JP4748925B2 - エピタキシャル基板、半導体積層構造及びiii族窒化物層群の転位低減方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、エピタキシャル基板、半導体積層構造及びIII族窒化物層群の転位低減方法に関し、詳しくは、フォトニックデバイス及び電子デバイスなどの半導体素子、並びにフィールドエミッタなどの素子を構成する基板として好適に用いることのできるエピタキシャル基板及び半導体積層構造、並びに前記素子を作製する際のIII族窒化物層群の転位低減方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
III族窒化物膜は、フォトニックデバイス及び電子デバイスなどの半導体素子を構成する半導体膜として用いられており、近年においては、携帯電話などに用いられる高速ICチップなどを構成する半導体膜としても注目を浴びている。また、特にAlを含むIII族窒化物膜は、フィールドエミッタへの応用材料として注目されている。
【0003】
上記のようなIII族窒化物膜は、通常MOCVD法によって形成される。具体的には、前記III族窒化物膜を形成すべき基板を、所定の反応管内に設けられたサセプタ上に設置させるとともに、このサセプタ内あるいはサセプタ外に設置された加熱機構に埋め込まれたヒータによって1000℃以上にまで加熱する。そして、前記反応管内に所定の原料ガスをキャリアガスとともに導入し、前記基板上に供給する。
【0004】
すると、前記基板上で熱化学反応が生じて、前記各原料ガスは構成元素に分解されるとともに、これら構成元素同士が互いに反応し、目的とするIII族窒化物膜が前記基板上に堆積されて製造されるものである。そして、これらのIII族窒化物膜は、半導体素子を構成した場合において設計値どおりの特性を得るべく、転位密度の低いことが要求される。
【0005】
しかしながら、III族窒化物材料の融点は相対的に高いために、前記III族窒化物材料からバルク単結晶基板を作製することは困難であった。したがって、III族窒化物膜は、例えば、サファイア単結晶基板のような異なる材料系のバルク単結晶基板上にヘテロエピタキシャル成長させることにより、作製せざるを得ない。この場合、前記バルク単結晶基板と前記III族窒化物膜との格子定数差に起因して、これら界面に比較的多量のミスフィット転位が生成され、このミスフィット転位に起因して前記III族窒化物膜中に多量の転位が導入されてしまい、その結晶品質が著しく劣化してしまっていた。
【0006】
かかる観点より、前記基板と前記III族窒化物膜との間に低温で成膜したバッファ層を挿入したり、ストライプ状のSiO2マスクなどを用いたELO技術などが開発されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述したバッファ層を用いた場合などにおいては、バッファ層自体の低結晶性に基づいた転位が前記III族窒化物膜中に生成されてしまい、前記III族窒化物膜中の転位密度を十分に低減させることができないでいた。また、従来のELO技術は材料選択性が大きく、特にAlを多量に含むIII族窒化物膜をエピタキシャル成長させることは困難であった。
【0008】
本発明は、低転位で結晶性に優れたIII族窒化物層群、特にはAl含有窒化物層群を形成することのできる、新規なエピタキシャル基板及びこれを用いた半導体積層構造を提供するとともに、形成すべきIII族窒化物層群の転位低減方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明は、
所定の基材と、
前記基材上に形成された、少なくともAlを含み、転位密度が1×1011/cm2以下であり、(002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅が200秒以下であるIII族窒化物下地層と、
前記III族窒化物下地層上に、MOCVD装置内で少なくともNH 3 を含むガスを流しながら熱処理することにより形成された、島状又は網目状の介在層と、
を具え、
前記介在層は、AlpGaqInrN(o≦p,q,r≦1,p+q+r=1)を除く窒化物からなる、ことを特徴とするエピタキシャル基板に関する。
【0010】
また、本発明は、
所定の基材上に、少なくともAlを含み、転位密度が1×1011/cm2以下であり、(002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅が200秒以下であるIII族窒化物下地層、MOCVD装置内で少なくともNH 3 を含むガスを流しながら熱処理することにより設けた島状又は網目状の、AlpGaqInrN(o≦p,q,r≦1,p+q+r=1)を除く窒化物からなる介在層を順次に形成してエピタキシャル基板を作製し、このエピタキシャル基板上に前記介在層を介してIII族窒化物層群を形成することにより、前記III族窒化物層群中の転位密度を低減させることを特徴とする、III族窒化物層群の転位低減方法に関する。
【0011】
