JP4705434B2 - 抗癌剤及び抗癌剤の製造方法 - Google Patents
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Description
本実施形態のプロポリス変換物は、担子菌類を利用して、プロポリスを変換してなるものである。前記プロポリスを変換するとは、担子菌類の菌糸体又は該菌糸体によって生産される酵素等の生産物により、プロポリス中に含まれる少なくとも一種の化合物を、異なる構造を有する化合物に変換することを意味する。本実施形態のプロポリス変換物は、主として、プロポリス発酵物及びプロポリス酵素処理物の2種類に分類される。プロポリス発酵物は、担子菌類の菌糸体によりプロポリスを発酵処理することにより得られ、プロポリス酵素処理物は、担子菌類の菌糸体由来の酵素によりプロポリスを酵素処理することにより得られる。
本実施形態の製造方法で用いられる担子菌類としては、あらゆる種類のものが使用可能であるが、アガリクス(Agaricus blazei Murill)、冬虫夏草(Cordyceps militaris)、霊芝(Ganoderma lucidum)、カバノアナタケ(Fuscoporia oblique)等が好適に使用される。これらの担子菌類のうち、高い抗癌作用を有するプロポリス変換物を製造可能であることから、アガリクスを利用することが特に好ましい。菌糸体は、担子菌類の子実体から採取して利用しても良いし、寄託機関等から入手して利用しても良い。ちなみに、アガリクスの菌糸体は、高いラッカーゼ活性を有しており、該ラッカーゼ活性は、プロポリス中に含まれる少なくとも一種の化合物を、異なる構造を有する化合物に変換させやすくすると考えられる。
プロポリス原塊は、ミツバチが樹木の特定部位、主として新芽や蕾及び樹皮から採取したガム質、樹液、植物色素系の物質及び香油等の集合体に、ミツバチ自身の分泌物や蜂ロウ等を混合して作製した暗緑色や褐色から暗褐色を呈した粘着性のある樹脂状の固形天然物質である。プロポリス抽出物を得るために用いられるプロポリス原塊としては、ブラジルを含む南アメリカ諸国、中国や日本等のアジア諸国、ヨーロッパ諸国、北アメリカ諸国、オセアニア諸国等のあらゆる産地のものが使用可能である。
本実施形態のプロポリス発酵物の製造方法では、担子菌類の菌糸体をプロポリスに接種し、該菌糸体によりプロポリスを発酵処理する工程を備えている。なお、発酵処理する工程に先立って、担子菌類の菌糸体を前培養することにより、該担子菌類の菌糸体をあらかじめ活性化させておくことが好ましい。ちなみに、発酵処理する工程に先立って、担子菌類の胞子を前培養することにより、活性化された菌糸体を調製することも可能である。
本実施形態のプロポリス酵素処理物の製造方法では、担子菌類の菌糸体由来の酵素をプロポリスに作用させ、該酵素によりプロポリスを酵素処理する工程を備えている。酵素処理では、担子菌類の菌糸体若しくは該菌糸体の培養上清から精製(粗精製も含む)された酵素、又は、担子菌類からクローニングされた酵素遺伝子を強制発現する形質転換体若しくは該形質転換体の培養上清から精製(粗精製も含む)された酵素を用いることが可能である。このような酵素としては、ラッカーゼのような酸化酵素が挙げられる。なお、菌糸体、形質転換体又はそれらの培養上清から酵素を精製する場合、透析や公知のカラム処理等が実施され、好ましくは酵素が濃縮されるような条件で透析やカラム処理等が実施される。また、酵素処理では、最も簡便には、担子菌類の菌糸体を培養した培養上清が用いられる。
・ 本実施形態のプロポリス変換物は、担子菌類を利用して、プロポリスを生物学的に変換することにより得られる。このプロポリス変換物では、担子菌類の生物学的作用により、プロポリス中に含まれる少なくとも一種の化合物が異なる構造を有する化合物に変換されるため、その変換後の化合物に起因して、プロポリス単独、担子菌類単独又はその両方でそれぞれ発揮される生理作用よりも飛躍的に高い生理作用を発揮することが可能である。特に、担子菌類に由来するラッカーゼ様の酵素作用により高分子化された化合物が高い抗癌作用を発揮するものと考えられるが、このような高分子化された化合物が変換前のプロポリス及び担子菌類のいずれにもほとんど存在していないことは極めて重要である。
プロポリス原塊1.2kgに95%エタノール溶液4Lを加え、常温で12時間エタノール抽出した後、珪藻土ろ過後に脱ロウすることにより、プロポリスのエタノール抽出物を得た。このエタノール抽出物を濃縮後、乳化剤(キラヤニンS−100(丸善化成株式会社製、キラヤ抽出物25%含有))を10%添加し、プロポリス固形分20%程度のエタノール抽出液を作製した。
(実施例1)アガリクス菌糸体によるプロポリス発酵物の製造1
