JP4724896B2 - 熱可塑性樹脂組成物および成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形時の流動性、計量安定性および得られた成形品の耐衝撃特性、耐熱特性、耐薬品性、疲労特性、異方性が改良された熱可塑性樹脂組成物とその製造方法および成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
多くのポリスチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテルなどの熱可塑性樹脂は、その優れた諸特性を生かし、射出成形材料として機械機構部品、電気電子部品、自動車部品などの幅広い分野に利用されつつある。一方、成形品への要求が技術の進歩と共に高くなり、より複雑な形状のものが要求され、そのため流動性向上が望まれるようになってきた。
【0003】
そこで分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性の液晶性ポリマーが優れた流動性と機械的性質を有する点で注目され、熱可塑性樹脂の流動性および機械特性を向上させるために数々のアロイ化技術が検討されている。これらのアロイ化技術は例えば、特開平2−102257号公報、特開平3−47861号公報、特開平5−70700号公報、特開平5−112709号公報、特開平6−200129号公報、特開平7−331051号公報、特開平9−12744号公報などに開示されている。特開平2−102257号公報と特開平3−47861号公報は、熱可塑性樹脂の溶融温度で配合することができる、熱変形温度が適当に低い液晶性樹脂を配合して機械物性、耐熱性、寸法安定性などを改良した熱可塑性樹脂組成物に関するものであり、特開平5−70700号公報は、液晶性樹脂の液晶開始温度より低い温度で成形可能な熱可塑性樹脂と液晶性樹脂からなり、組成物を伸張させることなどにより液晶性樹脂の分散粒子を配向させ物性を改良した熱可塑性樹脂組成物に関するものである。また、特開平5−112709号公報は、マトリックス樹脂であるポリカーボネート樹脂より高い融点を有する液晶性ポリマーを配合して分散粒子を配向させ、再成形品の強度、剛性低下を低減した成形用樹脂組成物に関するものである。また、特開平6−200129号公報は、フェノール性水酸基末端量の多いポリカーボネート樹脂に液晶性樹脂を配合して両樹脂の相互作用により層剥離を改良した可塑性樹脂組成物に関するものである。また、特開平7−331051号公報は、フェノール性水酸基末端量の多いポリカーボネート樹脂に難燃剤と液晶性樹脂を配合し、難燃特性を改良した熱可塑性樹脂組成物に関するものである。また、特開平9−12744号公報は、配合した液晶性樹脂が連続相をなす液晶性ポリエステル樹脂組成物フィルムに関するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
確かに上記の方法で成形方法を種々工夫することにより強度・剛性等は向上するが、しかし、特開平6−200129号公報および特開平7−331051号公報記載の方法は、フェノール性水酸基末端基量の多いポリカーボネートを好んで用いているため、ポリカーボネートと液晶性樹脂の相互作用が強くなりすぎ、液晶性樹脂添加効果が薄れ、分散粒子径も小さくなる結果、ポリカーボネート単独の場合に比べて耐衝撃強度が低下したり、流動性や耐薬品性向上にも効果がない。また、特開平5−70700号公報および特開平5−112709号公報記載の方法は、熱可塑性樹脂と液晶性樹脂とを一旦液晶性ポリマーの融点より高い温度に加熱して溶融状態で混練したのち、液晶性樹脂粒子を配向させるものであるため、樹脂を溶融混練する際に相互作用が強くなりすぎ、ポリカーボネート樹脂などの液晶性樹脂と反応性を有する熱可塑性樹脂においては変性が起こり、若干機械特性が向上するが十分とはいえず、耐薬品性、耐熱性が低下する。機械機構部品、自動車部品などの用途に対しては、エンジンオイルやブレーキオイル、ギアオイルなどの機械オイル、ウインドウウォッシャー液やバッテリー液などをはじめとする種々の薬品への耐性が要求される。また、電気電子部品やその他の用途においても、その加工工程や使用環境の多様化にともない洗浄剤やその他の有機溶剤に対する耐性が必要となり、耐薬品性の向上が望まれるようになっており、このような耐薬品性の低下は好ましくない。また、特開平5−112709号公報をはじめ、その他特開平2−102257号公報、特開平3−47861号公報、特開平9−12744号公報においては、液晶性樹脂の融点以上での混練が好ましく行われているが、その場合、液晶性樹脂と熱可塑性樹脂の相互作用が強くなりすぎ、流動性や耐薬品性が低下し、好ましくない。
【0005】
本発明は上記の問題を解決し、成形時の流動性、計量安定性および得られた成形品の耐衝撃特性、耐熱特性、耐薬品性、疲労特性、異方性が改良された熱可塑性樹脂組成物およびその成形品を得ることを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は
(1)フェノール性末端基(EP)と非フェノール性末端基(EN)の当量比(EP)/(EN)が1/20以下であるポリカーボネート系樹脂である熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して前記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)からなる液晶性ポリエステルである液晶性樹脂(B)5〜50重量部を配合してなる樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度の変化率が下式1を満足する熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、繊維状充填剤と非繊維状充填剤とからなる充填剤を0.5〜300重量部配合してなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物、
変化率(%)=|(TgA−TgT)/TgA|×100 ≦ 2 −[式1]
TgA:熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度
TgT:樹脂組成物中の熱可塑性樹脂(A)由来のガラス転移温度
(2)該樹脂組成物中に分散する液晶性樹脂粒子の数平均粒子径(成形片の中心部を流れ方向に切削して得られた切片を透過型電子顕微鏡により観察した分散粒子50個の長径の平均値)が0.5〜5μmであることを特徴とする上記(1)記載の熱可塑性樹脂組成物、
(3)該樹脂組成物中に分散する液晶性樹脂粒子のアスペクト比(長径/短径)が3未満であることを特徴とする上記(1)または(2)記載の熱可塑性樹脂組成物、
【0009】
(4)熱可塑性樹脂(A)、液晶性樹脂(B)および充填材を、液晶性樹脂(B)の液晶開始温度以上融点以下の温度で溶融混練することにより上記(1)〜(3)いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物を製造することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法、
(5)熱可塑性樹脂(A)、液晶性樹脂(B)および充填材を配合した組成物を、液晶性樹脂(B)の液晶開始温度以上融点以下の温度で溶融加工することにより上記(1)〜(3)いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物から構成される成形品を製造することを特徴とする成形品の製造方法、
(6)上記(1)〜(3)いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物で構成してなる成形品であって、該成形品が機械機構部品である成形品、
(7)上記(1)〜(3)いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物で構成してなる成形品であって、該成形品が電気電子部品である成形品、
(8)上記(1)〜(3)いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物で構成してなる成形品であって、該成形品が自動車部品である成形品、
(9)上記(1)〜(3)いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物で構成してなる成形品であって、該成形品が板状部あるいは箱形部を有し、かつ厚み1.2mm以下の薄肉部を成形品全表面積に対して10%以上有することを特徴とする成形品を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
熱可塑性樹脂(A)とは、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂から選ばれた1種以上のものであるが、本発明においてはポリカーボネート系樹脂を用いる。
【0011】
スチレン系樹脂はスチレン及び/またはその誘導体から生成した単位を含有するものである。
【0012】
スチレン、その誘導体(これらを総称して芳香族ビニル系単量体と称する場合がある)から生成した単位の具体例としては、下記構造単位のものが挙げられる。
【0013】
【化7】
R3〜R7は、水素、塩素等のハロゲン、炭素数1〜10の脂肪族基、芳香族基、脂環式、スルホニル基、ニトロ基などの基を示し、これらはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0014】
