JP4737848B2 - 自動車外装材用ポリプロピレン系樹脂組成物及びそれを成形してなる自動車用サイドモール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高流動性、寸法安定性、成形性、ボイド特性、ウェルド外観に優れるポリプロピレン系樹脂組成物及び該組成物を成形してなる自動車外装部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
プロピレンのホモポリマー、エチレン・プロピレンランダム共重合体及びエチレン・プロピレンブロック共重合体などポリプロピレン系樹脂よりなる複合材料は、力学特性、経済性、寸法安定性に優れ、自動車サイドモール等に応用されている。例えば、特開平7−314490号公報、特開平9−12805号公報、特開平9−241441号公報、特開2000−95919号公報などのプロピレン系樹脂組成物が知られている。しかし、近年、生産サイクルの向上、部品コストの合理化に伴い、より高流動、かつ線膨張率が小さく、成形品の中でボイドが少なく、ウェルド外観の良い材料が要求されるようになった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高流動性、かつ良好な物性、寸法安定性、成形性、成形外観に優れるポリプロピレン系樹脂組成物及び該組成物を成形してなる自動車外装部材を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記の課題を解決することを目的に鋭意検討をおこなった結果、プロピレン・エチレンブロック共重合体と極微量のパーオキサイドを押出機にて溶融混練したポリプロピレン系樹脂に、特定のエチレン・オクテンランダム共重合体、エチレン・ブテンランダム共重合体及びタルクを配合することにより、高流動性、かつ良好な物性、寸法安定性、成形性、成形外観に優れるポリプロピレン系樹脂組成物及び当該組成物を成形してなる自動車外装部材が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明は、下記に示す(A)成分が35〜55重量%、(B)成分が15〜25重量%、(C)成分が5〜15重量%及び(D)成分が20〜25重量%であり、かつ、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計として45重量%以上を含有する樹脂組成物であって、該組成物の物性が、メルトフローレート(MFR)45〜58g/10分、曲げ弾性率1540〜1600MPa、かつ線膨張率5.0×10 -5 〜5.7×10-5cm/cm・℃であることを特徴とする自動車外装材用ポリプロピレン系樹脂組成物に存する。
(A)成分:プロピレン単独重合体部分のMFRが250〜350g/10分、ブロック共重合体のMFRが100〜140g/10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体に、パーオキサイドを0.0005〜0.005重量%配合したものを押出機にて溶融混練したダイスウェル比(ME)が1.0〜1.1のポリプロピレン系樹脂
(B)成分:MFRが、4〜20g/10分で、密度が0.870〜0.880であるエチレン・オクテンランダム共重合体
(C)成分:MFRが、4〜20g/10分で、密度が0.855〜0.865であるエチレン・ブテンランダム共重合体
(D)成分:レーザー回折法によって測定した平均粒径が10μm以下であるタルク
[但し、メルトフローレート(MFR)は、ASTM−D1238に準拠し、2.16kg荷重にて230℃の温度で測定したものであり、
曲げ弾性率は、JIS K7203に準拠し、23℃において曲げ速度2mm/分で測定したものであり、
線膨張率は、JIS K7197に規定された方法に従い、昇温速度2℃/分、荷重4kPa、測定範囲25〜80℃にて実施したものであり、
及び、ダイスウェル比(ME)は、メルトインデクサーのシリンダー内温度を190℃に設定し、オリフィスとして、長さ8.00mm、内径1.00mmφ、L/D=8のものを用い、また、オリフィス直下にエタノールを入れたメスシリンダーを、オリフィスとエタノール液面との距離が20±2mmとなる位置に置き、この状態でサンプルをシリンダー内に投入し、1分間の押出量が0.1±0.03gになるように荷重を調節し、6分後から7分後の押出物をエタノール中に落とし、固化してから採取し、採取した押出物のストランド状サンプルの直径を上端から1cm部分と、下端から1cm部分、及び中央部分の3箇所で最大値、最小値を測定し、計6箇所測定した直径の平均値をもってME値としたものである。]
【0006】
以下、(A)〜(D)の各成分について説明する。
