図1は本発明の第1の実施の形態に係るインクジェット方式の印刷装置1の構成を示す図である。印刷装置1は、印刷用紙9上に複数の色成分の画像を重ねて記録する画像記録装置である。印刷装置1の本体12は、インクの微小液滴を印刷用紙9に向けて吐出するヘッド21、ヘッド21を図1中のX方向へと印刷用紙9に沿って移動するヘッド移動機構22、ヘッド21の下方にてX方向に垂直なY方向へと印刷用紙9を移動させる紙送り機構3、並びに、ヘッド21、ヘッド移動機構22および紙送り機構3に接続される本体制御部4を備え、本体制御部4には、各種演算処理を行うCPUや各種情報を記憶するメモリ等を有するコンピュータ11が接続される。印刷装置1では、本体12がコンピュータ11からの信号を受けて印刷用紙9上に網点画像(ハーフトーン画像)を印刷する。なお、印刷用紙9以外にフィルム等が印刷装置1における印刷媒体とされてもよい。
紙送り機構3は、図示省略のモータに接続された2つのベルトローラ31、および、2つのベルトローラ31の間に掛けられたベルト32を有する。印刷用紙9は(−Y)側のベルトローラ31の上方に設けられたローラ33を介してベルト32上へと導かれて保持され、ベルト32と共にヘッド21の下方を通過して(+Y)側へと移動する。
ヘッド移動機構22には、X方向に細長い環状に設けられたタイミングベルト222が設けられ、モータ221がタイミングベルト222を往復移動することにより、印刷用紙9の送り方向(図1中のY方向であり、以下、「走査方向」ともいう。)に垂直かつ印刷用紙9に沿う方向(図1中のX方向であり、印刷用紙9の幅に対応する方向であるため、以下、「幅方向」という。)にヘッド21が滑らかに移動する。
ヘッド21には、複数のモジュールがY方向に配列されており、各モジュールは複数の色のインクのうち一の色のインクが吐出可能とされる。図2に示すようにモジュールには、それぞれがインクの微小液滴を印刷用紙9に向けて(図1中の(−Z)方向に)吐出する複数の吐出口231(例えば、14400個の吐出口231)が形成され、複数の吐出口231は印刷用紙9に平行な面(XY平面に平行な面)上において幅方向に一定のピッチ(例えば、180dpi(dot per inch)に相当する0.14ミリメートル(mm)のピッチ)にて配列される。実際には、各吐出口231に対して設けられる圧電素子を駆動することにより、吐出口231からインクの微小液滴が吐出される。印刷装置1では、複数の吐出口231は幅方向に関して印刷用紙9上の印刷領域の全体に亘って(すなわち、印刷用紙9の有効印刷領域以上の範囲にて)設けられる。なお、印刷装置1では、一列に並ぶ複数の吐出口231を吐出口列として、走査方向に複数の吐出口列が配列されてもよく、この場合、幅方向に関して、一の吐出口列にて互いに隣接する2つの吐出口231の間に、他の吐出口列のそれぞれの1つの吐出口が配置され、印刷用紙9上において各吐出口列における吐出口のピッチ以下のピッチにて幅方向に一列に並ぶ複数のドットの形成が可能とされる。
印刷装置1における非印刷時には、ヘッド移動機構22によりヘッド21は所定の退避位置に配置され、退避位置において複数の吐出口231が蓋部材にて閉塞され、吐出口近傍のインクが乾燥して吐出口231が詰まることが防止される。本実施の形態では、説明の便宜上、ヘッド21がブラック、シアン、マゼンタおよびイエローのインクを吐出するものとするが、もちろん、印刷装置1はライトシアン等の他の色成分のインクも吐出するものであってよい。
コンピュータ11は、図3に示すように、各種演算処理を行うCPU101、基本プログラムを記憶するROM102および各種情報を記憶するRAM103をバスラインに接続した一般的なコンピュータシステムの構成となっている。バスラインにはさらに、網点化(ハーフトーン化)されるカラーの画像(すなわち、各画素が複数の色成分の画素値を有する画像であり、以下、「元画像」という。)のデータを記憶する画像メモリ104、情報記憶を行う固定ディスク105、各種情報の表示を行うディスプレイ106、操作者からの入力を受け付けるキーボード107aおよびマウス107b、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体90から情報の読み取りを行ったり記録媒体90に情報の書き込みを行う読取/書込装置108、並びに、本体制御部4と通信を行う通信部109が、適宜、インターフェイス(I/F)を介する等して接続される。
コンピュータ11には、事前に読取/書込装置108を介して記録媒体90からプログラム900が読み出され、固定ディスク105に記憶される。そして、プログラム900がRAM103にコピーされるとともにCPU101がRAM103内のプログラムに従って演算処理を実行することにより(すなわち、コンピュータがプログラムを実行することにより)、コンピュータ11が、多階調の元画像の網点化に用いられる閾値マトリクス(ディザマトリクスとも呼ばれる。)を生成する閾値マトリクス生成装置としての処理を行う。閾値マトリクスおよび画像メモリ104に記憶されているカラーの元画像のデータは通信部109を介して本体制御部4に転送される。
図4は、印刷装置1の機能構成を示すブロック図であり、図4中の演算部5の要素グループ設定部51、点灯/消灯順序決定部52および閾値決定部53がコンピュータ11により実現される機能である。また、本体制御部4は、カラーの元画像のデータを記憶する画像メモリ41、複数の色成分の閾値マトリクスをそれぞれ記憶するメモリである複数のマトリクス記憶部42(SPM(Screen Pattern Memory)とも呼ばれる。)、多階調の元画像と閾値マトリクスとを色成分毎に比較する比較器43(すなわち、網点化回路)、印刷用紙9のヘッド21に対する相対移動を制御する移動制御部45、および、印刷用紙9の相対移動に同期してヘッド21の複数の吐出口231からのインクの吐出を制御する吐出制御部44を備える。なお、演算部5の機能は専用の電気的回路により実現されてもよく、部分的に専用の電気的回路が用いられてもよい。
次に、印刷装置1が印刷を行う動作について図5を参照しつつ説明する。印刷装置1にて印刷が行われる際には、まず、実際の印刷に用いられる閾値マトリクスがコンピュータ11から本体制御部4に出力され(予め出力されていてもよい。)、マトリクス記憶部42に記憶されて準備される(ステップS11)。また、コンピュータ11から本体制御部4にカラーの元画像も出力されて画像メモリ41にて記憶される。なお、以下の説明ではブラック、シアン、マゼンタおよびイエローの4つの色に対してそれぞれ準備される4つの閾値マトリクスのうち一の色用の閾値マトリクスのみについて着目しているが、他の色用の閾値マトリクスについても同様となる。
図6は、閾値マトリクス81および元画像70を抽象的に示す図である。閾値マトリクス81では、幅方向に対応する行方向(図6中にてx方向として示す。)、および、走査方向に対応する列方向(図6中にてy方向として示す。)に複数の要素が配列されており、元画像70においても幅方向に対応する方向(以下、閾値マトリクス81と同様に「行方向」と呼ぶ。)および走査方向に対応する方向(以下、閾値マトリクス81と同様に「列方向」と呼ぶ。)に複数の画素が配列されている(後述の網点画像において同様)。なお、閾値マトリクスを生成する処理については後述する。以下の説明では、特に言及する場合を除き、元画像は0〜255までの階調レベルにて表現されるものとする。
続いて、画像データ生成部である図4の比較器43では、各色成分に関して画像メモリ41にて記憶される元画像70と、マトリクス記憶部42にて記憶される閾値マトリクス81とを比較することにより、元画像70が網点化され(すなわち、網掛け処理が行われ)、印刷装置1における印刷にて用いられる網点画像データ(以下、単に「網点画像」とも呼ぶ。)が生成される(ステップS12)。
ここで、元画像70の網点化について説明する。元画像70の網点化の際には、図6に示すように元画像70を同一の大きさの多数の領域に分割して網点化の単位となる繰り返し領域71が設定される。各マトリクス記憶部42は1つの繰り返し領域71に相当する記憶領域を有し、この記憶領域の各アドレス(座標)に閾値が設定されることにより閾値マトリクス81を記憶している。そして、概念的には元画像70の各繰り返し領域71と各色成分の閾値マトリクス81とを重ね合わせ、繰り返し領域71の各画素の当該色成分の画素値と閾値マトリクス81の対応する閾値とが比較されることにより、印刷用紙9上のその画素の位置に描画(当該色のドットの形成)を行うか否かが決定される。
実際には、図4の比較器43が有するアドレス発生器からのアドレス信号に基づいて画像メモリ41から元画像70の1つの画素の画素値が色成分毎に読み出される。一方、アドレス発生器では元画像70中の当該画素に相当する繰り返し領域71中の位置を示すアドレス信号も生成され、各色成分の閾値マトリクス81における1つの閾値が特定されてマトリクス記憶部42から読み出される。そして、画像メモリ41からの画素値とマトリクス記憶部42からの閾値とが比較器43にて色成分毎に比較されることにより、各色成分の2値の網点画像(出力画像)におけるその画素の位置(アドレス)の画素値が決定される。したがって、一の色成分に着目した場合に、図6に示す多階調の元画像70において、画素値が閾値マトリクス81の対応する閾値よりも大きい位置には、例えば、画素値「1」が付与され(すなわち、ドットが置かれ)、残りの画素には画素値「0」が付与される(すなわち、ドットは置かれない)。このようにして、本体制御部4では、元画像70が閾値マトリクス81を用いて網点化され、後述する印刷時における複数の吐出口231からのインクの吐出のON/OFFを示す網点画像データが生成される。
