JP4705216B2 - 溶媒可溶性耐熱性ポリイミド樹脂及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等車両部品、ベアリング周り等の高耐熱のコーティングが必要な部材、家電製品の部品、半導体装置、ボイラー装置部品、焼成装置、航空宇宙関連等広く耐熱性を要求される部材を構成する材料として用いることのできるポリイミドに関し、特に多層プリント基板の絶縁層の材料として用いることができる溶剤可溶性耐熱性ポリイミド樹脂組成物、コーティング組成物、該ポリイミド樹脂組成物を加熱脱炭酸して得られる、成形体、及び成形物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体技術の飛躍的な発展により半導体パッケージの小型化、多ピン化、ファインピッチ化、電子部品の極小化などが急速に進み、いわゆる高密度実装の時代に突入した。それに伴い、プリント配線基板も片側配線から両面基板へ、さらに多層化、薄型化が進められている(岩田、原園、電子材料,35(10),53,(1996).)。
【0003】
このような状況により、電子部品における金属導体層−高分子絶縁層の薄膜化が進んでおり、それぞれ100μm以下の膜厚で用いられることが多い。このように薄膜で配線基板を作製した際、金属導体層−高分子絶縁層の熱膨張係数の差により、配線基板に反りを生じてしまう。このような配線基板の反りは、高分子絶縁層および金属導体層の熱的性質がわかれば、次式により、算出できる(宮明、三木、日東技報,35(3),1,(1997))。
【0004】
【数1】
【0005】
E1 :金属導体層の弾性率
E2 :高分子絶縁層の弾性率
Δα:金属導電層−高分子絶縁層間の熱膨張係数の差
ΔT:温度差
h:膜厚
i:配線長
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
配線基板の反りを低減させる方法として、前記式(1)により高分子絶縁層からアプローチした場合、次の2種の目標、即ち、
i. 高分子絶縁層の弾性率の低減
ii. 高分子絶縁層と金属導電層の熱膨張率差の低減
のいずれかを達成することが考えられる。
【0007】
一方、配線作製工程を考えると、高分子絶縁層を形成するための樹脂組成物が溶媒可溶であることが作業適性上望ましい。
【0008】
上記の配線基板の反りの低減と、作業適正の向上の両方を同時に満足させることを課題とした場合、すなわち、
1.用いる樹脂組成物が溶媒可溶で、且つ得られる高分子絶縁層が低弾性率
2.用いる樹脂組成物が溶媒可溶で、且つ得られる高分子絶縁層が低熱膨張率
のいずれかであることが求められる。
【0009】
通常、高分子材料に低熱膨張性を与えると、塗膜剛直性が増し、溶媒可溶性が損なわれるという傾向にある。このような相反する物性を両立した材料としては、一般的には、ポリアミック酸型が知られている。ポリアミック酸の形で塗布し、加熱して脱水閉環させポリイミド膜を得るというものである(上田、望月、高分子加工、47(12),12,(1998))。
【0010】
このポリアミック酸型の問題点として、加熱時に脱水反応により閉環イミド化するため、塗膜の硬化収縮が大きく、塗膜にクラック等欠陥が生じ易いという点であり、配線基板等の絶縁樹脂層に用いることには好ましくない。このような欠点を解消するために、アミック酸型でない、即ち、閉環したポリイミドの状態で溶媒に溶けかつ低熱膨張率である樹脂組成物の出現が望ましい。
【0011】
このような要望に対し、Harris らは剛直な骨格のモノマーの側鎖に嵩高い基を導入させ溶媒可溶性と低熱膨張率を両立した閉環型ポリイミドを得ている(Harris.Cheng,Polymer,37(22),(1996)) 。また、Aummanらは、前記のような特徴を持つ材料として、非常に嵩高く環状になった新規のモノマーを合成し溶媒可溶型低熱膨張率閉環型ポリイミドを得ている(Aumman,Trofimenko,Polymer for Microelectronics,Chapt34,(1994))。これらは、前記2の溶媒可溶でかつ低熱膨張率という樹脂組成物を目指したものである。
【0012】
しかしながら、前記溶媒可溶型低熱膨張率閉環型ポリイミドは何れもモノマー合成経路が複雑で収率が低いため、コスト上の問題がある。
【0013】
次に、ジアミンとして2,2’−disulfobenzidin(BzDSFA) を用い、酸無水物として1,4,5,8−tetracarhoxlic dianhydride(NTCDA) を用いて、水溶性を有するポリイミドを合成する報告がある(Timofeeva,Khokhlof,Macromol Symp.106,(1996))。この水溶性ポリイミドは350℃70分加熱することにより脱スルホン酸を行ない、フィルムとした場合、非常に低熱膨張性のフィルムが得られる。しかしながら、脱スルホン酸基を行った後のフィルムには、水酸基が形成されるためにフィルムの吸水性が大きく、絶縁信頼性に乏しいフィルムであることが本発明者らにより確認された。