(A)成分:ポリプロピレン系樹脂
ポリプロピレン系樹脂(A)で使用するプロピレン・エチレンブロック共重合体は、MFRが100〜140g/10分のものが用いられる。プロピレン・エチレンブロック共重合体のMFRが前記範囲未満であると、流動性が不足する。逆に、プロピレン・エチレンブロック共重合体のMFRが前記範囲を超える場合、ボイド外観が劣る。ボイドとは、成形品の内部に真空の空隙を作る現象で、ボイドの発生は製品不良の問題を生じる。
【0007】
該プロピレン・エチレンブロック共重合体のプロピレン単独重合体部分のMFRは、250〜350/10分のものである。プロピレン・エチレンブロック共重合体のプロピレン単独重合体部分のMFRが、前記範囲未満であると流動性が不十分となり、またMFRが、前記範囲を超えるとボイド特性が劣る。
該プロピレン・エチレンブロック共重合体中のエチレン含有量は、通常1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%である。
【0008】
該プロピレン・エチレンブロック共重合体は、ダイスウェル比(ME:190℃、L/D=8)が、1.1以下のものが用いられる。プロピレン・エチレンブロック共重合体のMEが前記範囲を超えると、ウェルド外観が劣る。ここに、ダイスウェル比(ME)とは、樹脂を細孔からストランド状に押出した時の製品特性の一つであり、詳しくは実施例で説明する。
【0009】
上記プロピレン・エチレンブロック共重合体の製造には、高立体規則性触媒が用いられる。前記触媒としては、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、更に各種の電子供与体及び電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と有機アルミニウム化合物及び芳香族カルボン酸エステルを組み合わせる方法(特開昭56―100806号、特開昭56−120712号、特開昭58−104907号の各公報参照)、及び、ハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと各種の電子供与体を接触させる担持型触媒の方法(特開昭57−63310号、特開昭63−43915号、特開昭63−83116号の各公報参照)等の方法を例示することができる。前記触媒の存在下、気相流動床、溶液法、スラリー法等の製造プロセスを適用して、プロピレンとエチレンとを用いて重合することにより得られる。
【0010】
上記プロピレン・エチレンブロック共重合体の配合量は、本発明のプロピレン系樹脂組成物中に30〜55重量%である。該配合量が上記範囲未満であると流動性が劣り、逆に上記範囲を超える場合は、剛性が高くなり、かつ線膨張率が大きくなり寸法安定性に欠けるといった不具合を生じる。
【0011】
(A)成分の調製において、プロピレン・エチレンブロック共重合体に添加配合して使用するパーオキサイドとしては、有機過酸化物又は無機過酸化物を例示できる。有機過酸化物として具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルパーアセテート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチル−ジ−パーアジペート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、メチル−エチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジキュミルパーオキサイド、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルキュミルパーオキサイド、1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス−(t−ブチルパーオキシ)ブタン、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−サイメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラ−メチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(ハイドロパーオキシ)ヘキサンなどを例示できる。これらは、1種単独でも2種以上を任意に組み合わせて使用することも可能である。この中で好ましいのは、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンであり、特に好ましいのは、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンである。無機過酸化物として具体的には、過硫酸カリ、過硫酸アンモニウム、過酸化バリウムなどが使用できるが、熱分解温度の点から有機過酸化物が好ましい。