図1の印刷装置1では、元画像70において最初に印刷される部分の網点画像データが各色に対して生成されると、移動制御部45が、紙送り機構3を駆動することにより印刷用紙9の走査方向への移動が開始され(ステップS13)、上記網点化処理(網点画像データの生成処理)に並行して、印刷用紙9の移動に同期しつつヘッド21の各モジュールに含まれる複数の吐出口231からのインクの吐出が吐出制御部44により制御される(ステップS14)。
ここで、網点画像は印刷用紙9上に印刷される画像であるため、網点画像の複数の画素は印刷用紙9上に配列して設定されていると捉えることができる。また、網点画像の行方向の位置の数(すなわち、行方向に並ぶ画素数)はヘッド21の各モジュールにおける複数の吐出口231と同数(または、複数の吐出口231の数よりも少ない)とされ、行方向の複数の位置は複数の吐出口231にそれぞれ対応付けられる。吐出制御部44ではヘッド21の印刷用紙9に対する相対移動に並行して、各吐出口231の印刷用紙9上の吐出位置に対応する網点画像の画素値が「1」である場合には当該吐出位置にドットが形成され、網点画像の画素値が「0」である場合には当該吐出位置にはドットは形成されない。このようにして、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエローのそれぞれに関して、複数の吐出口231にそれぞれ対応する印刷用紙9上の複数の吐出位置を印刷用紙9に対して相対的に移動しつつ、複数の吐出口231の印刷用紙9上の吐出位置に対応する網点画像の画素値に従って、複数の吐出口231からのインクの吐出が制御される。
印刷装置1では、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエローに関して、網点画像を生成しつつ当該網点画像を印刷用紙9上に記録する動作が並行して行われ、印刷用紙9上にカラーの元画像を表現するカラーの網点画像(印刷画像)が印刷される。印刷用紙9上に網点画像の全体が印刷されると、印刷用紙9の移動が停止し、印刷装置1における印刷動作が終了する(ステップS15)。
次に、印刷装置1における印刷時に用いられる閾値マトリクス81を生成する処理について図7を参照しつつ説明する。
演算部5の要素グループ設定部51では、まず、一の色の閾値マトリクスを記憶する領域であって、幅方向に対応する行方向および走査方向に対応する列方向にて規定されるマトリクス領域が設定される。
図8は、マトリクス領域80を簡略化して示す図である。後述の処理により閾値マトリクス81が設定されるマトリクス領域80では、図8に示すように、直交する行方向(図8中のx方向)および列方向(図8中のy方向)に複数の要素820(図8中にて破線の矩形にて示す。)が同一のピッチ(以下、「要素ピッチ」という。)にて配列されている。続いて、行方向および列方向に対して45度だけ傾斜した傾斜方向(本実施の形態では、y軸をxy平面に垂直な軸を中心として反時計回りに45度だけ回転させた方向)に伸びる複数の線状領域が、当該傾斜方向に垂直な方向(以下、「配列方向」という。)に隙間なく配列される。このとき、複数の線状領域は配列方向の幅が互いに異なる2種類の線状領域831,832を含んでおり、幅が要素820の対角線の長さと同じである一の種類の線状領域831(図8中にて平行斜線を付して示す領域)と、幅が線状領域831の幅の半分である他の種類の線状領域832(図8中にて平行斜線を付していない領域)とは配列方向に交互に配列される(すなわち、線状領域831および線状領域832のそれぞれは周期的に配列される。)。そして、中心が複数の線状領域831に含まれる複数の要素820の集合が第1要素グループとされ、中心が複数の線状領域832に含まれる複数の要素820の集合が第2要素グループとされる。なお、各線状領域831,832の傾斜方向に沿うエッジに着目すると、複数の線状領域831,832は傾斜方向に沿う複数の直線を傾斜方向に垂直な配列方向に配列してマトリクス領域80を分割することにより得られる領域と捉えることができる。
図9は、第1要素グループ841および第2要素グループ842を示す図であり、図9では第1要素グループ841に含まれる要素(図9中にて平行斜線を付す要素)に符号821を付し、第2要素グループ842に含まれる要素(図9中にて平行斜線を付していない白い要素)に符号822を付している。図9のマトリクス領域80では、列方向の各位置にて行方向に並ぶ複数の要素を要素行82aとして、各要素行82aにおいて、第2要素グループ842に含まれる1つの要素822は行方向に要素ピッチの3倍(すなわち、3個の要素分の距離)の周期にて配置される。換言すれば、各要素行82aにおいて、第1要素グループ841に含まれるとともに行方向に連続する2つの要素821が要素ピッチの3倍の周期にて配置される。また、行方向の各位置にて列方向に並ぶ複数の要素を要素列82bとして、各要素列82bにおいても要素行82aと同様にして第1要素グループ841の要素821および第2要素グループ842の要素822が配置される。マトリクス領域80では、行方向および列方向のそれぞれの要素数が3の倍数とされるため、各要素行82a(または、各要素列82b)では、当該要素行82aに含まれる要素の2/3が第1要素グループ841の要素821とされ、1/3が第2要素グループ842の要素822とされる。
以上のように、要素グループ設定部51では、マトリクス領域80においてそれぞれが傾斜方向に伸びる複数の線状領域831,832を配列方向に隙間なく配列し、複数の線状領域831,832を配列方向に沿って複数の要素グループ841,842に順次割り当てることにより、マトリクス領域80に複数の要素グループ841,842が設定される(ステップS21)。
ここで、後述するように、第1要素グループ841に含まれる要素821には、元画像70の全階調範囲を2つに分割した2つの階調範囲のうちハイライト側の階調範囲内の階調レベルの変化に対応する閾値が付与され、第2要素グループ842に含まれる要素822には、当該2つの階調範囲のうちシャドウ側の階調範囲内の階調レベルの変化に対応する閾値が付与される。また、既述のように、第1要素グループ841はマトリクス領域80内の2/3の要素を含み、第2要素グループ842はマトリクス領域80内の1/3の要素を含む。したがって、第1要素グループ841は0〜67%の階調範囲に対応するハイライト領域と表現することができ、第2要素グループ842は67〜100%の階調範囲に対応するシャドウ領域と表現することができる。
点灯/消灯順序決定部52では、第1および第2要素グループ841,842のうち第1要素グループ841が処理対象の要素グループ(以下、「対象要素グループ」という。)として特定され(ステップS22)、対象要素グループ841において任意の1つの要素821が特定される(ステップS23)。ここでは、最も(−x)側かつ最も(+y)側の要素821aが特定されたものとし、図9にクロスハッチングを付して示すように、この要素821aにドットが配置される。なお、第1要素グループ841に対する処理では、要素821へのドットの配置は、当該要素821が特定済みの要素であることを示している。
続いて、対象要素グループ841において、各要素821に対して所定の評価関数を用いて評価値が算出されることにより、既存のドットから最も離れた1つの要素821が特定され、当該要素821に新たなドットが追加される(すなわち、当該要素821が特定済み要素に変更される。)(ステップS24)。このとき、元画像70の網点化時の閾値マトリクス81の反復適用が考慮されることにより(図6参照)、要素821aは図9中に太い破線にて示す中央のマトリクス領域80内に存在するもの以外に、当該マトリクス領域80の8近傍に想定されるマトリクス領域80(図9中に二点鎖線にて示す。)内にも繰り返し存在するものとされる(図9では、中央のマトリクス領域80の8近傍に想定されるマトリクス領域80内の要素821aを内部にクロスハッチングを付す二点鎖線の矩形にて示している。)。また、後述するように、ステップS24の処理は複数回繰り返されて複数の新たなドットが対象要素グループ841の要素821に追加される。n番目に新たなドットが配置される要素821を求める際におけるマトリクス領域80内の座標(xd,yd)の各要素821の評価値Edn(xd,yd)は、中央のマトリクス領域80およびこのマトリクス領域80の8近傍に想定されるマトリクス領域80の番号をrとし、r番目のマトリクス領域80内のm番目に配置されたドットのx方向およびy方向の位置をそれぞれxdmrおよびydmrとして、数1により求められる。
実際には、数1の評価関数において、r番目のマトリクス領域80内のm番目に配置されたドットのx方向の位置xdmrは、中央のマトリクス領域80内における対応するドットのx方向の位置に、マトリクス領域80の番号に応じて(すなわち、中央のマトリクス領域80に対する相対位置に応じて)、マトリクス領域80のx方向の大きさを加算または減算することにより、もしくは、当該位置と同位置として求められ、y方向の位置ydmrは、中央のマトリクス領域80内における対応するドットのy方向の位置に、マトリクス領域80の番号に応じてマトリクス領域80のy方向の大きさを加算または減算することにより、もしくは、当該位置と同位置として求められる。
