JP4703026B2 - 広帯域ase光源 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エルビウム添加光ファイバから発生される自然放出光を光源とする広帯域自然放出光光源に関するものであり、波長多重光通信システム、光計測等の光源として使用するのに適するものである。
【0002】
【従来の技術】
エルビウム添加光ファイバは、ある波長範囲の励起光を入射することにより、ある波長に対して大きな利得を得ることができる特性を有する。このため、利得を有する波長帯の信号光をエルビウム添加光ファイバ(以下EDF)内に透過させることで、信号光の光強度を非常に大きくすることが可能であり、現在光増幅器として光通信の分野において広く利用されている。EDFに励起光を入射したとき、EDFは信号光の利得を発生させると共に自然放出光も発生する。発生した自然放出光は、利得の影響を受けて光出力が増大する。このようにして発生した光は、Amplified Spontaneous Emission光(以下、ASE光)と呼ばれている。
【0003】
EDFは、それ自身が持つ大きな利得によりASE出力を出射することができ、広帯域光源として使用することが可能である。近年、通信容量の拡大に伴い、広い波長帯域を用いて、異なる波長を持つ光信号を多重し、送受信する波長多重光通信システムが盛んに検討されており、このような背景のもと、EDFのASE光を用いた広帯域光源が、インコヒーレントなWDM用光源として、またWDMシステム用光部品の試験用光源として使用されている。
【0004】
通信容量を増大するため、光通信の利用波長帯域が拡大されつつある。これまで利用されてきた1530〜1560nm帯(1550nm帯)に加え1570〜1610nm帯(1580nm帯)も用いられるようになってきた。この波長帯域の拡大に伴い光通信用光コンポーネントは1530〜1610nm以上での動作が必要で、その損失波長特性を測定するためには、この波長帯域をカバーすると同時に測定ダイナミックレンジを広げるため高出力な広帯域光源が求められている。
【0005】
図6は従来の広帯域ASE光源の構成を示す図である(特開平11−330593号公報)。エルビウム添加光ファイバ10、第1、第2の励起光源20a、20b、第1、第2の波長多重合波器30a、30b,光出力ポート40、無反射端50からなる。
【0006】
エルビウム添加光ファイバ10の無反射端50側及び光出力ポート40側に励起光源20a,20bからの励起光を加え、EDF10は無反射端50側で発生されたASE光が光出力ポート40側に至るまでに主に短波長成分が吸収されて長波長成分が残る長さあるいは吸収特性のものとし、この無反射端50側からの励起光で発生されてEDF10を伝播するASE光と、光出力ポート40側からの励起光で発生されたASE光とを共に光出力ポート40側から出力する構成である。EDF10の長さは360mで、励起光源2aの光強度は170mW、励起光源2bは34mWである。
【0007】
また、特開平11−330593号公報には示されていないが、一般的に出力ポート40の前段には偏波無依存型の光アイソレータが配置される。この光アイソレータの役目は、EDF10への反射戻り光を除去することにあり、反射戻り光による寄生発振、およびASE光の多重反射による利得の低下を抑圧している。
【0008】
図7は従来の広帯域ASE光源のスペクトラム波形を示す図である。スペクトラム密度は−20dBm(1530〜1610nm)、−12dBm(1550〜1600nm)である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図6、図7に示す従来の広帯域ASE光源はASE出力帯域として1530〜1610nmをカバーしているものの一方端が無反射端50であるため、無反射端50側に伝播するASE光は、無反射端50でEDF10側には反射してこない構成となっており、出力ポート40側のASE光出力には寄与していなかった。無反射端50側に伝播するASE光をEDF内に戻して増幅するという考えが無かった。即ち高出力化については十分な検討がされていなかった。
【0010】
1565〜1610nm帯(1580nm帯)のASE出力強度は、1530〜1565nm帯(1550nm帯)の10分の1程度であり、1565〜1610nm帯(1580nm帯)のASE出力光強度を上げるために大きな励起光強度が必要となるため、従来技術では無反射端側の励起光強度170mW,出力ポート側のそれは34mWで、トータル204mWとかなりハイパワーが必要であった。
【0011】
またEDF長が360mと長く装置の小型化にも不向きであった。このように励起光源がハイパワーである事、およびEDF長が長いことは装置も高価になる欠点があった。