【0012】
上記パーオキサイドの配合量は、0.0005〜0.005重量%に調整される。該配合量が0.005重量%を超えると、得られる自動車外装材用ポリプロピレン樹脂組成物の流動性は向上するが、ボイド特性が劣り、0.0005重量%未満では、ウェルド外観が劣るので、本発明では上記の特に限られた範囲から選択される。
【0013】
(B)成分:エチレン・オクテンランダム共重合体
エチレン・オクテンランダム共重合体としては、エチレン・オクテンエラストマー又はエチレン・オクテン共重合ゴムとも呼ばれるエチレン系共重合体が使用され、エチレン含有量60〜70重量%、オクテン含有量30〜40重量%のものが好ましい。
【0014】
エチレン・オクテンランダム共重合体の密度は、0.870〜0.880g/cm3である。密度は、JIS−K7112に準拠して測定された値である。0.880g/cm3を超えると、線膨張率が大きくなり寸法安定性に欠けるという不具合を生じる。MFRは、得られる自動車外装部材の流動性と射出成形時の成形性のバランスを図る観点から、4〜20g/10分の範囲である。MFRが20g/10分を超えると、流動性が向上する反面、ボイド特性が劣る。4g/10分未満では、線膨張率が大きくなり寸法安定性に欠けるという不具合を生じる。また上記エチレン・オクテンランダム共重合体の使用は、1種類に限定されるものではなく、密度、MFRなどの異なる2種類以上の混合物であっても良い。
【0015】
エチレン・オクテンランダム共重合体の製造には、ハロゲン化チタンのようなチタン化合物、バナジウム化合物、アルキルアルミニウム−マグネシウム錯体、アルキルアルコキシアルミニウム錯体のような有機アルミニウム−マグネシウム錯体、アルキルアルミニウム、又はアルキルアルミニウムクロリド等のいわゆるチーグラー型触媒、WO−91/04257号公報等に記載のメタロセン化合物によって重合できるが、とりわけバナジウム化合物、及びメタロセン化合物を用いて重合した場合、より好ましい共重合体が得られる。重合法としては、気相流動床、溶液法、スラリー法等の製造プロセスを適用して重合することができる。
【0016】
本発明の樹脂組成物へのエチレン・オクテンランダム共重合体の配合量は、15〜25重量%に調整される。15重量%未満では、流動性の低下が少ない反面、剛性が高く、かつ線膨張率が大きくなり寸法安定性に欠けるという不具合を生じる。
【0017】
(C)成分:エチレン・ブテンランダム共重合体
エチレン・ブテンランダム共重合体としては、エチレン・ブテンエラストマー又はエチレン・ブテン共重合ゴムとも呼ばれるエチレン系共重合体が使用され、エチレン含有量65〜75重量%、ブテン含有量25〜35重量%のものが好ましい。
【0018】
エチレン・ブテンランダム共重合体の密度は、0.855〜0.865g/cm3である。0.865g/cm3を超えると、線膨張率が大きくなり寸法安定性に欠けるという不具合が生じる。MFRは、得られる自動車外装部材の流動性と射出成形時の成形性のバランスを図る観点から、4〜20g/10分の範囲である。MFRが20g/10分を超えると、流動性が向上する反面、ボイド特性が劣る。4g/10分未満では、線膨張率が大きくなり寸法安定性に欠けるという不具合を生じる。また上記エチレン・ブテンランダム共重合体の使用は、1種類に限定されるものではなく、密度、MFRなどの異なる2種類以上の混合物であっても良い。エチレン・ブテンランダム共重合体の製造法については、前記したエチレン・オクテンランダム共重合体の場合と同様である。
【0019】
エチレン・ブテンランダム共重合体(C)の配合量は、5〜15重量%に調整される。15重量%を超えると、得られる自動車外装材用樹脂組成物の剛性では優れているが、流動性が低下する。5重量%未満では、流動性の低下が少ない反面、剛性が高くなりかつ、線膨張率が大きくなり寸法安定性に欠けるという不具合を生じる。
【0020】
(D)タルク
レーザー回折法によって測定した平均粒径が10μm以下のタルクが使用される。該平均粒径の測定は、JIS R1620に準拠して測定されるもので、粒度分析計(例えば、堀場製作所製LA920W)により求めることができる。平均粒径が10μmを超えると、線膨張率が大きくなり寸法安定性に欠けるという不具合を生じる。
【0021】
タルクの配合量は、20〜25重量%に調整される。25重量%を超えると、得られる自動車外装材用ポリプロピレン系樹脂組成物の寸法安定性は良好になるものの、材料自体の剛性が高すぎる。20重量%未満では、線膨張係数が大きくなり寸法安定性に欠けるという不具合を生じる。
