本実施形態に係る拡声システムについて、図1〜図3を参照して説明する。図1は、複数の放収音装置を備える拡声システムの説明図である。図1(A)は、複数の放収音装置が所定方向(X方向)に一列に並び、X方向に沿った−X側端の放収音装置が収音側放収音装置になった場合を示し、図1(B)は、X方向に沿った+X側端の放収音装置が収音側放収音装置になった場合を示す。図1(C)は、複数の放収音装置が一列に並び、中央の放収音装置が収音側放収音装置になった場合を示す。図2は、拡声システムを構成する放収音装置の機能構成を示すブロック図である。図3は、収音側放収音装置が収音してから、放音側放収音装置が放音するまでの処理の流れを示すフローチャートである。
図1に示すように、本実施形態に係る拡声システムは、複数の放収音装置1(1a〜1e)が、一直線上に伝送ラインを介して接続されており、放収音装置1間で各種信号の送受信を行う。伝送ラインとは、例えば、mLAN(登録商標)、CobraNet、イーササウンド等の通信プロトコルで制御されるものである。放収音装置1の各々には、放収音装置1の配置パターンに基づいて、識別番号H1〜H5が割り当てられる。各放収音装置1は、最初に収音を開始した放収音装置1が発した同期信号に基づいて、放音処理を行う。また、各放収音装置1の周囲には、ユーザ2(2a〜2n)が在席する。
ユーザ2の発言を収音した放収音装置1(以下、収音側放収音装置1)は、生成した音声信号を他の放収音装置1へ送信する。収音側放収音装置1を除く放収音装置1(以下、放音側放収音装置1)は、音声信号を受信すると、各放収音装置1の配列パターンからなる配列パターン情報と識別番号H1〜H5を含むコントロール情報とを参照し、指向性ビームを形成して放音する。
詳述すると、例えば、図1(A)に示すように、放収音装置列の一方端(−X方向端)の収音側放収音装置1aがユーザ2aの発言を収音して音声信号を生成すると、放音側放収音装置1b〜1eに、同期信号と自装置の識別番号H1を含むコントロール情報と生成した音声信号とを伝送ラインを介して送信する。伝送ラインを介して音声信号等を受信した放音側放収音装置1b〜1eの各々は、各放収音装置1の配列パターン、及びコントロール情報に含まれる識別番号H1と自装置の識別番号H2〜H5とに基づいて、自装置と収音側放収音装置1aとの位置関係を取得する。放音側放収音装置1b〜1eは、この位置関係に応じて、自装置位置を基準にして収音側放収音装置1a側から発声され、該収音側放収音装置1aと相反する側へ伝搬されるように放音指向性を設定して音声信号を放音する。すなわち、放音側放収音声装置1b〜1eは、−X方向から+X方向へ音が伝搬するように音声信号を放音する。
また、図1(B)に示すように、放収音装置列の+X方向端の収音側放収音装置1eがユーザ2gの発言を収音して音声信号を生成すると、放音側放収音装置1a〜1dに、同期信号と自装置の識別番号H5を含むコントロール情報と生成した音声信号とを伝送ラインを介して送信する。伝送ラインを介して音声信号等を受信した放音側放収音装置1a〜1dの各々は、各放収音装置1の配列パターン、及びコントロール情報に含まれる識別番号H5と自装置の識別番号H1〜H4とに基づいて、自装置と収音側放収音装置1eとの位置関係を取得する。放音側放収音装置1a〜1dは、この位置関係に応じて、自装置位置を基準にして収音側放収音装置1e側から発声され、該収音側放収音装置1eと相反する側へ伝搬されるように放音指向性を設定して音声信号を放音する。すなわち、放音側放収音声装置1a〜1dは、+X方向から−X方向へ音が伝搬するように音声信号を放音する。
また、図1(C)に示すように、放収音装置列の中央の収音側放収音装置1cがユーザ2dの発言を収音して音声信号を生成すると、放音側放収音装置1a,1b,1d,1eに、同期信号と自装置の識別番号H3を含むコントロール情報と生成した音声信号とを伝送ラインを介して送信する。伝送ラインを介して音声信号等を受信した放音側放収音装置1a,1b,1d,1eの各々は、各放収音装置1の配列パターン、及びコントロール情報に含まれる識別番号H3と自装置の識別番号H1,H2,H4,H5とに基づいて、自装置と収音側放収音装置1cとの位置関係を取得する。放音側放収音装置1a,1bは、この位置関係に応じて、自装置位置を基準にして収音側放収音装置1c側から発声され、該収音側放収音装置1cと相反する側へ伝搬されるように放音指向性を設定して音声信号を放音する。すなわち、放音側放収音声装置1a、1bは、+X方向から−X方向へ音が伝搬するように音声信号を放音する。放収音装置1d,1eは、この位置関係に応じて、自装置位置を基準にして収音側放収音装置1c側から発声され、該収音側放収音装置1cと相反する側へ伝搬されるように放音指向性を設定して音声信号を放音する。すなわち、放音側放収音声装置1d、1eは、−X方向から+X方向へ音が伝搬するように音声信号を放音する。