【0012】
さらに従来技術ではスペクトラムを平坦化するために補償フィルタが必要であるという欠点があった。
【0013】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、少ない励起光強度で高出力かつ小型、低価格な1530〜1610nm帯をカバーし、補償フィルタを用いないでスペクトラム平坦性を向上した広帯域ASE光源を提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明はこれらの課題を解決するためのものであり、
エルビウム添加光ファイバの一方端に波長が980nm帯の励起光源と、光アイソレータを介して出力端子を接続すると共に、他方端に波長が980nm帯の励起光源と反射体を接続し、前記出力端子から1550nm帯と1580nm帯の光が出力されるASE光源であって、前記エルビウム添加光ファイバはエルビウム添加濃度が1000ppm以上であり、前記一方端の励起光源は前記他方端の励起光源より光強度が大きく、前記他方端の励起光源の励起光は前記反射体で反射される1580nm帯のASE光を増幅し、前記一方端の励起光源と前記他方端の励起光源の光強度の合計が120mWであって、前記エルビウム添加光ファイバの長さが12m〜18mに設定されていることを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明による広帯域ASE光源について説明する。
【0018】
図1は本発明の第1の実施形態を示す構成図である。5のエルビウム添加光ファイバ(EDF)は希土類元素であるエルビウムが1000ppm以上添加された信号光の増幅作用がある石英系光ファイバで、今日最も多く用いられている光増幅用光ファイバであり、励起光を入射したときに一方端で発生する1550nm帯(第1の波長帯)のASE光が他方端に伝播した時に1580nm帯(第2の波長帯)に変換される長さを有している。
【0019】
4は光の合波器であり、光ファイバを融着延伸して作られている。3は励起光源である。6は反射体で光信号を反射するように誘電体多層膜で構成した全反射ミラーを光ファイバー端面に接着接続して構成したものである。2は光アイソレータで光信号を一方向のみ通過させるようにする働きをするもので、原理はファラデー回転子を用いたものである。
【0020】
EDF5の一方端には合波器4を介して半導体レーザーの励起光源3を接続し、EDF5の他端には反射体6を接続し、合波器4の一端には光アイソレータ2を接続し、光アイソレータ2を通して出力端子1からASE光を出力するようになっている。出力端子1からの反射光がEDF5に戻ってくるとASE光が不安定になるが、光アイソレータ2によって出力端子1側からの反射光がEDF5内に戻らないようにする事でASE光が不安定になるのを防ぐことができる。
【0021】
励起光源3から出力された励起光はその波長が1480nm帯あるいは980nm帯であって合波器4を介してEDF5に導かれる。上記励起光源3からの励起光が入射すると、合波器4を接続したEDF5の一方端側の前半部分でまず1550nm帯(第一の波長帯)のASE光が放出され、EDF5の両側に伝播する。光アイソレータ2側に伝播したASE光は1550nm帯であって光アイソレータ2を通過して出力端子1から出力される。さらに反射体6側に伝播する上記1550nm帯(第1の波長帯)のASE光は、その途中のEDF5後半部分で吸収されることにより、他方端に伝播したときに1580nm帯(第2の波長帯)のASE光になり、さらに1580nm帯ASE光は反射体6で反射され、EDF5内に戻ることで、EDF5内で増幅されて出力端子1から出力される。この状態で出力端子1から1550nm帯と1580nm帯のASE光が比較的平坦で合わさった状態で出力されるのである。
【0022】
EDFを光増幅用ファイバとして用いた場合は、エルビウム添加濃度を高めることにより、光増幅器で使用するEDF長を短尺化することができ、EDF製造における生産性の向上と光増幅器の小型化が可能となる。しかし、エルビウムの濃度を増加しすぎると励起状態にあるエルビウムイオン間の相互作用によりASEの出力が低下する。石英系光ファイバの場合、EDFのエルビウム濃度が100ppmを超えるとこの現象(濃度消光と呼ぶ)が起こるが、アルミニウム(Al)を共添加することにより1000ppm程度のエルビウム添加濃度においても濃度消光は起こらない。またファイバを高NA構造にすることでエルビウム添加コア部の励起光強度の増加を図ると共に、励起光強度の弱い領域がコア部と重ならないため、高効率化が実現できる(参考文献:エルビウム添加光ファイバ増幅器、須藤昭一偏、オプトロニクス社、149−152PP)。
【0023】