本発明者らは、サファイア単結晶などからなる基材上に、低転位密度かつ高結晶性の、Al含有III族窒化物膜を形成すべく、長年研究を行なっている。従来においては、エピタキシャル基板を構成するバッファ層などの下地層は、基材と前記エピタキシャル基板上に形成すべきIII族窒化物膜などのIII族窒化物層群との格子定数差を補完してミスフィット転位の発生を抑制すべき、比較的低温で形成した低結晶品質のIII族窒化物から構成するのが常識であると考えられていた。
【0012】
このような低結晶品質の下地層を用いた場合、ミスフィット転位の低減に起因して、前記III族窒化物層群中の転位密度はある程度の割合で低減することができる。しかしながら、前記下地層自身の低結晶品質に起因して、前記III族窒化物層群中の転位密度を十分に低減することができないでいた。
【0013】
これに対して、本発明者らは、前記下地層をAlを比較的多量に含むIII族窒化物から構成した場合は、前記下地層の結晶性を向上させ、転位密度を低減させて結晶品質を向上させた場合においても、前記基材と前記III族窒化物層群との格子定数差が補完され、ミスフィット転位の発生が抑制されることを見出した。そして、前記下地層の高結晶品質に起因して、前記III族窒化物層群の結晶品質をも向上させることができ、転位密度のさらなる低減を実現できるとともに、結晶性の向上をも実現できることを見出したものである。
【0014】
しかしながら、上述した高結晶品質のAl含有III族窒化物下地層を設けたのみでは、特に、Al含有III族窒化物層群を上記下地層上に成長する場合には、目的とするIII族窒化物層群中の転位密度を十分に低減させることができず、その結晶品質を十分に向上させることができないでいた。かかる状況に鑑み、本発明者らは、上述したAl含有の高結晶品質の下地層を含むエピタキシャル基板に対してELO技術を適用し、形成すべきIII族窒化物層群中の転位密度をさらに低減させるようにした。
【0015】
しかしながら、前述したエピタキシャル基板上に、SiO2などからなるマスクを形成して、III族窒化物層群を形成する場合には、マスク形成のためのフォトリソ工程が必要となり、工程が煩雑になるという問題があった。また、マスクのパターンに従って、転位密度の濃淡が顕著に現れ、デバイス形成の場合の歩留まり低下の一因ともなっていた。
【0016】
このような状況に鑑みて、本発明者らはさらなる検討を実施し、上述したAl含有の高結晶品質の下地層を有するエピタキシャル基板上に、島状又は網目状の介在層を形成することを想到した。
【0017】
このような介在層は一般の薄膜形成法とMOCVD装置内での熱処理で容易に形成でき、前記下地層から伝搬してきた転位は、介在層被覆部においては、転位の伝搬が妨げられ、介在層被覆部上方に位置する部分では転位密度は著しく低減される。また、前記下地層の開口部上方においても、転位の屈曲による転位低減効果が期待される。また、前記介在層の開口部は、確率的に均一に存在するため、転位が均一に分散することができる。
【0018】
結果として、Al含有の高結晶品質の下地層と、開口部を有するB含有の介在層とからエピタキシャル基板を構成し、このエピタキシャル基板上にIII族窒化物層群を形成することにより、その転位密度を著しく低減することができ、結晶品質を向上させることができる。さらに、Al含有の高結晶品質の下地層を用いることにより、Al含有のIII族窒化物層群をクラックを発生させることなく容易に形成させることができる。
【0019】
なお、本発明の好ましい態様においては、前記介在層を、金属間化合物、AlpGaqInrN(o≦p,q,r≦1,p+q+r=1)を除く窒化物、さらには形成すべきIII族窒化物層群のバンドギャップよりも、前記介在層のバンドギャップが大きくなるような材料を用いて形成することが望ましい。特に、酸化物材料以外の材料を用いた場合は、Al含有のIII族窒化物層を成長させる際の介在層上での多結晶層を抑制できる効果を持つ。また、前記III族窒化物層群のバンドギャップよりも前記介在層のバンドギャップを大きくすることにより、短波長領域での透過率を向上させることができ、短波長領域での受発光デバイスの効率を改善することもできる。
【0020】
また、「III族窒化物層群」とは単独のIII族窒化物層又は複数のIII族窒化物層が複数積層されてなる多層膜構造などを総称したものであり、作製すべき半導体素子の種類などに応じて適当な構成を採る。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、発明の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のエピタキシャル基板の構成を示す図である。図1に示すエピタキシャル基板10は、基材1と、この基材1上に形成されたIII族窒化物下地層2及びIII族窒化物介在層3を含んでいる。介在層3は島状構造を呈し、各島状構造部分間において下地層2が露出した開口部4を有している。
【0022】