このように、収音側放収音装置1は、自装置が収音した音声信号を放音せず、且つ、放音側放収音装置1は、自装置位置を基準にして収音側放収音装置1側から発声され、該収音側放収音装置1と相反する側へ伝搬されるように放音指向性を設定して音声信号を放音する。これにより、各放音側放収音装置1から放音された音声は、各ユーザにとって収音側放収音装置1方向から伝搬されてくるように聞こえるので、より臨場感のある拡声が実現できる。更に、このような処理により、収音側放収音装置1の収音領域が各放音側放収音装置1の放音領域の死角になるので、収音側放収音装置1は、各放音側放収音装置が放音した音声信号を殆ど収音せず、ハウリングの発生を防ぐことができる。
また、複数の放収音装置1を伝送ラインで接続するだけで、拡声システムを構成することができる。このため、この拡声システムは、会議室に容易に設置することができ、会議室の仕様に応じて容易に最適な構成を実現できる。
次に、放収音装置1の機能構成について、図2を参照して説明する。図2に示すように、放収音装置1は、制御部10、入出力コネクタ11、通信制御部12、放音指向性制御部13、D/Aコンバータ14、アンプ15、スピーカアレイSPA、マイクアレイMA10,MA20、アンプ16、A/Dコンバータ17、収音ビーム生成部181,182、収音ビーム選択部19、及びエコーキャンセラ20から構成される。
制御部10は、操作部(不図示)からの入力情報に基づいて、通信制御部12、及び放音指向性制御部13を制御する。また、制御部10は、通信制御部12からコントロール情報が入力されると、配列パターン情報を参照して、コントロール情報に含まれる識別番号と自装置の識別番号とに基づいて、放音指向性を決定する。制御部10は、通信制御部12から内部動作クロックが入力されると、該内部動作クロックに基づいて、放音指向性制御部13を制御する。
通信制御部12は、連結検出部121及びPLL122を備え、入出力コネクタ11を介して、伝送ラインやネットワーク3に接続される。通信制御部12は、伝送ラインやネットワーク3を介してデータを送受信する際に、伝送ラインやネットワーク3に対応するデータ形式に変換する。連結検出部121は、伝送ラインに接続されているか否かを検出する。すなわち、連結検出部121は、自装置の両端に他の放収音装置1が接続されているか否か、片方だけ接続されているか否か等を検出する。PLL122は、同期信号及び内部動作クロックの生成を行う。PLL122が生成する同期信号は、他の放収音装置1との同期に用いられたり、放音制御等に用いられたりする。このため、複数の放収音装置1の内の一台は、最初に同期信号を生成、送信する立場となり、水晶振動子からの出力に基づいて同期信号を生成して他の放収音装置1へ送信するとともに、内部動作クロックを生成して制御部10へ出力する。一方、他の放収音装置1は、受信した同期信号に基づいて、同期信号を生成して他の放収音装置1へ送信するとともに、内部動作クロックを生成して制御部10へ出力する。
通信制御部12は、送信側の処理として、エコーキャンセラ20から入力された収音ビーム信号MB0’と、制御部10から入力されたコントロール情報と、PLL122が生成した同期信号と、を他の放収音装置1に送信する。この際、通信制御部12は、連結検出部121により、有効な伝送ライン、つまり、放収音装置1が接続された伝送ラインを検出し、該伝送ラインに収音ビーム信号MB0’を送信する。また、通信制御部12は、受信側の処理として、伝送ラインを介して受信した放音用信号MB1(他の放収音装置1から伝送ラインを介して受信した収音ビームMB0’を放音用信号MB1と称す。)を、エコーキャンセラ20を介して放音指向性制御部13へ出力し、伝送ラインを介して受信したコントロール情報を制御部10へ出力する。
