JP4761375B2 - 内燃機関用ピストンリング - Google Patents
内燃機関用ピストンリング Download PDFInfo
- Publication number
- JP4761375B2 JP4761375B2 JP2006126166A JP2006126166A JP4761375B2 JP 4761375 B2 JP4761375 B2 JP 4761375B2 JP 2006126166 A JP2006126166 A JP 2006126166A JP 2006126166 A JP2006126166 A JP 2006126166A JP 4761375 B2 JP4761375 B2 JP 4761375B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- piston ring
- nitride layer
- layer
- outer peripheral
- base material
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Landscapes
- Pistons, Piston Rings, And Cylinders (AREA)
Description
以下、このような本発明のピストンリングの各構成および製造方法についてそれぞれ詳細に説明する。
本発明のピストンリングにおいては、上記母材の上下面のみ、または上下面および内周面に窒化層が形成される。窒化層を形成することにより、ピストンリング上下面の、ピストンリング溝の上下面との叩かれに対する耐摩耗性を向上することができるからである。このような窒化層は、一般的な方法でピストンリングの表面から母材内に窒素を侵入および拡散させた場合、窒素濃度は母材の表面で高く、母材の表面から母材内部に入るにつれて窒素濃度が低くなるため、母材の表面近くには硬度の高い窒化層が形成され、その内側にはより硬度の低い窒化層が形成される。本発明においては、「HV700以上の窒化層と、外周摺動面に形成された硬質皮膜とが接触している領域」とは、上述したような窒化層のうち、母材の表面に形成されたビッカース硬度(HV)700以上の硬度を有する領域と、上記硬質皮膜とが接触している領域をいうものとする。なお、本発明においてビッカース硬度(HV)700以上とは、ビッカース硬度試験機の試験荷重を0.9807N(100gf)としたときに得られる値が700以上であるものを意味するものとする。
本発明において、外周摺動面に形成される硬質皮膜は特に限定されるものではなく、所望の耐折損性が得られる公知のものを用いることができる。中でも、本発明において、上記硬質皮膜は、ピストンリング母材の外周面上に形成された、金属および/またはセラミックスから成る緻密層と、上記緻密層上に形成された多孔質層とから構成されていることが好ましい。上記緻密層を設けることにより、その後に母材の窒化処理を行った場合でも、母材の外周面の窒化を防止することができる。また、上記緻密層との密着性がよく、耐折損性の高い多孔質層を上記緻密層上に形成することにより、外周摺動面の耐折損性を向上させることができる。
以下、このような緻密層と、多孔質層とについて詳細に説明する。
本発明において、ピストンリングの母材の外周面の表面には、イオンプレーティング法により、金属および/またはセラミックスから成る緻密な層である緻密層が1〜5μmの範囲内、中でも2〜4μmの範囲内の膜厚で形成されることが好ましい。緻密層の膜厚が上記範囲に満たないと、窒素の侵入防止機能が不十分であり、上記緻密層の下に窒化層が形成されてしまう場合がある。一方、緻密層の膜厚が上記範囲を超える、不必要に厚い緻密層は形成に時間を要するため製造効率上望ましくなく、材料コストの観点からも望ましくない。
本発明においては上述した緻密層上に、イオンプレーティング法により多孔質層が形成されることが好ましい。上記多孔質層は、応力を吸収する空孔を有する層であるため、ピストンリングの外周摺動面にこのような多孔質層を形成することにより、外周摺動面の耐折損性を向上させることができる。
本発明において用いられるピストンリングの母材の外周面には、面取り部が形成されている。このような面取り部を設けることにより外周摺動面の耐折損性を向上することができる。上記面取り部の大きさ等は特に限定されるものではないが、耐折損性向上の観点からピストンリング軸方向の長さ(図2におけるy)が、ピストンリングの軸方向高さ(図1におけるh1)の5〜30%の範囲内、中でも5〜20%の範囲内で形成されることが好ましい。
本発明のピストンリングの製造方法は上述した構成を有するピストンリングを得ることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えばピストンリングの母材の外周面にイオンプレーティング法により上記緻密層および多孔質層から構成される硬質皮膜を形成し、ピストンリングの上下面を研磨加工し、窒化処理を施してHV700以上の窒化層を形成することにより製造することができる。以下、このようなピストンリングの製造方法の各工程について説明する。
本工程においては、以下の方法によりピストンリングの母材の外周面に上記緻密層と多孔質層とから構成される硬質皮膜を形成することができる。