対象要素グループ841の各要素821に対して評価値が算出されると、評価値が最小となる要素821が特定され、この要素821に新たなドットが追加される。ここで、数1の評価関数では、評価値として、中央のマトリクス領域80およびこのマトリクス領域80の8近傍に想定されるマトリクス領域80における既存のドットと、中央のマトリクス領域80内の各要素821との間の距離の二乗の逆数の和が求められるため、評価値が最小となる要素821は、閾値マトリクス81の反復適用を前提として既存のドット(特定済み要素)から最も離れたものとなる。
このようにして、点灯/消灯順序決定部52では、対象要素グループ841の各要素821に対して数1を用いて評価値を算出し、評価値が最小となる要素821に新たなドットを追加するステップS24の処理が、数1におけるnがマトリクス領域80の対象要素グループ841の要素数よりも1だけ少ない値となるまで繰り返される(ステップS25)。これにより、対象要素グループ841に対応する0〜67%の階調範囲内の階調レベルの増加(すなわち、0%から67%に向かう階調レベルの変化)に伴ってドットを追加する要素の順序を示す点灯順序が決定される。
上記ステップS23〜S25の処理により第1要素グループ841に対する点灯順序が決定されると、マトリクス領域80内の全ての要素グループが対象要素グループとされたか否かが確認される。ここでは、第2要素グループ842は未だ対象要素グループとされていないため、第2要素グループ842が対象要素グループとして特定される(ステップS26,S22)。そして、対象要素グループ842において、任意の1つの要素822が特定され、当該要素822を除く全ての要素822にドットが配置される(ステップS23)。なお、本処理は、全ての要素822にドットを配置した後、任意の1つの要素822のドットを削除するものと捉えることができ、第2要素グループ842に対する処理では、要素822からのドットの削除は、当該要素822が特定済みの要素であることを示している。
続いて、対象要素グループ842において各要素822に対して評価値が算出されることにより、ドットが不存在の要素822から最も離れた1つの要素822のドットが削除される(すなわち、当該要素822が特定済み要素に変更される。)(ステップS24)。このとき、対象要素グループ842の各要素822に対する評価値の算出は、第1要素グループ841における点灯順序を決定する際に用いられる数1と同様の式が用いられる。ただし、数1におけるxdmrおよびydmrは、それぞれr番目のマトリクス領域80内のm番目にドットが削除された要素822のx方向およびy方向の位置とされる。
対象要素グループ842の各要素822に対して評価値が算出されると、評価値が最小となる要素822が特定され、この要素822のドットが削除される。このようにして、点灯/消灯順序決定部52では、対象要素グループ842の各要素822に対して数1を用いて評価値を算出し、評価値が最小となる要素822のドットを削除するステップS24の処理が、数1におけるnがマトリクス領域80の対象要素グループ842の要素数よりも1だけ少ない値となるまで繰り返される(ステップS25)。これにより、対象要素グループ842に対応する67〜100%の階調範囲内の階調レベルの減小(すなわち、100%から67%に向かう階調レベルの変化)に伴ってドットを削除する要素の順序を示す消灯順序が決定される。なお、第1要素グループ841および第2要素グループ842に対してそれぞれ消灯順序および点灯順序が決定されてもよい(以下同様)。また、第2要素グループ842が0〜33%の階調範囲に対応し、第1要素グループ841が33〜100%の階調範囲に対応していてもよい。
第2要素グループ842に対する消灯順序が決定されると、マトリクス領域80内の全ての要素グループ841,842が対象要素グループとされたことが確認され、閾値決定部53に第1要素グループ841の点灯順序および第2要素グループ842の消灯順序が出力される(ステップS26)。続いて、第2要素グループ842において消灯順序の番号が大きい要素822から順に、第1要素グループ841における点灯順序の最大値に1を加算した値から1ずつ増加する整数の番号が割り当てられ、これにより、マトリクス領域80の各要素に、元画像70の階調レベルの増加(全範囲に亘る増加)に従ってこの位置に対応する網点画像中の画素にドットを形成する順序(マトリクス領域80がK行L列にて構成される場合に、0〜(K×L−1)までの番号が付与された要素の並びを示すものであり、以下、「最終点灯順序」という。)が決定される。そして、元画像が0〜255までの256(8bit)階調にて表現される場合には、最終点灯順序を0〜254の範囲に変換して得られる番号が閾値として各要素に割り当てられる(すなわち、255階調に圧縮される。)。このようにして、複数の要素グループ841,842に対する点灯順序または消灯順序に従ってマトリクス領域80内の各要素の閾値を決定することにより、閾値マトリクス81が完成する(ステップS27)。
各要素の閾値が決定されて一の色成分の閾値マトリクス81が完成すると、閾値マトリクス81をx方向に反転させた閾値マトリクス(すなわち、y方向に平行かつx方向の中央を通る直線を基準として反転させた閾値マトリクス(以下同様))、閾値マトリクス81をy方向に反転させた閾値マトリクス、並びに、閾値マトリクス81をx方向に反転させた後、さらにy方向に反転させた閾値マトリクスが、閾値マトリクス81以外の残りの3つの色成分の閾値マトリクスとして取得される(後述の第2の実施の形態において同様)。なお、図7では他の色成分の閾値マトリクスの生成に係る処理の図示を省略している。そして、各色成分の閾値マトリクスは、コンピュータ11の通信部109を介して本体制御部4の対応するマトリクス記憶部42に記憶され、印刷装置1における元画像70の印刷に利用される。
なお、閾値マトリクス81のデータは、読取/書込装置108にて(コンピュータを含む)電子装置読み取り/書き込み可能な記録媒体90に記録され、記録媒体90が本体制御部4にて読み取られることによりマトリクス記憶部42に記憶されてもよく、さらに、他の装置にて記録媒体90を読み取ることにより、当該装置にて閾値マトリクス81を用いて網点画像が生成されてもよい。
図10は網点画像を示す図である。図10の網点画像は、階調レベル(画素の値)が列方向に一定であり、行方向に0から255まで線形に変化する画像(いわゆる、グラデーション画像)を閾値マトリクス81を用いて網点化したものであり、図10の網点画像では、マトリクス領域80における傾斜方向に対応する方向の方向性が生じていることが判る。また、中間の階調範囲におけるクラスタ(すなわち、行方向または列方向に互いに接合したドットの集合)の密度が比較的高くなっており、ザラツキ感もほとんど発生していない。
以上に説明したように、印刷装置1では、マトリクス領域80において、それぞれが行方向および列方向に対して傾斜した傾斜方向に伸びる複数の線状領域831であって第1要素グループ841に対応するものと、同様に傾斜方向に伸びる複数の線状領域832であって第2要素グループ842に対応するものとを、傾斜方向に垂直な方向に隙間なく交互に配列することにより、マトリクス領域80に第1および第2要素グループ841,842が設定される。そして、各要素グループ841,842にて、任意の1つの要素を特定した後、特定された要素から最遠の要素を特定する処理を繰り返すことにより、各要素グループ841,842に対応する階調範囲内の階調レベルの増加に伴って当該要素グループ内にてドットを追加する要素の順序を示す点灯順序、または、階調範囲内の階調レベルの減小に伴って当該要素グループ内にてドットを削除する要素の順序を示す消灯順序が取得される。これにより、網点画像において行方向および列方向に対して45度だけ傾斜した方向の方向性を生じさせるとともにザラツキ感を少なくし(粒状性を少なくし)、さらに、中間の階調範囲におけるクラスタの密度を高くして、細い線や文字等の再現性を高くすることが可能なFMスクリーニング用の閾値マトリクス81を生成することができる。
ところで、網点画像において列方向に対応する走査方向の方向性を生じさせる閾値マトリクスが印刷に用いられると、図11.Aに簡略化して示すように、印刷用紙9上に印刷される印刷画像において、ドット91(図11.A中に平行斜線を付す矩形にて示す。後述の図11.Bおよび図12において同様。)が走査方向(Y方向)に並ぶとともに、幅方向(X方向)に間隔を空けて形成され易くなる。この場合に、仮に、ヘッド21において複数の吐出口231からの微小液滴の吐出方向等がばらついていると(すなわち、幅方向に関するドットの記録位置精度が低いと)、幅方向に隣接するドット91の間隔が大きくなる部分(図11.A中にて符号92を付して示す部分)が発生し、印刷画像において走査方向に伸びる縦スジが発生してしまう。
また、網点画像において行方向に対応する幅方向の方向性を生じさせる閾値マトリクスが印刷に用いられると、印刷用紙9上に印刷される印刷画像において、ドット91が幅方向に並ぶとともに走査方向に間隔を空けて形成され易くなる。この場合に、仮に、ヘッド21において複数の吐出口231からの微小液滴の吐出速度等がばらついていると(すなわち、走査方向に関するドットの記録位置精度が低いと)、図11.Bに示すように、印刷画像においてザラツキ感が生じてしまう。
