JP4744935B2 - 空圧アクチュエータのガスケット装着用機器 - Google Patents

Description

本発明は、ガスケット装着用機器に関し、特に、優れた組立作業性と密閉性能を実現した空圧アクチュエータのガスケット装着用機器に関する。

従来より、空圧式・油圧式アクチュエータ等の圧力機器に用いられる密封シールや、水・粉塵などの浸入を防止するダストシールには、例えば、蓋体との合わせ面をゴムや樹脂などの弾性材料で密閉シールする必要があり、容器本体側或は蓋体側の合わせ面の周縁に凹状の溝を設けて、この溝内にゴム製や樹脂製のガスケットを装着した後、ネジなどの締付部材を介して蓋体を締付固定している。

ゴム製ガスケットを装着する溝の場合には、ゴム製ガスケットの潰しによって、ガスケットが溝内に充満しないように余裕を持った設計がなされている。そのため、ガスケットを溝に入れた状態では、ガスケットは溝内に保持されることはなく、カバーを傾けたり逆さまにすれば、当然ガスケットは脱落してしまい、紛失するおそれもある。

このようなガスケットの脱落を防止する手段として、組立時にグリスなどを塗布してガスケットを接着する方法がある。ガスケットを接着剤などで完全に接着してしまうと、ガスケットの交換や分別廃棄ができなくなることから、グリス程度の粘性のあるもので接着するのが一般的となっている。しかし、グリスの塗布作業は極めて面倒なものであり、作業性の低下や製造コストがかかるなどの問題がある。その他、ガスケットの脱落防止を図る一例として、以下の技術が開示されている。

例えば、実開平７−３５８５７号公報（特許文献１）には、バルブと基台とに開設した複数個のポートを個別に連通させる複数個の開口を有し、バルブと基台との間をシールするバルブ用ガスケットが開示されている。バルブと基台との間にガスケットを介在させて、これらを締付部材により締付けると、両シール面に設けた内外のリブが圧縮されて、これらのリブ間の閉塞空間の圧力が大気圧より僅かに低下し、ガスケットとバルブ及び基台とのシール面間に吸着力を発生させることで、バルブと基台とを分離しても、ガスケットがバルブ又は基台の何れか一方に吸着して離脱しない旨が記載されている。

特開平６−２３５４６９号公報（特許文献２）には、断面四角状のガスケット本体の両側面から突起体を突出させ、この突起体をガスケット挿着溝の側壁面に当接させる旨が記載されている。
実開平７−３５８５７号公報 特開平６−２３５４６９号公報

ところが、特許文献１に記載のガスケットでは、ガスケット本体の内外両側面にリブを突設した構造であることから、このガスケットを空圧式・油圧式アクチュエータ等の圧力機器に適用すれば、例えば、内圧封止の場合、内圧によって外側面に設けたリブが潰され、ガスケットには局所的に大きな荷重がかかることになり、しかも、空圧式・油圧式アクチュエータ等の圧力機器に必要な高い密閉性能は確保されない。

また、特許文献２に記載のガスケットは、弁室内の気密性を保持すべく、突起体をガスケット挿着溝の側壁面にシールさせるものであって、この突起体はガスケットを溝内に保持させるように機能するものではない。

本発明は、上記の課題点に鑑み、鋭意研究の結果開発に至ったものであり、その目的とするところは、ガスケットの不用意な脱落を防いで優れた組立作業性を実現すると共に、シール面に優れた密閉性能を具備した空圧アクチュエータのガスケット装着用機器を提供することにある。