2.4g/Lの濃度のポテトデキストロースブロス(PDB)培地(Difco製)で培養したアガリクス菌糸体((有)ニューピアーズより子実体入手)を集菌し、乾燥させた。次に、乾燥菌糸体を1mLあたり0.0035gの濃度となるように、0.24g/Lの濃度のPDB培地に懸濁することにより、アガリクス培養液を調製した。続いて、ミニシェーカー(IWAKI製)を用いて、アガリクス培養液を25℃、100rpmで6日間振とうすることにより前培養した後、前記エタノール抽出液(プロポリス固形分20%程度)を固形分の終濃度が0.5%となるように添加し、40℃で3.5時間撹拌することにより、発酵処理を行った。発酵処理後のアガリクス培養液を凍結乾燥することにより、プロポリス発酵物とした。
ポテトデキストロースアガー(PDA)(Nissui製)よりなる寒天培地を用いて、アガリクス菌糸体を25℃、暗所で2〜3週間培養した。その後、寒天培地上で増殖したアガリクス菌糸体をかきとり、2.4g/Lの濃度のPDB培地50mLを入れたフラスコに添加し、5〜10日間静置することにより前培養した。次に、このフラスコ(乾燥菌糸体重量113mgに相当)内の培地をPYS培地(0.3%ポリペプトン、0.3%酵母エキス、1%ショ糖;いずれもナカライテスク製)5Lに添加し、ミニジャーファーメンター(高崎科学機器製)にて、通気0.5L/分、撹拌100rpmの培養条件で10〜15日間通気培養(前培養)した。通気培養後の菌糸体を集菌後、0.24g/Lの濃度のPDB培地に懸濁してアガリクス懸濁液を調製し、さらに該アガリクス懸濁液に前記エタノール抽出液(プロポリス固形分20%程度)を固形分の終濃度が0.5%となるように添加し、40℃で72時間撹拌することにより、発酵処理を行った。発酵処理後のアガリクス懸濁液を凍結乾燥することにより、プロポリス発酵物とした。
2.4g/Lの濃度のPDB培地で培養した冬虫夏草(Cordyceps militaris)菌糸体(IFO5298)を集菌し、乾燥させた。次に、乾燥菌糸体を1mLあたり0.0035gの濃度となるように、0.24g/Lの濃度のPDB培地に懸濁することにより、冬中夏草培養液を調製した。続いて、ミニシェーカー(IWAKI製)を用いて、冬中夏草培養液を25℃、100rpmで3日間振とうすることにより前培養した後、前記エタノール抽出液(プロポリス固形分20%程度)を固形分の終濃度が0.5%となるように添加し、40℃で72時間撹拌することにより、発酵処理を行った。発酵処理後の冬中夏草培養液を凍結乾燥することにより、プロポリス発酵物とした。
2.4g/Lの濃度のPDB培地で培養した霊芝(Ganoderma lucidum)菌糸体(IFO8346)を集菌し、乾燥させた。次に、乾燥菌糸体を1mLあたり0.0035gの濃度となるように、0.24g/Lの濃度のPDB培地に懸濁することにより、霊芝培養液を調製した。続いて、ミニシェーカー(IWAKI製)を用いて、霊芝培養液を25℃、100rpmで3日間振とうすることにより前培養した後、前記エタノール抽出液(プロポリス固形分20%程度)を固形分の終濃度が0.5%となるように添加し、40℃で72時間撹拌することにより、発酵処理を行った。発酵処理後の霊芝培養液を凍結乾燥することにより、プロポリス発酵物とした。
2.4g/Lの濃度のPDB培地で培養したカバノアナタケ(Fuscoporia oblique)菌糸体(IFO8681)を集菌し、乾燥させた。次に、乾燥菌糸体を1mLあたり0.0035gの濃度となるように、0.24g/Lの濃度のPDB培地に懸濁することにより、カバノアナタケ培養液を調製した。続いて、ミニシェーカー(IWAKI製)を用いて、カバノアナタケ培養液を25℃、100rpmで3日間振とうすることにより前培養した後、前記エタノール抽出液(プロポリス固形分20%程度)を固形分の終濃度が0.5%となるように添加し、40℃で72時間撹拌することにより、発酵処理を行った。発酵処理後の霊芝培養液を凍結乾燥することにより、プロポリス発酵物とした。
2.4g/Lの濃度のPDB培地で培養したアガリクス菌糸体の培養上清を回収した後、蒸留水に対して透析することにより、菌糸体外酵素溶液を得た。該菌糸体外酵素溶液に対して、前記エタノール抽出液(プロポリス固形分20%程度)を固形分の終濃度が0.5%となるように添加し、40℃で72時間反応させることにより、酵素処理を行った。酵素処理後の反応液を凍結乾燥することにより、プロポリス酵素処理物とした。なお、菌糸体外酵素溶液は、酵素活性の目安として、200U/mLのラッカーゼ活性を発揮する濃度となるように反応液中に加えられた。
担子菌類の菌糸体は、ラッカーゼ等の酵素を菌体外に生産することが知られている。このため、プロポリス発酵物及びプロポリス酵素処理物ではいずれも、プロポリス中の成分にラッカーゼによる酸化反応が引き起されているものと考えられる。そこで、プロポリスのエタノール抽出物にラッカーゼ(SIGMA製)を200U/mLとなるように添加し、40℃で72時間反応させたときの分子量の変化を下記分析条件にて分析した。なお、ラッカーゼを添加していない試料(プロポリスのみ)についても同条件で分析した。分析結果の一部であるクロマトグラムチャートを図1(a)、(b)に示す。