これに対し、本実施の形態にて生成される閾値マトリクス81では、網点画像において行方向および列方向に対して傾斜した方向の方向性を生じさせることにより、図12に示すように、ドット91が幅方向および走査方向に対して傾斜した方向に並び易くなる。その結果、幅方向に関するドットの記録位置精度が低い場合でも印刷画像中に縦スジが発生することを抑制し、また、走査方向に関するドットの記録位置精度が低い場合でも印刷画像においてザラツキ感が発生することを抑制することが可能となる。
また、マトリクス領域80において、複数の線状領域831,832は様々な態様にて設定されてよい。例えば、図13に示す例では(ただし、図13ではマトリクス領域80の一部のみを図示している。後述の図14ないし図16、並びに、図18ないし図23において同様。)、複数の線状領域831,832(図13中にて太い線にて境界を示す。後述の図14、図15、図18ないし図20、並びに、図22において同様。)の配列方向の幅が図8に示すものよりも太くされる。実際には、線状領域831の幅は要素の対角線の長さの1.5倍とされ、線状領域832の幅は要素の対角線の長さとされ、各要素行82aにおいて、連続する3つの要素821(図13中にて平行斜線を付して示す要素)が第1要素グループ841に含まれ、これらの要素821に隣接するとともに連続する2つの要素822(図13中の白い要素)が第2要素グループ842に含まれる(行方向の端部近傍を除く。)。また、各要素列82bにおいても、連続する3つの要素821が第1要素グループ841に含まれ、これらの要素821に隣接するとともに連続する2つの要素822が第2要素グループ842に含まれる(列方向の端部近傍を除く。)。なお、第1要素グループ841は0〜60%の階調範囲に対応し、第2要素グループ842は60〜100%の階調範囲に対応する。
このように、図13に示すマトリクス領域80では、各要素行82aおよび各要素列82bのそれぞれにおいて、第1要素グループ841に含まれるとともに連続する3つの要素821、および、第2要素グループ842に含まれるとともに連続する2つの要素822が、行方向または列方向に要素ピッチの5倍の周期にて配置される。図13に示すマトリクス領域80から導かれる閾値マトリクス81では、図9に示すマトリクス領域80から導かれる閾値マトリクス81に比べて、中間の階調範囲(特に、ドットを追加する領域が第1要素グループ841から第2要素グループ842に切り替わる60%の階調レベル近傍)において網点画像におけるクラスタの密度は僅かに低くなるが、仮に、印刷装置1において一のドットの周囲に他のドットが形成されない場合の記録安定性が低い場合には、網点画像を比較的再現性よく印刷することが可能となる。
また、印刷装置1において走査方向に関するドットの記録位置精度が高い場合には、図14に示すように、列方向に対して45度よりも大きくかつ90度よりも小さい角度(およそ63度)だけ傾斜した傾斜方向に伸びる複数の線状領域831,832が設定されてもよい。図14に示すマトリクス領域80では、第1要素グループ841に対応する線状領域831の配列方向の幅は、第2要素グループ842に対応する線状領域832の2倍とされ、各要素行82aにおいて、第1要素グループ841に含まれるとともに連続する4つの要素821(図14中にて平行斜線を付して示す要素)、および、第2要素グループ842に含まれるとともに連続する2つの要素822(図14中の白い要素)が行方向に要素ピッチの6倍の周期にて配置される。また、各要素列82bにおいて、第1要素グループ841に含まれるとともに連続する2つの要素821、および、第2要素グループ842に含まれる1つの要素822が列方向に要素ピッチの3倍の周期にて配置される。なお、第1要素グループ841は0〜67%の階調範囲に対応し、第2要素グループ842は67〜100%の階調範囲に対応する。
図14に示すマトリクス領域80から導かれる閾値マトリクス81では、印刷画像において走査方向に対して45度よりも大きい角度をなす方向の方向性を生じさせることにより、仮に幅方向に関するドットの記録位置精度が低い場合であっても、図9に示すマトリクス領域80から導かれる閾値マトリクス81に比べて、印刷画像中に縦スジが発生することをさらに抑制することが可能となる。
また、図9、図13および図14の例では、マトリクス領域80に2つの要素グループ841,842のみを設定することにより、閾値マトリクス81を容易に生成することが実現されるが、マトリクス領域80に3つの要素グループが設定されて閾値マトリクス81が生成されてもよい。例えば、図15に示す例では、行方向および列方向に対して45度だけ傾斜した傾斜方向に伸びる複数の線状領域831,832,833が傾斜方向に垂直な配列方向に隙間なく配列される。複数の線状領域831〜833では、配列方向の幅が要素の対角線の長さの半分とされ、複数の線状領域831〜833は配列方向に沿って第1要素グループ、第2要素グループおよび第3要素グループに順次割り当てられる。図15では、第1要素グループに割り当てられる線状領域831に幅が狭い平行斜線を付し、第2要素グループに割り当てられる線状領域832に幅が広い平行斜線を付し、第3要素グループに割り当てられる線状領域833には平行斜線を付していない(後述の図16中の要素821,822,823において同様)。そして、図15および図16に示すように、中心が線状領域831に含まれる要素821は第1要素グループ841に属するものとされ、中心が線状領域832に含まれる要素822は第2要素グループ842に属するものとされ、中心が線状領域833に含まれる要素823は第3要素グループ843に属するものとされる。
図16に示すマトリクス領域80では、各要素行82aにおいて、第1要素グループ841に含まれる要素821、第2要素グループ842に含まれる要素822、第3要素グループ843に含まれる要素823が行方向に順に並び、各要素列82bにおいても、第1要素グループ841の要素821、第2要素グループ842の要素822、第3要素グループ843の要素823が列方向に順に並ぶ。したがって、第1要素グループ841は0〜33%の階調範囲に対応し、第2要素グループ842は33〜67%の階調範囲に対応し、第3要素グループ843は67〜100%の階調範囲に対応し、第1ないし第3要素グループ841〜843はそれぞれハイライト領域、中間領域、シャドウ領域と表現することができる。
そして、各要素グループ841〜843において、図7のステップS23〜S25の処理を行うことにより点灯順序または消灯順序が決定され、その後、第1ないし第3要素グループ841〜843に対する点灯順序または消灯順序に従って、マトリクス領域80内の各要素821〜823の閾値が決定される。本実施の形態では、第1および第2要素グループ841,842では点灯順序が決定され、第3要素グループ843では消灯順序が決定される。
図16に示すマトリクス領域80から導かれる閾値マトリクス81を用いて、階調レベル(画素の値)が列方向に一定であり、行方向に0から255まで線形に変化する画像(いわゆる、グラデーション画像)を網点化すると図17に示す網点画像が得られる。図17の網点画像では、マトリクス領域80における傾斜方向に対応する方向の方向性が生じており、中間の階調範囲においてその方向性が、図10に示す網点画像に比べて顕著となっている。
また、マトリクス領域80において元画像70の全階調範囲を4つに分割した4個の階調範囲にそれぞれ対応する4個の要素グループが設定されてもよい。以上のように、閾値マトリクス81を生成する際には、全階調範囲を複数に分割した複数の階調範囲が予め設定され、マトリクス領域80において傾斜方向に垂直な配列方向に隙間なく配列される複数の線状領域を配列方向に沿って当該複数の階調範囲に対応する複数の要素グループに順次割り当てることにより、それぞれが対応する階調範囲内の階調レベルの増加または減小に伴って追加または削除されるドットの存在範囲を規定する複数の要素グループがマトリクス領域80内に設定され、網点画像において傾斜方向に対応する方向の方向性を生じさせることが可能となる。
また、図9、図13、図14および図16に示すマトリクス領域80では、各要素列82bにおいて、一の要素グループに含まれる要素、または、一の要素グループに含まれるとともに列方向に連続する複数の要素が要素ピッチの3倍以上の周期にて配置され、各要素行82aにおいても同様とされるが、各要素列82bおよび各要素行82aの一方のみにおいて、一の要素グループ841,842に含まれる要素821,822が要素ピッチの2倍の周期にて配置されてもよい(すなわち、1つの要素821と1つの要素822とが交互に配置される。)。
例えば、図18に示すように、各要素行82aにおいて、第1要素グループ841に含まれるとともに連続する2つの要素821(図18中にて平行斜線を付して示す要素。後述の図19、図21、図23においても第1要素グループに含まれる要素に平行斜線を付す。)、および、第2要素グループ842に含まれるとともに連続する2つの要素822(図18中にて平行斜線を付していない白い要素。後述の図19、図21、図23においても第2要素グループに含まれる要素には平行斜線を付していない。)が要素ピッチの4倍の周期にて配置され、各要素列82bにおいて、第1要素グループ841に含まれる1つの要素821、および、第2要素グループ842に含まれる1つの要素822が要素ピッチの2倍の周期にて配置されるように、列方向に対しておよそ63度だけ傾斜するとともに同一の幅の線状領域831,832がマトリクス領域80に設定される。図18に示すマトリクス領域80から導かれる閾値マトリクス81では、網点画像において列方向の方向性が生じることがあるが、通常、傾斜方向に対応する方向の方向性がより強いため、印刷画像において縦スジやザラツキ感が発生することが抑制される。ただし、網点画像において行方向および列方向の方向性が生じることを確実に抑制するには、各要素列82bおよび各要素行82aのそれぞれにおいて、一の要素グループに含まれる要素、または、一の要素グループに含まれるとともに連続する複数の要素が要素ピッチの3倍以上の周期にて配置されることが好ましい。