【0014】
本発明者らは、スルホン酸基を有するモノマーを用いポリイミドを製造した。しかし、スルホン酸を導入したポリイミドは、クレゾール等のフェノール系溶媒には良好に溶解するものの、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)や、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等の汎用的な有機極性溶媒に対する溶解性が乏しいことを確認した。
【0015】
そこで本発明は、溶媒可溶でかつ低熱膨張率である耐熱性ポリイミド樹脂を提供し、該耐熱性ポリイミドを含むコーティング組成物を提供し、該耐熱性ポリイミドを用いて溶媒不溶性の成形物を製造する方法を提供し、また該製造方法により得られた成形物を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
前記した課題を解決するために、本発明者らは、スルホン酸基よりも極性の低いカルボキシル基が、加熱により分解し脱炭酸することに着目し、剛直な骨格構造を有するポリイミドにカルボキシル基を導入することにより、汎用性の有機極性溶媒、極性溶媒、非極性溶媒に対する溶解性があり、さらに、ポリイミド樹脂として溶剤溶解性であるが、加熱することにより脱炭酸して溶剤不溶性となる、低熱膨張率、耐熱性ポリイミド樹脂組成物を造り出した。
【0017】
すなわち、本発明の溶媒可溶性耐熱性ポリイミド樹脂は、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノフェニルメタンとナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボキシリックジアンハイドライドを溶媒中でイミド化反応して取得した溶媒可溶性耐熱性ポリイミドであって、該ポリイミドは、NMP、m−クレゾールに可溶で、イオン交換水に不溶であり、m−クレゾールよりもNMPの方が溶解性が良好であり、該ポリイミドの熱重量分析による結果は、420℃を過ぎた辺りから急激な重量減少があり、80%の重量に落ちた付近で重量減少の程度が収まるものであり、該ポリイミドを450℃15分間の熱処理を与えた場合、IRスペクトルの1730Ccm -1 付近のピークが減少するものであり、該ポリイミド樹脂のガラス転移温度が400℃以上であり、該ポリイミド樹脂の室温から350℃までの昇温過程でのIRスペクトルにはピークの変化がないことを特徴とする。
【0018】
本発明の溶媒可溶性耐熱性ポリイミド樹脂の製造方法は、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノフェニルメタンをトリエチルアミンの共存下で溶媒中に完全に溶解させた後、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボキシリックジアンハイドライドを添加して均一な溶液とし加熱して溶媒可溶性耐熱性ポリイミドを取得することを特徴とする。
【0020】
なお、側鎖にカルボキシル基を有するポリイミドは、既に報告されている(特開平10−171116号公報)。しかし、該公報のポリイミド樹脂に導入されたカルボキシル基は、ポリイミドに感光性を付与するためのものであるが、閉環後のポリイミドが溶媒可溶性であるかについては何も報告されていない。また、該公報のポリイミド樹脂は、本発明のような剛直な骨格構造を有していないため、耐熱性は期待できない。
【0021】
本発明の溶媒可溶性耐熱性ポリイミド樹脂は、酸価が10mgKOH/g以下であると、溶媒溶解性が低下し、ポリイミド樹脂が溶媒に溶けなくなる。
【0022】
本発明の溶媒可溶性耐熱性ポリイミド樹脂を用いて塗膜を形成する場合、塗膜に高度の耐吸水性を求める目的のためには、酸価が200mgKOH/g以上であると、吸水性が高く、高温高湿下において吸水膨張して信頼性が低下するという問題を生じる。しかしながら、高度の信頼性を必要としなければ室温で放置した場合でも膨張等を起こすことはないため、特に問題はない。
【0023】
次に、本発明のコーティング組成物は、前記溶媒可溶性耐熱性ポリイミド樹脂を溶媒に溶解させたものである。
【0024】
次に、本発明の耐熱性ポリイミド成形物の製造方法は、前記溶媒可溶性耐熱性ポリイミド樹脂を成型し、400℃〜500℃の温度で加熱処理をすることにより、脱カルボキシル化させて溶媒不溶とする方法である。