放音指向性制御部13は、制御部10から与えられたコントロール情報に基づいて、入力された放音用信号MB1に対して、スピーカアレイSPAを構成する各スピーカSP1〜SP3に応じた遅延処理や振幅処理等を行って、各スピーカSP1〜SP3に対応する放音音声信号を生成し、D/Aコンバータ14へ出力する。また、放音指向性制御部13は、制御部10の指示に基づいて、放音音声信号の同期処理を行う。
各D/Aコンバータ14は、入力された放音音声信号をデジタル・アナログ変換して、各アンプ15に与え、各アンプ15は、アナログ化された放音音声信号を増幅して、各スピーカSP1〜SP3に与える。各スピーカSP1〜SP3は、入力された放音音声信号を放音する。
マイクアレイMA10,MA20を構成する各マイクMIC11〜MIC17,MIC21〜MIC27は、自装置の周囲に在席するユーザ2からの発声音を含む周囲の音を収音して電気的な収音音声信号に変換し、アンプ16に与える。アンプ16は収音音声信号を増幅してA/Dコンバータ17に与え、A/Dコンバータ17は、アナログ形式の収音音声信号をディジタル変換して、収音ビーム生成部181,182に出力する。
収音ビーム生成部181,182は、各収音音声信号の遅延処理および振幅処理等を、予め設定した収音指向性パターン毎に行うことで、それぞれの収音指向性に基づく複数の収音ビーム信号MB11〜MB14,MB21〜MB24を生成する。
収音ビーム選択部19は、最も信号レベルの高い収音ビーム信号MB0を選択してエコーキャンセラ20に出力する。
エコーキャンセラ20は、適応型フィルタ201とポストプロセッサ202とを備える。適応型フィルタ201は放音用信号MB1に基づく擬似回帰音信号を生成する。ポストプロセッサ202は収音ビーム選択部19から出力された収音ビーム信号MB0から、放音用信号MB1の擬似回帰音信号を減算して、通信制御部12に収音ビーム信号MB0’として出力する。これにより、スピーカSPからマイクMICへの回り込み音を抑圧する。
次に、収音側放収音装置1の収音から放音側放収音装置1の放音までの処理の流れについて、図3を参照して説明する。ここでは、図1(A)に示すように、放収音装置1aが収音した音声信号を、他の放収音装置1b〜1eから放音する場合を例にあげて説明する。
放収音装置1aは、ユーザ2aの音声を収音すると(S101)、収音ビーム生成部181,182にて、収音ビーム信号MB11〜MB14,MB21〜MB24を生成する(S102)。放収音装置1aの収音ビーム選択部19は、収音ビーム信号MB0を選択して、エコーキャンセラ20を介して通信制御部12へ出力する(S103)。この際、収音ビーム選択部19の収音ビーム信号MB0の選択方法は、収音ビーム信号MB11〜MB14,MB21〜MB24の中から、最も信号レベルの高いビーム信号を収音ビーム信号MB0として選択する。
放収音装置1aの通信制御部12は、同期信号の有無を判断する(S104)。同期信号が無い場合は(S104:No)、同期信号を生成して(S105)、ステップS106へ進む。同期信号が在る場合は(S104:Yes)、ステップS106へ進む。
ステップS106にて、放収音装置1aの通信制御部12は、収音ビーム信号MB0’と、自装置の識別番号H1を含むコントロール情報と、同期信号と、を伝送ラインを介して他の放収音装置1b〜1eへ送信する。
以下、放収音装置1bが放音用信号MB1等を受信した場合を例にあげて説明する。なお、放収音装置1c〜1eにおいても、放収音装置1bと同様の処理を行う。
放収音装置1bは、放音用信号MB1、コントロール情報、及び同期信号を伝送ラインを介して受信すると(S111)、制御部10は、配列パターンを参照して、コントロール情報に含まれる識別番号H1と自装置の識別番号H2とから放音用信号MB1を収音した放収音装置1aと自装置の位置関係を解析する(S112)。放収音装置1bの放音指向性制御部13は、制御部10が解析した位置関係に基づいて、放収音装置1a側から放音されているように放音用信号MB1の放音指向性を制御し(S113)、スピーカアレイSPAを構成する各スピーカSP1〜SP3に対応する放音音声信号を生成する(S114)。放音指向性制御部13は、制御部10の指示に基づいて、放音音声信号の同期処理を行う(S115)。そして、各スピーカSP1〜SP3から放音音声信号を放音する(S116)。以上で、放収音装置1b〜1dは、放収音装置1aが収音した音声信号の放音を完了する。