一方で、図19に示すように、仮に、線状領域831,832が行方向および列方向に対して45度だけ傾斜する傾斜方向とされ、線状領域831,832の幅が共に要素の対角線の半分とされる場合には、各要素行82aおよび各要素列82bのそれぞれにおいて、第1要素グループ841に含まれる1つの要素821、および、第2要素グループ842に含まれる1つの要素822が要素ピッチの2倍の周期にて配置されてしまい、マトリクス領域80a内における第1要素グループ841の要素821および第2要素グループ842の要素822の配列は、市松模様状(チェッカーフラッグ状)になってしまう。この場合に、図19に示すマトリクス領域80aから導かれる閾値マトリクスでは、網点画像においてクラスタの密度が高くなり過ぎて傾斜方向に対応する方向の方向性が弱くなるため(または、行方向および列方向の方向性が生じて傾斜方向に対応する方向の方向性が希釈されるため)、印刷画像において縦スジやザラツキ感が発生することがある。したがって、要素グループ設定部51では、市松模様状となる第1および第2要素グループ841,842の要素821,822の配列は除外される。
ところで、図7を参照して説明した上記処理例では、ステップS21〜S27の処理により生成される一の色成分の閾値マトリクス81から他の色成分の閾値マトリクスが導かれるが、当該一の色成分のマトリクス領域80とは異なるサイズ(すなわち、x方向の要素数および/またはy方向の要素数)の他の色成分のマトリクス領域において、上記ステップS21〜S27の処理と同様の処理を実行することにより、当該一の色成分の閾値マトリクス81とは異なるサイズとなる当該他の色成分の閾値マトリクスが生成されてもよい。また、複数の色成分のマトリクス領域(同一のサイズであってもよい。)において、各要素グループに対応する線状領域の配列方向の周期(実際には、線状領域の配列方向の幅に依存する。)や、互いに対応する要素行において当該要素グループに属する要素が配置される行方向の位置を示す位相、あるいは、線状領域の傾斜方向(すなわち、方向性)を異ならせることにより、マトリクス領域における要素グループのパターン(すなわち、各要素グループに属する要素の配置)が互いに異なる複数の色成分の閾値マトリクスが生成されてもよい。上記のいずれの場合においても、閾値マトリクスにおける閾値の配列が色成分毎に異なることにより、印刷画像において複数の色成分の網点画像の干渉によるモアレや色ムラの発生を抑制することができる。
次に、印刷装置1における印刷に係る機構に合わせて修正された閾値マトリクスを生成する手法について述べる。ここでは、ヘッド21において吐出口231が配列される幅方向に対応する行方向(x方向)のマトリクス領域80の要素数がαであるものとする。演算部5では、まず、図7のステップS21の処理を行うことにより、マトリクス領域80において複数の要素グループ841,842が設定される。
図7のステップS22の処理にて、最もハイライト側の階調レベルを含む階調範囲に対応する第1要素グループ841が対象要素グループとして特定されると、ステップS23の処理にて対象要素グループ841の任意の1つの要素821にドットが配置される。続いて、ステップS24の1回目の処理では、ドットが既に配置されている要素821とx方向の同位置に存在する複数の要素821(すなわち、同一の要素列82bに含まれる複数の要素821)がドットの追加対象から除外された上で、閾値マトリクス81の反復適用を考慮しつつ既存のドットから最も離れた要素821に新たなドットが追加される。
また、ステップS24の2回目の処理では、ステップS23の処理にて選択された要素821、および、ステップS24の1回目の処理にて選択された要素821のそれぞれと同一の要素列82bに含まれる複数の要素821がドットの追加対象から除外された上で、(閾値マトリクス81の反復適用を考慮しつつ)既存のドットから最も離れた要素821に新たなドットが追加される。さらに、ステップS24の3回目の処理では、ステップS23の処理にて選択された要素821、並びに、ステップS24の1および2回目の処理にてそれぞれ選択された要素821と同一の要素列82bに含まれる複数の要素821がドットの追加対象から除外された上で既存のドットから最も離れた要素821に新たなドットが追加される。このように、対象要素グループ841において既存のドットと同一の要素列82bに含まれる要素821をドットの追加対象から除外しつつ、既存のドットから最も離れた要素821に新たなドットが追加される。したがって、ステップS24の(α−1)回目の処理が完了した際には、各要素列82bがドットが配置された1つの要素821を含むこととなる。そして、ステップS24のα回目の処理以降では、このような条件が取り除かれ、既存のドットから最も離れた要素821に新たなドットが追加される。
ここで、インクジェット方式の一般的な印刷装置では、印刷時に(すなわち、退避位置から離れた状態で)各吐出口においてインクを吐出しない時間(すなわち、インクの吐出後、次のインクの吐出が行われるまでの時間)が長くなると、吐出口近傍のインクが硬化して吐出口が詰まる場合がある。特に、元画像においてハイライト側の階調レベルを有する画素が多く存在する場合には、インクを吐出しない時間が長くなりやすくなる。
これに対し、上記閾値マトリクス生成処理では、最もハイライト側の階調レベルを含む階調範囲に対応する対象要素グループ841において、各要素列82bの1つの要素821に、点灯順序における1ないしαの番号のいずれかを割り当てる条件を設けた上で、当該条件に従いつつステップS24の処理を繰り返すことにより、対象要素グループ841に対応する階調範囲内の階調レベルにおける点灯順序が決定される。これにより、複数の吐出口231からインクの微小液滴を吐出することにより印刷用紙9上に画像を印刷する印刷装置1において、実際の印刷の際に各吐出口231がインクを吐出しない時間が長くなる可能性が低減され、印刷時に吐出口231近傍のインクが硬化して吐出口231が詰まることを抑制することができる。なお、ステップS24の処理の際に設定される条件は、他の条件であってもよい。本手法は、後述の第2の実施の形態に係る閾値マトリクスの生成処理において用いられてもよい。
また、印刷装置1における走査方向および幅方向の解像度(すなわち、印刷用紙9上における単位長さ当たりのドット数)が異なる場合に(例えば、走査方向の解像度が720dpi(dot per inch)、幅方向の解像度が360dpiである場合等)、図7のステップS24の処理において用いられる評価関数が解像度の相違を考慮したものとされてもよい。具体的には、x方向に対応する幅方向の解像度がResXであり、y方向に対応する走査方向の解像度がResYである場合に、図7のステップS24の処理においてn番目に新たなドットが配置される要素821を求める際におけるマトリクス領域80内の座標(xd,yd)の各要素821の評価値Edn(xd,yd)は、中央のマトリクス領域80およびこのマトリクス領域80の8近傍に想定されるマトリクス領域80(図9参照)の番号をrとし、r番目のマトリクス領域内のm番目に配置されたドットのx方向およびy方向の位置をそれぞれxdmrおよびydmrとして、数2により求められる。
数2では、Y方向の解像度がX方向の解像度よりも低い場合には、各要素821と既存のドットとの間のy方向の距離の評価値に対する影響がx方向の距離よりも高くなり、各要素821において、既存のドットとの間のy方向の距離が大きいものほど、点灯順序における番号が小さくなり易くなる。また、X方向の解像度がY方向の解像度よりも低い場合には、各要素821と既存のドットとの間のx方向の距離の評価値に対する影響がy方向の距離よりも高くなり、各要素821において、既存のドットとの間のx方向の距離が大きいものほど、点灯順序における番号が小さくなり易くなる。また、消灯順序を決定する際にn番目にドットが削除される要素822を求める場合にも同様の評価関数が用いられる。
このように、図7のステップS24の処理において、特定済み要素から最も離れた要素を特定する際に(すなわち、既存のドットから最も離れた要素、または、ドットが不存在の要素から最も離れた要素を特定する際に)、行方向の距離成分と列方向の距離成分との重み付けを主走査方向および副走査方向の解像度に従って相違させることにより、印刷装置1にて印刷される画像において低解像度となる方向にドットの配置が間延びすることを抑制することができ、好ましい印刷画像を印刷することができる。本手法は、後述の第2の実施の形態に係る閾値マトリクスの生成処理において用いられてもよい。