上記の目的を達成するため、請求項１に係る発明は、ピストンを収容したハウジングの開口端を被蓋する蓋体の合わせ面に対向する一対の円弧状部と、この円弧状部の両端部に矩辺の張り出し部を連設して凹状の環状ガスケット溝を形成し、この張り出し部の内側に前記ハウジング内に給排気する給排気路を位置させると共に、樹脂製又はゴム製の弾性材から成る環状のガスケットを前記ガスケット溝に対応する一対の円弧状部の両端部に矩辺の張り出し部を有する環形状に形成し、このガスケットには、前記ガスケット装着溝の溝幅より小さい幅寸法に形成されたガスケットの円弧状部の内周面に肉厚方向へ延び、かつ、圧潰量を１０〜１５％に設定した突起部を等間隔に複数形成し、このガスケットを前記ガスケット溝に対応した状態で組み込んだときに、前記突起部が溝壁面に当接してガスケットをガスケット装着溝内に保持するようにした空圧アクチュエータのガスケット装着用機器である。

請求項１に係る発明によると、突起部の弾発力とその反力でガスケットをガスケット装着溝内に保持させることができ、装着されたガスケットが不用意に脱落することはない。しかも、ガスケット装着溝へ組み込む際の抵抗が小さく、突起部を押し潰すだけでガスケットを装着・保持しうるので、従来に比して、組立作業性を飛躍的に向上させた。更に、メンテナンス等でシール面を開口する場合にあっても、ガスケットが脱落することはなく、メンテナンス後、シール面には優れた密閉性能が再現される。

突起部の弾発力とその反力を内周方向に対して等間隔に発生させることができ、更に安定した脱落防止効果が得られる。請求項３に係る発明によれば、突起部とガスケット装着溝との接触面積を小さくして、ガスケット装着溝へ組み込む際の抵抗を小さくすると共に、ガスケット自体の磨耗・劣化を防ぐという効果を奏する。

本発明を適用した合わせ面（シール面）には優れた密閉性能が備わり、例えば、空圧式・油圧式アクチュエータ等の圧力機器にあっては、突起部を受圧側であるガスケット本体の内側面のみに形成すれば、受圧時にガスケット本体の外側面の全面をガスケット装着溝の溝壁面に密着させることができ、しかも、ガスケットの局部変形の生じ難い構造が実現され、空圧式アクチュエータの圧力機器としての機能を長期に亘って、如何なく発揮させることが可能となる。

本発明における空圧アクチュエータのガスケット装着用機器の実施形態を図面に基づいて詳述する。図１は、本発明において、ガスケットの装着前の状態を示した斜視図であり、図２は、ガスケットを装着した状態を示した平面図である。図中１は蓋体に形成されたシール面（合わせ面）であり、２はシール面１に設けた凹状のガスケット装着溝であり、３は樹脂製又はゴム製等の弾性材料から成る環状のガスケット、また、４はガスケット装着用機器である。

本発明は、シール面１に設けたガスケット装着溝２内に弾性を有する環状ガスケット３を装着したガスケット装着用機器４である。前記ガスケット装着溝２の溝幅よりも小さい幅寸法で、且つ、溝深さよりも大きい肉厚寸法に形成されたガスケット本体３の内周面３ａ及び外周面３ｂの双方若しくは何れか一方の面に肉厚方向（軸芯方向）へ延びる突起部５を有し、当該ガスケット３を前記ガスケット装着溝２内に組み込んだときに、前記突起部５が溝壁面２ａと当接し、ガスケット装着溝２内に保持されることを特徴としている。なお、本実施形態では、アクチュエータ等の圧力機器に適用し、この場合、前記ガスケット３は、アクチュエータの環状シリンダをシールする円弧状部３ｃと、該円弧状部３ｃから張り出し、アクチュエータの給排気路をシールする張り出し部３ｄとから構成するが、勿論、これに限定されるものではない。

図１及び図２に示すように、空圧式アクチュエータの圧力機器（例えば、内圧封止）に適用する場合には、前記突起部５をガスケット本体３の受圧側となる内側面３ａにのみ形成し、受圧時にガスケット本体３の外側面３ｂの全面をガスケット装着溝２の外側溝壁面２ａに密着させるように構成しており、これにより、シール面１には優れた密閉性能が発揮されると共に、ガスケット３の局部変形の生じ難い構造を実現している。