下地層2はAlを含んでいることが必要であり、その含有量は全III族元素に対して50原子%以上であることが好ましく、さらには下地層2をAlN(全III族元素に対して100原子%)から構成することが好ましい。これによって、下地層2の結晶品質を以下に示すように向上させた場合においても、基材1との格子定数差を補完することができ、窒化物層3さらにはその上に形成すべきIII族窒化物層群を、その結晶品質を高度に維持しながらエピタキシャル成長させることができる。
【0023】
なお、下地層2におけるAlは、膜厚全体を通じて均一に含有させても良いが、膜厚方向において組成勾配を有するように含有させても良い。後者の場合、例えばAl組成を基材1側から窒化物層3側に減少するようにすることによって、以下に示すように、基材1を特にサファイア単結晶などのAl含有単結晶から構成し、形成すべきIII族窒化物層群をGa系窒化物層から構成した場合などにおいて、これらの格子定数差をより効果的に補完できるようになる。したがって、ミスフィット転位などの発生をより効果的に低減できるようになり、下地層2及びIII族窒化物層群の結晶品質をより向上させることができるようになる。
【0024】
なお、下地層2は、Alの他に、Ga及びInなどのIII族元素、B、Si、Ge、Zn、Be及びMgなどの添加元素を含むこともできる。さらに、意識的に添加した元素に限らず、成膜条件などに依存して必然的に取り込まれる微量元素、並びに原料、反応管材質に含まれる微量不純物を含むこともできる。
【0025】
下地層2中の転位密度は1×1011/cm2以下であることが必要であり、さらには5×1011/cm2以下、特には1×1010/cm2以下であることが好ましい。また、下地層2の(002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅は200秒以下であることが必要であり、さらには150秒以下、特には100秒以下であることが好ましい。上述したように、下地層2がこのように高い結晶品質を有することによって、下地層2上に形成するIII族窒化物層群の結晶品質を向上させることができる。したがって、最終的に得た半導体素子、例えば、半導体発光素子などの発光効率などのデバイス特性を向上させることができる。
【0026】
また、下地層2の表面粗さRaは2Å以下であることが好ましい。
本測定は、AFMを用いて5μm角の範囲で測定する。
【0027】
なお、下地層2の膜厚は大きい方が好ましく、具体的には0.1μm以上、さらには0.5μm以上の厚さに形成することが好ましい。下地層2の厚さの上限値は特に限定されるものではなく、クラックの発生や用途などを考慮して適宜選択し、設定する。
【0028】
下地層2は、上記要件を満足する限り公知の成膜手段を用いて形成することができる。しかしながら、MOCVD法を用い、その成膜温度を1100℃以上に設定することによって簡易に得ることができる。なお、本特許の成膜温度は、基材1自身の設定温度を意味する。なお、下地層2の表面の粗れなどを抑制する観点より、前記成膜温度は1250℃以下であることが好ましい。
【0029】
介在層3は、金属間化合物、AlpGaqInrN(o≦p,q,r≦1,p+q+r=1)を除く窒化物、さらには形成すべきIII族窒化物層群のバンドギャップよりも、前記介在層のバンドギャップが大きい材料のいずれかを用いて形成させる必要がある。どの材料を用いるかは、本エピタキシャル基板の用途などに応じて適宜に選択する。
【0030】
但し、介在層3は、Gaの他に、Al及びInなどのIII族元素、B、Si、Ge、Zn、Be及びMgなどの添加元素を含むこともできる。さらに、意識的に添加した元素に限らず、成膜条件などに依存して必然的に取り込まれる微量元素、並びに原料、反応管材質に含まれる微量不純物を含むこともできる。
【0031】
また、III族窒化物層群のエピタキシャル成長を良好な状態に下に行なうべく、中間層3の厚さは0.5nm以上であることが好ましく、さらには1nm以上であることが好ましい。なお、介在層3の厚さの上限は形成すべきIII族窒化物層群の厚さなどに依存するが、約1000nm程度である。介在層3の厚さを1000nmを超えて厚くしてもエピタキシャル成長の度合いに変化は見られない。
【0032】
介在層3は、上記要件を満足する限り公知の成膜手段を用いて形成することができる。例えば、MOCVD法を用い、下地層2と同一バッチあるいは別バッチで形成することができる。あるいは、スパッタリング、真空蒸着などのPVD法、各種CVD法を用いることもできる。また、プラズマ・光などの各種アシスト方法も併用可能である。また、介在層の形状を変化させるため、適当なガス雰囲気下での熱処理を加えることも可能である。
【0033】
また、基材1は、サファイア単結晶、ZnO単結晶、LiAlO2単結晶、LiGaO2単結晶、MgAl2O4単結晶、MgO単結晶などの酸化物単結晶、Si単結晶、SiC単結晶などのIV族あるいはIV−IV族単結晶、GaAs単結晶、AlN単結晶、GaN単結晶、及びAlGaN単結晶などのIII−V族単結晶、Zr2Bなどのホウ化物単結晶などの、公知の基板材料から構成することができる。
【0034】