また、印刷装置1における走査方向および幅方向の解像度に対して、実際に印刷用紙9上に形成されるドットのサイズが大きい場合に、閾値マトリクス81においてドットの非描画を示す閾値が付与された要素(すなわち、吐出口231からのインクの吐出を休止させる要素であり、以下、「休止要素」という。)が設けられてもよい。例えば、走査方向および幅方向の解像度が共に720dpiである印刷装置1では、印刷用紙9上に形成されるドットは走査方向および幅方向に35マイクロメートル(μm)のピッチにて配列されるが、この場合に、直径が70μmのドットが印刷用紙9上に形成されると、小さい文字等を印刷する際に、文字が潰れやすくなる。このような場合には、図7のステップS27の処理において、最終点灯順序における番号が大きい複数の要素、すなわち、最もシャドウ側の階調レベルを含む階調範囲に対応する要素グループにて点灯順序における番号が大きい、または、消灯順序における番号が小さい複数の要素が休止要素とされ、元画像の全階調範囲の最大の階調レベル(すなわち、255)を示す値が要素値(閾値)として付与される。
既述のように、網点画像の生成時には、元画像の画素の画素値が閾値マトリクス81の対応する要素の閾値よりも大きい場合にのみ、当該画素に対応する網点画像中の位置にインクの吐出のONを示す値が付与される。したがって、閾値マトリクス81では休止要素に元画像の最大の階調レベルを示す値が付与されることにより、網点画像において休止要素に対応する画素には必ずインクの吐出のOFFを示す画素値が付与される。これにより、網点画像において文字の潰れ等が発生することが抑制される。
実際には、休止要素の個数を複数通りに変更した閾値マトリクスを準備し、各閾値マトリクスを用いて文字を含む元画像を網点化した網点画像を印刷用紙9上にテスト印刷し、文字の潰れと印刷画像における元画像の再現性とを評価して好ましい閾値マトリクスが決定され、当該閾値マトリクスが実際の印刷に用いる最終的な閾値マトリクス81とされる。すなわち、閾値マトリクス81において休止要素とされる要素の個数はテスト印刷を行うことにより決定される。閾値マトリクス81に休止要素を設ける本手法は、後述の第2の実施の形態に係る閾値マトリクスの生成処理において用いられてもよい。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る閾値マトリクスの生成処理について図7を参照しつつ説明する。まず、図4の要素グループ設定部51では、閾値マトリクスが生成される領域として行方向および列方向に複数の要素が配列されたマトリクス領域において、行方向および列方向に対して傾斜するとともに互いに交差する複数のストライプ領域が設定される。
図20は、マトリクス領域80の一部を示す図である。本実施の形態では、y軸をxy平面に垂直な軸を中心として反時計回りに45度だけ回転させた方向、および、時計回りに45度だけ回転させた方向が、それぞれ第1傾斜方向および第2傾斜方向として定められており、それぞれが第1傾斜方向に伸びる複数の線状領域851(図20中にて幅が狭い平行斜線を付す。)の集合である第1ストライプ領域861、および、それぞれが第2傾斜方向に伸びる複数の線状領域852(図20中にて幅が広い平行斜線を付す。)の集合である第2ストライプ領域862がマトリクス領域80内に設定される。
第1ストライプ領域861に含まれる複数の線状領域851は第1傾斜方向に垂直な配列方向に一定の隙間を空けて配列され、複数の線状領域851において配列方向の幅は同一とされる。また、第2ストライプ領域862に含まれる複数の線状領域852は第2傾斜方向に垂直な配列方向に一定の隙間を空けて配列され、複数の線状領域852において配列方向の幅は同一とされる。図20の例では、第1ストライプ領域861の線状領域851の幅と第2ストライプ領域862の線状領域852の幅とは同じとされ、第1ストライプ領域861における線状領域851の第1傾斜方向に垂直な方向に関するピッチは、当該線状領域851の幅よりも長く、かつ、第2ストライプ領域862における線状領域852の第2傾斜方向に垂直な方向に関するピッチよりも短くされる。なお、各線状領域851,852は、当該線状領域851,852が通過する各要素行82a(または要素列82b)に含まれるいずれかの要素820の中心を包含している。そして、中心が第1ストライプ領域861および第2ストライプ領域862に含まれる要素820の集合が第1要素グループとされ、残りの領域に含まれる要素820の集合(すなわち、残りの要素820の集合)が第2要素グループとされる。
図21は、第1要素グループ871および第2要素グループ872を示す図であり、図21では第1要素グループ871に含まれる要素(図21中にて平行斜線を付す要素)に符号821を付し、第2要素グループ872に含まれる要素(図21中にて平行斜線を付していない白い要素)に符号822を付している。図21のマトリクス領域80では、各要素行82aにおいて、当該要素行82aに含まれる要素の1/2が第1要素グループ871の要素821とされ、1/2が第2要素グループ872の要素822とされる(各要素列82bにおいて同様)。したがって、第1要素グループ871は全階調範囲を半分に分割したうちの一方の0〜50%の階調範囲に対応し、第2要素グループ872は他方の50〜100%の階調範囲に対応する。
以上のように、マトリクス領域80において、行方向および列方向に対して傾斜するとともに互いに交差する複数のストライプ領域861,862を設定し、複数のストライプ領域861,862を2つの要素グループ871,872の一方に割り当て、残りの領域を他方に割り当てることにより、第1要素グループ871および第2要素グループ872がマトリクス領域80に設定される(ステップS21)。
続いて、点灯/消灯順序決定部52では、第1の実施の形態と同様にして、各要素グループ871,872において、任意の1つの要素を特定し、その後、元画像70の網点化時の閾値マトリクス81の反復適用を考慮しつつ、特定済み要素から最も離れた要素を特定済み要素に変更する処理を繰り返すことにより、各要素グループ871,872に対応する階調範囲内の階調レベルの増加に伴って当該要素グループ871,872内にてドットを追加する要素の順序を示す点灯順序、または、階調範囲内の階調レベルの減小に伴って当該要素グループ871,872内にてドットを削除する要素の順序を示す消灯順序が決定される(ステップS22〜S26)。本実施の形態では、第1要素グループ871に対して点灯順序が決定され、第2要素グループ872に対して消灯順序が決定される。そして、閾値決定部53では、2つの要素グループ871,872に対する点灯順序または消灯順序に従って、マトリクス領域80内の各要素の閾値が決定され、閾値マトリクス81が完成する(ステップS27)。
以上に説明したように、印刷装置1では、マトリクス領域80において、行方向および列方向に対して傾斜するとともに互いに交差する複数のストライプ領域861,862を設定し、複数のストライプ領域861,862に包含される要素821の集合が第1要素グループ871とされ、残りの要素822の集合が第2要素グループ872とされる。そして、各要素グループ871,872にて、任意の1つの要素を特定した後、特定された要素から最遠の要素を特定する処理を繰り返すことにより、各要素グループ871,872における点灯順序または消灯順序が取得され、点灯順序および消灯順序に従ってマトリクス領域80内の各要素の閾値が決定される。これにより、網点画像において行方向および列方向に対して傾斜した方向(第1および第2傾斜方向)の方向性を生じさせるとともにザラツキ感を少なくし、さらに、細い線や文字等の再現性を高くすることが可能な閾値マトリクス81を生成することができる。また、印刷装置1の幅方向に関するドットの記録位置精度が低い場合に印刷画像中に発生する走査方向に伸びる縦スジ(図11.A参照)、および、印刷装置1の走査方向に関するドットの記録位置精度が低い場合に発生する印刷画像のザラツキ感(図11.B参照)を抑制することができる。
また、マトリクス領域80において、複数のストライプ領域は様々な態様にて設定することが可能である。例えば、第1ストライプ領域861および第2ストライプ領域862において、線状領域851,852の幅や傾斜角度が異なっていてもよく、網点画像において行方向および列方向に対して傾斜した方向の方向性が確保される範囲内では、マトリクス領域80に3以上のストライプ領域が設定されてもよい。
ところで、図22に示すように、仮に、図20に示す第1ストライプ領域861をx方向に反転させたもの(すなわち、y方向に平行かつx方向の中央を通る直線を基準として反転させたストライプ領域)を第2ストライプ領域862a(すなわち、図22中にて幅の広い平行斜線を付して示す線状領域852の集合)として、第1ストライプ領域861(図22中にて幅の狭い平行斜線を付して示す。)に加えてマトリクス領域80bに設定する場合、図23に示すように、第1および第2要素グループ871,872の要素821,822の配列は、図19における市松模様状の要素821,822の配列の3行3列の部分(図23では、符号K1を付す太い線の矩形にて示す部分)をタイリングしたもの(すなわち、x方向およびy方向に隙間なく繰り返し配列したもの)となる。図23に示すマトリクス領域80bから導かれる閾値マトリクスでは、網点画像において行方向および列方向の方向性が生じて傾斜方向に対応する方向の方向性が希釈されるため、印刷画像において縦スジやザラツキ感が発生することがある。
また、図19に示す市松模様状の要素821,822の配列は、複数の線状領域831の集合を1つのストライプ領域と捉えて、このストライプ領域と、このストライプ領域をx方向に反転させつつy方向に1要素分だけ移動させたストライプ領域(ただし、このストライプ領域は、線状領域831に含まれる要素のみを包含するものとなる。)とをマトリクス領域80に設定することによっても形成され、既述のように、この場合も、網点画像において傾斜方向に対応する方向の方向性が弱くなってしまう。したがって、複数のストライプ領域を設定する要素グループ設定部51では、市松模様状となる、または、市松模様の部分をタイリングしたパターンとなる要素グループ871,872の要素821,822の配列は除外される。