詳述すると、内圧によってガスケット３がガスケット装着溝２の外側溝壁面２ａに押し付けられるが、ガスケット本体３の外側面３ｂには前記突起部５がないので、ガスケット３に対する荷重は一定となる。一方、外側面３ｂに突起部５を形成すれば、内圧によって突起部５が過剰に潰されて局所的に荷重が大きくなる。従って、空圧式・油圧式アクチュエータ等の圧力機器に適用する場合には、本例で示すように、流体圧力によってガスケット３が押圧される側に突起部５を形成しないのがよい。

図３は、本発明に係るガスケット装着用機器の作用説明図である。同図（ａ）に示すように、前記ガスケット本体３の肉厚方向（軸芯方向）に向けて突起部５を形成したことで、同図（ｂ）に示すような、成形勾配を有するガスケット装着溝２であっても、肉厚方向に延びる突起部５の何れかの部位でガスケット装着溝２の溝壁面２ａと当接し、突起部５の弾発力とその反力で、ガスケット３をガスケット装着溝２内に保持させることができる。しかも、本例に示すように、突起部５をガスケット本体３の内周方向に対して、等間隔に複数（本例では６個）設けることで、安定した脱落防止効果を得る。ここで、ガスケット装着溝２の成形勾配とは、ガスケット装着溝２をダイキャスト鋳造や樹脂射出により成形する際の、型の抜き勾配のことをいい、ガスケット装着溝が垂直方向に対して、やや開口部側に傾いた角度をいう。

また、突起部５の先端を断面略円弧状に形成すれば、ガスケット装着溝２の溝壁面２ａとの接触面積が小さくなり、ガスケット３をガスケット装着溝２へ組み込む際の抵抗を小さくすることができる。本例で示すガスケット３には円弧状部３ｃから張り出した張り出し部３ｄを有しているが、張り出し部３ｄよりも長辺である円弧状部３ｃを、突起部５によりガスケット装着溝２内に強固に保持しているので、短辺である張り出し部３ｄに突起部５を設ける必要なく、安定した脱落防止効果を得ることができる。

ガスケット３の装着に際して、図２に示すように、前記ガスケット本体３の内側面３ａより内径方向へ突設した前記突起部５が、対向する前記ガスケット装着溝２の内側溝壁面２ａに接触して押し潰されるので、圧潰された突起部５に弾発力と反力が生じ、且つ、溝壁面２ａとの摩擦力によってガスケット装着溝２内に保持される。好ましくは、ガスケット本体３に形成される突起部５の圧潰量を１０〜１５％に設定することで、ガスケット３をガスケット装着溝２へ装着する際の抵抗がより小さくなり、装着作業が容易に行えると共に、シール面１に挟持されるガスケット３がガスケット装着溝２からはみ出すおそれがなく、シール面１には優れた密閉性能が備わる。

また、ガスケット３に形成する突起部５の個数は、環状のガスケット本体３の周長を考慮して決定するとよく、例えば、周長１００ｍｍ以下であれば２〜３個、周長１０１〜２００ｍｍであれば４〜６個、周長２０１〜３００ｍｍであれば８〜１２個などである。突起部５の配置については、特に平滑面に対しては均等に配置することで、安定した脱落防止効果が得られる。なお、他例として、図示しないが、ガスケット本体の一部を蛇行形状にしてこの部位を突起部とし、ガスケット装着溝の溝壁面に当接させることも可能である。

ここで、本発明に係るガスケット装着用機器についての検証を行った。検証項目は、成形容易性、溝への装着性、抜き勾配を有する溝への保持性、及びガスケット本体の受圧対応性である。供試品として、図４（ａ）に示すように、周方向へ延びる長尺状の突起部１６を形成したガスケット１７を比較例１とし、図５（ａ）に示すように、半球形状の突起部１８を形成したガスケット１９を比較例２とした。また、図３（ａ）に示すように、ガスケット本体の肉厚と略同じ長さに延びる突起部５を形成したガスケットを本発明１とした。検証結果を表１に示す。