R3〜R7の具体例としては、水素、塩素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、アリル、ブチル、フェニル、ベンジル、メチルベンジル、クロルメチル、シアノメチル、シアノメトキシ、エトキシ、フェノキシ、ニトロなどの基が挙げられ、これらはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0015】
スチレン、その誘導体の好ましい例として、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなどが挙げられるが、特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。また、これらを併用することもできる。
【0016】
スチレン系樹脂としては、スチレン系(共)重合体、ゴム強化スチレン(共)重合体が挙げられる。スチレン系(共)重合体としては芳香族ビニル系単量体の1種または2種以上を重合した重合体、芳香族ビニル系単量体の1種または2種以上とそれと共重合可能な単量体の1種または2種以上を共重合した共重合体が挙げられる。ゴム強化スチレン(共)重合体としては、ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体の1種または2種以上をグラフト重合したゴム強化グラフト重合体、ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体の1種または2種以上とそれと共重合可能な単量体の1種または2種以上をグラフト共重合したグラフト共重合体が挙げられる。
【0017】
上記芳香族ビニル系単量体と共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニルなどが挙げられる。
【0018】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられるが、メタクリル酸メチルが好ましく用いられる。また、シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
【0019】
上記ゴム状重合体としては、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)などのジエン系ゴム、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系ゴムおよびエチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)などのポリオレフィン系ゴムが挙げられ、なかでもポリブタジエン、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)が好ましく用いられる。
【0020】
ゴム強化スチレン系(共)重合体を更に詳しく説明すると、ゴム状重合体(a)に芳香族ビニル化合物(b)から選ばれる少なくとも一種、またはそれと共単量体であるメタクリル酸エステル(c)およびシアン化ビニル化合物(d)から選ばれる少なくとも1種とがグラフト重合したグラフト(共)重合体(重合体(i))に芳香族ビニル化合物(b)、メタクリル酸エステル(c)等から選ばれる少なくとも1種のビニル化合物、またはそれとシアン化ビニル化合物(d)が重合した(共)重合体(重合体(ii))を配合した樹脂である。
【0021】
重合体(i)として、(a)に対し、(b)ならびに、(c)および/または(d)をグラフト重合する場合、ゴム状重合体(a)の共重合量は5〜80重量%が好適である。グラフト成分中に、シアン化ビニル化合物(d)を含む場合、芳香族ビニル化合物(b)、メタクリル酸エステル(c)などから選ばれるビニル化合物の1種または2種以上の合計が50〜97重量%であり、シアン化ビニル化合物(d)が3〜50重量%が好ましい。
【0022】
重合体(i)の重合方法は特に限定されず、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合および塊状−懸濁重合などの公知の方法を用いることができる。
【0023】
一方、重合体(ii)中のシアン化ビニル化合物(d)の共重合量としては3〜50重量%が適当である。
【0024】
重合体(ii)の重合方法は特に限定されず、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合および塊状−懸濁重合などの公知の方法を用いることができる。
【0025】
上記グラフト(共)重合体としては、重合体(i)を必須成分とし、重合体(ii)を任意の割合で配合して用いることができる。
【0026】
本発明において好ましいスチレン系樹脂としては、PS(ポリスチレン)等のスチレン系重合体、HIPS(高衝撃ポリスチレン)等のゴム強化スチレン系重合体、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合体)等のスチレン系共重合体、AES(アクリロニトリル/エチレン・プロピレン・非共役ジエンゴム/スチレン共重合体)、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体)、MBS(メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン共重合体)などのゴム強化(共)重合体等が挙げられ、なかでも特にPS(ポリスチレン)等のスチレン系重合体、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合体)等のスチレン系共重合体、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体)が好ましい。ポリスチレン系樹脂は通常、末端基の構造、量に関わりなく好ましく用いることができ、液晶性樹脂との相互作用を改良するために、もしくはそれ以外の目的で、無水マレイン酸やグリシジルメタクリレートなどの反応性基を有する化合物を適量添加した変性ポリスチレンを用いた場合でも、液晶性樹脂を配合した時のガラス転移温度の変化率が上式1を満足する範囲にあれば、これらも好ましく用いることができる。
【0027】
ポリカーボネート系樹脂は、カーボネート結合を有し、芳香族二価フェノール系化合物とホスゲン、または炭酸ジエステルなどとを反応させることにより得られる芳香族ホモまたはコポリカーボネートが挙げられる。ガラス転移温度の変化率を本発明の範囲とするために、芳香族二価フェノール系化合物とホスゲンを反応させることにより得られるフェノール性末端基(EP)と非フェノール性末端基(EN)の当量比(EP)/(EN)が1/20以下であるポリカーボネート系樹脂を用いることが好ましく、より好ましくは1/40以下であり、さらに好ましくは1/70以下である。
【0028】
ポリカーボネート系樹脂の末端基の測定は、例えば、ポリカーボネート系樹脂を酢酸酸性メチレンクロライドに溶解し、四塩化チタンを加え、生成する赤色錯体を546nmで測光定量して行なうことができる。
【0029】
該芳香族ホモまたはコポリカーボネート樹脂は、メチレンクロライド中1.0g/dlの濃度で20℃で測定した対数粘度が0.2〜3.0dl/g、特に0.3〜1.5dl/gの範囲のものが好ましく用いられる。ここで二価フェノール系化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が使用でき、これら単独あるいは混合物として使用することができる。上記中、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。
【0030】
ポリフェニレンエーテル系樹脂とは、下記構造単位で表される熱可塑性樹脂であり、クロロホルム中、30℃で測定した固有粘度が0.01〜0.80dl/gの重合体が好ましく用いられる。
【0031】
【化8】
R8〜R11 は、水素、ハロゲン、炭素数1〜10の脂肪族基、芳香族基、脂環式、スルホニル基、ニトロ基などの基が挙げられ、これらはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0032】
R8〜R11 の具体例としては、水素、塩素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、アリル、ブチル、フェニル、ベンジル、メチルベンジル、クロルメチル、シアノメチル、シアノメトキシ、エトキシ、フェノキシ、ニトロなどの基が挙げられ、これらはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0033】
具体的には、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、2,6−ジメチルフェノール/2,4,6−トリメチルフェノール共重合体、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリエチルフェノール共重合体などが挙げられる。また、ポリフェニレンエーテル系樹脂は、グラフト構造を有していても良く、別の第三成分を添加して部分的に変性改質したものでも用いることができる。ポリフェニレンエーテル系樹脂は、その末端基構造、量に関わりなく好ましく使用することができるが、例えばポリスチレンや環状ポリオレフィン系樹脂などを添加して、それらとの相溶性改良のために、もしくは別の目的で無水マレイン酸やグリシジルメタクリレートなどの反応性基を有する化合物を適量添加した変性ポリフェニレンエーテルを用いた場合でも、液晶性樹脂を配合した時のガラス転移温度の変化率が前記式1を満足する範囲にあれば、これらも好ましく用いることができる。
【0034】