ます、緻密層の形成に先立って、上記母材を8×10−5Torr以下の真空度に設定されたアークイオンプレーティング装置の炉内ヒーターで300〜660℃の範囲内で加熱することにより母材に吸着しているガスを放出させる。その後、上記母材に−1000〜−600Vの範囲内のバイアス電圧を印加し、陰極の金属ターゲットと陽極との間でアーク放電を発生させて上記ターゲットの金属を蒸気化、イオン化し、窒素ガスまたはアルゴンガスを導入してイオンボンバードをすることにより母材表面のクリーニングを行った。この際の上記陰極のターゲットとしては、緻密層を形成する金属のターゲットを用いる。
上記方法により硬質皮膜を形成した場合、母材の上面や下面などの外周面以外の箇所にも上記硬質皮膜が形成される場合がある。母材の上下面に硬質皮膜が形成された場合、当該硬質皮膜が窒素の母材への侵入を阻害し、後の窒化処理の際に母材の上下面に均一にHV700以上の窒化層を形成することができなくなる可能性があるため、上記硬質皮膜の形成後に母材の上面と下面とをそれぞれ10〜20μmの範囲内、中でも10〜15μmの範囲内で研磨加工を行うことが好ましい。このような研磨加工を行って上下面に形成された硬質皮膜のかぶり部を除去することにより母材の上下面に均一かつ安定的にHV700以上の窒化層を形成することができる。
本発明においては、母材の外周面に上記硬質皮膜が形成されたピストンリングを窒化処理することにより、上記ピストンリングの上下面、または、上下面および内周面にHV700以上の窒化層を形成することができる。上記窒化処理の方法は、上述したようなHV700以上の窒化層を形成することができるものであれば特に限定されるものではなく、ガス窒化法(550〜600℃において60〜300分)、塩浴窒化(タフトライド)法(570〜590℃において10〜300分)等公知の方法により行うことができる。形成されたビッカース硬度(HV)700以上の窒化層は、ピストンリングの切断面を研磨および仕上げ加工により鏡面に仕上げ、4%ナイタル液によりエッチングを行うことにより確認することができる。また、形成された窒化層の詳細な硬度分布は、断面硬度の測定をJIS G 0562:1993に基づく方法により確認することができる。
直径φが90mm、径方向幅(図1に示すa1)が2.7mm、軸方向高さ(図1に示すh1)が1.0mmのピストンリング母材(SUS410材相当、C:0.65質量%、Si:0.40質量%、Mn:0.35質量%、P:0.03質量%以下、S:0.03質量%以下、Cr:13.5質量%、Mo:0.3質量%、残部:Fe)を用い、各ピストンリングの面取り部長さ(図2に示すy)は下記表1に示す長さとした。これらのピストンリングに対し、上記「4.製造方法」に記載された方法により硬質皮膜の形成、研磨加工、窒化処理を行うことにより、母材の外周面に緻密層および多孔質層が形成され、上下面および内周面に窒化層が形成されたピストンリングを製造した。その際の、アークイオンプレーティング装置の陰極としてはCrターゲットを用いた。形成された緻密層はCrから成り、膜厚は5μmであり、空孔率は0〜0.2%であった。また、上記緻密層上に形成された多孔質層はCrとCrNとCr2Nとの混合物から成り、膜厚は20μm、空孔率は1〜7%であった。さらに、上記多孔質層形成後には上記ピストンリングの上下面をそれぞれ15μm研磨加工し、その後窒化処理を行った。
なお、形成された窒化層については、上記「4.製造方法の(c)窒化処理」に記載された方法により確認および断面硬度の測定を行い、HV700以上の窒化層接触領域長さxを求めた。
上記実施例と同様の方法で硬質皮膜の形成、研磨加工、窒化処理を行うことにより、母材の外周面に緻密層および多孔質層が形成され、上下面および内周面に窒化層が形成されたピストンリングを製造した。窒化層の形成の際は、ガス窒化法により550℃において5時間窒化処理を行った。下記表1に形成されたHV700以上の窒化層膜厚の実測値、面取り部の長さy、および面取り部長さyに対するHV700以上の窒化層接触領域長さxの比率(%)を示す。
上記実施例と同様の方法で硬質皮膜の形成、研磨加工、窒化処理を行うことにより、母材の外周面に緻密層および多孔質層が形成され、上下面および内周面に窒化層が形成されたピストンリングを製造した。窒化層の形成の際は、塩浴軟窒化法により580℃において0.25時間窒化処理を行った。下記表1に形成されたHV700以上の窒化層膜厚の実測値、面取り部の長さy、および面取り部長さyに対するHV700以上の窒化層接触領域長さxの比率(%)を示す。
上記実施例と同一の寸法および材質であるピストンリング母材の全面(外周面、内周面、上面および下面)の窒化処理を行った。上記窒化処理は、塩浴軟窒化法またはガス窒化法により、HV700以上の窒化層の膜厚が40μmまたは70μmを目標として上記実施例と同様に行った。上記窒化処理により母材の最表面に形成された化合物層(白層)を薬品により除去した後に外周摺動面に上記実施例における多孔質層と同様にCrとCrNとCr2Nとの混合物から成る膜厚20μmの層を硬質皮膜として形成した。下記表1にそれぞれの比較例における窒化処理の方法、形成されたHV700以上の窒化層膜厚の実測値、および面取り部の長さyを示す。なお、比較例3〜6については、外周摺動面の上記硬質皮膜の下層にもHV700以上の窒化層が形成されているため、HV700以上の窒化層接触領域長さxを特定することができない。