カラム:TSKgel G3000SW(7.5mmID×30cm)
ガードカラム:TSK−GUARD COLMUN(7.5mmID×75mm)
溶媒:0.05Mリン酸緩衝液+0.3M塩化ナトリウム(pH7)
流速:1mL/分
温度:25℃
検出:220nm
図1(a)、(b)より、酵素無添加のもの(プロポリスのみ)と比較して、酵素を添加したもの(プロポリス+ラッカーゼ)では、分子量の大きな成分が多く検出されており、プロポリス中の成分が、ラッカーゼにより高分子化されていることが強く示唆される。
前記エタノール抽出液(プロポリス固形分20%程度)及び実施例1のプロポリス発酵物について、それぞれ前記<予備検討>と同様に分子量の変化を分析した。分析結果の一部であるクロマトグラムチャートを図2(a)、(b)に示す。その結果、図2(a)、(b)に示すように、<予備検討>の場合と全く同様の結果が得られた。即ち、発酵処理することによって、プロポリス中に含まれる化合物の一部が高分子化されていることが示された。ちなみに、<予備検討>において高分子化された化合物と、<本試験>において高分子化された化合物とは、クロマトグラムチャートにおける保持時間が同じであるため、同一の化合物であることが強く示唆される。この場合、ラッカーゼ処理されたプロポリスでも、プロポリス発酵物と同様の生理作用が発揮されるはずである。
ddY系マウスに継代されているSarcoma180細胞をマウス腹水より採取し、生理食塩水で目的の細胞濃度となるように調整した。次に、中部科学資材株式会社より購入したddY系雄性マウス(6週齢)の背部に、Sarcoma180細胞を1×107細胞/マウスの移植量となるように皮下移植した。Sarcoma180細胞を移植したマウスを第一群から第三群(各群10匹ずつ)に分けた。第一群には、生理食塩水を10mL/kgの投与量で28日間連続腹腔内投与した。第二群には、実施例1のプロポリス発酵物を生理食塩水に懸濁したものを10mg/kg/10mLの投与量で、28日間連続腹腔内投与した。第三群には、抗癌剤としてのカルボクリン(日本ケミファ(株)製)を10mg/kg/10mLの投与量で、28日間連続腹腔内投与した。移植後28日目に各群のマウスから腫瘍を摘出し、その重量をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
<プロポリス発酵物の抗癌作用1>と同様の方法にてプロポリス発酵物の抗癌作用について検討した。なお、ここでは、生理食塩水及び実施例1のプロポリス発酵物を腹腔内投与したものに加えて、実施例1で集菌したアガリクス菌糸体の乾燥菌糸体を生理食塩水に懸濁したもの、プロポリスのエタノール抽出物を生理食塩水に懸濁したもの、並びに、前記乾燥菌糸体及びエタノール抽出物の混合物についても同様に腹腔内投与した。各サンプルの投与量及び各群のマウスから摘出された腫瘍重量をそれぞれ表2に示す。
ddY系マウスに継代されているEhrlich細胞をマウスの腹水より採取し、滅菌生理食塩水で目的の細胞濃度となるように調整した。次に、表3に示す各サンプル(いずれも蒸留水に懸濁)をddY系雄性マウス(6週齢、体重30g前後)に対し、1日1回の割合で7日間、同表に示す投与量で経口投与した。7日間の経口投与後、6×106のEhrlich細胞を各マウスの腹腔内に移植した。その後、引き続き、表3に示す各サンプルを同じ投与量で6日間経口投与した。各サンプルを経口投与してから15日目に、各マウスの腹水を採取した。採取後の腹水について、全容積(TV;total volume)を測定した後、3000rpmで5分間遠心分離して腫瘍細胞を分離し、その分離された腫瘍細胞容積(PCV;packed cell volume)を測定した。また、TVよりPCVを差し引くことにより、腹水容積(EV;exudate volume)を求めた。これらの結果を表3に示す。なお、表3に示す5−FUは、抗癌剤5−フルオロウラシル(ナカライテスク製)を表す。
・ プロポリス原塊に担子菌類の菌糸体を直接接種することにより、発酵処理を実施することも可能である。
応用した技術として、プロポリスにラッカーゼを作用させることにより、ラッカーゼ処理プロポリスを提供することができる。このラッカーゼ処理プロポリスは、上記実施形態のプロポリス変換物と同様に、抗癌作用のような生理作用を効果的に発揮することが可能である。
・ 前記プロポリスはプロポリス抽出物である前記抗癌剤。
Claims (2)
- 担子菌類としてのアガリクスの菌糸体によりプロポリスを発酵処理してなることを特徴とする抗癌剤。
- 請求項1に記載の抗癌剤を製造する方法であって、
前記担子菌類としてのアガリクスの菌糸体を前記プロポリスに接種し、該菌糸体により前記プロポリスを発酵処理する工程を備えることを特徴とする抗癌剤の製造方法。
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