ここで、放音指向性の決定方法について説明する。上述のように、一直線上に複数の放収音装置1が配置されている場合は、放音指向性を決定するタイミングで、配列パターン情報を参照せずに、識別番号のみを参照してもよい。例えば、各放収音装置1の識別番号が、−X方向端に配置された放収音装置1から+X方向端に配置された放収音装置1に向かって、昇順で割当てられる。この場合、各放収音装置1は、放音指向性を決定するタイミングで、自装置の識別番号Hmとコントロール情報に含まれる識別番号Hnとを比較して、放音方向を決定することができる。すなわち、m(放音側放収音装置1の識別番号)<n(収音側放収音装置1の識別番号)の場合は−X方向に向けて放音するように放音指向性を制御し、m>nの場合は+X方向に向けて放音するように放音指向性を制御する。なお、このような昇順による識別番号の判定は一例であり、降順で識別番号を設定した場合も同様の方法で放音方向を決定することができる。
次に、複数の放収音装置1が一直線上に配置された配列パターン以外の例について図4,5を参照して説明する。
(L字型配列の場合)
図4は、L字型の配列パターンの説明図である。図4(A)は、配列端部の放収音装置が収音側放収音装置になった場合を示し、図4(B)は、L字型屈曲部近傍の放収音装置が収音側放収音装置になった場合を示す。
配列パターン情報には、配列パターンと、当該配列パターン内の収音側放収音装置1の位置情報に基づいた放音側放収音装置1毎の放音指向性とを記憶する。すなわち、配列パターン情報は、配列パターン毎に、収音側放収音装置1と放音側放収音装置1との位置関係に基づいた放音側放収音装置1の放音指向性を記憶する。
図4に示すように、放収音装置1a〜1cが一直線上に配置され、放収音装置1cが放収音装置1dと垂直に配置され、放収音装置1d,1eが一直線上に配置される。すなわち、複数の放収音装置1a〜1eは、L字型に配置される。各放収音装置1の周囲には、ユーザ2が在席する。
図4(A)に示すように、ユーザ2aが発言すると、収音側放収音装置1aは、ユーザ2aの発言を収音し、音声信号を生成する。収音側放収音装置1aは、放音側放収音装置1b〜1eに音声信号とコントロール情報と同期信号とを送信する。そして、放音側放収音装置1b〜1eは、自装置内に記憶した配置パターン情報を参照して、自装置の識別番号と受信したコントロール情報とに基づいて放音指向性を決定し、受信した同期信号に基づいて同期処理を行い放音する。この場合、放音側放収音装置1b〜1eは、自装置位置を基準にして収音側放収音装置1a側から放音されているように放音指向性制御する。
図4(B)に示すように、ユーザ2dが発言すると、収音側放収音装置1cは、ユーザ2dの発言を収音し、音声信号を生成する。放音側放収音装置1a,1b,1d,1eに音声信号とコントロール情報と同期信号とを送信する。そして、放音側放収音装置1a,1b,1d,1eは、自装置内に記憶した配置パターン情報を参照して、自装置の識別番号と受信したコントロール情報とに基づいて、放音指向性を決定し、受信した同期信号に基づいて同期処理を行い放音する。この場合、放音側放収音装置1a,1b,1eは、自装置位置を基準にして収音側放収音装置1c側から放音されているように放音指向性制御する。放音側放収音装置1dは、自装置位置を基準にして収音側放収音装置1cと反対側のみ放音し、収音側放収音装置1c側は放音しない。これは、収音側放収音装置1cと放音側放収音装置1dとの間が略90度に屈曲していることで、収音側放収音装置1cと放音側放収音装置1dとが直線的に近い位置にあり、放音側放収音装置1dの収音側放収音装置1c側のユーザ2lにはユーザ2dの発声音が直接聞こえやすいからである。
(コの字型配列の場合)
図5は、コの字型の配列パターンの説明図である。図5(A)は配列端部の放収音装置が収音側放収音装置になった場合を示し、図5(B)は配列中央の放収音装置が収音側放収音装置になった場合を示す。
図5に示すように、放収音装置1a,1bが一直線上に配置され、放収音装置1cが放収音装置1b,1dと垂直に配置され、放収音装置1d,1eが一直線上に配置される。すなわち、複数の放収音装置1a〜1eは、コの字型に配置される。各放収音装置1の周囲には、ユーザ2が在席する。
図5(A)に示すように、ユーザ2aが発言すると、収音側放収音装置1aは、ユーザ2aの発言を収音し、音声信号を生成する。収音側放収音装置1aは、放音側放収音装置1b〜1eに音声信号とコントロール情報と同期信号とを送信する。そして、放音側放収音装置1b〜1eは、自装置内に記憶した配置パターン情報を参照して、自装置の識別番号と受信したコントロール情報とに基づいて、放音指向性を決定し、受信した同期信号に基づいて同期処理を行い放音する。この場合、放音側放収音装置1b〜1eは、自装置位置を基準にして収音側放収音装置1a側から放音されているように放音指向性制御する。