また、熱可塑性樹脂(A)は2種以上を併用してもよく、具体的には、ABSとポリカーボネートなどが挙げられる。また、その他特性、例えば耐候性等を付与させるために熱可塑性樹脂(A)の一部(通常、(A)成分の85%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下)を結晶性の熱可塑性樹脂に置き換えることが可能であり、このような結晶性の熱可塑性樹脂としては、例えばポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられ、具体的には、ポリカーボネートとポリブチレンテレフタレートの組み合わせ、ポリカーボネートとポリエチレンテレフタレートの組み合わせなどが挙げられる。
【0035】
液晶性樹脂(B)とは、溶融時に異方性を形成し得るポリマーであり、液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミド、液晶性ポリカーボネート、液晶性ポリエステルエラストマーなどが挙げられ、なかでも分子鎖中にエステル結合を有するものが好ましく、特に液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドなどが好ましく用いられる。本発明においては液晶性ポリエステルを用いる。
【0036】
芳香族オキシカルボニル単位としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などから生成した構造単位、芳香族ジオキシ単位としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどから生成した構造単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’ジフェニルエーテルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などから生成した構造単位、アルキレンジオキシ単位としてはエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等から生成した構造単位(なかでもエチレングリコールから生成した構造単位が好ましい。)、芳香族イミノオキシ単位としては、例えば、4−アミノフェノールなどから生成した構造単位が挙げられる。
【0037】
液晶性ポリエステルの具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物および/または脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、ハイドロキノンおよびその他芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸およびイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルなどが挙げられる。
【0038】
中でも好ましく使用できる液晶性樹脂(B)は芳香族オキシカルボニル単位としてp−ヒドロキシ安息香酸からなる構造単位を含む液晶性ポリエステルであり、また、エチレンジオキシ単位を構造単位として含む液晶性ポリエステルも好ましく使用できる。さらに好ましくは下記構造単位(I) 、(III) 、(IV)からなるポリエステルあるいは(I) 、(II)、(III) 、(IV)の構造単位からなるポリエステルであり、本発明においては(I) 、(II)、(III) 、(IV)の構造単位からなるポリエステルを用いる。
【0039】
【化9】
(ただし式中のR1 は
【0040】
【化10】
から選ばれた一種以上の基を示し、R2 は
【0041】
【化11】
から選ばれた一種以上の基を示す。また、式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
なお、構造単位(II)および(III) の合計と構造単位(IV)は実質的に等モルであることが望ましい。
【0042】
上記構造単位(I) はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4´−ジヒドロキシビフェニル、3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた一種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III) はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた芳香族ジカルボン酸から生成した一種以上の構造単位を各々示す。これらのうちR1
【0043】
【化12】
であり、R2 が
【0044】
【化13】
であるものが特に好ましい。
【0045】
上記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)の共重合量は任意である。しかし、本発明の特性を発揮させるためには次の共重合量であることが好ましい。
【0046】
すなわち、上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体の場合は、上記構造単位(I)および(II)の合計は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して30〜95モル%が好ましく、40〜93モル%がより好ましい。また、構造単位(III)は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して70〜5モル%が好ましく、60〜7モル%がより好ましい。また、構造単位(I)と(II)のモル比[(I)/(II)]は好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)および(III)の合計と実質的に等モルであることが好ましい。
【0047】
ここで実質的に等モルとは、末端を除くポリマー主鎖を構成するユニットが等モルであるが、末端を構成するユニットとしては必ずしも等モルとは限らないことを意味する。
【0048】
一方、上記構造単位(II) を含まない場合は流動性の点から上記構造単位(I)は構造単位(I)および(III)の合計に対して40〜90モル%であることが好ましく、60〜88モル%であることが特に好ましく、構造単位(IV)は構造単位(III)と実質的に等モルであることが好ましい。
【0049】
また液晶性ポリエステルアミドとしては、上記構造単位(I)〜(IV)以外にp−アミノフェノールから生成したp−イミノフェノキシ単位を含有した異方性溶融相を形成するポリエステルアミドが好ましい。
【0050】
なお、上記好ましく用いることができる液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドは、上記構造単位(I)〜(IV)を構成する成分以外に3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノ安息香酸などを液晶性を損なわない程度の範囲でさらに共重合せしめることができる。
【0051】
また、本発明における液晶性樹脂(B)の溶融粘度は0.5〜200Pa・sが好ましく、特に1〜100Pa・sがより好ましい。また、流動性により優れた組成物を得ようとする場合には、溶融粘度を50Pa・s以下とすることが好ましい。
【0052】
なお、この溶融粘度は融点(Tm)+10℃の条件で、ずり速度1,000(1/秒)の条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
【0053】
ここで、融点(Tm)とは示差熱量測定において、重合を完了したポリマを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1 )の観測後、Tm1 +20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2 )を指す。
【0054】
熱可塑性樹脂(A)と液晶性樹脂(B)の溶融粘度差は、混練時、成形時ともにある程度大きいことが好ましい。一般に液晶性樹脂(B)の方が溶融粘度が大きい場合には偏分散する傾向があり、液晶性樹脂(B)の溶融粘度が熱可塑性樹脂(A)の溶融粘度と同じか(A)より小さい場合には均一分散する傾向があるが、混練時にはこのどちらの形態においても溶融粘度差が大きい方が好ましく、各特性、特に流動性や耐衝撃特性を発揮するためには、液晶性樹脂(B)が熱可塑性樹脂(A)よりも溶融粘度が大きいことがより好ましく、具体的には混練条件下において、液晶性樹脂(B)の溶融粘度が熱可塑性樹脂(A)の溶融粘度の1.2倍以上であることが好ましい。また、成形時においては、射出成形を例として挙げるが、計量時に滞留時間や温度によって分散形態に若干の変化が生じる。一般に、計量時の滞留時間が長い程、また温度が高い程、偏分散から均一分散へと液晶性樹脂粒子が凝集もしくは微粒化して移行する傾向があり、計量時のモルフォロジー変化を少なくするために、液晶性樹脂(B)が熱可塑性樹脂(A)よりも溶融粘度が大きいことが好ましい。しかし射出時においては、流動性などの特性発揮のために液晶性樹脂(B)が熱可塑性樹脂(A)よりも溶融粘度が低いことが好ましく、その差が大きい方がより好ましい。具体的には、射出条件下において、熱可塑性樹脂(A)の溶融粘度が液晶性樹脂(B)の溶融粘度の1.2倍以上であることが好ましい。
【0055】
液晶性樹脂の融点は、特に限定されないが、本発明の効果がより発現する液晶性樹脂(B)の数平均分散径の範囲内のものを得るために、好ましくは340℃以下、より好ましくは320℃以下である。
【0056】
本発明において使用する上記液晶性ポリエステルの製造方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。