【0025】
さらに具体化した本発明の耐熱性ポリイミド樹脂成形物の製造方法は、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノフェニルメタンをトリエチルアミンの共存下で溶媒中に完全に溶解させた後、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボキシリックジアンハイドライドを添加して均一な溶液とし加熱して溶媒可溶性耐熱性ポリイミドを取得し、該溶媒可溶性耐熱性ポリイミドを溶媒に溶解及び/又は分散させてなるコーティング組成物とし、該コーティング組成物を基材にコーティングし、乾燥させ、400℃〜500℃の温度で加熱処理することにより溶媒不溶性にすることを特徴とする。加熱処理時間は3分〜120分が好ましい。
【0038】
本発明のポリイミド樹脂は、主に、NMP、m−クレゾール等の有機極性溶媒に可溶性である。
【0039】
さらに本発明のポリイミド樹脂は前記したように耐熱温度が高いので、特に、多層基板等の電子材料に用いる場合には、耐熱性という観点から好ましい。
【0040】
また本発明のポリイミド樹脂のイミド化率は好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上が好ましい。イミド化率が85%以下では、ポリイミド溶液の保存安定性が低下する。
【0041】
本発明のポリイミド樹脂の重量平均分子量は8000〜1000000である。特に好ましくは20000〜80000である。分子量が8000以下であると、均一な塗膜を得難く、1000000以上では高濃度の溶液が得られずプロセス適性が悪い。
【0042】
本発明において分子量測定は東ソー(株)製高速GPC装置を用いた。用いたカラムは東ソー(株)製TSKgel αM(商品名)であり、溶媒はNMP1リットルに対し、バッファとして+50mmol リン酸+50mmol LiBrを溶解させたものを用い、流速0.5cc/minで測定を行なったものである。
【0043】
種々のモノマーを用い、合成を行なう場合に、反応液のモノマー濃度が約10%程度の時はゲル化の進行するものも見受けられる。しかし、イミド化反応しやすい1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物を用いると高濃度の反応溶液でもゲル化の進行が生じないことが判明している。また、ゲル化の起こり易いモノマーを用いても、充分に前駆体への重合反応を低温で行なった後、反応液の濃度を希薄にし無水酢酸等の触媒を用いる化学的イミド化法でイミド化を行なうことでもゲル化が防げる。
【0044】
【実施例】
試薬の調製
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(略語:BPDA)、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボキシリックジアンハイドライド(略語:NTCDA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(略語:DADPM)は東京化成のものをそのまま用いた。3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノフェニルメタン(略語:MBAA)は和歌山精化のものをそのまま用いた。
【0045】
〔実施例1〕
o−クレゾール中で以下のような一段階でポリイミドAの合成を行なった。o−クレゾール100g中に分子内にカルボキシル基を有するMBAA19mmolを入れ、室温で40分撹拌した。MBAAのクレゾールに対する溶解性が低く、この状態では若干不溶物が残るため、トリエチルアミンを0.0051mol添加し、設定温度70℃(内温60〜70℃)で撹拌して均一な溶液にした。その後、50℃に液温を下げ、触媒として安息香酸を0.014mol添加した。その後、酸無水物NTCDA19mmolを添加し、内温50℃のままで1.5時間撹拌を行ない均一な溶液を得た。その後、設定温度を210℃、内温180℃に上昇させ、3時間内温180℃で撹拌を行ない、イミド化反応を行なった。
【0046】
反応終了後、はじめにメタノール600ml/濃塩酸30ml、その後、メタノール500mlを投入し再沈殿を行なった。その後、メタノール500ml中で撹拌洗浄を2回行なった。その後、70℃の温風乾燥を12時間行ない、収量8.8gの白桃色粉末を得、ポリイミドAとした。
【0047】
〔比較例1〕