なお、収音側放収音装置1aと放音側放収音装置1eとの距離が近い場合は、放音側放収音装置1eは、自装置位置を基準にして収音側放収音装置1aと反対側のみ放音し、収音側放収音装置1a側は放音しない。これは、コの字型配列パターンにより、放音側放収音装置1eの収音側放収音装置1a側のユーザ2nがユーザ2aの発声音を直接聞き取ることができるような位置関係にあるからである。また、収音側放収音装置1aが放音側放収音装置1eの放音した音声信号を収音しないようにするためである。
図5(B)に示すように、ユーザ2dが発言すると、収音側放収音装置1cは、ユーザ2dの発言を収音し、音声信号を生成する。収音側放収音装置1cは、放音側放収音装置1a,1b,1d,1eに音声信号とコントロール情報と同期信号とを送信する。そして、放音側放収音装置1a,1b,1d,1eは、自装置内に記憶した配置パターン情報を参照して、自装置の識別番号と受信したコントロール情報とに基づいて、放音指向性を決定し、受信した同期信号に基づいて同期処理を行い放音する。この場合、放音側放収音装置1a,1eは、自装置位置を基準にして収音側放収音装置1c側から放音されているように放音指向性制御する。放音側放収音装置1b,1dは、自装置位置を基準にして収音側放収音装置1cの反対側のみ放音し、収音側放収音装置1c側は放音しない。これは、コの字型配列パターンにより、放音側放収音装置1b,1dの収音側放収音装置1c側のユーザ2j,2lがユーザ2dの発声音を直接聞き取ることができるような位置関係にあるからである。
以上のように、放音側放収音装置1は、配列パターン情報と、コントロール情報に含まれる収音側放収音装置1の識別番号と、自装置の識別番号とに基づいて、放音指向性を決定する。放音側放収音装置1は、自装置位置を基準にして収音側放収音装置1側から放音されているように放音指向性制御する。これにより、収音側放収音装置1は、自装置が生成した音声信号を収音しないので、ハウリングを防ぐことができる。
なお、上述の説明では、一つの収音側放収音装置で一つの音声信号を出力する場合について説明したが、複数の放収音装置が収音側放収音装置として機能する場合、すなわち複数の音声信号が同時に生成、伝送される場合でも、上述の構成および処理を利用することができる。
複数の放収音装置が収音側放収音装置として機能する場合、各収音側放収音装置は、自装置で収音した音声信号は放音せず、他装置で収音された音声信号(伝送ラインを介して入力された音声信号)に関しては上述の放音側放収音装置として機能する。すなわち、伝送ラインを介して音声信号を入力すると、入力した音声信号の生成元である他の放収音装置と自装置との位置関係に応じて放音指向性制御を行う。
一方、収音を行っていない放収音装置、すなわち、上述の放音側放収音装置は、伝送ラインを介して入力される複数の音声信号のそれぞれについて上述の放音指向性制御を行う。すなわち、入力される複数の音声信号の生成元であるそれぞれの放収音装置と自装置との位置関係を個別に判断する。放音側放収音装置は、それぞれの収音側放収音装置からの音声信号毎に個別に放音指向性を設定し、これら複数の放収音指向性を組み合わせた指向性を実現する放音音声信号を生成して放音する。
なお、収音側放収音装置も、伝送ラインに接続する他の複数の放収音装置から音声信号を入力すれば、直前に説明した複数の音声信号を入力した放音側放収音装置と同様の放音処理を行う。
このような構成および処理を行うことで、話者が複数で、それぞれ異なる放収音装置で収音したとしても、それぞれの収音側放収音装置から各話者の音声が放音されるようにすることができる。この際、各収音側放収音装置には、それぞれの収音に基づく他装置からの放音音声が回り込まないので、全ての収音側放収音装置でハウリングを防止することができる。
なお、一つの放収音装置で複数の話者の音声を収音することもできる。この場合、収音ビーム選択部は、予め設定した有音検出閾値以上の収音ビーム信号を選択して、個別にエコーキャンセルする。そして、エコーキャンセルした各収音ビーム信号を合成して、出力する。これは、一つの放収音装置で収音される複数の話者は、他の放収音装置の放音範囲に在席する会議者にとっては、略同じ方向とみなすことができるので、各話者の音声を合成して出力しても、あまり違和感を与えないからである。