従来EDFのエルビウム添加濃度は200ppm〜400ppm程度であるため、1550nm帯ASE光源を構成する場合のEDF長は10m〜20m必要であり、1580nm帯ASEを構成する場合には50m〜100m近く必要であった。本発明では、EDF5のエルビウム添加濃度を1000ppm以上とすることで1580nm帯をカバーするASE光源においてEDF長を1550nm帯並みの10〜20mあるいはそれ以下にすることができる。
【0024】
今後エルビウム添加濃度をさらに高めることが出きれば、さらに装置の小型化が可能となる。たとえばエルビウム添加濃度5000ppmのEDFが濃度消光を起こさずに出来れば、本発明に使用するEDFは長さ2m〜4mになり、装置の更なる小型化が可能となる。
【0025】
ここで本発明のEDF5は一方端で発生する1550nm帯(第1の波長帯)のASE光が他方端に伝播したときに1580nm帯(第2の波長帯)に変換される長さとしてあるが、このような長さであるかどうかは、実際に上記第1の波長帯の光を入力することで確認できる。
【0026】
図5(a)、図5(b)は第1の波長帯のASE光が第2の波長帯に変換されるエルビウム添加光ファイバ(EDF)の長さについて説明するものである。図5(a)は該EDFの一方端から1480nm帯励起光を入力したときに該EDFの他方端から出力されるASEスペクトラム波形をシミュレーションしたものである。EDFは希土類元素であるエルビウムが添加された信号光の増幅作用がある石英系光ファイバで、今日最も多く用いられている光増幅用光ファイバである。励起光強度100mW、EDF長を20mから150mまで変化させると、EDF長が20m〜30mでは1530nm〜1560nmの第1の波長帯を有するASEであるが、EDF長を100mにすると、1540nmでのASE出力は30dB以上低下し、第2の波長帯である1565nm〜1610nm帯(1580nm帯)へ推移する。
【0027】
この現象は次のように説明される。1480nm帯励起又は980nm帯励起により1550nm帯ASEがファイバ前半部分で発生する。この1550nm帯ASEがファイバ後半部分において吸収されることにより1580nm帯増幅が起こる。ファイバを長くしていくとASEの出力は1550nm帯から1580nm帯に推移する、この長さを変換される長さと呼ぶ(参考文献:小野他、1.58μm帯Er3+添加光ファイバ増幅器の増幅特性、信学技報、OSC97−5、pp25−30、1997)。
【0028】
また図5(b)はEDFの一方端から1480nm帯励起光を入力したときに該EDFの一方端から出力されるASEスペクトラム波形をシミュレーションしたもので、励起光強度100mW、EDF長を20m〜150mまで変化させても1530〜1565nm帯ASEはそのまま残り、1580nm帯への推移は見られない。
【0029】
これらからアルミニウムを共添加したエルビウム高濃度のEDFを選択し、EDF長を最適化した本発明の構成にすれば、高出力、小型、低価格な広帯域ASE光源が実現できる。
【0030】
図2は本発明の第2の実施形態である。
【0031】
図1と同様に構成した装置で、反射体6側のEDF5端に光合波器7を介して第2の励起光源8を接続したものである。励起光源8はその波長が1480nm帯あるいは980nm帯の物である。高出力ASEを得るためには励起光源3、および励起光源8の光強度は大きいほうが良いが、スペクトラム密度を平坦化する場合には、EDF5の一方端側励起光源3の光強度は他方端側の励起光源8より大きくすることが好ましい。なぜなら励起光源8は主に、反射体6で反射される1580nm帯ASEの増幅に寄与し、反射体があるために1580nm帯ASEを効率よく増幅するからである。
【0032】
従って励起光源3及び励起光源8の光強度比を適切に選択することでASEスペクトラム密度を平坦化できる。
【0033】
【実施例】
本発明の広帯域ASE光源の第1実施例として図1に示したASE光源の試作を行った。各部品と構成について以下に説明する。
【0034】
図3(a)、図3(b)は図1に示す実施形態のASE光源における試作結果である。 励起光源3は波長1480nmで励起出力を図3(a)では110mW,図3(b)では130mWとした。EDF5は市販されている石英系のエルビウム添加光ファイバを用い、EDFはエルビウム濃度1200ppm、EDF長は13.5〜18mまで確認した。反射体の反射率は90%である。
【0035】
従来技術と動作波長帯域はほぼ同じであるが、励起強度を上げる(110mW〜130mWへ)と長波長側(1570〜1610nm)の出力が増加すると同時にASE光強度も増加する。EDF長が短いと短波長側のASE出力が低下し、EDF長を長くすると長波長側ASE出力が低下する。最適なEDF長は励起光強度110mWの時13.5m、励起光強度130mWの時15m程度である。