比較例１：ガスケットの成形容易性については、突起位置で型を上下に割る必要があり、その評価を×とした。溝への装着性については、突起部１６が反挿入方向へ変形してしまい挿入し難く、しかも、周方向へ突起部１６の逃げる余地がなく、その評価を×とした。図４（ｂ）に示すように、抜き勾配を有する溝への保持性については、抜き勾配の角度がばらつくと、突起部１６と溝壁面２ａとの当接が不十分となる場合があり、保持性が低下するため、その評価を×とした。ガスケットの受圧対応性については、ガスケット本体１７の拡径が阻害されるため、その評価を△とした。

比較例２：ガスケットの成形容易性については、ガスケットの内径方向に型を抜く必要があるため、その評価を×とした。溝への装着性については、突起部１８が反挿入方向へ変形してしまい挿入し難いため、その評価を△とした。図５（ｂ）に示すように、抜き勾配を有する溝への保持性については、抜き勾配の角度がばらつくと、突起部１８と溝壁面２ａとの当接が不十分となる場合があり、保持性が低下するため、その評価を×とした。ガスケットの受圧対応性については、ガスケット本体１９の拡径を妨げないので、その評価を○とした。

本発明１：ガスケットの成形容易性については、ガスケットの肉厚方向に打ち抜き成形可能であるため、その評価を○とした。溝への装着性については、突起部５が反挿入方向に変形し難いので挿入し易く、しかも、周方向へ突起部５が逃げる余地があるので、その評価を○とした。図３（ｂ）に示すように、抜き勾配を有する溝への保持性については、抜き勾配の角度にばらつきがあっても、軸芯方向に延びる突起部５の何れかの部位で溝２の溝壁面２ａと当接して保持されるので、その評価を○とした。ガスケットの受圧対応性については、ガスケット本体３の拡径を妨げないので、その評価を○とした。なお、本実施例においては、板状のガスケット素材を肉厚方向に打ち抜き成形することにより、ガスケット本体３と突起部５を一工程で成形しており、突起部５の高さは、ガスケット本体３の肉厚と同一となっている。

次に、本発明に係るガスケット装着用機器の具体例を説明する。図６は、本発明を適用した空圧式アクチュエータの横断面図である。同図において、図中６はアクチュエータ、７はハウジング、８は蓋体、９は出力軸、１０はピニオン、１１はラック、１２はピストン、１３はＯリングである。このアクチュエータ６は、直線運動を回転運動に変換するラック・ピニオン式の運動変換機構を有しており、中央室１４と連通する給排口から空気圧を供給すると、中央室１４に空気圧が充填されて対向する一対のピストン１２，１２が両側方向へ移動し、ラック１１と噛合するピニオン１０を固定した出力軸９が反時計回りに回転する。一方、両側室１５，１５と連通する図示しない給排口から空気圧を供給すると、両側室１５，１５に空気圧が充填され、前記ピストン１２，１２が中央方向へと移動し、これに伴って出力軸９が時計回りに回転する。この出力軸９の回転によって連結された図示しないバルブ弁体の開閉が行われる。

図１に示すように、前記アクチュエータ６の組立時には、蓋体８のシール面（合わせ面）１に設けたガスケット装着溝２内にガスケット３を装入し、図２に示すように、装着・保持させる。装着されたガスケット３とガスケット装着溝２との間には、上述のごとく、脱落防止機能が発揮され、ガスケット３を装着した蓋体８を傾けるなどしても、ガスケット３はガスケット装着溝２内に確実に保持されるので、不用意に脱落することはない。勿論、メンテナンス等で合わせ面１を開口する場合にあっても、ガスケット３が脱落することはなく、メンテナンス後、シール面１には優れた密閉性能が再現される。

更に、突起部５をガスケット本体３の受圧側である内側面３ａのみに形成しているので、受圧時にはガスケット本体３の外側面３ｂの全面をガスケット装着溝２の外側溝壁面２ａに密着させることが可能となり、ガスケット３の局部変形の生じ難い構造が実現される。ガスケット３を装着したハウジング７と蓋体８との合わせ面１は確実に密閉シールされるので、アクチュエータ６の機能は長期に亘り、如何なく発揮される。

蓋体８のシール面１及びガスケット装着溝２以外の表面には、耐食性向上と外観向上の観点から、ポリエステル等の樹脂塗料を用いた焼付塗装が施されているが、塗膜面の均一化や剥離防止、硬度の確保といった塗装品質向上の理由から、エポキシ系やポリアミド系樹脂を用いた電着塗装を施す場合がある。この電着塗装は、蓋体８の全体を塗装液に浸漬することから、ガスケット装着溝２にも塗装が施されることとなる。塗装面は、塗装なしの面よりも表面粗さが小さく、滑らかな面となる。

一方、ガスケット装着溝２の内側溝壁面２ａには、アクチュエータ６の本体に形成したエアー給排気路６ａとの干渉を防ぐため、部分的な切欠き部２ｂが形成されている。このガスケット装着溝２に上記電着塗装が施され、且つ、装着溝２からの脱落を防止するためにグリスが塗布されたガスケット３を装着した場合、蓋体８をアクチュエータ６の本体に固定すると、ガスケット３には肉厚方向に押し潰される力の分力が作用すると共に、グリスによる滑り作用が加わり、ガスケット３が装着溝２の切欠き部２ｂからアクチュエータ内方に向って部分的にはみ出して、アクチュエータ６のシール性が損なわれるおそれがある。本発明に係る突起部５を有するガスケット３によれば、グリスを塗布することなく、脱落防止を図れることから、塗装等の表面処理が施された装着溝２に対して確実に固定することができ、アクチュエータ６のシール性を確保することができる。

本発明に係るガスケット装着用機器において、ガスケットの装着前の状態を示した斜視図である。 本発明に係るガスケット装着用機器において、ガスケットを装着した状態を示した平面図である。 （ａ）本発明１の断面図であり、（ｂ）抜き勾配を有する溝への装着状態を示した説明図である。 （ａ）比較例１の断面図であり、（ｂ）抜き勾配を有する溝への装着状態を示した説明図である。 （ａ）比較例２の断面図であり、（ｂ）抜き勾配を有する溝への装着状態を示した説明図である。 本発明に係るガスケット取付構造を適用した空圧式アクチュエータの断面図である。

１ シール面（合わせ面）
２ ガスケット装着溝
２ａ 溝壁面（内側溝壁面、外側溝壁面）
３ ガスケット（ガスケット本体）
３ａ 内側面
３ｂ 外側面
４ ガスケット装着用機器
５ 突起部
６ アクチュエータ
７ ハウジング
８ 蓋体

Claims (1)

1. ピストンを収容したハウジングの開口端を被蓋する蓋体の合わせ面に対向する一対の円弧状部と、この円弧状部の両端部に矩辺の張り出し部を連設して凹状の環状ガスケット溝を形成し、この張り出し部の内側に前記ハウジング内に給排気する給排気路を位置させると共に、樹脂製又はゴム製の弾性材から成る環状のガスケットを前記ガスケット溝に対応する一対の円弧状部の両端部に矩辺の張り出し部を有する環形状に形成し、このガスケットには、前記ガスケット装着溝の溝幅より小さい幅寸法に形成されたガスケットの円弧状部の内周面に肉厚方向へ延び、かつ、圧潰量を１０〜１５％に設定した突起部を等間隔に複数形成し、このガスケットを前記ガスケット溝に対応した状態で組み込んだときに、前記突起部が溝壁面に当接してガスケットをガスケット装着溝内に保持するようにしたことを特徴とする空圧アクチュエータのガスケット装着用機器。

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