【0057】
例えば、上記液晶性ポリエステルの製造において、次の製造方法が好ましく挙げられる。
【0058】
(1)p−ヒドロキシ安息香酸を除く成分のみから得られたポリエステルとp−アセトキシ安息香酸とを乾燥窒素気流下で加熱溶融し、アシドリシス反応によって共重合ポリエステルフラグメントを生成させ、次いで減圧し増粘させ、液晶性ポリエステルを製造する方法。
【0059】
(2)p−アセトキシ安息香酸および4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸縮重合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
【0060】
(3)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
【0061】
(4)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸のジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
【0062】
(5)p−ヒドロキシ安息香酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
【0063】
(6)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で(2)または(3)の方法により液晶性ポリエステルを製造する方法。
【0064】
液晶性ポリエステルの重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を使用することもできる。
【0065】
本発明で用いる熱可塑性樹脂(A)100重量部に対する液晶性樹脂(B)の配合量は5〜50重量部、さらに好ましくは5〜30重量部である。
【0066】
液晶性樹脂(B)の添加量が多すぎたり少なすぎたりした場合、本発明の効果である成形時の流動性、計量安定性や成形品の耐衝撃特性および異方性の改良効果などが同時に発揮されにくくなる。また、特に液晶性樹脂が多すぎる場合には、成形時に樹脂が会合するウェルド部の強度が大幅に低下する傾向にある。
【0067】
また、熱可塑性樹脂(A)に対し、液晶性樹脂(B)を配合すると、得られる樹脂組成物のガラス転移温度は、液晶性樹脂(B)の配合前の(A)のガラス転移温度から変化するが、 本発明の効果を発揮するためには、熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度に対する、樹脂組成物としたことによる熱可塑性樹脂のガラス転移温度の変化率(下記[式1]で表される変化率)を5%以下にすることが必須であり、好ましくは3%以下、より好ましくは0.05〜3%で、さらに好ましくは0.1〜2%である。本発明においては2%以下とする。これは、その他の充填材、添加剤を配合した場合にも必須の条件であり、好ましい範囲も同様である。
【0068】
熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度の5%超の変化は液晶性樹脂添加効果を著しく低減させ、上記範囲の場合のみ液晶性樹脂(B)が特異的なモルホロジーを形成するためと思われるが、特に本発明の効果である流動性、耐衝撃特性、耐薬品性がバランス良く発現する。
【0069】
ガラス転移温度の測定は、例えば示差走査熱量計(DSC)により行うことができ、この場合には室温から20℃/分の昇温速度で昇温して、観測される変曲点をガラス転移温度(Tg)とする。なお、樹脂組成物を測定する場合には、配合成分により、複数の変曲点が観測されることがあるが、その中から熱可塑性樹脂(A)由来の変曲点を選択してガラス転移温度とする。ガラス転移温度の変化率は絶対値評価とする。
【0070】
ガラス転移温度の変化率とは、示差走査熱量計(DSC)によって測定した熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度TgAと配合後の樹脂組成物中の熱可塑性樹脂(A)由来のガラス転移温度TgTにより下式1のように算出できる。なお、その他の充填材や添加剤を配合した場合には、それらすべてを配合した後に測定した熱可塑性樹脂(A)由来のガラス転移温度をTgTとして算出する。また、2種以上の熱可塑性樹脂(A)を配合してマトリックスとした系においては、マトリックス樹脂の当該各熱可塑性樹脂(A)に由来するガラス転移温度を測定し、それに対して液晶性樹脂を配合した後の樹脂組成物の各熱可塑性樹脂のガラス転移温度を測定し、各熱可塑性樹脂について変化率を算出し、各マトリックス樹脂のガラス転移温度の変化率を和したものを、全体の変化率として評価する。
【0071】
変化率(%)=|(TgA−TgT)/TgA|×100 −[式1]
また、熱可塑性樹脂(A)中に分散する液晶性樹脂(B)の数平均粒子径は特に限定されないが、本発明の効果、特に流動性と耐衝撃特性を発現するためには0.5〜5μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.7〜4.0μm、さらに好ましくは1.0〜2.5μmで、最も好ましくは1.0〜2.0μmである。
【0072】
液晶性樹脂(B)の数平均粒子径が上記範囲の場合には、本発明の効果である流動性、耐衝撃特性が特にバランス良く発現する。
【0073】
また、液晶性樹脂(B)の分散形状については特に限定されないが、耐衝撃特性などの特性について、より効果を発現するために、液晶性樹脂粒子のアスペクト比(長径/短径)が3未満であることが好ましく、より好ましくは1.05〜2.7、特に好ましいのは1.1〜2.5の球状もしくは楕円球状である。
【0074】
熱可塑性樹脂(A)中の液晶性樹脂(B)の数平均粒子径およびアスペクト比の測定方法は特に限定されないが、例えば成形片のコア層の中心部を流れ方向に切削して得られた切片をTEM(透過型電子顕微鏡)により観察、写真を撮影し、分散粒子50個の平均値をそれぞれ数平均粒子径およびアスペクト比として求めることができる。粒子径は長径方向で測定した。また、アスペクト比は各粒子の長径、短径を測定し、各粒子のアスペクト比を算出したのち平均して評価する。
【0075】
本発明において熱可塑性樹脂組成物の機械強度その他の特性を付与するために充填剤を使用することが可能であり、特に限定されるものではないが、繊維状、板状、粉末状、粒状など非繊維状の充填剤を使用することができる。具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填剤、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリ燐酸カルシウム、グラファイトなどの粉状、粒状あるいは板状の充填剤が挙げられる。上記充填剤中、主に用いる充填材としては、ガラス繊維や炭素繊維が好ましく、例えば電磁波シールド性や高弾性率などが必要な場合には炭素繊維がより好ましく使用される。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、ガラス繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
【0076】
炭素繊維はPAN系またはピッチ系の炭素繊維が例として挙げられ、成形時などの繊維折損を抑えるため高強度・高伸度タイプのものを用いることが望ましい。強度が低いものは脆く、コンパウンド、成形時の繊維折損で繊維長が極めて短くなってしまい、結果として電磁波シールドに必要な導電性を得にくくなる。繊維方向引張弾性率が300GPaを越えるようなものも、強度が格別高い特殊なものを除くと、破断伸びが小さくなるため折損しやすい。望ましい炭素繊維は、引張強度が3500MPa以上、引張弾性率が300GPa以下、破断伸度が1.4%以上の、すべて、あるいは少なくともいずれかの特性を満たす炭素繊維である。これらの特性を得ることのできるPAN系炭素繊維がより望ましい。本発明で用いる繊維状充填剤の繊維強化熱可塑性樹脂組成物中の重量平均繊維長は電磁波シールド性の点から、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.25mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上である。
【0077】
組成物中の繊維状充填剤の重量平均繊維長の測定方法は、例えば、組成物約5gをるつぼ中で550℃×7時間処理し灰化した後、残存した充填剤のうちから100mgを採取し、100ccの石鹸水中に分散させる。ついで、分散液をスポイトを用いて1〜2滴スライドガラス上に置き、顕微鏡下に観察して、写真撮影する。写真に撮影された充填剤の繊維長を測定する。測定は500本以上行い、重量平均繊維長を求める。炭素繊維の繊維長を求める際には灰化条件を誤ると繊維そのものが酸化、燃焼してしまう場合があるので注意が必要であり、窒素雰囲気下で灰化することが望ましい。用いる熱可塑性樹脂が可溶の場合には、溶媒を用いて組成物を溶かし繊維を取り出して繊維長を測定することもできる。
【0078】
本発明において、電磁波シールド性は以下のように規定する。繊維強化熱可塑性樹脂組成物を150mm角、厚み1mmの平板に成形し、この平板に電磁波を透過させた際の減衰率を、10〜1000MHzの周波数帯域で測定する。測定は、一般にアドバンテスト法と称される方法で測定する。具体的には(株)アドバンテスト製シールド材評価器TR17301Aを用い、プローブアンテナを用いて電界波について測定を行うことが可能である。電磁波シールド性を付与した組成物としては、一般的な電気・電子機器の筐体などに使用した際の、電磁波ノイズによる電気回路の誤動作の防止の点から、上記成形品を用い、上記方法であってかつ周波数300MHzで測定した場合の電界シールド性(電磁波の電界成分の減衰)が、20dB以上であり、より望ましい電界シールド性は30dB以上である。