上記実施例および比較例において製造されたピストンリングの耐折損性試験を行った。耐折損性試験には、ピストンリングに当接し押圧変形させる押し治具を有する、特開2001−208650公報の図1に開示されている第1の実施の形態によるピストンリングの性能評価装置を用いた。この際、上記性能評価装置の押圧部は先細り状のテーパ面(テーパ角度:7.5°)をなすものを用い、ピストンリングが折損するまで上記押し治具を往復運動することにより耐折損性を測定した。上記性能評価装置の押し治具による荷重負荷の変位が正弦波で30Hzとなるように上記押し治具を往復移動させ、試験を行った。ピストンリングの折損の検出は、ピストンリングによってシールされた部分に9.8MPaのエアーを流し、シールされた部分のエアー圧変化をレコーダーに記録させ、圧力変化が生じたところで試験機を停止させた。
2 … 母材
3 … 外周摺動面
4 … 緻密層
5 … 多孔質層
6 … 硬質皮膜
7 … 上面
8 … 下面
9 … 内周面
10 … HV700以上の窒化層
11 … 面取り部
12 … HV700以上の窒化層接触領域
Claims (2)
- ピストンのリング溝に装着され、シリンダライナあるいはシリンダボアと摺動する内燃機関用ピストンリングであって、
前記ピストンリングは外周摺動面、上下面、内周面を有し、前記上下面のみ、あるいは前記上下面および前記内周面のみに窒化層が形成され、前記外周摺動面にイオンプレーティング法により硬質皮膜が形成されており、
前記上面および下面に形成された前記窒化層におけるビッカース硬度(HV)700以上の窒化層と、前記硬質皮膜とが接触している領域であるビッカース硬度(HV)700以上の窒化層接触領域のピストンリング軸方向の長さ(x)が、前記外周摺動面の上端および下端に位置する面取り部のピストンリング軸方向の長さ(y)の3〜40%の範囲内であり、
前記窒化層接触領域のピストンリング軸方向の長さ(x)が、前記HV700以上の窒化層の膜厚(z)の16.4〜44.4%の範囲内であることを特徴とする内燃機関用ピストンリング。 - 前記ビッカース硬度(HV)700以上の窒化層の膜厚が15〜80μmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用ピストンリング。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006126166A JP4761375B2 (ja) | 2006-04-28 | 2006-04-28 | 内燃機関用ピストンリング |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006126166A JP4761375B2 (ja) | 2006-04-28 | 2006-04-28 | 内燃機関用ピストンリング |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2007298103A JP2007298103A (ja) | 2007-11-15 |
JP4761375B2 true JP4761375B2 (ja) | 2011-08-31 |
Family
ID=38767763
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2006126166A Active JP4761375B2 (ja) | 2006-04-28 | 2006-04-28 | 内燃機関用ピストンリング |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4761375B2 (ja) |
Families Citing this family (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5681252B1 (ja) * | 2013-08-30 | 2015-03-04 | 株式会社リケン | 内燃機関用ピストンリング |
BR102014004402B1 (pt) | 2014-02-25 | 2022-08-09 | Mahle Metal Leve S/A | Anel de pistão e seu processo de fabricação |
DE102014213822A1 (de) * | 2014-07-16 | 2016-01-21 | Federal-Mogul Burscheid Gmbh | Gleitelement, insbesondere Kolbenring, und Verfahren zur Herstellung desselben |
DE102015009587B4 (de) * | 2015-07-24 | 2018-11-22 | Federal-Mogul Burscheid Gmbh | Kompressionskolbenring |
CN111545999B (zh) * | 2020-04-29 | 2021-09-14 | 中国第一汽车股份有限公司 | 一种用于缸孔等离子喷涂后缸孔口部倒角的工艺方法 |
Family Cites Families (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS59126159U (ja) * | 1983-02-15 | 1984-08-24 | 日本ピストンリング株式会社 | ピストンリング |