o−クレゾール中で以下のような一段階でポリイミドBの合成を行なった。o−クレゾール100g中に分子内にカルボキシル基を有するMBAA19mmolを入れ、室温で40分間撹拌した。MBAAのクレゾールに対する溶解性が低く、この状態では若干不溶物が残るため、トリエチルアミンを0.0051mol添加し、設定温度70℃(内温60〜70℃)で撹拌して均一な溶液にした。その後、50℃に液温を下げ、触媒として安息香酸を0.014mol添加した。その後、酸無水物BPDA19mmolを添加し、内温50℃のままで1.5時間撹拌を行ない均一な溶液を得た。その後、設定温度を210℃、内温180℃に上昇させ、1時間内温180℃で撹拌を行なったところゲル化した。このゲルを、ポリイミドBとした。
【0048】
〔比較例2〕
o−クレゾール中で以下のような一段階でポリイミドCの合成を行なった。o−クレゾール100g中に分子内にカルボキシル基を有しないDADPM19mmolを入れ、50℃で30分間撹拌し、均一な溶液にした。その後、50℃に液温を下げ、触媒として安息香酸を200mg添加した。その後、BPDAを19mmol添加し、そのまま90分撹拌を行ない均一な溶液とした。共沸溶媒としてトルエン50mlを加えた後、液温を180℃に上げ、1.5時間撹拌を行なったところ、白色沈殿が析出し反応溶媒の粘度が急激に減少した。この粉末を、メタノールで洗浄したものをポリイミドCとした。
【0049】
〔実施例2〕
溶媒溶解性評価
各ポリイミドを30ccサンプル管瓶に採取、NMP、m−クレゾール、イオン交換水で20倍、200倍希釈し、ホットプレート付き電磁スターラーで80℃設定で撹拌した。目視で不溶物を確認した。ポリイミドBはゲルのため評価しなかった。その結果を下記の表1に示す。ポリイミドCに用いたジアミン(DADPM)は、ポリイミドAに用いたジアミンよりカルボキシル基を取り除いた構造と同一である。また、酸無水物が異なるものの一般にポリイミドAに用いられている酸無水物よりポリイミドCに用いられている酸無水物の方が溶解性が高いため、カルボキシル基導入による溶解性向上の効果が発現されている。ポリイミドAは、m−クレゾールよりもNMPの方が溶解性が良好であり、NMPに対して溶解性を向上させる成分としてカルボキシル基の導入が効果的であると判断できる。
【0050】
【表1】
【0051】
〔実施例3〕
脱カルボン酸基反応の追跡
図1は、ポリイミドAの熱重量分析を行った結果を縦軸に重量%、横軸に温度(℃)をとったグラフである。図1によれば、420℃を過ぎた辺りから急激な重量減少があり、丁度80%の重量に落ちた周辺で重量減少の程度が収まっているのがわかる。この結果は、加熱により脱炭酸反応が起こると仮定した場合に、二酸化炭素が発生したとした時の理論量と近い値である。
【0052】
図2は、ポリイミドAを400℃に保持した場合と、450℃に保持した場合における各重量変化を示したグラフである。図2によれば、ポリイミドAを400℃で加熱を続けた場合より、450℃で加熱を続けた場合の方が重量減少が収まるのが早くなっていることがわかる。以上の結果より、ポリイミドAについての熱処理条件は450℃の方が好ましいことがわかる。
【0053】
〔実施例4〕
IRスペクトルによる分析
シリコンウエハ上にポリイミドAの1μmの塗膜を形成した。該ポリイミドAの塗膜に対して450℃、15分の熱処理を与えた。該熱処理の前後でIRスペクトルを日本分光社製FI/IR−610(商品名)により測定した。その結果を図3に示す。
【0054】
図3によれば、1730cm-1付近のピークがベーク後に減少しているのがわかる。n−メチル−2−ピロリトンに対する溶解試験を行ったところ、ポリイミドAの塗膜は加熱処理前に溶解していたが、加熱処理後には溶解しなくなっていた。図3のIRスペクトルの結果より、450℃の加熱処理の過程で塗膜に何らかの変化が起こったものと考えられる。ポリイミドAの塗膜に耐溶媒性が発現されたのはそのためではないかと考えられる。
【0055】
さらに、ポリイミドAの室温から350℃までの昇温の過程をIRスペクトルで追跡した。その結果を図4に昇温スペクトルとして示す。図4によれば、ピークに全く変化がなく、TGAの結果よりも明らかなように少なくとも350℃までは分解などが起こっていないので、ポリイミドAは安定な物質であるといえる。
【0056】
〔実施例5〕
熱物性評価