【0022】
平均粒径が10μm以下のタルクは、天然に産出されたものを機械的に微粉砕化し、これを更に精密に分級することによって得られる。また、一度粗分級したものを更に分級してもかまわない。機械的に粉砕する方法としては、ジョークラシャ−、ハンマークラシャ−、ロールクラシャー、スクリーンミル、ジェット粉砕機、コロイドミル、ローラーミル、振動ミル等の粉砕機を用いて粉砕することができる。これらの粉砕されたタルクは、本発明で示される平均粒径に調節するために、サイクロン、サイクロンエアセパレーター、ミクロセパレーター、サイクロンエアセパレーター、シャープカットセパレーター等の装置で1回又は繰り返し、湿式又は乾式分級する。特に、シャープカットセパレーターにて分級操作を行うことが好ましい。
これらのタルクは、重合体との接着性或いは分散性を向上させる目的で、各種の有機チタネート系カップリング剤、有機シランカップリング剤、不飽和カルボン酸、又はその無水物をグラフトした変性ポリオレフィン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル等によって表面処理したものを用いてもよい。
【0023】
本発明の自動車外装材用ポリプロピレン系樹脂組成物中の、各(A)〜(D)成分の配合量は、上記した通り、(A)成分が35〜55重量%、(B)成分が15〜25重量%、(C)成分が5〜15重量%の範囲から選択されるが、本発明においては、更に、 (B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計の配合量が45重量%以上となるように調製される。45重量%未満では、線膨張率が大きくなり寸法安定性に欠けるといった不具合を生じる。
【0024】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物中には、上記(A)〜(D)の必須成分以外に本発明の効果を著しく損なわない範囲で、他の付加的成分を、必要に応じて、任意に添加することができる。この様な付加的成分としては、フェノール系及びリン系の酸化防止剤、ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系の耐候劣化防止剤、有機リン化合物等の核剤、ステアリン酸の金属塩に代表される分散剤、キナクリドン、ペリレン、フタロシアニン、酸化チタン、カーボンブラック等の着色物質、繊維状チタン酸カリウム、繊維状マグネシウムオキシサルフェート、繊維状硼酸アルミニウム、炭酸カルシウム等のウイスカー、炭素繊維やガラス繊維等の物質を例示できる。
【0025】
以下、ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法について説明する。
(1)混練
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、上記した構成成分(A)〜(D)を均一に混合、混練することによって得られる。その手法は特に限定はないが、一般に行われているヘンシェルミキサー、タンブラー等の混合機でドライブレンドを行い、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等を用いて、設定温度180〜250℃にて混練することにより製造される。これらの中でも押出機、特に二軸押出機を用いて製造することが好ましい。
【0026】
(2)成形加工
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の成形加工法は、特に限定されるものではないが、合成樹脂分野において一般的に実施されている射出成形法、射出圧縮成形法、中空成形法のごとき成形法を適用して成形される。奏される発明の効果からみて、射出成形法を用いることが適している。特に流動性に優れているので薄肉長尺形状を有する製品の製造に有利に応用される。
【0027】
上記方法によって製造される本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、射出成形時の加工性が良好で、曲げ弾性率、線膨張率の優れた下記の物性を示し、かつ良好な成形外観を実現する。
(a)MFR: 45g/10分以上
(b)曲げ弾性率:1600MPa以下
(c)線膨張率:5.7×10-5cm/cm・℃以下
【0028】
また、本発明の自動車外装部材は、上述した本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に射出成形などの各種成型法を適用することにより得られるものである。具体的には、厚さtに対する長さLの比(L/t)が200以上である薄肉長尺形状を有する自動車用サイドモール(フロントサイドモール及びリアサイドモール)、オーバーフェンダーなどとして広く使用される。
【0029】
【実施例】
以下、実施例及び比較例あげて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例における測定法及び実施例で用いた原材料は、以下の通りである。
[I]測定法
(1)ダイスウェル比(ME):
メルトインデクサーのシリンダー内温度を190℃に設定する。オリフィスとして、長さ8.00mm、内径1.00mmφ、L/D=8のものを用いる。また、オリフィス直下にエタノールを入れたメスシリンダーを、オリフィスとエタノール液面との距離が20±2mmとなる位置に置く。この状態でサンプルをシリンダー内に投入し、1分間の押出量が0.1±0.03gになるように荷重を調節する。6分後から7分後の押出物をエタノール中に落とし、固化してから採取する。採取した押出物のストランド状サンプルの直径を上端から1cm部分と、下端から1cm部分、及び中央部分の3箇所で最大値、最小値を測定し、計6箇所測定した直径の平均値をもってME値とした。
【0030】
(2)メルトフローレート(MFR):
ASTM−D1238に準拠し、2.16kg荷重にて230℃の温度で測定した。
(3)密度:
JIS K7112に準拠
(4)曲げ弾性率:
JIS K7203に準拠し、23℃において曲げ速度2mm/分で測定した
(5)線膨張率:
JIS K7197に規定された方法に従い、昇温速度2℃/分、荷重4kPa、測定範囲25〜80℃にて実施した(単位:×10-5cm/cm・℃)。本評価では、線膨張係数が小さいほど、寸法安定性が優れていると言える。
【0031】
(6)ウェルド外観:
図1に示すような開口部を設けた肉厚4mmの平板モデル成形品を220℃で射出成形して、A部分のウェルド外観の目立ち安さを目視で判定した。判定基準は、下記3ランクとした。
○:ウェルド部が目立たない
△:ウェルド部が若干目立つ
×:ウェルド部がかなり目立つ
(7)ボイド特性:
図1に示すような開口部を設けた肉厚4mmの平板モデル成形品を220℃で射出成形して、そこに発生したボイドの個数を判定した。
【0032】
[II]原料
(1)ポリプロピレン系樹脂(A)
MFR及びエチレン含有量の異なるプロピレン・エチレンブロック共重合体に、パーオキサイドとして、所定量の1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンをスーパーミキサー(川田製作所製)で5分間混合した後、連続混練機(神戸製鋼社製KCM50)と押出機(神戸製鋼社製KE65)を接続し、210℃(KCM50)と250℃(KE65)の設定温度で混練造粒することによりポリプロピレン系樹脂組成物を得た。出発原料の物性及びパーオキサイドとの溶融混練後のダイスウェル比(ME)を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
(2) エチレン・α―オレフィンランダム共重合体
エチレン・オクテンランダム共重合体((B)成分)及び、エチレン・ブテンランダム共重合体((C)成分)を総称して、エチレン・α―オレフィンランダム共重合体とする。エチレン・オクテンランダム共重合体は、α―オレフィンをオクテンと示し、エチレン・ブテンランダム共重合体は、α―オレフィンをブテンと示す。各成分のMFR及び密度を表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
(3)タルク(D)の平均粒径を表3に示す。
【0037】
【表3】
【0038】
[実施例1〜3及び比較例1〜10]
表1〜3に示す原料を、表4に示す組成の割合で配合した。更に組成物100重量部に対して、テトラキス[メチレン−3−(3´5´−ジ−t−ブチル−4´−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバガイギー社製IRGANOX1010)0.1重量部、ステアリン酸マグネシウム0.3重量部を配合して、スーパーミキサー(川田製作所製)で5分間混合した後、二軸混練機(神戸製鋼社製KCM50)にて210℃の設定温度で混練造粒することによりポリプロピレン系樹脂組成物を得た。その後、型締め圧100トンの射出成形機にて成形温度210℃で各種試験片を作成し、上記各種測定法に従って測定を行った。評価結果を表5に示す。
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