JPH0625597B2 (ja) * | 1985-11-20 | 1994-04-06 | 株式会社リケン | ピストンリング |
JPH0960726A (ja) * | 1995-08-23 | 1997-03-04 | Teikoku Piston Ring Co Ltd | ピストンリングの組合せ |
JP4165119B2 (ja) * | 2002-05-15 | 2008-10-15 | 日産自動車株式会社 | 内燃機関のピストンリング |
-
2006
- 2006-04-28 JP JP2006126166A patent/JP4761375B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2007298103A (ja) | 2007-11-15 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5452734B2 (ja) | コーティングを有するスライド要素、特に、ピストンリング、およびスライド要素を製造するプロセス | |
US6279913B1 (en) | Sliding member and manufacturing method thereof | |
JP6340014B2 (ja) | 摺動エレメント | |
US7572344B2 (en) | Method for the production of wear-resistant sides for a keystone ring for internal combustion engine | |
KR101706527B1 (ko) | 피스톤 링 | |
US20090026712A1 (en) | Sliding Member | |
US20080256794A1 (en) | Method For the Production of a Piston Ring For Internal Combustion Engine and a Piston Ring of this Type | |
US5605741A (en) | Hybrid face coating for piston ring | |
JP4761374B2 (ja) | 内燃機関用ピストンリング | |
JP4761375B2 (ja) | 内燃機関用ピストンリング | |
JP2009522509A (ja) | 滑動体、特にピストンリング、滑動体の製造方法、滑動システム、及び滑動体の被膜 | |
JP6049151B2 (ja) | クロム固体粒子の摩耗防止層及び耐食性のフランク面を有するピストンリング | |
JP2007119907A (ja) | 耐摩耗性コーティングおよびその製造方法 | |
US10697543B2 (en) | Sliding element, in particular piston ring, and method for producing the same | |
US20100019458A1 (en) | Piston ring | |
JP2022109981A (ja) | ピストンリング | |
JP4757685B2 (ja) | ピストンリング | |
CN110997966B (zh) | 具有喷丸磨合层的活塞环及其制造方法 | |
JP5860571B1 (ja) | ピストンリング | |
JPS6113064A (ja) | 内燃機関用ピストンリング | |
EP3802905B1 (en) | Piston ring and method for manufacturing a piston ring | |
US6315840B1 (en) | Sliding member | |
JP2018141197A (ja) | 摺動部材及びその製造方法 | |
EP2746624B1 (en) | Piston ring | |
JP2006275253A (ja) | ピストンリング |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20080314 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20100916 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20101005 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20101206 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20110524 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20110602 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140617 Year of fee payment: 3 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 4761375 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |