JP4725136B2 - トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−2−カルボン酸エステルの製造法 - Google Patents
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Description
トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−2−カルボン酸のエステル(以下、TCDCEと称する)を製造する場合には、ジシクロペンタジエン(以下、DCPDと称す)を水素化して得られるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3−エン(以下、DHDCPDと称す)を硫酸等の強酸中で一酸化炭素と水との反応によりトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−2−カルボン酸(以下、TCDAと称する)とし、これをエステル化する方法が採られる。
しかしながら、シクロオレフィン類は、カルボニル化反応において重合し易く、TCDAを高い収率で得ることができない。このため、TCDAを高収率で得る方法として、DCPDとギ酸を反応させた後水添して得られるトリシクロ[5.2.1.02,6]デク−8−イルホルメートと無機強酸性触媒を接触させながら反応させる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。ところがこのカルボン酸合成方法では、硫酸、HF等の強酸を大量に消費するために経済的とは言えない。
TCDCEを木様香料として用いる場合には、Endo体/Exo体比が0.5以下であることが特に望まれているが、上記文献中には、この異性体比の制御法に関しては精密蒸留で分けることができるとされているのみで、反応条件による制御方法に関しては何の知見も開示されていない。精密蒸留でこれらエステルの混合物を分ける方法では、不要留分の有効利用が図られない限り経済的な方法とは言えない。
このため、反応条件による構造異性体の有効な制御法が望まれていた。
本発明の目的は、Endo体/Exo体比が0.5以下であるTCDCEを経済的に有利な方法で製造することである。
また、カルボニル化反応の際の反応温度を0℃以上とすることにより、カルボニル化収率を高められることが分かったが、40℃を超えると、DHDCPDの異性化反応が進行し、その結果、Endo体/Exo体比が0.6以上となってしまうことが分かった。
以上の知見から、カルボニル化時に存在するアルコール量を制御し、かつカルボニル化反応の際の反応温度を制御することにより、不飽和結合を有した不純物エステルの生成量が少なく、Endo体/Exo体比が低いTCDCEを高収率に得る方法を見い出し本発明に至った。
(1)HF、およびトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3−エンに対し0.05〜0.7倍モルのアルコールの存在下、反応温度0〜40℃の範囲でトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3−エンと一酸化炭素を反応せしめてアシルフロライドを得る工程
(2)アルコールを追加した上で(1)で得られたアシルフロライドをエステル化し、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−2−カルボン酸エステルを得る工程
反応収率について、広範囲の温度条件下で鋭意検討を行ったところ、0℃〜40℃の条件範囲でEndo体/Exo体比0.5以下のTCDCEが得られ、しかも、低Endo体/Exo比ほど高収率でTCDCEが得られることが分かった。
すなわち、本発明においてカルボニル化反応は0℃〜40℃、好ましくは20℃〜30℃の範囲で実施する。反応温度がこの範囲よりも高い場合には、高Endo体/Exo体比、および重合生成物が副生し収率低下を招くので好ましくない。また、低い場合では、高Endo体/Exo体比、および収率低下を招き、さらに、一酸化炭素の圧が低すぎる場合と同様にカルボニル化反応が十分に進行せず、製品TCDCE中に不飽和体が混入するので好ましくない。
本発明において使用されるアルコールとしては、カルボニル化反応と同様にメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノールの如き一価アルコールを用いる。
こうして得られたエステル化生成物からHFを留去した後、蒸留等の常法により精製し製品のTCDCEが得られる。
市販の高純度DCPDをCu−Cr水添触媒を用い、水素圧2MPa、反応温度90℃で、水素の吸収が認められなくなるまで約5時間反応させた。反応液は濾過によりCu−Cr水添触媒を取り除き、次いで蒸留等の常法により精製し、原料であるDHDCPDを得た。(純度98.5%)
ナックドライブ式撹拌機と上部に3個の入口ノズル、底部に1個の抜き出しノズルを備え、ジャケットにより内部温度を制御できる内容積500mlのステンレス製オートクレーブを用いた。