特に基材1をサファイア単結晶から構成する場合においては、基材1の主面1Aに対して窒化処理を行ない、主面1Aにおいて表面窒化層を形成することが好ましい。これによって、下地層2及び窒化物層3、並びにエピタキシャル基板10上に形成すべき窒化物層群の結晶品質をより向上させることができる。前記窒化処理は、基材1をアンモニアなどの窒素含有雰囲気中に配置し、所定温度に加熱することによって実施することができる。
【0035】
図2は、図1に示すエピタキシャル基板10上にIII族窒化物層群15を形成してなる半導体積層構造の一例を示す構成図である。図2から明らかなように、III族窒化物層群15の形成初期においては、介在層3の開口部4内を埋設するようにして垂直方向にエピタキシャル成長が進行し、その後、介在層3の島状構造部分の上面3Aに沿って横方向に成長するようになる。したがって、下地層2との界面で生じた転位も垂直方向に伝播した後、介在層3の島状構造部分の上面3Aに沿って横方向に屈曲するものもある。また島状構造被覆部分においては、転位の伝搬が被覆により妨げられる。その結果、III族窒化物層群15の、開口部4の上方の領域15Aでは転位密度が低減され、結晶品質に優れたIII族窒化物層群の提供が可能となる。
【0036】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
2インチ径の厚さ430μmのサファイア基板をH2SO4+H2O2で前処理した後、MOCVD装置の中に設置した。キャリアガスとして、H2を流速1m/secで流しながら、基板を1200℃まで昇温した後、トリメチルアルミニウム(TMA)及びNH3を平均流速1m/secで流して、前記サファイア基板上に下地層としてのAlN層を厚さ1μmまで成長させた。前記AlN層の(002)面におけるX線回折ロッキングカーブの半値幅は90秒であり、転位密度は2×1010/cm2であり、結晶品質に優れることが判明した。また、表面粗さRaは2Åであった。
【0037】
次いで、基板温度を1200℃とし、前記AlN層上にトリメチルボロン(YMB)及びNH3を平均流速1m/secで流して、前記AlN層上に介在層としての島状構造のBN層を厚さ20nmに形成し、エピタキシャル基板を作製した。なお、前記BN層の島状構造部分は円柱状を呈していた。
【0038】
次いで、基板温度を1200℃とし、TMA、トリメチルガリウム(TMG)及びNH3を平均流速1m/secで流して、前記AlN層上に島状構造の前記BN層を介して、III族窒化物層群としてのAl0.5Ga0.5N膜を厚さ2μmに形成した。このAlN膜中の転位密度をTEM観察によって測定したところ5×108/cm2であることが判明した。
【0039】
(実施例2)
2インチ径の暑さ430μmのサファイア基板をH2SO4+H2O2で前処理した後、MOCVD装置の中に設置した。キャリアガスとして、H2を流速1m/secで流しながら、基板を1200℃まで昇温した後、トリメチルアルメニウム(TMA)及びNH3を平均流速1m/secで流して、前記サファイア基板上に下地層としてのAlN層を厚さ1μmまで成長させた。前記AlN層の(002)面におけるX線回析ロッキングカーブの半値幅は90秒であり、転位密度は2×1010/cm2であり、結晶品質に優れることが判明した。また、表面粗さRaは2Åであった。
【0040】
次いで、上記AlN層上にTiを20nmの厚さに真空蒸着し、再度MOCVD装置の中に設置した。基板温度を1200℃とし、NH3を平均流速1m/secで流して、熱処理を加え、Ti膜をTiNx膜とした上、網目構造とした。
【0041】
次いで、基板温度を1200℃とし、TMA、及びNH3を平均流速1m/secで流して、前記AlN層上に島状構造の前記TiNx層を介して、III族窒化物層群としてのAlGaN膜を厚さ2μmに形成した。このAlN膜中の転位密度をTEM観察によって測定したところ1×109/cm2であることが判明した。
【0042】
(比較例1)
上記実施例において、下地層を低温緩衝層を用いて形成したGaN膜とし、III族窒化物層群としてのAl0.5Ga0.5N膜を試みたが、クラックが多量に発生し、実用に供するAl0.5Ga0.5N膜のエピタキシャル成長を実現させることができなかった。なお、本GaN下地層の(002)ロッキングカーブの半値幅は300秒であった。
【0043】
(比較例2)
下地層を600℃の低温で形成したAlNから構成した以外は、実施例と同様にしてIII族窒化物層群としてのAlN膜を形成した。このAlN膜中の転位密度をTEM観察によって測定したところ1×1011/cm2であることが判明した。
【0044】
以上、実施例及び比較例1から明らかなように、介在層を設けない場合においてはAlN膜のエピタキシャル成長ができないことが分かる。また、実施例及び比較例2から明らかなように、高結晶品質のAlN下地膜に代えて、低温成膜の低結晶品質のAlN下地膜を用いた場合においては、最終的に得たIII族窒化物層群としてのAlN膜の転位密度を低減でき、その結晶品質を向上できることが分かる。
【0045】
以上、具体例を挙げながら、本発明を発明の実施の形態に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記発明の実施に形態に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない範囲であらゆる変更や変形が可能である。例えば、エピタキシャル基板とIII族窒化物層群との間にバッファ層やひずみ超格子などの多層積層膜を挿入し、前記III族窒化物層群の結晶品質をさらに向上させることもできる。
【0046】
さらには、エピタキシャル基板を構成する基材を凹面状のサファイア単結晶などから構成することによって、前記エピタキシャル基板の反り量をさらに低減することもできる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、低転位で結晶性に優れたIII族窒化物層群、特にはAl含有窒化物層群を形成することのできる、新規なエピタキシャル基板及びこれを用いた半導体積層構造を提供することができる。
さらには、前記III族窒化物層群の転位低減方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエピタキシャル基板の一例を示す構成図である。
【図2】本発明の半導体積層構造の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
1 基材、2 下地層、3 中間層、4 開口部、10 エピタキシャル基板、15 III族窒化物層群、20 半導体積層構造
Claims (13)
- 所定の基材と、
前記基材上に形成された、少なくともAlを含み、転位密度が1×1011/cm2以下であり、(002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅が200秒以下であるIII族窒化物下地層と、
前記III族窒化物下地層上に、MOCVD装置内で少なくともNH3を含むガスを流しながら熱処理することにより形成された、島状又は網目状の介在層と、
を具え、
前記介在層は、AlpGaqInrN(o≦p,q,r≦1,p+q+r=1)を除く窒化物からなる、ことを特徴とするエピタキシャル基板。 - 前記III族窒化物下地層中のAl含有量が、全III族元素に対して50原子%以上であることを特徴とする、請求項1に記載のエピタキシャル基板。
- 前記III族窒化物下地層はAlNからなることを特徴とする、請求項2に記載のエピタキシャル基板。
- 前記介在層の厚さが、0.5nm〜1000nmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載のエピタキシャル基板。
- 前記介在層は、金属間化合物からなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載のエピタキシャル基板。
- 請求項1〜5のいずれか一に記載のエピタキシャル基板と、このエピタキシャル基板上に形成されたIII族窒化物層群とを具えることを特徴とする、半導体積層構造。
- 前記III族窒化物層群のバンドギャップよりも、前記介在層のバンドギャップが大きいことを特徴とする、請求項6に記載の半導体積層構造。
- 所定の基材上に、少なくともAlを含み、転位密度が1×1011/cm2以下であり、(002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅が200秒以下であるIII族窒化物下地層、MOCVD装置内で少なくともNH3を含むガスを流しながら熱処理することにより設けた島状又は網目状の、AlpGaqInrN(o≦p,q,r≦1,p+q+r=1)を除く窒化物からなる介在層を順次に形成してエピタキシャル基板を作製し、このエピタキシャル基板上に前記介在層を介してIII族窒化物層群を形成することにより、前記III族窒化物層群中の転位密度を低減させることを特徴とする、III族窒化物層群の転位低減方法。
- 前記III族窒化物下地層中のAl含有量が、全III族元素に対して50原子%以上であることを特徴とする、請求項8に記載のIII族窒化物層群の転位低減方法。
- 前記III族窒化物下地層はAlNからなることを特徴とする、請求項9に記載のIII族窒化物層群の転位低減方法。
- 前記III族窒化物介在層の厚さが、0.5nm〜1000nmであることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか一に記載のIII族窒化物層群の転位低減方法。
- 前記介在物は、金属間化合物からなることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか一に記載のIII族窒化物層群の転位低減方法。
- 前記III族窒化物層群のバンドギャップよりも、前記介在層のバンドギャップが大きいことを特徴とする、請求項8〜12のいずれか一に記載のIII族窒化物層群の転位低減方法。
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