【0079】
また、上記の充填剤は2種以上を併用して使用することもでき、特に繊維状充填剤とウィスカー、粉状、粒状、板状等の非繊維状充填剤を併用することが好ましい。
【0080】
例えば、ガラス繊維とガラスフレーク、ガラス繊維とマイカ、ガラス繊維とタルク、炭素繊維とチタン酸カリウムウィスカーなどの組み合わせが用いられ、特にガラス繊維にガラスフレークやマイカを併用した場合には、異方性がさらに低減されたり、計量安定性が向上するのみでなく、薄肉の50mm四方以上の大きさの平板状部を有するような成形品においてもそりなどの発生が抑制され好ましい。
【0081】
充填剤の併用割合は、充填剤全体量を100重量部とした場合に、繊維状充填剤50〜95重量部、非繊維状充填剤を5〜50重量部とすることが好ましく、更に好ましくは繊維状充填剤60〜95重量部、非繊維状充填剤を5〜40重量部である。
【0082】
たとえば、ガラス繊維や炭素繊維などの主に用いる好ましい充填剤を60〜95重量部、併用するマイカやガラスフレークなどの充填剤を5〜40重量部とすることができる。なお、本発明に使用する上記の充填剤はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
【0083】
上記の充填剤の添加量は樹脂組成物(A+Bの合計)100重量部に対し0.5〜300重量部であり、好ましくは10〜200重量部であり、より好ましく10〜50重量部である。
【0084】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、難燃性およびその他の特性を付与する目的で燐系化合物を添加することができる。燐系化合物とは、燐を含有する有機または無機化合物であれば特に制限はなく、例えば赤燐、ポリ燐酸アンモニウム、ポリホスファゼン、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスフィンオキシドなどが挙げられる。中でも赤燐、芳香族ホスフェートが好ましく使用できる。赤燐を添加した場合には、難燃性の他に長期耐熱性が改善され、芳香族ホスフェートを添加した場合には、難燃性の他に流動性が若干改善される。
【0085】
本発明に用いる赤燐は、そのままでは不安定であり、また、水に徐々に溶解したり、水と徐々に反応する性質を有するので、これを防止する処理を施したものが好ましく用いられる。このような赤燐の処理方法としては、特開平5−229806号公報に記載の赤燐の粉砕を行わず、赤燐表面に水や酸素との反応性が高い破砕面を形成させずに赤燐を微粒子化する方法、赤燐に水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムを微量添加して赤燐の酸化を触媒的に抑制する方法、赤燐をパラフィンやワックスで被覆し、水分との接触を抑制する方法、ε−カプロラクタムやトリオキサンと混合することにより安定化させる方法、赤燐をフェノール系、メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系などの熱硬化性樹脂で被覆することにより安定化させる方法、赤燐を銅、ニッケル、銀、鉄、アルミニウムおよびチタンなどの金属塩の水溶液で処理して、赤燐表面に金属燐化合物を析出させて安定化させる方法、赤燐を水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛などで被覆する方法、赤燐表面に鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、スズなどで無電解メッキ被覆することにより安定化させる方法およびこれらを組合せた方法が挙げられるが、好ましくは、赤燐の粉砕を行わずに赤燐表面に破砕面を形成させずに赤燐を微粒子化する方法、赤燐をフェノール系、メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系などの熱硬化性樹脂で被覆することにより安定化させる方法、赤燐を水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛などで被覆することにより安定化させる方法であり、特に好ましくは、赤燐表面に破砕面を形成させずに赤燐を微粒子化する方法、赤燐をフェノール系、メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系などの熱硬化性樹脂で被覆することにより安定化させる方法である。これらの熱硬化性樹脂の中で、フェノール系熱硬化性樹脂、エポキシ系熱硬化性樹脂で被覆された赤燐が耐湿性の面から好ましく使用することができ、特に好ましくはフェノール系熱硬化性樹脂で被覆された赤燐である。
【0086】
また樹脂に配合される前の赤燐の平均粒径は、難燃性、機械特性、耐湿熱特性およびリサイクル使用時の粉砕による赤燐の化学的・物理的劣化を抑える点から35〜0.01μmのものが好ましく、さらに好ましくは、30〜0.1μmのものである。
【0087】
なお赤燐の平均粒径は、一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置により測定することが可能である。粒度分布測定装置には、湿式法と乾式法があるが、いずれを用いてもかまわない。湿式法の場合は、赤燐の分散溶媒として、水を使用することができる。この時アルコールや中性洗剤により赤燐表面処理を行ってもよい。また分散剤として、ヘキサメタ燐酸ナトリウムやピロ燐酸ナトリウムなどの燐酸塩を使用することも可能である。また分散装置として超音波バスを使用することも可能である。
【0088】
また本発明で使用される赤燐の平均粒径は上記のごとくであるが、赤燐中に含有される粒径の大きな赤燐、すなわち粒径が75μm以上の赤燐は、難燃性、機械的特性、耐湿熱性、リサイクル性を著しく低下させるため、粒径が75μm以上の赤燐は分級等により除去することが好ましい。粒径が75μm以上の赤燐含量は、難燃性、機械的特性、耐湿熱性、リサイクル性の面から、10重量%以下が好ましく、さらに好ましくは8重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。下限に特に制限はないが、0に近いほど好ましい。
【0089】
ここで赤燐に含有される粒径が75μm以上の赤燐含量は、75μmのメッシュにより分級することで測定することができる。すなわち赤燐100gを75μmのメッシュで分級した時の残さ量Z(g)より、粒径が75μm以上の赤燐含量は(Z/100)×100(%)より算出することができる。
【0090】
また、本発明で使用される赤燐の熱水中で抽出処理した時の導電率(ここで導電率は赤燐5gに純水100mLを加え、例えばオートクレーブ中で、121℃で100時間抽出処理し、赤燐ろ過後のろ液を250mLに希釈した抽出水の導電率を測定する)は、得られる成形品の耐湿性、機械的強度、耐トラッキング性、およびリサイクル性の点から通常0.1〜1000μS/cmであり、好ましくは0.1〜800μS/cm、さらに好ましくは0.1〜500μS/cmである。
【0091】
また、本発明で使用される赤燐のホスフィン発生量(ここでホスフィン発生量は、赤燐5gを窒素置換した内容量500mLの例えば試験管などの容器に入れ、10mmHgに減圧後、280℃で10分間加熱処理し、25℃に冷却し、窒素ガスで試験管内のガスを希釈して760mmHgに戻したのちホスフィン(燐化水素)検知管を用いて測定し、つぎの計算式で求める。ホスフィン発生量(ppm)=検知管指示値(ppm)×希釈倍率)は、得られる組成物の発生ガス量、押出し、成形時の安定性、溶融滞留時機械的強度、成形品の表面外観性、成形品による端子腐食などの点から通常100ppm以下のものが用いられ、好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下である。
【0092】
このような好ましい赤燐の市販品としては、燐化学工業社製“ノーバエクセル”140、“ノーバエクセル”F5が挙げられる。
【0093】
本発明に使用される芳香族ホスフェートとは、下記式(1)で表されるものである。
【0094】
【化14】
まず前記式(1)で表される燐系化合物の構造について説明する。前記式(1)の式中nは0以上の整数である。またk、mは、それぞれ0以上2以下の整数であり、かつk+mは、0以上2以下の整数であるが、好ましくはk、mはそれぞれ0以上1以下の整数、特に好ましくはk、mはそれぞれ1である。
【0095】
また前記式(1)の式中、R7〜R14は同一または相異なる水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す。ここで炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−イソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、2−イソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、3−イソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、ネオイソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基などが挙げられるが、水素、メチル基、エチル基が好ましく、とりわけ水素が好ましい。
【0096】