表5の評価結果から明らかな通り、本発明の実施例に比べ、比較例1,6はMFRが小さく流動性に劣り、比較例3は、曲げ弾性率が高すぎ、比較例2,7,9,10は線膨張率が大きく、寸法安定性に劣る。また、比較例4は、ウェルド外観に劣り、比較例5,8はボイド特性に劣る。これらの原因は、配合成分のいずれか一つ以上が本件請求項記載の要件を外れており、該要件の必要性が分かる。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ポリプロピレン系樹脂に、特定のエチレン・オクテンランダム共重合体、エチレン・ブテンランダム共重合体、タルクを適切に選択して使用することとしたため、成形性、成形外観に優れる自動車外装材用ポリプロピレン系樹脂組成物を提供することができる。即ち、本発明の自動車外装材用樹脂組成物は、かかる優れた特性を有するため、これを原料とした成形品は、図7に示したような自動車サイドモールの製造に有利に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ウェルド外観及びボイド特性の測定用成形品である。
【図2】自動車サイドモールの射出成形に用いた金型を示す断面図である。
【図3】自動車サイドモールの射出成形に用いたキャビティ金型の斜視図である。
【図4】自動車サイドモールの底面図である。
【図5】自動車サイドモールの断面図である。
【図6】自動車サイドモールの上面図である。
【図7】自動車サイドモールを使用した自動車を示す側面図である。
【符号の説明】
1.平板モデル成形品
2.ゲート
3.開口部
4.キャビティ金型
5.コア金型
6.キャビティ部
7.ゲート部
8.ランナー部
9.ホットランナー部
10.リブ部
11.フェンダーサイドモール
12.フロントドアサイドモール
13.リアドアサイドモール
A.ウェルドライン
Claims (3)
- 下記に示す(A)成分が35〜55重量%、(B)成分が15〜25重量%、(C)成分が5〜15重量%及び(D)成分が20〜25重量%であり、かつ、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計として45重量%以上を含有する樹脂組成物であって、該組成物の物性が、メルトフローレート(MFR)45〜58g/10分、曲げ弾性率1540〜1600MPa、かつ線膨張率5.0×10 -5 〜5.7×10-5cm/cm・℃であることを特徴とする自動車外装材用ポリプロピレン系樹脂組成物。
(A)成分:プロピレン単独重合体部分のMFRが250〜350g/10分、ブロック共重合体のMFRが100〜140g/10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体に、パーオキサイドを0.0005〜0.005重量%配合したものを押出機にて溶融混練したダイスウェル比(ME)が1.0〜1.1のポリプロピレン系樹脂
(B)成分:MFRが、4〜20g/10分で、密度が0.870〜0.880であるエチレン・オクテンランダム共重合体
(C)成分:MFRが、4〜20g/10分で、密度が0.855〜0.865であるエチレン・ブテンランダム共重合体
(D)成分:レーザー回折法によって測定した平均粒径が10μm以下であるタルク
[但し、メルトフローレート(MFR)は、ASTM−D1238に準拠し、2.16kg荷重にて230℃の温度で測定したものであり、
曲げ弾性率は、JIS K7203に準拠し、23℃において曲げ速度2mm/分で測定したものであり、
線膨張率は、JIS K7197に規定された方法に従い、昇温速度2℃/分、荷重4kPa、測定範囲25〜80℃にて実施したものであり、
及び、ダイスウェル比(ME)は、メルトインデクサーのシリンダー内温度を190℃に設定し、オリフィスとして、長さ8.00mm、内径1.00mmφ、L/D=8のものを用い、また、オリフィス直下にエタノールを入れたメスシリンダーを、オリフィスとエタノール液面との距離が20±2mmとなる位置に置き、この状態でサンプルをシリンダー内に投入し、1分間の押出量が0.1±0.03gになるように荷重を調節し、6分後から7分後の押出物をエタノール中に落とし、固化してから採取し、採取した押出物のストランド状サンプルの直径を上端から1cm部分と、下端から1cm部分、及び中央部分の3箇所で最大値、最小値を測定し、計6箇所測定した直径の平均値をもってME値としたものである。] - 請求項1記載の自動車外装材用ポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形してなる自動車外装部材。
- 請求項1記載の自動車外装材用ポリプロピレン系樹脂組成物を成形してなる厚さtに対する長さLの比(L/t)が200以上である薄肉長尺形状を有する自動車用サイドモール。
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