA :p−フェニレンジアミン
DABA :4,4’−ジアミノベンズアニリド
FDA :9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン
NMP :N−メチル−2−ピロリドン。
製造例1
温度計、乾燥窒素導入口、温水・冷却水による加熱・冷却装置、および、攪拌装置を付した反応釜に、SiDA 12.4g(0.05mol)、44DAE 190.2g(0.95mol)をNMP 2815gと共に仕込み、溶解させた後、s−BPDA 294.2g(1mol)を添加し、室温で1時間、続いて70℃で5時間反応させて、15重量%のポリアミド酸溶液(PA1)を得た。得られたポリアミド酸を加熱イミド化したポリイミドのガラス転移温度は256℃で、吸水率は1.2重量%あった。
製造例2〜23
酸二無水物、ジアミンの種類と仕込量を表1〜2のように変えた以外は製造例1と同様の操作を行い、15重量%のポリアミド酸溶液(PA2〜PA23)を得た。得られたポリアミド酸を加熱イミド化したポリイミドのガラス転移温度、吸水率を表1〜2に示した
実施例1
厚さ18μmのポリイミドフィルム(”カプトン”70EN 東レ・デュポン(株)製)の両面を二酸化炭素雰囲気中でプラズマ処理した。ここで、ポリイミドフィルム両面のそれぞれをA面、B面とした。
製造例1で得られたポリアミド酸溶液(PA1)を、ポリイミドフィルムA面に乾燥後の膜厚が3μmになるようにリバースコーターで塗工し、150℃で2分乾燥し、続いてポリイミドフィルムB面にも同様に膜厚が3μmになるようにリバースコーターで塗工し、150℃で2分乾燥した。該塗工品を280℃で5分加熱処理をして、イミド化および残存溶媒の除去を行い、両面に熱可塑性ポリイミド層を有する多層ポリイミドフィルムを得た。
上記作製の多層ポリイミドフィルムの熱可塑性ポリイミド層に、接着面側を粗化処理した厚さ18μmの圧延銅箔(BHY 日鉱マテリアルズ(株)製)を張り合わせ、ロールの表面温度を340℃に加熱したロールラミネーターで、図4(b)のように保護フィルムとして厚さ125μmのポリイミドフィルム(”カプトン”500H 東レ・デュポン(株)製)を両ロールと銅箔の間にそれぞれ介在させ、線圧50N/mm、速度1m/分で加熱圧着し、両面銅層付き積層フィルムを得た。
得られた両面銅層付き積層フィルムの接着力を測定したところ、11N/cmであった。また、ハンダ耐熱性は300℃であった。
実施例2〜17
ポリアミド酸溶液の種類、熱可塑性ポリイミド層の膜厚、ポリイミドフィルム、銅箔を表3のように変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、両面銅層付き積層フィルムを得た。得られた両面銅層付き積層フィルムの接着力、ハンダ耐熱性の結果を表3に示した。
ここで用いたポリイミドフィルムは、東レ・デュポン(株)製の”カプトン”100EN(厚み25μm)、カプトン”70EN(厚み18μm)、カプトン”50EN(厚み12μm)、鐘淵化学(株)製の”アピカル”25NPI(厚み25μm)である。
銅箔は接着面側を粗化処理した日鉱マテリアルズ(株)製の圧延銅箔 BHY(厚み18μm)、三井金属(株)製の電解銅箔 TQ−VLP(厚み12μm)、古河サーキットフォイル(株)製の電解銅箔F1−WS(厚み18μm)、接着面側を粗化処理していない両面光沢面の電解銅箔F0−WS(厚み12μm)である。
比較例1〜6
ポリアミド酸溶液の種類、熱可塑性ポリイミド層の膜厚、ポリイミドフィルム、銅箔を表3のように変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、両面銅層付き積層フィルムを得た。得られた両面銅層付き積層フィルムの接着力、ハンダ耐熱性の結果を表3に示した。
実施例18
製造例23で得られたポリアミド酸溶液(PA23)がコア部、製造例1で得られたポリアミド酸溶液(PA1)が両側表層部となるように3層押出口金から平滑な金属支持体上面に押し出して流延し、150℃で10分乾燥して自己支持性の多層ポリアミド酸フィルムを形成し、金属製支持体から剥離した。得られたポリアミド酸フィルムを180℃で20分、250℃で30分、350℃で1時間、段階的に温度を上げながら残存している溶媒を除去しつつイミド化して、図2に示すような3層の多層ポリイミドフィルムを得た。コア部の耐熱性芳香族ポリイミド層の膜厚は18μm、表層部の熱可塑性ポリイミド層の膜厚はそれぞれ3μmであった。ここで、コア部の耐熱性芳香族ポリイミド層の両面表層部にある熱可塑性ポリイミド層をそれぞれA層、B層とした。