ところで、本実施の形態における閾値マトリクス81の生成処理においても、第1の実施の形態と同様に、ステップS21〜S27の処理により生成される一の色成分の閾値マトリクス81から他の色成分の閾値マトリクスが導かれてもよく、また、当該一の色成分のマトリクス領域80とは異なるサイズの他の色成分のマトリクス領域において、上記ステップS21〜S27の処理と同様の処理を実行することにより、当該一の色成分の閾値マトリクス81とは異なるサイズとなる当該他の色成分の閾値マトリクスが生成されてもよい。さらに、複数の色成分のマトリクス領域(同一のサイズであってもよい。)において、各ストライプ領域における線状領域の配列方向の周期や、互いに対応する要素行において当該ストライプ領域に属する要素が配置される行方向の位置を示す位相、あるいは、線状領域の傾斜方向(すなわち、方向性)を異ならせることにより、マトリクス領域における要素グループのパターンが互いに異なる複数の色成分の閾値マトリクスが生成されてもよい。上記のいずれの場合においても、閾値マトリクスにおける閾値の配列が色成分毎に異なることにより、印刷画像において複数の色成分の網点画像の干渉によるモアレや色ムラの発生を抑制することができる。
次に、印刷装置1の他の動作例について説明する。本動作例に係る印刷装置1のヘッド21の各吐出口は、異なる量の微小液滴を吐出して印刷用紙9上に複数サイズのドットの形成が可能とされ、ここでは、最も小さなSサイズのドット、Sサイズよりも大きなMサイズのドット、および、Mサイズよりも大きなLサイズのドットのいずれかが形成可能となっている。
本動作例に係る印刷装置1において実際の印刷に用いられる閾値マトリクスの各閾値は、Sサイズのドット形成の要否を決定するためのサブ閾値、Mサイズのドット形成の要否を決定するためのサブ閾値、および、Lサイズのドット形成の要否を決定するためのサブ閾値の集合とされる。ただし、図4のマトリクス記憶部42では、閾値マトリクスが、Sサイズ用のサブ閾値の2次元配列であるサブ閾値マトリクス、Mサイズ用のサブ閾値の2次元配列であるサブ閾値マトリクス、および、Lサイズ用のサブ閾値の2次元配列であるサブ閾値マトリクスに分解されて記憶されている。サブ閾値マトリクスにおいて互いに対応するサブ閾値はSサイズ用のサブ閾値マトリクスにて最も小さく、Lサイズ用のサブ閾値マトリクスにて最も大きくなっている(ただし、上記の休止要素が設けられる場合には、休止要素では同一のサブ閾値となっている。)。なお、サブ閾値マトリクスについては後述する。
印刷装置1において各色成分の網点画像を生成する際には、まず、元画像の各画素の画素値とSサイズ用のサブ閾値マトリクスの対応するサブ閾値とが比較される。実際には、1画素ずつ比較されるが、概念的には、元画像において、画素値がサブ閾値マトリクスの対応するサブ閾値よりも大きい位置の画素には、例えば、画素値「1」が付与され、残りの画素には画素値「0」が付与されて仮の出力画像が生成される。続いて、元画像の各画素の画素値とMサイズ用のサブ閾値マトリクスの対応するサブ閾値とが比較され、画素値がサブ閾値マトリクスの対応するサブ閾値よりも大きい位置の出力画像中の画素は、画素値が「2」に変更され、残りの画素の画素値はそのままとされて、仮の出力画像が更新される。そして、元画像の各画素の画素値とLサイズ用のサブ閾値マトリクスの対応するサブ閾値とが比較され、画素値がサブ閾値マトリクスの対応するサブ閾値よりも大きい位置の出力画像中の画素は、画素値が「3」に変更され、残りの画素の画素値はそのままとされて、元画像の画素値と閾値マトリクスの対応する閾値との比較結果である4値の出力画像が網点画像として取得される。後述するように、網点画像における画素値「1」、「2」、「3」は、対応する吐出口により形成される印刷用紙9上のドットのサイズを示すものであるため、実質的には、当該網点画像もドットの有無(および、ドットの大きさ)により表現される画像となっている。
なお、既述のように、閾値マトリクスの(休止要素以外の)要素において互いに対応するサブ閾値はSサイズ用のサブ閾値マトリクスにて最も小さく、Lサイズ用のサブ閾値マトリクスにて最も大きくなっている。したがって、元画像とSサイズ用のサブ閾値マトリクスとの比較において、画素値がサブ閾値マトリクスの対応するサブ閾値以下となる元画像の画素は、Mサイズ用のサブ閾値マトリクスおよびLサイズ用のサブ閾値マトリクスのそれぞれの対応するサブ閾値との比較においても必ず当該サブ閾値以下となり、画素値がMサイズ用のサブ閾値マトリクスの対応するサブ閾値以下となる元画像の画素は、Lサイズ用のサブ閾値マトリクスの対応するサブ閾値との比較においても必ず当該サブ閾値以下となるため、このような元画像中の画素については、他のサブ閾値マトリクスとの比較が省略されてもよい。
印刷装置1では、各色成分に関して、上記のようにして網点画像を生成しつつ、網点画像の生成された部分を印刷する処理が行われる。網点画像を印刷する際には、吐出制御部44ではヘッド21の印刷用紙9に対する相対移動に同期して、各吐出口の印刷用紙9上の吐出位置に対応する網点画像の画素値が「1」である場合には当該吐出位置にSサイズのドットが形成され、網点画像の画素値が「2」である場合には当該吐出位置にMサイズのドットが形成され、網点画像の画素値が「3」である場合には当該吐出位置にLサイズのドットが形成され、網点画像の画素値が「0」である場合には当該吐出位置にはドットは形成されない。このようにして、ヘッド21の印刷用紙9に対する相対移動(すなわち、複数の吐出口にそれぞれ対応する印刷用紙9上の複数の吐出位置の走査)に同期して、複数の吐出口の印刷用紙9に対する吐出位置における元画像の画素値と閾値マトリクスの対応する閾値との比較結果に従って、複数の吐出口からのインクの吐出が制御され、印刷用紙9上に網点画像が印刷される。
次に、サブ閾値マトリクスの生成手法について一の色成分に着目して説明する。なお、他の色成分のサブ閾値マトリクスも同様の処理により生成される。
閾値決定部53では、第1の実施の形態、または、第2の実施の形態に係る図7のステップS21〜S27の処理により閾値マトリクス81が生成されると、(休止要素以外の)各要素の閾値を2で除した商をこの要素の新たな値(すなわち、サブ閾値)とするマトリクスがSサイズのドット形成用のサブ閾値マトリクスとして生成される。Sサイズのドット形成用のサブ閾値マトリクスでは、各要素の値は0ないし127のいずれかの値となる。続いて、Sサイズのドット形成用のサブ閾値マトリクスの各要素の値に元画像の256段階の階調レベルの25%の値64が加算されることにより、Mサイズのドット形成用のサブ閾値マトリクスが生成され、Sサイズのドット形成用のサブ閾値マトリクスの各要素の値に元画像の256段階の階調レベルの50%の値128が加算されることにより、Lサイズのドット形成用のサブ閾値マトリクスが生成される。Mサイズのドット形成用のサブ閾値マトリクスでは、各要素の値は64ないし191のいずれかとなり、Lサイズのドット形成用のサブ閾値マトリクスでは、各要素の値は128ないし255のいずれかとなる。このようにして閾値マトリクス81の各要素の閾値を変換することにより、Sサイズのドット形成用のサブ閾値マトリクス、Mサイズのドット形成用のサブ閾値マトリクス、および、Lサイズのドット形成用のサブ閾値マトリクスにそれぞれ含まれる複数のサブ閾値が生成される。
ここで、サブ閾値マトリクスの特徴について述べる。図24は、サブ閾値マトリクスの特徴を説明するための図である。図24では、仮に、各サイズのサブ閾値マトリクスのみを用いて一様な階調レベルの画像を印刷装置1にて印刷する場合に、印刷用紙9上に形成される当該サイズのドットの個数の全画素数に対する割合(以下、「ドット占有率」という。)を縦軸に示しており、この場合における画像の階調レベルを横軸に示している。また、図24ではSサイズのサブ閾値マトリクスのみを用いた場合のドット占有率を符号A1を付す破線にて示し、Mサイズのサブ閾値マトリクスのみを用いた場合のドット占有率を符号A2を付す一点鎖線にて示し、Lサイズのサブ閾値マトリクスのみを用いた場合のドット占有率を符号A3を付す実線にて示している。なお、ここでは、閾値マトリクス81は休止要素を含まないものとしている。
図24に示すように、Sサイズのサブ閾値マトリクスのみを用いた場合には、画像の階調レベルが0から128まで増加するに従ってドット占有率は0%から100%まで線形に増加し、階調レベルが128以上ではドット占有率は100%のままとなる。Mサイズのサブ閾値マトリクスのみを用いた場合には、画像の階調レベルが64以下ではドット占有率は0%となり、階調レベルが64から192まで増加するに従ってドット占有率が0%から100%まで線形に増加し、階調レベルが192以上ではドット占有率は100%のままとなる。Lサイズのサブ閾値マトリクスのみを用いた場合には、画像の階調レベルが128以下ではドット占有率は0%となり、階調レベルが128から255まで増加するに従ってドット占有率が0%からおよそ100%まで線形に増加する。