まずオートクレーブ内部を一酸化炭素で置換した後、フッ化水素150g(7.5モル)を導入し30℃に冷却し、一酸化炭素で2MPaまで加圧した。
反応温度を30℃に保持し、かつ反応圧力を2MPaに保ちながら、DHDCPD/エタノール/n−ヘプタン=1/0.10/0.68(重量比)(モル比:1/0.30/0.91)224gをオートクレーブ上部より供給しカルボニル化によりアシルフロライドを合成した。DHDCPDの供給終了後、一酸化炭素の吸収が認められなくなるまで約10分間撹拌を継続した。この時の一酸化炭素の吸収量は0.71モルであった。
次に、反応温度を0℃に保ちながら、エタノールをオートクレーブ上部より0.7倍モル(DHDCPD基準)供給して、撹拌下にて1時間エステル化を行った。
反応液をオートクレーブ底部より氷水中に抜き出し油相と水相を分離した後、油相を2%苛性ソーダ水溶液100mlで2回,蒸留水100mlで2回洗浄し、10gの無水硫酸ナトリウムで脱水した。得られた液を内部標準法によりガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、TCDCE収率63.1%(DHDCPD基準)、Endo体/Exo体比=0.45の反応成績が得られ、不飽和体は0.42%含まれていた。
DHDCPD/エタノール/n−ヘプタン=1/0.27/0.68(重量比)(モル比:1/0.80/0.91)の組成の原料液を用いて、反応温度30℃、一酸化炭素圧力2MPaでカルボニル化を行い、次いで0.2倍モル(DHDCPD基準)のエタノールを供給しエステル化を行った。得られたサンプルを実施例1と同様の前処理を行って分析したところ、TCDCE収率62.2%(DHDCPD基準)、Endo体/Exo体比=0.41の反応成績が得られたが、不飽和体は2.15%含まれていた。実施例1に比べ、不飽和体の生成が顕著であった。
カルボニル化におけるアルコールのモル比を変えた以外は実施例1と同様にカルボニル化とエステル化を行った(アルコールの全使用量は実施例1と同じ)。反応条件と反応成績を表1に示す。
実施例2、3では、アルコールの添加量が本発明の範囲内であったため、Endo体/Exo体比は0.5以下であり、また不飽和体の生成量も1%以下と少なかった。
比較例2では、不飽和体の生成量は1%以下と少なかったが、アルコールを添加しなかったため異性化反応が促進し、Endo体/Exo体比は0.5を超えた。
カルボニル化反応温度を変えた以外は実施例1と同様にカルボニル化とエステル化を行った。反応条件と反応成績を表1に示す。
実施例4、5では、反応温度が本発明の範囲内であったため、Endo体/Exo体比は0.5以下であり、また不飽和体の生成量も1%以下と少なかった。
比較例3では、反応温度が本発明の範囲より高かったため、異性化反応が促進し、Endo体/Exo体比は0.5を超えた。
比較例4では、反応温度が本発明の範囲より低かったため、不均化が促進し、不飽和体の生成量が1.55%と多かった。
Claims (2)
- トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3−エンを一酸化炭素およびアルコールと反応させてトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−2−カルボン酸エステルを製造する方法であって、以下の(1)および(2)の工程を実施することにより、不飽和体含量が1%以下、エキソ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−エンド−2−カルボン酸エステル/エンド−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−エキソ−2−カルボン酸エステルの構成比が0.5以下である高純度トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−2−カルボン酸エステルを得ることを特徴とする製造法。
(1)HF、およびトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3−エンに対し0.05〜0.7倍モルのアルコールの存在下、反応温度0〜40℃の範囲でトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3−エンと一酸化炭素を反応せしめてアシルフロライドを得る工程
(2)アルコールを追加した上で(1)で得られたアシルフロライドをエステル化し、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−2−カルボン酸エステルを得る工程 - (1)および(2)の工程におけるアルコールの合計使用量が、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3−エンに対し1〜1.5倍モルである請求項1に記載の製造法。
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