またAr1、Ar2、Ar3、Ar4は同一または相異なるフェニル基あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換されたフェニル基を表す。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、インデニル基、アントリル基などが挙げられるが、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基が好ましく、特にフェニル基、トリル基、キシリル基が好ましい。
【0097】
またYは直接結合、O、S、SO2、C(CH3)2、CH2、CHPhを表し、Phはフェニル基を表す。
【0098】
好ましい芳香族ホスフェートの市販品としては、大八化学社製“PX−200”、“PX−201”、“CR−733S”、“CR−741”、“TPP”およびこれら相当品が挙げられる。
【0099】
本発明における燐系化合物の添加量は、熱可塑性樹脂(A)と液晶性樹脂(B)からなる樹脂組成物100重量部に対して通常0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜20重量部、より好ましくは0.06〜15重量部、さらに好ましくは0.08〜10重量部である。燐系化合物の添加量が少なすぎると難燃性向上効果が発現せず、多すぎると物性低下するとともに難燃効果とは逆に燃焼促進剤として働く傾向にある。
【0100】
本発明の熱可塑性樹脂組成物に、さらに赤燐を添加する場合には、赤燐の安定剤として金属酸化物を添加することにより、押出し、成形時の安定性や強度、耐熱性、成形品の端子腐食性などを向上させることができる。このような金属酸化物の具体例としては、酸化カドミウム、酸化亜鉛、酸化第一銅、酸化第二銅、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化スズおよび酸化チタンなどが挙げられるが、なかでも酸化カドミウム、酸化第一銅、酸化第二銅、酸化チタンなどのI族および/またはII族の金属以外の金属酸化物が好ましく、特に酸化第一銅、酸化第二銅、酸化チタンが好ましいが、I族および/またはII族の金属酸化物であってもよい。押出し、成形時の安定性や強度、耐熱性、成形品の端子腐食性の他に、非着色性をさらに向上させるためには酸化チタンが最も好ましい。
【0101】
金属酸化物の添加量は機械物性、成形性の面から熱可塑性樹脂(A)と液晶性樹脂(B)からなる樹脂組成物100重量部に対して0.01〜20重量部が好ましく、特に好ましくは0.1〜10重量部である。
【0102】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、酸化防止剤および熱安定剤(たとえばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(たとえばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、亜燐酸塩、次亜燐酸塩などの着色防止剤、滑剤、染料(たとえばニグロシンなど)および顔料(たとえば硫化カドミウム、フタロシアニンなど)を含む着色剤、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、導電剤あるいは着色剤としてカーボンブラック、結晶核剤、可塑剤、難燃剤としては赤燐または芳香族ホスフェートが好ましく用いられるが他の難燃剤(例えば臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、水酸化マグネシウム、メラミンおよびシアヌール酸またはその塩など)、難燃助剤、摺動性改良剤(グラファイト、フッ素樹脂)、帯電防止剤などの通常の添加剤を添加して、所定の特性をさらに付与することができる。
【0103】
また、更なる特性改良の必要性に応じて無水マレイン酸などによる酸変性オレフィン系重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体およびエチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体などのオレフィン系共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー等のエラストマーから選ばれる1種または2種以上の混合物を添加して所定の特性をさらに付与することができる。
【0104】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造するに際し、例えば“ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、2軸、3軸押出機およびニーダタイプの混練機などを用いて180〜350℃で溶融混練して組成物とすることができるが、本発明の効果をより鮮明に発揮するためには溶融加工条件を制御することが好ましい。
【0105】
例えば、溶融混練温度については、本発明の特徴であるガラス転移温度の変化率を本発明の範囲とするため、配合する液晶性樹脂(B)の融点以下かつ液晶開始温度以上で行うことが好ましく、より好ましくは液晶性樹脂(B)の融点−5℃〜液晶開始温度であり、さらに好ましくは液晶性樹脂(B)の融点−10℃〜液晶開始温度である。本発明においては、溶融混練した組成物を直接成形してもよいが、一旦ペレタイズなどして成形材料とした後、成形に供することも可能である。
【0106】
樹脂組成物を溶融成形する際の溶融成形温度については、本発明の特徴であるガラス転移温度の変化率を本発明の範囲とするため、配合する液晶性樹脂(B)の融点以下かつ液晶開始温度以上で行うことが好ましく、より好ましくは液晶性樹脂(B)の融点−5℃〜液晶開始温度であり、さらに好ましくは液晶性樹脂(B)の融点−10℃〜液晶開始温度である。
【0107】
特に好ましくは、各成分を溶融混練する際に前述の好ましい溶融混練温度で行い、成形する際にも上述の好ましい溶融混練温度で行うことである。
【0108】
ここでいう溶融混練温度、溶融成形温度とは樹脂温度を指す。例えば、溶融混練、溶融成形などの溶融加工時においては一般的にせん断発熱により樹脂温度がシリンダー設定温度より高温になるため、シリンダー設定温度を目的の樹脂温度になるように若干低温に設定するか、あるいはそれとともに、スクリュー回転数やスクリューアレンジを制御して樹脂温度を上記範囲におさめること、あるいはサイドフィーダー備え付けの押出機を用いる場合には、サイドから液晶性樹脂(B)を配合する全量の一部もしくは全部を投入する方法が好ましく用いられる。液晶開始温度の測定は、剪断応力加熱装置(CSS−450)により剪断速度1,000(1/秒)、昇温速度5.0℃/分、対物レンズ60倍において測定し、視野全体が流動開始する温度を液晶開始温度とした。
【0109】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、例えば熱可塑性樹脂(A)および液晶性樹脂(B)成分中、その他の必要な添加剤および充填材を予備混合して、またはせずに押出機などに供給して十分溶融混練することにより調製されるが、好ましくは、ハンドリング性や生産性の面から、熱可塑性樹脂(A)、液晶性樹脂(B)の一部(例えば(A)の一部もしくは全部、(B)成分の一部もしくは全部、または、最終的に含有せしめる(A)および(B)のうちの一部)を一旦溶融混練して実際に熱可塑性樹脂組成物に配合されるべき液晶性樹脂(B)量よりも液晶性樹脂濃度の高い樹脂組成物(D)を製造し、残りの熱可塑性樹脂(A)もしくは液晶性樹脂(B)成分中に液晶性樹脂濃度の高い樹脂組成物(D)およびその他の任意に用いることができる添加剤および充填材を溶融混練することにより調製される。
【0110】
さらに任意に用いることができる添加剤(「その他の添加剤」という)を配合する場合、熱可塑性樹脂(A)の一部もしくは全部、液晶性樹脂(B)成分の一部もしくは全部、または、最終的に含有せしめる(A)および(B)のうちの一部とその他の添加剤を一旦溶融混練して、実際に熱可塑性樹脂組成物に配合されるべき液晶性樹脂量よりも液晶性樹脂濃度の高い樹脂組成物(D)を製造し、残りの熱可塑性樹脂(A)もしくは液晶性樹脂(B)成分中および液晶性樹脂濃度の高い樹脂組成物(D)の段階で添加した任意に用いることができる添加剤以外の添加剤および充填材を溶融混練することにより調製することも可能である。
【0111】
かかる液晶性樹脂濃度の高い樹脂組成物(D)は、いわゆるマスターペレットの形態で好ましく用いられるが、それに限定されず、いわゆるチップ状、粉末状、あるいはそれらの混合物の形態であってもよい。またかかる(D)成分と配合する熱可塑性樹脂(A)および液晶性樹脂(B)はペレット状であることが好ましいが、それに限定されず、いわゆるチップ状、粉末状あるいは、チップ状と粉末状の混合物であってもよいが、好ましくは熱可塑性樹脂(A)および液晶性樹脂(B)の形態、大きさ、形状はほぼ同等、あるいは互いに似通っていることが均一に混合し得る点で好ましい。
【0112】
また、成形品を成形するにあたっての成形方法は通常の成形方法(射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、インジェクションプレス成形など)により、三次元成形品、シート、容器、パイプなどに加工することができ、流動性を生かし、薄肉部を有する成形品(例えば板状成形品あるいは箱形成形品)、特に1.2mm以下の薄肉部を有する成形品に好ましく適用できる。具体的には厚みが1.2mm以下の部分を成形品の全表面積に対して、10%以上有する成形品、なかでも1.2mm以下の部分を15%以上有する成形品に、特に1.0mm以下の部分を10%以上有する成形品に有効である。また、成形方法としては射出成形あるいはインジェクションプレス成形等が好ましい。なかでも射出成形品用途に特に好適であり、各種機械機構部品、電気電子部品または自動車部品に好適である。射出成形においては金型充填時間が適度に長くなるように、射出速度、射出圧などの条件を調整すると、本発明の効果である耐衝撃強度および耐薬品性がより顕著に発現するため好ましい。