次に、上述の拡声システムを外部ネットワークに接続した場合について、図6を参照して説明する。図6は、外部ネットワークに接続する拡声システムすなわち音声通信機能付き拡声システムの説明図である。
図6に示すように、音声通信機能付き拡声システムは、複数の放収音装置1が、一直線上に伝送ラインを介して接続された上述の拡声システムと、該拡声システム内の放収音装置1aに対してネットワーク3を介して接続される音声通信装置、例えば遠隔地の音声通信装置等とにより構成される。
拡声システム内の放収音装置1a〜1eは、上述のように放収音を行う。すなわち、収音側放収音装置1aが収音した音声信号を伝送ラインで接続された各放収音装置1b〜1eが受信すると、各放音側放収音装置1b〜1eは、自装置の識別番号と受信したコントロール情報とに基づいて、放音指向性を決定する。放音側放収音装置1b〜1eは、自装置を基準として収音側放収音装置1a側から放音されているように放音指向性制御する(図6の破線)。
また、放収音装置1aは、ネットワーク3を介して音声信号を受信すると、コントロール情報として、ネットワーク3を介して接続される遠隔地の音声通信装置からの音声信号である旨を登録する。放収音装置1aは、この拡声システム外音声信号と、当該拡声システム外音声信号である旨を示すコントロール情報とを関連付けして、拡声システム内の他の放収音装置1b〜1eへ送信する。この拡声システム内の各放収音装置1b〜1eに対する送信処理とともに、放収音装置1aはネットワーク3を介して受信した音声信号を放音する。拡声システム内の他の放収音装置1b〜1eは、音声信号を受信すると、コントロール情報を参照して拡声システム外音声信号であると判断する。各放収音装置1b〜1eは、拡声システム外音声信号に対する放音指向性パターンを予め記憶しており、当該指向性パターンに準じて拡声システム外音声信号を放音するか、コントロール情報に含まれる話者方位情報に基づいて拡声システム外音声信号を放音する。
一方、拡声システム内の各放収音装置1は、音声信号を生成すると、コントロール情報と同期信号とともに、放収音装置1aに送信する。放収音装置1aは、伝送ラインを介して音声信号等を受け付けると、ネットワーク3を介して遠隔地の音声通信装置へ、拡声システム内からの音声信号を送信する。
このような構成とすることで、拡声システム内の音声を拡声するとともに外部へ送信し、拡声システム外の音声を受信して拡声システム内で放音することもできる。すなわち、拡声システムと音声通信システムとの双方を同時に実現することができる。
ところで、この拡声システム外音声信号の放音指向性パターンは、例えば、拡声システム内で収音された音声に対する全ての放音指向性パターンとは異なる指向性で設定される。具体例として、拡声システム内の音声には必ず何らかの指向性が設定されるので、拡声システム外音声信号に対しては特定方向に強い指向性を持たせない、無指向性に設定する(図6の実線)。このように、ネットワーク3経由の音声信号を、拡声システム内の音声信号と異なる指向性パターン、例えば無指向性で放音することで、拡声システム内外の音声、すなわち同室内の音声とネットワーク3経由の他拠点からの音声とをユーザが識別しやすくなる。
なお、本実施形態では、5台の放収音装置1を用いて、拡声システムを構成するとしたが、複数台の放収音装置1を用いて、拡声システムを構成すればよい。
また、本実施形態では、複数の放収音装置1の配列パターンとして、一直線上、L字型、コの字型を例に挙げて説明したが、これに限らず、どのような配列パターンでもよい。配列パターン情報に、収音側放収音装置1の位置に応じて、各放音側放収音装置1の放音指向性を登録することで、どのような配列パターンにも対応することができる。
1(1a〜1e)−放収音装置,2(2a〜2n)−ユーザ,3−ネットワーク,10−制御部,11−入出力コネクタ,12−通信制御部,13−放音指向性制御部,14−D/Aコンバータ,15,16−アンプ,17−A/Dコンバータ,19−収音ビーム選択部,20−エコーキャンセラ,121−連結検出部,122−PLL,181,182−収音ビーム生成部,201−適応型フィルタ,202−ポストプロセッサ,H1〜H5−識別番号,MA−マイクアレイ,MB−ビーム信号,SPA−スピーカアレイ