ポリイミドAの10%NMP溶液を10cm×10cmの膜厚12μmの銅箔上にコーティングし、120℃30分間オーブンにて乾燥した。その後、450℃15分間窒素雰囲気下において熱硬化を行い、10μm膜厚のコーティング被膜を得た。その後、液温50℃、45ボーメ塩化第二鉄中において銅箔のエッチングを行い、ポリイミドフィルムを得た。該ポリイミドフィルムを長さ約2cm、幅5mmに切り出し、Rigaku社製ThermoPlusII TMA8310(商品名)を用いて熱膨張係数の測定を行った。測定条件は荷重10g、温度範囲室温〜350℃、昇温速度10℃/minで行った。膨張係数は100℃から軟化点温度までの平均をとった。また、同様にして得たフィルムをレオメトリックサイエンス社製RSA−2を用い、室温〜400℃まで昇温速度5℃/minで動的粘弾性試験を行った。また、その際にTanδのピークをガラス転移点Tgとした。その結果を下記の表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
表2から分かるように、本発明のポリイミド樹脂は400℃以上のTgを示す耐熱性が非常に良好であり、しかも低熱膨張率である。
【0059】
〔実施例6〕
吸水性評価
熱膨張係数測定と同様な方法で、10×10cm、膜厚10〜20μmのポリイミドAのフィルムを調製した。リファレンスとして、Kapton 100Hフィルム(東レ・デュポン社製、商品名)を用いた。前記各フィルムについてドライボックスで湿度を変化させ重量変化を測定し、吸湿性の湿度依存性を調べた。その結果を図5に示す。図5のグラフによれば、市販のポリイミドフィルムよりもポリイミドAフィルムの方が吸湿性が大きいことがわかる。これは、450℃15分の加熱処理条件では脱炭酸が完全に進行していないためではないかと考えられる。これは、溶解性を損なわない範囲でカルボキシル基の導入量を少なくすることで解決できると思われる。その際の導入量の下限はポリイミド骨格の構造による。
【0060】
【発明の効果】
本発明は、本来溶媒不溶性である剛直な骨格構造を有するポリイミドに対して、カルボキシル基を導入することにより、汎用性の有機極性溶媒に対する溶解性があり、さらに、加熱することにより脱炭酸して溶剤不溶性となる、低熱膨張率、耐熱性ポリイミド樹脂組成物である。
【0061】
本発明の溶媒可溶性耐熱性ポリイミド樹脂は、10%熱分解温度が450℃以上であるという耐熱性を有する。さらに400℃〜500℃の温度で熱処理を加えることにより耐溶媒性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ポリイミドAの熱重量分析を行った結果を縦軸に重量%、横軸に温度(℃)をとったグラフである。
【図2】 ポリイミドAを400℃に保持した場合と、450℃に保持した場合における各重量変化を示したグラフである。
【図3】 シリコンウエハ上に形成したポリイミドAの1μmの塗膜に対して、450℃、15分の熱処理を与えた際の、熱処理の前後のIRスペクトルを示す図である。
【図4】 ポリイミドAの室温から350℃までの昇温の過程のIRスペクトルを示す図である。
【図5】 ポリイミドAフィルムと比較のフィルムについてドライボックスで湿度を変化させ重量変化を測定し、吸湿性の湿度依存性を調べた結果を示すグラフである。
Claims (4)
- 3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノフェニルメタンをトリエチルアミンの共存下で溶媒中に完全に溶解させた後、
ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボキシリックジアンハイドライドを添加して均一な溶液とし加熱して溶媒可溶性耐熱性ポリイミドを取得することを特徴とする溶媒可溶性耐熱性ポリイミドの製造方法。 - 3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノフェニルメタンをトリエチルアミンの共存下で溶媒中に完全に溶解させた後、
ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボキシリックジアンハイドライドを添加して均一な溶液とし加熱して溶媒可溶性耐熱性ポリイミドを取得し、
該溶媒可溶性耐熱性ポリイミドを溶媒に溶解及び/又は分散させてなるコーティング組成物とし、
該コーティング組成物を基材にコーティングし、乾燥させ、400℃〜500℃の温度で加熱処理することにより溶媒不溶性にすることを特徴とする耐熱性ポリイミド樹脂成形物の製造方法 - 前記溶媒可溶性耐熱性ポリイミド樹脂を溶解させることが可能な溶媒が、有機極性溶媒及び非極性溶媒から選ばれたことを特徴とする請求項2に記載の耐熱性ポリイミド樹脂成形物の製造方法。
- 請求項2又は3の耐熱性ポリイミド樹脂成形物の製造方法により得られた耐熱性ポリイミド樹脂成形物であって、10%熱分解温度が450℃以上であることを特徴とする耐熱性ポリイミド樹脂成形物。
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