【0113】
かくして得られる本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形時の流動性が良好であるために、流動性不足による未充填などの不良を低減可能であり、幅広い成形条件範囲で成形が可能である。また、計量安定性に優れているため、各種特性のバラツキがない。また、耐衝撃強度においては、熱可塑性樹脂(A)の一種がポリカーボネート系樹脂である場合にも、6.25mm(1/4インチ)厚以上の肉厚部を有する成形品で熱可塑性樹脂(A)単独に比べて特に高い衝撃強度が得られる。また、耐熱性が向上するため、電気電子機器用途で、耐熱性が要求されるハウジングやカバー、ベースなどに最適である。また、耐薬品性に優れるため、薬液が付着する部材あるいは、薬液による表面処理が必要な場合、特に信頼性の高い成形品が得られる。この耐薬品性向上効果は特にオイル、可塑剤、洗剤、電解液などに対して顕著に発現される。また、異方性も低減されるために、成形収縮や熱膨張による寸法変化が抑制され、塊状成形品から薄板までどのような形状の成形品でも信頼性の高い成形品が得られる。
【0114】
かくして得られる成形品は、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、用紙用分離爪、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ(CD、MD、DVDなど)、光ピックアップスライドベース、光ピックアップスライドベースシャーシ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、洗濯機部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、ウインドウオッシャー液タンク、ブレーキ等のオイルタンク、バッテリーケース、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、パワーシートハウジング、イグニッションコイル用部品などの自動車・車両関連部品、シャンプーおよびリンス用ボトル、薬剤用タンク、オイル移液用容器、オイルパン、その他トイレタリー用品、娯楽用品材、医業用品材および医療機器部材、一般機器などの各種用途に有用である。特に1.2mm以下の薄肉部を成形品全表面積の10%以上の有する各種ケース、スイッチ、ボビン、コネクター、ソケット類コネクターおよび携帯電話用ハウジング、パソコン用ハウジング等の筐体および各種機器の筐体(ハウジング)として、また自動車外装材やプロジェクタースクリーンフラットパネルなどの比較的大きな平板部を有するような成形品用途などに特に有用である。
【0115】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の骨子は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0116】
参考例1
熱可塑性樹脂は以下のものを使用した。
【0117】
PC
ポリカーボネート樹脂は、ゼネラルエレクトリック社製”レキサン”141を使用した。フェノール性末端基(EP)と非フェノール性末端基(EN)の当量比(EP)/(EN)は、四塩化チタン錯体測光定量の結果1/100であり、DSC測定の結果ガラス転移温度は153℃であった。これをPC(a)とした。また、比較として、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートとの溶融重合により合成した、メチレンクロライド中1.0g/dlの濃度で20℃で測定した対数粘度が0.45dl/g、(EP)/(EN)=1/3、ガラス転移温度146℃のポリカーボネート樹脂を用いた。これをPC(b)とした。
【0118】
PC//ABS
上記のポリカーボネート樹脂”レキサン”141を55重量%とブタジエンゴム含有量が9%のABS樹脂45重量%を二軸押出機を用いてシリンダー温度250℃、スクリュー回転数100rpmで混練した。DSC測定の結果ガラス転移温度は−72℃、105℃、152℃に観測され、前記2つはABS樹脂由来のガラス転移温度(−72℃はゴム成分由来のガラス転移温度、105℃はAS由来のガラス転移温度)であり、152℃はポリカーボネート由来のガラス転移温度である。この3つのガラス転移温度についてガラス転移温度の変化率を算出し、それらの和を評価した。
【0119】
PPE
2,6−キシレノールのアミン銅錯塩を用いた酸化カップリングにより合成したポリ−2,6−ジメチル1,4−ポリフェニレンエーテルを用いた。DSC測定の結果、ガラス転移温度は210℃に観測された。
【0120】
PPE//PS
日本GEプラスチック社製”ノリル”731を用いた。DSC測定の結果、ガラス転移温度は153℃に観測された。1つのガラス転移温度しか観測されなかったため、これをマトリックス樹脂のガラス転移温度とした。
【0121】
参考例2
液晶性樹脂は以下のものを重合し、使用した。
【0122】
LCP1
p−ヒドロキシ安息香酸994重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト216重量部及び無水酢酸960重量部を撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重合を行った結果、芳香族オキシカルボニル単位80モル当量、芳香族ジオキシ単位7.5モル当量、エチレンジオキシ単位12.5モル当量、芳香族ジカルボン酸単位20モル当量からなる融点314℃、液晶開始温度293℃、324℃の溶融粘度21Pa・s(オリフィス0.5φ×10mm、ずり速度1,000(1/秒))の液晶性樹脂が得られた。
【0123】
LCP2
p−ヒドロキシ安息香酸907重量部と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸457重量部及び無水酢酸873重量部を攪拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重合を行った結果、芳香族オキシカルボニル単位100モル等量からなる融点283℃、液晶開始温度233℃、293℃の溶融粘度が50Pa・s(オリフィス0.5φ×10mm、ずり速度1,000(1/秒))の液晶性樹脂が得られた。
【0124】
LCP3
p−ヒドロキシ安息香酸994重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト346重量部及び無水酢酸809重量部を攪拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重合を行った結果、芳香族オキシカルボニル単位80モル当量、エチレンジオキシ単位20モル当量、芳香族ジカルボン酸単位20モル当量からなる融点282℃、液晶開始温度231℃、292℃の溶融粘度が24Pa・s(オリフィス0.5φ×10mm、ずり速度1,000(1/秒))の液晶性樹脂が得られた。
【0125】
LCP4
p−ヒドロキシ安息香酸901重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト346重量部及び無水酢酸960重量部を撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重合を行った結果、芳香族オキシカルボニル単位72.5モル当量、芳香族ジオキシ単位7.5モル当量、エチレンジオキシ単位20モル当量、芳香族ジカルボン酸単位27.5モル当量からなる融点267℃、液晶開始温度238℃、277℃の溶融粘度34Pa・s(オリフィス0.5φ×10mm、ずり速度1,000(1/秒))の液晶性樹脂が得られた。
【0126】
実施例1、2、比較例1〜5
サイドフィーダを備えた日本製鋼所製TEX30型2軸押出機で、表1に示す熱可塑性樹脂をホッパーから投入し、参考例で得た液晶性樹脂(LCP1〜LCP4)および充填材をサイドから投入し、シリンダーのヒーター設定温度を表1に示すとおりとし、樹脂温度(樹脂温度はスクリューアレンジやスクリュー回転数によって生じる剪断発熱量によりヒーター設定温度より高温となる)を計測しながら溶融混練し、ペレットを得た。熱風乾燥後、ペレットを住友ネスタ−ル射出成形機プロマット40/25(住友重機械工業(株)製)に供し、樹脂温度を表1記載のとおりとし、金型温度80℃に設定し、1速1圧の条件(射出速度99%、射出圧力を最低充填圧力+0.5MPa)で下記(2)、(4)〜(6)、(8)〜(11)の測定用テストピースを射出成形した。
【0127】
各評価については、次に述べる方法にしたがって測定した。
【0128】
(1)ガラス転移温度の変化率
熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度(TgA)および(A)に液晶性樹脂(B)を表1記載の所定重量部配合した後の樹脂組成物中の熱可塑性樹脂(A)由来のガラス転移温度(TgT)を示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC−7)により測定した。ペレットの切削片10mgについて、室温から20℃/分の昇温速度で昇温し、観測される変曲点をガラス転移温度(Tg)とした。ガラス転移温度の変化率は、観測された熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度TgAと配合後の樹脂組成物中の熱可塑性樹脂(A)由来のガラス転移温度TgTにより下式1に従って算出した。