【0036】
ASE出力光スペクトラム密度は従来技術では−20dBm(1530〜1610nm)、−12dBm(1550〜1600nm)であるが、本発明の図3(b)では−12dBm(1530〜1610nm)、−7dBm(1550〜1600nm)と高出力である。しかも励起光強度は従来比130mW/204mW(≒54%)に押さえることができる。EDF長は従来比15m/360m(≒4%)に改善でき、1530〜1600nm波長帯域におけるスペクトラム平坦性(スペクトラムにおける最大出力値と最小出力値の差)が15dB以下となる。
【0037】
これらにより、反射体を使うこと及び、エルビウム高濃度EDFを使用することで高出力、EDFが短く小型な、かつEDF長が短いため低価格化な広帯域ASE光源が開発できた。
【0038】
また本発明の広帯域ASE光源の第2実施例として図2に示したASE光源の試作を行った。各部品と構成について以下に説明する。図4は図2に示す実施形態のASE光源における試作結果である。励起光源3及び励起光源8は波長980nmで励起光源3および励起光源8の励起出力を合わせたトータルパワーを120mW、その他は実施形態1と同じ物である。
【0039】
上記状態でASEスペクトラム密度が平坦になるようEDF長と励起光強度比を最適に調整した。ファイバ長は12m〜18mまで変化させたところ、ファイバが18mのとき励起光源8および励起光源3の光強度はそれぞれ48mWおよび720mWであった。ファイバ長を短くすると励起光源3の光強度はさらに大きいほうがよく、ASE出力も大きくなることがわかった。
【0040】
たとえばEDF長16mの時、励起光源8は41mW、励起光源3は79mWでASE出力強度14.4dBmであった。このときスペクトラム密度は−10dBm/nm(1528〜1610nm)で、スペクトラム平坦性は7dBと従来に比べかなりよくなっている。
【0041】
以上から本方式ではスペクトラムの平坦性が改善できる、このとき励起光源3の光強度は励起光源8のそれより大きいことを確認した。
【0042】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、エルビウム添加光ファイバの一方端に励起光源と、光アイソレータを介して出力端子を接続すると共に、他方端に反射体を接続したASE光源であって、前記エルビウム添加光ファイバはエルビウム添加濃度が1000ppm以上であり、かつ一方端側で発生する第1の光波長帯を有するASE光が他方端に伝播した時に第2の光波長帯に変換される長さとすることで、低い励起パワーと短い希土類添加ファイバで1530〜1600nm波長帯域におけるスペクトラム平坦性に優れた、高出力な広帯域ASEを得ることができ、小型、低価格化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における広帯域ASE光源の第1の実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明における広帯域ASE光源の第2の実施形態を示す構成図である。
【図3】(a)、(b)は本発明における第1の実施形態のASEスペクトラムを示す実験結果である。
【図4】本発明における第2の実施形態のASEスペクトラムを示す実験結果である。
【図5】(a)、(b)は第1の波長帯のASE光が第2の波長帯に変換されるエルビウム添加光ファイバの長さを説明するための図である。
【図6】従来のASE光源を示す図である。
【図7】従来のASE光源のASEスペクトラムを示す図である。
【符号の説明】
1:出力端子
2:光アイソレータ
3:励起光源
4:合波器
5:エルビウム添加光ファイバ
6:反射体
7:合波器
8:励起光源
Claims (1)
- エルビウム添加光ファイバの一方端に波長が980nm帯の励起光源と、光アイソレータを介して出力端子を接続すると共に、他方端に波長が980nm帯の励起光源と反射体を接続し、前記出力端子から1550nm帯と1580nm帯の光が出力されるASE光源であって、前記エルビウム添加光ファイバはエルビウム添加濃度が1000ppm以上であり、前記一方端の励起光源は前記他方端の励起光源より光強度が大きく、前記他方端の励起光源の励起光は前記反射体で反射される1580nm帯のASE光を増幅し、前記一方端の励起光源と前記他方端の励起光源の光強度の合計が120mWであって、前記エルビウム添加光ファイバの長さが12m〜18mに設定されていることを特徴とする広帯域ASE光源。
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