例えば、階調レベル140に注目すると、図24に示すように、Lサイズのサブ閾値マトリクスにおけるドット占有率は9%となり、Mサイズのサブ閾値マトリクスにおけるドット占有率は60%となり、Sサイズのサブ閾値マトリクスにおけるドット占有率は100%となる。ここで、既述のように、実際の印刷では同じ位置に複数のサイズのドットは形成されず、より大きいサイズのドットが優先して形成される。また、Sサイズのサブ閾値マトリクス、Mサイズのサブ閾値マトリクス、および、Lサイズのサブ閾値マトリクスにおいて、同じ位置における値(サブ閾値)は、Lサイズのサブ閾値マトリクスで最も大きくなり、Sサイズのサブ閾値マトリクスで最も小さくなるため、上記のように、各サイズのサブ閾値マトリクスのみを用いて一様な階調レベルの画像を印刷する(すなわち、Sサイズのドットのみにて形成される画像、Mサイズのドットのみにて形成される画像、および、Lサイズのドットのみにて形成される画像を印刷する)という仮定の下では、一の階調レベルにおいて、Lサイズのドットのみにて形成される画像中のドットに対して、Sサイズのドットのみにて形成される画像、および、Mサイズのドットのみにて形成される画像のそれぞれにおける同位置にもドットが必ず形成されており、Mサイズのドットのみにて形成される画像中のドットに対して、Sサイズのドットのみにて形成される画像における同位置にもドットが必ず形成される。
したがって、仮にサブ閾値マトリクスの集合を用いて一様な階調レベル140の画像を印刷装置1にて印刷する場合には、Lサイズのドット占有率は9%となり、Mサイズのドット占有率は51%((60−9)にて求められる。)となり、Sサイズのドット占有率は40%((100−60)にて求められる。)となる。実際には、元画像は濃淡(すなわち、様々な階調レベルの部位)を有し、各画素値がサブ閾値マトリクスの対応する位置のサブ閾値と比較されるため、サブ閾値の集合を各閾値とする閾値マトリクスを用いることにより、図24のグラフに従ってSサイズ、MサイズおよびLサイズのドットが確率的に形成されて印刷が行われることとなる。なお、閾値マトリクス81が休止要素を含む場合には、休止要素に対応する位置にはいずれのサイズのドットも形成されないため、ドット占有率の最大値は100%よりも小さい値となる。
以上に説明したように、本動作例に係る閾値マトリクスの生成処理では、図7のステップS21〜S27の処理により閾値が付与された閾値マトリクス81において、各要素の閾値からドットのサイズの決定に利用される複数のサブ閾値が生成される。これにより、複数サイズのドットを形成することが可能な印刷装置1にて印刷される画像において縦スジおよびザラツキ感が発生することを抑制するとともに、細い線や文字等の再現性をさらに向上することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
上記第1および第2の実施の形態にて生成される閾値マトリクス81は、印刷用紙上において幅方向に配列される複数の吐出位置にそれぞれドットを記録する複数の吐出口を有するヘッドと、印刷用紙上の複数の吐出位置を幅方向に垂直な走査方向に印刷用紙に対して相対的に移動させる走査機構とを備えるインクジェット方式の印刷装置において用いられる網点画像データの生成に特に適している。しかしながら、閾値マトリクス81は、電子写真方式の印刷装置やCTP(Computer To Plate)用の製版装置等、印刷物の作成に係る他の画像記録装置にて用いられてもよい。
例えば、電子写真方式の印刷装置では、複数の発光素子(例えば、半導体レーザや発光ダイオード(LED))を有するヘッド、および、外側面に感光体が形成される感光体ドラムが設けられる。ヘッドからの複数の光ビームがそれぞれ照射される感光体上の複数の光照射位置は、ヘッド内の回転するポリゴンミラーにより感光体ドラムの回転軸に沿う方向(走査方向)に走査し、複数の光照射位置の一度の走査により複数ライン分の画像が感光体上に記録され、複数の光照射位置は、感光体ドラムの回転により感光体ドラムの周方向に対応する幅方向に感光体に対して副走査する。印刷装置では、感光体上に静電潜像が形成され(すなわち、網点画像が記録され)、当該静電潜像がトナーにて現像された後、トナー画像が印刷用紙上に転写される(もちろん、複数の色成分のトナー画像が形成されてもよい。)。このように、感光体ドラムの感光体がヘッドからの光の照射によりドット(静電潜像の要素)が記録される対象物とされ、ドットの集合である静電潜像が記録された感光体を用いて網点画像が印刷用紙上に印刷される。
電子写真方式の印刷装置においても、元画像70と閾値マトリクス81と比較することにより生成される網点画像データを用いて印刷を行うことにより、感光体上の複数の光照射位置において、仮に幅方向における光照射位置間の間隔がばらついている場合等でも、印刷画像において走査方向に対応する方向に伸びる縦スジおよびザラツキ感が発生することが抑制されるとともに、細い線や文字等の再現性を向上することが実現される。
製版装置では、光源および光変調素子が設けられたヘッド、および、刷版が巻き付けられたドラムが設けられる。ヘッドからの複数の光ビームがそれぞれ照射される刷版上の複数の光照射位置は、ドラムの回転軸に沿う幅方向に配列され、ドラムの回転によりドラムの周方向(走査方向)に刷版に対して相対的に走査することにより、刷版上にドットの集合による網点画像が記録されて、印刷に用いられる刷版が作製される(もちろん、他の色成分の刷版が作製されてもよい。)。このように、製版装置は、網点画像が記録される刷版を対象物として、対象物に画像を記録する画像記録装置となっており、これらの刷版を用いて他の装置にて印刷を行うことにより、印刷用紙上に網点画像が印刷される。
製版装置においても、元画像70と閾値マトリクス81と比較することにより生成される網点画像データを用いて画像の記録を行うことにより、刷版上の複数の光照射位置において、仮に幅方向における光照射位置間の間隔がばらついている場合等でも、当該刷版を用いた印刷画像において、走査方向に対応する方向に伸びる縦スジおよびザラツキ感が発生することが抑制されるとともに、細い線や文字等の再現性を向上することが実現される。
以上のように、印刷対象である対象物または印刷に用いられる対象物上において、所定の走査方向に垂直な幅方向に配列される複数のドット記録位置にそれぞれドットを記録する複数のドット出力要素を有するヘッドと、対象物上の複数のドット記録位置を走査方向に対象物に対して相対的に移動させる走査機構とを備える様々な画像記録装置において、上記第1および第2の実施の形態にて生成される閾値マトリクス81と元画像70とを比較することにより網点画像データを生成し、対象物上の複数のドット記録位置の対象物に対する相対移動に並行して、網点画像データに基づいて複数のドット出力要素の出力制御を行って対象物上に網点画像を記録することにより、印刷画像において走査方向に伸びる縦スジおよびザラツキ感が発生することを抑制し、さらに、細い線や文字等の再現性を高くすることが可能となる。
図7のステップS24における特定済み要素から最も離れた要素の特定は様々な手法にて実現することが可能であり、例えば、対象要素グループの各要素に対して最寄りの特定済み要素との間の距離を求め、当該距離が最大となる要素が特定済み要素から最も離れた要素として特定されてもよい。
印刷装置では、ヘッド21が印刷用紙9に対して主走査および副走査することにより、印刷が行われてもよい。例えば、幅方向に関して複数の吐出口が配列される幅が印刷用紙9の印刷領域よりも狭くされるとともに、ヘッド21を走査方向および幅方向に印刷用紙9に対して相対的に移動する走査機構が設けられる印刷装置では、ヘッド21がインクを吐出しつつ走査方向に移動(主走査)し、印刷用紙9の端部へと到達した後に幅方向に所定距離だけ移動(副走査)し、その後、インクを吐出しつつ走査方向の直前の主走査とは逆向きに移動する。このように、ヘッド21が印刷用紙9に対して走査方向に主走査するとともに、主走査が完了する毎に、幅方向に間欠的に副走査することにより、(いわゆる、マルチパス方式にて)印刷用紙9の全体に画像が印刷される。
また、このようなマルチパス方式の印刷動作において、一回の主走査にて各吐出口により(仮想的に)形成されるとともに走査方向に一列に並ぶ複数のドットをドット列として、幅方向に並ぶ複数のドット列において互いに隣接するドット列の間をヘッド21の他の主走査時に補間する手法(副走査方向に関するインタレース)や、一回の主走査にて各吐出口により形成される複数のドットの互いに隣接するドット間をヘッド21の他の主走査時に補間する手法(主走査方向に関するインタレース)が用いられてもよい。ただし、印刷用紙9に画像をより高速に印刷するには、ヘッド21の各モジュールに含まれる複数の吐出口が幅方向に関して印刷用紙9上の印刷領域の全体に亘って配列され、印刷用紙9がヘッド21の下方を1回通過するのみで(すなわち、ワンパス方式にて)印刷が完了することが好ましい。
図1の印刷装置1では、紙送り機構3が走査機構として印刷用紙9上の吐出位置を印刷用紙9に対して走査方向に相対的に移動するが、ヘッド21を吐出口の配列方向に垂直な走査方向に移動する走査機構が設けられてもよい。
上記第1および第2の実施の形態では、本体制御部4により、印刷装置1にて用いられる画像データを生成する画像データ生成装置としての役割が果たされるが、画像データ生成装置としての機能は必ずしも印刷装置1の本体12と一体的に設けられる必要はなく、本体12から独立して設けられる画像データ生成装置にて最終的な網点画像データが生成され、この網点画像データがヘッド21を有する本体に入力されて印刷用紙9上に画像が印刷されてもよい。また、網点画像データは、ディスプレイ上における画像の表示等、印刷以外の他の用途に用いられてもよい。