【0129】
変化率(%)=|(TgA−TgT)/TgA|×100 −[式1]
(2)液晶性樹脂粒子の数平均粒子径、アスペクト比
ASTM D256に従って作成したアイゾット衝撃強度測定用1/8インチバーの中心部を流れ方向に切削して得られた切片をTEM(日立社製H−7100透過型電子顕微鏡)により観察、写真を撮影し、分散粒子50個の平均値をそれぞれ数平均粒子径およびアスペクト比(長径/短径)として求めた。なお、数平均粒子径は長径方向で測定した。また、アスペクト比は各粒子の長径、短径を測定し、アスペクト比を算出したのち平均して評価した。
【0130】
(3)流動性
上記成形機を用いて、表1記載の熱可塑性樹脂単独で用いた場合の樹脂温度(PCは300℃、PC//ABSは250℃、PPEは300℃、PPE//PSは300℃)と同様の樹脂温度で射出速度99%、射出圧力49MPa(500kgf/cm2)の条件で12.7mm巾×0.8mm厚の試験片の流動長(棒流動長)を測定した。
【0131】
(4)耐熱特性
上記成形機を用いて、縦127mm×横12.7mm×1.2mm厚の棒状成形品を作成し、熱風オーブン中、表1の比較例1〜4に示した各熱可塑性樹脂の樹脂温度から130℃差し引いた温度において30分間、縦方向の27mmをクランプで固定し、100mmを試験部分としてヒートサグ試験を行った。<評価>○:変形が5mm未満、×:5mm以上変形
(5)耐衝撃強度
ASTM D256に従い、6.25mm厚(1/4インチ)(ノッチ付き)バーアイゾット衝撃強度を測定した。
【0132】
(6)耐薬品性
上記成形機を用いて、縦127mm×横12.7mm×3.2mm厚の曲げ試験片を作成し、試験片を弦が110mmとなるように湾曲させ、治具を用いて両端を固定した。弧の中央部付近にDOP(ジオクチルフタレート,大八化学製)を塗布し、試験片が破断するまでの時間を計測した。
【0133】
(7)計量安定性(クッション量ばらつき)
射出5秒、冷却10秒、中間4秒の成形サイクルで縦127mm×横12.7mm×3.2mm厚の曲げ試験片を50サイクル成形し、その時の保圧時のクッション量(クッション量とは、成形時に成形品のひけなどの不良を無くすために金型フル充填量+αの樹脂を計量し、成形機シリンダーの先端に樹脂の余剰分を残す樹脂量のことであり、このときシリンダー先端位置(0mm)から金型フル充填量+αに相当するスクリュー位置までの距離(mm))のばらつきの標準偏差を評価した。
【0134】
(8)異方性低減効果
上記成形機を用いて、縦70×横70×厚み1mmの角板状成形品を作製し、角板の流れ方向および垂直方向の切削片(縦70mm×横12.7mm×厚み1mm、各n=20)を作成し、ASTM D790に従い曲げ試験を行い、下式2により強度異方性を算出した。
【0135】
異方性=垂直方向の曲げ強度/流れ方向の曲げ強度 −[式2]
(9)疲労特性
上記成形機を用いて、縦127mm×横12.7mm×厚み3.2mmの曲げ試験片を作成し、スパン50mmで試験片中央部に応力を加えて、ひずみがその試験片の弾性域における最大ひずみ量の1/4に30秒で達するように、一定速度で荷重検出器のついたヘッドを下降させた。その後ヘッドを初期位置に同じ速度で戻した。この低速荷重付加を10分繰り返し行った後、ASTM D790に従い曲げ試験を行い、剛性保持率を評価した。<評価>◎:剛性保持率が90%以上、○:剛性保持率が80%以上、×:剛性保持率が80%未満
(10)電磁波遮断性
150mm×150mm×厚み1mmの角板を射出成形し、得られた成形品を用いてアドバンテスト法に基づいて電界波についてシールド性の測定をおこなった。具体的には(株)アドバンテスト製シールド材評価器TR17301Aとスペクトルアナライザを用い、プローブアンテナを用いることにより、この平板に電磁波を透過させた際の減衰率を、10〜1000MHzの周波数帯域で測定し、測定チャートより周波数300MHzでの電界シールド性を読みとった。<評価>◎:電磁波遮断性30dB以上、○:電磁波遮断性20dB以上、×:電磁波遮断性20dB未満
(11)嵌合性
縦30mm×横30mm×高さ10mm×厚み0.5mm、縦29mm×横29mm×高さ15mm×厚み0.5mmの箱状成形品を最低充填圧+0.5MPaで成形し、嵌合性について評価した。評価は、○:嵌合する、△:嵌合するが壁が接触する、×:嵌合しない。
【0136】
(12)計量安定性(クッション量ばらつき幅)
充填材併用系においては、上記成形機で、射出5秒、冷却10秒、中間4秒の成形サイクルで12.7×127mm×3.2mmの曲げ試験片を50サイクル成形し、その時の保圧時のクッション量(クッション量とは、成形時に成形品のひけなどの不良を無くすために金型フル充填量+αの樹脂を計量し、成形機シリンダーの先端に樹脂の余剰分を残す樹脂量のことであり、このときシリンダー先端位置(0mm)から金型フル充填量+αに相当するスクリュー位置までの距離(mm))のばらつきの幅を評価した。<評価>ばらつきの幅(mm)=最大クッション量(mm)−最小クッション量(mm)。
【0139】
表1より充填材を併用することで、異方性低減効果などの特性が更に向上し、内ぞり抑制や計量安定性向上などの追加効果が得られるため、自動車外装材やフラットパネルなどの薄肉板状もしくは箱状の比較的平板面積の大きな成形品においても良好な特性のものが得られることがわかる。
【0143】
【表1】
【0144】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形時の流動性、計量安定性が改良され、かつ成形品の耐衝撃特性、耐熱特性、耐薬品性、疲労特性が改良され、また異方性も低減されるため、これらの特性が要求される電気電子関連機器、精密機械関連機器、事務用機器、自動車などやその他各種用途に好適な材料である。
Claims (9)
- フェノール性末端基(EP)と非フェノール性末端基(EN)の当量比(EP)/(EN)が1/20以下であるポリカーボネート系樹脂である熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して下記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)からなる液晶性ポリエステルである液晶性樹脂(B)5〜50重量部を配合してなる樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度の変化率が下式1を満足する熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、繊維状充填剤と非繊維状充填剤とからなる充填剤を0.5〜300重量部配合してなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
変化率(%)=|(TgA−TgT)/TgA|×100 ≦ 2 −[式1]
TgA:熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度
TgT:樹脂組成物中の熱可塑性樹脂(A)由来のガラス転移温度 - 該樹脂組成物中に分散する液晶性樹脂粒子の数平均粒子径(成形片の中心部を流れ方向に切削して得られた切片を透過型電子顕微鏡により観察した分散粒子50個の長径の平均値)が0.5〜5μmであることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 該樹脂組成物中に分散する液晶性樹脂粒子のアスペクト比(長径/短径)が3未満であることを特徴とする請求項1または2記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(A)、液晶性樹脂(B)および充填材を、液晶性樹脂(B)の液晶開始温度以上融点以下の温度で溶融混練することにより請求項1〜3いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物を製造することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 熱可塑性樹脂(A)、液晶性樹脂(B)および充填材を配合した組成物を、液晶性樹脂(B)の液晶開始温度以上融点以下の温度で溶融加工することにより請求項1〜3いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物から構成される成形品を製造することを特徴とする成形品の製造方法。
- 請求項1〜3いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物で構成してなる成形品であって、該成形品が機械機構部品である成形品。
- 請求項1〜3いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物で構成してなる成形品であって、該成形品が電気電子部品である成形品。
- 請求項1〜3いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物で構成してなる成形品であって、該成形品が自動車部品である成形品。
- 請求項1〜3いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物で構成してなる成形品であって、該成形品が板状部あるいは箱形部を有し、かつ厚み1.2mm以下の薄肉部を成形品全表面積に対して10%以上有することを特徴とする成形品。
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