上記作製の多層ポリイミドフィルムの熱可塑性ポリイミド層に、接着面側を粗化処理した厚さ18μmの圧延銅箔(BHY 日鉱マテリアルズ(株)製)を張り合わせ、ロールの表面温度を340℃に加熱したロールラミネーターで、図4(b)のように保護フィルムとして厚さ125μmのポリイミドフィルム(”カプトン”500H 東レ・デュポン(株)製)を両ロールと銅箔の間にそれぞれ介在させ、線圧50N/mm、速度1m/分で加熱圧着し、両面銅層付き積層フィルムを得た。
得られた両面銅層付き積層フィルムの接着力を測定したところ、16N/cmであった。また、ハンダ耐熱性は300℃であった。
実施例19〜33
コア層となる耐熱性芳香族ポリイミド層の膜厚、表層部の熱可塑性ポリイミド層となるポリアミド酸溶液の種類、熱可塑性ポリイミド層の膜厚、銅箔を表4のように変えた以外は実施例18と同様の操作を行い、両面銅層付き積層フィルムを得た。得られた両面銅層付き積層フィルムの接着力、ハンダ耐熱性の結果を表4に示した。
比較例7〜12
コア層となる耐熱性芳香族ポリイミド層の膜厚、表層部の熱可塑性ポリイミド層となるポリアミド酸溶液の種類、熱可塑性ポリイミド層の膜厚、銅箔を表4のように変えた以外は実施例18と同様の操作を行い、両面銅層付き積層フィルムを得た。得られた両面銅層付き積層フィルムの接着力、ハンダ耐熱性の結果を表4に示した。
実施例34
製造例23で得られたポリアミド酸溶液(PA23)を、スリットダイより回転している金属製エンドレスベルト上に乾燥後の膜厚が18μmになるように押出して塗膜を形成し、150℃で10分乾燥して、コア層の耐熱性芳香族ポリイミド層となる自己支持性のポリアミド酸フィルムを形成し、金属製エンドレスベルトから剥離した。
次に、製造例1で得られたポリアミド酸溶液(PA1)をポリアミド酸フィルムの片面に乾燥後の膜厚が3μmになるようにリバースコーターで塗工して、150℃で2分乾燥し、続いてポリアミド酸フィルムのもう一方の面にも同様に膜厚が3μmになるようにリバースコーターで塗工して、150℃で2分、耐熱性芳香族ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層を同時に乾燥し、表層部の熱可塑性ポリイミド層となるポリアミド酸を積層した多層ポリアミド酸フィルムを得た。該多層ポリアミド酸フィルムを180℃で20分、250℃で30分、350℃で1時間、段階的に温度を上げながら残存している溶媒を除去しつつイミド化して、図2に示すような3層の多層ポリイミドフィルムを得た。ここで、耐熱性芳香族ポリイミド層の両面にある熱可塑性ポリイミド層をそれぞれA層、B層とした。
上記作製の多層ポリイミドフィルムの熱可塑性ポリイミド層に、接着面側を粗化処理した厚さ18μmの圧延銅箔(BHY 日鉱マテリアルズ(株)製)を張り合わせ、ロールの表面温度を340℃に加熱したロールラミネーターで、図4(b)のように保護フィルムとして厚さ125μmのポリイミドフィルム(”カプトン”500H 東レ・デュポン(株)製)を両ロールと銅箔の間にそれぞれ介在させ、線圧50N/mm、速度1m/分で加熱圧着し、両面銅層付き積層フィルムを得た。
得られた両面銅層付き積層フィルムの接着力を測定したところ、16N/cmであった。また、ハンダ耐熱性は300℃であった。
実施例35〜49
コア層となる耐熱性芳香族ポリイミド層の膜厚、表層部の熱可塑性ポリイミド層となるポリアミド酸溶液の種類、熱可塑性ポリイミド層の膜厚、銅箔を表5のように変えた以外は実施例34と同様の操作を行い、両面銅層付き積層フィルムを得た。得られた両面銅層付き積層フィルムの接着力、ハンダ耐熱性の結果を表5に示した。
比較例13〜18
コア層となる耐熱性芳香族ポリイミド層の膜厚、表層部の熱可塑性ポリイミド層となるポリアミド酸溶液の種類、熱可塑性ポリイミド層の膜厚、銅箔を表5のように変えた以外は実施例34と同様の操作を行い、両面銅層付き積層フィルムを得た。得られた両面銅層付き積層フィルムの接着力、ハンダ耐熱性の結果を表5に示した。
上記のように、本発明の実施例では接着力、ハンダ耐熱性ともに高い特性が得られた。これに対し比較例では、ハンダ耐熱性は高いが接着力が低い、または接着力は高いがハンダ耐熱性が低いなど、接着力、ハンダ耐熱性ともに優れた特性を示すものは得られなかった。
また、実施例11を除く表3の実施例において、接着力測定の際の剥離界面は全てポリイミドフィルムと熱可塑性ポリイミド層の間であったが、表4、表5の実施例においては、耐熱性芳香族ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層が界面で相互拡散しているため非常に強固に接着されており、表3の実施例に比べ高い接着力が得られている。